(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022184375
(43)【公開日】2022-12-13
(54)【発明の名称】パルセーションダンパー
(51)【国際特許分類】
F02M 59/44 20060101AFI20221206BHJP
F02M 55/00 20060101ALI20221206BHJP
F16F 9/04 20060101ALI20221206BHJP
F16F 15/023 20060101ALI20221206BHJP
F16J 3/02 20060101ALI20221206BHJP
【FI】
F02M59/44 E
F02M55/00 E
F16F9/04
F16F15/023 Z
F16J3/02 B
F16J3/02 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】22
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021092177
(22)【出願日】2021-06-01
(71)【出願人】
【識別番号】391002166
【氏名又は名称】株式会社不二工機
(74)【代理人】
【識別番号】110000062
【氏名又は名称】特許業務法人第一国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】柳屋 秀幸
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 悠太
【テーマコード(参考)】
3G066
3J045
3J048
3J069
【Fターム(参考)】
3G066AB02
3G066BA29
3G066BA48
3G066BA61
3G066CB18
3G066CD04
3J045AA14
3J045BA04
3J045CA12
3J045CA17
3J045CA20
3J048AA02
3J048AB01
3J048AD05
3J048BE02
3J048EA01
3J069AA27
3J069DD47
(57)【要約】
【課題】内部に封入するガスの選定の自由度が高まるとともに、その再利用が容易になり、安価に製造できるパルセーションダンパーを提供する。
【解決手段】燃料室内に配設されるパルセーションダンパー10は、上側フランジ部21を備えた環状のカバー20と、中央の隆起部31と、中間フランジ部32とを備えたダイアフラム30と、開口55と、下側フランジ部51とを備えたベース板50と、前記ダイアフラム30と前記ベース板50との間に配置されたインナーサポート40と、前記ベース板50に溶接されて前記開口55を閉止するプラグ60と、を有し、前記上側フランジ部21と前記中間フランジ部32と前記下側フランジ部51とが、相互に溶接されており、前記ダイアフラム30と前記ベース板50との間の空間SP1には、大気と異なるガスが充填されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
中央の隆起部と、中間フランジ部とを備えたダイアフラムと、
開口と、下側フランジ部とを備えたベース板と、
前記ダイアフラムと前記ベース板との間に配置されたインナーサポートと、
前記ベース板に溶接されて前記開口を閉止するプラグと、を有し、
前記中間フランジ部と前記下側フランジ部とが、相互に溶接されており、
前記開口は、前記ダイアフラムと前記ベース板との間の空間に連通しており、前記空間には大気と異なるガスが充填されている、
ことを特徴とするパルセーションダンパー。
【請求項2】
前記開口を介して前記空間に前記ガスを注入した後に、前記開口は前記プラグにより閉止可能である、
ことを特徴とする請求項1に記載のパルセーションダンパー。
【請求項3】
前記プラグから前記ベース板に向かって印加された押圧力を、前記インナーサポートを介して前記ダイアフラム側から支持可能である、
ことを特徴とする請求項1または2に記載のパルセーションダンパー。
【請求項4】
液圧を受けて変形した前記ダイアフラムが、前記インナーサポートを介して前記ベース板により支持される、
ことを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載のパルセーションダンパー。
【請求項5】
前記インナーサポートは、中心側支持部と、前記中心側支持部よりも高さのある周辺側支持部とを有し、前記ダイアフラムは、前記中心側支持部と前記周辺側支持部とに当接可能である、
ことを特徴とする請求項4に記載のパルセーションダンパー。
【請求項6】
前記中心側支持部と前記周辺側支持部の端部に、中心側と周辺側とを結ぶ溝が形成されている、
ことを特徴とする請求項5に記載のパルセーションダンパー。
【請求項7】
前記ベース板は、前記インナーサポートを収容する受け部を有する、
ことを特徴とする請求項1~6のいずれか一項に記載のパルセーションダンパー。
【請求項8】
前記ベース板の嵌合部と、前記インナーサポートの被嵌合部を嵌合させた、
ことを特徴とする請求項1~7のいずれか一項に記載のパルセーションダンパー。
【請求項9】
前記ベース板と前記インナーサポートとの分離を抑制する抜け止め部を有する、
ことを特徴とする請求項1~8のいずれか一項に記載のパルセーションダンパー。
【請求項10】
