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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022184363
(43)【公開日】2022-12-13
(54)【発明の名称】車両下部構造
(51)【国際特許分類】
   B62D 25/20 20060101AFI20221206BHJP
   B60K 13/04 20060101ALI20221206BHJP
   B62D 37/02 20060101ALI20221206BHJP
【FI】
B62D25/20 N
B60K13/04 A
B62D37/02 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021092159
(22)【出願日】2021-06-01
(71)【出願人】
【識別番号】000003137
【氏名又は名称】マツダ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100127797
【弁理士】
【氏名又は名称】平田 晴洋
(72)【発明者】
【氏名】守本 翔平
(72)【発明者】
【氏名】池田 克彦
(72)【発明者】
【氏名】溝兼 通矢
(72)【発明者】
【氏名】知北 勝
【テーマコード(参考)】
3D038
3D203
【Fターム(参考)】
3D038BA09
3D038BA13
3D038BB01
3D038BC07
3D038BC09
3D038BC20
3D203AA02
3D203BB03
3D203BB06
3D203BB07
3D203BB08
3D203BB16
3D203BB20
3D203CA73
3D203CB27
3D203CB28
3D203DA02
3D203DA07
(57)【要約】
【課題】車載部品がアンダーカバーの下方に位置する部分が存在する構成においても、車両走行時の空気抵抗の増大を抑制することが可能な車両下部構造を提供する。
【解決手段】車両下部構造は、車載部品収容部4の一部を閉じるアンダーカバー8と、下端部9aが車載部品収容部4の下端よりも下方へ突出している車載部品9とを備える。アンダーカバー8は、平板状の基部21と、基部21から下方に突出する凸部22とを備えている。基部21の下面21aは、車両側面視で、車載部品9の下端部9aよりも上方に配置されている。凸部22は、車両側面視で、車両前後方向において車載部品9の前方に所定間隔をあけて配置されている。凸部22の最下部22d1は、車載部品9の下端部9dよりも上方であり、かつ、基部21の下面21aよりも下方となるように形成されている。
【選択図】図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両前側において車両の駆動源が収容可能な空間を有する駆動源収容部を備えた車両の下部構造であって、
前記駆動源収容部よりも後方において車両の下部に形成され、車両前後方向に延びるとともに下方に開放された車載部品収容部と、
前記空間より後方において前記車載部品収容部の下方開放部分の一部を閉じる位置に配設され、車両下部を流れる第1走行風と前記空間から前記車載部品収容部を通って車両後方へ流れる第2走行風の両方を案内するアンダーカバーと、
前記車載部品収容部の内部において前記アンダーカバーよりも車両後方の位置に配置された車載部品であって、下端部が前記車載部品収容部の下端よりも下方へ突出している車載部品と、
を備え、
前記アンダーカバーは、平板状の基部と、前記基部から下方に突出する凸部とを備えており、
前記基部の下面は、車両側面視で、前記車載部品の前記下端部よりも上方に配置され、
前記凸部は、車両側面視で、車両前後方向において前記車載部品の前方に所定間隔をあけて配置され、
前記凸部の最も下方の部分は、前記車載部品の前記下端部よりも上方であり、かつ、前記基部の前記下面よりも下方となるように形成されている、
ことを特徴とする車両下部構造。
【請求項2】
請求項1に記載の車両下部構造において、
前記車載部品の車両前方側の端部には、車両側面視において、車両前方から後方に向かうにつれて下降する方向に延びる第1曲面が形成されている、
