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特開2022-184336新規分岐型グリセロール誘導体およびコーティング剤
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  • 特開-新規分岐型グリセロール誘導体およびコーティング剤 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022184336
(43)【公開日】2022-12-13
(54)【発明の名称】新規分岐型グリセロール誘導体およびコーティング剤
(51)【国際特許分類】
   C07F 7/18 20060101AFI20221206BHJP
   C09K 3/18 20060101ALI20221206BHJP
   C07C 271/06 20060101ALI20221206BHJP
   C07C 331/20 20060101ALI20221206BHJP
   C07C 239/20 20060101ALI20221206BHJP
【FI】
C07F7/18 S CSP
C09K3/18 104
C07C271/06
C07C331/20
C07C239/20
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021092118
(22)【出願日】2021-06-01
(71)【出願人】
【識別番号】300067893
【氏名又は名称】有限会社ケミカル電子
(71)【出願人】
【識別番号】304020292
【氏名又は名称】国立大学法人徳島大学
(74)【代理人】
【識別番号】110002837
【氏名又は名称】弁理士法人アスフィ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山田 彰一
(72)【発明者】
【氏名】日向 敏夫
(72)【発明者】
【氏名】根本 尚夫
(72)【発明者】
【氏名】妹尾 悠生
【テーマコード(参考)】
4H006
4H020
4H049
【Fターム(参考)】
4H006AA01
4H006AB68
4H006TN90
4H020AA03
4H020AB02
4H020BA31
4H049VN01
4H049VQ19
4H049VQ39
4H049VQ40
4H049VQ49
4H049VR21
4H049VR43
4H049VU28
4H049VW02
(57)【要約】
【課題】本発明は、新規な分岐型グリセロール誘導体、当該分岐型グリセロール誘導体を有効成分として含み、基材に防曇性や防汚性などを付与するために基材の表面をコーティングできるコーティング剤、当該コーティング剤を用いる基材表面のコーティング方法、及び当該分岐型グリセロール誘導体の合成中間体化合物を提供することを課題とする。
【解決手段】本発明に係る新規分岐型グリセロール誘導体は、下記式(I)で表されることを特徴とする。
[式中、R1~R3は、独立して、炭素数1以上、6以下の炭化水素基を示し、R4とR5は、独立して、H等を示し、Xはn+1価のリンカー基を示し、nは1以上、6以下の整数を示す。]
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(I)で表されることを特徴とする分岐型グリセロール誘導体。
【化1】
[式中、
1~R3は、独立して、炭素数1以上、6以下の炭化水素基を示し、
4とR5は、独立して、H、C1-6アルコキシ-メチル基、C2-6アルケニル基、トリ(C1-6アルキル)シリル基、若しくは(Ar)p-メチル基(式中、Arは置換基を有していてもよいC6-10アリール基を示し、pは1以上3以下の整数を示す。)を示すか、又はR4とR5が結合してC1-6アルカンジイル基を形成してもよく、
Xはn+1価のリンカー基を示し、
nは1以上、6以下の整数を示し、
nが2以上の整数である場合、複数のR4およびR5は互いに同一であっても異なっていてもよい。]
【請求項2】
請求項1に記載の分岐型グリセロール誘導体を有効成分として含有することを特徴とするコーティング剤。
【請求項3】
更に水を含む請求項2に記載のコーティング剤。
【請求項4】
更に酸触媒を含む請求項2または3に記載のコーティング剤。
【請求項5】
上記式(I)で表される分岐型グリセロール誘導体の濃度が0.01mol/L以上、1mol/L以下である請求項3に記載のコーティング剤。
【請求項6】
更に界面活性剤を含む請求項2~5のいずれかに記載のコーティング剤。
【請求項7】
基材の表面をコーティングする方法であって、
請求項2~6のいずれかに記載のコーティング剤により基材の表面を処理する工程を含むことを特徴とする方法。
【請求項8】
液状の前記コーティング剤に前記基材を浸漬するか、または液状の前記コーティング剤を前記基材の表面に塗布もしくは噴霧することにより前記基材表面を処理する請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記基材がガラス製である請求項7または8に記載の方法。
【請求項10】
下記式(II)で表されることを特徴とする分岐型グリセロール誘導体。
【化2】
[式中、
6とR7は、独立して、H、C1-6アルコキシ-メチル基、C2-6アルケニル基、トリ(C1-6アルキル)シリル基、若しくは(Ar)q-メチル基(式中、Arは置換基を有していてもよいC6-10アリール基を示し、qは1以上3以下の整数を示す。)を示すか、又はR6とR7が結合してC1-6アルカンジイル基を形成してもよく、
Yは、イソシアネート基、イソチオシアネート基、オキシアミノ基、エポキシ基、ビニル基、ハロゲノ基、又はヒドラジノ基を示し、
Zはm+1価のリンカー基を示し、
mは1以上、6以下の整数を示し、
mが2以上の整数である場合、複数のR6およびR7は互いに同一であっても異なっていてもよい。]
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規な分岐型グリセロール誘導体、当該分岐型グリセロール誘導体を有効成分として含み、基材に防曇性や防汚性などを付与するために基材の表面をコーティングできるコーティング剤、当該コーティング剤を用いる基材表面のコーティング方法、及び当該分岐型グリセロール誘導体の合成中間体化合物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ガラスには、融点を下げるための炭酸ナトリウムや、水溶性を低下させるための酸化カルシウムも含まれるが、その主成分はシリカ(SiO2)である。また、硬度が高く、光沢が美しく、持続性に優れたシリカコートも注目されている。所謂ガラスコートには、防汚性も謳われていることがある。しかしシリカは、その一部がシロキシ化(Si-OH)されているが、大部分はジシリルエーテル構造(Si-O-Si)で構成されており、ジシリルエーテル構造は疎水性であるため、ガラスやシリカコートは、飽和水蒸気圧を超える水蒸気の存在により曇ったり、容易に洗浄できない親油性の汚れが付着することがある。
【0003】
そこで、酸化チタン等の光触媒を含む層で外壁などの基材を被覆して基材に防汚性を付与する技術が開発されている。しかし光触媒はバインダーである有機高分子も分解するおそれがあり、基材への定着が難しいという課題がある。また、例えば酸化チタンは白色色素としても利用されているため、酸化チタンを含む層でガラス等を被覆すると、透明性が低下するという問題がある。
【0004】
また、ガラス等の防曇および防汚のための、2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン共重合体とシリコーン系界面活性剤を含むガラス用防汚防曇処理剤(特許文献1)や、部分加水分解シリケート、シリカ粒子およびリン酸などを含むガラス用防汚防曇処理剤(特許文献2)などが開発されている。
【0005】
しかし、基材に製剤を塗布するのみでは、効果の持続性に限界がある。そこで、例えば特許文献3には、光学要素にシロキサン結合を介して共有結合的に防曇機能膜で被覆する発明が記載されている。しかしかかる防曇機能膜は、シロキサン結合により耐久性はあるかもしれないが、100以上、100000以下の粘度平均分子量を有する(メタ)アクリル系ポリマーで構成されており、この発明は(メタ)アクリル系ポリマーによるコーティング技術であるに過ぎず、基材の厚み寸法に影響を与えたり、ポリマーの分子量の均一性の問題がある。
【0006】
ところで本発明者らは、化合物の水溶性を向上させるための構造として、分岐型グリセロール構造を開発している(特許文献4)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2006-104005号公報
【特許文献2】特開2020-97693号公報
【特許文献3】特開2016-71338号公報
【特許文献4】国際公開第2004/29018号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述した様に、ガラス等の基剤の防曇や防汚のための製剤は種々知られているが、真に持続性に優れ、且つ基剤への影響が小さい製剤はこれまでになかった。
そこで本発明は、新規な分岐型グリセロール誘導体、当該分岐型グリセロール誘導体を有効成分として含み、基材に防曇性や防汚性などを付与するために基材の表面をコーティングできるコーティング剤、当該コーティング剤を用いる基材表面のコーティング方法、及び当該分岐型グリセロール誘導体の合成中間体化合物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた。その結果、分岐型グリセロール構造とトリアルコキシシリル基をリンカー基で結合した化合物であれば、少なくとも表面にポリシロキサン層を有する基材へ共有結合的に結合することができ、基材に持続的な防曇性や防汚性を付与できることを見出して、本発明を完成した。
以下、本発明を示す。
【0010】
[1] 下記式(I)で表されることを特徴とする分岐型グリセロール誘導体。
【化1】

[式中、
1~R3は、独立して、炭素数1以上、6以下の炭化水素基を示し、
4とR5は、独立して、H、C1-6アルコキシ-メチル基、C2-6アルケニル基、トリ(C1-6アルキル)シリル基、若しくは(Ar)p-メチル基(式中、Arは置換基を有していてもよいC6-10アリール基を示し、pは1以上3以下の整数を示す。)を示すか、又はR4とR5が結合してC1-6アルカンジイル基を形成してもよく、
Xはn+1価のリンカー基を示し、
nは1以上、6以下の整数を示し、
nが2以上の整数である場合、複数のR4およびR5は互いに同一であっても異なっていてもよい。]
【0011】
[2] 上記[1]に記載の分岐型グリセロール誘導体を有効成分として含有することを特徴とするコーティング剤。
[3] 更に水を含む上記[2]に記載のコーティング剤。
[4] 更に酸触媒を含む上記[2]または[3]に記載のコーティング剤。
[5] 上記式(I)で表される分岐型グリセロール誘導体の濃度が0.01mol/L以上、1mol/L以下である上記[3]に記載のコーティング剤。
[6] 更に界面活性剤を含む上記[2]~[5]のいずれかに記載のコーティング剤。
【0012】
[7] 基材の表面をコーティングする方法であって、
上記[2]~[6]のいずれかに記載のコーティング剤により基材の表面を処理する工程を含むことを特徴とする方法。
[8] 液状の前記コーティング剤に前記基材を浸漬するか、または液状の前記コーティング剤を前記基材の表面に塗布もしくは噴霧することにより前記基材表面を処理する上記[7]に記載の方法。
[9] 前記基材がガラス製である上記[7]または[8]に記載の方法。
【0013】
[10] 下記式(II)で表されることを特徴とする分岐型グリセロール誘導体。
【化2】

[式中、
6とR7は、独立して、H、C1-6アルコキシ-メチル基、C2-6アルケニル基、トリ(C1-6アルキル)シリル基、若しくは(Ar)q-メチル基(式中、Arは置換基を有していてもよいC6-10アリール基を示し、qは1以上3以下の整数を示す。)を示すか、又はR6とR7が結合してC1-6アルカンジイル基を形成してもよく、
Yは、イソシアネート基、イソチオシアネート基、オキシアミノ基、エポキシ基、ビニル基、ハロゲノ基、又はヒドラジノ基を示し、
Zはm+1価のリンカー基を示し、
mは1以上、6以下の整数を示し、
mが2以上の整数である場合、複数のR6およびR7は互いに同一であっても異なっていてもよい。]
【発明の効果】
【0014】
本発明に係るコーティング剤は、少なくとも表面にポリシロキサン層を有する基材へ共有結合的に結合することができ、持続性に優れる。また、本発明に係るコーティング剤は、基材に防曇性や防汚性を付与することができる。よって本発明に係るコーティング剤は、基材の表面性状を有効に改善できるものとして、産業上非常に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1図1は、本発明に係るコーティング剤を塗布した上で湯気にさらしたガラス試料の写真である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明に係るコーティング剤は、下記式(I)で表される分岐型グリセロール誘導体を有効成分として含有する。以下、当該化合物を「分岐型グリセロール誘導体(I)」と略記する。
【0017】
【化3】
【0018】
式(I)中、R1~R3は、独立して、炭素数1以上、6以下の炭化水素基を示す。炭化水素基としては、例えばC1-6アルキル基、C2-6アルケニル基、及びC2-6アルキニル基が挙げられる。上記炭素数が6以下であれば、分岐型グリセロール誘導体(I)の水溶性をより確実に確保することができる。上記炭素数としては、4以下が好ましく、1または2がより好ましい。
【0019】
「C1-6アルキル基」は、炭素数1以上、6以下の直鎖状または分枝鎖状の一価飽和脂肪族炭化水素基をいう。例えば、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、s-ブチル、t-ブチル、n-ペンチル、n-ヘキシル等である。好ましくはC1-4アルキル基であり、より好ましくはC1-2アルキル基であり、より更に好ましくはメチルまたはエチルである。
【0020】
「C2-6アルケニル基」は、炭素数が2以上、6以下であり、少なくとも一つの炭素-炭素二重結合を有する直鎖状または分枝鎖状の一価不飽和脂肪族炭化水素基をいう。例えば、エテニル(ビニル)、1-プロペニル、2-プロペニル(アリル)、イソプロペニル、2-ブテニル、3-ブテニル、イソブテニル、ペンテニル、ヘキセニル等である。好ましくはC2-4アルケニル基であり、より好ましくはエテニル(ビニル)または2-プロペニル(アリル)である。
【0021】