前記インナーサポートは、径方向に延びる底壁を備え、前記底壁は前記ダイアフラムと前記ベース板とに挟持される、
ことを特徴とする請求項1~9のいずれか一項に記載のパルセーションダンパー。
【請求項11】
前記ベース板は、中央に配置された前記開口の周囲に円錐部を備え、前記プラグは前記円錐部に当接可能な球または円錐形状を有する、
ことを特徴とする請求項1~10のいずれか一項に記載のパルセーションダンパー。
【請求項12】
前記ベース板は、中央以外の位置に配置された前記開口の周囲に円錐部を備え、前記プラグは前記円錐部に当接可能な球または円錐形状を有する、
ことを特徴とする請求項1~10のいずれか一項に記載のパルセーションダンパー。
【請求項13】
前記ベース板は、前記開口の周囲に環状隆起部を備え、前記プラグは前記環状隆起部に当接する板状である、
ことを特徴とする請求項1~10のいずれか一項に記載のパルセーションダンパー。
【請求項14】
前記プラグは、前記ベース板の前記開口の周囲に当接する環状の突起部を備えた板状である、
ことを特徴とする請求項1~10のいずれか一項に記載のパルセーションダンパー。
【請求項15】
前記プラグと前記ベース板とは、プロジェクション溶接により接合されている、
ことを特徴とする請求項1~14のいずれか一項に記載のパルセーションダンパー。
【請求項16】
前記インナーサポートは、前記ベース板の前記開口と前記ダイアフラムとの間に仕切り壁を有しており、前記開口と前記空間とは、前記ガスが通過する通路を介して連通している、
ことを特徴とする請求項1~5のいずれか一項に記載のパルセーションダンパー。
【請求項17】
中央の隆起部と、中間フランジ部とを備えたダイアフラムと、
開口と、前記開口の周囲に形成されたベース隆起部と、下側フランジ部とを備えたベース板と、
前記ベース板に溶接されて前記開口を閉止するプラグと、を有し、
前記中間フランジ部と前記下側フランジ部とが、相互に溶接されており、
前記ダイアフラムと前記ベース板との間の空間には、大気と異なるガスが充填されており、
前記ベース隆起部に前記ダイアフラムが当接したときに、前記開口と前記空間とを連通する通路を有する、
ことを特徴とするパルセーションダンパー。
【請求項18】
前記開口を介して前記空間に前記ガスを注入した後に、前記開口は前記プラグにより閉止可能である、
ことを特徴とする請求項17に記載のパルセーションダンパー。
【請求項19】
前記プラグから前記ベース板に向かって印加された押圧力を、前記ベース隆起部に当接する前記ダイアフラムを介して支持可能である、
ことを特徴とする請求項17または18に記載のパルセーションダンパー。
【請求項20】
液圧を受けて変形した前記ダイアフラムが、前記ベース隆起部により支持される、
ことを特徴とする請求項17~19のいずれか一項に記載のパルセーションダンパー。
【請求項21】
前記ベース板は、前記開口の周囲に複数の前記ベース隆起部を備えており、前記ベース隆起部の対向する端部間に前記通路が形成される、
ことを特徴とする請求項17~20のいずれか一項に記載のパルセーションダンパー。
【請求項22】
前記プラグと前記ベース板とは、プロジェクション溶接により接合されている、
ことを特徴とする請求項17~21のいずれか一項に記載のパルセーションダンパー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パルセーションダンパーに関する。
【背景技術】
【0002】
高圧燃料ポンプにおいて加圧室と連通する燃料室に設けられ、吸入通路から当該加圧室に吸入される流体の脈動を減衰させるパルセーションダンパーが、例えば特許文献1に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
パルセーションダンパーは、一般的には、薄肉金属ドーム状のダイアフラムと、フラットなプレートの外周同士を溶接し、内部の空間を密閉して形成される。その内部の空間には不活性ガスが封入されてダイアフラムを内側から支持しており、燃料室内の流体の脈動に応じてダイアフラムが変形しつつ脈動を吸収し、所望の減衰機能を発揮する。
【0005】
ところで、従来のパルセーションダンパーにおいては、以下に述べる製造上の課題がある。従来のパルセーションダンパーにおいて、ダイアフラムとプレートの外周を溶接することによって密閉された内部空間が形成されるため、溶接後に外部から不活性ガスを注入することはできない。そこで、パルセーションダンパーを構成する部品全体を密閉容器で覆い、かかる密閉容器内を不活性ガスで満たし、この不活性ガスの雰囲気中でダイアフラムとプレートの溶接を行っている。
【0006】
このような製造方法によれば、密閉容器内に溶接に必要な装置や治具なども配置しなくてはならず、そのため密閉容器の大型化を招いている。また、この密閉容器内に満たされる不活性ガスも比較的大量となるため、これを回収して再利用するには時間と手間がかかる。さらに、不活性ガスの雰囲気中で比較的長い時間にわたって溶接を行うため、熱の影響を受けにくいガス種の選定が必要になり、さらなるコスト増を招いている。
【0007】
加えて、溶接箇所から発生した多量のヒューム(金属粒子)が不活性ガスに混入することにより、不活性ガスの再利用を困難としている。
