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  • 特開-内装品、及びその製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022184381
(43)【公開日】2022-12-13
(54)【発明の名称】内装品、及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 45/18 20060101AFI20221206BHJP
   B29C 45/00 20060101ALI20221206BHJP
   B60R 13/02 20060101ALI20221206BHJP
【FI】
B29C45/18
B29C45/00
B60R13/02 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021092190
(22)【出願日】2021-06-01
(71)【出願人】
【識別番号】000110321
【氏名又は名称】トヨタ車体株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000394
【氏名又は名称】弁理士法人岡田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小野 高太郎
【テーマコード(参考)】
3D023
4F206
【Fターム(参考)】
3D023BB01
3D023BE04
3D023BE12
3D023BE31
4F206AA04
4F206AA11
4F206AB12
4F206AB25C
4F206AF07
4F206AF13
4F206AH26
4F206AR12
4F206JA07
4F206JF01
4F206JF02
4F206JL02
4F206JM01
4F206JM04
4F206JN03
(57)【要約】
【課題】意匠面を布調に成形した樹脂製の内装品を質感高く形成し、内装品の商品力を向上させることである。
【解決手段】樹脂の射出成形品である内装品12であって、素材となるベース樹脂25には、顔料と、繊維状のフィラーとが混合されており、前記フィラーは、ベース樹脂25よりも溶融温度が高い樹脂により形成されており、射出成形品の意匠面12eには、布調のシボが施されている。即ち、布調のシボが施された内装品12の意匠面には、繊維状のフィラーがそのままの状態で存在する。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂の射出成形品である内装品であって、
素材となるベース樹脂には、顔料と、繊維状のフィラーとが混合されており、
前記フィラーは、前記ベース樹脂よりも溶融温度が高い樹脂により形成されており、
前記射出成形品の意匠面には、布調のシボが施されている内装品。
【請求項2】
請求項1に記載された内装品であって、
前記フィラーは、前記顔料と異なる色に着色されている内装品。
【請求項3】
請求項1又は請求項2のいずれかに記載された内装品であって、
前記ベース樹脂の重量を100重量パーセントとした場合に、前記フィラーと顔料とを加算した重量は、0.24~0.4重量パーセントに設定されている内装品。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれかに記載された内装品であって、
前記フィラーの径寸法は、数十μmよりは小さく設定されており、前記フィラーの長さ寸法は、0.5~1.5mmに設定されている内装品。
【請求項5】
樹脂製の内装品の製造方法であって、
ベース樹脂のペレットと、顔料と、前記ベース樹脂よりも溶融温度が高い樹脂により形成された繊維状のフィラーとを準備する準備工程と、
前記フィラーと前記顔料と所定量のマスターバッチ用の前記ベース樹脂のペレットとを混練機に投入し、前記ベース樹脂の溶融温度以上の温度で混練してマスターバッチ樹脂を形成し、そのマスターバッチ樹脂をペレット化する混練工程と、
前記マスターバッチ樹脂のペレットと最終製品用の前記ベース樹脂のペレットとを予め決められた割合でブレンドするブレンド工程と、
ブレンドされた前記マスターバッチ樹脂のペレットと最終製品用の前記ベース樹脂のペレットとを射出成形機に投入して、意匠面に布調のシボが施された内装品を形成する射出成形工程と、
を有する内装品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両等の内装品、及びその内装品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