「C2-6アルキニル基」は、炭素数が2以上、6以下であり、少なくとも一つの炭素-炭素三重結合を有する直鎖状または分枝鎖状の一価不飽和脂肪族炭化水素基をいう。例えば、エチニル、1-プロピニル、2-プロピニル、2-ブチニル、3-ブチニル、ペンチニル、ヘキシニル等である。好ましくはC2-4アルキニル基であり、より好ましくはC2-3アルキニル基である。
【0022】
1~R3は、例えばトリアルコキシシリル基の加水分解速度に基づいて適切に選択することができる。一般的に、金属アルコキシドの加水分解速度は、低級アルコキシドほど速く、アルキル基に分岐があったり立体障害が大きいほど速い。具体的には、第三級アルキル基を有する金属アルコキシドの加水分解速度はより速く、第一級アルキル基を有する金属アルコキシドの加水分解速度はより遅い。よって、本発明に係る分岐型グリセロール誘導体(I)の所望の反応性に基づいて、R1~R3を選択することができる。
【0023】
式(I)中、R4とR5は、独立して、H、C1-6アルコキシ-メチル基、C2-6アルケニル基、トリ(C1-6アルキル)シリル基、若しくは(Ar)p-メチル基(式中、Arは置換基を有していてもよいC6-10アリール基を示し、pは1以上3以下の整数を示す。)を示すか、又はR4とR5が結合してC1-6アルカンジイル基を形成してもよく、nが2以上の整数である場合、複数のR4およびR5は互いに同一であっても異なっていてもよい。H以外のR4とR5は、水酸基の保護基であって、酸で容易に除去できるものである。
【0024】
「C1-6アルコキシ基」とは、炭素数1以上、6以下の直鎖状または分枝鎖状の飽和脂肪族炭化水素オキシ基をいう。例えば、メトキシ、エトキシ、n-プロポキシ、イソプロポキシ、n-ブトキシ、イソブトキシ、t-ブトキシ、n-ペントキシ、n-ヘキソキシ等であり、好ましくはC1-4アルコキシ基であり、より好ましくはC1-2アルコキシ基であり、より更に好ましくはメトキシである。
【0025】
1-6アルコキシ-メチル基としては、例えば、メトキシメチルやエトキシメチルが挙げられる。
【0026】
「C2-6アルケニル基」は、炭素数が2以上、6以下であり、少なくとも一つの炭素-炭素二重結合を有する直鎖状または分枝鎖状の一価不飽和脂肪族炭化水素基をいう。例えば、エテニル(ビニル)、1-プロペニル、2-プロペニル(アリル)、イソプロペニル、2-ブテニル、3-ブテニル、イソブテニル、ペンテニル、ヘキセニル等である。好ましくは、脱保護され易い-CH2-CH=CH-R10(式中、R10はHまたはC1-3アルキル基を示す。)が好ましく、2-プロペニル(アリル)がより好ましい。
【0027】
(Ar)p-メチル基中、pとしては、脱保護のし易さから、2または3が好ましく、3がより好ましい。C6-10アリール基としては、フェニル、インデニル、及びナフチルが挙げられ、フェニルが好ましい。C6-10アリール基が有していてもよい置換基としては、例えば、C1-6アルコキシ基、ハロゲノ基、シアノ基、及びニトロ基から選択される1以上の置換基が挙げられる。「ハロゲノ基」としては、フルオロ、クロロ、ブロモおよびヨードを例示することができ、クロロまたはブロモが好ましく、クロロがより好ましい。(Ar)p-メチル基としては、例えば、ベンジル、p-メトキシベンジル、3,4-ジメトキシベンジル、o-ニトロベンジル、p-ニトロベンジル、p-ハロベンジル、p-シアノベンジル等のモノアリールメチル基;ジフェニルメチル等のジアリールメチル基;トリフェニルメチル、α-ナルチルジフェニルメチル、p-メトキシフェニルジフェニルメチル、ジ(p-メトキシフェニル)フェニルメチル、トリ(p-メトキシフェニル)メチル等のトリアリールメチル基が挙げられる。
【0028】
トリ(C1-6アルキル)シリル基としては、例えば、トリメチルシリル、トリエチルシリル、トリイソプロピルシリル、ジメチルイソプロピルシリル、ジエチルイソプロピルシリル、ジメチルテキシルシリル、t-ブチルジメチルシリルが挙げられる。
【0029】
「nが2以上の整数である場合、複数のR4およびR5は互いに同一であっても異なっていてもよい」とは、nが2以上の整数であり、式(I)の角括弧内の分岐型グリセロール構造が2以上存在する場合、複数のR4および複数のR5がそれぞれ同一であっても異なっていてもよいことを意味する。R4とR5は、もちろん互いに同一であっても異なっていてもよい。
【0030】
4とR5が結合してC1-6アルカンジイル基を形成する場合、式(I)の角括弧内の分岐型グリセロール構造は、下記式(III)で表される構造を有する。
【0031】
【化4】
【0032】
式(III)中、R8とR9は、独立して、H、又はC1-6アルキル基を示す。かかる1,3-ジオール基の保護基は、比較的容易に除去可能である。
【0033】
式(III)中、R8とR9は、一方がHであり他方がC1-6アルキル基であることが好ましい。分岐型グリセロール単位の環状保護基に関して、R8とR9の両方がC1-6アルキル基である保護基が最も穏和な条件で脱保護することができ、その結果、リンカー基などに影響を与えることなく脱保護することが可能である。一方、R8とR9の両方がHである環状保護基が最も脱保護し難く、R8とR9の一方がHであり他方がC1-6アルキル基である環状保護基の脱保護のし易さの程度は、上記保護基の中間である。
【0034】
式(I)中、Xはn個の分岐型グリセロール構造とトリアルコキシシリル基とを結合するn+1価のリンカー基を示し、分岐型グリセロール誘導体(I)の合成を容易にしたり、分岐型グリセロール構造の位置的自由度を高めたりするといった作用を有する。リンカー基は、かかる作用を示すものであれば特に制限されないが、例えば、置換基を有していてもよいC1-6アルカンジイル基、置換基を有していてもよいC1-6アルカントリイル基、エーテル基(-O-)、チオエーテル基(-S-)、アミノ基(>N-または-NH-)、カルボニル基(-C(=O)-)、チオカルボニル基(-C(=S)-)、エステル基(-O-C(=O)-または-C(=O)-O-)、チオエステル基(-S-C(=O)-または-C(=O)-S-)、チオノエステル基(-O-C(=S)-または-C(=S)-O-)、アミド基(-NH-C(=O)-または-C(=O)-NH-)、チオアミド基(-NH-C(=S)-または-C(=S)-NH-)、ウレア基(-NH-C(=O)-NH-)、チオウレア基(-NH-C(=S)-NH-)、イミノエーテル基(-C=N-O-または-O-N=C-)、ポリアルキレングリコール基、及びポリビニルアルコール基;及び、2以上、5以下のこれら基が連結された基が挙げられる。連結された基としては、例えば、エーテル基、チオエーテル基、アミノ基、カルボニル基、チオカルボニル基、エステル基、チオエステル基、チオノエステル基、アミド基、チオアミド基、ウレア基、チオウレア基、イミノエーテル基、ポリアルキレングリコール基、及びポリビニルアルコール基からなる群より選択される基を一端、両端および/または中間部に有し、置換基を有していてもよいC1-6アルカンジイル基や、エーテル基、チオエーテル基、アミノ基、カルボニル基、チオカルボニル基、エステル基、チオエステル基、チオノエステル基、アミド基、チオアミド基、ウレア基、チオウレア基、イミノエーテル基、ポリアルキレングリコール基、及びポリビニルアルコール基からなる群より選択される基を1以上、3以下の端部および/または中間部に有し、置換基を有していてもよいC1-6アルカントリイル基を挙げることができる。
【0035】
1-6アルカンジイル基およびC1-6アルカントリイル基が有していてもよい置換基としては、例えば、水酸基、C1-6アルコキシ基、及びハロゲノ基から選択される1以上の置換基が挙げられる。置換基の数は、置換可能であれば特に制限されないが、例えば、1以上、5以下とすることができ、3以下が好ましく、2以下がより好ましく、1がより更に好ましい。
【0036】
分岐型グリセロール誘導体(I)は、2個以上の分岐型グリセロール単位をグリセロール構造で連結するデンドリマー構造を含むものであってもよい。かかるデンドリマー構造としては、以下のものを挙げることができる。左側は、n=2で且つXが3価のリンカー基であるデンドリマー構造であり、右側は、n=4で且つXが5価のリンカー基であるデンドリマー構造である。
【0037】
【化5】
【0038】
式(I)において、括弧内の構造を「分岐型グリセロール単位」という場合がある。式(I)中、nは分岐型グリセロール単位の個数であり、1以上、5以下の整数を示す。nが1以上であれば、分岐型グリセロール誘導体(I)の親水性を確保することができ、nが5以下であれば、分岐型グリセロール誘導体(I)の製造コストを有効に抑制できる。nとしては2以上が好ましく、また、4以下が好ましく、2がより好ましい。
【0039】
分岐型グリセロール誘導体(I)は、比較的シンプルな構造を有するため、当業者であれば容易に合成可能である。例えば、分岐型グリセロール誘導体(I)は、分岐型グリセロール誘導体(II)と、トリアルコキシシラン化合物とを反応させることにより製造することができる。
【0040】
【化6】
【0041】
式(II)中、R6とR7は、独立して、H、C1-6アルコキシ-メチル基、C2-6アルケニル基、トリ(C1-6アルキル)シリル基、若しくは(Ar)q-メチル基(式中、Arは置換基を有していてもよいC6-10アリール基を示し、qは1以上3以下の整数を示す。)を示すか、又はR6とR7が結合してC1-6アルカンジイル基を形成してもよく、Yは、イソシアネート基、イソチオシアネート基、オキシアミノ基、エポキシ基、ビニル基、ハロゲノ基、又はヒドラジノ基を示し、Zはm+1価のリンカー基を示し、mは1以上、6以下の整数を示し、mが2以上の整数である場合、複数のR6およびR7は互いに同一であっても異なっていてもよい。
【0042】
式(II)中、R6とR7は、式(I)のR4とR5と同義を示す。Zも、式(I)のXと同様のリンカー基を示すが、Xの内、分岐型グリセロール構造とトリアルコキシシリル基とを結合するトリアルコキシシリル基側端部以外の基に相当する。
【0043】
当業者であれば、式(I)中の分岐型グリセロール構造とトリアルコキシシリル基とを結合する基に応じて、分岐型グリセロール誘導体(II)とトリアルコキシシラン化合物を選択することができる。例えば、当該結合基がチオエーテル基である場合、下記反応式(式中、Zはリンカー基を示す)のように、エポキシ基に対するチオール基の求核付加反応や、チオール-エン反応により分岐型グリセロール誘導体(I)を製造することができる。但しこの場合には、R4とR5はHでないことが好ましい。
【0044】
【化7】
【0045】
本発明に係るコーティング剤は、水を含むことが好ましい。水は、トリアルコキシシリル基の加水分解や、分岐型グリセロール構造の脱保護の促進に有効な成分である。但し本発明に係るコーティング剤は、実質的に分岐型グリセロール誘導体(I)のみからなるものであり、使用前に水に溶解または分散するものであってもよい。
【0046】
本発明に係るコーティング剤は、分岐型グリセロール誘導体(I)の溶解性の観点から、溶媒として水に加えて水混和性有機溶媒を含んでもよい。水混和性有機溶媒は、水と無制限に混和できる有機溶媒をいう。水混和性有機溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、2-プロパノール等のC1-3アルコール溶媒;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等のアミド系溶媒;ジメチルスルホキシド等のスルホキシド系溶媒が挙げられる。溶媒として水と水混和性有機溶媒との混合溶媒を用いる場合、混合溶媒における水の割合としては50質量%以上、60質量%以上または70質量%以上が好ましく、80質量%以上または90質量%以上がより好ましく、95質量%以上または98質量%以上がより更に好ましい。本発明に係るコーティング剤の溶媒としては、実質的に水のみが好ましい。なお、本開示において「実質的に~のみ」とは、不可避的不純物や不可避的混入物以外、他の成分を意図的に添加しないことをいう。
【0047】
溶媒を含む本発明のコーティング剤における分岐型グリセロール誘導体(I)の濃度は、0.01mol/L以上、1mol/L以下とすることができる。当該濃度が0.01mol/L以上であれば、分岐型グリセロールにより基材をより確実に被覆することができる。一方、当該濃度が1mol/L以下であれば、分岐型グリセロール誘導体(I)を溶媒中に有効に溶解または分散することができる。前記濃度としては、0.02mol/L以上が好ましく、0.05mol/L以上がより好ましく、また、0.5mol/L以下が好ましく、0.2mol/L以下がより好ましい。また、運搬費用の観点から、固形のコーティング剤や比較的高濃度の分岐型グリセロール誘導体(I)の溶液または分散液を製品として出荷し、使用時に溶解、分散または希釈してもよい。
【0048】
本発明に係るコーティング剤は、酸触媒を含んでいてもよい。酸触媒は、水と共に、トリアルコキシシリル基の加水分解や分岐型グリセロール構造の脱保護を促進する。酸触媒としては、例えば、塩化水素、リン酸、硝酸などが挙げられる。
【0049】
本発明のコーティング剤における酸触媒の濃度は適宜調整すればよいが、例えば、溶媒を含むコーティング剤に対して0.005質量%以上、1質量%以下とすることができる。当該濃度が0.005質量%以上であれば、トリアルコキシシリル基の加水分解や分岐型グリセロール構造の脱保護をより確実に促進することができ、1質量%以下であれば、酸の残留をより確実に抑制することができる。
【0050】
本発明に係るコーティング剤は、界面活性剤を含んでいてもよい。界面活性剤は、分岐型グリセロール誘導体(I)の溶解性や分散性を高め、液状のコーティング剤を安定化したり、液状のコーティング剤の狭小部分への侵入を促進する作用を有する。界面活性剤としては、非イオン界面活性剤、陰イオン界面活性剤、陽イオン界面活性剤、両性界面活性剤のいずれも用いることができる。
【0051】
非イオン界面活性剤としては、例えば、POEラウリルアミン等のポリオキシエチレンアルキルアミン;POEラウリルエーテル、POEセチルエーテル等のポリオキシエチレンアルキルエーテル;モノステアリン酸グリセリル等のグリセリン脂肪酸エステル;モノラウリン酸ソルビタン等のソルビタン脂肪酸エステルが挙げられる。なお、「POE」はポリオキシエチレンの略である。
【0052】
陰イオン界面活性剤としては、例えば、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸カリウム、ラウリル硫酸アンモニウム、ラウリル硫酸マグネシウム、ラウリル硫酸モノエタノールアミン、ミリスチル硫酸ナトリウム、ステアリル硫酸ナトリウム、オレイル硫酸ナトリウム等のアルキル硫酸エステル塩;POE(2)ラウリルエーテル硫酸ナトリウム、POE(3)ミリスチルエーテル硫酸ナトリウム等のアルキルエーテル硫酸エステル塩;ヤシ油脂肪酸メチルタウリンカリウム、ラウロイルメチルタウリンナトリウム等のN-アシルメチルタウリン塩;ヤシ油脂肪酸アシルグルタミン酸等のN-アシルグルタミン酸塩;ラウロイルメチルアラニンナトリウム等のN-アシルメチルアラニン塩;ラウロイルサルコシンナトリウム等のN-アシルサルコシン塩;ステアロイル乳酸ナトリウム等のアシル乳酸塩;ヤシ油脂肪酸カリウム、ラウリン酸カリウム、ラウリン酸トリエタノールアミン等の脂肪酸塩などが挙げられる。なお、「POE」はポリオキシエチレンの略であり、カッコ内の数字は付加モル数を示す。