【0008】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、内部に封入するガスの選定の自由度が高まるとともに、その再利用が容易になり、安価に製造できるパルセーションダンパーを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明のパルセーションダンパーは、
中央の隆起部と、中間フランジ部とを備えたダイアフラムと、
開口と、下側フランジ部とを備えたベース板と、
前記ダイアフラムと前記ベース板との間に配置されたインナーサポートと、
前記ベース板に溶接されて前記開口を閉止するプラグと、を有し、
前記中間フランジ部と前記下側フランジ部とが、相互に溶接されており、
前記開口は、前記ダイアフラムと前記ベース板との間の空間に連通しており、前記空間には大気と異なるガスが充填されている、ことを特徴とする。
【0010】
本発明のパルセーションダンパーは、
中央の隆起部と、中間フランジ部とを備えたダイアフラムと、
開口と、前記開口の周囲に形成されたベース隆起部と、下側フランジ部とを備えたベース板と、
前記ベース板に溶接されて前記開口を閉止するプラグと、を有し、
前記中間フランジ部と前記下側フランジ部とが、相互に溶接されており、
前記ダイアフラムと前記ベース板との間の空間には、大気と異なるガスが充填されており、
前記ベース隆起部に前記ダイアフラムが当接したときに、前記開口と前記空間とを連通する通路を有する、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、内部に封入するガスの選定の自由度が高まるとともに、その再利用が容易になり、安価に製造できるパルセーションダンパーを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は、本発明の第1の実施形態に係るパルセーションダンパーの分解図である。
【
図2】
図2は、自由状態におけるパルセーションダンパーの縦断面図である。
【
図3】
図3は、最大加圧時におけるパルセーションダンパーの縦断面図である。
【
図4】
図4は、組立装置を用いたパルセーションダンパーの組立工程の一部を示す断面図である。
【
図5】
図5は、第1の実施形態の変形例にかかるパルセーションダンパーを示す
図2と同様な縦断面図である。
【
図6】
図6は、第1の実施形態の別な変形例にかかるパルセーションダンパーを示す
図2と同様な縦断面図である。
【
図7】
図7は、第1の実施形態のさらに別な変形例にかかるパルセーションダンパーを示す
図2と同様な縦断面図である。
【
図8】
図8は、本発明の第2の実施形態に係るパルセーションダンパーの分解図である。
【
図9】
図9は、自由状態におけるパルセーションダンパーの縦断面図である。
【
図10】
図10は、第2の実施形態の変形例にかかるパルセーションダンパーを示す
図2と同様な縦断面図である。
【
図11】
図11は、本発明の第3の実施形態に係るパルセーションダンパーの分解図である。
【
図12】
図12は、自由状態におけるパルセーションダンパーの縦断面図である。
【
図13】
図13は、本発明の第4の実施形態に係るパルセーションダンパーの分解図である。
【
図14】
図14は、自由状態におけるパルセーションダンパーの縦断面図である。
【
図15】
図15は、最大加圧時におけるパルセーションダンパーの縦断面図である。
【
図16】
図16は、本発明の第5の実施形態に係るパルセーションダンパーの分解図である。
【
図17】
図17は、パルセーションダンパーのインナーサポートを下面側から見た斜視図である。
【
図18】
図18は、自由状態におけるパルセーションダンパーの縦断面図である。
【
図19】
図19は、最大加圧時におけるパルセーションダンパーの縦断面図である。
【
図20】
図20は、本発明の第6の実施形態に係るパルセーションダンパーの分解図である。
【
図21】
図21は、自由状態におけるパルセーションダンパーの縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。
【0014】
[第1の実施形態]
図1は、本発明の第1の実施形態に係るパルセーションダンパー10の分解図である。
図2は、自由状態におけるパルセーションダンパー10の縦断面図であり、
図3は、最大加圧時におけるパルセーションダンパー10の縦断面図である。
【0015】
パルセーションダンパー10は、カバー20と、ダイアフラム30と、インナーサポート40と、ベース板50とを、この順序で重ねてなり、ベース板50の中央には、金属球であるプラグ60が固着されている。パルセーションダンパー10の軸線をLとする。ここでは、カバー20側を上方とし、ベース板50側を下方とする。
【0016】
カバー20は、金属薄板にプレス加工を行うことにより円形状に形成されており、環状の上側フランジ部21と、上側フランジ部21の内周に連接された円筒部22と、円筒部22の上端に連接された環状部23とを有する。円筒部22には、内外周を連通する小穴24が周方向に等間隔に配設されている。
【0017】
ダイアフラム30は、カバー20の板厚より薄いステンレス鋼板にプレス加工を行うことにより形成されており、上方に向かってドーム状に隆起した中央の円形隆起部31と、外周の中間フランジ部32とを連設してなる。ダイアフラム30の外径は、カバー20の外径に略等しい。
【0018】
