(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022184330
(43)【公開日】2022-12-13
(54)【発明の名称】化粧品用粉末組成物及びこれを含有する化粧品
(51)【国際特許分類】
A61K 8/73 20060101AFI20221206BHJP
A61K 8/37 20060101ALI20221206BHJP
A61Q 1/14 20060101ALI20221206BHJP
A61Q 19/10 20060101ALI20221206BHJP
A61Q 5/02 20060101ALI20221206BHJP
【FI】
A61K8/73
A61K8/37
A61Q1/14
A61Q19/10
A61Q5/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021092109
(22)【出願日】2021-06-01
(71)【出願人】
【識別番号】000204181
【氏名又は名称】太陽化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108280
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 洋平
(72)【発明者】
【氏名】福原 寛央
(72)【発明者】
【氏名】冨永 悦子
(72)【発明者】
【氏名】米村 博貴
【テーマコード(参考)】
4C083
【Fターム(参考)】
4C083AA122
4C083AB032
4C083AB172
4C083AB432
4C083AC022
4C083AC072
4C083AC112
4C083AC122
4C083AC172
4C083AC242
4C083AC302
4C083AC352
4C083AC392
4C083AC402
4C083AC421
4C083AC422
4C083AC482
4C083AC642
4C083AC662
4C083AC712
4C083AC782
4C083AD042
4C083AD092
4C083AD152
4C083AD211
4C083AD242
4C083AD352
4C083BB01
4C083CC04
4C083CC23
4C083CC38
4C083DD17
4C083DD27
4C083DD31
(57)【要約】
【課題】 使い勝手が良く、使用感が良好な化粧品用粉末組成物を提供すること。
【解決手段】 界面活性剤とガラクトマンナン分解物とを含有する化粧品用粉末組成物によって達成される。このとき、前記ガラクトマンナン分解物の平均分子量が、5000~30000であることが好ましい。また、前記界面活性剤が、グリセリン脂肪酸エステルであることが好ましく、35℃で非固体状のポリグリセリン脂肪酸エステルであることが好ましい。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
界面活性剤とガラクトマンナン分解物とを含有する化粧品用粉末組成物。
【請求項2】
前記ガラクトマンナン分解物の平均分子量が、5000~30000である請求項1に記載の化粧品用粉末組成物。
【請求項3】
前記界面活性剤が、グリセリン脂肪酸エステルである請求項1または2に記載の化粧品用粉末組成物。
【請求項4】
前記界面活性剤が、35℃で非固体状のポリグリセリン脂肪酸エステルである請求項3に記載の化粧品用粉末組成物。
【請求項5】
前記ポリグリセリン脂肪酸エステルの構成脂肪酸が、ラウリン酸、ミリスチン酸及びオレイン酸からなる群から選択される少なくとも一つを含有する請求項4に記載の化粧品用粉末組成物。
【請求項6】
前記ポリグリセリン脂肪酸エステルの構成脂肪酸の一つが、ラウリン酸である請求項5に記載の化粧品用粉末組成物。
【請求項7】
前記ポリグリセリン脂肪酸エステルのモノエステル含量が70%以上である請求項4~6のいずれか一つに記載の化粧品用粉末組成物。
【請求項8】
