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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022184411
(43)【公開日】2022-12-13
(54)【発明の名称】シート表皮材及びそれを含む座席
(51)【国際特許分類】
   D04D 7/00 20060101AFI20221206BHJP
   D04B 21/14 20060101ALI20221206BHJP
   D04B 21/06 20060101ALI20221206BHJP
   A47C 31/02 20060101ALI20221206BHJP
   A47C 27/12 20060101ALI20221206BHJP
【FI】
D04D7/00
D04B21/14 Z
D04B21/06
A47C31/02 J
A47C27/12 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021092239
(22)【出願日】2021-06-01
(71)【出願人】
【識別番号】000000033
【氏名又は名称】旭化成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100108903
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 和広
(74)【代理人】
【識別番号】100142387
【弁理士】
【氏名又は名称】齋藤 都子
(74)【代理人】
【識別番号】100135895
【弁理士】
【氏名又は名称】三間 俊介
(72)【発明者】
【氏名】山室 美紗子
【テーマコード(参考)】
3B096
4L002
4L049
【Fターム(参考)】
3B096AD04
4L002AA07
4L002AB02
4L002AC06
4L002AC07
4L002CB01
4L002CB04
4L002DA00
4L002EA00
4L002EA05
4L002EA07
4L002FA06
4L049AA06
4L049AA18
4L049BA26
4L049BA27
4L049DA23
4L049EA00
(57)【要約】
【課題】立体編物の連結糸のヨコ倒れ防止性、クッション性、意匠性、及びすべりにくさに優れる、立体編物を含むシート表皮材の提供。
【解決手段】表層と裏層の表裏二層の編地と、該表裏二層の編地同士を連結する連結糸とから構成される立体編物を含むシート表皮材であって、該立体編物の少なくとも1層に対し刺繍又は縫製が施されており、該刺繍又は縫製により表面編地と裏面編地が接合された接合部を少なくとも1つ有する、シート表皮材、並びに該シート表皮材を含む、座席。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
表層と裏層の表裏二層の編地と、該表裏二層の編地同士を連結する連結糸とから構成される立体編物を含むシート表皮材であって、該立体編物の少なくとも1層に対し刺繍又は縫製が施されており、該刺繍又は縫製により表面編地と裏面編地が接合された接合部を少なくとも1つ有する、シート表皮材。
【請求項2】
前記接合部を起点とした立体編物の山高さの平均が1300μm以上5000μm以下である、請求項1に記載のシート表皮材。
【請求項3】
前記接合部のうち最も糸密度が大きい箇所を中心とした18mm×24mmの範囲において、前記接合部の面積率が10~70%である、請求項1又は2に記載のシート表皮材。
【請求項4】
前記表層の編地がマルチフィラメントを含み、該表層の編地の編目緻密度が11000~21000である、請求項1~3のいずれか1項に記載のシート表皮材。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項に記載のシート表皮材を含む、座席。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はシート表皮材及びそれを含む座席に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、各種椅子や座席のクッション材として、ウレタンフォームを用いるのが主流であった。しかし、ウレタンフォームは製造中に使用する薬品の取り扱いが困難である問題や、廃棄処理した場合に有毒ガスを発生する問題、リサイクルが困難である問題など、様々な問題を抱えていた。また、発泡ウレタン製のクッション材は通気性・放熱性に乏しく、着座した場合にムレや汗のべたつきを感じ易く、快適な座り心地が得られなかった。そのため、近年ではウレタンフォームに代わるクッション材として立体編み物等が用いられるようになってきた。
