(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022184368
(43)【公開日】2022-12-13
(54)【発明の名称】樹脂製品における検査工程
(51)【国際特許分類】
B29C 65/20 20060101AFI20221206BHJP
B29C 65/82 20060101ALI20221206BHJP
【FI】
B29C65/20
B29C65/82
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021092165
(22)【出願日】2021-06-01
(71)【出願人】
【識別番号】308039414
【氏名又は名称】株式会社FTS
(74)【代理人】
【識別番号】100120765
【弁理士】
【氏名又は名称】小滝 正宏
(74)【代理人】
【識別番号】100097076
【弁理士】
【氏名又は名称】糟谷 敬彦
(72)【発明者】
【氏名】近藤 智之
(72)【発明者】
【氏名】鶴田 大輔
(72)【発明者】
【氏名】森 文也
【テーマコード(参考)】
4F211
【Fターム(参考)】
4F211AG07
4F211AH17
4F211AP05
4F211AP17
4F211AQ01
4F211AR06
4F211AR18
4F211TA01
4F211TC14
4F211TD07
4F211TN07
4F211TQ01
4F211TQ10
(57)【要約】
【課題】樹脂部材を熱板により加熱する溶融工程の後に、溶着工程に移行するか否かを判定する樹脂製品の検査工程を提供する。
【解決手段】フィラーパイプ取付部材30に形成された取付部材接合面32と、フィラーパイプ取付部材30より容積の大きい燃料タンク1の開口部周縁に形成されたタンク接合12を、熱板を使用し、接触又は非接触の状態で加熱溶融する溶融工程と、溶融工程後にタンク溶着面12と取付部材接合面32とを溶着する溶着工程を有する樹脂製品における検査工程であって、検査工程は、溶融工程と溶着工程の間に配置され、少なくともタンク接合面12の溶融工程後の温度をサーモグラフィ装置70のカメラ71によって測定し、制御部72で解析し、溶着工程に進むか否かを判定する。
【選択図】
図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第2樹脂部材に形成された第2樹脂部材接合面と、前記第2樹脂部材より容積の大きい第1樹脂部材の開口部周縁に形成された第1樹脂部材接合面を、
熱板を使用し、接触又は非接触の状態で加熱溶融する溶融工程と、
前記溶融工程後に前記第1樹脂部材接合面と前記第2樹脂部材接合面とを溶着する溶着工程を有する樹脂製品における検査工程であって、
前記検査工程は、前記溶融工程と前記溶着工程の間に配置され、
少なくとも前記溶融工程後の前記第1樹脂部材接合面の温度をサーモグラフィ装置によって測定し、その結果を解析し、前記溶着工程に進むか否かを判定することを特徴とする樹脂製品における検査工程。
【請求項2】
前記サーモグラフィ装置による前記第1樹脂部材接合面の温度は、複数の領域に分割され、前記領域毎に、所定の温度に到達している第1の色と、所定の温度に到達していない第2の色に分けて表示され、
前記領域の全てにおいて前記第1の色が表示された場合は、前記溶着工程に進む決定をし、前記領域のうちの少なくとも1つの領域において前記第2の色が表示された場合は、前記溶着工程には進まない決定を行う請求項1に記載の樹脂製品における検査工程。
【請求項3】
前記検査工程は、前記第1樹脂部材接合面の温度が、溶着可能な最低温度より高い時間内に行われる請求項1又は請求項2に記載の樹脂製品における検査工程。
【請求項4】
前記第1樹脂部材には、識別番号が付され、前記識別番号と前記サーモグラフィ装置による前記第1樹脂部材接合面の温度が対になって保存される請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の樹脂製品における検査工程。
【請求項5】
前記第1樹脂部材は車両用の燃料タンクであり、前記第2樹脂部材は、少なくとも燃料系パイプ取付部材、センサ、カットオフバルブのうちの1つである請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の樹脂製品における検査工程。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂部材を熱板により加熱する溶融工程の後に、溶着工程に移行するか否かを判定する検査工程に関する。