(A)前記ガラクトマンナン分解物と(B)前記ポリグリセリン脂肪酸エステルとの混合比について、(B)が60質量%以下である請求項4~7のいずれか一つに記載の化粧品用粉末組成物。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか一つに記載の化粧品用粉末組成物を含む化粧品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化粧品用粉末組成物及びこれを含有する化粧品に関する。
【背景技術】
【0002】
界面活性剤を粉末化して化粧品の材料として使用する技術開発が行われている。界面活性剤を粉末化する方法としては、直接に粉砕する方法、又はトレハロースや、デキストリン・コーンスターチ等の長鎖ポリマー類や公知のポリマーを賦形剤として用いる方法が知られている。界面活性剤のうち液状のものは、賦形剤を用いて粉末化すると、処理後にベタベタしたり、流動性が悪かったり、経時的に液状のものが染み出してしまうなどの問題があった。
しかし、常温で液体の界面活性剤は、洗浄力や起泡力が極めて高いという特性があることから、化粧品において好適に使用されることが報告されている(特許文献1)。但し、このようなものは、前述のように粉末化するための問題があることから、液体状の界面活性剤を粉末化する技術が望まれていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、使い勝手が良く、使用感が良好な化粧品用粉末組成物などを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために鋭意検討した結果、特定のガラクトマンナン分解物と界面活性剤とを含有する化粧品用粉末組成物とすることで、化粧品の肌感触の改善、身体洗浄剤などにおける泡質の改善、保湿効果などを維持できることを見出し、基本的には本発明を完成するに至った。
常温(例えば35℃)で液状の界面活性剤を組み合わせる場合は、界面活性剤特有のべたつきが残ってしまうために、粉末化するには賦形剤を用いる必要がある。但し、賦形剤として、デキストリン・コーンスターチ・トレハロースなどの公知の技術を用いた場合には、粉末流動性が乏しく、扱いづらいことに加え、製造設備に付着し易いために、操作性に乏しく、歩留まりが悪いだけでなく、化粧品に使用時の泡質改善・肌感触の改善・保湿機能が発現し難いという使い勝手の問題があった。
【0006】
本発明者は、界面活性剤とガラクトマンナン分解物とを組み合わせることで、界面活性剤特有のべたつきを抑制し、粉末化しやすく、流動性の高い粉末が得られることを見出した。また、泡質の改善・肌感触の改善・保湿機能については、ガラクトマンナン分解物と界面活性剤を組み合わせることにより、更に飛躍的に効果を向上させられることを見出し、本発明に至った。
こうして、本発明に係る化粧品用粉末組成物は、界面活性剤とガラクトマンナン分解物とを含有することを特徴とする。
このとき、前記ガラクトマンナン分解物の平均分子量が、5000~30000であることが好ましい。
【0007】
また、前記界面活性剤が、グリセリン脂肪酸エステルであることが好ましく、ポリグリセリン脂肪酸エステルであることが更に好ましい。
前記界面活性剤が、35℃で非固体状のポリグリセリン脂肪酸エステルであることが好ましい。このとき、ポリグリセリン脂肪酸エステルの構成脂肪酸が、ラウリン酸、ミリスチン酸及びオレイン酸からなる群から選択される少なくとも一つを含有することが好ましく、ラウリン酸を含むことがさらに好ましい。また、前記ポリグリセリン脂肪酸エステルのモノエステル含量が30%以上であることが好ましく、70%以上であることがより好ましい。なお、非固体状とは、例えば液状、ペースト状、スラリー状等の性状が挙げられる。
(A)前記ガラクトマンナン分解物と(B)前記ポリグリセリン脂肪酸エステルとの混合比について、(B)が60質量%以下であることが更に好ましい。このとき、(B)が5%以上であることが好ましく、10%以上であることが更に好ましい。このような構成とすれば、界面活性剤特有のべたつきを抑制し、粉末化しやすく、流動性の高い粉末が得られ、界面活性剤による泡立ちが良く、溶解のし易さが良好である。