樹脂またはゴム製のインナーサポート40は、環状の底壁部41と、底壁部41の内縁に連接され上方に向かって延在する内側円筒部(中心側支持部ともいう)42と、底壁部41の外縁に連接され上方に向かって延在する外側円筒部(周辺側支持部ともいう)43とを有する。インナーサポート40の素材は、樹脂やゴムに限られず、例えば金属を用いてもよい。
【0019】
内側円筒部42と外側円筒部43とは同軸に配設され、底壁部41の上面を基準に、内側円筒部42の高さは、外側円筒部43の高さより低くなっている。また、内側円筒部42及び外側円筒部43の上端面は、中心に向かうにつれて高さが低くなるテーパー形状、すなわち中心に向かって低くなるテーパー形状を有していると好ましい。
【0020】
図1に示すように、底壁部41には、軽量化等を図るべく肉抜き用の円形開口44が、周方向に等間隔に4つ形成されている。また、内側円筒部42の上縁には、連通用の溝45が径方向にわたって、周方向に等間隔に4本形成され、外側円筒部43の上縁にも、径方向にわたって、周方向に等間隔に連通用の溝46が4本形成されている。本実施形態では、溝45、46の軸線回りの回転位相を一致させているが、相互にずらしてもよい。また、溝45、46の本数は限定されない。
【0021】
ベース板50は、ダイアフラム30の板厚より厚い金属板にプレス加工を行うことにより円形状に形成されている。具体的に、ベース板50は、下側フランジ部51と、下側フランジ部51の内周に連接され下方に向かって延在する短円筒部52と、短円筒部52の下端に連接された平坦部53と、平坦部53の中央に形成され上方に突出する円錐部54とからなる。短円筒部52と平坦部53とで、受け部を構成する。円錐部54の中央には、開口55が形成されている。
【0022】
短円筒部52の内径は、インナーサポート40の外側円筒部43の外径に略等しい。また円錐部54の最大外径は、インナーサポート40の内側円筒部42の内径より小さく、かつ平坦部53を基準に、円錐部54の高さは内側円筒部42の高さより低くなっている。ベース板50の外径は、ダイアフラム30の外径に略等しい。
【0023】
(パルセーションダンパーの組立)
図4は、組立装置を用いたパルセーションダンパー10の組立工程の一部を示す断面図である。
図4において、組立装置全体はチャンバCBで覆われており、チャンバCB内部に不活性ガスが注入されるが、従来技術のチャンバより小型化されている。
【0024】
組立装置の上方押圧部材82は、インナーサポート40の外側円筒部43より小径である中実円筒形状を有しており、その下面は外周に対して中央側が下方に突出した曲面となっている。ただし、上方押圧部材82の下面形状は平面であってもよい。また、上方押圧部材82は、インナーサポート40の外側円筒部43より大径であってもよい。上方押圧部材82は、不図示の移動装置によりチャンバCBに対して上下方向に移動可能に支持されており、また不図示の溶接用電源の一方の電極に接続されている。
【0025】
パルセーションダンパー10の組立について、説明する。
図1を参照して、まずベース板50の平坦部53上にインナーサポート40を接着または溶着する。これによりベース板50に対してインナーサポート40が容易に移動しなくなるため、パルセーションダンパー10の動作時の異音などを抑制できる。このとき、短円筒部52が外側円筒部43の下端に嵌合することにより、ベース板50に対してインナーサポート40が同軸に位置決めされる。かかる状態で、円錐部54は内側円筒部42内に位置することとなる。
【0026】
次に、ベース板50の下側フランジ部51の上に、ダイアフラム30の中間フランジ部32と、カバー20の上側フランジ部21を重ねて、不図示の治具で挟むことにより密着させ、密着した部位を大気中で全周にわたって溶接して固着する。このときダイアフラム30の内側は大気であるため、溶接方法は特に制限されない。溶接方法としては、例えばTIG溶接、レーザー溶接、プラズマ溶接などを採用できるが、これらに限定されることはない。また溶接中にヒュームが発生したとしても、簡素な吸引具を用いて吸引することで、その飛散を抑制できる。
【0027】
以上の工程で、カバー20とダイアフラム30とベース板50とが一体化された中間生成体70が形成される。中間生成体70においては、ダイアフラム30とベース板50との間の空間SP1内にインナーサポート40が配置されている。ただし、空間SP1は、ベース板50の開口55を介して外部と連通している。
【0028】
次に、形成された中間生成体70を、
図4(a)に示すように、チャンバCB内に設置する。中間生成体70は、不図示の治具で下方から支持される。このとき、上方押圧部材82は、中間生成体70より上方に離間させた状態で待機させる。
【0029】
次に、
図4(b)に示すように、上方から中間生成体70に向かって上方押圧部材82を接近させ、カバー20の環状部23を通過させて、その下端をダイアフラム30の円形隆起部31の中央に当接させ、さらに押圧する。押圧された円形隆起部31は弾性変形するが、円形隆起部31が内側円筒部42の上端に当接した時点で、上方押圧部材82の下降が停止される。
【0030】