ことを特徴とする車両下部構造。
【請求項3】
請求項2に記載の車両下部構造において、
前記車載部品の車両後方側の端部には、車両側面視において、車両前方から後方に向かうにつれて上昇する方向に延びる第2曲面が形成され、
前記第2曲面の曲率は前記第1曲面の曲率よりも大きくなるように設定されている、
ことを特徴とする車両下部構造。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載の車両下部構造において、
前記凸部は、車両前後方向における後端部分において上方に延びるように設けられた上方延設部を有する、
ことを特徴とする車両下部構造。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項に記載の車両下部構造において、前記凸部の下面は、車両後面視において円弧状である、
ことを特徴とする車両下部構造。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1項に記載の車両下部構造において、
車両前後方向における前記凸部の前側部分は、車両底面視において、車両前方へ向かうにつれて幅が狭くなる形状を有する、
ことを特徴とする車両下部構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両下部構造に関する。
【背景技術】
【0002】
車両の下部には、通常、車両下方に開放されたフロアトンネルが形成されており、フロアトンネルの内部には、排気管とともにキャタライザやプリサイレンサなどの車載部品が収容されている。従来より、車両の空力を改善するために、車両下部には、フロアトンネルの少なくとも一部を閉じるようにアンダーカバーが設けられている。
【0003】
また、特許文献1記載の車両下部構造では、車両の下部を流れる走行風がアンダーカバーによって空気抵抗が増大することを抑制するために、アンダーカバーに開口部が設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2019-064315号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記の車両下部構造では、キャタライザなどの車載部品は、アンダーカバーよりも車両上方に設けられているため、車載部品によって空気抵抗が大きくなることはないが、車載部品がアンダーカバーの開口部を通してアンダーカバーよりも車両下方に突出するように設けられた場合は、走行風が車載部品に衝突することにより空気抵抗が大きくなる。
【0006】
ここで、アンダーカバーを車載部品よりも下方に設けることが考えられるが、この場合、車両内部においてエンジンルームからフロアトンネルを通る走行風がアンダーカバーの開口部を通して車両下方へ向かうときに車両下部を水平方向に流れる走行風と衝突しやすくなる。そのため、この場合も空気抵抗が大きくなり、空気抵抗の抑制を達成できない。
【0007】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであって、車載部品がアンダーカバーの下方に位置する部分が存在する構成においても、車両走行時の空気抵抗の増大を抑制することが可能な車両下部構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の車両下部構造は、車両前側において車両の駆動源が収容可能な空間を有する駆動源収容部を備えた車両の下部構造であって、前記駆動源収容部よりも後方において車両の下部に形成され、車両前後方向に延びるとともに下方に開放された車載部品収容部と、前記空間より後方において前記車載部品収容部の下方開放部分の一部を閉じる位置に配設され、車両下部を流れる第1走行風と前記空間から前記車載部品収容部を通って車両後方へ流れる第2走行風の両方を案内するアンダーカバーと、前記車載部品収容部の内部において前記アンダーカバーよりも車両後方の位置に配置された車載部品であって、下端部が前記車載部品収容部の下端よりも下方へ突出している車載部品と、を備え、前記アンダーカバーは、平板状の基部と、前記基部から下方に突出する凸部とを備えており、前記基部の下面は、車両側面視で、前記車載部品の前記下端部よりも上方に配置され、前記凸部は、車両側面視で、車両前後方向において前記車載部品の前方に所定間隔をあけて配置され、前記凸部の最も下方の部分は、前記車載部品の前記下端部よりも上方であり、かつ、前記基部の前記下面よりも下方となるように形成されていることを特徴とする。
