(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022184405
(43)【公開日】2022-12-13
(54)【発明の名称】冷却貯蔵庫
(51)【国際特許分類】
F25D 11/00 20060101AFI20221206BHJP
F25B 13/00 20060101ALI20221206BHJP
【FI】
F25D11/00 101B
F25B13/00 M
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021092229
(22)【出願日】2021-06-01
(71)【出願人】
【識別番号】000194893
【氏名又は名称】ホシザキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001036
【氏名又は名称】弁理士法人暁合同特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】春日井 正樹
(72)【発明者】
【氏名】内山 千佳
【テーマコード(参考)】
3L045
3L092
【Fターム(参考)】
3L045AA02
3L045BA01
3L045CA02
3L045DA02
3L045EA01
3L045LA06
3L045MA02
3L045MA05
3L045MA06
3L045MA12
3L045NA01
3L045PA02
3L045PA03
3L045PA04
3L092AA11
(57)【要約】
【課題】圧縮機を安定的に運転することを目的とする。
【解決手段】冷却貯蔵庫10は、被貯蔵物を収容可能な貯蔵庫本体12と、速度可変の電動機23を具備する圧縮機22と、凝縮器26と、を有する冷却装置18と、凝縮器26における冷媒の凝縮温度を検出可能な温度センサ25と、電動機23を制御する制御部20と、を備え、制御部20は、温度センサ25の検出温度T25が閾値温度Tth1以上の場合に、電動機23の速度が速度可変域内における下限値であるか否かを判定し、電動機23の速度が下限値である場合には、電動機23の速度を増大させる。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被貯蔵物を収容可能な貯蔵庫本体と、
前記貯蔵庫本体の内部を冷却する冷却装置であって、速度可変の電動機を具備し冷媒ガスを圧縮する圧縮機と、前記圧縮機からの前記冷媒ガスを凝縮する凝縮器と、を有する冷却装置と、
前記凝縮器における凝縮温度を検出可能な温度センサと、
前記電動機を制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、
前記温度センサの検出温度が閾値温度以上の場合に、前記電動機の速度が速度可変域内における下限値であるか否かを判定し、
前記電動機の速度が前記下限値である場合には、前記電動機の速度を増大させる冷却貯蔵庫。
【請求項2】
前記制御部は、前記電動機の速度が前記下限値である場合には、前記電動機の速度を所定の設定時間の間増大させる請求項1に記載の冷却貯蔵庫。
【請求項3】
前記電動機の速度は、段階的に変化するものとされ、
前記制御部は、前記電動機の速度が前記下限値である場合には、前記電動機の速度を一段階上の速度に増大させる請求項1または請求項2に記載の冷却貯蔵庫。
【請求項4】
前記貯蔵庫本体の内部の温度を検出する庫内温度センサを備え、
前記制御部は、
前記庫内温度センサによって検出される庫内温度が設定温度以上の場合に、前記庫内温度の単位時間における変化を示す温度勾配に基づき前記電動機の速度を決定し、
その後に前記温度センサの検出温度が閾値温度以上である場合には、決定された前記速度が前記下限値であるか否かを判定する請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の冷却貯蔵庫。
【請求項5】
前記温度センサは、前記凝縮器の凝縮管に設けられる凝縮器温度センサであり、
前記制御部は、前記凝縮器温度センサの温度が第1閾値温度以上の場合に、前記電動機の速度が前記下限値であるか否かを判定する請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の冷却貯蔵庫。
【請求項6】
前記凝縮器は、空冷式熱交換器であり、
前記温度センサは、前記貯蔵庫本体の周囲の外部温度を検出する外部温度センサであり、