【0053】
陽イオン界面活性剤としては、例えば、塩化ラウリルトリメチルアンモニウム、臭化ステアリルトリメチルアンモニウム、塩化ジココイルジメチルアンモニウム等のアルキル4級アンモニウム塩、ジメチルステアリルアミン、ステアリン酸ジエチルアミノエチルアミド等のアミン塩が挙げられる。
【0054】
両性界面活性剤としては、例えば、ベタインなどが挙げられる。
【0055】
本発明のコーティング剤における界面活性剤の濃度は適宜調整すればよいが、例えば、溶媒を含むコーティング剤に対して0.005質量%以上、5質量%以下とすることができる。
【0056】
本発明のコーティング剤で少なくとも表面にポリシロキサン層を有する基材の表面を処理することにより、脱保護された分岐型グリセロール構造をポリシロキサン層に共有結合させることができる。少なくとも表面にポリシロキサン層を有する基材には、主にポリシロキサンで構成されているガラスも含まれる。ポリシロキサン構造には、親水性のシロキシ基(HO-Si-OHやSi-OH)が一部存在するが、大部分は疎水性のジシリルエーテル(Si-O-Si)で構成されている。よって、おそらくポリシロキサン層に飽和蒸気圧を超える水蒸気が付着すると、界面張力のため水蒸気が球状に凝集して曇ると考えられる。それに対して、本発明のコーティング剤でポリシロキサン層をコーティングすれば、脱保護された分岐型グリセロール構造により水の界面張力が低下し、水がポリシロキサン層に広く薄く広がって曇らないと考えられる。また、親油性の汚れが付着し難くなったり、いったん付着した汚れも水洗により容易に除去できると考えられる。
【0057】
少なくとも表面にポリシロキサン層を有する基材としては、ガラスの他、ポリシロキサン層で表面が被覆された基材が挙げられる。
【0058】
本発明のコーティング剤で基材の表面を処理する条件は特に制限されない。例えば、液状のコーティング剤に基材を浸漬するか、または液状のコーティング剤を基材の表面に塗布もしくは噴霧すればよい。次いで、コーティング剤の乾燥、トリアルコキシシリル基の加水分解と基材のポリシロキサン構造への加水分解、また分岐型グリセロール構造の脱保護の促進のため、基材を加熱することが好ましい。加熱温度としては、例えば、40℃以上、150℃以下とすることができ、加熱時間としては、例えば、10分間以上、50時間以下とすることができる。かかる処理により、分岐型グリセロール誘導体(I)のトリアルコキシシリル基が加水分解されて基材のポリシロキサンと共有結合し、且つ分岐型グリセロール構造が脱保護されることにより、基材表面に防曇性と防汚性が付与されると考えられる。よって、副生成物などの除去などのために、次いで基材の表面を洗浄してもよく、更に乾燥してもよい。
【実施例0059】
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はもとより下記実施例によって制限を受けるものではなく、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも勿論可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。
【0060】
実施例1
(1)(2S,5s)-2-メチル-5-(3-(((2R,5s)-2-メチル-1,3-ジオキサン-5-イル)オキシ)-2-(オキシラン-2-イルメトキシ)プロポキシ)-1,3-ジオキサンの合成
【0061】
【化8】
【0062】
化合物1(877mg,3mmol,WO2020/255741参照)を50wt%水酸化ナトリウム水溶液(10mL,5g,125mmol)に懸濁し、得られた懸濁液に臭化テトラブチルアンモニウム(193mg,0.6mmol)を加え、0℃下で撹拌しながら、エピクロロヒドリン(0.941mL,1.11g,12mmol)を加えた。添加から10分後、この反応液を35℃の油浴に浸け、4時間撹拌した。得られた混合物を水(20mL)に注ぎ、更にジクロロメタン(30mL)を加えて分液した。得られた有機相を水(10mL)で2回、飽和食塩水(10mL)で1回洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥し、濃縮することにより薄黄色オイル状の粗製物を得た。その後、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離液:酢酸エチル/アセトン=4/1)で精製し、オイル状の目的化合物2(780mg,2.23mmol,収率:74%)を得た。
FT-IR(neat):2990,2862,2783,2723,2663,1442,1407,1341,1282,1244,1154,1093,1051,987,952,896,858,822,806,759cm-1
1H NMR(CDCl3,500MHz):δ4.71(q,J=5.0Hz,2H,((-O-)2CH-CH32),4.22-4.12,(m,4H,four of (-CH(-CH2-)22),3.99(dd,J=3.0,12.0Hz,1H,one of epoxy-CH2-O-),3.86-3.78(m,5H,four of (-CH(-CH2-)22,-O-CH(-CH2-)2),3.73(dd,J=2.5,4.5Hz,2H×0.5(異性体の一方)、-CH2-),3.71(dd,J=2.5,4.5,2H×0.5(異性体のもう他方)、-CH2-),3.68-3.63(m,2H-CH2-),3.66(ddd,J=5.5,6.5,10.5Hz,2H,two of -CH(-CH2-)2),3.60(dd,J=6.0,12.0Hz,1H,one of epoxy-CH2-O-),3.29-3.25(m,2H,(-O-CH(-CH2-)2),3.19-3.14(m,1H,[CH-epoxy]),2.78(dd,J=4.5,5.0Hz,1H,one of [CH2-epoxy]),2.63(dd,J=3.0,5.0Hz,1H,one of [CH2-epoxy]),1.33(d,J=5.0Hz,6H,((-O-)2CH-CH32
13C NMR(CDCl3,125MHz):δ99.1(CH×2,((-O-)2CH-CH32),78.9(CH,-CH2-O-CH(-CH2-)2),71.5(CH2,epoxy-CH2-O-),71.3(CH,(-CH(-CH2-)22),71.3(CH,(-CH(-CH2-)22),68.7(CH2,one of (-CH(-CH2-)22),68.6(CH2×3,three of (-CH(-CH2-)22),68.4(CH2,one of -CH(-CH2-)2),68.4(CH2,-CH(-CH2-)2),51.0(CH,epoxy),44.4(CH2,epoxy),21.0(CH3×2,((-O-)2CH-CH32
HRMS(ESI-TOF) m/z calcd for C1628NaO8 [M+Na]+ 371.1682 found 371.1683
【0063】
(2)4,4-ジエトキシ-14-(((2R,5s)-2-メチル-1,3-ジオキサン-5-イル)オキシ)-13-((((2S,5s)-2-メチル-1,3-ジオキサン-5-イル)オキシ)メチル)-3,12-ジオキサ-8-チア-4-シラテトラデカン-10-オールの合成
【0064】
【化9】
【0065】
化合物2(761mg,2.18mmol)に臭化テトラブチルアンモニウム(35mg,0.11mmol)と(3-メルカプトプロピル)トリエトキシシラン(625mg,2.62mmol)を加え、60℃で11時間撹拌した。その後、混合液をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離液:酢酸エチル/アセトン=10/1)に付し、薄く白濁したオイル状の目的化合物3(999mg,1.7mmol,収率:78%)を得た。
FT-IR(neat):3481,2974,2924,2883,2784,2729,2661,1640,1455,1443,1408,1391,1363,1341,1282,1244,1154,1097,986,958,896,859,803cm-1
1H NMR(CDCl3,500MHz):δ4.72(q,J=5.0Hz,2H,((-O-)2CH-CH32),4.24-4.10(m,4H,four of (-CH(-CH2-)22),3.91-3.80(m,4H,four of (-CH(-CH2-)22),3.82(q,J=7.0Hz,6H,(CH3-CH2-O-)3Si-),3.75-3.58(m,8H,-CH2-CH(-OH)-CH2-,-CH(-OH)-CH2-O-,-CH2-O-CH(-CH2-)2,-CH2-O-CH(-CH2-)2),3.26-3.21(m,2H,(-O-CH(-CH2-)22),2.63(d,J=6.5Hz,2H,-S-CH2-CH-),2.57(t,J=7.0Hz,2H,-CH2-CH2-S-),2.04(br,s,1H,-CH2-CH(-OH)-CH2-),1.74-1.65(m,2H,-Si-CH2-CH2-CH2-),1.34(d,J=5.0Hz,6H,((-O-)2CH-CH32),1.22(t,J=7.0Hz,9H,(CH3-CH2-O-)3Si-),0.77-0.69(m,2H,-Si-CH2-CH2-)
13C NMR(CDCl3,125MHz):δ99.1(CH×2,((-O-)2CH-CH32),78.9(CH,-CH2-O-CH(-CH2-)2),73.8(CH2,-CH(-OH)-CH2-O-),71.3(CH,one of (-CH(-CH2-)22),71.2(CH,one of (-CH(-CH2-)22),69.9(CH,-CH2-CH(-OH)-CH2-),68.8(CH2,one of -CH(-CH2-)2),68.7(CH2,one of -CH(-CH2-)2),68.6(CH2,one of -CH(-CH2-)2),68.6(CH2,one of -CH(-CH2-)2),68.2(CH2,one of -CH(-CH2-)2),68.0(CH2,one of -CH(-CH2-)2),58.4(CH2×3,(CH3-CH2-O-)3Si-,35.8(CH2,one of -CH2-S-CH2-),35.0(CH2,one of -CH2-S-CH2-),23.2(CH2,-Si-CH2-CH2-CH2-),21.0(CH3,(-O-)2CH-CH3),21.0(CH3,(-O-)2CH-CH3),18.3(CH3×3,(CH3-CH2-O-)3Si-),9.9(CH2,Si-CH2-CH2-CH2-)
HRMS(ESI-TOF) m/z calcd for C2550NaO11SSi [M+Na]+ 609.2741 found 609.2748
【0066】
実施例2
(1)5,5’-((2-(アリルオキシ)プロパン-1,3-ジイル)ビス(オキシ))ビス(2,2-ジメチル-1,3-ジオキサン)の合成
【0067】
【化10】
【0068】
すり潰した水酸化カリウム(190mg,3.4mmol)を化合物4(641mg,2mmol)に加え、160℃で2分間撹拌して琥珀色のほぼ均一溶液とした。反応液の温度を室温に戻し、臭化アリル(0.508mL,725mg,6mmol)を加え、70℃で1.5時間撹拌した。
得られた懸濁液を、水(40mL)に発熱に注意しつつ加えた。酢酸エチル(40mL)で抽出し、水で2回、飽和炭酸水素ナトリウム水で1回洗浄した。有機層を濃縮することにより、薄黄色のオイル状の粗製物(640mg)を得た。得られた粗製物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離液:ヘキサン/酢酸エチル=1/1)に付し、オイル状の目的化合物5(585mg,1.62mmol,収率:81%)を得た。
FT-IR(neat):3076,2992,2939,2872,1646,1455,1425,1372,1333,1283,1250,1227,1199,1153,1096,1043,997,936,831,732cm-1
1H NMR(CDCl3,400MHz):δ5.89(ddt,J=5.6,10.4,17.2Hz,1H,CH2=CH-CH2-),5.27(tdd,J=1.6,1.6,17.2Hz,1H,one of CH2=CH-),5.17(tdd,J=1.6,1.6,10.4Hz,1H,one of CH2=CH-),4.13(ddd,J=1.6,1.6,5.6Hz,2H,=CH-CH2-O-),4.00-3.92(m,4H,four of (-CH(-CH2-)22),3.75(dd,J=2.0,6.4Hz,2H,two of -CH(-CH2-)2),3.72(dd,J=2.0,6.4Hz,2H,two of -CH(-CH2-)2),3.66-3.52(m,5H,-CH(-CH2-)2),-O-CH(-CH2-)2),3.47(tt,J=4.4,5.2Hz,2H,(-O-CH(-CH2-)22),1.43(s,6H,six of ((-O-)2C(-CH322),1.40(s,6H,six of ((-O-)2C(-CH322
13C NMR(CDCl3,125MHz):δ134.9(CH,CH2=CH-CH2-),116.9(CH2,CH2=CH-),98.0(C×2,((-O-)2C(-CH322),77.1(CH,-O-CH(-CH2-)2),71.4(CH2,=CH-CH2-O-),70.9(CH×2,(-O-CH(-CH2-)22),68.6(CH2×2,-CH(-CH2-)2),62.5(CH2×2,-CH(-CH2-)2),62.5(CH2×2,-CH(-CH2-)2),24.4(CH3×2,two of ((-O-)2C(-CH322),22.6(CH3×2,two of ((-O-)2C(-CH322
HRMS(ESI-TOF) m/z calcd for C1832NaO7 [M+Na]+ 383.2046 found 383.2037
【0069】
(2)14-((2,2-ジメチル-1,3-ジオキサン-5-イル)オキシ)-13-(((2,2-ジメチル-1,3-ジオキサン-5-イル)オキシ)メチル)-4,4-ジエトキシ-3,12-ジオキサ-8-チア-4-シラテトラデカンの合成
【0070】
【化11】
【0071】
化合物5(256mg,0.71mmol)に(3-メルカプトプロピル)トリエトキシシラン(0.256mL,254mg,1.07mmol)とAIBN(12mg,0.071mmol)を加え、60℃で1時間撹拌した。
混合液をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離液:ヘキサン/酢酸エチル=3/2)に付し、オイル状の目的化合物6(370mg,0.62mmol,収率:85%)を得た。
