IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 沖電気工業株式会社の特許一覧

特開2022-184382交通状態検出装置、交通状態検出方法およびプログラム
<>
  • 特開-交通状態検出装置、交通状態検出方法およびプログラム 図1
  • 特開-交通状態検出装置、交通状態検出方法およびプログラム 図2
  • 特開-交通状態検出装置、交通状態検出方法およびプログラム 図3
  • 特開-交通状態検出装置、交通状態検出方法およびプログラム 図4
  • 特開-交通状態検出装置、交通状態検出方法およびプログラム 図5
  • 特開-交通状態検出装置、交通状態検出方法およびプログラム 図6
  • 特開-交通状態検出装置、交通状態検出方法およびプログラム 図7
  • 特開-交通状態検出装置、交通状態検出方法およびプログラム 図8
  • 特開-交通状態検出装置、交通状態検出方法およびプログラム 図9
  • 特開-交通状態検出装置、交通状態検出方法およびプログラム 図10
  • 特開-交通状態検出装置、交通状態検出方法およびプログラム 図11
  • 特開-交通状態検出装置、交通状態検出方法およびプログラム 図12
  • 特開-交通状態検出装置、交通状態検出方法およびプログラム 図13
  • 特開-交通状態検出装置、交通状態検出方法およびプログラム 図14
  • 特開-交通状態検出装置、交通状態検出方法およびプログラム 図15
  • 特開-交通状態検出装置、交通状態検出方法およびプログラム 図16
  • 特開-交通状態検出装置、交通状態検出方法およびプログラム 図17
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022184382
(43)【公開日】2022-12-13
(54)【発明の名称】交通状態検出装置、交通状態検出方法およびプログラム
(51)【国際特許分類】
   G08G 1/01 20060101AFI20221206BHJP
   G08G 1/09 20060101ALI20221206BHJP
【FI】
G08G1/01 C
G08G1/09 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021092191
(22)【出願日】2021-06-01
(71)【出願人】
【識別番号】000000295
【氏名又は名称】沖電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100140958
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 学
(74)【代理人】
【識別番号】100137888
【弁理士】
【氏名又は名称】大山 夏子
(74)【代理人】
【識別番号】100190942
【弁理士】
【氏名又は名称】風間 竜司
(72)【発明者】
【氏名】松平 正樹
【テーマコード(参考)】
5H181
【Fターム(参考)】
5H181AA01
5H181BB04
5H181BB13
5H181BB19
5H181BB20
5H181CC12
5H181DD02
5H181DD03
5H181DD04
5H181FF10
5H181FF13
5H181FF27
5H181FF33
5H181MC14
5H181MC27
(57)【要約】
【課題】必要なコストを抑えつつ、高精度かつ高精細に車両速度を計測することを可能とする技術が提供されることが望まれる。
【解決手段】道路上の所定位置を走行する車両の検出結果を車両検出部から取得し、前記車両の検出結果に基づいて、前記所定位置に対応する交通量を算出する交通量算出部と、前記所定位置に対応する第1の交通量の所定時間ごとの第1の頻度分布を算出し、前記第1の頻度分布を第1の統計分布で近似して第1のパラメータを算出し、前記第1のパラメータと前記第1の頻度分布のばらつきに関するデータと、あらかじめ機械学習によって算出された基準パラメータとに基づいて、前記道路上の交通流状態が渋滞流である確率と、前記交通流状態が自由流である確率とを算出する交通量分布判定部と、を備える、交通状態検出装置が提供される。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
道路上の所定位置を走行する車両の検出結果を車両検出部から取得し、前記車両の検出結果に基づいて、前記所定位置に対応する交通量を算出する交通量算出部と、
前記所定位置に対応する第1の交通量の所定時間ごとの第1の頻度分布を算出し、前記第1の頻度分布を第1の統計分布で近似して第1のパラメータを算出し、前記第1のパラメータと前記第1の頻度分布のばらつきに関するデータと、あらかじめ機械学習によって算出された基準パラメータとに基づいて、前記道路上の交通流状態が渋滞流である確率と、前記交通流状態が自由流である確率とを算出する交通量分布判定部と、
前記交通流状態が渋滞流である確率と、前記交通流状態が自由流である確率とに基づいて、前記交通流状態の判定結果を得る交通流判定部と、
前記交通流状態の判定結果と、前記所定位置に対応する交通量と、あらかじめ用意された交通量と車両速度との対応関係とに基づいて、前記所定位置に対応する車両速度を判定する速度判定部と、
を備える、交通状態検出装置。
【請求項2】
前記交通量分布判定部は、自由流における前記所定位置に対応する第2の交通量の第2の頻度分布を算出し、前記第2の頻度分布を前記第1の統計分布で近似して第2のパラメータを算出し、前記第2のパラメータに基づいて自由流に対応する基準パラメータを算出する、
請求項1に記載の交通状態検出装置。
【請求項3】
前記交通量分布判定部は、前記第2のパラメータと前記第2の頻度分布のばらつきに関するデータとの対応関係の頻度分布を第2の統計分布で近似して前記自由流に対応する基準パラメータを算出する、
請求項2に記載の交通状態検出装置。
【請求項4】
前記交通量分布判定部は、渋滞流における前記所定位置に対応する第3の交通量の第3の頻度分布を算出し、前記第3の頻度分布を前記第1の統計分布で近似して第3のパラメータを算出し、前記第3のパラメータに基づいて渋滞流に対応する基準パラメータを算出する、
請求項1~3のいずれか一項に記載の交通状態検出装置。
【請求項5】
前記交通量分布判定部は、前記第3のパラメータと前記第3の頻度分布のばらつきに関するデータとの対応関係の頻度分布を第3の統計分布で近似して前記渋滞流に対応する基準パラメータを算出する、
請求項4に記載の交通状態検出装置。
【請求項6】
前記交通量分布判定部は、
自由流における前記所定位置に対応する第2の交通量の第2の頻度分布を算出し、前記第2の頻度分布を前記第1の統計分布で近似して第2のパラメータを算出し、
渋滞流における前記所定位置に対応する第3の交通量の第3の頻度分布を算出し、前記第3の頻度分布を前記第1の統計分布で近似して第3のパラメータを算出し、
前記第2のパラメータと前記第2の頻度分布のばらつきに関するデータとを含んだ学習データと自由流を示す教師ラベルとの組み合わせと、前記第3のパラメータと前記第3の頻度分布のばらつきに関するデータとを含んだ学習データと渋滞流を示す教師ラベルとの組み合わせとに基づいて、前記基準パラメータを算出する、
請求項1に記載の交通状態検出装置。
【請求項7】
道路上の所定位置を走行する車両の検出結果を車両検出部から取得し、前記車両の検出結果に基づいて、前記所定位置に対応する交通量を算出する交通量算出部と、
車両速度が車載器に記録されてから車両速度取得部によって取得されるまでの第1の遅延時間の所定時間ごとの第1の頻度分布を算出し、前記第1の頻度分布とあらかじめ機械学習によって算出された基準パラメータとに基づいて、前記道路上の交通流状態が渋滞流である確率と、前記交通流状態が自由流である確率とを算出する遅延時間判定部と、
前記交通流状態が渋滞流である確率と、前記交通流状態が自由流である確率とに基づいて、前記交通流状態の判定結果を得る交通流判定部と、
前記交通流状態の判定結果と、前記所定位置に対応する交通量と、あらかじめ用意された交通量と車両速度との対応関係とに基づいて、前記所定位置に対応する車両速度を判定する速度判定部と、
を備える、交通状態検出装置。
【請求項8】
前記遅延時間判定部は、自由流における第2の遅延時間の所定時間ごとの第2の頻度分布を算出し、前記第2の頻度分布を第1の統計分布で近似して自由流に対応する基準パラメータを算出する、
請求項7に記載の交通状態検出装置。
【請求項9】
前記遅延時間判定部は、渋滞流における第3の遅延時間の所定時間ごとの第3の頻度分布を算出し、前記第3の頻度分布を第1の統計分布で近似して渋滞流に対応する基準パラメータを算出する、
請求項7または8に記載の交通状態検出装置。
【請求項10】
前記車両速度取得部は、プローブアンテナを含む、
請求項7~9のいずれか一項に記載の交通状態検出装置。
【請求項11】
前記車両検出部は、前記車両をリアルタイムに検出する、
請求項1~10のいずれか一項に記載の交通状態検出装置。
【請求項12】
前記車両検出部は、フリーフローアンテナを含む、
請求項11に記載の交通状態検出装置。
【請求項13】
道路上の所定位置を走行する車両の検出結果を車両検出部から取得し、前記車両の検出結果に基づいて、前記所定位置に対応する交通量を算出することと、
前記所定位置に対応する第1の交通量の所定時間ごとの第1の頻度分布を算出し、前記第1の頻度分布を第1の統計分布で近似して第1のパラメータを算出し、前記第1のパラメータと前記第1の頻度分布のばらつきに関するデータと、あらかじめ機械学習によって算出された基準パラメータとに基づいて、前記道路上の交通流状態が渋滞流である確率と、前記交通流状態が自由流である確率とを算出することと、
前記交通流状態が渋滞流である確率と、前記交通流状態が自由流である確率とに基づいて、前記交通流状態の判定結果を得ることと、
前記交通流状態の判定結果と、前記所定位置に対応する交通量と、あらかじめ用意された交通量と車両速度との対応関係とに基づいて、前記所定位置に対応する車両速度を判定することと、
を備える、交通状態検出方法。
【請求項14】
道路上の所定位置を走行する車両の検出結果を車両検出部から取得し、前記車両の検出結果に基づいて、前記所定位置に対応する交通量を算出することと、
車両速度が車載器に記録されてから車両速度取得部によって取得されるまでの第1の遅延時間の所定時間ごとの第1の頻度分布を算出し、前記第1の頻度分布とあらかじめ機械学習によって算出された基準パラメータとに基づいて、前記道路上の交通流状態が渋滞流である確率と、前記交通流状態が自由流である確率とを算出することと、
前記交通流状態が渋滞流である確率と、前記交通流状態が自由流である確率とに基づいて、前記交通流状態の判定結果を得ることと、
