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特開2022-184422信号処理方法、信号処理装置および撮像装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022184422
(43)【公開日】2022-12-13
(54)【発明の名称】信号処理方法、信号処理装置および撮像装置
(51)【国際特許分類】
   H04N 5/361 20110101AFI20221206BHJP
【FI】
H04N5/361
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021092267
(22)【出願日】2021-06-01
(71)【出願人】
【識別番号】316005926
【氏名又は名称】ソニーセミコンダクタソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001357
【氏名又は名称】弁理士法人つばさ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】立澤 之康
(72)【発明者】
【氏名】小西 隆夫
(72)【発明者】
【氏名】塩谷 吉満
【テーマコード(参考)】
5C024
【Fターム(参考)】
5C024CX32
5C024GZ37
5C024GZ38
5C024HX21
5C024HX29
5C024HX30
(57)【要約】
【課題】補正による遅延を抑制することの可能な信号処理方法、信号処理装置および撮像装置を提供する。
【解決手段】本開示の一実施の形態に係る信号処理方法は、有効画素領域と周辺画素領域とを備えた撮像装置の信号処理方法である。有効画素領域は、受光面に設けられ、複数の第1画素が行列状に配置された領域である。周辺画素領域は、受光面の行方向に隣接する遮光領域に設けられ、複数の第2画素が行列状に配置された領域である。この信号処理方法は、以下の2つを含む。
(A)複数の第2画素と、複数の第1画素のうち、周辺画素領域に隣接する領域内の複数の第1画素である複数の隣接画素とから得られる複数の画素信号とを行単位で処理することにより、黒レベルのオフセット量を行単位で算出すること
(B)複数の第1画素から得られた複数の画素信号に対して、オフセット量を用いた黒レベル補正を行単位で行うこと
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
受光面に設けられ、複数の第1画素が行列状に配置された有効画素領域と、前記受光面の行方向に隣接する遮光領域に設けられ、複数の第2画素が行列状に配置された周辺画素領域とを備えた撮像装置の信号処理方法であって、
前記複数の第2画素と、前記有効画素領域のうち、前記周辺画素領域に隣接する領域内の複数の第1画素である複数の隣接画素とから得られる複数の画素信号とを行単位で処理することにより、黒レベルのオフセット量を行単位で算出することと、
前記複数の第1画素から得られた複数の画素信号に対して、前記オフセット量を用いた黒レベル補正を行単位で行うことと
を含む
信号処理方法。
【請求項2】
前記複数の第2画素および前記複数の隣接画素における各行の複数の画素信号をライン信号としたとき、前記ライン信号における前記有効画素領域寄りの複数の画素信号の平均値である第1平均値と、前記ライン信号における前記周辺画素領域寄りの複数の画素信号の平均値である第2平均値との差分と、前記ライン信号に含まれる全ての画素信号の積算値とを用いて前記オフセット量を導出することを更に含む
請求項1に記載の信号処理方法。
【請求項3】
前記差分が大きくなるにつれて大きくなる係数を前記差分に掛けることにより得られる値と、前記積算値とを用いて前記オフセット量を導出することを更に含む
請求項2に記載の信号処理方法。
【請求項4】
前記ライン信号における前記有効画素領域寄りの複数の画素信号は、前記ライン信号における前記有効画素領域内の複数の第1画素と、前記ライン信号における前記周辺画素領域内の複数の第2画素であって、かつ前記有効画素領域寄りの複数の第2画素とから得られる複数の画素信号であり、
前記ライン信号における前記周辺画素領域寄りの複数の画素信号は、前記ライン信号における前記周辺画素領域内の複数の第2画素であって、かつ前記有効画素領域から離れた複数の第2画素から得られる複数の画素信号である
請求項1に記載の信号処理方法。
【請求項5】