FT-IR(neat):2973,2925,2878,1455,1372,1334,1294,1250,1227,1199,1156,1102,1044,997,960,831,789,733cm-1
1H NMR(CDCl3,400MHz):δ3.97(dd,J=4.4,11.6Hz,4H,four of (-CH(-CH2-)22),3.81(q,J=6.8Hz,6H,(CH3-CH2-O-)3Si-),3.73(dd,J=1.6,6.8Hz,2H,two of -CH(-CH2-)2),3.71(dd,J=1.6,6.8Hz,2H,two of -CH(-CH2-)2),3.65(t,J=6.4Hz,2H,-CH2-CH2-O-),3.61-3.50(m,5H,-CH(-CH2-)2),-O-CH(-CH2-)2),3.46(tt,J=4.4,6.4Hz,2H,(-O-CH(-CH2-)22),2.57(t,J=7.2Hz,2H,-S-CH2-CH2-CH2-O-),2.52(t,J=7.6Hz,2H,Si-CH2-CH2-CH2-S-),1.82(tt,J=6.4,7.2Hz,2H,-S-CH2-CH2-CH2-O-),1.75-1.63(m,2H,Si-CH2-CH2-CH2-S-),1.43(s,6H,six of ((-O-)2C(-CH322),1.40(s,6H,six of ((-O-)2C(-CH322),1.23(t,J=6.8Hz,9H,(CH3-CH2-O-)3Si-),0.77-0.69(m,2H,-Si-CH2-CH2-)
13C NMR(CDCl3,125MHz):δ98.1(C×2,((-O-)2C(-CH322),78.1(CH,-O-CH(-CH2-)2-),71.0(CH×2,(-CH(-CH2-O-)2C-)2),68.9(CH2,-CH2-CH2-O-),68.6(CH2×2,-CH(-CH2-)2),62.6(CH2×2,two of (-CH(-CH2-)22),62.6(CH2×2,two of (-CH(-CH2-)22),58.4(CH2,one of (CH3-CH2-O-)3Si-), 58.4 (CH2, one of (CH3-CH2-O-)3Si-),58.3(CH2,one of (CH3-CH2-O-)3Si-),35.1(CH2,-S-CH2-CH2-CH2-O-),29.9(CH2,Si-CH2-CH2-CH2-S-),28.5(CH2,-S-CH2-CH2-CH2-O-),24.5(CH3×2,two of ((-O-)2C(-CH322),23.2(CH2,Si-CH2-CH2-CH2-S-),22.6(CH3×2,two of ((-O-)2C(-CH322),18.3(CH3×3,(CH3-CH2-O-)3Si-),9.9(CH2,-Si-CH2-CH2-)
HRMS(ESI-TOF) m/z calcd for C2754NaO10SSi [M+Na]+ 621.3105 found 621.3113
【0072】
実施例3: 4,4-ジエトキシ-14-(((2R,5s)-2-メチル-1,3-ジオキサン-5-イル)オキシ)-13-((((2S,5s)-2-メチル-1,3-ジオキサン-5-イル)オキシ)メチル)-3,8-ジオキサ-12-チア-4-シラテトラデカン-10-オールの合成
【0073】
【化12】
【0074】
化合物7(118mg,0.41mmol)をアセトニトリル(0.41mL,320mg,7.8mmol)に溶解した溶液に、トリエトキシ(3-グリシジルオキシプロピル)シラン(125μL,126mg,0.41mmol)とテトラブチルアンモニウムブロマイド(26mg,0.082mmol)をこの順で加え、60℃で16時間撹拌した。得られた混合液を濃縮後、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離液:酢酸エチルのみ)に付し、オイル状の目的化合物8(96mg,0.16mmol,収率:40%)を得た。
FT-IR(neat):3471,2974,2917,2866,2784,2729,2660,2360,1632,1442,1409,1368,1282,1244,1154,1088,985,955,896,858,810cm-1
1H NMR(CDCl3,500MHz):δ4.71(q,J=5.0Hz,2H,((-O-)2CH-CH32),4.23-4.11(m,4H,four of (-CH(-CH2-)22),4.00-3.91(m,1H,-CH2-CH(-OH)-CH2-),3.87-3.72(m,8H,four of (-CH(-CH2-)22,-S-CH(-CH2-)2),3.82(q,J=7.0Hz,6H,CH3-CH2-O-)3Si-),3.48(dd,J=4.5,9.5Hz,1H,one of -CH2-CH2-O-),3.46(dd,J=6.0,9.5Hz,1H,one of -CH2-CH2-O-),3.44(t,J=6.5Hz,2H,-O-CH2-CH(-OH)-),3.28-3.21(m,2H,(-O-CH(-CH2-)22),3.15(quint,J=6.0Hz,1H,-S-CH(-CH2-)2),2.87(dd,J=6.0,14.0Hz,1H,one of -CH(-OH)-CH2-S-),2.77(dd,J=7.5,14.0Hz,1H,one of -CH(-OH)-CH2-S-),1.74-1.65(m,2H,-Si-CH2-CH2-CH2-),1.34(d,J=5.0Hz,3H,(-O-)2CH-CH3),1.33(d,J=5.0Hz,3H,(-O-)2CH-CH3),1.22(t,J=7.0Hz,9H,(CH3-CH2-O-)3Si-),0.66-0.60(m,2H,-Si-CH2-CH2-)
13C NMR(CDCl3,125MHz):δ99.2(CH,one of ((-O-)2CH-CH32),99.2(CH,one of ((-O-)2CH-CH32),73.7(CH2,-CH2-CH2-O-),73.3(CH2,-O-CH2-CH(-OH)-),71.2(CH,one of (-O-CH(-CH2-)22),71.2(CH,one of (-O-CH(-CH2-)22),70.0(CH,-CH2-CH(-OH)-CH2-),69.7(CH2,one of -S-CH(-CH2-)2),69.6(CH2,one of -S-CH(-CH2-)2),68.7(CH2,one of -O-CH(-CH2-)2),68.7(CH2,one of -O-CH(-CH2-)2),68.2(CH2,one of -O-CH(-CH2-)2),68.1(CH2,one of -O-CH(-CH2-)2),58.4(CH2×3,(CH3-CH2-O-)3Si-),45.8(CH,-S-CH(-CH2-)2),35.9(CH2,-CH(-OH)-CH2-S-),22.9(CH2,-Si-CH2-CH2-CH2-),21.0(CH3,one of ((-O-)2CH-CH32),21.0(CH3,one of ((-O-)2CH-CH32),18.3(CH3×3,(CH3-CH2-O-)3Si-),6.5(CH2,-Si-CH2-CH2-)
HRMS(ESI-TOF) m/z calcd for C2550NaO11SSi [M+Na]+ 609.2741 found 609.2749
【0075】
実施例4
(1)1-((1,3-ビス(((2R,5s)-2-メチル-1,3-ジオキサン-5-イル)オキシ)プロパン-2-イル)オキシ)-3-((1,3-ビス(((2S,5s)-2-メチル-1,3-ジオキサン-5-イル)オキシ)プロパン-2-イル)オキシ)プロパン-2-オールの合成
【0076】
【化13】
【0077】
化合物1(26.3g,90mmol)、テトラブチルアンモニウムブロマイド(1.45g,4.5mmol)、水酸化カリウム(3.79g,67.5mmol)、及びトルエン(22.5mL,18g,195mmol)の混合液を80℃下で撹拌し、均一溶液になった後に室温に戻した。当該溶液を撹拌しながら、約10℃の水浴下、エピクロロヒドリン(1.76mL,2.08g,22.5mmol)を5分間かけて加えた。その後、室温で2時間、40℃で24時間撹拌させた。
得られた混合液を濃縮し、酢酸エチル(100mL)を加え濾過した後、濃縮した。減圧蒸留により過剰に使用した化合物1を回収した後、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離液:ジクロロメタン/アセトン=3/2~1/2)で精製することにより、オイル状の目的化合物9(6.3g,9.8mmol,エピクロロヒドリンを基準とする収率:43%)を得た。
FT-IR(neat):3481,2991,2863,2783,2726,2661,1455,1442,1407,1342,1282,1243,1154,1092,1051,986,953,895,858,822,805,753,665cm-1
1H NMR(CDCl3,500MHz):δ4.71(q,J=5.0Hz,4H,(((-O-)2CH-CH322),4.23-4.08(m,8H,eight of ((-CH(-CH2-)222),3.97-3.88(m,1H,HO-CH(-CH2-)2),3.87-3.52(m,22H,eight of ((-CH(-CH2-)222,(-CH(-CH2-)22,HO-CH(-CH2-)2,(-CH(-CH2-)22),3.30-3.22(m,4H,((-CH(-CH2-)222),1.33(dd,J=5.0Hz,12H,(((-O-)2CH-CH322
13C NMR(CDCl3,125MHz):δ99.0(CH×4,(((-O-)2CH-CH322),78.8(CH×2,(-CH(-CH2-)22),72.0(CH2×2,(HO-CH(-CH2-)2),71.1(CH×2,(-CH(-CH2-)22),71.1(CH×2,(-CH(-CH2-)22),69.6(CH,HO-CH(-CH2-)2),68.6(CH2×2,-CH(-CH2-)2),68.6(CH2×2,-CH(-CH2-)2),68.5(CH2×2,-CH(-CH2-)2),68.4(CH2×2,-CH(-CH2-)2),68.2(CH2×2,-CH(-CH2-)2),68.1(CH2×2,-CH(-CH2-)2),21.0(CH3×4,(((-O-)2CH-CH322
HRMS(ESI-TOF) m/z calcd for C2952NaO15 [M+Na]+ 663.3204 found 663.3194
【0078】
(2)1-((1,3-ビス(((2R,5s)-2-メチル-1,3-ジオキサン-5-イル)オキシ)プロパン-2-イル)オキシ)-3-((1,3-ビス(((2S,5s)-2-メチル-1,3-ジオキサン-5-イル)オキシ)プロパン-2-イル)オキシ)プロパン-2-イル 4-メチルベンゼンスルホネートの合成
化合物9(6.13g,9.56mmol)、4-ジメチルアミノピリジン(1.17g,9.56mmol)、及びピリジン(9.56mL,9.44g,119.34mmol)を含む溶液に、0℃下でp-トルエンスルホニルクロライド(3.64g,19.12mmol)を5分間かけて加えた。10分後に室温に戻し、24時間撹拌させた。得られた混合液を水(40mL)に加え、酢酸エチル(60mL)で抽出した。抽出液を、水(50mL)で2回、飽和重曹水(50mL)で1回、飽和食塩水(50mL)で1回洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥させ、濾過し、濃縮することにより、オレンジ色のオイル状の粗製物10(6.1g,7.67mmol,収率:80%)を得た。濃縮の際、トルエン(200mL)を加えてピリジンを共沸により除いた。得られた粗製物10をそのまま次の反応に使用した。
【0079】
(3)S-(1-((1,3-ビス(((2R,5S)-2-メチル-1,3-ジオキサン-5-イル)オキシ)プロパン-2-イル)オキシ)-3-((1,3-ビス(((2S,5s)-2-メチル-1,3-ジオキサン-5-イル)オキシ)プロパン-2-イル)オキシ)プロパン-2-イル) エタンチオエートの合成
上記粗製物10(6.03g,7.58mmol)をアセトニトリル(15mL,11.7g,285mmol)に溶解した溶液に、チオ酢酸 S-カリウム(2.59g,22.7mmol)を加え、80℃で22時間撹拌した。得られた混合液に酢酸エチル(30mL)を加えて濾過した後、濃縮した。水(40mL)を加え、ジクロロメタン(50mL)で2回抽出した。抽出液を水(30mL)で2回、飽和食塩水(30mL)で1回洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥し、濾過し、濾液を濃縮することにより、赤褐色のオイル状粗製物(5.62g)を得た。得られた粗製物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離液:ジクロロメタン/アセトン=5/2~2/1)に付し、赤褐色のオイル状の目的化合物11(4.52g,6.46mmol,収率:85%)を得た。
FT-IR (neat):3601,3525,2990,2860,2782,2727,2661,1691,1441,1408,1339,1282,1243,1153,1089,1052,1023,985,951,894,858,821,810,721,634,584cm-1
1H NMR(CDCl3,500MHz):δ4.70(q,J=5.0Hz,4H,(((-O-)2CH-CH322),4.20-4.11(m,8H,eight of ((-CH(-CH2-)222),3.86-3.59(m,15H,-S-CH(-CH2-)2,eight of ((-CH(-CH2-)222,-S-CH(-CH2-)2,(-CH(-CH2-)22),3.69(dd,J=5.0,10.0Hz,4H,four of (-CH(-CH2-)22),3.64(dd,J=5.0,10.0Hz,2H,two of (-CH(-CH2-)22),3.63(dd,J=5.0,10.0Hz,2H,two of (-CH(-CH2-)22),3.30-3.24(m,4H,((-CH(-CH2-)222),2.31(s,3H,CH3-C(=O)-S-),1.33(d,6H,J=5.0Hz,((-O-)2CH-CH32),1.33(d,6H,J=5.0Hz,((-O-)2CH-CH32
13C NMR(CDCl3,125MHz):δ195.1(C,CH3-C(=O)-S-),99.1(CH×4,(((-O-)2CH-CH322),78.9(CH×2,(-CH(-CH2-)22),71.3(CH×4,((-CH(-CH2-)222),69.1(CH2×2,-S-CH(-CH2-)2),68.7(CH2×2,-CH(-CH2-)2),68.7(CH2×2,-CH(-CH2-)2),68.4(CH2×2,-CH(-CH2-)2),68.4(CH2×4,(-CH(-CH2-)22),68.3(CH2×2,-CH(-CH2-)2),44.3(CH,-S-CH(-CH2-)2),30.7(CH3,CH3-C(=O)-S-),21.1(CH3×4,(((-O-)2CH-CH322