前記交通流状態の判定結果と、前記所定位置に対応する交通量と、あらかじめ用意された交通量と車両速度との対応関係とに基づいて、前記所定位置に対応する車両速度を判定することと、
を備える、交通状態検出方法。
【請求項15】
コンピュータを、
道路上の所定位置を走行する車両の検出結果を車両検出部から取得し、前記車両の検出結果に基づいて、前記所定位置に対応する交通量を算出する交通量算出部と、
前記所定位置に対応する第1の交通量の所定時間ごとの第1の頻度分布を算出し、前記第1の頻度分布を第1の統計分布で近似して第1のパラメータを算出し、前記第1のパラメータと前記第1の頻度分布のばらつきに関するデータと、あらかじめ機械学習によって算出された基準パラメータとに基づいて、前記道路上の交通流状態が渋滞流である確率と、前記交通流状態が自由流である確率とを算出する交通量分布判定部と、
前記交通流状態が渋滞流である確率と、前記交通流状態が自由流である確率とに基づいて、前記交通流状態の判定結果を得る交通流判定部と、
前記交通流状態の判定結果と、前記所定位置に対応する交通量と、あらかじめ用意された交通量と車両速度との対応関係とに基づいて、前記所定位置に対応する車両速度を判定する速度判定部と、
を備える交通状態検出装置として機能させるプログラム。
【請求項16】
コンピュータを、
道路上の所定位置を走行する車両の検出結果を車両検出部から取得し、前記車両の検出結果に基づいて、前記所定位置に対応する交通量を算出する交通量算出部と、
車両速度が車載器に記録されてから車両速度取得部によって取得されるまでの第1の遅延時間の所定時間ごとの第1の頻度分布を算出し、前記第1の頻度分布とあらかじめ機械学習によって算出された基準パラメータとに基づいて、前記道路上の交通流状態が渋滞流である確率と、前記交通流状態が自由流である確率とを算出する遅延時間判定部と、
前記交通流状態が渋滞流である確率と、前記交通流状態が自由流である確率とに基づいて、前記交通流状態の判定結果を得る交通流判定部と、
前記交通流状態の判定結果と、前記所定位置に対応する交通量と、あらかじめ用意された交通量と車両速度との対応関係とに基づいて、前記所定位置に対応する車両速度を判定する速度判定部と、
を備える交通状態検出装置として機能させるプログラム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、交通状態検出装置、交通状態検出方法およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、道路上の交通状態を検出する手法として様々な手法が知られている。例えば、カメラによって撮像された画像に基づいて、交通状態を検出する技術が開示されている(例えば、特許文献1参照)。また、2つのフリーフローアンテナを利用して、交通状態を検出する技術が開示されている(例えば、特許文献2参照)。
【0003】
さらに、トラフィックカウンタによって計測された交通量および車両速度と、プローブアンテナによって検出された車両の位置情報および車両速度とに基づいて、道路上のすべての地点における交通状態を検出する技術が開示されている(例えば、特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第6060058号公報
【特許文献2】特許第5017170号公報
【特許文献3】特開2020-86647号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、必要なコストを抑えつつ、高精度かつ高精細に車両速度を計測することを可能とする技術が提供されることが望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記問題を解決するために、本発明のある観点によれば、道路上の所定位置を走行する車両の検出結果を車両検出部から取得し、前記車両の検出結果に基づいて、前記所定位置に対応する交通量を算出する交通量算出部と、前記所定位置に対応する第1の交通量の所定時間ごとの第1の頻度分布を算出し、前記第1の頻度分布を第1の統計分布で近似して第1のパラメータを算出し、前記第1のパラメータと前記第1の頻度分布のばらつきに関するデータと、あらかじめ機械学習によって算出された基準パラメータとに基づいて、前記道路上の交通流状態が渋滞流である確率と、前記交通流状態が自由流である確率とを算出する交通量分布判定部と、前記交通流状態が渋滞流である確率と、前記交通流状態が自由流である確率とに基づいて、前記交通流状態の判定結果を得る交通流判定部と、前記交通流状態の判定結果と、前記所定位置に対応する交通量と、あらかじめ用意された交通量と車両速度との対応関係とに基づいて、前記所定位置に対応する車両速度を判定する速度判定部と、を備える、交通状態検出装置が提供される。
【0007】
前記交通量分布判定部は、自由流における前記所定位置に対応する第2の交通量の第2の頻度分布を算出し、前記第2の頻度分布を前記第1の統計分布で近似して第2のパラメータを算出し、前記第2のパラメータに基づいて自由流に対応する基準パラメータを算出してもよい。
【0008】
前記交通量分布判定部は、前記第2のパラメータと前記第2の頻度分布のばらつきに関するデータとの対応関係の頻度分布を第2の統計分布で近似して前記自由流に対応する基準パラメータを算出してもよい。
【0009】
前記交通量分布判定部は、渋滞流における前記所定位置に対応する第3の交通量の第3の頻度分布を算出し、前記第3の頻度分布を前記第1の統計分布で近似して第3のパラメータを算出し、前記第3のパラメータに基づいて渋滞流に対応する基準パラメータを算出してもよい。
【0010】
前記交通量分布判定部は、前記第3のパラメータと前記第3の頻度分布のばらつきに関するデータとの対応関係の頻度分布を第3の統計分布で近似して前記渋滞流に対応する基準パラメータを算出してもよい。
【0011】
前記交通量分布判定部は、自由流における前記所定位置に対応する第2の交通量の第2の頻度分布を算出し、前記第2の頻度分布を前記第1の統計分布で近似して第2のパラメータを算出し、渋滞流における前記所定位置に対応する第3の交通量の第3の頻度分布を算出し、前記第3の頻度分布を前記第1の統計分布で近似して第3のパラメータを算出し、前記第2のパラメータと前記第2の頻度分布のばらつきに関するデータとを含んだ学習データと自由流を示す教師ラベルとの組み合わせと、前記第3のパラメータと前記第3の頻度分布のばらつきに関するデータとを含んだ学習データと渋滞流を示す教師ラベルとの組み合わせとに基づいて、前記基準パラメータを算出してもよい。
このときの基準パラメータは、学習データと教師ラベルとの組み合わせに基づく学習処理によって生成される学習モデルのパラメータであり得る。
【0012】
また、本発明の別の観点によれば、道路上の所定位置を走行する車両の検出結果を車両検出部から取得し、前記車両の検出結果に基づいて、前記所定位置に対応する交通量を算出する交通量算出部と、車両速度が車載器に記録されてから車両速度取得部によって取得されるまでの第1の遅延時間の所定時間ごとの第1の頻度分布を算出し、前記第1の頻度分布とあらかじめ機械学習によって算出された基準パラメータとに基づいて、前記道路上の交通流状態が渋滞流である確率と、前記交通流状態が自由流である確率とを算出する遅延時間判定部と、前記交通流状態が渋滞流である確率と、前記交通流状態が自由流である確率とに基づいて、前記交通流状態の判定結果を得る交通流判定部と、前記交通流状態の判定結果と、前記所定位置に対応する交通量と、あらかじめ用意された交通量と車両速度との対応関係とに基づいて、前記所定位置に対応する車両速度を判定する速度判定部と、を備える、交通状態検出装置が提供される。
【0013】
前記遅延時間判定部は、自由流における第2の遅延時間の所定時間ごとの第2の頻度分布を算出し、前記第2の頻度分布を第1の統計分布で近似して自由流に対応する基準パラメータを算出してもよい。
【0014】
前記遅延時間判定部は、渋滞流における第3の遅延時間の所定時間ごとの第3の頻度分布を算出し、前記第3の頻度分布を第1の統計分布で近似して渋滞流に対応する基準パラメータを算出してもよい。
【0015】
前記車両速度取得部は、プローブアンテナを含んでもよい。
【0016】
前記車両検出部は、前記車両をリアルタイムに検出してもよい。
【0017】
前記車両検出部は、フリーフローアンテナを含んでもよい。
【0018】
また、本発明の別の観点によれば、道路上の所定位置を走行する車両の検出結果を車両検出部から取得し、前記車両の検出結果に基づいて、前記所定位置に対応する交通量を算出することと、前記所定位置に対応する第1の交通量の所定時間ごとの第1の頻度分布を算出し、前記第1の頻度分布を第1の統計分布で近似して第1のパラメータを算出し、前記第1のパラメータと前記第1の頻度分布のばらつきに関するデータと、あらかじめ機械学習によって算出された基準パラメータとに基づいて、前記道路上の交通流状態が渋滞流である確率と、前記交通流状態が自由流である確率とを算出することと、前記交通流状態が渋滞流である確率と、前記交通流状態が自由流である確率とに基づいて、前記交通流状態の判定結果を得ることと、前記交通流状態の判定結果と、前記所定位置に対応する交通量と、あらかじめ用意された交通量と車両速度との対応関係とに基づいて、前記所定位置に対応する車両速度を判定することと、を備える、交通状態検出方法が提供される。
【0019】
また、本発明の別の観点によれば、道路上の所定位置を走行する車両の検出結果を車両検出部から取得し、前記車両の検出結果に基づいて、前記所定位置に対応する交通量を算出することと、車両速度が車載器に記録されてから車両速度取得部によって取得されるまでの第1の遅延時間の所定時間ごとの第1の頻度分布を算出し、前記第1の頻度分布とあらかじめ機械学習によって算出された基準パラメータとに基づいて、前記道路上の交通流状態が渋滞流である確率と、前記交通流状態が自由流である確率とを算出することと、前記交通流状態が渋滞流である確率と、前記交通流状態が自由流である確率とに基づいて、前記交通流状態の判定結果を得ることと、前記交通流状態の判定結果と、前記所定位置に対応する交通量と、あらかじめ用意された交通量と車両速度との対応関係とに基づいて、前記所定位置に対応する車両速度を判定することと、を備える、交通状態検出方法が提供される。
【0020】
また、本発明の別の観点によれば、コンピュータを、道路上の所定位置を走行する車両の検出結果を車両検出部から取得し、前記車両の検出結果に基づいて、前記所定位置に対応する交通量を算出する交通量算出部と、前記所定位置に対応する第1の交通量の所定時間ごとの第1の頻度分布を算出し、前記第1の頻度分布を第1の統計分布で近似して第1のパラメータを算出し、前記第1のパラメータと前記第1の頻度分布のばらつきに関するデータと、あらかじめ機械学習によって算出された基準パラメータとに基づいて、前記道路上の交通流状態が渋滞流である確率と、前記交通流状態が自由流である確率とを算出する交通量分布判定部と、前記交通流状態が渋滞流である確率と、前記交通流状態が自由流である確率とに基づいて、前記交通流状態の判定結果を得る交通流判定部と、前記交通流状態の判定結果と、前記所定位置に対応する交通量と、あらかじめ用意された交通量と車両速度との対応関係とに基づいて、前記所定位置に対応する車両速度を判定する速度判定部と、を備える交通状態検出装置として機能させるプログラムが提供される。