【0003】
表裏二層の編地と該二層の編地を連結する連結糸から構成される立体編物は、優れた通気性や圧縮弾性回復性等からクッション材等各種用途に利用されている。このような用途に用いられる場合、
a)立体的な形を付ける
b)立体編物同士を積層しクッション性をアップさせる
c)立体編物以外の素材と積層する
等の目的により縫製される場合がある。以下の特許文献1、2には、積層物を縫製することにより、圧力分散性に優れ、かつ積層部の一体感がある縫製品が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006-257622号公報
【特許文献2】特開2006-219785号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1、2に記載の縫製品は、圧力分散性には優れているものの、立体編物の問題点である連結糸のせん断変形により表面編地と裏面編地が立体編物の長さ方向(ウエール列に沿った方向)にずれる「ヨコ倒れ」現象の防止性については考慮されておらず、また、いずれも表皮材として使用した際の意匠性に劣り、すべりにくさについても考慮されていない。
【0006】
以上の技術水準に鑑み、本発明が解決しようとする課題は、立体編物の連結糸のヨコ倒れ防止性、クッション性、意匠性、及びすべりにくさに優れる、立体編物を含むシート表皮材を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意研究し実験を重ねた結果、立体編物を含むシート表皮材において1層に対し刺繍又は縫製を施し、該刺繍又は縫製により表面編地と裏面編地が接合された部分を存在させることにより、上記課題が解決されることを予想外に見出し、本発明を完成するに至ったものである。
【0008】
すなわち、本発明は以下の通りのものである。
[1]表層と裏層の表裏二層の編地と、該表裏二層の編地同士を連結する連結糸とから構成される立体編物を含むシート表皮材であって、該立体編物の少なくとも1層に対し刺繍又は縫製が施されており、該刺繍又は縫製により表面編地と裏面編地が接合された接合部を少なくとも1つ有する、シート表皮材。
[2]前記接合部を起点とした立体編物の山高さの平均が1300μm以上5000μm以下である、前記[1]に記載のシート表皮材。
[3]前記接合部のうち最も糸密度が大きい箇所を中心とした18mm×24mmの範囲において、前記接合部の面積率が10~70%である、前記[1]又は[2]に記載のシート表皮材。
[4]前記表層の編地がマルチフィラメントを含み、該表層の編地の編目緻密度が11000~21000である、前記[1]~[3]のいずれかに記載のシート表皮材。
[5]前記[1]~[4]のいずれかに記載のシート表皮材を含む、座席。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係るシート表皮材は、クッション性、連結糸のヨコ倒れ防止性、意匠性、及びすべり止め性に優れる座席である。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本実施形態における、柄の一例である。
図2】本実施形態における、柄の一例である。
図3】本実施形態における、柄の一例である。
図4】本実施形態における、柄の一例である。
図5】本実施形態における、柄の一例である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。
本発明の1の実施形態は、表層と裏層の表裏二層の編地と、該表裏二層の編地同士を連結する連結糸とから構成される立体編物を含むシート表皮材であって、該立体編物の少なくとも1層に対し刺繍又は縫製が施されており、該刺繍又は縫製により表面編地と裏面編地が接合された部分を少なくとも1つ有することを特徴とする、シート表皮材である。
【0012】
本実施形態のシート表皮材は、表裏二層の編地と該二層の編地を連結する連結糸から構成される立体編物を含むシート表皮材である。かかる立体編物は、相対する2列の針床を有する経編機、丸編機、横編機等により編成されることができる。編機のゲージは9~28ゲージが好ましい。