車両等の内装品の商品力を向上させるために、樹脂製の内装品に対して布調や皮調の表皮材を接着剤等で貼り合わせることが一般的に行われている。しかし、内装品に対して表皮材を貼り合わせる方法では、表皮材自体に材料費が掛かるとともに、表皮材を貼り合わせる手間も掛かることからコストアップになる。このため、表皮材を使用せず、内装品の意匠面を布調等に成形することが望まれている。
【0003】
特許文献1に記載の技術では、図8に示すように、有彩色の樹脂基材102と、樹脂基材102内に混入されて、その樹脂基材102と同系色の第1の繊維パイル104と、樹脂基材102内に混入されて、第1の繊維パイル104と補色の関係にある第2の繊維パイル106とから布調の板状内装品100を形成している。ここで、板状内装品100は、第1の繊維パイル104と第2の繊維パイル106とが混入された溶融状態の樹脂基材102を押出成形装置(図示省略)からシート状に連続して押し出すことにより成形されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001-200064号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の技術では、押出成形装置を使用して布調の板状内装品100を形成するため、板状内装品100の意匠面に布状の凹凸(シボ)を形成するのは難しい。このため、樹脂基材102に対して複数の繊維パイル104,106を混入しても、樹脂基材102の意匠面を質感の高い布調にするのは難しい。
【0006】
本発明は、上記問題点を解決するためになされたものであり、本発明が解決しようとする課題は、意匠面を布調に成形した樹脂製の内装品を質感高く形成し、内装品の商品力を向上させることである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記した課題は、各発明によって解決される。第1の発明は、樹脂の射出成形品である内装品であって、素材となるベース樹脂には、顔料と、繊維状のフィラーとが混合されており、前記フィラーは、前記ベース樹脂よりも溶融温度が高い樹脂により形成されており、前記射出成形品の意匠面には、布調のシボが施されている。
【0008】
本発明によると、フィラーは、ベース樹脂より溶融温度が高い樹脂により形成されている。このため、射出成形時等にフィラーが溶融してベース樹脂と混じり合うことがない。即ち、布調のシボが施された内装品の意匠面には、繊維状のフィラーがそのままの状態で存在する。このように、繊維状のフィラーを認識できるため、布調のシボが施されている内装品の意匠面の質感が向上する。
【0009】
第2の発明によると、フィラーは、顔料と異なる色に着色されている。即ち、顔料により着色されたベース樹脂に対してフィラーが目立つようになる。
【0010】
第3の発明によると、ベース樹脂の重量を100重量パーセントとした場合に、フィラーと顔料とを加算した重量は、0.24~0.4重量パーセントに設定されている。これにより、内装品の意匠面の質感が実際の布の質感に近くなる。
【0011】
第4の発明によると、フィラーの径寸法は、数十μmよりは小さく設定されており、前記フィラーの長さ寸法は、0.5~1.5mmに設定されている。これにより、フィラーが実際の布の繊維に近くなる。
【0012】
第5の発明は、樹脂製の内装品の製造方法であって、ベース樹脂のペレットと、顔料と、前記ベース樹脂よりも溶融温度が高い樹脂により形成された繊維状のフィラーとを準備する準備工程と、前記フィラーと前記顔料と所定量のマスターバッチ用の前記ベース樹脂のペレットとを混練機に投入し、前記ベース樹脂の溶融温度以上の温度で混練してマスターバッチ樹脂を形成し、そのマスターバッチ樹脂をペレット化する混練工程と、前記マスターバッチ樹脂のペレットと最終製品用の前記ベース樹脂のペレットとを予め決められた割合でブレンドするブレンド工程と、ブレンドされた前記マスターバッチ樹脂のペレットと最終製品用の前記ベース樹脂のペレットとを射出成形機に投入して、意匠面に布調のシボが施された内装品を形成する射出成形工程とを有する。
【発明の効果】
【0013】
本発明によると、樹脂により意匠面を布調に成形した内装品の質感の向上により商品力がアップする。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の実施形態1に係る内装品(ピラーガーニッシュ)の一例を表す模式斜視図である。
図2】前記内装品の製造方法における混練工程を表す模式図である。
図3】前記混練工程において使用される混練機の模式側面図である。
図4】前記内装品の製造方法におけるブレンド工程を表す模式図である。
図5】前記内装品の製造方法における射出成形工程を表す模式図である。
