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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022184356
(43)【公開日】2022-12-13
(54)【発明の名称】冷蔵庫
(51)【国際特許分類】
   F25D 23/08 20060101AFI20221206BHJP
【FI】
F25D23/08 R
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021092149
(22)【出願日】2021-06-01
(71)【出願人】
【識別番号】503376518
【氏名又は名称】東芝ライフスタイル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100141139
【弁理士】
【氏名又は名称】及川 周
(74)【代理人】
【識別番号】100205785
【弁理士】
【氏名又は名称】▲高▼橋 史生
(74)【代理人】
【識別番号】100203297
【弁理士】
【氏名又は名称】橋口 明子
(74)【代理人】
【識別番号】100175824
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100135301
【弁理士】
【氏名又は名称】梶井 良訓
(72)【発明者】
【氏名】早川 隆人
【テーマコード(参考)】
3L102
【Fターム(参考)】
3L102JA01
3L102MB09
(57)【要約】
【課題】デザイン性を低下させることなく、製造時の不具合を抑制できる冷蔵庫を提供する。
【解決手段】実施形態の冷蔵庫は、冷蔵庫の外面の少なくとも一部を形成する外箱と、冷蔵庫の内面の少なくとも一部を形成する内箱と、を有する筐体と、外箱と内箱との間の内部空間に充填された発泡断熱材と、を持つ。外箱は、発泡前の発泡断熱材を内部空間に注入するための注入口を有する。内箱は、注入口から注入される発泡前の発泡断熱材を内部空間において案内する案内面を有する。案内面は、外箱へ向かって凸状をなし、発泡断熱材の注入方向において注入口と対向する。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷蔵庫の外面の少なくとも一部を形成する外箱と、前記冷蔵庫の内面の少なくとも一部を形成する内箱と、を有する筐体と、
前記外箱と前記内箱との間の内部空間に充填された発泡断熱材と、を備え、
前記外箱は、発泡前の発泡断熱材を前記内部空間に注入するための注入口を有し、
前記内箱は、前記注入口から注入される発泡前の前記発泡断熱材を前記内部空間において案内する案内面を有し、
前記案内面は、前記外箱へ向かって凸状をなし、前記発泡断熱材の注入方向において前記注入口と対向する、
冷蔵庫。
【請求項2】
前記筐体の左側壁、右側壁及びこれらの後端側を接続する後壁のうち、
前記案内面は、前記左側壁及び前記右側壁と、前記後壁との境界部にそれぞれ設けられている、
請求項1に記載の冷蔵庫。
【請求項3】
前記案内面は、前記境界部のうち前記冷蔵庫の上下方向の少なくとも一部に形成されているとともに、前記上下方向において一定の曲率をなす、
請求項2に記載の冷蔵庫。
【請求項4】
前記後壁に設けられた第1断熱材と、
前記左側壁及び前記右側壁に設けられた第2断熱材と、を備え、
前記第1断熱材及び前記第2断熱材は、前記発泡断熱材よりも断熱度が高く、
前記注入口から離れて配置された前記第1断熱材及び前記第2断熱材のうち、前記第1断熱材は、前記第2断熱材よりも前記注入口から離れた位置に配置されている、
請求項2又は3に記載の冷蔵庫。
【請求項5】
前記第1断熱材及び前記第2断熱材のうち、
前記案内面は、前記第2断熱材に対向する、
請求項4に記載の冷蔵庫。
【請求項6】
前記第1断熱材は、前記後壁を構成する前記内箱の第1内箱側内壁面と前記外箱の第1外箱側内壁面との間の第1内部空間に設けられている、
請求項4又は5に記載の冷蔵庫。
【請求項7】
前記筐体の前記左側壁及び前記右側壁を構成する前記内箱の第2内箱側内壁面と前記外箱の第2外箱側内壁面との間の第2内部空間は、前記第1内部空間よりも狭く、
前記案内面は、発泡前の前記発泡断熱材を前記第2内部空間へ案内する機能を有する、
請求項6に記載の冷蔵庫。
【請求項8】
前記注入口の中心線と、前記案内面との接線との交点位置において、
前記中心線に垂直な第1直線と、前記接線とのなす角度θは、45°以上である、
請求項1から7のいずれか1項に記載の冷蔵庫。
【請求項9】
前記内箱の内側に形成される貯蔵室内に互いに間隔をおいて設置される複数の棚を有し、
前記案内面は、少なくとも前記複数の棚どうしの間に設けられている、
請求項1から8のいずれか1項に記載の冷蔵庫。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、冷蔵庫に関する。
【背景技術】
【0002】
冷蔵庫本体を構成する外箱と内箱との間に発泡断熱材を有した冷蔵庫が知られている。このような冷蔵庫においては、外箱に形成された注入口から注入した発泡断熱材が内箱で跳ね返ることによる漏れを防ぐために、注入口と内箱との間に十分な距離を確保する必要があった。そこで、例えば、注入口に対向する内箱の一部を貯蔵室側に突出させることで、注入された発泡断熱材の跳ね返りを防ぐ距離を確保する構造が提案されている。
しかしながら、内箱の一部を貯蔵室側に突出させたことによって内箱の表面に段差が生じてしまい、貯蔵室側のデザイン性が低下するおそれがあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010-145002号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明が解決しようとする課題は、デザイン性を低下させることなく、製造時の不具合を抑制できる冷蔵庫を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