化粧品用粉末組成物の混合比としては、(A)前記ガラクトマンナン分解物:(B)前記ポリグリセリン脂肪酸エステル=40:60~99:1が好ましく、1:1~9:1がより好ましい。この混合比のものを希釈して使用することができる。
また、別の発明に係る化粧品は、上記化粧品用粉末組成物を含むものもしくは、この粉末組成物を化粧品とすることもできる。
【発明の効果】
【0008】
本発明の化粧品用粉末組成物は、界面活性剤の特徴である洗浄力や起泡力を飛躍的に高めた粉末であり、流動性が高い粉末であるため、液体化粧品のみでなく、粉末タイプの化粧品にも好適に配合できる。また、本発明の化粧品用粉末組成物を化粧品に用いることにより、泡質の改善・肌感触の改善・保湿機能などを高めることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】ガラクトマンナン分解物のHPLC分析を行ったときの保持時間(分)と分子量マーカーの対数値との関係を示す検量線のグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
次に、本発明の実施形態について、図表を参照しつつ説明する。本発明の技術的範囲は、これらの実施形態によって限定されるものではなく、発明の要旨を変更することなく様々な形態で実施できる。
本発明におけるガラクトマンナン分解物は、天然由来原料であるグア豆等から得られる抽出物であるグアガム、ローカストビーンガム、タラガムなどを分解して得られる物質である。分解方法としては特に限定するものではないが、例えば酵素分解・酸分解・アルカリ分解・高圧処理分解などの公知の分解処理方法を例示できる。但し、分子量を調整するためには、好ましくは酵素処理方法を用いる。
本発明におけるガラクトマンナン分解物の平均分子量は、保湿性の向上・良好な肌感触・泡質改質などの機能性の観点から、好ましくは5000~30000である。ガラクトマンナン分解物の分子量は、高速液体クロマトグラフ法(カラム;TSKgel SuperAW (東ソー))とRI(示差屈折率計)を用いて測定できる。
【0011】
ガラクトマンナン分解物と界面活性剤を組み合わせることにより、上記機能性を更に高めることができる。
本発明に使用できる界面活性剤の種類としては、好ましくは35℃で非固体状の性状を有する界面活性剤である。35℃で固体状の界面活性剤は、粉砕処理によって粉末化ができるものの、化粧品に応用する場合には泡質の改善・肌感触の改善・保湿機能の効果は十分ではない。
界面活性剤としては、例えばポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エーテル、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステルなどの非イオン界面活性剤;脂肪酸塩、アルキル硫酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、ポリオキシエチレン脂肪酸アミン硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル燐酸塩、α-スルホン化脂肪酸アルキルエステル塩、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル燐酸塩などのアニオン界面活性剤;第四級アンモニウム塩、第一級~第三級脂肪酸アミン塩、トリアルキルベンジルアンモニウム塩、アルキルピリジニウム塩、2-アルキル-1-アルキル-1-ヒドロキシエチルイミダゾリニウム塩、N,N-ジアルキルモルフォルニウム塩、ポリエチレンポリアミン脂肪酸アミド塩などのカチオン界面活性剤;N,N-ジメチル-N-アルキル-N-カルボキシメチルアンモニオベタイン、N,N,N-トリアルキル-N-アルキレンアンモニオカルボキシベタイン、N-アシルアミドプロピル-N′,N′-ジメチル-N′-β-ヒドロキシプロピルアンモニオスルホベタインなどの両性界面活性剤等を使用できる。これらのうち、より好ましくは、塗布後の肌感触が良好なことから、ポリグリセリン脂肪酸エステルである。
【0012】
本発明品であるポリグリセリン脂肪酸エステルは、親水基であるポリグリセリンの重合度は5以上が好ましく、より好ましくは10~15である。