前記制御部は、前記外部温度センサの温度が第2閾値温度以上の場合に、前記電動機の速度が前記下限値であるか否かを判定する請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の冷却貯蔵庫。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本技術は、冷却貯蔵庫に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、冷凍回路を構成する圧縮機として、速度可変のインバータ圧縮機を用いることが知られており、その一例が特許文献1に開示されている。特許文献1に記載の圧縮機は、冷却貯蔵庫に用いられ、圧縮機に内蔵される電動機(モータ)の回転速度の上限値が庫内温度、又は室温に基づき制御されている。より詳しくは、庫内温度又は室温が低く、圧縮機の運転余裕度が高い状態では、電動機の回転速度の上限値が高くなるように制御されることで、冷却能力を最大限に発揮できるようになっている。一方で、庫内温度又は室温が高く、圧縮機の運転余裕度が低い状態では、回転速度の上限値が低くなるように制御されることで、冷却能力を十分に活用しつつ、電動機等に流れる電流を抑えることができるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところでインバータ圧縮機では一般に、構成部品に過負荷がかかって信頼性不足となる事態(例えば、構成部品の寿命低下、異常音の発生)を避けるために、使用する冷媒圧力の許容上限値が規定されている。使用冷媒圧力の許容上限値は、電動機の回転速度が低い場合には小さく規定されており、許容上限値を超えてしまうと、過負荷を避けて構成部品を保護するために、電動機が自動停止することがある。電動機の自動停止は、電動機が使用冷媒圧力の許容上限値が小さい状態、すなわち可変速度域における下限値で運転されている場合に特に生じやすい。電動機が自動停止すると、圧縮機が予期せずに停止し、安定的に運転されない事態が生じてしまう。
【0005】
本願明細書に記載の技術は上記のような実情に基づいて完成されたものであって、圧縮機を安定的に運転することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本技術に関わる冷却貯蔵庫は、被貯蔵物を収容可能な貯蔵庫本体と、前記貯蔵庫本体の内部を冷却する冷却装置であって、速度可変の電動機を具備し冷媒ガスを圧縮する圧縮機と、前記圧縮機からの前記冷媒ガスを凝縮する凝縮器と、を有する冷却装置と、前記凝縮器における凝縮温度を検出可能な温度センサと、前記電動機を制御する制御部と、を備え、前記制御部は、前記温度センサの検出温度が閾値温度以上の場合に、前記電動機の速度が速度可変域内における下限値であるか否かを判定し、前記電動機の速度が前記下限値である場合には、前記電動機の速度を増大させる。
【0007】
凝縮器において、圧縮機からの冷媒ガスは冷却によって凝縮温度まで温度低下すると凝縮される。凝縮温度は、冷媒圧力と相関があることから、温度センサによって凝縮温度を検出することで、圧縮機の使用冷媒圧力が許容上限値を超えているか否かを間接的に検知できる。そこで制御部は、温度センサの検出温度が閾値温度以上の場合には、圧縮機において冷媒圧力が許容上限値を超えている状態(過負荷状態)である可能性があるため、電動機の速度が速度可変域内における下限値であるか否かを判定する。その結果、電動機の速度が下限値である場合には、制御部は電動機の速度を増大させる。電送機の速度が増大すると、圧縮機における使用冷媒圧力の許容上限値が大きくなり、圧縮機は過負荷状態でなくなる。これにより電動機は予期せず自動停止することがなくなり、圧縮機を安定的に運転できる。
【0008】
また、前記制御部は、前記電動機の速度が前記下限値である場合には、前記電動機の速度を所定の設定時間の間増大させてもよい。このようにすれば、電動機の速度が下限値でない状態が設定時間に亘って確実に確保され、電動機が自動停止する事態を確実に抑制できる。
【0009】
また、前記電動機の速度は、段階的に変化するものとされ、前記制御部は、前記電動機の速度が前記下限値である場合には、前記電動機の速度を一段階上の速度に増大させてもよい。このようにすれば、電動機の速度は容易に確実に増大され、電動機が自動停止する事態を確実に抑制できる。
【0010】
また、前記貯蔵庫本体の内部の温度を検出する庫内温度センサを備え、前記制御部は、
前記庫内温度センサによって検出される庫内温度が所定の設定温度以上の場合に、前記庫内温度の単位時間における変化を示す温度勾配に基づき前記電動機の速度を決定し、その後に前記温度センサの検出温度が前記閾値温度以上である場合には、決定された前記速度が前記下限値であるか否かを判定してもよい。このようにすれば、庫内温度の温度勾配に基づいて電動機の速度を決定することで、庫内温度を設定温度に合わせて調整しやすくできる。また、電動機を必要以上に高速で駆動させずに済むため、無駄な電力を消費せずに済むようになる。さらに、このように決定された電動機の速度が下限値であるか否かを判定することで、上記した本技術を用いて電動機が自動停止してしまう事態を抑制できる。
