(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022184399
(43)【公開日】2022-12-13
(54)【発明の名称】認知機能判定システム
(51)【国際特許分類】
A61B 10/00 20060101AFI20221206BHJP
A61B 5/16 20060101ALI20221206BHJP
G06Q 10/04 20120101ALI20221206BHJP
【FI】
A61B10/00 H
A61B5/16 130
G06Q10/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021092221
(22)【出願日】2021-06-01
(71)【出願人】
【識別番号】390037154
【氏名又は名称】大和ハウス工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100162031
【弁理士】
【氏名又は名称】長田 豊彦
(74)【代理人】
【識別番号】100175721
【弁理士】
【氏名又は名称】高木 秀文
(72)【発明者】
【氏名】村上 伸太郎
(72)【発明者】
【氏名】仙谷 幸法
【テーマコード(参考)】
4C038
5L049
【Fターム(参考)】
4C038PP05
4C038VA15
4C038VA16
5L049AA04
(57)【要約】
【課題】認知機能の異常を簡便に検出可能な認知機能判定システムを提供する。
【解決手段】対象者P1が利用する建物(住宅1)に設けられた設備の使用状況を検出可能することで、前記対象者P1の行動を検出可能な電力センサ110と、前記電力センサ110により検出された前記対象者P1の行動に関する実行動データと、予め学習した前記対象者P1の行動に関する学習行動データと、を比較して、前記対象者P1の認知機能の異常の有無を判定するサーバ120と、を具備した。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象者が利用する建物に設けられた設備の使用状況を検出可能することで、前記対象者の行動を検出可能な行動検出部と、
前記行動検出部により検出された前記対象者の行動に関する実行動データと、予め学習した前記対象者の行動に関する学習行動データと、を比較して、前記対象者の認知機能の異常の有無を判定する認知機能判定部と、
を具備する、
認知機能判定システム。
【請求項2】
前記認知機能判定部は、
前記対象者が所定の行動を行った時間帯が、学習した時間帯と所定時間以上ずれている場合、若しくは、学習した行動を前記対象者が行っていない場合に、前記対象者の認知機能に異常が発生していると判定する行動時間判定処理を行う、
請求項1に記載の認知機能判定システム。
【請求項3】
前記認知機能判定部は、
前記対象者が睡眠した時間帯が、学習した時間帯と所定時間以上ずれている場合、若しくは、睡眠をとっていない場合に、前記対象者の認知機能に異常が発生していると判定する睡眠時間判定処理を行う、
請求項1又は請求項2に記載の認知機能判定システム。
【請求項4】
前記認知機能判定部は、前記睡眠時間判定処理において、
学習した睡眠時間に対する前記対象者の睡眠時間の増減に応じて、認知機能の異常の程度を判定する、
請求項3に記載の認知機能判定システム。
【請求項5】
前記認知機能判定部は、
所定の期間において前記対象者が所定の行動を行った回数が、学習した回数と所定回数以上異なっている場合に、前記対象者の認知機能に異常が発生していると判定する行動回数判定処理を行う、
請求項1から請求項4までのいずれか一項に記載の認知機能判定システム。
【請求項6】
報知対象者に対する報知を行うことが可能な報知部をさらに具備し、
前記認知機能判定部は、
第一期間において、前記対象者の認知機能の異常の有無を判定し、
前記第一期間よりも長い第二期間において、前記対象者の行動ごとに認知機能の異常の検出回数を算出し、
前記第二期間における認知機能の異常の検出回数が所定の閾値以上となった場合、前記報知部を用いて前記報知対象者に対して認知機能の異常警告を発する、
請求項1から請求項5までのいずれか一項に記載の認知機能判定システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、認知機能の異常を検出可能な認知機能判定システムの技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、認知機能の異常を検出可能な認知機能判定システムの技術は公知となっている。例えば、特許文献1に記載の如くである。
【0003】
特許文献1には、被験者の生体データ(脳血流データ、心拍データ、脈波データ、呼吸データ、体動データ等)を検出可能な生体データ検出センサと、被験者の生体データと認知症の症状に関するデータを比較して認知症の発症リスクを判定する認知症リスク判定装置と、を備える認知症リスク判定システム(認知機能判定システム)が記載されている。
【0004】
特許文献1に記載の生体データ検出センサは、一定期間だけ被験者に貸し出され、被験者は自身の操作により生体データ検出センサを用いて生体データを検出する。具体的には、被験者は、生体データ検出センサからの近赤外線光を前額部(おでこ)等に照射して、その反射波によって生体データを検出する。こうして得られた生体データに基づいて、認知症の発症リスクが判定される。
【0005】
しかしながら、特許文献1のように被験者自らが認知症の発症リスクを判定するために特別な検査(生体データの検出)を行うことは煩雑である。このため、このような検査を敬遠する被験者も一定数存在することが予想され、認知症の早期発見の観点から好ましくない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は以上の如き状況に鑑みてなされたものであり、その解決しようとする課題は、認知機能の異常を簡便に検出可能な認知機能判定システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0009】
即ち、請求項1においては、対象者が利用する建物に設けられた設備の使用状況を検出可能することで、前記対象者の行動を検出可能な行動検出部と、前記行動検出部により検出された前記対象者の行動に関する実行動データと、予め学習した前記対象者の行動に関する学習行動データと、を比較して、前記対象者の認知機能の異常の有無を判定する認知機能判定部と、を具備するものである。