【0013】
本実施形態のシート表皮材は、立体編物の少なくとも1層に対し刺繍又は縫製が施されていることを特徴とする。刺繍又は縫製を施すには任意の糸と手法を用いることができ、柄やステッチの形状に応じて刺繍ミシン、本縫いミシン、千鳥ミシン等も使用することができる。
【0014】
本実施形態のシート表皮材は、刺繍又は縫製により表面編地と裏面編地が接合された部分を少なくとも1つ有することを特徴とする。刺繍又は縫製により表面編地と裏面編地が接合された部分を少なくとも1つ有すると、立体的な形が形成されることになり、それによりクッション性やすべり防止性に優れ、さらには連結糸の可動域が限定されることによりヨコ倒れ防止性にも優れたものとなる。接合部が全くない場合、連結糸の可動域が制限されずヨコ倒れ防止性が得られず、また、すべり防止性にも劣るものとなる。
【0015】
本実施形態のシート表皮材は、刺繍又は縫製により表面編地と裏面編地が接合された部分を起点とした立体編物の山高さの平均が1300μm以上5000μm以下であることが好ましく、より好ましくは1800μm以上4500μm以下である。具体的な測定方法は後述する。1300μm以上であると立体編物のクッション性が十分なものとなり、また、すべり防止性にも優れるものとなる。5000μm以下であると連結糸の可動域が制限されることによりヨコ倒れ防止性に優れたものとなる。
【0016】
本実施形態のシート表皮材は、刺繍又は縫製により表面編地と裏面編地が接合された部分の最も糸密度が大きい箇所を中心とした18mm×24mmの範囲において、接合部分の面積率が10~70%であることが好ましい。具体的な測定方法は後述する。接合部分の面積率が10%以上であると連結糸の可動域が制限されずることによりヨコ倒れ防止性が得られ、また、意匠性やすべり防止性にも優れるものとなる。他方、接合部分の面積率が70%以下であると立体編物のクッション性が優れるものとなるため好ましく、また、70%以下であると人が着座した際にシート表皮材と人体が点接触とならず、耐摩耗性に優れるものとなり、長時間使用時の外観変化が少なくなるため、好ましい。
【0017】
本実施形態のシート表皮材では、表層の編地がマルチフィラメント糸で構成される場合、下式:
M=N×√D
{式中、Nは、2.54cm角(6.45cm)当たりの表層の編地の編目数(個)であり、そしてDは、表層の編地の1個の編目を形成するマルチフィラメント糸の総繊度(デシテックス)である}で表される、編目1個の締まり具合を示す編目緻密度Mが、11000~21000であることが好ましく、より好ましくは12000~19000である。編目緻密度が11000以上であれば、編目を形成するマルチフィラメント糸の単糸が摩擦等の外力により動きにくくなり毛羽立ちにくくなる。また21000以下であれば、ソフトな風合となり、また編立性が良好であり、さらには通気性が十分に確保できる。尚、「表層の編地の1個の編目を形成するマルチフィラメント糸の総繊度」とは、挿入編み等の編目を形成しない繊維を除外した、編目を形成するマルチフィラメント糸のみの総繊度を指す。
【0018】
本実施形態のシート表皮材を構成する立体編物の連結糸には、モノフィラメント糸又はマルチフィラメント糸を使用できるが、シート表皮材の圧縮弾性率を適度な範囲とし、圧縮回復性を良好にする点からモノフィラメント糸を用いることが好ましい。連結糸に用いる繊維素材としては、ポリトリメチレンテレフタレート繊維、ポリブチレンテレフタレート繊維、ポリエチレンテレフタレート繊維、ポリアミド繊維、ポリプロピレン繊維、ポリ塩化ビニル繊維、ポリエステル系エラストマー繊維等、任意の素材の繊維を用いることができる。このうち、ポリエチレンテレフタラート繊維を用いると、シート表皮材のリサイクル性が向上するため好ましい。繊維の断面形状は、丸型、三角、L型、T型、Y型、W型、八葉型、偏平、ドッグボーン型等の多角形型、多葉型、中空型、不定形なものでもよいが、丸型断面がシート表皮材のクッション性の耐久性を向上させる上で好ましい。また、シート表皮材が圧縮される際に連結糸どうしが擦れ合って発生する耳障りな音を防止するには、連結糸にモノフィラメント糸とマルチフィラメント糸を、交編、糸複合等により併用し、マルチフィラメント糸を緩衝材として利用することが好ましい。
【0019】