【0011】
また、前記温度センサは、前記凝縮器の凝縮管に設けられる凝縮器温度センサであり、
前記制御部は、前記凝縮器温度センサの温度が第1閾値温度以上の場合に、前記電動機の速度が前記下限値であるか否かを判定してもよい。このようにすれば、凝縮器温度センサによって凝縮器の凝縮温度を容易に検出できる。
【0012】
また、前記凝縮器は、空冷式熱交換器であり、前記温度センサは、前記貯蔵庫本体の周囲の外部温度を検出する外部温度センサであり、前記制御部は、前記外部温度センサの温度が第2閾値温度以上の場合に、前記電動機の速度が前記下限値であるか否かを判定してもよい。凝縮器が空冷式熱交換器の場合、安定運転時の冷媒の凝縮温度は一般に、外気温と相関があることが知られている。そこで外部温度センサを用いると、凝縮器の凝縮温度を容易に間接的に検出できる。
【発明の効果】
【0013】
本技術によれば、圧縮機を安定的に運転できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図4】電動機の制御に関連する電気的構成を示すブロック図
【
図6】実施形態2に係る電動機の制御に関するフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0015】
<実施形態1>
実施形態1に係る4ドア式の冷凍庫10(冷却貯蔵庫の一例)を
図1から
図5を参照して説明する。冷凍庫10は、
図1から
図2に示すように、貯蔵庫本体12と、扉14と、機械室16と、冷却装置18と、を備える。貯蔵庫本体12は、
図2に示すように、前方に開口する断熱箱体であって、外箱30と内箱32との間に断熱材が発泡充填されて構成されている。扉14は、貯蔵庫本体12の開口12Aを開閉可能にヒンジ部材によって取り付けられている。扉14は、観音開き式に左右に対をなす2つずつが上下に2組設けられている。
【0016】
貯蔵庫本体12の内部の大部分は、
図2に示すように貯蔵室34となっており、貯蔵室34内には、食材等の被貯蔵物が載置される複数の棚38が設けられている。貯蔵庫本体12の上部には、冷却器室36が設けられており、冷却器室36内には、冷却器(蒸発器)28及び循環ファン(庫内ファン)44が収容されている。貯蔵室34と冷却器室36とは、冷却ダクト40によって仕切られている。
【0017】
冷却ダクト40は、
図2に示すように、後方に向けて下方に傾斜する傾斜部42を備えている。傾斜部42には、吸込口42A及び吹出口42Bが設けられている。冷却器室36内における、吸込口42Aの上方には、循環ファン44が設けられている。さらに循環ファン44の上方には、庫内温度センサ46(具体的には温度サーミスタ)が設けられている。循環ファン44及び庫内温度センサ46の後方には、冷却器28が配されている。冷却ダクト40の傾斜部42によって、貯蔵室34と冷却器室36とが仕切られると共に、冷却器28に付着した霜が融解された際に生じる除霜水が受け止められるようになっている。傾斜部42の後端部には、排出管48が接続されており、除霜水は、下方に延びる排出管48を通って貯蔵庫本体12の外部に排出される。
【0018】
機械室16は、
図2から
図3に示すように、天面が開放する形で貯蔵庫本体12の上方に設けられている。機械室16には、冷却装置18を構成する機械類(圧縮機22及び凝縮器26等)、電装箱50、オペレーションボックス52等が収容されている。機械室16の前面の一部には、
図1に示すように開口が設けられており、その開口から、オペレーションボックス52の前面に設けられた表示画面54及び操作部56が外部に露出している。表示画面54には各種情報が表示される。操作部56は、使用者の操作によって冷凍庫10の各種設定等を変更するためのボタンである。
【0019】
冷却装置18は、貯蔵庫本体12の内部(貯蔵室34)を冷却する装置である。冷却装置18は、
図2に示すように、圧縮機22と、凝縮器ファン24と、凝縮器26と、冷却器28と、を備える。圧縮機22、凝縮器26、及び冷却器28は、配管21によって連結されており、冷媒を循環させて、既知の冷凍サイクルを形成している。なお、凝縮器26と冷却器28との間には、膨張弁(キャビラリーチューブ)が介在しているものとされる。
【0020】