HRMS(ESI-TOF) m/z calcd for C3154NaO15S [M+Na]+ 721.3081 found 721.3082
【0080】
(4)1-((1,3-ビス(((2R,5s)-2-メチル-1,3-ジオキサン-5-イル)オキシ)プロパン-2-イル)オキシ)-3-((1,3-ビス(((2S,5s)-2-メチル-1,3-ジオキサン-5-イル)オキシ)プロパン-2-イル)オキシ)プロパン-2-チオールの合成
化合物11(500mg,0.72mmol)をメタノール(1.43mL,1.13g,35.3mmol)に溶解した溶液に、炭酸カリウム(99mg,0.72mmol)を加え、室温で4時間撹拌した。得られた混合液を濃縮した。得られた残渣に水(20mL)を加え、塩化メチレン(40mL)で抽出し、濃縮することにより、赤橙色のオイル状の粗製物(430mg)を得た。得られた粗製物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離液:ジクロロメタン/アセトン=2/1)に付し、赤色のオイル状の目的化合物12(300mg,0.46mmol,収率:63%)を得た。
FT-IR(neat):3585,3525,2980,2971,2861,2782,2726,2661,2551,1456,1442,1407,1342,1281,1244,1154,1090,1050,986,952,895,857,822,806cm-1
1H NMR(CDCl3,500MHz):δ4.71(q,J=5.0Hz,4H,(((-O-)2CH-CH322),4.23-4.10(m,8H,eight of ((-CH(-CH2-)222),3.85-3.79(m,8H,eight of ((-CH(-CH2-)222),3.79-3.73(m,6H,HS-CH(-CH2-)2,(-CH(-CH2-)22),3.67(dd,4H,J=4.5,10.5Hz,four of (-CH(-CH2-)22),3.64(dd,4H,J=5.5,10.5Hz,four of (-CH(-CH2-)22),3.31-3.25(m,4H,((-CH(-CH2-)222),3.13(dquint,J=5.5,8.0Hz,1H,HS-CH(-CH2-)2),2.05(d,J=8.0Hz,1H,HS-CH(-CH2-)2),1.33(dd,J=5.0Hz,12H,(((-O-)2CH-CH322
13C NMR(CDCl3,125MHz):δ99.1(CH×4,(((-O-)2CH-CH322),78.8(CH×2,(-CH(-CH2-)22),72.1(CH2×2,HS-CH(-CH2-)2),71.3(CH×2,two of ((-CH(-CH2-)222),71.3((CH×2,two of ((-CH(-CH2-)222),68.7(CH2×2,(-CH(-CH2-)2),68.6(CH2×2,-CH(-CH2-)2),68.4(CH2×2,-CH(-CH2-)2),68.4(CH2×2,-CH(-CH2-)2),68.4(CH2×2,(-CH(-CH2-)22),68.3(CH2×2,-CH(-CH2-)2),40.0(CH,HS-CH(-CH2-)2),21.1(CH3×4,(((-O-)2CH-CH322
HRMS(ESI-TOF) m/z calcd for C3154NaO15S [M+Na]+ 679.2975 found 679.2977
【0081】
(5)13-(((1,3-ビス(((2R,5S)-2-メチル-1,3-ジオキサン-5-イル)オキシ)プロパン-2-イル)オキシ)メチル)-4,4-ジエトキシ-17-(((2S,5S)-2-メチル-1,3-ジオキサン-5-イル)オキシ)-16-((((2S,5S)-2-メチル-1,3-ジオキサン-5-イル)オキシ)メチル)-3,8,15-トリオキサ-12-チア-4-シラヘプタデカン-10-オールの合成
化合物12(100mg,0.15mmol)をアセトニトリル(30μL,23.7mg,0.58mmol)に溶解した溶液に、トリエトキシ(3-グリシジルオキシプロピル)シラン(50μL,50mg,0.18mmol)と、テトラブチルアンモニウムブロマイド(2mg,0.0075mmol)をこの順で加え、60℃で24時間撹拌した。得られた混合溶液をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離液:ヘキサン/アセトン=1/1)に付し、オイル状の目的化合物13(70mg,0.074mmol,収率:50%)を得た。
FT-IR (neat):3480,2975,2865,2783,2727,2660,1456,1442,1408,1342,1282,1244,1154,1089,987,953,895,858,821,806,757,668,667,585cm-1
1H NMR(CDCl3,500MHz):δ4.71(q,J=5.0Hz,4H,(((-O-)2CH-CH322),4.23-4.10(m,8H,eight of ((-CH(-CH2-)222),3.92-3.73(m,15H,eight of ((-CH(-CH2-)222,-S-CH(-CH2-)2,(-CH(-CH2-)22),-CH2-CH(-OH)-CH2-),3.82(q,J=7.0Hz,6H,CH3-CH2-O-)3Si-),3.73-3.61(m,8H,((-CH(-CH2-)222),3.48-3.39(m,4H,-CH2-CH2-O-,-O-CH2-CH(-OH)-),3.31-3.25(m,4H,((-CH(-CH2-)222),3.03(q,J=6.0Hz,1H,-S-CH(-CH2-)2),2.79(dd,J=5.0,14.0Hz,1H,one of -CH(-OH)-CH2-S-),2.65(dd,J=7.5,14.0Hz,1H,one of -CH(-OH)-CH2-S-),1.73-1.64(m,2H,-Si-CH2-CH2-CH2-),1.33(d,J=5.0Hz,12H,(((-O-)2CH-CH322),1.22(t,J=7.0Hz,9H,(CH3-CH2-O-)3Si-),0.66-0.60(m,2H,-Si-CH2-CH2-)
13C NMR(CDCl3,125MHz):δ99.1(CH×4,(((-O-)2CH-CH322),78.9(CH×2,(-CH(-CH2-)22),73.7(CH2,-CH2-CH2-O-),73.4(CH2,-O-CH2-CH(-OH)-),71.4(CH2,one of -S-CH(-CH2-)2),71.3(CH2,one of -S-CH(-CH2-)2),71.3(CH×3,three of ((-CH(-CH2-)222),71.3((CH,one of ((-CH(-CH2-)222),70.0(CH,-CH2-CH(-OH)-CH2-),68.7(CH2,one of (-CH(-CH2-)2),68.7(CH2×3,three of -CH(-CH2-)2),68.4(CH2×2,two of -CH(-CH2-)2),68.4(CH2×3,three of -CH(-CH2-)2),68.4(CH2×2,two of (-CH(-CH2-)22),68.3(CH2,one of -CH(-CH2-)2),58.4(CH2×3,(CH3-CH2-O-)3Si-),46.8(CH,-S-CH(-CH2-)2),36.0(CH2,-CH(-OH)-CH2-S-),23.0(CH2,-Si-CH2-CH2-CH2-),21.1(CH3×4,(((-O-)2CH-CH322),18.3(CH3×3,(CH3-CH2-O-)3Si-),6.5(CH2,-Si-CH2-CH2-)
HRMS(ESI-TOF) m/z calcd for C4178NaO19SSi [M+Na]+ 957.4525 found 957.4500
【0082】
実施例5
(1)1,3-ビス((2,2-ジメチル-1,3-ジオキサン-5-イル)オキシ)プロパン-2-アミンの合成
【0083】
【化14】
【0084】
化合物14(235mg,0.68mmol)をテトラヒドロフラン(1.7mL,1.51g,20.9mmol)に溶解した溶液に、トリフェニルホスフィン(356mg,1.36mmol)と水(18μL,0.001mmol)をこの順で加え、50℃で28時間撹拌した。得られた混合物を濃縮し、得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離液:ジクロロメンタン/メタノール=4/1)に付し、オイル状の目的化合物15(177mg,0.55mmol,収率:81%)を得た。
FT-IR(KBr):3383,3323,2881,1594,1460,1375,1253,1200,1153,1117,1085,937,831,732,583,527,472cm-1
1H NMR(CDCl3,500MHz):δ3.974(dd,J=4,12Hz,CH-CH2-O),3.77(dd,J=6.5,12Hz,CH-CH2-O),3.52(dd,J=4.5,9Hz,CH-CH2-O),3.44-3.41(m,2H,O-CH-CH2),3.40(dd,J=6.5,9Hz,CH-CH2-O),3.14(tquint,J=5,6Hz,1H,H2N-CH-CH2),1.43 and 1.41(s,12H,C-CH3
13C NMR(CDCl3,125MHz):δ98.3(C×2,O-C-O),71.1(CH2×4,CH-CH2-O),70.9(CH×2,O-CH-CH2),62.6(CH2×2,CH-CH2-O),51.9(CH,H2N-CH-CH2),24.12,24.09,23.19 and 23.16(CH3×4,C-CH3
HRMS(ESI-TOF) m/z calcd for C1530NO6 [M+H]+ 320.2073 found 320.2068
【0085】
(2)N-(1,3-ビス((2,2-ジメチル-1,3-ジオキサン-5-イル)オキシ)プロパン-2-イル)-2-((1,3-ジオキソイソインドリン-2-イル)オキシ)アセトアミドの合成
【0086】
【化15】
【0087】
化合物16(50.9mg,0.29mmol)のアセトニトリル溶液(3mL)にHOBt(57.9mg,0.38mmol)とEDC・HCl(72.5mg,0.38mmol)を0℃で加え、得られた懸濁液を30分間撹拌した。反応液の温度を30分かけてゆっくり25℃まで上げ、化合物15(93mg,0.29mmol)とトリエチルアミン(121μL,0.87mmol)を加えた。次いで、反応液を40℃で24時間撹拌した。反応液を水(30mL)に注ぎ、酢酸エチル(60mL)で3回抽出し、抽出液を無水硫酸ナトリウム上で乾燥後、減圧濃縮した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離液:塩化メチレン/メタノール=3/1)に付し、薄黄色のガム状液体である目的化合物17を得た(100mg,0.21mmol,収率:72%)。
FT-IR(neat):3285,2991,2941,2876,1796,1736,1665,1534,1453,1371,1338,1245,1190,1098,1038,989,929,825,738cm-1
1H NMR(CDCl3,500MHz):δ5.96-5.89(m,1H),5.37-5.27(dd,Jtrans=17,1.0Hz,Jcis=10.5Hz,2H),4.66(d,J=6.0Hz,2H),4.39(s,2H),4.30-4.26(m,1H),4.0(dd,J=11.5,3.5Hz,4H),3.81(dd,J=5.0Hz,4.5Hz,4H),3.72-3.69(dd,J=9.5,4.0Hz,2H),3.59-3.56(dd,J=9.0,3.0Hz,2H),3.42(quint,J=3.5Hz,2H),1.44(s,12H)
13C NMR(CDCl3,125MHz):δ168.46(C,C=O),157.91(C,C=O),131.62(CH×1),118.82(CH2×1),98.35(C×2),75.91(CH2×1),70.51(CH×2),66.69(CH2×1),66.43(CH2×2),62.75(CH2×2),61.88(CH2×2),48.33(CH×1),24.22(CH2×2),22.95(CH2×2)
HRMS(ESI-TOF) m/z calcd for C2137210 [M+H]+ 477.2468 found 477.2468
【0088】
(3)2-(アミノオキシ)-N-(1,3-ビス((2,2-ジメチル-1,3-ジオキサン-5-イル)オキシ)プロパン-2-イル)アセトアミドの合成
【0089】
【化16】
【0090】
化合物17(67.2mg,0.14mmol)のメタノール溶液(2mL)にギ酸(3eq,16μL,0.42mmol)とPd-C10%(0.2eq,30.1mg,0.028mmol)をゆっくり加えた。得られた懸濁液を5時間撹拌し、セライトを使って濾過した。濾液を減圧下濃縮し、無色ガム状液体である目的化合物18を得た(33.4mg,0.085mmol,収率:60%)。
FT-IR(neat):3393,2918,1654,1536,1451,1375,1341,1251,1198,1079,825cm-1
1H NMR(CD3OD,500MHz):δ4.21(quint,J=5.5Hz,1H),4.05(t,J=3.5Hz,2H),4.02(t,J=3.0Hz,2H),4.0(s,2H),3.81-3.77(m,4H),3.69-3.61(m,4H),3.41(quint,J=4.5Hz,2H),1.42 and 1.39(s,12H)
13C NMR(CD3OD,125MHz):δ168.23(C,C=O),98.02(C×2),70.78(CH×2),66.52(CH2×2),61.90(CH2×2),61.84(CH2×2),61.18(CH2×1),48.57(CH×1),24.03(CH3×2),21.06(CH3×2)
HRMS(ESI-TOF) m/z calcd for C173228Na [M+Na]+ 415.2056,found 415.2080
【0091】
(4)N-(1,3-ビス((2,2-ジメチル-1,3-ジオキサン-5-イル)オキシ)プロパン-2-イル)-9,9-ジエトキシ-3,10-ジオキサ-4-アザ-9-シラドデカ-4-エンアミドの合成
【0092】
【化17】
【0093】