連結糸にモノフィラメント糸を用いる場合には任意の繊度のものが使用可能であるが、ソフトな弾力感を得るためには50~600デシテックスの繊度が好ましく、より好ましくは80~500デシテックスである。連結糸は表層の編地、及び/又は、裏層の編地の中にループ状の編目を形成してもよく、表層の編地、及び/又は、裏層の編地に挿入状態やタック状態で引っかけた構造でもよいが、少なくとも2本の連結糸が表層の編地及び裏層の編地を互いに逆方向に斜めに傾斜してクロス状(X状)、又はトラス状に連結することが、立体編物の形態安定性を向上させる上で好ましい。この際、クロス状、トラス状共に連結糸が2本の連結糸で構成されていてもよく、1本の同一の連結糸が表または裏面で折り返し、見かけ上2本となっている場合であってもよい。
【0020】
本実施形態のシート表皮材を構成する立体編物の表層の編地及び裏層の編地に用いる繊維は、ポリエチレンテレフタレート繊維、ポリトリメチレンテレフタレート繊維、ポリブチレンテレフタレート繊維等のポリエステル系繊維、ポリアミド系繊維、ポリアクリル系繊維、ポリプロピレン系繊維等の合成繊維、綿、麻、ウール等の天然繊維、キュプラレーヨン、ビスコースレーヨン、リヨセル等の再生繊維等の任意の繊維が挙げられる。繊維の断面形状は、丸型、三角、L型、T型、Y型、W型、八葉型、偏平、ドッグボーン型等の多角形型、多葉型、中空型、不定形なものでもよい。繊維の形態は、原糸、紡績糸、撚糸、仮撚加工糸、エアー交絡糸、流体噴射加工糸等の嵩高加工糸のいずれのものを採用してもよい。連結糸がモノフィラメント糸である場合、該連結糸が編地表面へ露出しないように被覆率を上げるには、マルチフィラメント糸の仮撚加工糸、紡績糸等の嵩高糸を用いることが好ましい。この場合のマルチフィラメント糸の繊度は、通常150~1000デシテックスであり、フィラメント数は任意に設定できる。表層及び裏層の編地の編地に用いる繊維がマルチフィラメントである場合、その単糸繊度は0.5~6デシテックスが好ましいが、単糸の強力がより高くなる1~5デシテックスがより好ましい。
【0021】
本実施形態のシート表皮材を構成する立体編物の表層の編地、裏層の編地、及び/又は、連結糸は、着色されていることが好ましい。着色方法は、未着色の糸をかせやチーズ状で糸染めする方法(先染め)、紡糸前の原液に顔料、染料等を混ぜて着色する方法(原液着色)、立体編物状で染色したりプリントしたりする方法等が用いられる。
【0022】
本実施形態のシート表皮材を構成する立体編物の表層の編地及び裏層の編地の編組織は同一である必要は無く、異なる編組織、異なる伸長特性のものであってもよいが、裏層の編地の外側面の動摩擦係数の標準偏差が表層の編地の外側面の動摩擦係数の標準偏差より小さい方が、表皮材としての貼り付け等が容易になり好ましい。
【0023】
本実施形態のシート表皮材を構成する立体編物の表層の編地及び裏層の編地のコース/ウェル数は、18/18~43/28個/2.54cmが好ましく、より好ましくは25/20~40/24個/2.54cmである。所定のコース/ウェル数とするには、編み機ゲージ、機上コース、ヒートセット条件等を適宜選択することにより達成できる。
【0024】
本実施形態のシート表皮材の厚みは、目的に応じて任意に設定できるが、2~15mmが好ましく、より好ましくは3~10mmである。厚みが2mm以上であれば、クッション性が十分であり、15mm以下であれば、立体編物の編立や仕上げ加工が容易となりやすい。また、本実施形態のシート表皮材の目付は、好ましくは400~1000g/m、より好ましくは500~800g/mである。
【0025】
本実施形態のシート表皮材を構成する立体編物の仕上げ加工方法は、先染め糸や原液着色糸を使用した立体編物の場合、生機を精練、ヒートセット等の工程を通して仕上げることができる。表層の編地、裏層の編地、及び連結糸を構成する糸のいずれかが未着色である場合、立体編物の生機をプレセット、精練、染色、ヒートセット等の工程を通して仕上げることができる。立体編物の硬さをコントロールする上で重要な最終のヒートセットは、ピンテンターを用いて幅出しにより連結糸の角度を調整しながら行うことが好ましい。また、難燃性を向上させるためには難燃剤を塗布することが好ましい。仕上げ加工後の立体編物は、溶着、縫製、樹脂加工等の手段で端部を処理したり、熱成形等により所望の形状にしたりしてシート表皮材とすることで、ハンモック式座席等、各種用途に用いることができる。また従来のシート表皮材のように、着座面の裏面にウレタンをラミネートしても構わないが、ラミネートせずに使用することが、リサイクル性の観点から好ましい。