【0009】
かかる構成によれば、アンダーカバーは、平板状の基部と凸部で構成されており、凸部は基部から下方に突出することにより、車両下部を流れる第1走行風は車載部品の下方に向かうようになる。凸部の最も下方の部分は、車載部品の下端部よりも上方であり、かつ、基部の下面よりも下方となるように形成されているので、凸部と車載部品との間に形成される隙間の開口面積が制限される。すなわち、この隙間の開口面積は、上記凸部の最下方の部分が車載部品の下端部よりも下方にある場合の隙間の開口面積よりも狭くなる。そのため、アンダーカバーによって案内される上下2つの風、すなわち、車両下部を流れる第1走行風と駆動源収容部の空間からの第2走行風とが凸部と車載部品との間の隙間で衝突しにくくなり、これら第1および第2走行風を車載部品に沿って車両後方に流すことが可能になる。その結果、車載部品がアンダーカバーの下方に位置する部分が存在する構成においても、車両走行時の空気抵抗の増大を抑制することが可能になる。
【0010】
上記の車両下部構造において、前記車載部品の車両前方側の端部には、車両側面視において、車両前方から後方に向かうにつれて下降する方向に延びる第1曲面が形成されているのが好ましい。
【0011】
かかる構成によれば、アンダーカバーによって車両後方へ案内される車載部品収容部側の第2走行風は、車載部品の第1曲面に沿って車載部品の下端部へ円滑に流れることが可能である。そのため、第2走行風の流れを阻害することを抑制することが可能である。
【0012】
上記の車両下部構造において、前記車載部品の車両後方側の端部には、車両側面視において、車両前方から後方に向かうにつれて上昇する方向に延びる第2曲面が形成され、前記第2曲面の曲率は前記第1曲面の曲率よりも大きくなるように設定されているのが好ましい。
【0013】
かかる構成によれば、車載部品の車両後方側の端部に形成された第2曲面の曲率が第1曲面よりも大きくなるように設定されているため、アンダーカバーから車載部品の下端部に沿って車両後方へ流れる走行風は、第2曲面から剥離しやすく、当該第2曲面に沿って車載部品収容部内へ流れにくくなる。そのため、走行風の車両後方への流れを阻害せず、車載部品収容部内への走行風の流入を抑制することが可能である。
【0014】
上記の車両下部構造において、前記凸部は、車両前後方向における後端部分において上方に延びるように設けられた上方延設部を有するのが好ましい。
【0015】
かかる構成によれば、上方延設部が凸部の後端部分において上方に延びている。この上方延設部により、駆動源収容部の空間からの第2走行風が凸部と車載部品との隙間へ進入する直前で車両後方下向きへ傾斜した方向へ案内されるので、第2走行風は車両下部を流れる第1走行風と鋭角に合流することが可能である。しかも、上方延設部によって凸部と車載部品との間の隙間をさらに狭くするので、第1走行風と第2走行風とが当該隙間でさらに衝突しにくくなる。したがって、上方延設部による走行風の鋭角な合流および隙間の狭小化の2つの作用により、車両走行時の空気抵抗の増大をさらに抑制することが可能になる。
【0016】
上記の車両下部構造において、前記凸部の下面は、車両後面視において円弧状であるのが好ましい。
【0017】
かかる構成によれば、車両下部を流れる第1走行風が凸部の円弧状の下面に沿って車両後方へ円滑に流れるので、車両走行時の空気抵抗の増大をさらに抑制することが可能になる。
【0018】
上記の車両下部構造において、車両前後方向における前記凸部の前側部分は、車両底面視において、車両前方へ向かうにつれて幅が狭くなる形状を有するのが好ましい。
【0019】
かかる構成によれば、車両下部を流れる第1走行風は、車両前方へ向かうにつれて幅が狭くなる形状(いわゆる先細りの形状)を有する前側部分に当たるときに走行風が凸部の幅方向に分散され、車載部品に当たりにくくなるので、車両走行時の空気抵抗の増大をさらに抑制することが可能になる。