【0021】
また、本発明の別の観点によれば、コンピュータを、道路上の所定位置を走行する車両の検出結果を車両検出部から取得し、前記車両の検出結果に基づいて、前記所定位置に対応する交通量を算出する交通量算出部と、車両速度が車載器に記録されてから車両速度取得部によって取得されるまでの第1の遅延時間の所定時間ごとの第1の頻度分布を算出し、前記第1の頻度分布とあらかじめ機械学習によって算出された基準パラメータとに基づいて、前記道路上の交通流状態が渋滞流である確率と、前記交通流状態が自由流である確率とを算出する遅延時間判定部と、前記交通流状態が渋滞流である確率と、前記交通流状態が自由流である確率とに基づいて、前記交通流状態の判定結果を得る交通流判定部と、前記交通流状態の判定結果と、前記所定位置に対応する交通量と、あらかじめ用意された交通量と車両速度との対応関係とに基づいて、前記所定位置に対応する車両速度を判定する速度判定部と、を備える交通状態検出装置として機能させるプログラムが提供される。
【発明の効果】
【0022】
以上説明したように本発明によれば、必要なコストを抑えつつ、高精度かつ高精細に車両速度を計測することを可能とする技術が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】交通状態が自由流である場合において車両が検知される間隔(車両検知間隔)と確率密度との関係を示す図である。
図2】交通状態が渋滞流である位置において車両が検知される間隔(車両検知間隔)と確率密度との関係を示す図である。
図3】車両検知間隔と確率密度との対応関係を指数分布に近似して得られるパラメータの頻度分布を交通状態が自由流である場合と渋滞流である場合とにおいて比較して示す図である。
図4】車両検知間隔と確率密度との対応関係を指数分布に近似して得られるパラメータと近似誤差との対応関係を交通状態が自由流である場合と渋滞流である場合とにおいて比較して示す図である。
図5】本発明の実施形態に係る交通状態検出装置の機能構成例を示す図である。
図6】フリーフローデータ記憶部によって記憶されるフリーフローデータの例を示す図である。
図7】プローブデータ記憶部によって記憶されるプローブデータの例を示す図である。
図8】交通量算出部によって実行される交通量算出処理の例を示すフローチャートである。
図9】QVデータによって示されるQV図の例を示す図である。
図10】QVデータ作成部によって実行されるQVデータ作成処理の例を示すフローチャートである。
図11】速度算出部によって実行される判定基準パラメータの生成処理の例を示すフローチャートである。
図12】時間間隔の終了時刻における交通量と交通量差分との対応関係を交通流状態の変化ごとに示した図である。
図13】統計分布に係るパラメータと標準偏差比との対応関係を示す図である。
図14】フリーフローアンテナ前における各時刻におけるプローブ遅延時間(秒)の例を示す図である。
図15】プローブ遅延時間の所定時間ごとの頻度分布を示す図である。
図16】速度算出部によって実行される速度算出処理の例を示すフローチャートである。
図17】本発明の実施形態に係る交通状態検出装置の例としての情報処理装置のハードウェア構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0025】
また、本明細書および図面において、実質的に同一の機能構成を有する複数の構成要素を、同一の符号の後に異なる数字を付して区別する場合がある。ただし、実質的に同一の機能構成を有する複数の構成要素等の各々を特に区別する必要がない場合、同一符号のみを付する。また、異なる実施形態の類似する構成要素については、同一の符号の後に異なるアルファベットを付して区別する場合がある。ただし、異なる実施形態の類似する構成要素等の各々を特に区別する必要がない場合、同一符号のみを付する。
【0026】
(0.概要)
まず、本発明の実施形態の概要について説明する。
【0027】
近年、道路上の交通状態を検出する手法として様々な手法が知られている。例えば、カメラによって撮像された画像に基づいて、交通状態を検出する第1の既存技術が開示されている(例えば、特許文献1参照)。しかし、第1の既存技術は、特定の外部環境(例えば、雨天、夜間、西日など)に対する適用が難しいため、第1の既存技術では、車両速度を高精度に得ることが困難である。
【0028】
また、2つのフリーフローアンテナを利用して、交通状態を検出する第2の既存技術が開示されている(例えば、特許文献2参照)。しかし、第2の既存技術は、2つのフリーフローアンテナ間における車両の平均速度しか推定することができないため、第2の既存技術では、車両速度を高精細に得ることが困難である。
【0029】
さらに、トラフィックカウンタによって計測された交通量および車両速度と、プローブアンテナによって検出された車両の位置情報および車両速度とに基づいて、道路上のすべての地点における交通状態を検出する第3の既存技術が開示されている(例えば、特許文献3参照)。しかし、第3の既存技術は、交通量および車両速度の計測にトラフィックカウンタを利用するため、トラフィックカウンタの設置および保守に要する費用が高額になってしまう。
【0030】
これに対し、本発明の実施形態に係る技術は、トラフィックカウンタの代わりに、フリーフローアンテナによって交通量および車両速度を検出する。そのため、本発明の実施形態に係る技術では、トラフィックカウンタの設置および保守に要する費用が掛からずに済むため、必要なコストが抑えられる。
【0031】
また、フリーフローアンテナによって検出された車両の時間間隔の統計情報を使用して車両速度を算出する第4の既存技術が存在する。一般にプローブアンテナは、車載器から車両速度を取得することが可能であるが、車載器に車両速度が記録されてからプローブアンテナによって車両速度が取得されるまでに大幅な時間(遅延時間)を要してしまう地点があり得る。第4の既存技術は、プローブアンテナとフリーフローアンテナの双方が設置された道路(例えば、高速道など)において、フリーフローアンテナによる車両の検出結果に基づいて車両速度を推定する技術である。
【0032】
しかし、第4の既存技術には、改善すべき点が存在する。以下では、図1図4を参照しながら、第4の既存技術の改善すべき点について説明する。
【0033】
図1は、交通状態が自由流である場合において車両が検知される間隔(車両検知間隔)と確率密度との関係を示す図である。図1を参照すると、交通状態が自由流である場合における車両検知間隔と確率密度との対応関係が、横軸xを車両検知間隔とし、縦軸yを確率密度として示されている。第4の既存技術は、この交通状態が自由流である場合における車両検知間隔xと確率密度yとの対応関係を、指数分布y=λ*exp(-λ×x)に近似してパラメータλと近似誤差とを算出する。
【0034】
図2は、交通状態が渋滞流である位置において車両が検知される間隔(車両検知間隔)と確率密度との関係を示す図である。図2を参照すると、交通状態が渋滞流である位置における車両検知間隔と確率密度との対応関係が、横軸xを車両検知間隔とし、縦軸yを確率密度として示されている。第4の既存技術は、この交通状態が渋滞流である位置における車両検知間隔xと確率密度yとの対応関係を、指数分布y=λ*exp(-λ×x)に近似してパラメータλと近似誤差とを算出する。
【0035】
図3は、車両検知間隔と確率密度との対応関係を指数分布に近似して得られるパラメータの頻度分布を交通状態が自由流である場合と渋滞流である場合とにおいて比較して示す図である。図3を参照すると、交通状態が自由流である場合と交通状態が渋滞流である場合とでは、パラメータλの頻度分布に重なりが生じてしまっている。したがって、パラメータλの頻度分布からは、交通状態が自由流であるか渋滞流であるかを判定するのが困難な場合がある。
【0036】
図4は、車両検知間隔と確率密度との対応関係を指数分布に近似して得られるパラメータと近似誤差との対応関係を交通状態が自由流である場合と渋滞流である場合とにおいて比較して示す図である。図4を参照すると、交通状態が自由流である場合と交通状態が渋滞流である場合とでは、パラメータλと近似誤差との対応関係に重なりが生じてしまっている。したがって、パラメータλと近似誤差との対応関係からは、交通状態が自由流であるか渋滞流であるかを判定するのが困難な場合がある。
【0037】
特に、交通量が多く車両検知時刻の分解能が低い場合には、交通状態が自由流であるか渋滞流であるかを判定するのが困難となりやすい。そして、交通状態が自由流であるか渋滞流であるかを判定するのが困難である場合には、車両速度を高精度に推定することが困難である。
【0038】
一例として、本発明の実施形態に係る技術は、学習段階において、蓄積されているフリーフローデータから得られる、交通量の所定時間ごとの頻度分布の平均およびばらつきに基づいて、機械学習により判定基準パラメータを生成する。そして、本発明の実施形態に係る技術は、推論段階において、生成した判定基準パラメータと取得したフリーフローデータに基づく判定パラメータとに基づいて、交通状態が自由流であるか渋滞流であるかを判定する。
【0039】
他の一例として、本発明の実施形態に係る技術は、学習段階において、蓄積されているプローブデータの遅延時間に基づいて、機械学習により判定基準パラメータを生成する。そして、本発明の実施形態に係る技術は、推論段階において、生成した判定基準パラメータと取得したプローブデータに基づく遅延時間とに基づいて、交通状態が自由流であるか渋滞流であるかを判定する。
【0040】
本発明の実施形態に係る技術によれば、交通状態が自由流であるか渋滞流であるかがより高精度に推定され得る。これによって、本発明の実施形態に係る技術によれば、車両速度がより高精度に推定され得る。
【0041】
以上、本発明の実施形態の概要について説明した。
【0042】
(1.実施形態の詳細)
まず、本発明の実施形態の詳細について説明する。
【0043】
(1-1.交通状態検出装置の構成)
まず、本発明の実施形態に係る交通状態検出装置1の構成例について説明する。図5は、本発明の実施形態に係る交通状態検出装置1の機能構成例を示す図である。
【0044】
図5を参照すると、道路上を走行する車両の例として、車両M1~M3が示されている。さらに、図5を参照すると、奥側のレーンを、車両M1と車両M2とが走行しており(車両M2に続いて車両M1が走行しており)、手前側のレーンを、奥側のレーンの車両M1および車両M2とは逆向きに車両M3が走行している。このように、本発明の実施形態では、道路が複数レーンによって構成される場合を主に想定するが、道路は1つのレーンによって構成されていてもよい。