【背景技術】
【0002】
熱板溶着は、加熱した熱板を使用し、2つの樹脂部材の接合界面を、接触若しくは非接触の状態で加熱溶融し、加熱した樹脂が冷えて固まる前に圧着して接合する溶着方法である。したがって、接合面の温度管理は極めて重要である。
【0003】
例えば、特許文献1には、加熱され溶融した接合面同士が把持具の相対移動により接触して圧接を開始後、時間の経過に対する把持具の接近変位状況、すなわち溶着部の変形状況が、接合面の加熱の過不足によって異なり、時間軸に対する接近変位曲線から、上記加熱の過不足、したがって溶着の良否を判定する方法が開示されている。
【0004】
又、例えば、特許文献2には、以下の技術が開示されている。
図13に示すように、合成樹脂製の中空成形品100の外壁200に合成樹脂部品300を溶着して取付ける合成樹脂部品300の取付方法において、中空成形品100の溶着面210と合成樹脂部品300の溶着面320をそれぞれ熱板で加熱して溶融し、合成樹脂部品300を加熱する熱板は、合成樹脂部品300と当接する加熱面の外周に合成樹脂部品300の溶融面の外周に溶融したバリが外周面に出ないように押圧するバリ押出部を形成し、熱板を合成樹脂部品300の溶着面320に押圧して、溶着面320をバリ押圧部が当接する部分は、合成樹脂部品300の溶着面320の外周端面にバリ340が出ないように溶着面320を溶融して、中空成形品100の溶着面210に合成樹脂部品300の溶着面320を押圧して、合成樹脂部品300の溶着面320のバリ340が出ていない部分350もバリ340が出るように溶着する。
【0005】
一方、特許文献3は、熱板溶着ではなく、振動溶着の事例であるが、
図14に示すように、第1樹脂部材110に突設したリブ111を第2樹脂部材120に当接させた状態で両樹脂部材110、120を相対的に振動させ、リブ111を摩擦熱で溶融して両樹脂部材110、120を一体に溶着してなる樹脂製品の溶着状態を検査すべく、サーモグラフィ装置等の熱画像解析装置170のカメラ180で溶着直後の両樹脂部材110、120の溶着部160を撮像し、モニター190に溶着部160の温度分布を表示することにより、温度の高低に基づいて溶着部160の溶着状態の良否を非破壊で検査する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002-28983号公報
【特許文献2】特開2018-69701号公報
【特許文献3】特開2000-238136号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記の特許文献1においては、実際に2つの樹脂部材を溶着しないと溶着が確実にされているかが判断できない。又、特許文献2においては、溶着が確実にされているかは人間の目やカメラ等に基づき、溶着後に接合部を観察することになる。更に、特許文献3は、振動溶着のため、サーモグラフィ装置の熱画像解析は、溶着後に行われる。つまり、上記技術は、全て接合後に溶着の適否の判断が行われるので、溶着工程の前に判断することはできず、溶着不適な状況では不必要となる溶着工程の実施を未然に防止することができない。
【0008】
熱板溶着法においては、周囲環境温度(室温)の変化、熱板加熱用の電源電圧の変動、熱板加熱時間の累積による熱板温度の上昇、樹脂部品の寸法差による熱板表面と樹脂部品接合面との距離のばらつきなどにより、樹脂部品の被加熱面である接合面への入熱量が変動し、接合面の加熱不足により溶着が不完全となる場合があり、接合面の温度管理は極めて重要である。したがって、溶着前における接合面の溶融状態の検査に対する必要性が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するための請求項1の本発明は、第2樹脂部材に形成された第2樹脂部材接合面と、第2樹脂部材より容積の大きい第1樹脂部材の開口部周縁に形成された第1樹脂部材接合面を、熱板を使用し、接触又は非接触の状態で加熱溶融する溶融工程と、溶融工程後に第1樹脂部材接合面と第2樹脂部材接合面とを溶着する溶着工程を有する樹脂製品における検査工程であって、検査工程は、溶融工程と前記溶着工程の間に配置され、少なくとも溶融工程後の第1樹脂部材接合面の温度をサーモグラフィ装置によって測定し、その結果を解析し、溶着工程に進むか否かを判定することを特徴とする樹脂製品における検査工程である。