構成脂肪酸としては、カプリル酸(炭素数C8)からベヘン酸(炭素数C22)までが好適に使用できる。但し、洗浄力、起泡力という観点からラウリン酸(炭素数C12)、ミリスチン酸(炭素数C14)、オレイン酸(炭素数C18)が好ましく、ラウリン酸が更に好ましい。
本発明で使用するポリグリセリンモノ脂肪酸エステルの組成分析は、逆相分配カラムを用いたHPLC法を用いることができる。このとき、カラムとしてWacosil5C182、展開溶媒としてメタノール、流速として0.75ml/min、カラム温度として40℃、検出方法として紫外線吸収210nm、試料濃度として10%(溶媒メタノール)、注入量として5mlの条件を用いることができる。
合成方法としては、脂肪酸にグリシドールを付加重合して作製できるが、この方法に限定されるものではない。モノエステル含量は、洗浄力及び起泡力という観点から30%以上であることが好ましく、70%以上であることがより好ましい。
【0013】
化粧品用粉末組成物の調製方法としては、特に限定するものではないが、スプレードライヤーによる噴霧乾燥方法・ドラム乾燥・フリーズドライによる凍結乾燥方法・造粒・コーティングなど公知の粉末化処理方法を用いることができる。
本発明における化粧品用粉末組成物の調製方法は、特に限定するものではないが、例えば、予めガラクトマンナン分解物と界面活性剤とを混合して粉末化したものを添加する方法、化粧品中にガラクトマンナン分解物と界面活性剤とをそれぞれ別に添加する方法などが挙げられる。この場合にも、上記構成を採用することができる。
【0014】
本発明品における化粧品用の組成物の性状は、好ましくは粉末状である。
本発明の化粧品用粉末組成物及び化粧品に配合されるその他の成分としては、油剤として、例えば炭化水素系液状油・動植物性油・エステル油などが挙げられる。防腐剤としては、例えばパラベン、エチルパラベン、メチルパラベン、プロピルパラベン、ブチルパラベン、ソルビン酸カリウム、ソルビン酸ナトリウム、ソルビン酸、デヒドロ酢酸ナトリウム、過酸化水素、ギ酸、ギ酸エチル、ジ亜塩素酸ナトリウム、プロピオン酸、プロピオン酸ナトリウム、プロピオン酸カルシウム、ペクチン分解物、ポリリジン、フェノール、イソプロピルメチルフェノール、オルトフェニルフェノール、フェノキシエタノール、レゾルシン、ジブチルヒドロキシトルエン(BHT)、チモール、チラム、ティートリー油、ヒノキチオールなどが挙げられる。
【0015】
その他、本発明の効果を損なわない範囲で、感触向上剤・増粘剤として粘度調整及び使用感改善などを目的として、アニオン性高分子、ノニオン性高分子を配合できる。そのような成分として、例えば次のものが挙げられる。アニオン性高分子としては、特に限定するものではないが、例えばアクリル酸誘導体(ポリアクリル酸及びその塩、アクリル酸・アクリルアミド・アクリル酸エチル共重合体及びその塩等)、メタクリル酸誘導体(ポリメタクリル酸及びその塩、メタクリル酸・アクリルアミド・ジアセトンアクリルアミド・アクリル酸アルキルエステル・メタクリル酸アルキルエステル共重合体及びその塩等)、クロトン酸誘導体(酢酸ビニル・クロトン酸共重合体等)、マレイン酸誘導体(無水マレイン酸・ジイソブチレン共重合体、イソブチレン・マレイン酸共重合体等)、ポリグルタミン酸及びその塩、ヒアルロン酸及びその塩、カルボキシメチルセルロース、カルボキシビニルポリマー等が挙げられる。
【0016】
ノニオン性高分子としては、特に限定するものではないが、例えばアクリル酸誘導体(アクリル酸ヒドロキシエチル・アクリル酸メトキシエチル共重合体、ポリアクリル酸アミド等)、ビニルピロリドン誘導体(ポリビニルピロリドン、ビニルピロリドン・酢酸ビニル共重合体等)、ポリオキシアルキレングリコール誘導体(ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等)、セルロース誘導体(メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース等)、ポリサッカライド及びその誘導体(グアガム、ローカストビーンガム、デキストラン等)等が挙げられる。