実施形態の冷蔵庫は、冷蔵庫の外面の少なくとも一部を形成する外箱と、前記冷蔵庫の内面の少なくとも一部を形成する内箱と、前記外箱と前記内箱との間の内部空間部に充填される発泡断熱材と、を持つ。前記外箱は、発泡前の発泡断熱材を前記内部空間に注入するための注入口を持つ。前記内箱は、前記注入口から注入される前記発泡前の発泡断熱材を前記内部空間において案内する案内面を持つ。前記案内面は、前記外箱へ向かって凸状をなし、前記発泡断熱材の注入方向において前記注入口と対向する。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1図1は、冷蔵庫を示す正面図。
図2図2は、図1中に示された冷蔵庫のF2-F2線に沿う断面図。
図3図3は、図2における筐体の上壁側(F3部)の拡大図。
図4図4は、図7中に示された冷蔵庫のF4-F4線に沿う部位の断面図。
図5図5は、冷蔵庫における左側壁の内部の真空断熱材(第2断熱材)の配置例を示す図。
図6図6は、図4における筐体の境界部の周辺(F5部)の拡大図である。
図7図7は、冷蔵庫(筐体)を後壁側の構造を示す斜視図である。
図8図8は、図7中に示された冷蔵庫のF4-F4線に沿う部位に相当する断面図である。
図9図9は、注入された液体状の発泡断熱材が発泡する様子を部分的に示す拡大断面図である。
図10図10は、冷蔵庫の冷蔵室の内箱を開口側から見た図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、実施形態の冷蔵庫を、図面を参照して説明する。以下の説明では、同一または類似の機能を有する構成に同一の符号を付す。そして、それら構成の重複する説明は省略する場合がある。本明細書では、冷蔵庫の正面に立つ使用者から冷蔵庫を見た方向を基準に、左右を定義している。また、冷蔵庫から見て冷蔵庫の正面に立つ使用者に近い側を「前」、遠い側を「後ろ」と定義している。本明細書において「横幅方向」とは、上記定義における左右方向を意味する。本明細書において「奥行方向」とは、上記定義における前後方向を意味する。「上下方向」とは、冷蔵庫の高さ方向を意味している。
【0008】
[1.冷蔵庫の全体構成]
図1から図8を参照し、実施形態の冷蔵庫1について説明する。
図1は、冷蔵庫1を示す正面図である。図2は、図1中に示された冷蔵庫1のF2-F2線に沿う断面図である。図3は、図2における筐体10の上壁21側(F3部)の拡大図である。図4は、図7中に示された冷蔵庫1のF4-F4線に沿う部位の断面図である。図5は、冷蔵庫1における左側壁23の内部の真空断熱材(第2断熱材)32,33の配置例を示す図である。図6は、図4における筐体の境界部51の周辺(F5部)の拡大図である。
【0009】
まず、冷蔵庫1の全体構成について説明する。
ただし、冷蔵庫1は、以下に説明する構成の全てを有する必要はなく、いくつかの構成が適宜省略されてもよい。
【0010】
図1に示すように、冷蔵庫1は、例えば、冷蔵庫本体5および複数の扉11を有する。
冷蔵庫本体5は筐体10を含む。図2に示すように、筐体10は、例えば、内箱10a、外箱10b、及び断熱部53を含む。
【0011】
図2に示すように、内箱10aは、筐体10の内面を形成する部材であり、例えば合成樹脂製である。
外箱10bは、筐体10の外面を形成する部材であり、例えば金属製である。外箱10bは、内箱10aよりも一回り大きく形成されており、内箱10aの外側に配置されている。外箱10bは、筐体10の前面を除く外壁面を形成する略直方体である。
ただし、外箱10bの下端部の後側には、機械室26を配置するための凹部が形成されている。
【0012】
断熱部53は、内箱10aと外箱10bとの間に設けられ、筐体10の断熱性を高めている。断熱部53は、例えば、発泡断熱材10cと、複数の真空断熱材30と、複数の薄型断熱材40とを含む。
【0013】
発泡断熱材10cは、例えば、発泡ウレタンのような発泡状の断熱材であり、内箱10aと外箱10bとの間に形成される内部空間内に充填されている。具体的に、発泡断熱材10cは、流動性を有する液体の状態で、内箱10aと外箱10bとの間に形成される空間内に注入され、その後発泡することで形成される。
【0014】
真空断熱材30(VIP:Vacuum Insulation Panel)は、発泡断熱材10cよりも断熱度が高い。複数の真空断熱材30は、例えば、内部に隙間を有する芯材と、芯材を大気圧に比べて減圧状態で密閉して収容する袋を形成する外包材と、をそれぞれ有する。芯材は、例えば、グラスウールのような繊維素材、または発泡体のような多孔質体である。このような複数の真空断熱材30は、内箱10aと外箱10bとの間に形成される内部空間内に配置されている。
【0015】
複数の薄型断熱材40は、例えば、エアロゲル、キセロゲル、またはクライオゲルを含み、柔軟性(可撓性)を有するシート状にそれぞれ形成されている。各薄型断熱材40は、内箱10a及び外箱10bの内面形状に沿って変形され、当該内箱10a及び外箱10bの内面に沿ってそれぞれ貼り付けられている。
【0016】
図1に示すように、筐体10は、上壁21、下壁22、左側壁23、右側壁24、および後壁25(図2参照)を有する。左側壁23、右側壁24、および後壁25は鉛直に広がっている。後壁25は、左側壁23および右側壁24の後端どうしを接続している。左側壁23および右側壁24は、下壁22の左右の端部から上方に起立し、上壁21の左右の端部に繋がる。上壁21および下壁22は、上下方向で互いに対向し、略水平に広がっている。図2に示すように、後壁25は、下壁22の後端部から上方に起立し、上壁21の後端部に繋がる。