受光面に設けられ、複数の第1画素が行列状に配置された有効画素領域と、前記受光面の行方向に隣接する遮光領域に設けられ、複数の第2画素が行列状に配置された周辺画素領域とを備えた撮像装置における信号処理装置であって、
前記複数の第2画素と、前記有効画素領域のうち、前記周辺画素領域に隣接する領域内の複数の第1画素である複数の隣接画素とから得られる複数の画素信号とを行単位で処理することにより、黒レベルのオフセット量を行単位で算出するオフセット量算出部と、
前記複数の第1画素から得られた複数の画素信号に対して、前記オフセット量を用いた黒レベル補正を行単位で行う黒レベル補正部と
を備えた
信号処理装置。
【請求項6】
受光面に設けられ、複数の第1画素が行列状に配置された有効画素領域と、
前記受光面の行方向に隣接する遮光領域に設けられ、複数の第2画素が行列状に配置された周辺画素領域と、
前記複数の第2画素と、前記有効画素領域のうち、前記周辺画素領域に隣接する領域内の複数の第1画素である複数の隣接画素とから得られる複数の画素信号とを行単位で処理することにより、黒レベルのオフセット量を行単位で算出するオフセット量算出部と、
前記複数の第1画素から得られた複数の画素信号に対して、前記オフセット量を用いた黒レベル補正を行単位で行う黒レベル補正部と
を備えた
撮像装置。
【請求項7】
前記オフセット量算出部は、前記複数の第2画素および前記複数の隣接画素における各行の複数の画素信号をライン信号としたとき、前記ライン信号における前記有効画素領域寄りの複数の画素信号の平均値である第1平均値と、前記ライン信号における前記周辺画素領域寄りの複数の画素信号の平均値である第2平均値との差分と、前記ライン信号に含まれる全ての画素信号の積算値とを用いて前記オフセット量を導出する
請求項6に記載の撮像装置。
【請求項8】
前記オフセット量算出部は、前記差分が大きくなるにつれて大きくなる係数を前記差分に掛けることにより得られる値と、前記積算値とを用いて前記オフセット量を導出する
請求項7に記載の撮像装置。
【請求項9】
前記ライン信号における前記有効画素領域寄りの複数の画素信号は、前記ライン信号における前記有効画素領域内の複数の第1画素と、前記ライン信号における前記周辺画素領域内の複数の第2画素であって、かつ前記有効画素領域寄りの複数の第2画素とから得られる複数の画素信号であり、
前記ライン信号における前記周辺画素領域寄りの複数の画素信号は、前記ライン信号における前記周辺画素領域内の複数の第2画素であって、かつ前記有効画素領域から離れた複数の第2画素から得られる複数の画素信号である
請求項6に記載の撮像装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、信号処理方法、信号処理装置および撮像装置に関する。
【背景技術】
【0002】
CCD(Charge Coupled Device)やCMOS(Complementary Metal-Oxide Semiconductor)等のイメージセンサ(撮像素子)を用いて得られる画素信号を補正するための処理の一例として、当該画素信号における黒レベルのずれを補正する所謂クランプ処理がある。クランプ処理では、例えば、メタル等により遮光された所謂OPB(Optical Black)領域に設けられた画素から読み出される画素信号に基づき黒レベルを検出し、有効画素領域内の画素から読み出される画素信号が補正される。
【0003】
しかし、高ゲイン時には、OPB領域のノイズ特性が悪化するので、黒レベルがフレーム間でばらつくという問題があった。この問題に対して、有効画素領域における黒レベルの画素信号を用いて、有効画素領域内の画素から読み出される画素信号を補正することが、例えば、下記特許文献1に開示されている。このように、OPB領域の画素だけでなく、有効画素領域内の画素を利用することにより、OPB領域の画素数を大幅に増やすことなく、フレーム間での黒レベルのばらつきを抑えることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002-6785号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記特許文献1に記載の発明では、次フレームの画素信号を補正することになり、補正に対して1フレーム分の遅延が発生する。フレームメモリを設けることで遅延を回避することも理論的には可能であるが、回路規模や演算処理量の観点から、フレームメモリを設けることは現実的ではない。従って、補正による遅延を抑制することの可能な信号処理方法、信号処理装置および撮像装置を提供することが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一実施の形態に係る信号処理方法は、有効画素領域と周辺画素領域とを備えた撮像装置の信号処理方法である。ここで、有効画素領域は、受光面に設けられ、複数の第1画素が行列状に配置された領域である。周辺画素領域は、受光面の行方向に隣接する遮光領域に設けられ、複数の第2画素が行列状に配置された領域である。この信号処理方法は、以下の2つを含む。