【0045】
本発明の実施形態に係る交通状態検出装置1は、プローブデータ記憶部121と、フリーフローデータ記憶部122と、QVデータ記憶部123と、パラメータ記憶部124と、QVデータ作成部130と、交通量算出部140と、速度算出部150と、交通状態検知部170とを備える。プローブデータ記憶部121には、プローブアンテナ112が接続されており、フリーフローデータ記憶部122には、フリーフローアンテナ114が接続されている。
【0046】
QVデータ作成部130と交通量算出部140と速度算出部150と交通状態検知部170とは、CPU(Central Processing Unit)またはGPU(Graphics Processing Unit)などの演算装置を含み、ROM(Read Only Memory)により記憶されているプログラムが演算装置によりRAMに展開されて実行されることにより、その機能が実現され得る。このとき、当該プログラムを記録した、コンピュータに読み取り可能な記録媒体も提供され得る。
【0047】
あるいは、QVデータ作成部130と交通量算出部140と速度算出部150と交通状態検知部170とは、専用のハードウェアにより構成されていてもよいし、複数のハードウェアの組み合わせにより構成されてもよい。演算装置による演算に必要なデータは、図示しない記憶部によって適宜記憶される。
【0048】
プローブデータ記憶部121とフリーフローデータ記憶部122とQVデータ記憶部123とパラメータ記憶部124とは、図示しない記憶部によって記憶される。かかる記憶部は、RAM(Random Access Memory)、ハードディスクドライブまたはフラッシュメモリなどのメモリによって構成されてよい。
【0049】
(フリーフローアンテナ114)
フリーフローアンテナ114は、道路上の所定位置を走行する車両の検出を行う車両検出部の一例として機能する。すなわち、本発明の実施形態では、車両検出部が、フリーフローアンテナ114を含む場合を主に想定する。これによって、既に構築されているETC(Electronic Toll Collection)システムのETCフリーフローアンテナが車両検出部として用いられ得るため、新たに車両検出部を設ける必要がない。しかし、フリーフローアンテナ114の代わりに、他の車両検出部(例えば、赤外線センサまたは超音波センサなど)が用いられてもよい。
【0050】
より詳細には、フリーフローアンテナ114は、車両に搭載された車載器との間の通信によって車両から車両の識別情報(車両ID)を受信することによって車両をリアルタイムに検出する。本発明の実施形態では、車載器の例として、ETC車載器が用いられる場合を主に想定する。なお、フリーフローアンテナ114は、複数のバージョンのETC車載器に対応している場合が想定される一方、後に説明するプローブアンテナ112は、特定のバージョンのETC車載器にしか対応していない場合が想定される。すなわち、フリーフローアンテナ114は、プローブアンテナ112よりも、より多くの車両を検出し得る。
【0051】
なお、道路上の「所定位置」は、車両検出部によって検出可能な車両の位置であれば、特に限定されない。以下では、フリーフローアンテナ114によって検出され得る車両の位置(所定位置)を、単に「フリーフローアンテナ前」と言う場合がある。しかし、フリーフローアンテナ114によって検出され得る車両の位置は、フリーフローアンテナの前からずれた位置であってもよい。
【0052】
フリーフローアンテナ114は、車両に搭載された車載器との間の通信によって車両IDを受信することによって車両をリアルタイムに検出すると、車両の検出結果(以下、「フリーフローデータ」とも言う。)をフリーフローデータ記憶部122にリアルタイムに出力する。そして、フリーフローアンテナ114からフリーフローデータ記憶部122にリアルタイムに出力された車両の検出結果は、交通量算出部140および速度算出部150によって、リアルタイムに利用され得る。
【0053】
ここで、「リアルタイム」は、フリーフローアンテナ前に車両が到達してから道路上の交通状態が変化してしまう前までの短時間のいずれかのタイミングを意味し得る。このタイミングに車両が検出されれば、道路上の交通状態が変化してしまう前に、車両が検出された時点の交通状態に応じた何らかの措置が講じられ得る。
【0054】
図6は、フリーフローデータ記憶部122によって記憶されるフリーフローデータの例を示す図である。図6に示されるように、フリーフローデータは、「車両ID」と「通過時刻」とが対応付けられてなる。「車両ID」は、フリーフローアンテナ114と車両に搭載された車載器との間の通信によって車両から受信された車両の識別情報である。「通過時刻」は、フリーフローアンテナ114によって車両から車両IDが受信された時刻であり、フリーフローアンテナ前を車両が通過した時刻(車両検知時刻)に相当し得る。
【0055】
(プローブアンテナ112)
プローブアンテナ112は、車両速度を取得する車両速度取得部の一例として機能する。すなわち、本発明の実施形態では、車両速度取得部が、プローブアンテナ112を含む場合を主に想定する。これによって、既に構築されているETCシステムのETCプローブアンテナが車両速度取得部として用いられ得るため、新たに車両速度取得部を設ける必要がない。しかし、プローブアンテナ112の代わりに、他の車両速度取得部が用いられてもよい。
【0056】
より詳細に、プローブアンテナ112は、車両に搭載された車載器との間の通信によって車両から車両速度を取得すると、取得した車両速度をプローブデータ記憶部121に出力する。そして、プローブアンテナ112からプローブデータ記憶部121に出力された車両速度は、QVデータ作成部130によって利用され得る。
【0057】
図7は、プローブデータ記憶部121によって記憶されるプローブデータの例を示す図である。図7に示されるように、プローブデータは、「通過時刻」と「キロポスト」と「車両速度」と「収集時刻」とが対応付けられてなる。「通過時刻」は、道路の起点からの距離標(キロポスト)を車両が通過した時刻である。「キロポスト」は、道路の起点からの距離標である。「車両速度」は、道路の起点からの距離標(キロポスト)の前を通過する車両の速度(例えば、平均速度)である。「収集時刻」は、プローブアンテナ112によって車両速度が収集された時刻である。
【0058】
(交通量算出部140)
図5に戻って説明を続ける。交通量算出部140は、フリーフローアンテナ前を走行する車両の検出結果(フリーフローデータ)をフリーフローデータ記憶部122(図6)から取得する。そして、交通量算出部140は、フリーフローデータ(車両IDおよび通過時刻)に基づいて、フリーフローアンテナ前を、あらかじめ設定された単位時間あたりに通過した車両の数(フリーフローアンテナ114によって単位時間あたりに検出された車両IDの数)を、フリーフローアンテナ前の交通量として算出する。交通量算出部140による交通量の算出は、単位時間ごとに繰り返し行われればよい。
【0059】
なお、フリーフローアンテナ前を通過した全部の車両に、フリーフローアンテナ114と通信可能な車載器が搭載されているとは限らない。すなわち、フリーフローアンテナ114によってフリーフローアンテナ前を通過した全部の車両が検出されるとは限らない。したがって、フリーフローアンテナ114と通信可能な車載器が搭載された車両の、(フリーフローアンテナ114と通信可能な車載器が搭載されていない車両を含んだ)車両全体に対する割合を「車載器搭載割合」としてあらかじめ設定し、フリーフローアンテナ114によって検出された車両の数を「検出車両数」とした場合、交通量算出部140は、下記の式(1)によって、フリーフローアンテナ前の交通量をより高精度に推定するのが望ましい。
【0060】
(交通量の推定値)=(検出車両数)÷(車載器搭載割合)・・・(1)
【0061】
しかし、フリーフローアンテナ114と通信可能な車載器が十分に普及している場合などには、かかる推定は省略されてもよい。交通量算出部140によって推定された交通量は、推定される度に速度算出部150に出力される。また、交通量算出部140によって推定された交通量とその交通量に対応する単位時間とは、所定期間ごとにQVデータ作成部130に所定期間分だけ出力される。
【0062】
なお、典型的には、所定期間は、1日であってよい。その場合には、1日に1回だけ最新の1日分の交通量がQVデータ作成部130に出力されればよい。しかし、所定期間は、1日に限定されない。例えば、所定期間は、1か月であってもよい。また、最新の交通量に限らず、過去の交通量(例えば、1年前の1日分の交通量など)がQVデータ作成部130に出力されてもよい。
【0063】
図8は、交通量算出部140によって実行される交通量算出処理の例を示すフローチャートである。まず、フリーフローアンテナ114は、車両に搭載された車載器との間の通信によって車両から車両の識別情報(車両ID)を受信することによって車両をリアルタイムに検出する。車両の検出結果(フリーフローデータ)をフリーフローデータ記憶部122にリアルタイムに出力する。
【0064】
交通量算出部140は、フリーフローアンテナ前を走行する車両の検出結果(フリーフローデータ)をフリーフローデータ記憶部122(図6)から取得する(S11)。そして、交通量算出部140は、フリーフローデータ(車両IDおよび通過時刻)に基づいて、フリーフローアンテナ前を、あらかじめ設定された単位時間あたりに通過した車両の数(検出車両数)を、フリーフローアンテナ前の交通量として算出する(S12)。交通量算出部140は、検出車両数と車載器搭載割合とに基づいて、フリーフローアンテナ前の交通量を推定する(S13)。
【0065】
なお、交通量算出部140によって推定された交通量は、推定される度に速度算出部150に出力される。また、交通量算出部140によって推定された交通量とその交通量に対応する単位時間とは、所定期間ごとにQVデータ作成部130に所定期間分だけ出力される。
【0066】
(QVデータ作成部130)
QVデータ作成部130は、交通量算出部140から出力されたフリーフローアンテナ前の所定期間分の交通量と単位時間とを取得すると、プローブデータ記憶部121から当該所定期間に対応するフリーフローアンテナ前の車両速度(すなわち、フリーフローアンテナ位置の「キロポスト」に対応する車両速度)と通過時刻とを取得する。QVデータ作成部130は、フリーフローアンテナ前の所定期間分の交通量と単位時間と、当該所定期間に対応するフリーフローアンテナ前の車両速度と通過時刻とに基づいて、機械学習により交通量と車両速度との対応関係(以下の例では、近似式)を作成する対応関係作成部の一例として機能する。
【0067】