【実施例0026】
以下、本発明を実施例、比較例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
以下の実施例等で用いた各種物性の測定方法は以下の通りのものであった。
【0027】
(1)接合部を起点とした立体編物の山高さ(μm)
ワンショットマイクロスコープ(株式会社キーエンス社製VR-3200)を用いて、タテ90mm×ヨコ140mmのサイズにサンプリングしたシート表皮材を観察し、刺繍または縫製により表面編地と裏面編地が接合された部分とそれ以外の山部分を撮影する。任意の基準点からの接合部の深さと山部分の高さを測定し、接合部を起点とした山部分の高さを算出する。接合部の深さは、刺繍糸または縫製糸にて表面編地と裏面編地が接合された範囲で最も深い部分、山部分の高さは、接合部に隣接し、刺繍糸または縫製糸が存在しない範囲で最も高い部分とする。サンプリングしたシート表皮材中で測定部分を変更して10回測定を行い、その平均値を結果とする。
【0028】
(2)接合部のうち最も糸密度が大きい箇所を中心とした18mm×24mmの範囲における、接合部の接合部の面積率
ワンショットマイクロスコープ(株式会社キーエンス社製VR-3200)を用いて、タテ90mm×ヨコ140mmのサイズにサンプリングしたシート表皮材を観察し、刺繍または縫製により表面編地と裏面編地が接合された部分の中で最も糸の密度が大きい箇所を中心として立体編物を高視野モード、倍率12倍(視野:18mm×24mm)で撮影する。解析画面の「体積面積」測定モードにて、「高さしきい値」を0として、接合部以外の山部分の断面積を求め、100より引いた値が接合部の面積率となる。サンプリングしたシート表皮材中で測定部分を変更して10回測定を行い、その平均値を結果とする。
【0029】
(3)編目緻密度M
シート表皮材の任意の箇所において、2.54cm角(6.45cm)当たりの表層の編地の編目数N(個)をマイクロスコープで計測する。また、表層の編地の1個の編目を形成するマルチフィラメント糸の総繊度D(デシテックス)を計測する。上記の通り計測された編目数N(個)と総繊度D(デシテックス)を用い、下記式:
編目緻密度M=N×√D
により編目緻密度Mを算出する。
【0030】
(4)クッション性
試作したシート表皮材を貼り付けたSUVタイプの座席を設置し、着用モニター(身長170cm±10cmの男性、年齢22-32才)を10人選定し、そのモニター各人に明細を伏せて着席させ、官能試験を行った。尚、実験着としてすべての被験者に同一の長袖Tシャツ、ポリエステルのジャージズボンを着用させた。20分間着座した際のクッション性を以下の5段階の評価基準で官能評価させ、最頻値を評価結果とした。
<クッション性の評価基準>
5:非常にクッション性が良い
4:ややクッション性が良い
3:どちらとも言えない
2:ややクッション性が悪い
1:非常にクッション性が悪い
【0031】
(5)すべり防止性
前記(3)で作製した座席を設置し、着用モニター(身長170cm±10cmの男性、年齢22-32才)を10人選定し、そのモニター各人に明細を伏せて着席させ、官能試験を行った。尚、実験着としてすべての被験者に同一の長袖Tシャツ、ジーンズを着用させた。座席に着座した状態で、体を軽く動かした際のすべり防止性について官能評価させ、最頻値を評価結果とした。
<すべり防止性の評価基準>
5:非常にすべりにくい
4:ややすべりにくい
3:どちらとも言えない
2:ややすべりやすい
1:非常にすべりやすい
【0032】
(6)ヨコ倒れ防止性
試作したシート表皮材に対し、モニター(男性、年齢22-32才)を10人選定し、そのモニター各人に明細を伏せて、手で押しつぶした場合の連結糸のヨコ倒れの程度について官能試験を行った。以下の5段階の評価基準で官能評価させ、最頻値を評価結果とした。
<ヨコ倒れ防止性の評価基準>
◎:ほとんどヨコ倒れしない
〇:ややヨコ倒れしない
△:どちらとも言えない
×:ヨコ倒れする
【0033】
(7)意匠性
試作したシート表皮材に対し、モニター(女性、年齢22-32才)を10人選定し、そのモニター各人に明細を伏せて、意匠性についてアンケートを行った。以下の5段階の評価基準で官能評価させ、最頻値を評価結果とした。