このとき、円形隆起部31の周辺側も、外側円筒部43の上端に当接させると好ましい。円形隆起部31が内側円筒部42及び外側円筒部43の上端に当接した状態では、ダイアフラム30に生じる応力は、塑性変形を生じさせるほど増大しない。本実施形態では、パルセーションダンパー10の実使用時に作用する応力を想定して、内側円筒部42及び外側円筒部43の高さを設定している。また、内側円筒部42及び外側円筒部43の高さの設定のみならず、上方押圧部材82及び外側円筒部43の先端の形状も設定している。また、円形隆起部31が当接した場合でも、連通用の溝45、46(
図1参照)は開放された状態を維持する。
【0031】
かかる状態で、密閉したチャンバCB内に、大気とは成分が異なる不活性ガス(例えば窒素)を注入する。不活性ガスは、開口55を介して、インナーサポート40の内側円筒部42内へと進入する。内側円筒部42内へ進入した不活性ガスは、連通用の溝45を介して底壁部41の上方の空間へと進入し、さらに連通用の溝46を介して外側円筒部43の径方向外側の空間へと至る。これにより空間SP1全体にわたって、不活性ガスが充填されることとなる。
【0032】
インナーサポート40を利用して、ダイアフラム30に所与の初期変形を与えた状態で、内部に所定圧の不活性ガスを充填することにより、パルセーションダンパー10に安定した減衰性能を発揮させることができる。なお、ダイアフラム30に初期変形を与えた状態は、自由状態時と比較してダイアフラム30の内容積が小さくなる分、充填される不活性ガスの圧力は比較的高圧となる。
【0033】
その後、
図4(c)に示すように、不図示の治具を用いて、円錐部54内にてプラグ60を当接させて押圧力を付与し、すなわち鍛圧を印加する。このとき、プラグ60を介して鍛圧を受けるベース板50の上面は、インナーサポート40及びダイアフラム30を介して上方押圧部材82によって支持されている。このため、印加された鍛圧によりベース板50が塑性変形したり、内部容積が減少するなどの不具合を抑制できる。
【0034】
かかる状態を維持しつつ、ベース板50とプラグ60のプロジェクション溶接を行う。具体的には、鍛圧を印加したまま、外部の溶接用電源から上方押圧部材82とプラグ60の間に大電流を流す。これにより、円錐部54とプラグ60の当接部で抵抗発熱が生じ、当接部が溶融して固着する。
【0035】
本実施形態によれば、ベース板50の変形が上方押圧部材82の支持によって抑制されるため、プラグ60のプロジェクション溶接を精度よく実行することができ、それにより開口55が確実に閉止されて、空間SP1内の不活性ガスが密封状態で保存される。
【0036】
プロジェクション溶接であれば、短時間の発熱に留まるため不活性ガスの選定の自由度が高まるとともに、発生するヒュームの量も少なく、回収した不活性ガスの再利用も容易になる。ただし、円錐部54とプラグ60との溶接は、プロジェクション溶接に限られない。
【0037】
最終的に、上方押圧部材82を上昇させて、完成したパルセーションダンパー10を、チャンバCBから取り外すことができる。
【0038】
(パルセーションダンパーの動作)
パルセーションダンパー10は、図示しない燃料ポンプの加圧室に連通する燃料室に配置される。燃料室内の燃料が、カバー20の環状部23の内側や小穴24を介してダイアフラム30の外表面に接している。燃料ポンプ動作時において、燃料の脈動(圧力変動)がダイアフラム30に伝達され、それに応じてダイアフラム30が弾性変形することで脈動低減効果が発揮される。燃料圧が正常範囲にある限り、ダイアフラム30はインナーサポート40に当接せず、脈動低減効果が妨げられることがない。
【0039】
これに対し、燃料室の燃料圧が正常範囲を超えて過大となったとき、
図3に示すように、ダイアフラム30はインナーサポート40の内側円筒部42及び外側円筒部43の上端に当接するため、それ以上の変形が阻止される。これによりダイアフラム30が塑性変形することを抑止できる。その後、燃料圧が正常範囲に戻れば、ダイアフラム30の弾性変形が可能になるため、脈動低減効果を継続して発揮することができる。
【0040】
本実施形態によれば、パルセーションダンパー10にインナーサポート40を設けることにより、組立時における鍛圧を支持することができ、また使用時におけるダイアフラム30の過剰な変形を抑制できる。
【0041】
[第1の実施形態の変形例1]
図5は、第1の実施形態の変形例にかかるパルセーションダンパー10Aを示す
図2と同様な縦断面図である。上記実施形態と同様な構成については、同じ符号を付して重複説明を省略する。
【0042】
図5に示すパルセーションダンパー10Aにおいて、金属製のプラグ60Aは、円錐形状を有している。プラグ60Aが円錐形状を有しているため、プロジェクション溶接時に鍛圧を受けることで、プラグ60Aの外周面がベース板50の円錐部54の下面に密着する。これによりプラグ60Aと円錐部54との溶接範囲が拡大し、不活性ガスの封止を確実に行うことができる。
【0043】
[第1の実施形態の変形例2]
図6は、第1の実施形態の別な変形例にかかるパルセーションダンパー10Bを示す
図2と同様な縦断面図である。上記実施形態と同様な構成については、同じ符号を付して重複説明を省略する。
【0044】
図6に示すパルセーションダンパー10Bにおいて、ベース板50Bには、平坦部53Bの中央に円錐部が設けられておらず、開口55Bのみが形成されている。また、金属製のプラグ60Bは円板形状を有し、その上面外周に環状の突起部60Baを備える。
【0045】