【0017】
図2に示すように、筐体10の内部には、複数の貯蔵室27が形成されている。複数の貯蔵室27は、例えば、冷蔵室27A、野菜室27B、製氷室27C(図1参照)、小冷凍室27D、および主冷凍室27Eを含む。本実施形態では、最上部に冷蔵室27Aが配置され、冷蔵室27Aの下方に野菜室27Bが配置され、野菜室27Bの下方に製氷室27Cおよび小冷凍室27Dが配置され、製氷室27Cおよび小冷凍室27Dの下方に主冷凍室27Eが配置されている。
【0018】
ただし、複数の貯蔵室27の配置は、上記例に限定されず、例えば野菜室27Bと主冷凍室27Eの配置が逆でもよい。筐体10は、各貯蔵室27の前面側に、各貯蔵室27に対して食材の出し入れを可能にする開口を有する。
【0019】
図2に示すように、筐体10は、第1仕切部28と、第2仕切部29と、を有する。第1仕切部28および第2仕切部29は、例えば、それぞれ略水平方向に沿う仕切壁である。第1仕切部28は、冷蔵室27Aと野菜室27Bとの間に位置し、冷蔵室27Aと野菜室27Bとの間を仕切っている。第1仕切部28は、冷蔵室27Aの底壁を形成するとともに、野菜室27Bの天井壁を形成している。
【0020】
第2仕切部29は、野菜室27Bと、製氷室27C(図1参照)および小冷凍室27Dとの間に位置し、野菜室27Bと、製氷室27C(図1参照)および小冷凍室27Dとの間を仕切っている。第2仕切部29は、野菜室27Bの底壁を形成するとともに、製氷室27C(図1参照)および小冷凍室27Dの天井壁を形成している。
【0021】
複数の貯蔵室27の開口は、複数の扉11によって開閉可能に覆われている。図1に示すように、複数の扉11は、例えば、左冷蔵室扉11Aa、右冷蔵室扉11Ab、野菜室扉11B、製氷室扉11C、小冷凍室扉11D、および主冷凍室扉11Eを含む。
左冷蔵室扉11Aaおよび右冷蔵室扉11Abは、冷蔵室27Aの開口を閉じる。野菜室扉11Bは、野菜室27Bの開口を閉じる。製氷室扉11Cは、製氷室27Cの開口を閉じる。小冷凍室扉11Dは、小冷凍室27Dの開口を閉じる。主冷凍室扉11Eは、主冷凍室27Eの開口を閉じる。
左右に隣り合って設けられた左冷蔵室扉11Aaおよび右冷蔵室扉11Abは、観音開き式の一対の扉である。
野菜室扉11B、製氷室扉11C(図1参照)、小冷凍室扉11D、および主冷凍室扉11Eは、例えば、引き出し式の扉である。
【0022】
複数の扉11は、それぞれの内部に適宜の断熱材を含む。適宜の断熱材には、上述した発泡断熱材10c、薄型断熱材40、および真空断熱材30の少なくとも1つが含まれてもよい。例えば、真空断熱材30が含まれる場合、各扉11の正面視および厚さ方向における真空断熱材30の配置位置は特に限定されない。
【0023】
筐体10の後側(後壁25)には、筐体10とともに冷蔵庫本体5を形成する種々の部材が配置されている。冷蔵庫本体5を形成する部材としては、例えば、冷媒が循環するパイプ、冷却ユニット15A、15B、流路形成部材14A、14B、冷却ファン16A、16B、および制御基板17などが挙げられる。
冷蔵庫本体5において、筐体10の後側の下部には、例えば、圧縮機、凝縮器、蒸発皿などが配置された機械室26が設けられている。
【0024】
冷却ユニット15Aは、冷蔵室27Aの後側に配置されており、冷蔵室27Aおよび野菜室27Bを冷却する。
冷却ユニット15Bは、主冷凍室27Eの後側に配置されており、製氷室27C、小冷凍室27D、および主冷凍室27Eを冷却する。
流路形成部材14Aは、冷却ユニット15Aから供給される冷気をそれぞれ冷蔵室27A、野菜室27Bに流す流路を形成する。
流路形成部材14Bは、冷却ユニット15Bから供給される冷気を製氷室27C、小冷凍室27D、および主冷凍室27Eに流す流路を形成する。
【0025】
冷却ファン16Aは、冷却ユニット15Aで形成された冷気を流路形成部材14Aで囲まれた流路に送風し、野菜室27Bおよび冷蔵室27Aの内部に循環する冷気の流れを形成する。
冷却ファン16Bは、冷却ユニット15Bで形成された冷気が流路形成部材14Bで囲まれた流路を送風し、製氷室27C、小冷凍室27D、および主冷凍室27Eの内部に循環する冷気の流れを形成する。
【0026】
制御基板17は、冷蔵庫1の全体を統括的に制御する。例えば、制御基板17は、複数の貯蔵室27に設けられた温度センサの検出結果に基づき、冷却ユニット15A、15B、冷却ファン16A、16B、および圧縮機等の動作を制御する。
制御基板17は、湿気を避けることができる場所に配置することが好ましい。本実施形態では、冷蔵室27Aの上方における後側の外箱10b上に配置されている。
【0027】
次に、冷蔵庫1の断熱構造について説明する。
(筐体10の上壁21側の断熱構造)
図3に示すように、筐体10の上壁21は、内箱10aの一部及び外箱10bの一部により構成されている。内箱10aは、筐体10の上壁21を構成する第1内壁面21a、第2内壁面21b、及び傾斜面21cを含む。
第1内壁面21aは、筐体10(上壁21)の前方から後方へ向けて略水平に延びている。第2内壁面21bは、第1内壁面21aよりも後方に位置し、第1内壁面21aよりも低い高さに位置する。傾斜面21cは、第1内壁面21aと第2内壁面21bとの間に位置し、第1内壁面21aの後端と第2内壁面21bの前端とを繋いでいる。これら第2内壁面21b及び傾斜面21cにより、第1内壁面21aよりも下方に窪んだ凹部19aを形成している。筐体10の上壁21を構成する第1内壁面21a、第2内壁面21b、及び傾斜面21cに亘って、シート状に形成された薄型断熱材10dが貼り付けられている。
【0028】