より詳細には、QVデータ作成部130は、単位時間に対応する交通量と、その単位時間に収まる通過時刻に対応する車両速度とを対応付ける。QVデータ作成部130は、交通量と車両速度との対応付けを、交通量算出部140から出力された全部の単位時間について行うことによって、交通量(Q)と車両速度(V)との対応図(QV図)を作成する。QVデータ作成部130は、作成したQV図を、QVデータ記憶部123に保存する。
【0068】
図9は、QVデータによって示されるQV図の例を示す図である。図9に示されたQV図において、横軸は、交通量(Q)を示しており、縦軸は、車両速度(V)を示している。かかるQV図において、交通量および車両速度が対応付けられた各結果が、各点としてプロットされている。ここで、QV図においては、交通量が所定の交通量よりも少ない場合、交通量が1つに定まったとしても、その交通量に対応する交通流状態としては、(車両速度が境界速度よりも低い)渋滞流と、(車両速度が境界速度よりも高い)自由流との二通りが想定され得る。
【0069】
そこで、QVデータ作成部130は、QVデータに基づいて、交通量と車両速度との対応関係の例として、渋滞流に対応する近似式と、自由流に対応する近似式とを作成する。QVデータ作成部130は、渋滞流に対応する近似式と、自由流に対応する近似式とを、QVデータ記憶部123に保存する。例えば、渋滞流に対応する近似式、および、自由流に対応する近似式の作成は、機械学習によって学習され得る。
【0070】
渋滞流に対応する近似式は、どのような式であってもよいが、一例として、下記の式(2)に示されるように、二次関数によって表現され得る。ただし、式(2)において、Vは、車両速度であり、Qは、交通量である。より詳細に、QVデータ作成部130は、式(2)に表現された関数が、QV図にプロットされた各点(ただし、車両速度Vが境界速度よりも低い領域(境界線よりも下側)の点の全部または一部)に近似するように、パラメータaとbとを求めることによって、渋滞流に対応する近似式を得る。
【0071】
V=aQ+b・・・(2)
【0072】
一方、自由流に対応する近似式も、どのような式であってもよいが、一例として、下記の式(3)に示されるように、一次関数によって表現され得る。より詳細に、QVデータ作成部130は、式(3)に表現された関数が、QV図にプロットされた各点(ただし、車両速度Vが境界速度よりも高い領域(境界線よりも上側)の点の全部または一部)に近似するように、パラメータcとdとを求めることによって、自由流に対応する近似式を得る。
【0073】
V=cQ+d・・・(3)
【0074】
QVデータ作成部130は、QVデータをQVデータ記憶部123に保存するとともに、渋滞流に対応する近似式のパラメータa、bと、自由流に対応する近似式のパラメータc、dとをパラメータ記憶部124に保存する。
【0075】
なお、QV図の形状は、路線、道路形状、車両が走行するレーン数などによって異なる可能性がある。そのため、あらゆる場所に共通のQVデータではなく、上記したように、場所ごとに別々のQVデータが作成されるのが望ましい(各フリーフローアンテナに対応するQVデータが別々に作成されるのが望ましい)。また、図9に示されるように、交通量が最も多い場合における車両速度(すなわち、「最大交通量」に対応する車両速度)は、一般に自由流と渋滞流との境界速度に一意に定まる。
【0076】
さらに、フリーフローアンテナ前の所定期間分の交通量と当該所定期間に対応するフリーフローアンテナ前の車両速度との全部が、交通量と車両速度との対応関係の作成に用いられなくてもよい。例えば、ある所定期間全体を通して、渋滞流が存在しなかった場合には、交通量と車両速度との有用な対応関係が得られないことが想定される。
【0077】
したがって、QVデータ作成部130は、所定期間の「車両速度」の中に、所定の速度以下の車両速度(例えば、時速40km以下の車両速度)、または、所定の継続時間(例えば、数分)を超えて継続した所定の速度以下の車両速度が含まれない場合、交通量(Q)と車両速度(V)との対応関係を作成するためのデータから、当該所定期間の交通量および車両速度を除外してもよい。これによって、より有用な対応関係が作成され得る。
【0078】
また、上記したように、フリーフローアンテナ114は、複数のレーンそれぞれを走行する車両を一括して検出することが可能である。したがって、複数のレーンの一部しか車両が走行できない所定の事象(例えば、道路工事または事故など)が生じている場合には、フリーフローアンテナ114によって検出される車両の数が減少してしまうことが想定される。したがって、QVデータ作成部130は、車両が走行可能なレーンの数ごとに、交通量と車両速度との対応関係を作成するのが望ましい。例えば、QVデータ作成部130は、複数のレーンの一部しか車両が走行できない所定の事象が生じている場合には、事象発生用に対応関係を作成するのが望ましい。
【0079】
図10は、QVデータ作成部130によって実行されるQVデータ作成処理の例を示すフローチャートである。まず、QVデータ作成部130は、交通量算出部140から出力されたフリーフローアンテナ前の所定期間分の交通量と単位時間とを取得すると、プローブデータ記憶部121から当該所定期間に対応するフリーフローアンテナ前の車両速度と通過時刻とを取得する(S21)。
【0080】
QVデータ作成部130は、単位時間に対応する交通量と、その単位時間に収まる通過時刻に対応する車両速度とを対応付ける。QVデータ作成部130は、交通量と車両速度との対応付けを、交通量算出部140から出力された全部の単位時間について行うことによって、交通量(Q)と車両速度(V)との対応関係(QVデータ)を作成する(S22)。そして、QVデータ作成部130は、作成したQVデータに基づいて、機械学習により、渋滞流に対応する近似式と、自由流に対応する近似式とを作成する(S23)。
【0081】
QVデータ作成部130は、QVデータをQVデータ記憶部123に保存するとともに、渋滞流に対応する近似式のパラメータa、bと、自由流に対応する近似式のパラメータc、dとをQVデータ記憶部123に保存する(S24)。
【0082】
<学習段階(判定基準パラメータ生成)>
続いて、交通状態検出装置1は、学習段階の実行によって、交通流状態が渋滞流であるか自由流であるかを判定するための基準となる判定基準パラメータを生成する。かかる判定基準パラメータの生成は、あらかじめ設定された日時に実行され得る。
【0083】
図11は、速度算出部150によって実行される判定基準パラメータの生成処理の例を示すフローチャートである。まず、速度算出部150は、QVデータ記憶部123から、設定期間分のQVデータを取得する(S31)。なお、設定期間は、1か月などであってよいが、設定期間は特に限定されない。さらに、速度算出部150は、フリーフローデータ記憶部122から、設定期間分のフリーフローデータを取得する(S32)。
【0084】
続いて、統計情報解析部160は、速度算出部150によって取得されたQVデータおよびフリーフローデータに基づいて、学習処理によって判定基準パラメータを生成する。
【0085】
一例として、統計情報解析部160は、交通量時系列変化判定部151と、車両検知間隔判定部152と、交通量分布判定部153と、プローブ遅延時間判定部154とを備えている。そして、交通量時系列変化判定部151は、交通量時系列変化による判定に従って判定基準パラメータを生成し(S33)、車両検知間隔判定部152は、車両検知間隔による判定に従って判定基準パラメータを生成し(S34)、交通量分布判定部153は、交通量分布による判定に従って判定基準パラメータを生成し(S35)、プローブ遅延時間判定部154は、プローブ遅延時間による判定に従って判定基準パラメータを生成する(S36)。
【0086】
しかし、これら4つのブロックの全部によってそれぞれの判定基準パラメータが生成されなくてもよい。例えば、これら4つのブロックの一部(例えば、1つ、2つまたは3つのブロック)によってそれぞれの判定基準パラメータが生成されてもよい。以下では、図12図15を参照しながら、これら4つのブロックそれぞれによる判定基準パラメータの生成について詳細に説明する。
【0087】
(交通量時系列変化による判定S33)
交通量時系列変化判定部151は、所定期間分のフリーフローデータに基づいて、あらかじめ設定された時間間隔(例えば、10分など)の開始時刻および終了時刻それぞれの交通量を抽出する。さらに、交通量時系列変化判定部151は、所定期間分のQVデータに基づいて、開始時刻および終了時刻それぞれの交通流状態が(車両速度が境界速度よりも低い)渋滞流であるか(車両速度が境界速度よりも高い)自由流であるかを判定する。
【0088】
さらに、交通量時系列変化判定部151は、開始時刻の交通量と終了時刻の交通量との差分を交通量差分として算出する。交通量時系列変化判定部151は、開始時刻から終了時刻にかけて、交通流状態が自由流のままであるか、交通流状態が渋滞流のままであるか、交通流状態が自由流から渋滞流に切り替わるか、渋滞流から自由流に切り替わるかを判定する。
【0089】
図12は、時間間隔の終了時刻における交通量と交通量差分との対応関係を交通流状態の変化ごとに示した図である。図12に示された例において、横軸は、時間間隔の終了時刻における交通量を示しており、縦軸は、交通量差分を示している。「○:白抜き丸」は、交通流状態が自由流のままである場合の対応関係を示す。「●:黒丸」は、交通流状態が渋滞流のままである場合の対応関係を示す。「▲:黒三角」は、交通流状態が渋滞流から自由流に切り替わる場合の対応関係を示す。「■:黒四角」は、交通流状態が自由流から渋滞流に切り替わる場合の対応関係を示す。
【0090】
交通量時系列変化判定部151は、交通流状態が自由流のままである場合、交通流状態が渋滞流のままである場合、交通流状態が渋滞流から自由流に切り替わる場合、および、交通流状態が自由流から渋滞流に切り替わる場合それぞれについて、時間間隔の終了時刻における交通量(以下、単に「交通量」とも言う。)と交通量差分との対応関係に基づいて、機械学習により判定基準パラメータを算出する。
【0091】
例えば、交通量時系列変化判定部151は、これらの場合それぞれについて、交通量と交通量差分との対応関係を所定の統計分布(例えば、2次元正規分布など)で近似してもよい。これによって、交通量時系列変化判定部151は、これらの場合それぞれのパラメータ(例えば、平均値μ、標準偏差σなど)を判定基準パラメータとして算出してもよい。
【0092】
あるいは、交通量時系列変化判定部151は、これらの場合それぞれを示すラベルを教師ラベルとし、交通量と交通量差分との対応関係を学習データとして、教師ラベルと学習データとの組み合わせに基づく学習処理を、何らかの機械学習アルゴリズムに実行させてもよい。例えば、機械学習アルゴリズムは、SVM(Support Vector Machine)または他の機械学習アルゴリズムであってもよい。これによって、交通量時系列変化判定部151は、学習済みモデルのパラメータを判定基準パラメータとして算出してもよい。