圧縮機22は、速度可変の電動機23を備えるインバータ圧縮機である。圧縮機22は、電動機23を動力源として冷媒ガスを吸引して圧縮し、高温高圧の冷媒ガスを吐出する。電動機23はモータであり、例えば交流誘電モータや直流ブラスレスモータを用いることができる。電動機23の回転速度V23が大きくなると、圧縮機22が吸引、吐出する冷媒ガスの量は増大し、冷凍サイクルの冷媒循環量が増大するため、冷却装置18の冷却能力を高められる。一方で、電動機23の回転速度V23が小さくなると、冷凍サイクルの冷媒循環量が減少するため、冷却装置18の冷却能力は低くなる。また、電動機23の回転速度V23が小さいほど電動機23等の消費電力は小さくなり、省エネルギー化できる。本実施形態においては、電動機23の回転速度は7段階(具体的には、30rps(round per second),35rps,40rps,47rps,55rps,65rps,76rps)に可変に構成されている。
【0021】
凝縮器26は、圧縮機22で圧縮された冷媒ガスを凝縮器ファン24の送風により冷却して液化させる。凝縮器26は、
図2から
図3に示すように、凝縮管26Aと、多数のフィンと、これらを収容する凝縮器ボックス26Bと、を備える。凝縮管26Aは、左右方向に延在しつつ多重に折り返される形状をなしている。凝縮管26Aは、凝縮器ボックス26B内のフィンを貫通して凝縮器ボックス26Bの側面を突き抜け、U字状に折り返されている。
【0022】
凝縮器ファン24は、
図2から
図3に示すように、凝縮器ボックス26Bの後方に設けられている。凝縮器ファン24が作動すると、外気が凝縮器ボックス26B内を前から後ろに通過して、凝縮管26Aが空冷される。凝縮管26A内の冷媒は、圧縮機22側の入口付近では高温ガスであり、凝縮管26Aに沿って進むにつれて冷却が進み温度低下する。そして、冷媒ガスの温度が圧力に応じた飽和温度(凝縮温度)まで低下すると、液体に凝縮し始める。冷媒ガスの液化率は、凝縮管26Aに沿って進むにつれて増大し、冷却器28側の出口付近では冷媒液に凝縮された状態(液化率100%)となる。
【0023】
凝縮器26の凝縮管26Aには、
図2から
図3に示すように、凝縮器温度センサ25(具体的には温度サーミスタ)がサーミスタホルダに収容される形で取り付けられている。凝縮器温度センサ25は、凝縮管26Aの入口と出口の間の中央部を含む中央配管に取り付けられている。中央配管における凝縮管26A内の冷媒は、少なくとも一部が凝縮されて液化しており、その温度は凝縮温度と一致している。従って、凝縮器温度センサ25は、冷媒の凝縮温度を検出していることとなる。また、冷媒の凝縮温度は冷媒圧力に応じて変化することから、凝縮器温度センサ25によって冷媒圧力を間接的に検出可能と言える。
【0024】
凝縮器ボックス26Bの前面開口には、
図3に示すように、エアフィルタ26Cが取り付けられている。エアフィルタ26Cによって凝縮器ボックス26B内に塵埃等の異物が侵入しフィン等に付着してしまう事態が抑制される。凝縮器温度センサ25は、エアフィルタ26Cの目詰まりを検知する目詰まり温度センサを兼ねている。エアフィルタ26Cが目詰まりすると、凝縮管26Aが空冷されにくくなるため、凝縮器温度センサ25の温度が正常時よりも上昇してしまう。この温度上昇により目詰まり異常を検知することもできる。
【0025】
冷却器28は、凝縮器26からの冷媒液を膨張弁(キャビラリーチューブ)により減圧してから気化させることで、気化熱によって冷却器28を通過する空気を冷却する。冷却器28からの冷媒ガスは、圧縮機22に帰還される。貯蔵室34の内気は、
図2に白抜き矢線で示すように、循環ファン44によって吸込口42Aから冷却器室36内に吸い込まれる。吸い込まれた内気は、冷却器28によって冷却され、吹出口42Bから貯蔵室34内に吹き出される。これにより、貯蔵室34に収容された被貯蔵物が冷却される。また、循環ファン44によって吸い込まれた内気が庫内温度センサ46に当たることで、貯蔵室34内の温度(庫内温度)が検出される。
【0026】
電装箱50内には、マイクロコンピュータを備える制御基板が収容されている。オペレーションボックス52内には、操作基板が収容され、操作基板上には、貯蔵庫本体12の周囲の外部温度を検出する外部温度センサ64(具体的には温度サーミスタ)が実装されている。外部温度センサ64は、操作基板以外の場所に設けられていても構わないが、操作基板上に実装することで、外部温度センサ64と操作基板とを接続する信号線ケーブルを配索せずに済むようになる。なお、基板の発熱等によって外部温度センサ64の検出温度は実際の貯蔵庫本体12の周囲の外部温度よりも高くなる可能性があるが、それを考慮して用いれば問題はない。
【0027】