化合物18(117mg,0.30mmol)をエタノール(0.6mL,474mg,10.07mmol)に溶解した溶液に、90%トリエトキシシリルブチルアルデヒド(97μL,93mg,0.36mmol)を加え、40℃で8時間撹拌した。混合液を濃縮後、得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離液:ヘキサン/酢酸エチル=1/5)に付し、白濁したオイル状の目的化合物19(96mg,0.16mmol,収率:53%)を得た。なお、NMRによる分析結果によれば、C=N二重結合における幾何異性体の割合は8:2であったが、シス体とトランス体のいずれが主生成物であるかは不明であった。
FT-IR(neat):3429,2973,2927,2880,2245,1680,1519,1455,1413,1373,1337,1284,1250,1227,1198,1156,1083,956,830,792,732cm-1
1H NMR(CDCl3,500MHz):δ7.15(t,J=6.0Hz,0.8H,-CH2-CH=N-O-),6.75(t,J=5.5Hz,0.2H,CH2-CH=N-O-),6.65(d,J=8.5Hz,0.8H,-C(=O)NH-CH-),6.59(d,J=8.5Hz,0.2H,-C(=O)NH-CH-),4.52(s,0.4H,-O-CH2-C(=O)-),4.47(s,1.6H,-O-CH2-C(=O)-),4.28-4.17(m,1H,-NH-CH(-CH2-)2),4.01-3.91(m,4H,four of (-CH(-CH2-)22),3.82(q,J=7.0Hz,6H,(CH3-CH2-O-)3Si-),3.78-3.70(m,4H,four of (-CH(-CH2-)22),3.70-3.63(m,2H,two of -NH-CH(-CH2-)2),3.57-3.49(m,2H,two of -NH-CH(-CH2-)2),3.47-3.39(m,2H,(-CH(-CH2-)22),2.43(m,0.4H,-CH2-CH2-CH-),2.24(q,J=6.0Hz,1.6H,-CH2-CH2-CH-),1.70-1.56(m,2H,-Si-CH2-CH2-CH2-),1.42(s,6H,six of ((-O-)2C(-CH322),1.40(s,6H,six of ((-O-)2C(-CH322),1.23(t,J=6.8Hz,9H,(CH3-CH2-O-)3Si-),0.77-0.69(m,2H,-Si-CH2-CH2-)
13C NMR(CDCl3,125MHz):δ169.5(C×0.2,-CH2-C(=O)-NH-),169.4(C×0.8,-CH2-C(=O)-NH-),154.0(CH×0.2,-CH2-CH=N-O-),153.0(CH×0.8,-CH2-CH=N-O-),98.1(C×2,((-O-)2C(-CH322),72.7(CH2×0.2,-O-CH2-C(=O)-),72.4(CH2×0.8,-O-CH2-C(=O)-),70.7(CH×2,(-O-CH(-CH2-)22),66.4(CH2×0.4,-NH-CH(-CH2-)2),66.4(CH2×1.6,-NH-CH(-CH2-)2),62.4(CH2×1.6,(-CH(-CH2-)22),62.4(CH2×0.4,(-CH(-CH2-)22),62.3(CH2×0.4,(-CH(-CH2-)22),62.2(CH2×1.6,(-CH(-CH2-)22),58.4(CH2×3,(CH3-CH2-O-)3Si-),48.1(CH×0.8,-NH-CH(-CH2-)2),48.1(CH×0.2,-NH-CH(-CH2-)2),32.3(CH2×0.8,-CH2-CH2-CH-),28.8(CH2×0.2,-CH2-CH2-CH-),23.7(CH3×1.6,(-C(-CH322),23.7(CH3×0.4,(-C(-CH322),23.4(CH3×0.4,(-C(-CH322),23.4(CH3×1.6,(-C(-CH322),20.1(CH2×0.8,-CH2-CH2-CH-),19.8(CH2×0.2,-CH2-CH2-CH-),18.3(CH3×3,(CH3-CH2-O-)3Si-),10.4(CH2×0.2,-Si-CH2-CH2-),10.1(CH2×0.8,-Si-CH2-CH2-)
HRMS(ESI-TOF) m/z calcd for C27522NaO11Si [M+Na]+ 631.3238 found 631.3232
【0094】
実施例6
(1)N-(1,3-ビス((1,3-ビス((2,2-ジメチル-1,3-ジオキサン-5-イル)オキシ)プロパン-2-イル)オキシ)プロパン-2-イル)-2-((1,3-ジオキソイソインドリン-2-イル)オキシ)アセトアミドの合成
【0095】
【化18】
【0096】
N-(カルボキシメトキシ)フタルイミド(394.5mg,1.78mmol)をアセトニトリルに溶解した溶液を0℃に冷却し、30分間撹拌した後、HOBt(327.8mg,2.14mmol)とEDC・HCl(410.3mg,2.14mmol)を加え、30分間撹拌した。反応液の温度をゆっくりと室温に戻した後、化合物19(1.24g,1.78mmol)とトリエチルアミン(750μL,5.35mmol)を加え、室温で24時間撹拌した。反応液に酢酸エチルを加えて分液し、有機相を無水硫酸ナトリウムで乾燥し、濾過した。得られた濾液を減圧濃縮し、得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離液:ジクロロメタン/メタノール=10/1)に付し、黄色ガム状液体として目的化合物20(1.30g,1.4mmol)を得た。
FT-IR(KBr):3349,2990,2940,2865,1787,1731,1676,1534,1459,1373,1242,1192,1087,1031,932,870,827,753 and 703cm-1
1H NMR(CDCl3,500MHz):δ7.90(dd,J=8.5,2.5Hz,2H),7.81(dd,J=8.5,2.5Hz,2H),4.73(s,2H)4.27(quint,1H),3.97-3.94(m,7H),3.80-3.70(m,12H),3.67-3.53(m,11H),3.47(dquint,J=13.5,11Hz,4H),1.43,1.41,1.40 and 1.38(s,24H) or 1.40(dd,J=8.5,8Hz,24 H)
13C NMR(CDCl3,125MHz):δ166.48,163.33,134.94,123.94,98.17,78.62,77.22,76.80,71.06,68.69,62.54,49.31,24.50 and 22.73
HRMS(ESI-TOF): m/z calcd for C43662NaO18 [M+Na]+ 921.4208 found 921.4226
【0097】
(2)1,3-ビス((1,3-ビス((2,2-ジメチル-1,3-ジオキサン-5-イル)オキシ)プロパン-2-イル)オキシ)プロパン-2-アミンの合成
【0098】
【化19】
【0099】
化合物20(150.0mg,0.17mol)を蒸留メタノール(10mL)に溶解した。得られた溶液の温度を35℃に保ち、ヒドラジン一水和物(13μL,12.6mg,0.25mmol)を加え、24時間撹拌した。当該反応液にクロロホルムを加え、濾過し、得られた濾液を減圧濃縮した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離液:酢酸エチル/メタノール=7/2)に付し、ゲル状オイルである目的化合物21(110mg,0.14mmol,収率85%)を得た。
FT-IR(KBr):3417,3318,2990,2865,1670,1515,1490,1440,1373,1248,1192,1075,926,814 and 722cm-1
1H NMR(CDCl3,500MHz):δ4.25(quint,1H),4.16(d,J=5.0Hz,2H),3.99-3.96(m,7H),3.79-3.73(m,10H),3.68-3.52(m,13H),3.44(quint,4H)1.43(d,J=1.5Hz,12H),1.41(s,12 H).
13C NMR(CDCl3,125MHz):δ169.2,98.2,78.7,74.8,71.2,71.1,68.8,68.6,68.5,62.5,62.4,48.7,23.9,23.7,23.5 and 23.3
HRMS(ESI-TOF): m/z calcd for C35642NaO16 [M+Na]+ 791.4154 found 791.4178
【0100】
(3)N-(1,3-ビス((1,3-ビス((2,2-ジメチル-1,3-ジオキサン-5-イル)オキシ)プロパン-2-イル)オキシ)プロパン-2-イル)-9,9-ジエトキシ-3,10-ジオキサ-4-アザ-9-シラドデカ-4-エンアミドの合成
【0101】
【化20】
【0102】
化合物21(100mg,0.13mmol)をエタノール(0.28mL,354mg,7.69mmol)に溶解した溶液に、90%トリエトキシシリルブチルアルデヒド(39μL,40mg,0.16mmol)を加え、50℃で2時間撹拌した。得られた混合液を濃縮後、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離液:酢酸エチル/アセトン=10/1)に付し、オイル状の目的化合物22(50mg,0.05mmol,収率:39%)を得た。なお、分析結果によれば、C=N二重結合における異性体の割合は6:4であったが、E/Zの特定はできていない。
FT-IR(neat):3428,2973,2926,2876,2245,1679,1520,1455,1372,1335,1284,1250,1227,1198,1086,940,830,792,757,732cm-1
1H NMR(CDCl3,500MHz):δ7.51(t,J=6.0Hz,0.6H,-CH2-CH=N-O-),6.74(t,J=5.5Hz,0.4H,-CH2-CH=N-O-),6.69(d,J=8.5Hz,0.6H,-C(=O)NH-CH-),6.61(d,J=8.5Hz,0.4H,-C(=O)NH-CH-),4.51(s,0.8H,-O-CH2-C(=O)-),4.47(s,1.2H,-O-CH2-C(=O)-),4.27-4.14(m,1H,-NH-CH(-CH2-)2),4.03-3.90(m,8H,eight of ((-CH(-CH2-)222),3.89-3.78(m,7H,(CH3-CH2-O-)3Si-,one of (-CH(-CH2-)22),3.77-3.67(m, 9H,eight of ((-CH(-CH2-)222),one of (-CH(-CH2-)22),3.67-3.48(m,12H,-NH-CH(-CH2-)2,(-CH(-CH2-)22),3.47-3.38(m,4H,((-CH(-CH2-)222),2.45-2.38(m,0.8H,-CH2-CH2-CH-),2.23(q,J=7.0Hz,1.2H,-CH2-CH2-CH-),1.68-1.58(m,2H,-Si-CH2-CH2-CH2-),1.42(s,12H,twelve of (((-O-)2C(-CH3222),1.40(s,12H,twelve of (((-O-)2C(-CH3222),1.26-1.19(m,9H,(CH3-CH2-O-)3Si-),0.70-0.61 (m,2H,-Si-CH2-CH2-)
13C NMR(CDCl3,125MHz):δ169.4(C×0.4,-CH2-C(=O)-NH-),169.3(C×0.6,-CH2-C(=O)-NH-),153.8(CH×0.4,-CH2-CH=N-O-),152.9(CH×0.6,-CH2-CH=N-O-),98.2(C×4,(((-O-)2C(-CH3222),78.5(CH×0.8,(-CH(-CH2-)22),78.4(CH×1.2,(-CH(-CH2-)22),72.7(CH2×0.4,-O-CH2-C(=O)-),72.5(CH2×0.6,-O-CH2-C(=O)-),71.1(CH×2.4,((-O-CH(-CH2-)222),71.0(CH×1.6,((-O-CH(-CH2-)222),68.6(CH2×1.2,-NH-CH(-CH2-)2),68.6(CH2×0.8,-NH-CH(-CH2-)2),68.5(CH2×2.4((-CH(-CH2-)22),68.4(CH2×1.6,((-CH(-CH2-)22),62.5(CH2×4,four of ((-CH(-CH2-)222),62.4(CH2×4,four of ((-CH(-CH2-)222),58.4(CH2×1.2,(CH3-CH2-O-)3Si-),58.4(CH2×1.8,(CH3-CH2-O-)3Si-),48.7(CH×0.6,-NH-CH(-CH2-)2),48.6(CH×0.4,-NH-CH(-CH2-)2),32.4(CH2×0.6,-CH2-CH2-CH-),28.9(CH2×0.4,-CH2-CH2-CH-),24.2(CH3×4,((-O-)2C(-CH322,23.0(CH3×1.6,((-O-)2C(-CH322,23.0(CH3×2.4,((-O-)2C(-CH322),20.2(CH2×0.6,-CH2-CH2-CH-),19.8(CH2×0.4,-CH2-CH2-CH-),18.3(CH3×3,(CH3-CH2-O-)3Si-),10.5(CH2×0.4,-Si-CH2-CH2-),10.2(CH2×0.6,-Si-CH2-CH2-)
HRMS(ESI-TOF): m/z calcd for C45842NaO19Si [M+Na]+ 1007.5335 found 1007.5330
【0103】
実施例7
(1)5,5’-((2-イソチオシアナートプロパン-1,3-ジイル)ビス(オキシ))ビス(2,2-ジメチル-1,3-ジオキサン)の合成
【0104】
【化21】
【0105】
化合物14(134.0mg,0.39mmol)の0.05M1,4-ジオキサン溶液(7.80mL)を室温で撹拌しつつ、トリフェニルホスフィン(122.1mg,0.47mmol,1.2eq)と二硫化炭素(470μL,7.76mmol)を添加した。密閉フラスコ中、当該反応液を40℃で48時間撹拌した。次いで、当該反応液を減圧濃縮し、得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離液:酢酸エチル/ヘキサン=1/1)に付し、白色固体の目的化合物23(125.0mg,収率:89%)を得た。
FT-IR(neat) 2992,2968,2945,2906,2874,2114,1740,1471,1373,1309,1252,1199,1141,1087,1040,1001,968,940,887,856 and 824cm-1
1H NMR(CDCl3,400MHz):δ3.99(dd,J=12.0,4.0Hz,4H),3.93(quint,J=4.8Hz,1H),3.77(dd,J=12.4,6.0Hz,4H),3.70(dd,J=9.6,5.2Hz,2H),3.67(dd,J=10.0,5.6Hz,2H),3.48(quint,J=5.2Hz,2H),1.44 and 1.41(s,12H)