【0010】
請求項1の本発明では、第2樹脂部材に形成された第2樹脂部材接合面と、第2樹脂部材より容積の大きい第1樹脂部材の開口部周縁に形成された第1樹脂部材接合面を、熱板を使用し、接触又は非接触の状態で加熱溶融する溶融工程と、溶融工程後に第1樹脂部材接合面と第2樹脂部材接合面とを溶着する溶着工程を有する樹脂製品における検査工程であって、検査工程は、溶融工程と前記溶着工程の間に配置され、少なくとも溶融工程後の第1樹脂部材接合面の温度をサーモグラフィ装置によって測定し、その結果を解析し、溶着工程に進むか否かを判定するので、接合面の温度が溶着に必要な温度条件を満たしていない場合は、溶着工程へ移行することを停止することができ、不要な溶着工程の実施の防止と、溶着が不完全な樹脂製品の流出を未然に防止することができる。
【0011】
又、第1樹脂部材の容積は第2樹脂部材より大きいので、第1樹脂部材接合面の温度が溶着に必要な温度条件を満たしていれば、第1樹脂部材より容積が小さい第2樹脂部材に形成された第2樹脂部材接合面の温度は溶着に必要な温度条件を満たしているので、サーモグラフィ装置におけるカメラは1台で足り、検査時間も第2樹脂部材接合面の温度も測定する場合に比較して短時間化することができる。なお、1台のカメラを用いて、若しくは第2のカメラを用いて第2樹脂部材接合面の温度を測定してもよい。その場合は、溶融工程後の第1樹脂部材接合面及び第2樹脂部材接合面の温度をサーモグラフィ装置によって測定し、その結果を解析し、溶着工程に進むか否かを判定する。
【0012】
請求項2の本発明は、請求項1の発明において、サーモグラフィ装置による第1樹脂部材接合面の温度は、複数の領域に分割され、領域毎に、所定の温度に到達している第1の色と、所定の温度に到達していない第2の色に分けて表示され、領域の全てにおいて第1の色が表示された場合は、溶着工程に進む決定をし、領域のうちの少なくとも1つの領域において第2の色が表示された場合は、溶着工程には進まない決定を行う樹脂製品における検査工程である。
【0013】
請求項2の本発明では、サーモグラフィ装置による第1樹脂部材接合面の温度は、所定の温度に到達している第1の色と、所定の温度に到達していない第2の色に分けて表示されるので、溶着工程に進むか否かの判定を容易に、且つ極めて短時間で行うことができる。
【0014】
又、サーモグラフィ装置による第1樹脂部材接合面の温度は、複数の領域に分割され、領域毎に、所定の温度に到達している第1の色と、所定の温度に到達していない第2の色に分けて表示されるので、特に、所定の温度に到達していない第2の色が表示された部分を中心に、熱板加熱用の電源電圧の変動、熱板加熱時間の累積による熱板温度の上昇等、熱板における温度管理にフィードバックすることができる。
【0015】
そして、領域の全てにおいて第1の色が表示された場合は、溶着工程に進む決定をし、領域のうちの少なくとも1つの領域において第2の色が表示された場合は、溶着工程には進まない決定を行うので、不要な溶着工程の実施の防止と、溶着が不完全な樹脂製品の流出を未然に防止することができる。
【0016】
請求項3の本発明は、請求項1又は請求項2の発明において、検査工程は、第1樹脂部材接合面の温度が、溶着可能な最低温度より高い時間内に行われる樹脂製品における検査工程である。
【0017】
溶融工程と溶着工程の間に少なくとも溶融工程後の第1樹脂部材接合面の温度をサーモグラフィ装置によって測定する検査を行う場合、熱板が第1樹脂部材接合面と第2樹脂部材接合面から離れる時間が長くなるので、検査工程の間に第1樹脂部材接合面と第2樹脂部材接合面の温度は、検査を実施しない場合に比較して低下することになる。
【0018】
請求項3の本発明では、前記検査工程は、第1樹脂部材接合面の温度が、溶着可能な最低温度より高い時間内に行われるので、溶着工程への移行可の判定がされた第1樹脂部材接合面と第2樹脂部材接合面の溶着を確実に行うことができる。
【0019】
請求項4の本発明は、請求項1から請求項3の発明において、第1樹脂部材には、識別番号が付され、識別番号とサーモグラフィ装置による第1樹脂部材接合面の温度が対になって保存される樹脂製品における検査工程である。
【0020】