外箱10bは、筐体10の上壁21を構成する第1内壁面21d、第2内壁面21e、傾斜面21fを含む。第1内壁面21dは、筐体10(上壁21)の前方から後方へ向けて略水平に延びている。第2内壁面21eは、第1内壁面21dよりも後方に位置し、第1内壁面21d及び上記第1内壁面21aよりも低い高さに位置する。傾斜面21fは、第1内壁面21d及び第2内壁面21eの間に位置し、第1内壁面21dの後端と第2内壁面21eの前端とを繋いでいる。これら第2内壁面21e及び傾斜面21fにより、第1内壁面21dよりも下方に窪んで制御基板17が配置される凹部19bが形成されている。
【0029】
図3に示すように、筐体10の上壁21を構成する内箱10aおよび外箱10bの間には、複数の真空断熱材30の一例である真空断熱材31が配置されている。上壁21を構成する外箱10bの第1内壁面21dに接着部材などによって固定されている。真空断熱材31の平面視の形状は、例えば、矩形である。真空断熱材31の後端は、内箱10aの傾斜面21cよりも前方に位置する。
【0030】
図3に示すように、真空断熱材31の奥行方向の長さL1は、外箱10bの第1内壁面21dの奥行方向の長さL2よりも短く(L1<L2)、内箱10aの第1内壁面21aの奥行方向の長さL3よりも長い(L3<L1)。真空断熱材31の前端から第1内壁面21dの前端までの距離L4よりも、真空断熱材31の後端から第1内壁面21dの後端までの距離L5の方が大きい(L4<L5)。
【0031】
なお、上壁21の断熱性をさらに向上するため、上壁21における外箱10bの第1内壁面21dのうち真空断熱材31を除く領域に、シート状に形成された薄型断熱材が貼り付けられていてもよい。
【0032】
上壁21において、内箱10aと外箱10bとの間において真空断熱材31(および薄型断熱材10d)を除く内部空間K1には、発泡断熱材10cが略隙間なく充填されている。これにより、上壁21は断熱性を有する。これら内箱10aと外箱10bとの間には、冷媒を循環させるパイプ等の適宜の部材が配置されていることがある。
【0033】
(筐体10の左側壁23及び右側壁24の断熱構造)
図4に示すように、筐体10の左側壁23および右側壁24は、内箱10aの内壁面23a,24aと、外箱10bの内壁面(第2外箱側内壁面)23b,24bと、を含んでいる。内箱10aの内壁面23a,24aは、先端側へ行くにしたがって左右方向で互いに離れる方向へ傾斜している。このため、内箱10aの内側に形成される貯蔵室27の左右方向の幅は、奥側よりも開口側の方が僅かに広くなっている。
【0034】
左側壁23および右側壁24は、互いに同様の断熱構造を有する。
例として、図5に、筐体10における左側壁23の内部の真空断熱材32,33の配置例を示す。
図4に示すように、筐体10の左側壁23を構成する内箱10aおよび外箱10bとの間には、図5に示すような複数の真空断熱材30の一例である真空断熱材(第2断熱材)32,33が、上下方向に3枚並べて配置されている。これら真空断熱材32,33は、左側壁23の内壁面23bの略全体を覆っている。真空断熱材32、33の外形、個数は、左側壁23の内壁面23bの略全体を略覆うことができる外形、個数であれば、特に限定されない。
【0035】
図5に示す例では、真空断熱材32は、上壁21側に設けられた真空断熱材31と同様、冷蔵庫1の右側から見た側面視の形状が矩形である。真空断熱材32は、外形線が奥行方向および上下方向に延びる姿勢で、左側壁23における左側の内壁面23b上に固定されている。真空断熱材32における奥行方向の長さは、内壁面23bの奥行方向の長さよりも少し短い。真空断熱材32は、上下方向に隣接して2枚配置されている。
【0036】
真空断熱材33は、冷蔵庫1の右側から見た側面視の形状が略L字形の凹六角形である。真空断熱材33の奥行方向の長さは、真空断熱材33の奥行方向の長さに等しい。真空断熱材32の下端の外形は、内壁面23bの下端の外形に略沿って屈曲している。真空断熱材33は、左側壁23の下端側に配置され、上記2枚の真空断熱材32の下方に位置する。なお、右側壁24は、左側壁23と同様に、2枚の真空断熱材32と1枚の真空断熱材33を上下に並べた構成のため説明を省略する。
【0037】
図4に示すように、筐体10の左側壁23,右側壁24に設けられた真空断熱材32,33は、左側壁23,右側壁24の奥行方向の長さL6よりも短い長さL7を有する。真空断熱材32(33:図5)は、奥行方向において、左側壁23,右側壁24における外箱10bの内壁面23b,24bのうち、後壁25側の端部から所定の距離をおいた位置に貼り付けられている。
【0038】
図6に示すように、例えば、右側壁24に設けられた真空断熱材32は、奥行方向における後壁25側の端面32aが、上述した注入口60の中心線Oと境界部51の案内面51aの接線Mとの交点位置Gに一致する位置に配置されている。真空断熱材32の表面32bから交点位置Gまでの距離L8は、真空断熱材32の厚さt以上である(t<L8)。
【0039】
図6に示すように、左側壁23及び右側壁24において、内箱10aと外箱10bとの間で真空断熱材32,33を除く各内部空間(第2内部空間)K2には、発泡断熱材10cがそれぞれ略隙間なく充填されている。これにより、左側壁23および右側壁24は断熱性を有する。
【0040】
本実施形態では、筐体10に用いる断熱材(本発明に係る第1断熱材及び第2断熱材)として、発泡断熱材10cよりも断熱性の高い真空断熱材30を採用している。発泡断熱材10cよりも高い断熱性を有する真空断熱材30を採用したことにより、例えば、筐体10の左側壁23及び右側壁24における壁(発泡断熱材10c)の厚さを薄くすることが可能となった。これにより、貯蔵室27の容量を大きくすることができる一方、左側壁23及び右側壁24内に形成される内部空間K2は従来よりも狭くなる。このため、製造時において、液体状の発泡断熱材10cが各内部空間K2内へ充填され難くなるおそれがあったが、本実施形態のように、注入口60(注入部材90)に対向する内箱10aの境界部51に上述したような案内面51aを設けたことによって、左側壁23及び右側壁24内の狭い内部空間K2であっても、効率よく液体状の発泡断熱材10cを充填させることが可能である。