【0010】
請求項2においては、前記認知機能判定部は、前記対象者が所定の行動を行った時間帯が、学習した時間帯と所定時間以上ずれている場合、若しくは、学習した行動を前記対象者が行っていない場合に、前記対象者の認知機能に異常が発生していると判定する行動時間判定処理を行うものである。
【0011】
請求項3においては、前記認知機能判定部は、前記対象者が睡眠した時間帯が、学習した時間帯と所定時間以上ずれている場合、若しくは、睡眠をとっていない場合に、前記対象者の認知機能に異常が発生していると判定する睡眠時間判定処理を行うものである。
【0012】
請求項4においては、前記認知機能判定部は、前記睡眠時間判定処理において、学習した睡眠時間に対する前記対象者の睡眠時間の増減に応じて、認知機能の異常の程度を判定するものである。
【0013】
請求項5においては、前記認知機能判定部は、所定の期間において前記対象者が所定の行動を行った回数が、学習した回数と所定回数以上異なっている場合に、前記対象者の認知機能に異常が発生していると判定する行動回数判定処理を行うものである。
【0014】
請求項6においては、報知対象者に対する報知を行うことが可能な報知部をさらに具備し、前記認知機能判定部は、第一期間において、前記対象者の認知機能の異常の有無を判定し、前記第一期間よりも長い第二期間において、前記対象者の行動ごとに認知機能の異常の検出回数を算出し、前記第二期間における認知機能の異常の検出回数が所定の閾値以上となった場合、前記報知部を用いて前記報知対象者に対して認知機能の異常警告を発するものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
【0016】
請求項1においては、認知機能の異常を簡便に検出することができる。
【0017】
請求項2においては、認知機能の異常を容易に検出することができる。
【0018】
請求項3においては、認知機能の異常を容易に検出することができる。
【0019】
請求項4においては、より詳細な認知機能の判定を行うことができる。
【0020】
請求項5においては、認知機能の異常を容易に検出することができる。
【0021】
請求項6においては、報知対象者に対して、適切に警告を報知することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本発明の一実施形態に係る認知機能判定システムの構成を示した模式図。
【
図2】認知機能判定システムによる一連の処理の概要を示した図。
【
図3】学習結果、日毎処理における検出結果、及び判定結果の一例を示した図。
【
図5】活動時間帯判定の内容を示したフローチャート。
【
図6】就寝~起床時間帯判定の内容を示したフローチャート。
【
図9】(a)週間結果通知の内容を示したフローチャート。(b)月間結果通知の内容を示したフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下では、
図1を用いて、本発明の一実施形態に係る認知機能判定システム100の構成について説明する。
【0024】
認知機能判定システム100は、対象者P1の認知機能の異常の有無を判定するものである。本実施形態では一例として、高齢者を対象者P1として、当該高齢者の認知機能の異常の有無を判定する場合を想定している。認知機能判定システム100は、主として電力センサ110、サーバ120及び端末130を具備する。
【0025】
電力センサ110は、対象者P1が使用する各種設備(特に、日常生活において使用する設備)の消費電力を検出するものである。電力センサ110は、対象者P1が居住する建物(住宅1)の分電盤2に設けられる。電力センサ110は、分電盤2の分岐回路毎の電力を検出することができる。これによって電力センサ110は、各分岐回路に接続された設備の使用状況(使用されているか否か)を検出することができる。設備の使用状況を検出することで、間接的に、対象者P1の行動(どの設備を使用しているか)を検出することができる。
【0026】
本実施形態では、電力センサ110による消費電力の検出の対象となる設備の一例として、調理機器(IH、電子レンジ等)、冷蔵庫、テレビ、ドライヤー、掃除機、洗濯機、エアコン、暖房器具、照明等を想定している。例えば調理機器の使用が検出された場合、間接的に、対象者P1が調理機器を使用したこと(ひいては、食事をしたこと)が検出される。またテレビの使用が検出された場合、間接的に、対象者P1がテレビを見たことが検出される。
【0027】
なお、各種設備の使用状況を検出する方法は、電力センサ110によって分岐回路毎の電力を検出する方法に限るものではなく、種々の方法を用いることが可能である。例えば、分電盤2の主幹回路の電力(主幹電力)を検出し、その電力の波形を分析することで、使用されている機器を識別して把握することも可能である。また、分電盤2の電力を検出するのではなく、各種設備自身の稼働状況(各種設備の電源のオン・オフ、各種設備が接続されたコンセントの電力等)を直接検出することも可能である。また、住宅1に各種設備の使用状況を把握(管理)するシステム(例えば、HEMS:Home Energy Management System 等)が設けられている場合は、そのシステムが把握している情報を利用することも可能である。
【0028】
サーバ120は、電力センサ110の検出結果に基づいて各種処理を行うものである。サーバ120は、例えばクラウド上に設けられた仮想サーバ(クラウドサーバ)により構成される。サーバ120は、電力センサ110からの情報を取得することで、各種設備の使用状況を把握することができる。サーバ120は、各種設備の使用状況に基づいて、対象者P1の認知機能の異常の有無を判定することができる。またサーバ120は、後述する端末130との間で、各種情報を送受信することができる。
【0029】
端末130は、各種情報を表示することが可能なものである。端末130は、対象者P1の認知機能の異常の有無を把握すべき者(例えば、対象者P1の家族、親戚等)によって所持される。本実施形態では、対象者P1の家族P2が端末130を所持しているものとする。端末130は、例えば対象者P1の家族P2が携帯可能な機器(例えば、スマートフォンやタブレット端末等)によって構成される。端末130は、サーバ120からの情報を適宜の方法(液晶画面への表示、音声等)で対象者P1の家族P2に報知することができる。
【0030】
以上の如く構成された認知機能判定システム100を用いることで、対象者P1の認知症の予兆や発症を発見することができる。