冷凍庫10には、各種装置を電気的に制御する制御部20が設けられている。制御部20は、電装箱50内の制御基板、及びオペレーションボックス52内の操作基板により構成されている。電装箱50内の制御基板と、オペレーションボックス52内の操作基板とは通信接続されている。制御部20は、圧縮機22、凝縮器ファン24、循環ファン44、及びデフロストヒータ等を制御することで、冷却運転、及び冷却器28に付着した霜を融解する除霜運転を実行する。
【0028】
制御部20は、
図4に示すように、凝縮器温度センサ25、庫内温度センサ46、外部温度センサ64、記憶部68、及びインバータ回路70と電気的に接続されている。記憶部68はメモリであり、制御部20に内蔵されていてもよい。記憶部68には、目標とする冷凍温度である設定温度Ts、及び設定温度Tsの時間変化のテーブル等が記憶されている。インバータ回路70は、電装箱50内に収容されており、圧縮機22の電動機23と接続されている。
【0029】
制御部20は、冷却運転において、凝縮器温度センサ25によって検出された凝縮器温度T25、及び庫内温度センサ46によって検知された庫内温度T46に基づき、インバータ回路70を通じて、電動機23の回転速度V23を制御する。より詳しくは、制御部20は、インバータ回路70に対して周波数指令信号を供給し、インバータ回路70は、この周波数指令信号に基づいて、電動機23に対して可変周波数の交流信号を供給する。電動機23は、インバータ回路70からの交流信号の周波数に応じた速度で回転駆動される。以下、制御部20による電動機23の制御について、
図5のフローチャートを参照して説明する。
【0030】
制御部20は、使用者の操作等によって冷却運転が開始されると、凝縮器ファン24及び循環ファン44を作動させる。また制御部20は、
図5に示すように、庫内温度センサ46によって検出された庫内温度T46を読み取り、これを記憶部68内の設定温度Tsと比較する(S11)。設定温度Tsは、目標とする冷凍温度であり、初期設定では所定の温度が設定されているが、使用者が操作部56を操作することによって適宜変更可能である。庫内温度T46が設定温度Ts未満である場合には(S11のNO)、目標とする冷凍温度より低温となっていることから、インバータ回路70の動作を停止させて、電動機23の回転速度V23を0rpsにし、圧縮機22を停止する(S12)。一方で、庫内温度T46が設定温度Ts以上である場合には(S11のYES)、目標とする冷凍温度まで低下していないことから、インバータ回路70を通じて、電動機23を所定の回転速度V23で駆動して圧縮機22を作動する(S13)。
【0031】
ここでステップS13では、電動機23の回転速度V23は、庫内温度T46の変化(温度勾配)に基づき、可変速度域(本実施形態では30~76rpsの範囲)内において最適値が決定される。より詳しくは、庫内温度T46の温度勾配が、記憶部68内の設定温度Tsの時間変化のテーブルから導き出される温度勾配(目標の温度勾配)よりも小さいほど高い回転速度V23が決定される。例えば、多量の被貯蔵物が収容されて庫内負荷が大きい場合には、庫内温度T46の温度勾配は、目標の温度勾配に比べてより小さくなりがちである。その際には、電動機23を高速回転させて、冷却装置18の冷却能力を高める。一方で、庫内温度T46の温度勾配が、目標の温度勾配に比べて大きい場合には、電動機23の回転速度V23を低速回転させて冷却装置18の冷却能力を低くする。このようにすることで、庫内温度T46を設定温度Tsの時間変化に追従しやすくできる。また、電動機23を必要以上に高速で回転させずに済むため、無駄な電力を消費せずに済むようになる。
【0032】
ところで、このように電動機23の回転速度V23を可変に制御する際、回転速度V23が可変速度域において下限値(具体的には段階1の30rps)となる場合に、電動機23が自動停止してしまい、圧縮機22が予期せずに停止してしまうことがある。これは既述したように、回転速度V23が下限値である場合、仕様によって規定されている使用冷媒圧力の許容上限値を超えやすく、当該許容上限値を超えてしまうと信頼性確保のために電動機23が自動停止することに起因する。
【0033】
そこで制御部20は、
図5に示すように、ステップS13に続くステップS15において、圧縮機22の使用冷媒圧力が許容上限値を超えているか否かを、凝縮器温度センサ25の温度T25が所定の第1閾値温度Tth1(例えば40℃)以上であるか否かによって判定する。冷媒圧力は冷媒温度(凝縮温度)と相関があることから、事前の試験によって電動機23が自動停止する凝縮器温度センサ25の温度T25(第1閾値温度Tth1)を把握すれば、その時点では、圧縮機22の使用冷媒圧力は許容上限値を超えている状態にあると言える。本実施形態では、事前の試験において凝縮器温度センサ25の温度T25が40℃を超えると電動機23が確実に停止してしまったため、第1閾値温度Tth1は40℃と設定している。