【0041】
なお、本実施形態では、真空断熱材30を採用しているが、これに限らない。例えば、エアロゲルや発泡スチロール等であってもよい。
【0042】
(筐体10の後壁25の断熱構造)
図2に示すように、側方から見たとき、筐体10の後壁25は、内箱10aの内壁面(第1内箱側内壁面)25a,25bと、外箱10bの内壁面(第1外箱側内壁面)25cと、を含む。後壁25は、上方から下方へ向けてそれぞれ鉛直に延びている。内箱10aのうち、内壁面25aは冷蔵室27Aの後方に位置し、内壁面25bは小冷凍室27D及び主冷凍室27Eの後方に位置する。
【0043】
図4に示すように、上方から見たとき、後壁25の内壁面25aは、奥行方向において内壁面25a内で最も外箱10bに近い第1面25aaと、第1面25aaの左右両側に位置し当該第1面25aaよりも外箱10bから前方へ離れた一対の第2面25abと、第1面25aaの左右両端と各第2面25abとを奥行方向で繋ぐ一対の第3面25acと、を有する。
【0044】
図4に示すように、筐体10の後壁25を構成する内箱10aと外箱10bとの間には、真空断熱材(第1断熱材)34が配置されている。真空断熱材34は、内箱10aと外箱10bとの間の内部空間(第1内部空間)K3を部分的に埋めるようにして設けられている。真空断熱材34は、内箱10aと外箱10bとの間の隙間を埋める中央部34aの厚さよりも、左右方向(幅方向)の両端部34bの方が薄く形成されている。各両端部34bと外箱10bの内壁面25cとの間の隙間は発泡断熱材10cによって埋められる。真空断熱材34は、内箱10aの内壁面25a及び外箱10bの内壁面25cに接着部材などによって固定されている。
なお、本実施形態では、真空断熱材34の中央部34aと左右の両端部34bとで厚さが異なっているが、左右方向で一定の厚さを有していてもよい。例えば、真空断熱材34の厚さが、内箱10aと外箱10bとの間の空間K3の奥行寸法よりも狭い場合、その前面を内箱10aの内壁面25aに貼り合わせることによって、真空断熱材34と外箱10bの内壁面25cとの間に形成される隙間に発泡断熱材10cが充填される。逆に、真空断熱材34の後面を外箱10bの内壁面25cに貼り合わせた場合は、真空断熱材34と内箱10aの内壁面25aとの間に形成される隙間に発泡断熱材10cが充填される。また、真空断熱材34の厚さが、内箱10aと外箱10bとの間の空間K3の奥行寸法と同じである場合は、真空断熱材34と内箱10a及び外箱10bとの間には発泡断熱材10cが充填されない構成となる。
【0045】
図4に示すように、筐体10の後壁25に設けられた真空断熱材34は、後壁25の左右方向の長さL11よりも短い長さL10を有する。真空断熱材34の左右方向両側の端面34cは、上述した注入口60よりも内側に位置し、注入口60から離れている。真空断熱材34の端面34cと注入口60の中心線Oとの距離L12は、内箱10aにおける内壁面25aの第3面25acと注入口60の中心線Oとの距離L13よりも大きい。
【0046】
図2に示すように、後壁25を構成する内箱10aには、内壁面25aの略全体を覆うようにして薄型断熱材10eが設けられている。薄型断熱材10eは、後壁25の内壁面25aに沿って変形した状態で接着部材などによって貼り付けられている。筐体10の後壁25を構成する内箱10aと外箱10bとの間の内部空間K3には、冷却ユニット15Bで生じた徐霜水を蒸発皿18へと導くための排出管部44が配置されている。そのため、薄型断熱材10eは、後壁25を構成する内箱10aの内壁面25aのうち、少なくとも排出管部44が設置された領域を除く領域を覆うようにして設けられている。
【0047】
同様に、筐体10の後壁25を構成する外箱10bの内壁面25cにも薄型断熱材10fが貼り付けられている。薄型断熱材10fは、後壁25を構成する外箱10bの内壁面25cの略全体を覆うようにして貼り付けられている。
【0048】
後壁25を構成する内箱10aと外箱10bとの間において薄型断熱材10e,10fを除く内部空間K3には、発泡断熱材10cが隙間なく充填されている。これにより、後壁25は断熱性を有する。発泡断熱材10cは、後壁25を構成する内箱10aと外箱10bとの間に配置された排出管部44の周囲を覆って配置されている。
【0049】
(筐体10の下壁22側の断熱構造)
図2に示すように、筐体10の下壁22を構成する内箱10aと外箱10bとのうち、少なくとも外箱10bの内壁面22bにも薄型断熱材10gが貼り付けられている。下壁22は、筐体10の前端から後方に向けてほぼ水平に延在し、機械室26及び蒸発皿18の前方位置から後端側へ行くにしたがって上方へ向かって傾斜し、後端側が機械室26及び蒸発皿18よりも上方に位置する。薄型断熱材10gは、このような下壁22の形状に沿って設けられている。
【0050】
図2に示すように、下壁22において、内箱10aと外箱10bとの間において薄型断熱材10gを除く内部空間K4には、発泡断熱材10cが隙間なく充填されている。これにより、下壁22は断熱性を有する。
【0051】
(発泡前の発泡断熱材10cを注入するための注入口周辺構造)
図7は、冷蔵庫1(筐体10)を後壁25側の構造を示す斜視図である。
【0052】
図7に示すように、筐体10には、当該外箱10b(図8)と内箱10a(図8)との間の内部空間K1~K4内に発泡前の液体状の発泡断熱材10c(図8)を注入させるための注入口60が複数形成されている。外箱10bの後壁25には、例えば、4つの注入口60が形成されている。一対の注入口60aは、左右方向両側に配置され、上下方向で互いの高さが同じ位置である。一対の注入口60aは、後壁25のうち上壁21に近い上端側に配置されている。残り一対の注入口60bにおいても左右方向両側に配置され、上下方向の高さが互いに同じ高さである。これら一対の注入口60bは、後壁25のうち下壁22に近い下端側に配置され、上記一対の注入口60aの真下にそれぞれ位置する。