【発明の効果】
【0020】
本発明の車両下部構造によれば、車載部品がアンダーカバーの下方に位置する部分が存在する構成においても、車両走行時の空気抵抗の増大を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の実施形態に係る車両下部構造の全体構成を示す車体の底面図である。
図2図1のII-II線断面図である。
図3図1のアンダーカバーの底面図である。
図4図1のアンダーカバーの車両後面視の図である。
図5図1のアンダーカバーの車両側面視の図である。
図6図1のアンダーカバーの車両後方上側から見た斜視図である。
図7図2のアンダーカバーの凸部とキャタライザに沿って第1走行風および第2走行風が流れる状態を示す説明図である。
図8図1のキャタライザの下端部およびアンダーカバーの凸部の車両後面視の図である。
図9図7のアンダーカバーの凸部とキャタライザとの隙間付近を拡大して第2走行風の流れをより詳細に示した説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、添付図面を参照しながら本発明の好ましい実施の一形態について詳述する。
【0023】
図1~2に示される本実施形態の車両1の下部構造は、キャタライザ9の下端部9aがフロアトンネル4の下方Z2に突出している構造において、トンネルアンダーカバー8に下方Z2に突出する凸部22を設けることにより、当該凸部22によってキャタライザ9の下端部9aに当たる走行風を低減させ、空気抵抗の増大を抑制することを実現する構造である。
【0024】
具体的には、図1~2に示される車両1は、エンジン5を駆動源とする自動車であり、車両下部のフレーム2と、車両下面を構成するフロアパネル3と、車載部品収容部としてのフロアトンネル4と、エンジンルーム6を有するエンジン収容部60と、エンジンルーム6の下面側を閉じる平板状のルームアンダーカバー7と、フロアトンネル4の前端側の一部を閉じるトンネルアンダーカバー8と、フロアトンネル4に収容された車載部品としてのキャタライザ9、プリサイレンサ10および排気管11とを備えている。エンジンルーム6は、車両前側X1に配置され、車両1の駆動源であるエンジン5が収容可能な空間である。トンネルアンダーカバー8は、本発明のアンダーカバーに対応する。排気管11の下流側端部には、プリサイレンサ10よりも大きいメインサイレンサ(図示せず)が取り付けられている。
【0025】
エンジン5から排出された排気ガスは、キャタライザ9内部の触媒フィルタによって浄化され、プリサイレンサ10で排気音を低減させた後、排気管11および図示しないメインサイレンサを通して車両1の後方へ排出される。
【0026】
フロアトンネル4は、エンジン収容部60よりも後方X2において車両1の下部に形成された半割の筒状をしており、車両前後方向Xに延びるとともに下方Z2に開放された空間12を有する。
【0027】
トンネルアンダーカバー8は、エンジンルーム6より後方X2においてフロアトンネル4の下方開放部分の一部(本実施形態では前端側の一部)を閉じる位置に配設されている。
【0028】
図3~6に示されるように、トンネルアンダーカバー8は、平板状の基部21と、基部21の下面21aから下方Z2に突出する凸部22とを備えている。
【0029】
トンネルアンダーカバー8は、平板状の鋼板などの材料をプレス成形などの成形法により製造され、基部21および凸部22が滑らかに連続するように一体成形されている。
【0030】
凸部22は、その下面22dが下方Z2に突出するとともに、その上面22eが下方Z2に凹んでいる形状を有する。凸部22の下面22dは、基部21の下面21aと連続しており、車両下部を流れる第1走行風A1(図7および図9参照)を滑らかに車両後方X2へ案内することが可能である。また、凸部22の上面22eは、基部21の上面21bと連続しているので、車両走行時にエンジンルーム6からフロアトンネル4へ流れる第2走行風A2(図7および図9参照)を滑らかに車両後方X2へ案内することが可能である。したがって、トンネルアンダーカバー8は、図7および図9に示されるように、車両下部を流れる第1走行風A1とエンジンルーム6からフロアトンネル4を通って車両後方X2へ流れる第2走行風A2の両方を案内することが可能である。