【0093】
交通量時系列変化判定部151は、このようにして算出した判定基準パラメータを、交通量時系列変化による判定のための判定基準パラメータとして、パラメータ記憶部124に保存する。
【0094】
(車両検知間隔による判定S34)
車両検知間隔判定部152は、所定期間分のフリーフローデータに基づいて、車両が検知される間隔(車両検知間隔)を算出する。なお、交通状態が自由流である場合における車両検知間隔と確率密度との関係は、図1に示した通りである。また、交通状態が渋滞流である位置における車両検知間隔と確率密度との関係は、図2に示した通りである。
【0095】
車両検知間隔判定部152は、交通状態が自由流である場合における車両検知間隔の所定時間ごとの頻度分布を算出する。車両検知間隔判定部152は、交通状態が自由流である場合における車両検知間隔の所定時間ごとの頻度分布を1変数統計分布(例えば、指数分布など)で近似して、パラメータλおよび近似誤差を算出する。
【0096】
同様にして、車両検知間隔判定部152は、交通状態が渋滞流である場合における車両検知間隔の所定時間ごとの頻度分布を算出する。車両検知間隔判定部152は、交通状態が渋滞流である場合における車両検知間隔の所定時間ごとの頻度分布を1変数統計分布(例えば、指数分布など)で近似して、パラメータλおよび近似誤差を算出する。
【0097】
なお、交通状態が自由流である場合および渋滞流である場合それぞれにおいて算出されたパラメータλの頻度分布は、図3に示した通りである。さらに、交通状態が自由流である場合および渋滞流である場合それぞれにおいて算出されたパラメータλと近似誤差との対応関係は、図4に示した通りである。
【0098】
車両検知間隔判定部152は、交通流状態が自由流である場合、および、交通流状態が渋滞流である場合それぞれについて、算出したパラメータλと近似誤差との対応関係に基づいて、機械学習により判定基準パラメータを算出する。
【0099】
例えば、車両検知間隔判定部152は、これらの場合それぞれについて、パラメータλと近似誤差との対応関係を所定の統計分布(例えば、2次元正規分布など)で近似してもよい。これによって、車両検知間隔判定部152は、これらの場合それぞれのパラメータ(例えば、平均値μ、標準偏差σなど)を判定基準パラメータとして算出してもよい。
【0100】
あるいは、車両検知間隔判定部152は、これらの場合それぞれを示すラベルを教師ラベルとし、パラメータλと近似誤差との対応関係を学習データとして、教師ラベルと学習データとの組み合わせに基づく学習処理を、何らかの機械学習アルゴリズムに実行させてもよい。例えば、機械学習アルゴリズムは、SVMまたは他の機械学習アルゴリズムであってもよい。これによって、車両検知間隔判定部152は、学習済みモデルのパラメータを判定基準パラメータとして算出してもよい。
【0101】
車両検知間隔判定部152は、このようにして算出した判定基準パラメータを、車両検知間隔による判定のための判定基準パラメータとして、パラメータ記憶部124に保存する。
【0102】
(交通量分布による判定S35)
交通量分布判定部153は、所定期間分のフリーフローデータに基づいて、交通量のあらかじめ設定された所定時間ごとの頻度分布を算出する。そして、交通量分布判定部153は、算出した頻度分布を所定の統計分布(例えば、ポアソン分布など)で近似してパラメータλを算出する。また、交通量分布判定部153は、頻度分布のばらつきに関するデータを算出する。
【0103】
ここでは、頻度分布のばらつきに関するデータの例として、統計分布の標準偏差に対する頻度分布の標準偏差の比(標準偏差比)が用いられる場合を主に想定する。しかし、頻度分布のばらつきに関するデータは、頻度分布の標準偏差であってもよいし、頻度分布の分散であってもよいし、統計分布の分散に対する頻度分布の分散の比であってもよいし、頻度分布のばらつきを示す他のデータであってもよい。
【0104】
図13は、統計分布に係るパラメータλと標準偏差比との対応関係を示す図である。図13に示された例において、横軸は、統計分布(ここでは、ポアソン分布)に係るパラメータλを示しており、縦軸は、標準偏差比を示している。「○:白抜き丸」は、交通流状態が自由流である場合の対応関係を示す。「●:黒丸」は、交通流状態が渋滞流である場合の対応関係を示す。「▲:黒三角」は、交通流状態が混雑流である場合の対応関係を示す。交通流状態が自由流である場合と交通流状態が渋滞流である場合とが、図13に示された例では、概ね分離されていることが把握される。
【0105】
交通量分布判定部153は、交通流状態が自由流である場合および交通流状態が渋滞流である場合それぞれについて、統計分布に係るパラメータλに基づいて、機械学習により判定基準パラメータを算出する。より詳細に、交通量分布判定部153は、交通流状態が自由流である場合および交通流状態が渋滞流である場合それぞれについて、統計分布に係るパラメータλと標準偏差比との対応関係に基づいて、機械学習により判定基準パラメータを算出する。
【0106】
例えば、交通量分布判定部153は、交通流状態が自由流である場合および交通流状態が渋滞流である場合それぞれについて、統計分布に係るパラメータλと標準偏差比との対応関係を所定の統計分布(例えば、2次元正規分布など)で近似してもよい。これによって、交通量分布判定部153は、これらの場合それぞれのパラメータ(例えば、平均値μ、標準偏差σなど)を判定基準パラメータとして算出してもよい。
【0107】
あるいは、交通量分布判定部153は、これらの場合それぞれを示すラベルを教師ラベルとし、統計分布に係るパラメータλと標準偏差比との対応関係を学習データとして、教師ラベルと学習データとの組み合わせに基づく学習処理を、何らかの機械学習アルゴリズムに実行させてもよい。例えば、機械学習アルゴリズムは、SVMまたは他の機械学習アルゴリズムであってもよい。これによって、交通量分布判定部153は、学習済みモデルのパラメータを判定基準パラメータとして算出してもよい。
【0108】
交通量分布判定部153は、このようにして算出した判定基準パラメータを、交通量分布による判定のための判定基準パラメータとして、パラメータ記憶部124に保存する。
【0109】
(プローブ遅延時間による判定S36)
プローブ遅延時間判定部154は、プローブデータ記憶部121から所定期間分のプローブデータを取得する。ここで、上記したように、車載器に車両速度が記録されてからプローブアンテナ112によって車両速度が取得されるまでに時間(プローブ遅延時間)が生じ得る。そのため、プローブアンテナ112によっては、数分から数十分前にフリーフローアンテナ前を通過した車両速度しか取得されない場合がある。
【0110】
かかる遅延は、フリーフローアンテナから次のプローブアンテナ(すなわち、下流のプローブアンテナ)までの交通状況によって異なり得る。例えば、交通流状態が自由流である場合には、プローブ遅延時間が数分程度掛かる場合があり、交通流状態が渋滞流である場合には、プローブ遅延時間が数十分掛かる場合がある。プローブ遅延時間判定部154は、取得したプローブデータに基づいて、通過時刻と収集時刻との差分をプローブ遅延時間として算出する。
【0111】
図14は、フリーフローアンテナ前における各時刻におけるプローブ遅延時間(秒)の例を示す図である。図14を参照すると、14時前後まではプローブ遅延時間は概ね150~200秒前後で推移していることが把握される。その後にプローブ遅延時間が増加し、交通流状態が渋滞流である場合には、プローブ遅延時間が概ね500秒を超えていることが把握される。また、20時過ぎに交通流状態が渋滞流から自由流に切り替わり、プローブ遅延時間が減少し、再び150~200秒前後に戻っていることが把握される。
【0112】
そして、プローブ遅延時間判定部154は、算出したプローブ遅延時間に基づいて、プローブ遅延時間のあらかじめ設定された所定時間ごとの頻度分布を算出する。
【0113】
図15は、プローブ遅延時間の所定時間ごとの頻度分布を示す図である。図15を参照すると、交通流状態が自由流である場合におけるプローブ遅延時間の所定時間ごとの頻度分布がヒストグラム(薄いハッチング)によって示されている。一方、交通流状態が渋滞流である場合におけるプローブ遅延時間の所定時間ごとの頻度分布がヒストグラム(濃いハッチング)によって示されている。
【0114】
プローブ遅延時間判定部154は、交通流状態が自由流である場合および交通流状態が渋滞流である場合それぞれについて、算出した頻度分布に基づく機械学習により判定基準パラメータを算出する。より詳細に、プローブ遅延時間判定部154は、これらの場合それぞれについて、頻度分布を所定の統計分布(例えば、正規分布またはガンマ分布など)で近似してパラメータ(例えば、平均値μおよび標準偏差σ、または、形状パラメータkおよび尺度パラメータθなど)を算出する。
【0115】
プローブ遅延時間判定部154は、このようにして算出した判定基準パラメータを、プローブ遅延時間による判定のための判定基準パラメータとして、パラメータ記憶部124に保存する。
【0116】
<推論段階(速度算出)>
続いて、交通状態検出装置1は、推論段階の実行によって、対象データを生成し、生成した対象データと、あらかじめ生成された判定基準パラメータとに基づいて、車両速度を算出する。かかる車両速度の算出は、リアルタイムに実行され得る。
【0117】
図16は、速度算出部150によって実行される速度算出処理の例を示すフローチャートである。まず、交通量算出部140は、フリーフローデータ記憶部122から直近の単位時間分のフリーフローデータを取得し、直近の単位時間分のフリーフローデータに基づいて交通量を算出し、算出した交通量を速度算出部150に出力する(S41)。さらに、速度算出部150は、交通量算出部140から交通量を取得し、パラメータ記憶部124から、判定基準パラメータを取得する(S42)。
【0118】
続いて、統計情報解析部160は、速度算出部150によって取得された交通量および判定基準パラメータに基づいて、推論処理によって交通流状態が自由流である場合および渋滞流である場合それぞれの確率を算出する。
【0119】
一例として、交通量時系列変化判定部151は、交通量時系列変化による判定に従って各場合における確率を算出し(S43)、車両検知間隔判定部152は、車両検知間隔による判定に従って各場合における確率を算出し(S44)、交通量分布判定部153は、交通量分布による判定に従って各場合における確率を算出し(S45)、プローブ遅延時間判定部154は、プローブ遅延時間による判定に従って各場合における確率を算出する(S46)。
【0120】