<意匠性の評価基準>
◎:非常に意匠性に優れる
〇:意匠性に優れる
△:どちらとも言えない
×:意匠性がない
【0034】
(8)外観変化
ジーンズを着用した体重60~65Kgの男性が前記(4)で作製した座席に座って計50時間のデスクワークを行い、使用後の見栄えの変化を以下の評価基準で外観評価した。
<外観変化の評価基準>
◎:見栄えが全く変わらない
〇:やや毛羽立ちが認められるが見栄えの変化は少ない
△:かなり毛羽立ちが認められ見栄えの変化がやや大きい
×:毛羽立ちが激しく見栄えの変化が激しい。
【0035】
[実施例1]
6枚筬を装備した22ゲージ、釜間6mmのダブルラッセル編機を用い、表層の編地を形成する2枚の筬(L2、L3)から167デシテックス48フィラメントのポリエチレンテレフタレート繊維の仮撚加工糸を2本引き揃えて1アウト1イン(L2)と1イン1アウト(L3)の配列で供給し、連結部を形成する1枚の筬(L4)から110デシテックスのポリエチレンテレフタレート繊維のモノフィラメントを1アウト1インの配列で供給し、更に、裏層の編地を形成する2枚の筬(L5、L6)から167デシテックス48フィラメントのポリエチレンテレフタレート繊維の仮撚加工糸をいずれもオールインの配列で供給した。
以下に示す編組織で、打ち込み35コース/2.54cmの密度で立体編物の生機を編成した。得られた生機を1%幅出しして、オーバーフィード率0%で175℃×1分で乾熱ヒートセットし立体編物を得た。これに対しJUKI株式会社製のミシン(HZL-EX7)、ミシン針14番(オルガン株式会社製)、刺繍糸としてポリエステル50番を用いて、図1に示すようなタテ8.0cm×ヨコ4.5cmのダイヤ柄の刺繍を行いシート表皮材とした。このシート表皮材の諸物性を以下の表1に示す。
(編組織)
L1:-
L2:1011/2322/
L3:2322/1011/
L4:3410/4367/
L5:0001/1110/
L6:2234/2210/
【0036】
[実施例2]
実施例1と同様にして立体編物を得、これに対しJUKI株式会社製のミシン(HZL-EX7)、ミシン針16番(オルガン株式会社製)、刺繍糸としてポリエステル30番を用いて、図2に示すような幅4.7cmのストライプ柄の刺繍を行いシート表皮材とした。このシート表皮材の諸物性を以下の表1に示す。
【0037】
[実施例3]
6枚筬を装備した22ゲージ、釜間6mmのダブルラッセル編機を用い、表層の編地を形成する2枚の筬(L2、L3)から167デシテックス144フィラメントのポリエチレンテレフタレート繊維の仮撚加工糸を2本引き揃えて1アウト1イン(L2)と1イン1アウト(L3)の配列で供給し、連結部を形成する1枚の筬(L4)から110デシテックスのポリエチレンテレフタレート繊維のモノフィラメントを1アウト1インの配列で供給し、更に、裏層の編地を形成する2枚の筬(L5、L6)から167デシテックス48フィラメントのポリエチレンテレフタレート繊維の仮撚加工糸をいずれもオールインの配列で供給した。
以下に示す編組織で、打ち込み35コース/2.54cmの密度で立体編物の生機を編成した。得られた生機を1%幅出しして、オーバーフィード率0%で175℃×1分で乾熱ヒートセットし立体編物を得た。これに対しJUKI株式会社製のミシン(HZL-EX7)、ミシン針14番(オルガン株式会社製)、刺繍糸としてポリエステル50番を用いて、図3に示すようなタテ4.3cm×ヨコ2.5cmの格子柄の刺繍を行いシート表皮材とした。このシート表皮材の諸物性を以下の表1に示す。
(編組織)
L1:-
L2:2133/4533/
L3:3422/1022/
L4:4521/4367/
L5:0001/1110/
L6:2234/2210/
【0038】
[実施例4]
6枚筬を装備した22ゲージ、釜間6mmのダブルラッセル編機を用い、表層の編地を形成する2枚の筬(L2、L3)から167デシテックス48フィラメントのポリエチレンテレフタレート繊維の仮撚加工糸を2本引き揃えて1アウト1イン(L2)と1イン1アウト(L3)の配列で供給し、連結部を形成する1枚の筬(L4)から110デシテックスのポリエチレンテレフタレート繊維のモノフィラメントを1アウト1インの配列で供給し、更に、裏層の編地を形成する2枚の筬(L5、L6)から167デシテックス48フィラメントのポリエチレンテレフタレート繊維の仮撚加工糸をいずれもオールインの配列で供給した。