その他に、香料、紫外線吸収剤、可視光吸収剤、キレート剤、酸化防止剤、着色剤、pH調整剤、粘度調整剤、パール光沢剤、湿潤剤、動植物由来のエキス類、ポリフェノール類、アミノ酸類、塩類等、カロテノイド類が挙げられる。その他にも化粧品にとして、通常使われる成分を使用できる。
【0017】
本発明品における化粧品としては、特に限定するものではないが、例えば乳液・クリーム・ローション・エッセンス・パック・洗顔料などの基礎化粧品、口紅・ファンデーション・リキッドファンデーション・メイクアッププレスパウダーなどのメイクアップ化粧品、ヘアーシャンプー・ヘアーリンス・ヘアートリートメント・コンディショナー・染毛料・整髪料などの頭髪化粧品、クレンジング・洗顔料・ボディーシャンプー・石けんなどの洗浄用化粧品、更に浴剤等が挙げられる。
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定するものではない。
【0018】
<調製例1>
水900gに0.1N塩酸を加えてpH3に調整し、これにアスペルギルス属細菌由来のβ-マンナナーゼ(ノボノルディスクバイオインダストリー社製)0.15gとグァーガム粉末(太陽化学株式会社製)100gを添加、混合し、50~55℃で24時間に渡り、グァーガムの酵素分解を行った。反応後、90℃で15分間加熱して酵素を失活させた。濾過分離(吸引濾過)して、不溶物を除去した後、グァーガム分解物をサイズ排除クロマトグラフィー(東ソー(株)製カラム:TSKgel SuperOligoPW-N及びTSKgel SuperMultiporePW-H)に供することにより、低分子画分(分子量約500以下)と高分子画分(分子量約47,000以上)とを除去した。サイズ排除クロマトグラフィーを実施する際には、分子量マーカーとしてプルラン(分子量;47,300)およびマルトトリオース(分子量;504)を用いた。
得られた溶液を減圧濃縮(Yamato製エバポレーター)した後、噴霧乾燥装置(大川原化工機(株)製)により乾燥することで、54gのグァーガム分解物を粉末として得た。
【0019】
ガラクトマンナン分解物の分子量は、高速液体クロマトグラフィーを用いて分析した。サンプル溶液としてガラクトマンナン分解物の水溶液(固形分濃度:1.0%(W/V))を調製し、サンプル溶液の濾過を行った後、以下の条件で高速液体クロマトグラフィーにて定量分析した。
HPLC(SHIMADZU)分析(HPLC条件;カラム:TSKgel SuperAW 4000(東ソー) 6mm×150mm + TSKgel SuperAW 2500(東ソー) 6mm×150mm 、検出器:RI(示差屈折率計)、溶離液 :水(100%)、流速:0.3mL/min、カラム温:80℃、分子量マーカー(プルラン(分子量;5,900、11,800、22,800、47,300、112,000、212,000、404,000、788,000)、マンノース、マルトトリオース、マルトヘプタオース)を用いて識別した。
平均分子量を算出するために、
図1に示すように、保持時間と分子量との関係を示す検量線を求めておき、これを用いた。
【0020】
最終的に得られた画分のうち、平均分子量5000の画分をガラクトマンナン分解物A、平均分子量10000の画分をガラクトマンナン分解物B、平均分子量20000の画分をガラクトマンナン分解物C,平均分子量30000の画分をガラクトマンナン分解物Dとした。また、平均分子量が5000未満の画分をガラクトマンナン分解物E、平均分子量40000以上の画分をガラクトマンナン分解物Fとした。
実施例1~32
表1の配合に基づき粉末組成物を調製した。ガラクトマンナン分解物A~Dと、35℃で液状であり、モノエステル含量が73%で、平均重合度10のポリグリセリンで構成されるポリグリセリンラウリン酸エステル(ポリグリセリン脂肪酸エステル)とを用いて調製した粉末組成物を実施例1~32とした。
【0021】
【表1】
実施例33~40
表2の配合に基づきガラクトマンナン分解物E及びFと、35℃で液状であり、モノエステル含量が73%で、平均重合度10のポリグリセリンより構成されるポリグリセリンラウリン酸エステル(ポリグリセリン脂肪酸エステル)とを用いて調製した粉末組成物を実施例33~40とした。