13C NMR(CDCl3,125MHz):δ136.5(NCS),98.3(C),71.4(CH),68.0(CH2),62.4(CH2),57.9(CH),23.8(CH3) and 23.4(CH3
HRMS(ESI-TOF) m/z calcd for C1627NNaO6S [M+Na]+ 384.1457 found 384.1433
【0106】
(2)1-(1,3-ビス((2,2-ジメチル-1,3-ジオキサン-5-イル)オキシ)プロパン-2-イル)-3-(3-(トリエトキシシリル)プロピル)チオウレアの合成
【0107】
【化22】
【0108】
化合物23(100mg,0.28mmol)をエタノール(0.27mL,213mg,4.63mmol)に溶解した溶液に3-アミノプロピルトリエトキシシラン(78μL,74mg,0.33mmol)を加え、室温で2時間撹拌した。次いで、反応溶液を濃縮後、得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離液:ヘキサン/酢酸エチル=3/1)に付し、白色オイル状の目的化合物24(144mg,0.25mmol,収率:89%)を得た。
FT-IR(neat):3506,3327,3064,2974,2926,2880,1542,1449,1373,1337,1291,1251,1228,1199,1082,984,957,894,827,778,731cm-1
1H NMR(CDCl3,500MHz):δ6.57-6.12(br,2H,-NH-C(=S)-NH-),4.69-4.33(br,1H,-NH-CH(-CH2-)2),4.00(dd,J=3.5,12.5Hz,2H,two of (-CH(-CH2-)22),4.97(dd,J=3.5,12.5Hz,2H,two of (-CH(-CH2-)22),3.82(q,J=7.0Hz,6H,(CH3-CH2-O-)3Si-),3.81-3.71(m,6H,four of (-CH(-CH2-)22),two of -CH(-CH2-)2),3.61(dd,J=7.0,9.5Hz,2H,two of -CH(-CH2-)2),3.49-3.36(m,4H,-CH2-CH2-NH-,two of -CH(-CH2-)2),1.71(quint,2H,-CH2-CH2-CH2-),1.42(s,12H,((-O-)2C(-CH322),1.23(t,J=7.0Hz,9H,(CH3-CH2-O-)3Si-),0.69-0.61(m,2H,-Si-CH2-CH2-)
13C NMR(CDCl3,125MHz):δ181.8(C,-NH-C(=S)-NH-),90.2(C×2,((-O-)2C(-CH322),70.7(CH×2,(-CH(-CH2-)22),62.6(CH2×2,-CH(-CH2-)2),61.9(CH2×4,(-CH(-CH2-)22),58.4(CH2×3,(CH3-CH2-O-)3Si-),53.7(CH,-NH-CH(-CH2-)2),47.0(CH2,-CH2-CH2-NH-),24.7(CH3×2,two of ((-O-)2C(-CH322),22.5(CH3×2,two of ((-O-)2C(-CH322),22.3(CH2,-CH2-CH2-CH2-),18.3(CH3×3,(CH3-CH2-O-)3Si-),7.8(CH2,-Si-CH2-CH2-)
HRMS(ESI-TOF): m/z calcd for C25502NaO9SiS [M+Na]+ 605.2904 found 605.2900
【0109】
実施例8
(1)5,5’,5’’,5’’’-((((2-イソチオシアナートプロパン-1,3-ジイル)ビス(オキシ))ビス(プロパン-2,1,3-トリイル))テトラキス(オキシ))テトラキス(2,2-ジメチル-1,3-ジオキサン)の合成
【0110】
【化23】
【0111】
化合物25(100.0mg,0.14mmol)をテトラヒドロフラン(30μL)に溶解した溶液に、トリエチルアミン(140μL,1.01mmol)と二硫化炭素(43μL,0.72mmol)を0℃で加えた。当該反応液を室温で4時間撹拌した。次いで、当該反応液を0℃に冷却し、トシルクロライド(32mg,0.17mmol)を加えた。当該反応液の温度をゆっくりと室温まで上げ、更に2時間撹拌した。次いで、10%硫酸水素カリウム水溶液(100mL)をゆっくりと加え、水相からジクロロメタン(100mL)で3回抽出した。有機相と抽出液を合わせ、飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、濾過した。得られた濾液を減圧濃縮し、得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離液:ジクロロメタン/アセトン=4/1)に付し、無色オイル状の目的化合物26(900mg,0.12mmol,収率:84%)を得た。
FT-IR(KBr):2993,2940,2874,2071,1456,1373,1251,1228,1199,1044,938,829,755 and 668cm-1
1H NMR(CDCl3,500MHz):δ3.99-3.91(m,9H),3.80(dd,J=10.0,4.5Hz,2H),3.77-3.70(m,10H),3.66-3.57(m,6H),3.55(dd,J=10.0,5.5Hz,4H),3.45(dquint,J=5.25,1.5 Hz,4H),1.43 and 1.40(s,24H)
13C NMR(CDCl3,125MHz):δ134.68(C,SCN),98.12(C×4),79.18(CH×1),77.39(CH×1),77.13(CH×1),76.88(CH×1),71.11(CH×2),69.96(CH2×1,)68.92(CH2×4),62.43(CH2×8),62.39(CH2×1),58.14(CH×1),23.8(CH3×2),23.86(CH3×2),23.33(CH3×2),23.30(CH3×2)
HRMS(ESI-TOF) m/z calcd for C3459NNaO14S [M+Na]+ 760.3554 found 760.3563
【0112】
(2)1-(1,3-ビス((1,3-ビス((2,2-ジメチル-1,3-ジオキサン-5-イル)オキシ)プロパン-2-イル)オキシ)プロパン-2-イル)-3-(3-(トリエトキシシリル)プロピル)チオウレアの合成
【0113】
【化24】
【0114】
化合物26(209mg,0.28mmol)をエタノール(0.3mL,237mg,5.14mmol)に溶解した溶液に3-アミノプロピルトリエトキシシラン(79μL,75mg,0.34mmol)を加え、室温で1時間撹拌した。得られた混合液を濃縮後、シリカゲルカラムカラムクロマトグラフィー(溶離液:酢酸エチル/アセトン=8/1)に付し、薄黄色のオイル状の目的化合物27(206mg,0.21mmol,収率:76%)を得た。
FT-IR(neat):3320,2973,2926,2877,1543,1455,1373,1340,1285,1250,1227,1198,1083,983,942,829,756,731,665cm-1
1H NMR(CDCl3,500MHz):δ7.03-6.81(br,2H,-NH-C(=S)-NH-),4.87-4.65(br,1H,-NH-CH(-CH2-)2),4.60-3.92(m,8H,eight of ((-CH(-CH2-)222),3.87-3.69(m,10H,eight of ((-CH(-CH2-)222,two of -CH(-CH2-)2),3.81(q,J=7.0Hz,6H,(CH3-CH2-O-)3Si-),3.69-3.47(m,14H,two of -CH(-CH2-)2,(-CH(-CH2-)22,-CH2-CH2-NH-,(-CH(-CH2-)22),3.46-3.39(m,2H,two of ((-CH(-CH2-)222),3.38-3.31(m,2H,two of ((-CH(-CH2-)222),1.71-1.60(m,2H,-CH2-CH2-CH2-),1.42(s,6H,six of ((-O-)2C(-CH3222),1.42(s,6H,six of ((-O-)2C(-CH3222),1.40(s,12H,twelve of ((-O-)2C(-CH3222),1.22(t,J=7.0Hz,9H,(CH3-CH2-O-)3Si-),0.66-0.60(m,2H,-Si-CH2-CH2-)
13C NMR(CDCl3,125MHz):δ182.4(C,-NH-C(=S)-NH-),98.3(C×1,one of ((-O-)2C(-CH3222),98.1(C×3,three of ((-O-)2C(-CH3222),79.2(CH×2,(-CH(-CH2-)22),71.0(CH×2,two of ((-CH(-CH2-)222),70.8(CH×2,two of ((-CH(-CH2-)222),69.4(CH2×1,one of ((-CH(-CH2-)22),68.6(CH2×3,three of ((-CH(-CH2-)22),62.8(CH2×2,-CH(-CH2-)2),62.5(CH2×3,three of ((-CH(-CH2-)222),62.4(CH2×3,three of ((-CH(-CH2-)222),62.0(CH2×2,two of ((-CH(-CH2-)222),58.3(CH2×3,(CH3-CH2-O-)3Si-),54.3(CH,-NH-CH(-CH2-)2),47.5(CH2,-CH2-CH2-NH-),23.8(CH3×4,four of (((-O-)2C(-CH3222),23.3(CH3×4,four of (((-O-)2C(-CH3222),22.6(CH2,-CH2-CH2-CH2-),18.3(CH3×3,(CH3-CH2-O-)3Si-),7.7(CH2,-Si-CH2-CH2-)
HRMS(ESI-TOF): m/z calcd for C43822NaO17SiS [M+Na]+ 981.5001 found 981.5003
【0115】
実施例9
(1)アリル (2-((1,3-ビス((1,3-ビス((2,2-ジメチル-1,3-ジオキサン-5-イル)オキシ)プロパン-2-イル)オキシ)プロパン-2-イル)アミノ)-2-オキソエトキシ)カルバメートの合成
【0116】
【化25】
【0117】
2-((((アリルオキシ)カルボニル)アミノ)オキシ)酢酸(125.9mg,0.72mmol)のアセトニトリル溶液を0℃に冷却し、30分間撹拌した後、HOBt(143.17mg,0.93mmol)とEDC・HCl(179.2mg,0.93mmol)を加え、30分間撹拌した。反応液の温度を徐々に室温まで戻した後、化合物25(500mg,0.72mmol)とトリエチルアミン(300μL,2.16mmol)を加えた。反応液を室温で24時間撹拌した。反応液に酢酸エチルを加えて抽出し、抽出液を無水硫酸ナトリウムで乾燥し、濾過した。得られた濾液を減圧濃縮し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離液:ジクロロメタン/メタノール=7/1)に付すことにより、黄色ガム状オイルである目的化合物28(400mg,0.47mmol,収率:65%)を得た。
FT-IR(KBr): 3510,3310,2991,2939,2874,1739,1672,1535,1455,1373,1334,1228,1199,1096,1043,939,829,755,732,666cm-1
1H NMR(CDCl3,500MHz):δ5.97-5.89(m,1H),5.37-5.26(dd,2H),4.66(d,J=5.5Hz,2H),4.41(s,2H),4.25(q,1H),4.0-3.96(m,8H),3.79-3.69(m,12H),3.66-3.54(m,10H),3.46-3.42(m,4H),1.43(d,J=5.0Hz,12H,1.42(s,12H)
13C NMR(CDCl3,125MHz):δ168.46(C,C=0),157.67(C,C=O),131.80(CH×1),118.72(CH2×1),98.28(C×4)78.72(CH×1),77.23(CH×1),75.39(CH2×1),71.19(CH×2),71.07(CH×2),68.85(CH2×2),68.72(CH2×2),68.60(CH2×2),66.54(CH2×1),62.53(CH2×2),62.49(CH2×2),62.44(CH2×2)62.39(CH2×2),49.18(CH×1),23.82(CH3×2),23.62(CH3×2),23.56(CH3×2),23.40(CH3×2)
HRMS(ESI-TOF) m/z calcd for C39682NaO18 [M+Na]+ 875.4365 found 875.4354
【0118】
(2)アリル (2-((5,11-ビス(((1,3-ジヒドロキシプロパン-2-イル)オキシ)メチル)-1,15-ジヒドロキシ-2,14-ビス(ヒドロキシメチル)-3,6,10,13-テトラオキサペンタデカン-8-イル)アミノ)-2-オキソエトキシ)カルバメートの合成
【0119】
【化26】
【0120】
化合物28(140mg,0.16mmol)を水(2mL)に溶解した後、イオン交換樹脂(「Amberlyst-15」,0.140g)を加え、室温で5時間撹拌した。反応液を濾過し、得られた濾液を減圧濃縮することにより、黄色ガム状オイルである目的化合物29(80mg,0.12mmol,収率:70%)を得た。
FT-IR(KBr): 3370,2933,2881,1731,1658,1549,1465,1413,1346,1262,1119,1052cm-1
1H NMR(CD3OD,500MHz):δ6.02-5.93(m,1H),5.38-5.24(dd,2H),4.66(d,J=5.0Hz,2H),4.34(s,2H),4.24(q,1H),3.79-3.71(m,13H),3.68-3.58(m,17H),3.45(quint,4H)
13C NMR(CD3OD,125MHz):δ169.76(C,C=O),158.49(C,C=O),132.19(CH×1),117.16(CH2×1),81.73(CH×2),81.70(CH×2),78.91(CH×2),75.03(CH2×1),69.42(CH2×4),68.50(CH2×2),65.99(CH2×1),61.12(CH2×4),61.08(CH2×4),49.54(CH×1)
HRMS(ESI-TOF) m/z calcd for C2753218 [M+H]+ 693.3293 found 693.3285
【0121】
実施例10: 2,2’-((2-イソチオシアナートプロパン-1,3-ジイル)ビス(オキシ))ビス(プロパン-1,3-ジオール)の合成
【化27】
【0122】