【0031】
例えば、認知症の症状としては、「記憶障害」、「見当識障害」、「実行機能障害」、「昼夜逆転」等が考えられる。
【0032】
「記憶障害」は、新しいことが覚えられない、以前覚えていたはずの記憶が欠損する等の症状が発生する障害である。対象者P1に「記憶障害」が発症すると、食事をしたことを忘れて再度食事をとるようになる、掃除したことを忘れて再度掃除をするようになる、等の行動の変化(異常)が生じることが想定される。
【0033】
「見当識障害」は、「いつ、どこ、だれ」など、自分の置かれた状況が把握できなくなる障害である。対象者P1に「見当識障害」が発症すると、夏なのに暖房をつけるようになる、家の中の場所がわからなくなりトイレや風呂場に行けなくなる、外出したら帰れなくなる、等の行動の変化(異常)が生じることが想定される。
【0034】
「実行機能障害」は、段取りや計画を立てて順序よく物事を行うことができなくなる障害である。対象者P1に「実行機能障害」が発症すると、食事の準備ができなくなる、電化製品の使い方が分からなくなる、等の行動の変化(異常)が生じることが想定される。
【0035】
「昼夜逆転」は、睡眠・覚醒のリズムが崩れて昼と夜が逆転する障害である。対象者P1に「昼夜逆転」が発症すると、本来睡眠をとっているはずの時間帯(夜中)に活動する等の行動の変化(異常)が生じることが想定される。
【0036】
そこで本実施形態の認知機能判定システム100は、上述のような対象者P1の行動の変化を検出し、この行動の変化に基づいて当該対象者P1の認知機能の異常の有無を判定する。そして、必要に応じて対象者P1の家族P2に、対象者P1の認知機能の異常を報知する。これによって対象者P1の家族P2は、対象者P1の認知症の予兆や発症を把握することができ、早期に適切な対応(治療等)をとることができる。
【0037】
以下では、この認知機能判定システム100による一連の処理の概要について説明する。
【0038】
図2に示すように、サーバ120は、住宅1に設けられた各種設備を、使用頻度に応じて分類して記憶している。具体的にはサーバ120は、各種設備を、毎日使用する設備(分類(1))と、毎日ではないが週に1回以上使用する設備(分類(2))に分類して記憶している。例えば
図2に示した例では、調理機器(IH、電子レンジ)、冷蔵庫、テレビ、ドライヤー等は毎日使用されるため、分類(1)に分類されている。また掃除機、洗濯機等は毎日使用されるわけではないが週に1回以上使用されるため、分類(2)に分類されている。
【0039】
さらにサーバ120は、特定の季節に限定して使用される設備についても、分類(1)又は分類(2)に分類して記憶している。例えば
図2に示した例では、エアコンや暖房器具は、必要な季節(夏や冬)に毎日使用されるため、分類(1)に分類されている。
図2では分類(2)には特に例を挙げていないが、例えば梅雨の時期にのみ洗濯乾燥機を使用する場合、この洗濯乾燥機は分類(2)に分類することができる。
【0040】
なお、サーバ120は、予め電力センサ110の検出結果を学習し、この学習結果に基づいて各種設備を分類することができる。すなわち、所定の期間における各種設備が使用される頻度を判定し、この頻度に基づいて分類(1)又は(2)に分類することができる。また、学習した結果を用いるのではなく、認知機能判定システム100の製造・販売者や利用者等によって任意に分類を決定することも可能である。
【0041】
サーバ120は、分類された設備ごとに適宜の処理を行うことで、対象者P1の認知機能の異常の有無を判定し、必要に応じて対象者P1の家族P2に認知機能の異常に関する報知を行う。
【0042】
具体的には、サーバ120は、分類(1)に分類された設備について、一日毎(毎日)の使用状況(ひいては、対象者P1の行動)を検出し、この検出結果に基づいて対象者P1の認知機能の異常の有無を判定する処理を行う。以下、この処理を「日毎処理」と称する。サーバ120は、日毎処理において、判定対象となった行動、異常の有無、判定の理由を互いに紐付けて記憶する。
【0043】
またサーバ120は、一週間の間に上記日毎処理によって異常が検知された回数を、行動毎に算出する。そして、所定回数以上異常が検知された行動について、端末130を用いてアラート(警告)を発報する。以下、この処理を「週間結果通知」と称する。週間結果通知によって、端末130を所持している対象者P1の家族P2は、対象者P1の所定の行動に異常が発生していること、ひいては、認知機能が低下しているおそれがあることを把握することができる。
【0044】
一方、サーバ120は、分類(2)に分類された設備について、一週間毎(毎週)の使用状況(ひいては、対象者P1の行動)を検出し、この検出結果に基づいて対象者P1の認知機能の異常の有無を判定する処理を行う。以下、この処理を「週毎処理」と称する。サーバ120は、週毎処理において、判定対象となった行動、異常の有無、判定の理由を互いに紐付けて記憶する。
【0045】
またサーバ120は、一か月の間に上記週毎処理によって異常が検知された回数を、行動毎に算出する。そして、所定回数以上異常が検知された行動について、端末130を用いてアラートを発報する。以下、この処理を「月間結果通知」と称する。これによって、端末130を所持している対象者P1の家族P2は、対象者P1の行動に異常が発生していること、ひいては、認知機能が低下しているおそれがあることを把握することができる。
【0046】
このように、認知機能判定システム100では、使用頻度の異なる設備(分類(1)及び分類(2))に応じた各処理を行うことで、対象者P1の認知機能の異常の有無を判定し、対象者P1の家族P2にアラートを発報することができる。
【0047】
以下では、上述の認知機能判定システム100の処理内容(日毎処理、週毎処理、週間結果通知及び月間結果通知)について、具体的に説明する。
【0048】
各種処理の前提として、サーバ120は、予め(上記日毎処理等の処理を行うよりも前に)、住宅1の各種設備の使用状況を所定の期間(例えば、2週間~1か月程度)に亘って検出することで、対象者P1の行動の傾向を学習し、その情報(学習行動データ)を記憶している。具体的には、サーバ120は、電力センサ110の検出結果に基づいて、対象者P1が一日の生活の中で行う行動とその時間帯を検出し、時間帯ごとに対象者P1が行う行動を把握している。
図3の表の「学習結果」には、その一例を示している。
【0049】