【0022】
【表2】
実施例41~56
表3の配合に基づき、ガラクトマンナン分解物A~Dと、35℃で液状であり、モノエステル含量が55%で、平均重合度10のポリグリセリンより構成されるポリグリセリンラウリン酸エステル(ポリグリセリン脂肪酸エステル)とを用いて調製した化粧品用粉末組成物を実施例41~56とした。
【0023】
【0024】
実施例57、58
表4の配合に基づき、ガラクトマンナン分解物Cと、界面活性剤を用いて調製した粉末組成物を実施例57、58とした。また、ガラクトマンナン分解物の代わりにガラクトマンナンまたはデキストリンと界面活性剤を用いて調製した粉末組成物を比較例1~6とした。さらに、ガラクトマンナン分解物Cのみを比較例7、界面活性剤のみを比較例8とした。
なお、界面活性剤としては35℃で液状であり、モノエステル含量が73%で、平均重合度10のポリグリセリンで構成されるポリグリセリンラウリン酸エステル(ポリグリセリン脂肪酸エステル)と、35℃でペースト状であり、モノエステル含量が39%で、平均重合度10のポリグリセリンで構成されるポリグリセリンミリスチン酸エステル(ポリグリセリン脂肪酸エステル)と、35℃で液状で、モノエステル含量が39%で、平均重合度10のポリグリセリンより構成されるものである。
【0025】
【0026】
<試験例1> 粉末の性状
実施例1~58及び比較例1~8で調製した粉末組成物について、粉末の性状評価を行った。評価は、官能評価パネラー10名に対してアンケートを実施することで点数化を行った。評価項目は、「べとつき」、「流動性」の2項目とした。
「べとつき」については、粉末性状の手触りを評価し、最もべとつきがない場合を6点、最もべとつきがある場合を1点とした。さらに、粉末状とならない場合を0点とした。
「流動性」については、粉末性状のものを評価し、最も流動性がある場合を6点、最も流動性が無い場合を1点とした。さらに、粉末状とならない場合を0点とした。
いずれも10名のパネラーの結果による平均値を最終評点とした。点数が高いほど粉末状態としては良好であり、4点以上であれば良好であることを示す。一方、3点未満の場合は、粉末性状としては不向きであることを示す。
結果を表5に示した。表5に示すように、実施例では、全て「べとつき」と「流動性」が良好であることが分かった。これに対し、比較例では、「べとつき」と「流動性」のいずれも良好である例は認められなかった。
【0027】
【0028】
<試験例2> 泡の性状
表6の実施例及び比較例の粉末組成物について、泡の性状評価を行った。評価は、官能評価パネラー10名に対してアンケートを実施することで点数化を行った。評価項目は、「泡立ち」、「泡のキメの細かさ」、「泡状態の維持」の3項目とした。
「泡立ち」、「泡のキメが細かさ」、「泡状態の維持」については、各品1gと水3gとを手にとり、手の平の上で両手で20秒間泡立てることにより、官能性を評価した。いずれも10名のパネラーを用いて評価した。回答された数値を平均化した値を効果とし、数値が4点以上の場合には効果があると認められ、3点未満の場合には効果が認められなかったとものと判定した。
「泡のキメが細かさ」については、泡立てた直後に目視で観察し、5段階評価により、最もキメが細かい場合は数値を6点とし、最もキメが粗い場合は数値を1点とした。さらに、泡立たない場は数値を0点とした。
「泡状態の維持」については、泡立てた後に目視で30秒経過後に観察し、5段階評価により、最も泡が維持されている場合は数値を6点とし、最も泡が維持されない場合は数値を1点とした。結果を表6に示した。
【0029】
【表6】
表6に示すように、実施例では「泡立ち」、「泡のキメが細かさ」、「泡状態の維持」のいずれも良好であることが分かった。
表5,6の結果に基づき、各例についての評価を合計し、総合評価を示した。その結果を表7に示した。
【0030】
【0031】
<試験例3> 化粧水
表8に示す配合にて、実施例で調製した化粧品用粉末組成物2質量%を添加して化粧水1~20を調製した。