化合物23(116.0mg,0.32mmol)を0.1N塩化水素-メタノール溶液(3.0mL)に室温で加え、室温で3時間撹拌した。反応液を減圧濃縮することにより、無色オイルである目的化合物30(80mg,0.28mmol,収率:89%)を得た。
FT-IR(KBr): 3393,2932,2882,2097,1641,1459,1344,1122,1051,970,848,672,496cm-1
1H NMR(CD3OD,400MHz):δ4.04(quint,J=5.4Hz,1H),3.84(dd,J=10.0,4.8Hz,2H),3.80(dd,J=10.0,6.0Hz,2H),3.66(dd,J=11.6,4.8Hz,4H),3.60(dd,J=11.6,5.6Hz,4H),3.46(quint,J=5.6Hz,2H)
13C NMR(CD3OD,125MHz):δ135.9(N=C=S),83.4(CH),70.5(CH2),62.6(CH),59.6(CH2
HRMS(ESI-TOF) m/z calcd for C1019NO6SNa [M+Na]+ 304.0831 found 304.0803
【0123】
実施例11: 2,2’-((2-(3-((1,3-ビス((1,3-ジヒドロキシプロパン-2-イル)オキシ)プロパン-2-イル)オキシ)-2-イソチオシアネートプロポキシ)プロパン-1,3-ジイル)ビス(オキシ))ビス(プロパン-1,3-ジオール)の合成
【0124】
【化28】
【0125】
化合物26(1.60g,2.18mmol)を0.1N塩化水素-メタノール溶液(10mL)に溶解し、室温で3時間撹拌した。溶媒を減圧留去することにより、ガム状オイルである目的化合物31(1.2g,2.08mmol,収率:96%)を得た。
FT-IR (KBr): 3372,2933,2876,2106,1653,1541,1458,1401,1345,1263,1204,1119,1071,831,677cm-1
1H NMR(CD3OD,400MHz):δ4.07(quint,J=4.8Hz,1H),3.89-3.55(m,30H),3.43(quint,J=4.4Hz,4H)
13C NMR(CD3OD,125MHz):δ135.42(C,SCN),83.12(CH×2),83.10(CH×2),80.61(CH×2),71.01(CH2×3),70.77(CH2×3),62.53(CH2×4),62.52(CH2×4),59.51(CH×1)
HRMS(ESI-TOF) m/z calcd for C2243NNaO14S [M+Na]+ 600.2302 found 600.2306
【0126】
実施例12
(1)プロパン-2-オン O-(1,3-ビス((2,2-ジメチル-1,3-ジオキサン-5-イル)オキシ)プロパン-2-イル)オキシムの合成
【0127】
【化29】
【0128】
化合物32(474mg,1.0mmol)とアセトオキシム(292mg,4.0mmol)を1,4-ジオキサンに溶解した溶液に、砕いた水酸化カリウム(112mg,2.0mmol)を加え、60℃で22時間撹拌した。次いで、反応液を水(20mL)に注いだ。トルエン(40mL)で抽出し、有機層を水で3回、飽和食塩水で1回洗浄し、無水硫酸マグネシウム上で乾燥し、濃縮し、薄い黄色のオイル状の粗製物を得た。その後、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離液:塩化メチレン/酢酸エチル=5/2→2/1)で精製し、オイル状の目的化合物33(300mg,0.8mmol,収率:80%)を得た。
FT-IR(neat):2991,2940,2873,1654,1455,1372,1332,1282,1250,1227,1199,1154,1095,1043,937,831,732cm-1
1H NMR(CDCl3,500MHz):δ4.24(quint,J=5.0Hz,1H,=NO-CH(-CH2-)2),3.95(dd,J=4.5,12.0Hz,4H,four of (-CH(-CH2-)22),3.72(dd,J=7.0,12.0Hz,4H,four of (-CH(-CH2-)22),3.69(d,J=5.5Hz,4H,=NO-CH(-CH2-)2),3.49(tt,J=4.5,7.0Hz,2H,(-O-CH(-CH2-)22),1.86(s,3H,three of (CH3-)2C=N-),1.85(s,3H,three of (CH3-)2C=N-),1.44(s,6H,six of ((-O-)2C(-CH322),1.40(s,6H,six of ((-O-)2C(-CH322
13C NMR(CDCl3,125MHz):δ155.4(C,(CH3-)2C=N-),98.1(C×2,((-O-)2C(-CH322),80.6(CH,-O-CH(-CH2-)2),70.9(CH×2,(-O-CH(-CH2-)22),67.8(CH2×2,-CH(-CH2-)2),62.7(CH2×4,(-CH(-CH2-)22),25.0(CH3×2,two of ((-O-)2C(-CH322),22.2(CH3×2,two of ((-O-)2C(-CH322),21.8(CH3,one of (CH3-)2C=N-),15.8(CH3,one of (CH3-)2C=N-)
HRMS(ESI-TOF) m/z calcd for C1833NNaO7 [M+Na]+ 398.2155 found 398.2163
【0129】
(2)2,2’-((2-(アミノオキシ)プロパン-1,3-ジイル)ビス(オキシ))ビス(プロパン-1,3-ジオール)の合成
【0130】
【化30】

化合物33(375mg,1.0mmol)に1N塩酸(2mL)を加え、室温で2時間撹拌した。得られた反応液を濃縮した後、1N塩酸(2mL)を加え、反応容器を80℃の水浴に漬け、減圧下で1.5時間かけて濃縮した。この操作を4回繰り返した。得られた粗製物を、塩基性のイオン交換樹脂(「アンバーライト IRA910CT CL」オルガノ社製)を用いたカラム精製(溶離液:イオン交換水のみ)に付し、続いて酸性のイオン交換樹脂(「アンバーライト 200CT Na」オルガノ社製)を用いたカラム精製(溶離液:イオン交換水のみ→28%アンモニア水)に付し、濁りが混じったオイルを得た。得られたオイルをメタノールに溶解し、白い濁りをシリンジフィルターで取り除き、得られた濾液を濃縮することにより、オイル状の目的化合物34(220mg,0.86mmol,収率:86%)を得た。
FT-IR(KBr):3387,2946,2882,1646,1465,1412,1353,1220,1114,1055,996,975,911,831,677,571cm-1
1H NMR(CD3OD,500MHz):δ3.89(quint,J=4.5Hz,1H),3.81-3.73(m,4H),3.67(dd,J=11.5 and 4.5Hz,4H),3.60(dd,J=12.0 and 6.0Hz,4H),3.45(quint,J=5.0Hz,2H)
13C NMR(CD3OD,125MHz):δ82.55(CH),81.79(CH),68.78(CH2),61.14(CH2),61.05(CH2
HRMS(ESI-TOF) m/z calcd for C921NNaO7 [M+Na]+ 278.1216 found 278.1238
【0131】
実施例13: プロパン-2-オン O-(1,3-ビス((1,3-ビス((2,2-ジメチル-1,3-ジオキサン-5-イル)オキシ)プロパン-2-イル)オキシ)プロパン-2-イル)オキシムの合成
【0132】
【化31】
【0133】
化合物35(348mg,0.41mmol)とアセトオキシム(120mg,1.64mmol)を1,4-ジオキサン(0.82mL)に溶解した溶液に、砕いた水酸化カリウム(46mg,0.82mmol)を加え、60℃で24時間撹拌した。得られた反応液を水(20mL)に注いだ。ジクロロメタン(30mL)で抽出し、抽出液を水(10mL)で2回、飽和食塩水(10mL)で1回洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥し、濃縮し、薄い黄色のオイル状の粗製物を得た。得られた粗製物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離液:塩化メチレン/アセトン=3/1)に付し、薄黄色のオイル状の目的化合物36(190mg,0.25mmol,収率:61%)を得た。
FT-IR(neat):2991,2939,2916,2873,2245,1654,1455,1372,1333,1283,1250,1227,1199,1153,1089,1043,997,938,920,831,732,647cm-1
1H NMR(CDCl3,500MHz):δ4.24(quint,J=5.0Hz,1H,=NO-CH(-CH2-)2),3.96(dd,J=4.0,4.0Hz,4H,four of (-CH(-CH2-)22),3.94(dd,J=4.0,4.0Hz,4H,four of (-CH(-CH2-)22),3.84-3.65(m,12H,(-CH(-CH2-)22,four of (-CH(-CH2-)22),3.63-3.50(m,10H,(-O-CH(-CH2-)22,four of (-CH(-CH2-)22,=NO-CH(-CH2-)2),3.50-3.42(m,4H,((-O-CH(-CH2-)222),1.86(s,3H,three of (CH3-)2C=N-),1.85(s,3H,three of (CH3-)2C=N-),1.43(s,12H,twelve of (((-O-)2C(-CH3222),1.39(s,12H,twelve of (((-O-)2C(-CH3222
13C NMR(CDCl3,125MHz):δ155.0(C,(CH3-)2C=N-),98.1(C×4,(((-O-)2C(-CH3222),80.9(CH,-O-CH(-CH2-)2),78.8(CH×2,(-O-CH(-CH2-)22),70.9(CH×2,two of ((-O-CH(-CH2-)222),70.9(CH×2,two of ((-O-CH(-CH2-)222),69.3(CH2×2,-CH(-CH2-)2),68.5(CH2×2,two of (-CH(-CH2-)22),68.5(CH2×2,two of (-CH(-CH2-)22),62.6(CH2×4,four of ((-CH(-CH2-)222),62.6(CH2×4,four of ((-CH(-CH2-)222),24.6(CH3×4,four of (((-O-)2C(-CH3222),22.2(CH3×4,four of (((-O-)2C(-CH3222),21.8(CH3,one of (CH3-)2C=N-),15.8(CH3,one of (CH3-)2C=N-)
HRMS(ESI-TOF): m/z calcd for C3665NNaO15 [M+Na]+ 774.4252 found 774.4254
【0134】
実施例14: 2,2’,2’’,2’’’-((((2-(アミノオキシ)プロパン-1,3-ジイル)ビス(オキシ))ビス(プロパン-2,1,3-トリイル))テトラキス(オキシ))テトラキス(プロパン-1,3-ジオール)の合成
【0135】
【化32】
【0136】
化合物36(190mg,0.25mmol)に1N塩酸(1mL)を加え、室温で2時間撹拌した。当該反応液を濃縮した後、1N塩酸(1mL)を加え、50℃で1.5時間減圧濃縮した。この操作を4回繰り返した。得られた粗製物を、塩基性のイオン交換樹脂(「アンバーライト IRA910CT CL」オルガノ社製)を用いたカラムクロマトグラフィー(溶離液:イオン交換水のみ)に付した。次いで、酸性のイオン交換樹脂(「アンバーライト 200CT Na」オルガノ社製)を用いたカラムクロマトグラフィー(溶離液:イオン交換水→28%アンモニア水)に付し、白い濁りが混じったオイルを得た。得られたオイルをメタノールに溶解し、シリンジフィルターを使って白い濁りを取り除き、得られた濾液を濃縮することにより、オイル状の目的化合物37(90mg,0.16mmol,収率:64%)を得た。
FT-IR (neat):3370,2930,2879,1596,1461,1410,1348,1306,1245,1120,1068,973,908,845cm-1
1H NMR(CD3OD,500MHz):δ3.88-3.82(m,1H,H2NO-CH(-CH2-)2),3.82-3.67(m,14H,H2NO-CH(-CH2-)2),-CH(-CH2-)22),(-CH(-CH2-)22),3.64(dd,J=5.5,11.5Hz,8H,eight of ((-CH(-CH2-)222),3.57(dd,J=5.5,11.5Hz,8H,eight of ((-CH(-CH2-)222),3.43(quint,J=5.0Hz,4H,((-CH(-CH2-)222
13C NMR(CD3OD,125MHz):δ82.3(CH,H2NO-CH(-CH2-)2),81.7(CH×4,((-CH(-CH2-)222),79.0(CH×2,(-CH(-CH2-)22),69.3(CH2×4,(-CH(-CH2-)22),68.8(CH2×2,H2NO-CH(-CH2-)2),61.1(CH2×4,four of ((-CH(-CH2-)222),61.0(CH2×4,four of ((-CH(-CH2-)222
HRMS(ESI-TOF): m/z calcd for C2145NNaO15 [M+Na]+ 574.2687 found 574.2672
【0137】
実施例15: 防曇性試験
実施例2(2)で製造した化合物6(599mg)をエタノール:水=50:50の混合溶媒(10mL)に溶解し、コーティング剤を得た。
表面加工塗装のされていない一般的な軟質ガラス(厚さ:5mm)を10.5cm×4.5cmに切断し、1N塩酸で3回、蒸留水で1回洗浄し、きれいな布で水分をふき取った。
上記コーティング剤(0.1mL)をガラス試料の中央の直径約2cmの円形の範囲に塗布し、室温で30分間静置した。次いで、加温が可能な有機合成スターラー(「サーモ・マイティ・スターラ HHE-19G-U」小池精密機器製作所社製)を使って、ガラス試料の裏面から約100℃で30分間加熱した。
塗布部分を目視で観察したが、塗布部分と非塗布部分の境界は認識できなかった。また、指で塗布部分の感触を確認したが、厚みの変化はまったく感じられず、むらなく平坦であった。
防曇性を評価するために、湯気を発生する鍋に、塗布面を下にしてガラス試料をかざした。結果を図1に示す。
【0138】
図1に示される通り、ガラス試料の湯気に接した部分は曇って視界が遮られたが、本発明に係るコーティング剤を塗布した円形部分は曇っておらず、向こう側にある紙の模様をクリアに確認することができた。かかる結果より、本発明に係るコーティング剤は優れた防曇効果を示すことが実証された。
図1