【0031】
図4に示される凸部22の下面22dの最も下の部分である最下部22d1が基部21の下面21aに対して突出する突出量H(いわゆる凸部22の高さ)は、図7に示されるように凸部22によって第1走行風A1をキャタライザ9の下端部9aよりも下方を流れるように案内することが可能な突出量(例えば、2cm前後)であればよい。
【0032】
凸部22は、車両底面視において、図3に示されるように、車両前方X1に向かうにつれて幅が狭くなる略紡錘形または二辺が膨らんだ三角形の形状を有する。具体的には、凸部22は、図3および図5に示されるように、車両前後方向Xにおいて、前側部分22aと、中間部分22bと、後端部分22cとを有する。
【0033】
前側部分22aは、車両底面視において、車両前方X1へ向かうにつれて幅が狭くなる形状(いわゆる先細りの形状)を有する。中間部分22bは、車両前後方向Xにおいて同じ幅または若干広がるように延びる形状を有する。また、図5に示されるように、車両側面視において、前側部分22aは、車両後方X2へ向かうにつれて下降する方向に傾斜しているので、車両下部を流れる第1走行風A1を円滑に下方へ案内しやすい。なお、中間部分22bは、同じ高さまたは若干下降しながら車両前後方向Xに延びていればよい。
【0034】
本実施形態では、図7~9に示されるように、凸部22は、車両前後方向Xにおける後端部分22cにおいて、当該凸部22の下面22dから上方Z1に延びるように設けられた上方延設部22fを有する。
【0035】
また、図3~4および図8に示されるように、凸部22の下面22dおよび上方延設部22fは、車両後面視において円弧状である。凸部22の幅(幅方向Yの寸法)は、キャタライザ9の下端部9aの幅よりも広く設定されており、これにより、キャタライザ9の下端部9aの全幅にわたって第1走行風A1が下端部9aの下方へ向かうので空気抵抗の増大を抑制することが可能である。
【0036】
図3~6に示されるように、車両前後方向Xにおいて、トンネルアンダーカバー8の基部21の後端には、凸部22に対して幅方向Yの両側において、一対の上方隆起部23と、一対の後方突出部24が形成されている。
【0037】
一対の上方隆起部23は、基部21の上面21bから上方Z1に突出しており、凸部22の幅方向Yの両側において、トンネルアンダーカバー8の上側を流れる第2走行風A2が凸部22へ集まるように案内することが可能である。
【0038】
一対の後方突出部24は、基部21の後端から車両後方X2へ突出するように形成されている。一対の後方突出部24の先端部、および基部21の周縁において、複数のボルト孔25が形成されている。複数のボルト孔25に対して図1に示されるのフレーム2側から下方に突出するボルト26がそれぞれ挿入され、当該ボルト26にナットが締結されることにより、トンネルアンダーカバー8をフレーム2の下面に固定することが可能である。
【0039】
図2および図7~9に示されるように、本実施形態のトンネルアンダーカバー8は、キャタライザ9の下端部9aに対して相対的に以下の位置関係になるように配置されている。すなわち、基部21の下面21aは、車両側面視で、キャタライザ9の下端部9aよりも上方Z1に配置されている。
【0040】
凸部22は、車両側面視で、車両前後方向Xにおいてキャタライザ9の前方X1に所定間隔をあけて配置されている。ここでいう「所定間隔」とは、第1走行風A1と第2走行風A2が干渉しあう程度の間隔を言い、第1走行風A1と第2走行風A2が干渉しない程度に離れている場合は、「所定間隔」に該当しない。
【0041】
円弧状の凸部22の最も下方の部分である下面22dの最下部22d1は、キャタライザ9の下端部9aよりも上方Z1であり、かつ、基部21の下面21aよりも下方Z2となるように形成されている。
【0042】
図2図7~8に示されるように、キャタライザ9は、フロアトンネル4の内部においてトンネルアンダーカバー8よりも車両後方X2の位置に配置されている。キャタライザ9は、フロアトンネル4の下端よりも下方Z2へ突出する上記の下端部9aを有する。