請求項4の本発明では、第1樹脂部材には、識別番号が付され、識別番号とサーモグラフィ装置による第1樹脂部材接合面の温度が対になって保存されるので、トレーサビリティが向上し、高い品質管理を行うことができる。なお、識別番号としては、QRコード(登録商標)やバーコードが挙げられる。
【0021】
請求項5の本発明は、請求項1から請求項4の発明において、第1樹脂部材は車両用の燃料タンクであり、第2樹脂部材は、少なくとも燃料系パイプ取付部材、センサ、カットオフバルブのうちの1つである樹脂製品における検査工程である。
【0022】
請求項5の本発明では、第1樹脂部材は車両用の燃料タンクであり、第2樹脂部材は、少なくとも燃料系パイプ取付部材、センサ、カットオフバルブのうちの1つであるので、容積の大きい樹脂製燃料タンクの開口部周縁に形成された第1樹脂部材接合面の溶融後の温度をサーモグラフィ装置によって測定、解析、判断することにより、燃料系パイプ取付部材、センサ、カットオフバルブのリブやフランジを燃料タンクに確実に取付けることができ、又、不要な溶着工程の実施の防止と、溶着が不完全な燃料タンクの流出を未然に防止することができる。
【発明の効果】
【0023】
第2樹脂部材に形成された第2樹脂部材接合面と、第2樹脂部材より容積の大きい第1樹脂部材の開口部周縁に形成された第1樹脂部材接合面を、熱板を使用し、接触又は非接触の状態で加熱溶融する溶融工程と、溶融工程後に第1樹脂部材接合面と第2樹脂部材接合面とを溶着する溶着工程を有する樹脂製品における検査工程であって、検査工程は、溶融工程と前記溶着工程の間に配置され、少なくとも溶融工程後の第1樹脂部材接合面の温度をサーモグラフィ装置によって測定し、その結果を解析し、溶着工程に進むか否かを判定するので、接合面の温度が溶着に必要な温度条件を満たしていない場合は、溶着工程へ移行することを停止することができ、不要な溶着工程の実施の防止と、溶着が不完全な樹脂製品の流出を未然に防止することができる。
【0024】
又、第1樹脂部材の容積は第2樹脂部材より大きいので、第1樹脂部材接合面の温度が溶着に必要な温度条件を満たしていれば、第1樹脂部材より容積が小さい第2樹脂部材に形成された第2樹脂部材接合面の温度は溶着に必要な温度条件を満たしているので、サーモグラフィ装置におけるカメラは1台で足り、検査時間も第2樹脂部材接合面の温度も測定する場合に比較して短時間化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】本発明の実施形態にかかる燃料タンクの断面図である。
【
図2】本発明の実施形態における燃料タンクのタンク接合面、フィラーパイプ及びカメラ部と位置関係を示す斜視模式図である。
【
図3】本発明の実施形態に使用する熱板のフィラーパイプ取付部材側の平面図である。
【
図4】本発明の実施形態に使用する熱板の正面図である。
【
図5】本発明の実施形態における溶融工程前のフィラーパイプ取付部材とタンク接合面との間に熱板を挿入した状態を示す正面図である。
【
図6】本発明の実施形態における溶融工程を示すフィラーパイプ取付部材とタンク接合面が熱板に当接した状態の正面図である。
【
図7】本発明の実施形態における溶融工程後であり、フィラーパイプ取付部材とタンク接合面が熱板から離れた状態を示す正面図である。
【
図8】本発明の実施形態における検査工程であり、サーモグラフィ装置のカメラによるタンク接合面の温度測定を説明する正面図である。
【
図9】本発明の実施形態における溶着工程であり、タンク接合面にフィラーパイプ取付部材を押圧した状態を示す正面図である。
【
図10】本発明の実施形態における溶融工程から溶着工程に至る間のタンク接合面の時間と温度の関係を示すグラフである。
【
図11】本発明の実施形態におけるフローチャートである。
【
図12】本発明の実施形態におけるカメラ部によるタンク接合面の温度の観察例であり、(a)は合格、(b)は不合格と判定されるの場合の例である。
【
図13】従来の燃料タンクのタンク取付部のタンク溶着面にフィラーパイプ取付部材の取付部材溶着面を溶着する直前の溶着面の状態を示す拡大正面図である(特許文献2)。
【
図14】従来の熱画像解析装置を示す図である(特許文献3)。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明の実施形態を、第1樹脂部材としてのブロー成形品である中空の燃料タンク1のタンク外壁2に、第2樹脂部材としてのフィラーパイプ取付部材30を取付ける場合について説明する。なお、本発明は、燃料タンク1以外の他の第1樹脂部材にフィラーパイプ取付部材30以外の第2樹脂部材を取付ける場合にも広く実施することができる。