【0053】
図6に示すように、少なくとも注入口60の中心線Oは、左側壁23および右側壁24における内箱10aの各内壁面23a,24aよりも左右方向で内側に位置する。
【0054】
図6に示すように、上方から見たときの注入口60は、奥行方向において内箱10aの境界部51に対向する。境界部51は、内箱10aの後壁25側の部位と、左側壁23および右側壁24側の部位との境界部分に設けられている。境界部51の内壁面(以下、案内面)51aは、内箱10aのうち、後壁25側の内壁面25aと、右側壁24(左側壁23)側の内壁面(第2内箱側内壁面)24a(内壁面23a(第2内箱側内壁面))とを滑らかに繋ぐ曲面であり、外箱10b側へ凸をなす。後壁25を構成する内箱10aの内壁面25a、境界部51の案内面51a、及び右側壁24(左側壁23)を構成する内箱10aの内壁面24aは互いに連続した平滑な湾曲面をなす。
【0055】
案内面51aは、筐体10の上下方向に延びている。案内面51aは、内箱10aのうち、少なくとも冷蔵室27A(図2)を構成する部分に設けられ、上下方向でほぼ一定の曲率で形成されている。境界部51の案内面51aは、後述する注入部材90(図8)から注入される液体状の発泡断熱材10cを、内箱10aと外箱10bとの間の内部空間において案内する案内面51aとして機能する。
【0056】
本実施形態の案内面51aは、左側壁23および右側壁24の各真空断熱材32に面している。案内面51aは、後壁25の真空断熱材34には面していない。
【0057】
本実施形態では、図6に示すように、注入口60の中心線Oと境界部51の案内面51aの接線Mとの交点位置Gにおいて、中心線Oに垂直な第1直線Nと、案内面51aの接線Mとのなす角度θは、45°以上である。例えば、本実施形態では、角度θが59.7°である。
【0058】
図8は、図7中に示された冷蔵庫1のF4-F4線に沿う部位に相当する断面図である。図8では、液体状の発泡断熱材10cが注入される様子を示している。図9は、注入された液体状の発泡断熱材10cが発泡する様子を部分的に示す拡大断面図である。
【0059】
図8に示すように、複数の注入口60から内箱10aと外箱10bとの間の内部空間K1~K4内に発泡前の発泡断熱材10cをそれぞれ注入する場合には、まず、各注入口60(60a、60b:図9)のそれぞれに注入部材90を挿入する。
注入部材90は、例えば、注入口60内に挿入可能な直径を有する円筒状の注入部91と、注入部91の基端側に設けられ当該注入部91及び注入口60の直径よりも大きい直径を有する円形状を呈する当接部92と、を有する。注入部91が注入口60内に挿入されたとき、当接部92の内面が外箱10bの外面に当接する。
【0060】
注入部材90の注入部91は、奥行方向に延びている。注入部91の延在長さは、注入部材90が注入口60に装着された際にその先端が、内箱10aにおける境界部51の案内面51aに当接しない長さとすることが好ましい。
【0061】
図6に示すように、筐体10には、注入口60ごとに、これら注入口60を個別に閉塞可能な薄型蓋部材61が複数設けられている。薄型蓋部材61は、例えば、平面視矩形状もしくは円形状をなし、注入口60の開口よりも大きい面積を有する。薄型蓋部材61は、外箱10bの内側に取り付けられ、その一端側が、後壁25を構成する外箱10bのうち、注入口60の周囲の内壁面25cに対して不図示の接着部材などによって固定されている。本実施形態では、注入口60よりも左右方向内側の位置に薄型蓋部材61の一端側が固定されており、他端側は自由端とされている。
【0062】
薄型蓋部材61は、可撓性を有する薄型シートからなる。そのため、図8に示すように、注入口60に注入部材90が挿入されているとき、薄型蓋部材61は、注入部材90によって内箱10a側へ押し出されて変形し、湾曲する。そのため、筐体10の左右方向における薄型蓋部材61の長さL9(図6)は、注入部材90の装着によって湾曲変形された際にその先端が案内面51aに当接しない長さとすることが好ましい。
【0063】
(発泡断熱材10cの充填工程について)
次に、本実施形態の筐体10内に発泡断熱材10cを充填する工程について述べる。
筐体10内に発泡断熱材10cを充填する際には、まず、図8に示すように、筐体10をその前方(貯蔵室27の開口)側が下、後壁25が上になるように横倒しにする。この状態で、筐体10の各注入口60に対して注入部材90をそれぞれ装着させ、各注入部材90を通じて筐体10の内部空間K1~K4(図2及び図8)へ液体状の発泡断熱材10cを注入する。
【0064】
図8に示すように、各注入部材90から注入された液体状の発泡断熱材10cは、その重力に従って左側壁23および右側壁24の各内部空間K2内へ流入する。このとき、各注入部材90から注入された液体状の発泡断熱材10cは、各々の注入部材90に対向する内箱10aの境界部51に向かって流出し、注入部材90側へ跳ね返ることなく、案内面51aによって内部空間K2へと案内される。
【0065】
図8に示すように、内箱10aの案内面51a及び内壁面24aは、互いに連続した面であるとともに、筐体10の前方から後方へ向かうにしたがって、外箱10bの内壁面23bから左右方向内側へ離れる方向へ傾斜及び湾曲している。即ち、本実施形態では、奥行方向で注入口60に近づくほど、真空断熱材32と内箱10a(内壁面24a)との間の隙間が大きくなっており、内部空間K3への入口が広くなっている。そのため、注入部材90から注入された液体状の発泡断熱材10cは、真空断熱材32の端面32a上に付着することなく、その重力に従って案内面51aに沿って内部空間K3の下方(筐体10の前方側)へと流出する。