しかし、これら4つのブロックの全部によってそれぞれの確率が算出されなくてもよい。例えば、これら4つのブロックの一部(例えば、1つ、2つまたは3つのブロック)によってそれぞれの確率が算出されてもよい。以下では、これら4つのブロックそれぞれによる確率の算出について詳細に説明する。
【0121】
(交通量時系列変化による判定S43)
交通量時系列変化判定部151は、直近の所定期間分のフリーフローデータに基づいて、あらかじめ設定された時間間隔(例えば、10分など)の開始時刻および終了時刻それぞれの交通量を抽出する。さらに、交通量時系列変化判定部151は、開始時刻の交通量と終了時刻の交通量との差分を交通量差分として算出する。
【0122】
交通量時系列変化判定部151は、算出した交通量および交通量差分と判定基準パラメータとに基づいて、交通流状態が渋滞流である確率と、交通流状態が自由流である確率とを算出する。
【0123】
より詳細に、交通量時系列変化判定部151は、算出した交通量および交通量差分と、交通流状態が渋滞流のままである場合の判定基準パラメータとに基づいて、交通流状態が渋滞流のままである確率を算出する。さらに、交通量時系列変化判定部151は、算出した交通量および交通量差分と、交通流状態が自由流から渋滞流に切り替わる場合の判定基準パラメータとに基づいて、交通流状態が自由流から渋滞流に切り替わる確率を算出する。
【0124】
交通量時系列変化判定部151は、交通流状態が渋滞流のままである確率と交通流状態が自由流から渋滞流に切り替わる確率との足し算によって、交通流状態が渋滞流である確率を算出し得る。例えば、交通流状態が渋滞流のままである確率が20%であり、交通流状態が自由流から渋滞流に切り替わる確率が50%である場合には、交通流状態が渋滞流である確率は70%と算出され得る。
【0125】
また、交通量時系列変化判定部151は、算出した交通量および交通量差分と、交通流状態が自由流のままである場合の判定基準パラメータとに基づいて、交通流状態が自由流のままである確率を算出する。さらに、交通量時系列変化判定部151は、算出した交通量および交通量差分と、交通流状態が渋滞流から自由流に切り替わる場合の判定基準パラメータとに基づいて、交通流状態が渋滞流から自由流に切り替わる確率を算出する。
【0126】
交通量時系列変化判定部151は、交通流状態が自由流のままである確率と交通流状態が渋滞流から自由流に切り替わる確率との足し算によって、交通流状態が自由流である確率を算出し得る。例えば、交通流状態が自由流のままである確率が30%であり、交通流状態が渋滞流から自由流に切り替わる確率が0%である場合には、交通流状態が自由流である確率は30%と算出され得る。
【0127】
例えば、交通量時系列変化判定部151は、交通流状態が渋滞流のままである場合の判定基準パラメータが統計分布(例えば、2次元正規分布など)に係るパラメータである場合、判定基準パラメータによって定まる統計分布の確率密度関数の所定区間の積分値によって、交通流状態が渋滞流のままである確率を算出してもよい。一例として、所定区間は、算出した交通量をx0とし、交通量差分をy0とした場合、判定基準パラメータによって定まる標準正規分布においてx=0からの距離が2次元座標(x0,y0)よりも遠い区間であってよい。
【0128】
なお、交通流状態が自由流から渋滞流に切り替わる確率、交通流状態が自由流のままである確率、交通流状態が渋滞流から自由流に切り替わる確率も同様にして算出されてよい。
【0129】
あるいは、交通量時系列変化判定部151は、算出した交通量および交通量差分を学習済みモデルに入力し、交通量および交通量差分と学習済みモデルのパラメータ(判定基準パラメータ)とに基づいて、交通流状態が渋滞流のままである確率、交通流状態が自由流から渋滞流に切り替わる確率、交通流状態が自由流のままである確率、および、交通流状態が渋滞流から自由流に切り替わる確率を学習済みモデルから出力させてもよい。
【0130】
(車両検知間隔による判定S44)
車両検知間隔判定部152は、直近の所定期間分のフリーフローデータに基づいて、車両が検知される間隔(車両検知間隔)を算出する。そして、車両検知間隔判定部152は、車両検知間隔の所定時間ごとの頻度分布を算出する。車両検知間隔判定部152は、車両検知間隔の所定時間ごとの頻度分布を1変数統計分布(例えば、指数分布など)で近似して、パラメータλおよび近似誤差を算出する。
【0131】
車両検知間隔判定部152は、パラメータλおよび近似誤差と判定基準パラメータとに基づいて、交通流状態が渋滞流である確率と、交通流状態が自由流である確率とを算出する。
【0132】
より詳細に、車両検知間隔判定部152は、算出したパラメータλおよび近似誤差と、交通流状態が渋滞流である場合の判定基準パラメータとに基づいて、交通流状態が渋滞流である確率を算出する。例えば、交通流状態が渋滞流である確率は、50%と算出され得る。
【0133】
また、車両検知間隔判定部152は、算出したパラメータλおよび近似誤差と、交通流状態が自由流である場合の判定基準パラメータとに基づいて、交通流状態が自由流である確率を算出する。例えば、交通流状態が自由流である確率は、50%と算出され得る。
【0134】
例えば、交通量時系列変化による判定S43と同様に、車両検知間隔判定部152は、交通流状態が渋滞流である場合の判定基準パラメータが統計分布(例えば、2次元正規分布など)に係るパラメータである場合、判定基準パラメータによって定まる統計分布の確率密度関数の所定区間の積分値によって、交通流状態が渋滞流である確率を算出してもよい。なお、交通流状態が自由流である確率も同様にして算出されてよい。
【0135】
あるいは、車両検知間隔判定部152は、算出したパラメータλおよび近似誤差を学習済みモデルに入力し、パラメータλおよび近似誤差と学習済みモデルのパラメータ(判定基準パラメータ)とに基づいて、交通流状態が渋滞流である確率、および、交通流状態が自由流である確率を学習済みモデルから出力させてもよい。
【0136】
(交通量分布による判定S45)
交通量分布判定部153は、直近の所定期間分のフリーフローデータに基づいて、交通量のあらかじめ設定された所定時間ごとの頻度分布を算出する。そして、交通量分布判定部153は、算出した頻度分布を所定の統計分布(例えば、ポアソン分布など)で近似してパラメータλを算出する。また、交通量分布判定部153は、頻度分布のばらつきに関するデータを算出する。
【0137】
ここでは、頻度分布のばらつきに関するデータの例として、統計分布の標準偏差に対する頻度分布の標準偏差の比(標準偏差比)が用いられる場合を主に想定する。しかし、上記したように、頻度分布のばらつきに関するデータは、頻度分布の標準偏差であってもよいし、頻度分布の分散であってもよいし、統計分布の分散に対する頻度分布の分散の比であってもよいし、頻度分布のばらつきを示す他のデータであってもよい。
【0138】
交通量分布判定部153は、算出したパラメータλおよび標準偏差比と判定基準パラメータとに基づいて、交通流状態が渋滞流である確率と、交通流状態が自由流である確率とを算出する。
【0139】
より詳細に、交通量分布判定部153は、算出したパラメータλおよび標準偏差比と、交通流状態が渋滞流である場合の判定基準パラメータとに基づいて、交通流状態が渋滞流である確率を算出する。例えば、交通流状態が渋滞流である確率は、60%と算出され得る。
【0140】
また、交通量分布判定部153は、算出したパラメータλおよび標準偏差比と、交通流状態が自由流である場合の判定基準パラメータとに基づいて、交通流状態が自由流である確率を算出する。例えば、交通流状態が自由流である確率は、40%と算出され得る。
【0141】
例えば、交通量時系列変化による判定S43と同様に、交通量分布判定部153は、交通流状態が渋滞流である場合の判定基準パラメータが統計分布(例えば、2次元正規分布など)に係るパラメータである場合、判定基準パラメータによって定まる統計分布の確率密度関数の所定区間の積分値によって、交通流状態が渋滞流である確率を算出してもよい。なお、交通流状態が自由流である確率も同様にして算出されてよい。
【0142】
あるいは、車両検知間隔判定部152は、算出したパラメータλおよび標準偏差比を学習済みモデルに入力し、パラメータλおよび標準偏差比と学習済みモデルのパラメータ(判定基準パラメータ)とに基づいて、交通流状態が渋滞流である確率、および、交通流状態が自由流である確率を学習済みモデルから出力させてもよい。
【0143】
(プローブ遅延時間による判定S46)
プローブ遅延時間判定部154は、プローブデータ記憶部121から所定期間分のプローブデータを取得する。プローブ遅延時間判定部154は、取得したプローブデータに基づいて、通過時刻と収集時刻との差分をプローブ遅延時間として算出する。そして、プローブ遅延時間判定部154は、算出したプローブ遅延時間に基づいて、プローブ遅延時間のあらかじめ設定された所定時間ごとの頻度分布を算出する。
【0144】
プローブ遅延時間判定部154は、プローブ遅延時間の所定時間ごとの頻度分布と判定基準パラメータとに基づいて、交通流状態が渋滞流である確率と、交通流状態が自由流である確率とを算出する。
【0145】
より詳細に、プローブ遅延時間判定部154は、算出したプローブ遅延時間の所定時間ごとの頻度分布と、交通流状態が渋滞流である場合の判定基準パラメータとに基づいて、交通流状態が渋滞流である確率を算出する。例えば、交通流状態が渋滞流である確率は、80%と算出され得る。
【0146】
また、プローブ遅延時間判定部154は、算出したプローブ遅延時間の所定時間ごとの頻度分布と、交通流状態が自由流である場合の判定基準パラメータとに基づいて、交通流状態が自由流である確率を算出する。例えば、交通流状態が自由流である確率は、20%と算出され得る。
【0147】
例えば、交通量時系列変化による判定S43と同様に、プローブ遅延時間判定部154は、交通流状態が渋滞流である場合の判定基準パラメータが統計分布(例えば、2次元正規分布など)に係るパラメータである場合、判定基準パラメータによって定まる統計分布の確率密度関数の所定区間の積分値によって、交通流状態が渋滞流である確率を算出してもよい。なお、交通流状態が自由流である確率も同様にして算出されてよい。
【0148】
あるいは、プローブ遅延時間判定部154は、算出したプローブ遅延時間の所定時間ごとの頻度分布を学習済みモデルに入力し、プローブ遅延時間の所定時間ごとの頻度分布と学習済みモデルのパラメータ(判定基準パラメータ)とに基づいて、交通流状態が渋滞流である確率、および、交通流状態が自由流である確率を学習済みモデルから出力させてもよい。
【0149】
(交通流状態の判定S47)
交通流判定部155は、交通量時系列変化による判定S43、車両検知間隔による判定S44、交通量分布による判定S45、および、プローブ遅延時間による判定S46の各判定結果に基づいて、交通流状態が自由流であるか渋滞流であるかを総合的に判定する(S47)。例えば、交通流判定部155は、交通流状態が自由流である総合的な確率を算出するとともに、交通流状態が渋滞流である総合的な確率を算出し、総合的な確率がより大きい交通流状態を総合的な判定結果としてよい。