以下に示す編組織で、打ち込み35コース/2.54cmの密度で立体編物の生機を編成した。得られた生機を1%幅出しして、オーバーフィード率0%で175℃×1分で乾熱ヒートセットし立体編物を得た。これに対しJUKI株式会社製のミシン(HZL-EX7)、ミシン針18番(オルガン株式会社製)、縫い糸としてポリエステル8番を用いて、本縫いにより図4に示すようなタテ5.0cm×ヨコ4.0cmのダイヤ柄を付与してシート表皮材とした。このシート表皮材の諸物性を以下の表1に示す。
(編組織)
L1:-
L2:1011/1233/4544/4322/
L3:4544/4322/1011/1233/
L4:3410/3245/2145/2310/
L5:0001/1110/
L6:2234/2210/
【0039】
[実施例5]
得られた生機を15%幅出ししてオーバーフィード率0%で175℃×1分で乾熱ヒートセットした以外は、実施例4と同様にして立体編物を得、これに対しJUKI株式会社製のミシン(HZL-EX7)、ミシン針14番(オルガン株式会社製)、縫い糸としてポリエステル50番を用いて、図5に示すような長方形の刺繍を行いシート表皮材とした。このシート表皮材の諸物性を以下の表1に示す。
【0040】
[実施例6]
打ち込み39コース/2.54cmの密度とした以外は実施例1と同様にして立体編物を得、これに対しJUKI株式会社製のミシン(HZL-EX7)、ミシン針14番(オルガン株式会社製)、刺繍糸としてポリエステル50番を用いて、図3に示すようなタテ4.3cm×ヨコ2.5cmの格子柄の刺繍を行いシート表皮材とした。このシート表皮材の諸物性を以下の表1に示す。このシート表皮材の諸物性を以下の表1に示す。
【0041】
[実施例7]
実施例1と同様にして立体編物を得、これに対しJUKI株式会社製のミシン(HZL-EX7)、ミシン針14番(オルガン株式会社製)、縫い糸としてポリエステル50番を用いて、長さ10cmの直線縫いを1か所のみ行いシート表皮材とした。このシート表皮材の諸物性を以下の表1に示す。
【0042】
[実施例8]
実施例1と同様にして立体編物を得、これに対しJUKI株式会社製のミシン(HZL-EX7)、ミシン針18番(オルガン株式会社製)、縫い糸としてポリエステル8番を用いて、本縫いにより図4に示すようなタテ2.0cm×ヨコ1.0cmのダイヤ柄を付与してシート表皮材とした。このシート表皮材の諸物性を以下の表1に示す。
【0043】
[実施例9]
得られた生機を10%幅出ししてオーバーフィード率0%で175℃×1分で乾熱ヒートセットした以外は、実施例4と同様にして立体編物を得、これに対しJUKI株式会社製のミシン(HZL-EX7)、ミシン針14番(オルガン株式会社製)、縫い糸としてポリエステル50番を用いて、図1に示すようなタテ8.0cm×ヨコ4.5cmのダイヤ柄の刺繍を行いシート表皮材とした。このシート表皮材の諸物性を以下の表1に示す。
【0044】
[実施例10]
打ち込み39コース/2.54cmの密度とした以外は、実施例1と同様にして立体編物を得、これに対しJUKI株式会社製のミシン(HZL-EX7)、ミシン針14番(オルガン株式会社製)、縫い糸としてポリエステル50番を用いて、図3に示すような4.3×2.5cmの格子柄の刺繍を行いシート表皮材とした。このシート表皮材の諸物性を以下の表1に示す。
【0045】
[比較例1]
実施例1と同様にして立体編物を得、刺繍や縫製は行わずにシート表皮材とした。このシート表皮材の諸物性を以下の表2に示す。
【0046】
[比較例2]
実施例3と同様にして立体編物を得、刺繍や縫製は行わずにシート表皮材とした。このシート表皮材の諸物性を以下の表2に示す。
【0047】
[比較例3]
実施例4と同様にして立体編物を得、刺繍や縫製は行わずにシート表皮材とした。このシート表皮材の諸物性を以下の表2に示す。
【0048】
【表1】
【0049】
【表2】
【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明のシート表皮材は、クッション性を維持しつつも従来の立体編物の問題点である連結糸のヨコ倒れを防止し、さらには意匠性とすべり防止性にも優れるため、家具用、事務用等に使用する座席、自動車、鉄道車両、航空機、チャイルドシート、ベビーカー、車椅子等の車両用の座席、ヘッドレスト、アームレストに好適に利用可能である。
図1
図2
図3
図4
図5