図6】前記射出成形工程において使用される射出成形機の模式側面図である。
図7】射出成形機の金型の成形面を表す模式縦断面図(図6のVII矢視拡大図)である。
図8】従来の内装品を表す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
[実施形態1]
以下、図1から図7に基づいて本発明の実施形態1に係る内装品、及びその内装品の製造方法について説明する。本実施形態に係る内装品は、図1に示すように、車両10のフロントピラー(図示省略)を車室内側から覆うピラーガーニッシュ12である。一般的に、車両10の車室の天井面等は織物、不織布等の布調の内装品で覆われることが多い。このため、車室の天井面に連なるピラーガーニッシュ12も質感の高い布調に形成することで、商品力が向上する。本実施形態では、意匠面が布調のピラーガーニッシュ12を射出成形により成形する方法について説明する。
【0016】
<ピラーガーニッシュ12の素材について>
ピラーガーニッシュ12の素材は、図2図4、及び図5に示すように、ベース樹脂24,25と、そのベース樹脂24,25を着色する顔料23と、繊維状のフィラー21とから構成されている。ベース樹脂24,25としては、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、ABS樹脂等の熱可塑性樹脂が使用可能であるが、本実施形態では、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)を使用する。顔料23(素材に染み込まない)は、無機顔料、有機顔料のどちらも使用可能であり、例えば、ライトグレーやライトブラウン等の淡色が使用される。フィラー21は、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリアミド(PA)等の樹脂から形成された繊維であり、染料(素材に染み込む)により黒、ブラウン等の濃色に着色されている。フィラー21の径寸法は数十μm以下に設定されており、フィラー21の長さ寸法は0.5~1.5mmに設定されている。ここで、フィラー21の素材である樹脂は、溶融温度(融点)が約255°C(PET)、約225°C(PA)であり、ベース樹脂24,25の溶融温度(168°C(PP)、120~140°C(PE))よりも十分に高い。このため、射出成形時等においてベース樹脂24,25が溶融している状態でもフィラー21の繊維形状は保持されている。
【0017】
<ピラーガーニッシュ12の製造方法について>
ピラーガーニッシュ12の製造工程は、混練工程とブレンド工程と射出成形工程とを備えている。
【0018】
<混練工程について>
混練工程は、図2に示すように、フィラー21と顔料23とマスターバッチ用のベース樹脂24を混練してマスターバッチ樹脂26のペレットを形成する工程である。混練工程では、混練機30が使用される。混練機30は、図3に示すように、押出式の混練機であり、混練機本体部31を備えている。混練機本体部31は、円筒形のシリンダ部32と、そのシリンダ部32内に回転可能に収納されている螺旋状のスクリュー(図示省略)と、前記スクリューを回転させる駆動部33とを備えている。また、混練機本体部31は、前記シリンダ部32内にフィラー21と顔料23とマスターバッチ用のベース樹脂24とを投入するホッパー34と、シリンダ部32内の温度を調整する温度調整部35とを備えている。
【0019】
混練工程では、マスターバッチ用のベース樹脂24としてポリエチレン(PE)が使用される。ここで、フィラー21と顔料23とベース樹脂24との配合割合は、ベース樹脂24が、例えば、92重量パーセントに対してフィラー21と顔料23との加算重量のパーセントが8重量パーセントに設定されている。そして、この配合割合でベース樹脂24とフィラー21と顔料23とが、図3に示す混練機30(混練機本体部31)のホッパー34に供給される。このとき、混練機本体部31のシリンダ部32内の温度は温度調整部35によりベース樹脂24の溶融温度以上に調整されている。
【0020】
そして、ホッパー34から混練機本体部31のシリンダ部32内にベース樹脂24、フィラー21、及び顔料23が供給されると、ベース樹脂24が熱溶融した状態で螺旋状のスクリューが回転することで、ベース樹脂24とフィラー21と顔料23とが混練される。そして、図3に示すように、混練後のマスターバッチ樹脂26wがシリンダ部32の製品出口(図示省略)から軟化棒状に押し出される。混練機本体部31から押出された軟化棒状のマスターバッチ樹脂26wは、冷却槽38で水冷された後、カッタ39で所定サイズに切断されてペレット状のマスターバッチ樹脂26となる。