【0150】
総合的な確率は、どのように算出されてもよい。例えば、各判定結果における交通流状態が渋滞流である確率の同時生起確率、平均(例えば、相加平均、加重平均または相乗平均など)によって、交通流状態が渋滞流である総合的な確率が算出されてもよい。同様に、各判定結果における交通流状態が自由流である確率の同時生起確率、平均(例えば、相加平均、加重平均または相乗平均など)によって、交通流状態が自由流である総合的な確率が算出されてもよい。
【0151】
例えば、各判定結果における交通流状態が渋滞流である確率の相乗平均によって、交通流状態が渋滞流である総合的な確率が64%と算出され得る。また、各判定結果における交通流状態が自由流である確率の相乗平均によって、交通流状態が自由流である総合的な確率が33%と算出され得る。
【0152】
なお、交通流状態が渋滞流である確率および交通流状態が自由流である確率それぞれが1種類ずつである場合には、総合的な確率の算出は特に行われなくてよい。すなわち、交通流判定部155は、交通流状態が渋滞流である確率と、交通流状態が自由流である確率とに基づいて、交通流状態の判定結果を得ればよい。より詳細に、交通流判定部155は、交通流状態が渋滞流である確率、および、交通流状態が自由流である確率のうち、確率がより大きい交通流状態を判定結果としてよい。
【0153】
(車両速度の判定S48)
速度判定部156は、交通流判定部155によって得られた交通流状態の判定結果と、交通量算出部140によって算出されたフリーフローアンテナ前の交通量と、あらかじめ用意されたQVパラメータとに基づいて、フリーフローアンテナ前の車両速度を判定する(S48)。より詳細に、QVパラメータは、上記した渋滞流に対応する近似式のパラメータa、b、または、自由流に対応する近似式のパラメータc、dに該当し得る。
【0154】
例えば、速度判定部156は、交通流状態が渋滞流であると判定された場合には、上記の式(2)に、交通量算出部140によって算出されたフリーフローアンテナ前の交通量を代入して、フリーフローアンテナ前の車両速度を判定すればよい。一方、速度判定部156は、交通流状態が自由流であると判定された場合には、上記の式(3)に、交通量算出部140によって算出されたフリーフローアンテナ前の交通量を代入して、フリーフローアンテナ前の車両速度を判定すればよい。
【0155】
(交通状態の検知)
交通状態検知部170は、交通量算出部140によって算出された交通量と、速度判定部156によって判定され車両速度とに基づいて、フリーフローアンテナ設置地点の交通状態を検出する。また、交通状態検知部170は、フリーフローアンテナ設置地点の交通量と車両速度とに基づいて、特許文献3に開示される方法により、プローブデータの遅延部分を推定し、フリーフローアンテナ設置地点、プローブアンテナ設置地点だけでなく、道路上のすべての地点の交通状態を推定することが可能である。
【0156】
以上、本発明の実施形態に係る交通状態検出装置1の構成例について説明した。
【0157】
(1-2.効果)
以上に説明したように、本発明の実施形態に係る技術は、学習段階において、蓄積されているフリーフローデータから得られる、交通量の所定時間ごとの頻度分布の平均およびばらつきに基づいて、機械学習により判定基準パラメータを生成する。そして、本発明の実施形態に係る技術は、推論段階において、生成した判定基準パラメータと取得したフリーフローデータに基づく判定パラメータとに基づいて、交通状態が自由流であるか渋滞流であるかを判定する。
【0158】
他の一例として、本発明の実施形態に係る技術は、学習段階において、蓄積されているプローブデータの遅延時間に基づいて、機械学習により判定基準パラメータを生成する。そして、本発明の実施形態に係る技術は、推論段階において、生成した判定基準パラメータと取得したプローブデータに基づく遅延時間とに基づいて、交通状態が自由流であるか渋滞流であるかを判定する。
【0159】
本発明の実施形態に係る技術によれば、交通状態が自由流であるか渋滞流であるかがより高精度に推定され得る。これによって、本発明の実施形態に係る技術によれば、車両速度がより高精度に推定され得る。
【0160】
また、本発明の実施形態に係る技術によれば、道路上のより多くの地点の交通状態を推定することが可能であるため、車両速度を高精細に得ることが困難である。
【0161】
また、本発明の実施形態に係る技術は、特定の外部環境(例えば、雨天、夜間、西日など)に対する適用が可能となるため、本発明の実施形態に係る技術によれば、車両速度がより高精度に推定され得る。
【0162】
さらに、本発明の実施形態に係る技術は、トラフィックカウンタの代わりに、フリーフローアンテナ114によって交通量および車両速度を検出する。そのため、本発明の実施形態に係る技術では、トラフィックカウンタの設置および保守に要する費用が掛からずに済むため、必要なコストが抑えられる。
【0163】
また、本発明の実施形態によれば、フリーフローアンテナ114は、車両をリアルタイムに検出することができる。すなわち、本発明の実施形態によれば、フリーフローアンテナ114によってリアルタイムに得られる車両の検出結果に基づいて、車両速度が算出されるため、リアルタイムに車両速度が算出され得る。なお、プローブアンテナ112によっても車両速度が得られるが、プローブアンテナ112によっては、車両速度がリアルタイムには得られない。
【0164】
さらに、フリーフローアンテナ114は、複数のバージョンのETC車載器に対応している場合が想定されるため、本発明の実施形態によれば、フリーフローアンテナ114による車両の検出結果に基づいて、より多くの車両速度が算出され得る。一方、プローブアンテナ112は、特定のバージョンのETC車載器にしか対応していない場合が想定されるため、プローブアンテナ112によっては、より少ない車両速度しか取得され得ない。
【0165】
以上、本発明の実施形態に係る技術が奏する効果について説明した。
【0166】
(2.ハードウェア構成例)
続いて、本発明の実施形態に係る交通状態検出装置1のハードウェア構成例について説明する。
【0167】
以下では、本発明の実施形態に係る交通状態検出装置1のハードウェア構成例として、情報処理装置900のハードウェア構成例について説明する。なお、以下に説明する情報処理装置900のハードウェア構成例は、交通状態検出装置1のハードウェア構成の一例に過ぎない。したがって、交通状態検出装置1のハードウェア構成は、以下に説明する情報処理装置900のハードウェア構成から不要な構成が削除されてもよいし、新たな構成が追加されてもよい。
【0168】
図17は、本発明の実施形態に係る交通状態検出装置1の例としての情報処理装置900のハードウェア構成を示す図である。情報処理装置900は、CPU(Central Processing Unit)901と、ROM(Read Only Memory)902と、RAM(Random Access Memory)903と、ホストバス904と、ブリッジ905と、外部バス906と、インタフェース907と、入力装置908と、出力装置909と、ストレージ装置910と、通信装置911と、を備える。
【0169】
CPU901は、演算処理装置および制御装置として機能し、各種プログラムに従って情報処理装置900内の動作全般を制御する。また、CPU901は、マイクロプロセッサであってもよい。ROM902は、CPU901が使用するプログラムや演算パラメータ等を記憶する。RAM903は、CPU901の実行において使用するプログラムや、その実行において適宜変化するパラメータ等を一時記憶する。これらはCPUバス等から構成されるホストバス904により相互に接続されている。
【0170】
ホストバス904は、ブリッジ905を介して、PCI(Peripheral Component Interconnect/Interface)バス等の外部バス906に接続されている。なお、必ずしもホストバス904、ブリッジ905および外部バス906を分離構成する必要はなく、1つのバスにこれらの機能を実装してもよい。
【0171】
入力装置908は、マウス、キーボード、タッチパネル、ボタン、マイクロフォン、スイッチおよびレバー等ユーザが情報を入力するための入力手段と、ユーザによる入力に基づいて入力信号を生成し、CPU901に出力する入力制御回路等から構成されている。情報処理装置900を操作するユーザは、この入力装置908を操作することにより、情報処理装置900に対して各種のデータを入力したり処理動作を指示したりすることができる。
【0172】
出力装置909は、例えば、CRT(Cathode Ray Tube)ディスプレイ装置、液晶ディスプレイ(LCD)装置、OLED(Organic Light Emitting Diode)装置、ランプ等の表示装置およびスピーカ等の音声出力装置を含む。
【0173】
ストレージ装置910は、データ格納用の装置である。ストレージ装置910は、記憶媒体、記憶媒体にデータを記録する記録装置、記憶媒体からデータを読み出す読出し装置および記憶媒体に記録されたデータを削除する削除装置等を含んでもよい。ストレージ装置910は、例えば、HDD(Hard Disk Drive)で構成される。このストレージ装置910は、ハードディスクを駆動し、CPU901が実行するプログラムや各種データを格納する。
【0174】
通信装置911は、例えば、ネットワークに接続するための通信デバイス等で構成された通信インタフェースである。また、通信装置911は、無線通信または有線通信のどちらに対応してもよい。
【0175】
以上、本発明の実施形態に係る交通状態検出装置1のハードウェア構成例について説明した。
【0176】
(3.まとめ)
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明はかかる例に限定されない。本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【符号の説明】
【0177】
1 交通状態検出装置
112 プローブアンテナ
114 フリーフローアンテナ
121 プローブデータ記憶部
122 フリーフローデータ記憶部
123 QVデータ記憶部
124 パラメータ記憶部
130 QVデータ作成部
140 交通量算出部
150 速度算出部
151 交通量時系列変化判定部
152 車両検知間隔判定部
153 交通量分布判定部
154 プローブ遅延時間判定部
155 交通流判定部
156 速度判定部
160 統計情報解析部
170 交通状態検知部

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17