例えば、サーバ120は、調理機器(IH、電子レンジ)が使用されたことを検出した場合、その時間帯を学習する。これを所定の期間繰り返し行い、対象者P1が普段どの時間帯に調理機器を使用するか、対象者P1の行動を把握する。またサーバ120は、住宅1の照明が消されたこと等から間接的に対象者P1が就寝したことを検出し、対象者P1の睡眠時間を学習する。
【0050】
なお、エアコンや暖房器具は必要な季節(夏や冬)にしか使われないなど、対象者P1の行動は季節に応じて変化する。そこでサーバ120は、季節ごとに対象者P1の行動の傾向を学習し、以下で説明する日毎処理等を行う場合には、その時点での季節に応じた学習結果を使用する。
【0051】
また、サーバ120は、上記日毎処理等の処理の対象となる期間では、住宅1の各種設備の使用状況(ひいては、対象者P1の行動)を常時検出して、その情報(実行動データ)を記憶している。より具体的には、サーバ120は、対象者P1が実際にどの時間帯にどのような行動を行ったのかを記憶している。
図3の表の「検出結果」には、その一例を示している。
【0052】
まず、
図4から
図7を用いて日毎処理について説明する。
【0053】
サーバ120は、毎日所定の時間に、日毎処理を行う。なお、サーバ120は、対象者P1が夜間にきちんと眠っているかどうかを判定する必要があるため、対象者P1が睡眠していると思われる時間帯の最中に日毎処理を行うのは好ましくない。そこで本実施形態に係るサーバ120は、対象者P1が確実に起床していると思われる時間帯(例えば、午前10時等)に日毎処理を実行するものとする。
【0054】
ステップS101において、サーバ120は、記憶している対象者P1の行動の中から、直近の24時間(例えば午前10時に日毎処理を行う場合、前日の午前9時から当日の午前9時まで)の行動を抽出する。この24時間が、日毎処理による判定の対象となる期間となる。以下、この期間を「日毎処理対象期間」と称する。サーバ120は、ステップS101の処理を行った後、ステップS102に移行する。
【0055】
ステップS102において、サーバ120は、ステップS101で抽出された各行動の時間を確認し、最後に対象者P1が行動を行ったことが検出されてから所定の時間(X1時間)が経過しているか否かを判定する。対象者P1が最後に行動を行ってからX1時間以上経過している場合とは、言い換えると、対象者P1の行動がX1時間以上検出されていないということである。すなわちこの場合、対象者P1が倒れているなど、何らかの非常事態が生じている可能性がある。なお、所定の時間(X1時間)の値は任意に設定することができるが、特に、対象者P1に非常事態が生じていることが推認できる程度の時間(例えば、12時間、24時間など)が設定されることが望ましい。
【0056】
サーバ120は、対象者P1が最後に行動を行ってからX1時間以上経過していると判定した場合、ステップS103に移行する。一方、サーバ120は、対象者P1が最後に行動を行ってからX1時間以上経過していないと判定した場合、ステップS104に移行する。
【0057】
ステップS103において、サーバ120は、端末130を用いて所定のアラートを発報する。このアラートを確認した家族P2は、対象者P1に非常事態が生じていることを認識することができ、対象者P1の住宅1に向かうなどの対応をとることができる。
【0058】
なお、このようなステップS101~ステップS103の処理は、対象者P1に非常事態が生じていることを確認することができる処理であるため、一日に一度だけ(午前10時に)実行するのではなく、常時実行するようにしてもよい。これによって、より迅速に対象者P1の非常事態に対応することができる。サーバ120は、ステップS103の処理を行った後、ステップS104に移行する。
【0059】
ステップS104において、サーバ120は、対象者P1の活動時間帯(起床して活動している時間帯)における行動に基づいて、対象者P1の行動に異常が発生しているか否かを判定する。以下、この処理を「活動時間帯判定」と称する。以下では
図5を用いて、活動時間帯判定について説明する。
【0060】
サーバ120は、
図5のステップS201からステップS204までの処理を、分類(1)に分類された対象者P1の行動毎に繰り返す。また、一日に複数回行われる行動(例えば、調理機器(IH、電子レンジ)を使用する、テレビを観る、など)に対しては、その回数分だけ処理を行う。以下、ステップS201からステップS204までの各処理について説明する。
【0061】
ステップS201において、サーバ120は、日毎処理対象期間において、判定の対象となる行動が検出されているか否かを判定する。具体的には、サーバ120は、対象者P1が行う行動として学習されているもの(例えば、
図3に示す調理機器(IH、電子レンジ)の使用等)が、日毎処理対象期間において検出されているか否かを判定する。
【0062】
サーバ120は、判定の対象となる行動が検出されている場合、ステップS202に移行する。一方、サーバ120は、判定の対象となる行動が検出されていない場合、ステップS204に移行する。
【0063】
ステップS202において、サーバ120は、学習結果に対して、検出された対象者P1の行動の時間帯のズレが所定の時間(X2時間)以内か否かを判定する。なお、時間帯のズレの算出方法は特に限定するものではなく、両者(学習された行動と、検出された行動)の時間帯が変化しているか否かを判定可能なものであればよい。例えば、両者が重複していない時間を合計して算出する方法や、両者の行動の開始時間同士のズレと終了時間同士のズレを合計して算出する方法等が考えられる。また、所定の時間(X2時間)の値は任意に設定することができるが、特に、対象者P1に認知症の症状が発症していることが推認できる程度の時間(例えば、1時間、2時間など)が設定されることが望ましい。
【0064】
サーバ120は、学習結果に対して対象者P1の行動の時間帯のズレがX2時間以内である場合、ステップS203に移行する。一方、サーバ120は、学習結果に対して対象者P1の行動の時間帯のズレがX2時間より大きい場合、ステップS204に移行する。
【0065】
ステップS203において、サーバ120は、判定の対象となった行動について、正常であると判定する。サーバ120は、この判定対象となった行動、異常の有無、判定の理由を互いに紐付けて記憶する。例えばサーバ120は、「テレビ」、「異常なし」、「実施タイミングのズレがX2時間以内」という情報を互いに紐付けて記憶する。
【0066】