プロジェクション溶接時に鍛圧を受けたとき、プラグ60の突起部60Baが、平坦部53Bの下面において開口55Bの周囲に全周で当接し、さらに溶接により当接部が接合される。これにより開口55Bの周囲を確実に溶接できる。
【0046】
[第1の実施形態の変形例3]
図7は、第1の実施形態のさらに別な変形例にかかるパルセーションダンパー10Cを示す
図2と同様な縦断面図である。上記実施形態と同様な構成については、同じ符号を付して重複説明を省略する。
【0047】
図7に示すパルセーションダンパー10Cにおいて、ベース板50Cも、平坦部53Cの中央に円錐部を有しない。その代わりにベース板50Cは、開口55Cの周囲において下方に突出する環状隆起部56Cを備える。環状隆起部56Cは、例えばベース板50Cに対しプレス成形を行う際に、開口55Cの周囲における平坦部53Cの上面を、環状の型で押圧することで同時に形成できる。
【0048】
また、本変形例のプラグ60Cは、単純な金属製の円板である。プロジェクション溶接時に鍛圧を受けたプラグ60Cが、開口55Cの周囲にわたって平坦部53Cの下面から突出した環状隆起部56Cに当接し、さらに溶接により当接部が接合される。これにより開口55Cの周囲を確実に溶接できる。また、本変形例では個々の部品が簡素化されるため、コスト削減を図れる。
【0049】
[第2の実施形態]
図8は、本発明の第2の実施形態に係るパルセーションダンパー10Dの分解図である。
図9は、自由状態におけるパルセーションダンパー10Dの縦断面図である。上記実施形態と同様な構成については、同じ符号を付して重複説明を省略する。
【0050】
第1の実施形態においては、ベース板とインナーサポートとを接着または溶着しているが、第2の実施形態によれば、ベース板50Dとインナーサポート40Dとを、より確実に位置決め固定することができる。
【0051】
そのため
図8、9に示すように、本実施形態のベース板50Dには、嵌合円筒部54Dが設けられている。また、嵌合円筒部54Dと平坦部53Dとの連接部には、プラグ60と溶接される短円錐部54Daが形成されており、これに対応してインナーサポート40Dには、内側円筒部42Dの下端内周に、下方に向かって拡径したテーパー形状の面取り部42Daが形成されている。面取り部42Daは、嵌合円筒部54Dを内側円筒部42Dに挿入する際の案内として機能する。ここで、内側円筒部42Dが被嵌合部を構成し、嵌合円筒部54Dが嵌合部を構成する。また嵌合円筒部54Dの内周が、開口55Dを構成する。
【0052】
嵌合円筒部54Dの外径は、内側円筒部42Dの内径よりわずかに大きくなっている。したがって、嵌合円筒部54Dを内側円筒部42Dに嵌合させることで、内側円筒部42Dが拡径するように弾性変形し、その弾性力で嵌合円筒部54Dを締め付けることにより、両者の確実な固定を実現できる。なお、第1の実施形態と同様に、ベース板50Dとインナーサポート40Dとの接着または溶着を併用してもよい。
【0053】
[第2の実施形態の変形例]
図10は、第2の実施形態の変形例にかかるパルセーションダンパー10Eを示す
図2と同様な縦断面図である。上記実施形態と同様な構成については、同じ符号を付して重複説明を省略する。
【0054】
図10に示すパルセーションダンパー10Eにおいて、ベース板50Eは、嵌合円筒部の代わりに、上方に向かって拡径する逆円錐部54Eを備える。逆円錐部54Eは、短円錐部54Eaの上端に連接するようにして配設され、その最小内径部により開口55Eが形成される。また、これに対応してインナーサポート40Eには、内側円筒部42Eの下端内周に、全周にわたって内向きに突出した環状凸部42Eaが形成されている。短円錐部54Eaと環状凸部42Eaとで、抜け止め部を構成する。
【0055】
逆円錐部54Eの上端の最大外径は、環状凸部42Eaの最小内径より大きくなっている。ベース板50Eとインナーサポート40Eとの組付時において、逆円錐部54Eを内側円筒部42Eに挿入する際に、環状凸部42Eaが弾性変形して逆円錐部54Eの進入を許容し、また逆円錐部54Eの上端が通過した後に、環状凸部42Eaが弾性変形から復帰する。これにより、逆円錐部54Eが内側円筒部42Eから抜け出ることが阻止され、ベース板50Eとインナーサポート40Eとの連結が強化される。組付後において、環状凸部42Eaが、逆円錐部54E及び短円錐部54Eaの外周に密着すると、ガタ付きが抑制されるので好ましい。なお、第1の実施形態と同様に、ベース板50Eとインナーサポート40Eとの接着または溶着を併用してもよい。
【0056】
[第3の実施形態]
図11は、本発明の第3の実施形態に係るパルセーションダンパー10Fの分解図である。
図12は、自由状態におけるパルセーションダンパー10Fの縦断面図である。上記実施形態と同様な構成については、同じ符号を付して重複説明を省略する。
【0057】
本実施形態によれば、ダイアフラム30を用いてインナーサポート40Fを固定することができる。
【0058】
本実施形態において、ベース板50Fの短円筒部52Fの内径及び平坦部53Fの外径は、ダイアフラム30の中間フランジ部32の内径より大きく、また、ベース板50Fの短円筒部52Fの内径及び平坦部53Fの外径は、カバー20の円筒部22の内径よりも大きくなっている。これに対向してインナーサポート40Fの底壁部41Fは、外側円筒部43の下端から径方向外側にはみ出して形成されており、底壁部41Fの外径は、短円筒部52Fの内径に略一致している。また、底壁部41Fの厚みは、短円筒部52Fの高さと同じである。ただし、底壁部41Fの厚みは、短円筒部52Fの高さと同じであることが好ましい。