【0027】
実施形態を
図1から
図12に基づき説明するが、本実施形態に使用する燃料タンク1とフィラーパイプ取付部材30について
図1と
図2に基づき、加熱装置について
図3と
図4に基づき、溶融、検査及び溶着に至る一連の流れを
図5から
図9と
図11に基づき、検査工程を
図8、
図10及び
図12に基づいて説明する。
【0028】
(燃料タンク1)
図1に示すように、燃料タンク1は、ブロー成形法によって成形された中空品であり、剛性を確保する層や燃料透過性の低い層が複数積層された断面構造を有している。複数層は、例えば、中央の層がエチレンビニルアルコール共重合体(EVOH)又はナイロンで形成された燃料透過を防止するバリヤー層と、そのバリヤー層の上下に変性ポリエチレンから形成される接着層と、その接着層のそれぞれの外面に高密度ポリエチレン(HDPE)から形成される外層から構成される。
【0029】
燃料タンク1のタンク外壁2の上部には、タンク取付部10が設けられている。
図2に示すように、タンク取付部10は、タンク取付孔11(開口部)が形成され、フィラーパイプ20(
図1)から供給された燃料を燃料タンク1内に供給する。タンク取付孔11の周縁の外面は、後述するフィラーパイプ取付部材30が溶着される第1樹脂部材接合面である平面状のタンク接合面12が形成されている。
【0030】
又、タンク外壁2の上部には、ブリーザパイプ取付部材7も形成されている。ブリーザパイプ取付部材7は、燃料給油時に燃料タンク1 内のガスをタンク外に逃がすためのブリーザホース(図示せず)を取付けるものである。なお、フィラーパイプ取付部材30とブリーザパイプ取付部材7を燃料系パイプ取付部材と称する。又、8は燃料タンク1から車輌転倒時の燃料漏れを防ぐカットオフバルブである。又、その他のセンサ類を取付けることも可能であり、カットオフバルブやセンサ類の取付部材、例えば、リブやフランジ等が合成樹脂で形成されている場合には本発明を使用することができる。
【0031】
又、タンク外壁2の上部には、QRコード(登録商標)に基づく識別番号9が貼り付けられている。なお、バーコード等の他の識別番号であってもよい。
【0032】
タンク外壁2の上面には、他の開口部6が形成され、開口部6からタンク外壁2の下部の内面にサブタンク5が取付けられる。開口部6は、蓋体60で塞がれ、蓋体60はロックプレートで開口部6に周囲を螺着される。開口部6と蓋体60の間にはシールリング部材が取付けられて、開口部6と蓋体60の間がシールされる。
【0033】
(フィラーパイプ取付部材30)
図2に示すように、フィラーパイプ取付部材30は、フィラーパイプ20を取付けるパイプ取付部33と、パイプ取付部33の先端にフランジ状の取付部材溶着部31が形成され、取付部材溶着部31の燃料タンク1のタンク外壁2と対向する面は、後述する熱板により溶融される取付部材接合面32が形成されている。フィラーパイプ取付部材30は、燃料タンク1とは別にブロー成形や射出成形により成形される。その材料は、耐燃料油性の熱可塑性合成樹脂が使用され、例えば変性ポリエチレン、高密度ポリエチレン(HDPE)、ポリプロピレン、ポリアセタール、ポリアミド等の合成樹脂を使用することができるが、燃料タンク1を成形する材料と溶着可能な材料が使用される。
【0034】
(加熱装置40)
図4に示すように、加熱装置40は、燃料タンク1のタンク取付部10のタンク接合面12を加熱し、溶融するタンク側熱板45と、フィラーパイプ取付部材30の取付部材接合面32を加熱し、溶融する部品側熱板44を有する。そして、部品側熱板44とタンク側熱板45で加熱部材41を構成する。
【0035】
部品側熱板44とタンク側熱板45は、板状の熱板保持部材42を挟んで上下の位置に配置される。
図5に示すように、熱板保持部材42は、熱板昇降部材43に取付けられ、熱板昇降部材43は、エアシリンダ46により昇降される。これにより加熱部材41を昇降させることができる。又、熱板保持部材42は、熱板昇降部材43に対して水平方向に回転可能になっている(
図8)。
【0036】
図3と