一方、ステップS201又はステップS202から移行したステップS204において、サーバ120は、判定の対象となった行動について、異常であると判定する。
【0067】
ここで、ステップS201からステップS204へと移行する場合(ステップS201でNOである場合)とは、対象者P1が毎日行うはずの行動が、一日(日毎処理対象期間)の間に一度も行われていないことを示している。この場合、対象者P1に記憶障害、見当識障害、実行機能障害等の、何らかの認知症の症状が発症していることが推認される。サーバ120は、この判定対象となった行動、異常の有無、判定の理由を互いに紐付けて記憶する。例えばサーバ120は、「調理機器(IH、電子レンジ)」、「異常あり」、「本日実施されていない」という情報を互いに紐付けて記憶する。
【0068】
また、ステップS202からステップS204へと移行する場合(ステップS202でNOである場合)とは、対象者P1が普段とは異なる時間に所定の行動を行っていることを示している。この場合、対象者P1に記憶障害、見当識障害、実行機能障害、昼夜逆転等の、何らかの認知症の症状が発症していることが推認される。サーバ120は、この判定対象となった行動、異常の有無、判定の理由を互いに紐付けて記憶する。例えばサーバ120は、「洗濯機」、「異常あり」、「実施タイミングのズレがX2時間より大きい」という情報を互いに紐付けて記憶する。
【0069】
サーバ120は、ステップS201からステップS204までの処理を、対象者P1の行動毎、かつその回数分だけ繰り返し行う。これによってサーバ120は、対象者P1の行動毎、かつ回毎に、異常が発生しているか否かを判定することができる。その後サーバ120は、
図4のステップS105に移行する。
【0070】
図4のステップS105において、サーバ120は、対象者P1が就寝してから起床するまでの時間帯における行動に基づいて、対象者P1の行動に異常が発生しているか否かを判定する。以下、この処理を「就寝~起床時間帯判定」と称する。以下では
図6及び
図7を用いて、就寝~起床時間帯判定について説明する。
【0071】
図6のステップS301において、サーバ120は、記憶している対象者P1の行動から、対象者P1が就寝して起床するまでの時間帯を判定する。サーバ120は、ステップS301の処理を行った後、ステップS302に移行する。
【0072】
ステップS302において、サーバ120は、学習結果に対して、検出された対象者P1が就寝して起床するまでの時間帯(睡眠時間帯)のズレが所定の時間(X3時間)以内か否かを判定する。時間帯のズレの算出方法は特に限定するものではなく、ステップS202で例示したような方法により算出することができる。なお、所定の時間(X3時間)の値は任意に設定することができるが、特に、対象者P1に認知症の症状が発症していることが推認できる程度の時間(例えば、1時間、2時間など)が設定されることが望ましい。
【0073】
サーバ120は、学習結果に対して対象者P1の睡眠時間帯のズレがX3時間以内であると判定した場合、
図7のステップS308に移行する。一方、サーバ120は、学習結果に対して対象者P1の睡眠時間帯のズレがX3時間より大きいと判定した場合、ステップS303に移行する。
【0074】
なお、
図6に示した例では、学習結果に対する対象者P1の睡眠時間帯のズレを判定するものとしたが、これだけではなく、例えば対象者P1が日毎処理対象期間の間に睡眠をとっているか否かを判定することも可能である。例えば対象者P1が睡眠を全くとっていない場合、ステップS303に移行するようにしてもよい。
【0075】
ステップS303において、サーバ120は、対象者P1の睡眠時間が、予め学習した睡眠時間に比べて長くなったか否かを判定する。サーバ120は、対象者P1の睡眠時間が長くなっていないと判定した場合、ステップS304に移行する。一方、サーバ120は、対象者P1の睡眠時間が長くなったと判定した場合、ステップS305に移行する。
【0076】
ステップS304において、サーバ120は、対象者P1の睡眠時間帯における行動(睡眠)について、異常であると判定する。すなわち、睡眠時間が長くなったわけではないのに、その時間帯のズレが大きくなっている場合(ステップS302でNO、かつ、ステップS303でNO)には、対象者P1に実行機能障害、見当識障害、昼夜逆転等の、何らかの認知症の症状が発症していることが推認される。サーバ120は、この判定対象となった行動(睡眠)、異常の有無、判定の理由を互いに紐付けて記憶する。例えばサーバ120は、「睡眠」、「異常あり」、「実施タイミングのズレがX3時間より大きい」という情報を互いに紐付けて記憶する。
【0077】
サーバ120は、ステップS304の処理を行った後、
図7のステップS308に移行する。
【0078】
一方、ステップS303から移行したステップS305において、サーバ120は、対象者P1の睡眠時間帯における行動について、注意が必要であると判定する。ここで、注意(が必要)という判定は、「正常」とは言えないものの、ステップS304の「異常」という判定よりは異常の程度が低い(軽微である)とする判定である。
【0079】
ステップS303からステップS305へ移行する場合(ステップS303でYES)とは、対象者P1の睡眠時間が長くなっていることから、対象者P1の認知機能が低下しているのではなく、単に対象者P1が疲れているだけの可能性も考えられる。そこで本実施形態では、ステップS305において「異常」よりも軽微な「注意」という判定を行っている。サーバ120は、この判定対象となった行動(睡眠)、異常の有無、判定の理由を互いに紐付けて記憶する。例えばサーバ120は、「睡眠」、「注意が必要」、「実施タイミングのズレがX3時間より大きく、かつ、睡眠時間が長くなった」という情報を互いに紐付けて記憶する。サーバ120は、ステップS305の処理を行った後、ステップS306に移行する。
【0080】
ステップS306において、サーバ120は、対象者P1の睡眠時間帯のズレによって活動時間帯(本来の睡眠時間帯以外の時間帯)が減少し、これによって検出された対象者P1の行動に影響が出ているか否かを判定する。例えばサーバ120は、活動時間帯判定(
図5参照)で異常と判定された行動(ステップS204参照)が本来行われるはずの時間帯と、検出された対象者P1の睡眠時間が重複している場合には、対象者P1の睡眠時間帯のズレによって当該行動に影響が出ている(睡眠時間帯のズレによって当該行動が異常と判定されている)と判定することができる。
【0081】