10名の官能評価パネラーを用い、アンケートを実施した。パネラーは回答用紙に肌感触の官能評価判定を記載し6段階評価として、効果が最も弱く感じられた場合は数値を1点とし、最も強い効果を感じられた場合は数値を6点とした。得られた数値を平均化した値を添加効果とし、数値が4点以上であれば効果があるとした。一方、3点未満であれば効果が認められなかったものとした。官能評価の項目は以下の通りとした。
肌感触の評価は、「塗布後にさらっとする」、「塗布後にしっとりと潤う」、「塗布後の肌馴染みが良い」の3項目で実施した。結果を表9に示した。
【0032】
【0033】
【表9】
表9から明らかなように、本発明品を化粧品に使用した場合、塗布後の肌感触としてさらっとしており、肌が潤う感じも得られ、肌馴染みも良いことが分かった。
【0034】
<試験例4> シャンプー
表10に示す配合にて、実施例で調製した化粧品用粉末組成物5質量%を添加してシャンプー21~40を調製した。また、実施例を添加しない無添加のシャンプー41を調製した。
10名の官能評価パネラーを用い、アンケートを実施した。パネラーは回答用紙に肌感触の官能評価判定を記載し6段階評価として、効果が最も弱く感じられた場合は数値を1点とし、最も強い効果を感じられた場合は数値を6点とした。得られた数値を平均化した値を添加効果とし、数値が4点以上であれば効果があるとした。一方、3点未満であれば効果が認められなかったものとした。官能評価の項目は以下の通りとした。
肌感触の評価は、「泡のキメが細かい」、「泡に弾力がある」、「泡が減らない」、「洗浄後にしっとりとする」の4項目で実施した。結果を表11に示した。
【0035】
【0036】
【表11】
表11から明らかなように、本発明品をシャンプーに使用した場合、泡のきめが細かく、弾力があり、泡が減らないという泡質が改善され、かつ洗浄後にしっとりとした感触が得られるということが分かった。
【0037】
<試験例5> 洗顔クリームA
表12に示す配合にて、実施例で調製した化粧品用粉末組成物2質量%を添加して洗顔クリームAの42~61を調製した。
10名の官能評価パネラーを用い、アンケートを実施した。パネラーは回答用紙に泡の感じ及び肌感触の官能評価判定を記載し6段階評価として、効果が最も弱く感じられた場合は数値を1点とし、最も強い効果を感じられた場合は数値を6点とした。得られた数値を平均化した値を添加効果とし、数値が4点以上であれば効果があるとした。一方、3点未満であれば効果が認められなかったものとした。官能評価の項目は以下の通りとした。
肌感触の評価は、「泡のキメが細かい」、「泡に弾力がある」、「泡が減らない」、「洗浄後にしっとりとする」の4項目で実施した。結果を表13に示した。
【0038】
【0039】
【表13】
表13から明らかなように、本発明品を洗顔クリームに使用した場合、泡のきめが細かく、弾力があり、泡が減らないという泡質が改善され、かつ洗浄後にしっとりとした感触が得られるということが分かった。
【0040】
<試験例6> 洗顔クリームB
表14に示す配合にて、実施例で調製した化粧品用粉末組成物3質量%を添加して洗顔クリームBの1~8を調製した。また、実施例を添加しない無添加の洗顔クリーム9を調製した。
10名の官能評価パネラーを用い、「泡の細かさ」、「泡もち」についてアンケートを実施した。パネラーは回答用紙に泡の感じについての官能評価判定を記載し6段階評価として、効果が最も弱く感じられた場合は数値を1点とし、最も強い効果を感じられた場合は数値を6点とした。得られた数値を平均化した値を添加効果とし、数値が4点以上であれば効果があるとした。一方、4点未満であれば効果が認められなかったとものとした。結果を表15に示した。
【0041】
【0042】
【表15】
表15から明らかなように、本発明品を洗顔クリームに使用した場合、泡のきめが細かく、泡が減り難いという感触が得られるということが分かった。
【0043】
<試験例6> 美容クリームA
表16に示す配合にて、実施例で調製した化粧品用粉末組成物4質量%を添加して美容クリームAの62~81を調製した。