【0059】
ベース板50Fとインナーサポート40Fとを組み付けるとき、底壁部41Fを平坦部53Fに載置すると、底壁部41Fの外周が短円筒部52Fの内周に対して、ほぼ隙間なく密着する。その後、カバー20とダイアフラム30とベース板50Fとを溶接すると、
図12に示すように、ダイアフラム30の中間フランジ部32の下面に、底壁部41Fの外周近傍上面が当接することとなる。
【0060】
このため、インナーサポート40Fは、全周にわたってダイアフラム30とベース板50Fとにより挟持されて固定されることとなり、それによりベース板50Fとインナーサポート40Fとが強固に連結される。なお、第1の実施形態と同様に、ベース板50Fとインナーサポート40Fとの接着または溶着を併用してもよい。
【0061】
[第4の実施形態]
図13は、本発明の第4の実施形態に係るパルセーションダンパー10Gの分解図である。
図14は、自由状態におけるパルセーションダンパー10Gの縦断面図であり、
図15は、最大加圧時におけるパルセーションダンパー10Gの縦断面図である。上記実施形態と同様な構成については、同じ符号を付して重複説明を省略する。
【0062】
上記実施形態においては、プラグをベース板の中央に配設している。これに対し、本実施の形態では、円錐状のプラグ60Gをベース板50Gの中央以外の位置に配設するものである。なお、円錐状のプラグに代えて、球状のプラグを用いてもよい。
【0063】
図13、14において、ベース板50Gは、短円筒部を有しておらず、全体が円形の平坦部53Gから形成されている。したがって、平坦部53Gの外周部により下側フランジ部を構成する。平坦部53Gの中央に、上方に突出するカップ状凸部58Gが形成されている。カップ状凸部58Gが嵌合部を構成し、内側円筒部42が被嵌合部を構成する。またインナーサポート40の径方向外側であって、平坦部53Gの外周近傍に、円錐部54Gが形成されている。上述した実施形態と同様に、円錐部54Gの中央に開口55Gが形成されている。
【0064】
ベース板50Gとインナーサポート40とを組み付けるとき、カップ状凸部58Gを内側円筒部42に嵌合させることで、両者の位置決め及び固定が行われる。第1の実施形態と同様に、ベース板50Gとインナーサポート40との接着または溶着を併用してもよい。また、円錐状のプラグ60Gの円錐部54Gに対するプロジェクション溶接は、
図4に示す下方押圧部材82の位置を、円錐部54Gに対応して外周側へと変更した組立装置を用いることで実現できる。
【0065】
ダイアフラム30の円形隆起部31は、略平坦な中央部31aと、中央部31aの外周側と中間フランジ部32とを接続する断面円弧状の肩部31bとを有する。本実施形態においては、円錐部54Gをダイアフラム30の円形隆起部31の肩部31bの下方に配置している。
【0066】
円形隆起部31の肩部31b付近は、中央部31aに比べて上下方向の剛性が高いため、ダイアフラム30が燃料圧を受けて変形する際の変形量が比較的少なく、
図15に示すように燃料圧が最大となったときでも、肩部31bの下方に比較的大きな空間が存在する。そこで、円錐部54Gを円形隆起部31の肩部31bの下方に配置することにより、円錐部54Gに円形隆起部31が接しない範囲で、円形隆起部31の高さを極力抑えることができる。このため、パルセーションダンパー10Gの全高を抑えて、その小型化に貢献できる。それに応じて、インナーサポート40をより薄形にすることができる。
【0067】
[第5の実施形態]
図16は、本発明の第5の実施形態に係るパルセーションダンパー10Hの分解図である。
図17は、パルセーションダンパー10Hのインナーサポート40Hを下面側から見た斜視図である。
図18は、自由状態におけるパルセーションダンパー10Hの縦断面図であり、
図19は、最大加圧時におけるパルセーションダンパー10Hの縦断面図である。上記実施形態と同様な構成については、同じ符号を付して重複説明を省略する。
【0068】
プラグのプロジェクション溶接時に、溶接箇所よりスパッタ(金属粉)が発生する場合がある。スパッタは微量でも、ダイアフラム30の内側の空間SP1に進入することで、ダイアフラム30と他部品(40、50)との間で噛み込みなどによる破損等の不具合が生じるおそれがある。本実施形態では、かかる不具合を抑制することができる。
【0069】
本実施形態においては、図に示すようにインナーサポート40Hに内側円筒部が設けられておらず、代わりに円形頂壁と円錐壁とからなり且つ外側円筒部43より高さの低い円錐台形部(中心側支持部ともいう)42Hが設けられる。このため、ベース板50の開口55は、空間SP1に対して仕切り壁として機能する円錐台形部42Hによって隔てられている。したがって、開口55からダイアフラム30の内側の空間SP1まで、不活性ガスを供給するルートを確保する必要がある。
【0070】
そこで、本実施形態においては、
図17に示すようにインナーサポート40Hの底壁部41の下面において、円錐台形部42Hの下端と、4つの円形開口44とをそれぞれ連通する連通溝49Hを配設している。連通溝49Hの断面最大寸法は、空間SP1に侵入することを阻止したい異物の外径(例えばφ0.5mm)より小さいことが望ましい。インナーサポート40Hの下面がベース板50に当接したときに、連通溝49Hにより不活性ガスが流れる通路を形成することができる。