【0066】
各境界部51の案内面51aによって左側壁23および右側壁24の各内部空間K2へ案内された液体状の発泡断熱材10cは、左側壁23および右側壁24の内壁面24aに沿って下方へと流れていき、これら左側壁23および右側壁24の各内部空間K2と、これらに連通する上壁21側の内部空間K1及び下壁22側の内部空間K4(図2)とにおける下方側(図7中の下方側)から順に充填されていく。
【0067】
各内部空間K1~K4内に、ある程度、液体状の発泡断熱材10cを注入した後、全ての注入部材90を筐体10(各注入口60)から取り外す。各注入口60から注入部材90を取り外すと、注入部材90によって湾曲させられていた薄型蓋部材61が、図4に示すように元の平らな状態に戻り、注入口60の全体が閉塞される。
【0068】
筐体10の上壁21、下壁22、左側壁23および右側壁24の各内部空間K1、K4,K2内に流入した液体状の発泡断熱材10cが下方から順に発泡することで、上壁21、下壁22、左側壁23および右側壁24の各内部空間K1、K4,K2の全体が発泡断熱材10cによって満たされる。その後、四方の各内部空間K1、K4,K2において発泡した発泡断熱材10cが、各内部空間K1、K4,K2から後壁25側の内部空間K3内へと進入し、後壁25側の内部空間K3の全体も発泡断熱材10cによって埋められる。このようにして、筐体10の内箱10aと外箱10bとの間の内部空間K1~K4内に発泡断熱材10cを充填する。
【0069】
本実施形態では、左側壁23および右側壁24に設けられた真空断熱材32と、後壁25に設けられた真空断熱材34は、注入口60から離れた位置に配置されている。そのため、注入部材90の周囲には空間が形成されており、左側壁23および右側壁24の各内部空間K2内で発泡した発泡断熱材10cが案内面51aによって後壁25側の内部空間K3へと案内されやすい。
【0070】
また、本実施形態において、内箱10aにおける境界部51の案内面51aは、後壁25に設けられた真空断熱材34、左側壁23および右側壁24の各真空断熱材32のうち、各真空断熱材32に対向し、後壁25の真空断熱材34には対向していない。後壁25側の真空断熱材34は、後壁25に設けられた真空断熱材34は、後壁25の左右方向の長さL11よりも短い長さL10を有しており、両端部が各案内面51aから離れているので、真空断熱材34の周囲において内箱10aと外箱10bとの間に形成される内部空間K3が広がり、左側壁23および右側壁24の内部空間K2において発泡した発泡断熱材10cが、後壁25側の内部空間K3へとより進入しやすい。
【0071】
真空断熱材34の左右方向の長さL10を、後壁25を構成する内箱10aの内壁面の左右方向の長さL11よりも短い長さとすることで、真空断熱材34の周囲の空間が広がる。後壁25の内部空間K3と、上壁21の内部空間K1および下壁22の内部空間K4とは互いに連通していることから、上壁21の内部空間K1および下壁22の内部空間K4内において発泡した発泡断熱材10cは、後壁25の内部空間K3へと回り込みやすい。
このようにして、筐体10の内箱10aと外箱10bとの間に発泡断熱材10cが略隙間なく配置された断熱構造とすることで、冷蔵庫1としての断熱効果がより一層高められる。
【0072】
液体状の発泡断熱材10cを注入する作業においては、従来のように、冷蔵庫1の筐体10のうち各注入口60に対向する境界部51の内面が注入口60に平行な面であった場合、注入口60から注入された液体状の発泡断熱材10cが、その注入量や注入速度にもよるが、境界部51の内面において注入口60側へと跳ね返り、注入口60から外部へ漏れ出てしまうことがあった。
【0073】
そこで、境界部51の内面における跳ね返りを回避するために、注入口60と境界部51の内面との距離を跳ね返りが生じない程度にまで広げる必要があった。従来は、境界部51のうち、奥行方向で注入口60に対向する部分だけを内箱10aの貯蔵室27側へ突出させていたため、貯蔵室27の内面に部分的に段差が形成されていた。
【0074】
特に、冷蔵室27Aの内面にこのような段差が生じていると、左右の冷蔵室扉を開けた際に使用者の目に入りやすい。境界部51のうち、奥行方向で注入口60に対向する部分だけを貯蔵室27側へと突出させているため、貯蔵室27の内容積が大きく減るようなことはないが、冷蔵室27A内のデザイン性の低下を招いてしまう。
【0075】
図10は、実施形態の冷蔵庫1の冷蔵室27Aの内箱10aを開口側から見た図である。
本実施形態の冷蔵庫1は、内箱10aの左右両側の境界部51のそれぞれにおいて、奥行方向で少なくとも注入口60と対向する部分を含む冷蔵室27Aの上下方向全体に亘って、外箱10b側へ向かって凸状に湾曲した案内面51aを有している。境界部51の案内面51aは、後壁25を構成する内箱10aの内壁面(第2面25ab)と、左側壁23の内壁面23a,右側壁24の内壁面24aとの間に段差のない滑らかな湾曲面である。そのため、図10に示すように、冷蔵室27Aの内面に段差はなく、冷蔵室27A内の見た目の向上に有利である。
【0076】
また、図8に示すように、奥行方向において、各案内面51aは、左右方向両側へ向かうほど注入口60から離れる方向(前方)へと湾曲している。そのため、注入口60に装着された注入部材90を介して筐体10内に液体状の発泡断熱材10cを注入した際に、案内面51aに向かって吐出された液体状の発泡断熱材10cは、注入部材90側へと跳ね返ることなく、案内面51aの湾曲形状に沿って重力に従って下方へ流出していくことになる。
このように、本実施形態の構成によれば、冷蔵室27A内のデザイン性を高めつつ、充填時の跳ね返りを防ぐだけでなく、充填作業を効率良く実施することが可能である。