サーバ120は、対象者P1の睡眠時間帯のズレによって、検出された対象者P1の行動に影響が出ていると判定した場合、ステップS307に移行する。一方、サーバ120は、対象者P1の睡眠時間帯のズレによって、検出された対象者P1の行動に影響が出ていないと判定した場合、
図7のステップS308に移行する。
【0082】
ステップS307において、サーバ120は、ステップS305の判定結果を「注意」から「異常」へと変更する。このようにサーバ120は、睡眠時間が長くなったことにより(ステップS303でYES)、対象者P1が本来行うべき行動に影響が出ている場合には(ステップS306でYES)、対象者P1にとって好ましくない状況であることが想定されるため、判定結果の異常の程度を「注意」から「異常」へと引き上げる。サーバ120は、ステップS307の処理を行った後、
図7のステップS308に移行する。
【0083】
図7のステップS308において、サーバ120は、対象者P1が就寝して起床するまでの時間帯(睡眠時間帯、ステップS301参照)において、対象者P1の行動(睡眠以外の行動)を検出したか否かを判定する。サーバ120は、睡眠時間帯において対象者P1の行動を検出していないと判定した場合、ステップS309に移行する。一方、サーバ120は、睡眠時間帯において対象者P1の行動を検出したと判定した場合、ステップS310に移行する。
【0084】
ステップS309において、サーバ120は、対象者P1の睡眠時間帯における行動について、正常であると判定する。サーバ120は、この判定対象となった行動、異常の有無、判定の理由を互いに紐付けて記憶する。例えばサーバ120は、「睡眠」、「異常なし」、「睡眠時間帯に行動検出なし」という情報を互いに紐付けて記憶する。サーバ120は、ステップS309の処理を行った後、日毎処理(
図4参照)を終了する。
【0085】
一方、ステップS308から移行したステップS310において、サーバ120は、睡眠時間帯に検出された対象者P1の行動の中に、トイレ及びそれに関連する行動以外の行動があったか否かを判定する。
【0086】
具体的には、睡眠時間帯にトイレに行く場合、それに関連して何らかの行動を行うことが想定される。例えば対象者P1は、トイレに行く場合には、トイレの照明を点灯させるだけでなく、トイレに行く際の視界を確保するために寝室や廊下等の照明を点灯させるものと想定される。サーバ120は、このようなトイレに行くのに関連する行動(必要な行動)以外に、何らかの行動があったか否かを判定する。なお、トイレに関連する行動の種別は、サーバ120が学習したり、認知機能判定システム100の製造・販売者や利用者等によって決定することが可能である。
【0087】
サーバ120は、トイレ及びそれに関連する行動以外の行動があったと判定した場合、ステップS311に移行する。一方、サーバ120は、トイレ及びそれに関連する行動以外の行動がなかったと判定した場合、ステップS312に移行する。
【0088】
ステップS311において、サーバ120は、対象者P1の睡眠時間帯における行動について、異常であると判定する。すなわち、睡眠時間帯にトイレに関連する行動以外の行動があった場合(ステップS310でYES)には、対象者P1に実行機能障害、見当識障害、昼夜逆転等の、何らかの認知症の症状が発症していることが推認される。サーバ120は、この判定対象となった行動(睡眠)、異常の有無、判定の理由を互いに紐付けて記憶する。例えばサーバ120は、「睡眠」、「異常あり」、「睡眠時間帯に行動検出」という情報を互いに紐付けて記憶する。サーバ120は、ステップS311の処理を行った後、日毎処理(
図4参照)を終了する。
【0089】
一方、ステップS310から移行したステップS312において、サーバ120は、対象者P1の睡眠時間帯における行動について、正常であると判定する。サーバ120は、この判定対象となった行動(睡眠)、異常の有無、判定の理由を互いに紐付けて記憶する。例えばサーバ120は、「睡眠」、「異常なし」、「睡眠時間帯に行動検出なし」という情報を互いに紐付けて記憶する。
【0090】
なお、本実施形態ではステップS312において正常であると判定したが、例えば学習された対象者P1のトイレの回数と、検出されたトイレの回数を比較して、回数が増加している場合に「注意」と判定することも可能である。これによって、トイレの回数が増えていることに対して、注意喚起を促すこともできる。
【0091】
サーバ120は、ステップS312の処理を行った後、日毎処理(
図4参照)を終了する。
【0092】
【0093】
サーバ120は、一週間に一度、所定の日時に週毎処理を行う。例えば、一週間に一度、日毎処理と同じ時間帯(例えば、午前10時等)に週毎処理を行う。
【0094】
サーバ120は、
図8のステップS401からステップS403までの処理を、分類(2)に分類された対象者P1の行動毎に繰り返す。以下、ステップS401からステップS403までの各処理について説明する。
【0095】
ステップS401において、サーバ120は、学習結果に対して、検出された対象者P1の行動回数が所定の回数(Y1回)以上増減したか否かを判定する。なお、所定の回数(Y1回)の値は任意に設定することができる。サーバ120は、検出された対象者P1の行動回数がY1回以上増減したと判定した場合、ステップS402に移行する。一方、サーバ120は、検出された対象者P1の行動回数がY1回以上増減していないと判定した場合、ステップS403に移行する。
【0096】
ステップS402において、サーバ120は、判定の対象となった行動について、異常であると判定する。すなわち、行動回数がY1回以上増減した場合、対象者P1に記憶障害、見当識障害、実行機能障害等の、何らかの認知症の症状が発症していることが推認される。サーバ120は、この判定対象となった行動、異常の有無、判定の理由を互いに紐付けて記憶する。例えばサーバ120は、「掃除機」、「異常あり」、「行動が減少している」という情報を互いに紐付けて記憶する。
【0097】
一方、ステップS401から移行したステップS403において、サーバ120は、判定の対象となった行動について、正常であると判定する。すなわち、行動回数がY1回以上増減していない場合、対象者P1の行動に特に変化はなく、認知症の症状が発症していないことが推認される。サーバ120は、この判定対象となった行動、異常の有無、判定の理由を互いに紐付けて記憶する。例えばサーバ120は、「掃除機」、「異常なし」、「行動が増減していない」という情報を互いに紐付けて記憶する。
【0098】