図4に示すように、加熱部材41内にはヒーター50が2本挿入されている。ヒーター50により加熱面44a、45aを加熱して、フィラーパイプ取付部材30の取付部材接合面32とタンク接合面12を溶融することができる。本実施の形態では、ヒーター50は2本使用したが、部品側熱板44、タンク側熱板45の大きさや、加熱温度に応じて適宜本数を変えることができる。ヒーター50による加熱温度を管理するため熱電対51が180度対称に取付けられている。
【0037】
(溶融、検査及び溶着)
図5に示すように、部品側熱板44の上部には、フィラーパイプ取付部材30を保持する部品保持部材47が設けられている。部品保持部材47 は、エアシリンダ48により昇降される。フィラーパイプ取付部材30は、部品保持部材47により保持され、燃料タンク1のタンク外壁2のタンク取付部10の上部に隙間を有して配置される。
【0038】
その後、タンク取付部10とフィラーパイプ取付部材30の間に、加熱部材41が挿入される。このとき、加熱部材41は、タンク取付部10とフィラーパイプ取付部材30には接触していないが、加熱部材41の部品側熱板44は、フィラーパイプ取付部材30の取付部材接合面32に対向するように位置し、加熱部材41のタンク側熱板45は、燃料タンク1のタンク外壁2のタンク取付部10のタンク接合面12に対向するように位置する。
【0039】
次に、
図6に示すように、エアシリンダ46により熱板昇降部材43を作動させて、熱板保持部材42を下降させて、タンク側熱板45をタンク取付部10のタンク接合面12に接触させる。さらに、エアシリンダ48により部品保持部材47を下降させて、フィラーパイプ取付部材30の取付部材接合面32を部品側熱板44に接触させる。そして、タンク取付部10のタンク接合面12とフィラーパイプ取付部材30の取付部材接合面32を溶融させる。なお、加熱部材41の部品側熱板44とフィラーパイプ取付部材30の取付部材接合面32、加熱部材41のタンク側熱板45とタンク取付部10のタンク接合面12との間に隙間を形成し、非接触の状態でフィラーパイプ取付部材30の取付部材接合面32とタンク取付部10のタンク接合面12を溶融させてもよい。
【0040】
次に、
図7に示すように、エアシリンダ48により部品保持部材47を上昇させて、フィラーパイプ取付部材30の取付部材接合面32を部品側熱板44から離す。さらに、エアシリンダ46により熱板昇降部材43を作動させて、熱板保持部材42を上昇させて、タンク側熱板45をタンク取付部10のタンク接合面12から離す。
【0041】
次に、
図8に示すように、熱板保持部材42を熱板昇降部材43に対して水平方向に回転させ、フィラーパイプ取付部材30の取付部材接合面32とタンク取付部10のタンク接合面12との間から加熱部材41が外れるようにする。
【0042】
この時、予めサーモグラフィ装置70のカメラ71がタンク取付部10のタンク接合面12に対する角度αが約60°で、中心Oから約30cmから約60cmの位置にセットされ、タンク接合面12にピントが合わされているので、タンク接合面12の温度分布を観測することができる。サーモグラフィ装置70による検査工程の詳細は後述する。
【0043】
サーモグラフィ装置70によるタンク接合面12の温度分布観測の結果、次の溶着工程に進むことが許可された旨の判定がされた時は、
図9に示すように、エアシリンダ48により部品保持部材47に保持されたフィラーパイプ取付部材30を下降させ、タンク取付部10のタンク接合面12に押圧して溶着させる。最後に、エアシリンダ48により部品保持部材47を上昇させる。
【0044】
(検査工程)
図8に示すように、検査工程で使用するサーモグラフィ装置70は、カメラ71と制御部72を有している。又、制御部72は、熱解析部、判定部、保存部を有している。カメラ71は赤外線を使用して、タンク接合面12の温度分布を観測する。なお、タンク外壁2の上部に貼り付けられたQRコード(登録商標)に基づく識別番号9は、予め図示しないQRコード(登録商標)読取装置で読み込まれている。
【0045】
図12(a)及び(b)に示すように、サーモグラフィ装置70の制御部72の熱解析部では、タンク接合面12は8つの領域に分割されており、領域毎に、所定の温度に到達していることを示す第1の色、例えば、青色と、所定の温度に到達していないことを示す第2の色、例えば、赤色に分けて表示する。なお、分割数は8には限定されない。
【0046】
そして、
図12(a)に示すように、観測した8つの領域の全てにおいて第1の色が表示された場合は、サーモグラフィ装置70の制御部72の判定部において、