【0021】
<ブレンド工程について>
ブレンド工程では、図4に示すように、マスターバッチ樹脂26のペレットと射出成形用(最終製品用)のベース樹脂25のペレットとを予め決められた割合でブレンドする。ここで、射出成形用のベース樹脂25としては、ポリプロピレン(PP)が使用される。マスターバッチ樹脂26のペレットと射出成形用のベース樹脂25のペレットとの配合割合は、ベース樹脂25を100重量パーセントとしたときに、マスターバッチ樹脂26は3重量パーセントに設定されている。このため、ベース樹脂24,25の全体に対するフィラー21と顔料23との加算重量のパーセントは0.24重量パーセントとなる。なお、ベース樹脂24,25に対するフィラー21と顔料23との加算重量のパーセントは、0.24~0.4重量パーセントの範囲内で適宜調整が可能である。
【0022】
<射出成形工程について>
射出成形工程は、図5に示すように、ブレンドされた射出成形用のベース樹脂25のペレットとマスターバッチ樹脂26のペレット(ブレンド樹脂27)とを使用して射出成形機40により射出成形品であるピラーガーニッシュ12を成形する工程である。射出成形機40は、図6に示すように、可動型41mと固定型41sとからなる成形型41を備えている。成形型41の固定型41sには、図6図7に示すように、ピラーガーニッシュ12の意匠面12eを成形するための成形面41fが設けられている。そして、固定型41sの成形面41fには、ピラーガーニッシュ12の意匠面12eに布調のシボ(不規則なシワ模様)を形成するための凹凸模様が設けられている。ここで、図7は、固定型41sの成形面41fの断面を模式的に表したものであり、布調のシボの種類に応じて複数種類が準備されている。
【0023】
射出成形機40は、図6に示すように、成形型41の成形空間内に溶融樹脂を圧入する射出ユニット43を備えている。射出ユニット43には、射出ユニット43に対してブレンド樹脂27のペレットを供給するためのホッパー45が設けられている。これにより、射出成形機40のホッパー45からブレンド樹脂27のペレットを射出ユニット43に供給し、射出ユニット43でブレンド樹脂27のポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)を溶融させて成形型41に圧入することで、意匠面12eに布調のシボが施されたピラーガーニッシュ12を成形することができる。
【0024】
<本実施形態に係る内装品(ピラーガーニッシュ12)の長所について>
本実施形態に係るピラーガーニッシュ12(内装品)によると、フィラー21は、ベース樹脂24,25より溶融温度が高い樹脂により形成されている。このため、射出成形時等にフィラー21が溶融してベース樹脂24,25と混じり合うことがない。即ち、布調のシボが施されたピラーガーニッシュ12の意匠面12eには、繊維状のフィラー21がそのままの状態で存在する。このように、繊維状のフィラー21を認識できるため、布調のシボが施されているピラーガーニッシュ12の意匠面12eの質感が向上する。また、フィラー21は、顔料23(ライトグレーやライトブラウン等の淡色)と異なる色(黒等の濃色)に着色されている。即ち、顔料23により着色されたベース樹脂24,25に対してフィラー21が目立つようになる。さらに、フィラー21の径寸法は、数十μmよりは小さく設定されており、フィラー21の長さ寸法は、0.5~1.5mmに設定されているため、フィラー21が実際の布の繊維に近くなる。
【0025】
<変更例>
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における変更が可能である。例えば、本実施形態では、ベース樹脂24,25に対して1種類のフィラー21を添加する例を示したが、複数の色違い、あるいはサイズ違いのフィラーを添加することも可能である。また、本実施形態では、混練工程におけるマスターバッチ用のベース樹脂24としてポリエチレン(PE)を使用する例を示したが、ポリエチレン(PE)の代わりにポリプロピレン(PP)を使用することも可能である。さらに、本実施形態では、内装品としてピラーガーニッシュ12を例示したが、天井板やドアトリム等に本発明を適用することも可能である。
【符号の説明】
【0026】
12・・・ピラーガーニッシュ(内装品)
12e・・意匠面
21・・・フィラー
23・・・顔料
24・・・ベース樹脂(マスターバッチ用のベース樹脂)
25・・・ベース樹脂(最終製品用のベース樹脂)
26・・・マスターバッチ樹脂
30・・・混練機
40・・・射出成形機
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8