【0077】
また、上述したように、注入口60の開口を閉塞可能な薄型蓋部材61は、平面視において注入口60よりも大きく当該注入口60を完全に閉塞できる大きさである。注入口60に対して注入部材90が装着されている間、薄型蓋部材61は、内箱10a側へ押し出されて湾曲させられている。実施形態においては、図8に示すように、注入口60に装着された注入部材90の先端よりも、薄型蓋部材61の湾曲された端部の方が内箱10a側へ突出している。そのため、案内面51aにおいて液体状の発泡断熱材10cの跳ね返りによって薄型蓋部材61の端部に液体状の発泡断熱材10cが付着してしまうと、後に薄型蓋部材61が元の平坦な形状に戻った際に、上記端部で発泡した発泡断熱材10cによって外箱10bの内壁面との間に隙間が生じてしまい、注入口60を完全に閉塞することができなくなるおそれがある。
【0078】
本実施形態の構成によれば、案内面51aにより液体状の発泡断熱材10cの跳ね返りを防ぐことによって薄型蓋部材61へ液体状の発泡断熱材10cの付着を回避でき、薄型蓋部材61によって注入口60を完全に閉塞することが可能である。これにより、注入口60から発砲した発泡断熱材10cが漏れ出すのを防ぐことができ、生産性及び品質が向上する。
【0079】
案内面51aは、境界部51のうち注入口60に対向する部分を含む上下方向の所定の範囲において、一定の曲率で湾曲形成されている。図7に示すように、筐体10(内箱10a)の上位に配置される一対の注入口60aは、図10に示すように、冷蔵室27A内に上下方向に間隔をおいて設置される複数の棚板どうしの間に位置していることが多く、使用者の目に留まりやすい。
【0080】
このため、内箱10aの境界部51のうち、少なくとも冷蔵室27A内に設置される複数の棚板どうしの間の領域を含む範囲に案内面51aが形成されていることが好ましい。これにより、使用者が冷蔵室27A内を見た際に、冷蔵室27Aの内壁面に目立つ凹凸や段差がなく、デザイン性を高めることができる。
【0081】
本実施形態では、冷蔵室27Aの上下方向全体に亘って一定の曲率で案内面51aが形成されている。注入時の跳ね返りを防ぐために、境界部51のうち注入口60に対向する部分だけを冷蔵室27A側へ突出させていた従来の構成に比べて、本実施形態では境界部51のデザイン性を高めつつ、注入口60から境界部51までの距離を確保しているため、より多くの発泡断熱材10cを充填することができる。これにより、筐体10の断熱性をさらに高めることが可能である。なお、案内面51aは、冷蔵室27Aの上下方向全体に亘って形成されているが、これに限らない。少なくとも奥行方向で注入口60と対向する領域を含む範囲に形成する。
【0082】
また、液体状の発泡断熱材10cの注入作業中、左側壁23および右側壁24の各内部空間K2内に適度な量の発泡断熱材10cが溜まる前に、図8に示す真空断熱材32の端面32aに液体状の発泡断熱材10cが付着してしまうと、内部空間K2への充填途中で、上記真空断熱材32の端面32aに付着した発泡断熱材10cの発泡が始まってしまい、内部空間K2への液体状の発泡断熱材10cの流入が妨げられてしまう。この場合、内部空間K2の全体を発泡断熱材10cで満たすことができなくなる。
【0083】
実施形態では、真空断熱材32は、後壁25側の端面32aの位置が案内面51a上の上記交点位置G(図6)と一致する位置に配置されているため、注入口60から離れていることから、端面32a上に液体状の発泡断熱材10cが付着しにくく、望まない位置における発泡を防ぐことができる。このように、発泡材充填時の不具合を回避して、内箱10aと外箱10bとの間の内部空間K1~K4内に隙間なく発泡断熱材10cを充填することが可能となり、冷蔵庫1の生産効率および断熱性を高めることができる。
【0084】
上記実施形態では、冷蔵庫の扉が観音開き式であるとして説明したが、上記各実施形態の真空断熱材は、観音開き式でない冷蔵庫に用いられてもよい。
【0085】
また、冷蔵庫1に設けられる注入口60の数は4つに限らない。例えば、冷蔵庫1の容量等によって適宜設定される。
【0086】
本発明の実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【0087】
上記実施形態では、境界部51の案内面51aが湾曲面とされているが、これに限らない。案内面51aは、湾曲面以外の形状であってもよく、例えば、傾斜面を有する面であってもよいし、段差形状や波型形状を有する面であってもよい。また、前述したいくつかの形態(湾曲面、傾斜面、段差形状、波型形状等)を適宜組み合わせた面であってもよい。
【符号の説明】
【0088】
1…冷蔵庫、10…筐体、10a…内箱、10b…外箱、10c…発泡断熱材、23…左側壁、23a…左側壁23を構成する内箱10aの内壁面(第2内箱側内壁面)、23b…左側壁23を構成する外箱10bの内壁面(第2外箱側内壁面)、24a…右側壁24を構成する内箱10aの内壁面(第2内箱側内壁面)、24b…右側壁24を構成する外箱10bの内壁面(第2外箱側内壁面)、25a,25b…後壁25を構成する内箱10aの内壁面(第1内箱側内壁面)、25c…後壁25を構成する外箱10bの内壁面(第1外箱側内壁面)、25…後壁、27…貯蔵室、30(31,32,33,34)…真空断熱材、32,33…真空断熱材(第2断熱材)、34…真空断熱材(第1断熱材)、51…境界部、51a…案内面、60(60a,60b)…注入口、G…交点位置、
K1…上壁21の内部空間、K2…左側壁23、右側壁24の内部空間(第2内部空間)
K3…後壁25の内部空間(第1内部空間)、K4…下壁22の内部空間
M…接線、N…第1直線、O…中心線、θ…角度
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10