図9に示す溶着工程に進む決定をし、エアシリンダ48に下降の信号を出す。一方、
図12(b)に示すように、8つの領域のうちの少なくとも1つの領域において第2の色が表示された場合(
図12(b)では、領域P8のX)は、判定部において、
図8の状態で装置を停止させる信号を出すと共に、設備における異常発生を、例えば、設備における赤色回転ランプの作動や設備稼働監視システム上での色又は音によるアラーム信号を出すことにより知らせる。
【0047】
又、サーモグラフィ装置70の制御部72の保存部において、上記の熱解析部及び判定部の結果、識別番号9と加熱装置40の情報とを関連付けて保存する。
【0048】
ところで、
図7から
図9の間においては、フィラーパイプ取付部材30の取付部材接合面32が部品側熱板44から離れ、さらに、エアシリンダ46により熱板昇降部材43を作動させて、熱板保持部材42を上昇させて、タンク側熱板45をタンク取付部10のタンク接合面12から離れるので、検査工程の間の分だけ、従来に比較してタンク取付部10のタンク接合面12とフィラーパイプ取付部材30の取付部材接合面32の表面温度は低下する。
【0049】
図10は、事前に定めた溶着工程に移行可能な判定を行うための溶融工程から溶着工程に至る間のタンク接合面12の時間に対する表面温度の関係を示すグラフであり、又、破線で示したT1は、溶着可能な最低温度を示している。なお、T2は溶融時の温度である。領域Aは
図6の溶融工程、領域Bは
図7の加熱部材41の上昇時間、領域Cは
図8の検査工程、領域Dはエアシリンダ48によるのフィラーパイプ取付部材30の取付部材接合面32の下降時間、領域Eは
図9のタンク接合面12にフィラーパイプ取付部材30の取付部材接合面32を押圧、すなわち、溶着工程を表している。
【0050】
したがって、領域Cにおける所定の時間において、全ての領域の温度が線L以上であれば、溶着への移行可の判定を行う。
図10における温度や時間は、材料や溶着装置によって変動するが、時間としてはt1が1秒程度、t2が3秒程度、t3が5秒程度である。
【0051】
図11は、これまでの流れを簡単にまとめたフローチャートである。本発明の検査工程を溶融工程と溶着工程の間に挿入することにより、タンク取付部10のタンク接合面12にフィラーパイプ取付部材30の取付部材接合面32を全周にわたって確実に溶着することができる。又、タンク接合面12の温度が溶着に必要な所定の温度条件を満たしていない場合は、溶着工程へ移行することを停止することができ、不要な溶着工程の実施を未然に防止することができる。
【0052】
本発明の実施にあたっては、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を逸脱しない限りにおいて、種々の変更が可能である。
【0053】
例えば、上記の実施形態では、カメラ71をタンク取付部10のタンク接合面12に対する角度αが約60°の位置にセットしたが、45°から90°の範囲であり、設備に干渉しない範囲にセットすることができる。角度αが45°より小さくなると画像が歪むと共に、タンク取付部10のタンク接合面12全体にピントを合わせ難くなるので望ましくない。なお、角度αを大きくする場合は、エアシリンダ46、48の移動距離が長くなり、特に角度αが90°に近くなるとエアシリンダ46、48の移動距離を長くすると共にカメラ71を中心O上に移動させる必要がある。
【0054】
例えば、上記の実施形態では、領域Cにおける所定の時間において、領域毎に、線L以上の温度に到達しているか否かによって判定を行ったが、周囲環境温度(室温)の変化によっては、
図10において、領域Cにおける温度変化(温度の低下)度合いが線Lより大きい場合もある。その場合には、サーモグラフィ装置70の熱解析部において、一定時間の温度変化も観測し、温度変化の状況から、判定部において、領域Cでは線L以上の温度に到達している場合であっても、溶着工程移行不可の判定をし、装置を停止させる制御を加えてもよい。
【符号の説明】
【0055】
10 タンク取付部(第1樹脂部材)
12 タンク接合面(第1樹脂部材接合面)
30 フィラーパイプ取付部(第2樹脂部材)
32 取付部接合面(第2樹脂部材接合面)
40 加熱装置
44 部品部側熱板
45 タンク側熱板
70 サーモグラフィ装置
71 カメラ
72 制御部