【0043】
キャタライザ9の車両前方X1側の端部には、車両側面視において、車両前方X1から後方X2に向かうにつれて下降する方向Z2に延びる第1曲面9bが形成されている。
【0044】
キャタライザ9の車両後方X2側の端部には、車両側面視において、車両前方X1から後方X2に向かうにつれて上昇する方向Z1に延びる第2曲面9cが形成されている。第2曲面9cの曲率は第1曲面9bの曲率よりも大きくなるように設定されている。
【0045】
(本実施形態の特徴)
(1)
本実施形態の車両1の下部構造では、トンネルアンダーカバー8は、図3~6に示されるように、平板状の基部21と凸部22で構成されている。凸部22が基部21から下方Z2に突出することにより、車両下部を流れる第1走行風A1(図7および図9参照)はキャタライザ9の下方Z2に向かうようになる。
【0046】
すなわち、本実施形態では、図2および図7に示されるように、トンネルアンダーカバー8が凸部22を有するので、第1走行風A1は凸部22の下面22dの高さである下側のラインL2に沿って案内されてキャタライザ9の下端部9aの下側を円滑に流れることが可能であり、空気抵抗の増大を抑制することが可能である。一方、比較例として凸部22が無い構成では、第1走行風A1は基部21の下面21aの高さである上側のラインL1に沿って流れるため、ラインL1から下方に突出しているキャタライザ9の下端部9aに当たるので、空気抵抗が増大する。これらの点を比較しても、凸部22が空気抵抗の抑制効果に寄与していることは明らかである。
【0047】
また、本実施形態では、図7および図9に示されるように、凸部22の最も下方の部分である下面22dの最下部22d1は、キャタライザ9の下端部9aよりも上方Z1であり、かつ、基部21の下面21aよりも下方Z2となるように形成されているので、凸部22とキャタライザ9との間に形成される隙間27の開口面積が制限される。すなわち、この隙間27の開口面積は、上記凸部22の最下部22d1がキャタライザ9の下端部9aよりも下方Z2にある場合の隙間の開口面積よりも狭くなる。そのため、トンネルアンダーカバー8によって案内される上下2つの風、すなわち、車両下部を流れる第1走行風A1とエンジンルーム6からの第2走行風A2とが凸部22とキャタライザ9との間の隙間27で衝突しにくくなり、これら第1および第2走行風A2をキャタライザ9に沿って車両後方X2に流すことが可能になる。その結果、キャタライザ9がトンネルアンダーカバー8の下方Z2に位置する下端部9aが存在する構成においても、車両走行時の空気抵抗の増大を抑制することが可能になる。
【0048】
(2)
本実施形態の車両1の下部構造では、図7および図9に示されるように、キャタライザ9の車両前方X1側の端部には、車両側面視において、車両前方X1から後方X2に向かうにつれて下降する方向Z2に延びる第1曲面9bが形成されている。
【0049】
かかる構成によれば、トンネルアンダーカバー8によって車両後方X2へ案内されるフロアトンネル4側の第2走行風A2は、キャタライザ9の第1曲面9bに沿ってキャタライザ9の下端部9aへ円滑に流れることが可能である。そのため、第2走行風A2の流れを阻害することを抑制することが可能である。
【0050】
(3)
本実施形態の車両1の下部構造では、図7に示されるように、キャタライザ9の車両後方X2側の端部には、車両側面視において、車両前方X1から後方X2に向かうにつれて上昇する方向Z1に延びる第2曲面9cが形成されている。第2曲面9cの曲率は第1曲面9bの曲率よりも大きくなるように設定されている。
【0051】
かかる構成によれば、キャタライザ9の車両後方X2側の端部に形成された第2曲面9cの曲率が第1曲面9bよりも大きくなるように設定されている。このため、トンネルアンダーカバー8からキャタライザ9の下端部9aに沿って車両後方X2へ流れる走行風(具体的には、第1走行風A1と第2走行風A2とが合流した後の走行風)は、第2曲面9cから剥離しやすく、当該第2曲面9cに沿ってフロアトンネル4内へ流れにくくなる。そのため、走行風の車両後方X2への流れを阻害せず、フロアトンネル4内への走行風の流入を抑制することが可能である。