サーバ120は、ステップS401からステップS403までの処理を、対象者P1の各行動について繰り返し行う。これによってサーバ120は、対象者P1の行動毎に、異常が発生しているか否かを判定することができる。その後サーバ120は、週毎処理を終了する。
【0099】
次に、
図9(a)を用いて、週間結果通知について説明する。
【0100】
サーバ120は、一週間に一度、所定の日時に週間結果通知を行う。例えば、一週間に一度、日毎処理と同じ時間帯(例えば、午前10時等)に週間結果通知を行う。
【0101】
ステップS501において、サーバ120は、一週間の間に、日毎処理の対象となった行動の中で、所定の回数(Y2回)以上繰り返し注意又は異常判定になっている行動はあるか否かを判定する。なお、所定の回数(Y2回)の値は任意に設定することができるが、異常等の判定が繰り返されていることを判断するためには、2以上の値に設定することが好ましい。サーバ120は、所定の回数(Y2回)以上繰り返し注意又は異常判定になっている行動があると判定した場合、ステップS502に移行する。一方、サーバ120は、所定の回数(Y2回)以上繰り返し注意又は異常判定になっている行動がないと判定した場合、週間結果通知を終了する。
【0102】
ステップS502において、サーバ120は、端末130を用いてアラート(認知機能の異常警告)を発報する。具体的には、所定の回数以上注意又は異常判定になった行動、及びその判定の理由を、端末130を用いて家族P2に報知する。報知の方法としては、例えば端末130の液晶画面に表示する方法や、端末130から音声を発することで報知する方法等がある。
【0103】
このようにサーバ120は、繰り返し何度も(Y2回以上)異常が検出された行動については、認知機能の異常が発生している可能性が高いと考えられるため、家族P2に報知する。これによって家族P2は、適切な対応(治療等)をとることができる。また言い換えると、サーバ120は、異常等と判定されたのが所定の回数(Y2回)未満である行動については、家族P2に報知することがない。これによって、対象者P1の認知機能とは無関係に、たまたま対象者P1の行動が普段と違っていた場合に異常等と判定された行動(異常の誤検出)について、家族P2に報知を行うのを防止することができる。
【0104】
サーバ120は、ステップS502の処理を行った後、週間結果通知を終了する。
【0105】
次に、
図9(b)を用いて、月間結果通知について説明する。
【0106】
サーバ120は、一か月に一度、所定の日時に月間結果通知を行う。例えば、一か月に一度、週間結果通知と同じ時間帯(例えば、午前10時等)に月間結果通知を行う。
【0107】
ステップS601において、サーバ120は、一か月の間に、週毎処理の対象となった行動の中で、所定の回数(Y3回)以上繰り返し注意又は異常判定になっている行動はあるか否かを判定する。なお、所定の回数(Y3回)の値は任意に設定することができるが、異常等の判定が繰り返されていることを判断するためには、2以上の値に設定することが好ましい。サーバ120は、所定の回数(Y3回)以上繰り返し注意又は異常判定になっている行動があると判定した場合、ステップS602に移行する。一方、サーバ120は、所定の回数(Y3回)以上繰り返し注意又は異常判定になっている行動がないと判定した場合、月間結果通知を終了する。
【0108】
ステップS602において、サーバ120は、端末130を用いてアラート(認知機能の異常警告)を発報する。具体的には、所定の回数以上注意又は異常判定になった行動、及びその判定の理由を、端末130を用いて家族P2に報知する。このようにサーバ120は、異常等と判定されたのが所定の回数(Y3回)未満である行動については、家族P2に報知することがない。
【0109】
サーバ120は、ステップS602の処理を行った後、月間結果通知を終了する。
【0110】
認知機能判定システム100は、以上のような処理(日毎処理、週毎処理、週間結果通知及び月間結果通知)を行うことで、対象者P1の認知機能の異常を検出し、家族P2に報知することができる。例えば
図3には、日毎処理の判定結果を示している。
図3に示した例では、学習結果によると21時に対象者P1がドライヤーを使用するはずなのに対して、実際の検出結果では使用されていない(ステップS201参照)ことから、サーバ120は「異常」と判定している。また22時以降、対象者P1は睡眠をとっているものの、何らかの理由(睡眠時間が長くなった(ステップS303参照)等)により、サーバ120は「注意」と判定している。サーバ120は、このように異常等を検出した場合、それが何度か繰り返されるようであれば対象者P1の認知機能に異常が生じている可能性が高いと判断し、家族P2に対して報知を行う(
図9参照)。
【0111】
このように、認知機能判定システム100を用いることで、対象者P1の日常生活の行動に基づいて、認知機能の異常を検出することができる。これによって、対象者P1に特別な検査等を受けさせることなく、簡便に認知機能の異常を検出することができる。
【0112】
以上の如く、本実施形態に係る認知機能判定システム100は、
対象者P1が利用する建物(住宅1)に設けられた設備の使用状況を検出可能することで、前記対象者P1の行動を検出可能な電力センサ110(行動検出部)と、
前記電力センサ110により検出された前記対象者P1の行動に関する実行動データと、予め学習した前記対象者P1の行動に関する学習行動データと、を比較して、前記対象者P1の認知機能の異常の有無を判定するサーバ120(認知機能判定部)と、
を具備するものである。
【0113】
このように構成することにより、認知機能の異常を簡便に検出することができる。すなわち、対象者P1が通常通り生活をするだけで、対象者P1の行動を検出し、認知機能の異常の有無を判定することができる。これによって、対象者P1に特別な検査を受けてもらうことなく、認知機能の異常を検出することができる。
【0114】
また、前記サーバ120は、
前記対象者P1が所定の行動を行った時間帯が、学習した時間帯と所定時間以上ずれている場合、若しくは、学習した行動を前記対象者が行っていない場合に(ステップS201又はステップS202でNO)、前記対象者の認知機能に異常が発生していると判定する(ステップS204)行動時間判定処理(活動時間帯判定)を行うものである。
【0115】