【0034】
制御部20は、凝縮器温度センサ25の温度T25が第1閾値温度Tth1以上である場合(S15のYES)には、電動機23の回転速度V23が下限値(30rps、段階1)であるか否かを判定する(S17)。制御部20は、インバータ回路70に供給している周波数指令信号の値によって、回転速度V23が下限値であるか否かを判定する。その結果、回転速度V23が下限値である場合には(S17のYES)、回転速度V23を所定の設定時間(例えば90秒間)の間、一段階上の段階2(35rps)に増大させる(S19)。回転速度V23が増大すると、圧縮機22における使用冷媒圧力の許容上限値が大きくなるため、許容上限値を超えてしまう状態(過負荷状態)を回避することができる。その結果、電動機23は自動停止せず、圧縮機22の安定的な運転が継続される。
【0035】
また、ステップS19では、設定時間(90秒間)の間、回転速度V23は段階2(35rps)に増大される。これにより、回転速度V23が下限値でない状態が設定時間に亘って確実に確保され、電動機23が自動停止する事態を確実に抑制できるようになっている。
【0036】
制御部20は、凝縮器温度センサ25の温度T25が第1閾値温度Tth1未満である場合(S15のNO)、電動機23の回転速度V23が下限値(30rps)でない場合(S17のNO)、ステップS19の終了後、及びステップS12の終了は、再度ステップS11に戻り、上記した制御を冷却運転が終了するまで繰り返す。
【0037】
<実施形態2>
実施形態2に係る制御部20による電動機23の制御について、
図6のフローチャートを参照して説明する。実施形態2では、圧縮機22の使用冷媒圧力が許容上限値を超えているか否かを、外部温度センサ64の温度T64に基づき判定する点が実施形態1と異なる。実施形態2において、実施形態1と同様の構成及び制御、並びに作用効果について重複する説明は省略する。
【0038】
空冷式熱交換器である凝縮器26において、安定運転時の冷媒の凝縮温度は一般に、外気温と相関があることが知られている。本実施形態では、凝縮器温度センサ25の温度T25=外部温度センサ64の温度T64+5℃(一定温度)という関係が成立している。そこで、実施形態1における凝縮器温度センサ25の代わりに、実施形態2では外部温度センサT64を用いて凝縮器26の凝縮温度を間接的に検出している。より詳しくは、
図6に示すように、外部温度センサ64の温度T64が第2閾値温度Tth2(例えば35℃)以上であるか否かを判定している(S115)。
【0039】
<他の実施形態>
本技術は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本技術の技術的範囲に含まれる。
【0040】
(1)電動機23の回転速度V23の可変速度域、可変段階数、及び各段階の速度は、要求仕様によって適宜変更可能である。また、回転速度V23は、連続的に可変となるように構成されていても構わない。
【0041】
(2)凝縮器温度センサ25は、凝縮温度を検出可能な位置に設けられていれば、凝縮管26Aの中央配管以外に取り付けられていても構わない。また、凝縮器26の凝縮温度を検出可能であれば、凝縮器温度センサ25や外部温度センサ64以外の温度センサを用いても構わない。
【0042】
(3)
図5及び
図6に示す制御では、電動機23の回転速度V23が可変速度域における下限値である場合に、回転速度V23を増大することで、圧縮機22における使用冷媒圧力の許容上限値を超えてしまう状態(過負荷状態)を回避することを示したが、このような制御は下限値以外の場合にも適用可能である。例えば、電動機23の回転速度V23毎に、使用冷媒圧力の許容上限値が規定されている場合には、回転速度V23が上限値でない限りにおいて、回転速度V23を増大する制御を行っても良い。
【0043】
(4)本技術は、冷凍庫10以外の冷却貯蔵庫(例えば冷蔵庫)、さらには冷却貯蔵庫以外の冷却装置18を備える機器(例えば製氷機)に対しても適用可能である。
【符号の説明】
【0044】
10:冷凍庫(冷却貯蔵庫)、12:貯蔵庫本体、18:冷却装置、20:制御部、22:圧縮機、23:電動機、25:凝縮器温度センサ、26:凝縮器、26A:凝縮管、46:庫内温度センサ、64:外部温度センサ、Tth1:第1閾値温度、Tth2:第2閾値温度、Ts:設定温度