【0052】
(4)
本実施形態の車両1の下部構造では、図7および図9に示されるように、凸部22は、車両前後方向Xにおける後端部分22cにおいて上方Z1に延びるように設けられた上方延設部22fを有する。
【0053】
かかる構成によれば、上方延設部22fが凸部22の後端部分22cにおいて上方Z1に延びている。この上方延設部22fにより、エンジンルーム6からの第2走行風A2が凸部22とキャタライザ9との隙間27へ進入する直前で車両後方X2かつ下向きZ2へ傾斜した方向へ案内されるので、第2走行風A2は車両下部を流れる第1走行風A1と鋭角に合流することが可能である。しかも、上方延設部22fによって凸部22とキャタライザ9との間の隙間27をさらに狭くするので、第1走行風A1と第2走行風A2とが当該隙間27でさらに衝突しにくくなる。したがって、上方延設部22fによる走行風の鋭角な合流および隙間27の狭小化の2つの作用により、車両走行時の空気抵抗の増大をさらに抑制することが可能になる。
【0054】
しかも、本実施形態の上方延設部22fは、上方Z1とともに車両後方X2へ若干傾斜する方向に延びている。しかも、上方延設部22fの上端縁は、車両後方X2へ突出している。これにより、上方延設部22fが単に上方Z1に延びている場合と比較して、第1走行風A1および第2走行風A2をより鋭角に合流させ、隙間27をより狭小にすることが可能になり、空気抵抗の増大抑制効果がより一層向上する。
【0055】
(5)
本実施形態の車両1の下部構造では、図4および図8に示されるように、凸部22の下面22dは、車両後面視において円弧状である。かかる構成によれば、車両下部を流れる第1走行風A1が凸部22の円弧状の下面22dに沿って車両後方X2へ円滑に流れるので、車両走行時の空気抵抗の増大をさらに抑制することが可能になる。
【0056】
(6)
本実施形態の車両1の下部構造では、図3に示されるように、車両前後方向Xにおける凸部22の前側部分22aは、車両底面視において、車両前方X1へ向かうにつれて幅が狭くなる形状(いわゆる先細りの形状)を有する。かかる構成によれば、車両下部を流れる第1走行風A1は、上記の先細りの形状を有する前側部分22aに当たるときに走行風が凸部22の幅方向に分散され、キャタライザ9に当たりにくくなるので、車両走行時の空気抵抗の増大をさらに抑制することが可能になる。
【0057】
(変形例)
(A)
上記実施形態では、本発明の車両下部構造が適用される車両として駆動源としてエンジン5を備える自動車を例に挙げて説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、駆動源としてモータを備える電気自動車やハイブリッドカーなどであってもよい。その場合、車両下部に設けられる車載部品としては、上記のキャタライザ9の代わりにバッテリなどが適用される。このような電気自動車等においてバッテリの下端部が車両下方に開放されたバッテリ収容部(車載部品収容部)から下方に突出している場合でも、本発明の車両下部構造を適用することにより、上記(本実施形態の特徴)の(1)~(6)に記載された作用効果を奏することが可能である。
【0058】
(B)
また、上記実施形態のようにエンジン5を備える自動車の場合においても、本発明の車載部品の他の例として、上記のキャタライザ9の代わりにプリサイレンサ10などのフロアトンネル4に収容される他の部品であってもよい。その場合も、上記(本実施形態の特徴)の(1)~(6)に記載された作用効果を奏することが可能である。
【符号の説明】
【0059】
1 車両
4 フロアトンネル(車載部品収容部)
5 エンジン(駆動源)
6 エンジンルーム(空間)
8 トンネルアンダーカバー(アンダーカバー)
9 キャタライザ(車載部品)
9a 下端部
9b 第1曲面
9c 第2曲面
10 サイレンサ
11 排気管
21 基部
21a 下面
22 凸部
22a 前側部分
22c 後端部分
22d 下面
22d1 最下部
22e 上方延設部
27 隙間
60 エンジン収容部(駆動源収容部)
A1 第1走行風
A2 第2走行風
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9