このように構成することにより、認知機能の異常を容易に検出することができる。すなわち、対象者P1の行動した時間帯と、学習した時間帯とにズレが生じている場合や行動自体が行われていない場合、対象者P1に認知症の何らかの症状(実行機能障害等)が発生していると推認される。したがって、両者の時間帯のズレ等を検出することで、認知機能の異常を容易に検出することができる。
【0116】
また、前記サーバ120は、
前記対象者P1が睡眠した時間帯が、学習した時間帯と所定時間以上ずれている場合、若しくは、睡眠をとっていない場合(ステップS302でNO)に、前記対象者P1の認知機能に異常が発生していると判定する(ステップS304又はステップS305)睡眠時間判定処理(就寝~起床時間帯判定)を行うものである。
【0117】
このように構成することにより、認知機能の異常を容易に検出することができる。すなわち、対象者P1の睡眠時間帯と、学習した睡眠時間帯とにズレが生じている場合や睡眠自体が行われていない場合、対象者P1に認知症の何らかの症状(実行機能障害等)が発生していると推認される。したがって、両者の時間帯のズレ等を検出することで、認知機能の異常を容易に検出することができる。
【0118】
また、前記サーバ120は、前記就寝~起床時間帯判定において、
学習した睡眠時間に対する前記対象者P1の睡眠時間の増減に応じて、認知機能の異常の程度を判定するものである(ステップS303からステップS305まで)。
【0119】
このように構成することにより、より詳細な認知機能の判定を行うことができる。すなわち、本実施形態に例示したように、睡眠時間帯が長くなっている場合には、単に対象者P1が疲れているだけで、認知機能に異常がない可能性もある。そこで、このような場合には認知機能の異常の程度(レベル)を下げて、「注意が必要である」と判定することで、異常の判定の程度に差異を設けて詳細な判定を行うことができる。
【0120】
また、前記サーバ120は、
所定の期間において前記対象者P1が所定の行動を行った回数が、学習した回数と所定回数以上異なっている場合に(ステップS401)、前記対象者の認知機能に異常が発生していると判定する(ステップS402)行動回数判定処理(週毎処理)を行うものである。
【0121】
このように構成することにより、認知機能の異常を容易に検出することができる。すなわち、対象者P1の行動した回数と、学習した回数とに差異が生じている場合、対象者P1に認知症の何らかの症状(実行機能障害等)が発生していると推認される。したがって、両者の回数の差異を検出することで、認知機能の異常を容易に検出することができる。
【0122】
また、認知機能判定システム100は、
家族P2(報知対象者)に対する報知を行うことが可能な端末130(報知部)をさらに具備し、
前記サーバ120は、
第一期間において、前記対象者の認知機能の異常の有無を判定し(日毎処理、週毎処理)、
前記第一期間よりも長い第二期間において、前記対象者の行動ごとに認知機能の異常の検出回数を算出し(ステップS501、ステップS601)、
前記第二期間における認知機能の異常の検出回数が所定の閾値以上となった場合、前記報知部を用いて前記報知対象者に対して認知機能の異常警告を発する(ステップS502、ステップS602)ものである。
【0123】
このように構成することにより、家族P2に対して、適切に警告を報知することができる。すなわち、認知機能の異常の検出回数がある程度の回数になってはじめて警告を発することで、認知機能の異常がたまたま検知された場合(誤検知が発生した場合等)にまで認知機能の異常警告が出されるのを防止することができる。
【0124】
なお、本実施形態に係る住宅1は、本発明に係る建物の実施の一形態である。
また、本実施形態に係る電力センサ110は、本発明に係る行動検出部の実施の一形態である。
また、本実施形態に係るサーバ120は、本発明に係る認知機能判定部の実施の一形態である。
また、本実施形態に係る活動時間帯判定は、本発明に係る行動時間判定処理の実施の一形態である。
また、本実施形態に係る就寝~起床時間帯判定は、本発明に係る睡眠時間判定処理の実施の一形態である。
また、本実施形態に係る週毎処理は、本発明に係る行動回数判定処理の実施の一形態である。
また、本実施形態に係る端末130は、本発明に係る報知部の実施の一形態である。
また、本実施形態に係る家族P2は、本発明に係る報知対象者の実施の一形態である。
【0125】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された発明の技術的思想の範囲内で適宜の変更が可能である。
【0126】
例えば、本実施形態に係る認知機能判定システム100は、高齢者を対象者P1とした例を示したが、本発明は高齢者に限るものではなく、様々な人を対象者P1とすることができる。
【0127】
また本実施形態では、電力センサ110(行動検出部)は住宅1に設けられるものとしたが、本発明はこれに限るものではなく、対象者P1が利用する種々の建物に設けることも可能である。すなわち、住宅1に限らず、その他種々の建物、施設等において、認知機能の異常を検出することが可能である。
【0128】
また本実施形態では、サーバ120(クラウド上に設けられた仮装サーバ等)が各種処理を行う例を示したが、本発明はこれに限るものではなく、各種処理を実行する主体は任意に変更することが可能である。例えば、住宅1に設けられたホームサーバ、パソコン、携帯型端末等により実行することも可能である。
【0129】
また本実施形態では、対象者P1の認知機能の異常が検出された場合、端末130にその旨を報知する例を示したが、さらに、家族P2等がその異常を確認し、問題ない(異常ではない)と判断した場合には、端末130等を用いてその旨をサーバ120に伝達する構成とすることも可能である。このように、家族P2等が異常の有無を確認してサーバ120へとフィードバックすることで、サーバ120は対象者P1の行動をより正確に学習することができる。これによって、認知機能の異常の検出をより精度よく行うことができる。
【0130】
また本実施形態では、対象者P1の行動が繰り返して異常等と判定された場合に家族P2にその旨を報知する例を示したが(
図9参照)、本発明はこれに限るものではなく、例えば対象者P1の行動が一度でも異常等と判定された場合には、すぐに家族P2に報知することも可能である。
【0131】
また本実施形態で例示した各処理(日毎処理、週毎処理、週間結果通知及び月間結果通知)の対象となる期間は、任意に変更することも可能である。
【符号の説明】
【0132】
100 認知機能判定システム
110 電力センサ
120 サーバ
130 端末