【0071】
パルセーションダンパー10Hの組立時には、まずベース板50の上にインナーサポート40Hを接着または溶着し、ベース板50とダイアフラム30とカバー20の外周にフランジ部を溶接して、中間生成体(不図示)を形成する。その後、
図4に示す組立装置に中間生成体をセットして、開口55を介して不活性ガスを注入する。
【0072】
開口55から、円錐台形部42Hと円錐部54との間の空間SP3に進入した不活性ガスは、連通溝49Hを通過して円形開口44に至り、そこから空間SP1内に充填される。このとき、連通溝49Hの断面が小さいため、空間SP1内への異物の侵入を阻止することができる。その後、プロジェクション溶接により、プラグ60をベース板50に固着することで、パルセーションダンパー10Hが完成する。
【0073】
なお、連通溝49Hを設ける代わりに、インナーサポート40Hの下面に微細な凹凸形状を設けても、空間SP1内への異物の侵入を阻止しつつ、不活性ガスの通過を許容することができる。微細な凹凸形状は、例えばシボ加工などを施すことで形成できる。
【0074】
本実施形態の円錐台形部42Hの平坦な上面は、外側支持部43とともに、
図19に示すようにダイアフラム30の下面に当接可能であるため、組立時における鍛圧を支持する機能と、使用時におけるダイアフラム30の過剰な変形を抑制する機能とを備える。
【0075】
[第6の実施形態]
図20は、本発明の第6の実施形態に係るパルセーションダンパー10Iの分解図である。
図21は、自由状態におけるパルセーションダンパー10Iの縦断面図であるが、点線で最大加圧時のダイアフラム30の変形を示している。上記実施形態と同様な構成については、同じ符号を付して重複説明を省略する。
【0076】
本実施形態のパルセーションダンパー10Iは、インナーサポートを有しない。その代わり、ベース板50Iに、ダイアフラム30を支持する構造を配設している。
【0077】
本実施形態において、ベース板50Iは、全体が円形の平坦部53Iから形成され、その中央に開口55Iが形成されており、平坦部53Iの外周近傍が下側フランジ部を構成する。平坦部53Iの上面に、開口55Iを囲うようにして、軸線方向に見て半円弧状に隆起した一対の半月隆起部(ベース隆起部ともいう)59Iが形成されている。半月隆起部59Iは、例えばベース板50Iに対しプレス成形を行う際に、開口55Iの周囲における平坦部53Iの下面を、対応する型で押圧することで同時に形成できる。
【0078】
本実施形態においては、
図6に示すものと同様な円板状のプラグ60Iを用いているが、例えば第1の実施形態と同様に、ベース板50Iに円錐部を形成して、球状のプラグをプロジェクション溶接してもよい。
【0079】
パルセーションダンパー10Iの組立時に、まずベース板50Iとダイアフラム30とカバー20の外周のフランジ部を溶接して、中間生成体(不図示)を形成する。その後、
図4に示す組立装置に中間生成体をセットして、中間生成体の上方から上方押圧部材82を接近させ、カバー20の環状部23を通過させて、その下端をダイアフラム30の円形隆起部31の中央に当接させ、さらに押圧する。押圧された円形隆起部31は弾性変形するが、
図21に点線で示すように、円形隆起部31が半月隆起部59Iの上面に当接した時点で、上方押圧部材82の下降が停止される。
【0080】
円形隆起部31が半月隆起部59Iの上面に当接した状態でも、半月隆起部59Iの端部間の隙間(通路ともいう)CLを介して、開口55Iと空間SP1とは連通可能である。
【0081】
開口55Iを介して、半月隆起部59Iの内側の空間に不活性ガスを注入すると、注入された不活性ガスは、半月隆起部59Iの端部間の隙間CLを通過して、空間SP1内に充填される。その後、プロジェクション溶接により、プラグ60Iをベース板50Iに固着することで、パルセーションダンパー10Iが完成する。なお、半月隆起部59Iの表面に樹脂等の絶縁体をコーティングしてもよい。これにより、溶接時の意図しない接合の防止やダイアフラム30との接触による異音の発生を防止できる。
【0082】
本実施形態の半月隆起部59Iは、
図21に点線で示すように変形したダイアフラム30の中央下面に当接可能であるため、組立時における鍛圧を支持する機能と、使用時におけるダイアフラム30の過剰な変形を抑制する機能とを備える。
【0083】
本実施形態では、半月隆起部59Iを2つ設けているが、3つ以上設けてもよいし、あるいは軸線方向に見てC字状の隆起部を1つ設けてもよい。
【0084】
本発明は、以上の実施形態に限られない。例えば、鍛圧または最大燃料圧を受けたとき、ダイアフラムは、インナーサポートまたはベース板に対して1か所で接してもよいし、3か所以上で接してもよい。
【符号の説明】
【0085】
10、10A、10B、10C、10D、10E、10F、10G、10H、10I パルセーションダンパー
20 カバー
30 ダイアフラム
40、40D、40E、40F、40H インナーサポート
50、50B、50C、50D、50E、50F、50G、50I ベース板
60、60A、60B、60C、60G、60I プラグ
70 中間生成体