10名の官能評価パネラーを用い、アンケートを実施した。パネラーは回答用紙に肌感触の官能評価判定を記載し6段階評価として、効果が最も弱く感じられた場合は数値を1点とし、最も強い効果を感じられた場合は数値を6点とした。得られた数値を平均化した値を添加効果とし、数値が4点以上であれば効果があるとした。一方、3点未満であれば効果が認められなかったものとした。官能評価の項目は以下の通りとした。
肌感触の評価は、「塗布後にさらっとする」、「塗布後にしっとりと潤う」、「塗布後の肌馴染みが良い」の3項目で実施した。結果を表17に示した。
【0044】
【0045】
【表17】
表17から明らかなように、本発明品を美容クリームAに使用した場合、塗布後の肌感触としてさらっとしており、肌が潤う感じも得られ、肌馴染みも良いことが分かった。
【0046】
<試験例7> 美容クリームB
表18に示す配合にて、実施例で調製した化粧品用粉末組成物4質量%を添加して美容クリームBの82~101を調製した。
10名の官能評価パネラーを用い、アンケートを実施した。パネラーは回答用紙に肌感触の官能評価判定を記載し6段階評価として、効果が最も弱く感じられた場合は数値を1点とし、最も強い効果を感じられた場合は数値を6点とした。得られた数値を平均化した値を添加効果とし、数値が4点以上であれば効果があるとした。一方、3点未満であれば効果が認められなかったものとした。官能評価の項目は以下の通りとした。
肌感触の評価は、「塗布後にさらっとする」、「塗布後にしっとりと潤う」、「塗布後の肌馴染みが良い」の3項目で実施した。結果を表19に示した。
【0047】
【0048】
【表19】
表19から明らかなように、本発明品を美容クリームBに使用した場合、塗布後の肌感触としてさらっとしており、肌が潤う感じも得られ、肌馴染みも良いことが分かった。
【0049】
<試験例8> 洗顔パウダー
表20に示す配合にて、実施例で調製した化粧品用粉末組成物2質量%を添加して洗顔パウダー102~121を調製した。
10名の官能評価パネラーを用い、アンケートを実施した。パネラーは回答用紙に肌感触の官能評価判定を記載し6段階評価として、効果が最も弱く感じられた場合は数値を1点とし、最も強い効果を感じられた場合は数値を6点とした。得られた数値を平均化した値を添加効果とし、数値が4点以上であれば効果があるとした。一方、3点未満であれば効果が認められなかったものとした。官能評価の項目は以下とした。
肌感触の評価は、「泡のキメが細かい」、「泡に弾力がある」、「泡が減らない」、「洗浄後にしっとりとする」の4項目で実施した。結果を表21に示した。
【0050】
【0051】
【表21】
表21から明らかなように、本発明品を洗顔パウダーに使用した場合、泡のきめが細かく、弾力があり、泡が減らないという泡質が改善され、かつ洗浄後にしっとりとした感触が得られるということが分かった。
【0052】
<試験例9> クレンジングローション
表22に示す配合にて、実施例および比較例で調製した化粧品用粉末組成物2質量%を添加してクレンジングローション122~127を調製した。また、実施例を添加しない無添加のクレンジングローション128を調製した。
バイオスキンにウォータープルーフマスカラを塗布し、2時間以上乾燥させたのち、各クレンジングローションをマスカラの上に滴下し、指で50回マッサージをした。弱水流で軽く10回マッサージしながら洗い流した後、クレンジング前後の写真を撮影し、画像解析ソフトで単位面積当たりに除去した汚れの度合いを「マスカラ除去率(%)」として換算した。結果を表23に示した。
【0053】
【0054】
【0055】
表23から明らかなように、本発明品をクレンジングローションに使用した場合、マスカラの除去率が高くクレンジング力が向上することが分かった。 このように本実施形態の化粧品用粉末組成物によれば、界面活性剤の特徴である洗浄力や起泡力を飛躍的に高めた粉末であり、流動性が高い粉末であるため、液体化粧品のみでなく、粉末タイプの化粧品にも好適には配合できた。また、これを化粧品に用いることにより、泡質の改善・肌感触の改善・保湿機能などを高めることが可能となり、スキンケア効果、使用感、クレンジング力、洗浄力を高めるものを提供できた。