(A)複数の第2画素と、有効画素領域のうち、周辺画素領域に隣接する領域内の複数の第1画素である複数の隣接画素とから得られる複数の画素信号とを行単位で処理することにより、黒レベルのオフセット量を行単位で算出すること
(B)複数の第1画素から得られた複数の画素信号に対して、オフセット量を用いた黒レベル補正を行単位で行うこと
【0007】
本開示の一実施の形態に係る信号処理装置は、有効画素領域と周辺画素領域とを備えた撮像装置における信号処理装置である。ここで、有効画素領域は、受光面に設けられ、複数の第1画素が行列状に配置された領域である。周辺画素領域は、受光面の行方向に隣接する遮光領域に設けられ、複数の第2画素が行列状に配置された領域である。この信号処理装置は、オフセット量算出部と黒レベル補正部とを備える。オフセット量算出部は、複数の第2画素と、有効画素領域のうち、周辺画素領域に隣接する領域内の複数の第1画素である複数の隣接画素とから得られる複数の画素信号とを行単位で処理することにより、黒レベルのオフセット量を行単位で算出する。黒レベル補正部は、複数の第1画素から得られた複数の画素信号に対して、オフセット量を用いた黒レベル補正を行単位で行う。
【0008】
本開示の一実施の形態に係る撮像装置は、有効画素領域と周辺画素領域とを備える。ここで、有効画素領域は、受光面に設けられ、複数の第1画素が行列状に配置された領域である。周辺画素領域は、受光面の行方向に隣接する遮光領域に設けられ、複数の第2画素が行列状に配置された領域である。この撮像装置は、更に、オフセット量算出部と黒レベル補正部とを備える。オフセット量算出部は、複数の第2画素と、有効画素領域のうち、周辺画素領域に隣接する領域内の複数の第1画素である複数の隣接画素とから得られる複数の画素信号とを行単位で処理することにより、黒レベルのオフセット量を行単位で算出する。黒レベル補正部は、複数の第1画素から得られた複数の画素信号に対して、オフセット量を用いた黒レベル補正を行単位で行う。
【0009】
本開示の一実施の形態に係る信号処理方法、信号処理装置および撮像装置では、有効画素領域の行方向に隣接する周辺画素領域内の複数の第2画素と、有効画素領域のうち、周辺画素領域に隣接する領域内の複数の第1画素である複数の隣接画素とから得られる複数の画素信号を処理することにより、黒レベルのオフセット量が算出される。これにより、周辺画素領域の画素数を大幅に増やすことなく、フレーム間での黒レベルのばらつきを抑えることができる。また、本実施の形態では、黒レベルのオフセット量が行単位で算出される。これにより、1フレーム分の遅延を発生させることなく、黒レベル補正を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】従来のイメージセンサの画素アレイ部の概略構成例を表す図である。
図2】本開示の一実施の形態に係るカメラモジュールの概略構成例を表す図である。
図3図2の画素アレイ部の概略構成例を表す図である。
図4図2の画素アレイ部の概略構成例を表す図である。
図5図2の画素アレイ部の一部を拡大して表す図である。
図6】比較例に係るオフセット量の変化の一例を表す図である。
図7】補正係数の一例を表す図である。
図8】(A)補正係数の変化の一例を表す図である。(B)オフセット量の変化の一例を表す図である。
図9図2の信号処理部の概略構成例を表す図である。
図10】補正係数の一変形例を表す図である。
図11】補正係数の一変形例を表す図である。
図12】補正係数の一変形例を表す図である。
図13】補正係数の一変形例を表す図である。
図14図2の信号処理部の概略構成例を表す図である。
図15】オフセット量の算出式の一例を表す図である。
図16図2の画素アレイ部の概略構成の一変形例を表す図である。
図17図2の信号処理部の概略構成の一変形例を表す図である。
図18】車両制御システムの概略的な構成の一例を示すブロック図である。
図19】車外情報検出部及び撮像部の設置位置の一例を示す説明図である。
図20】内視鏡手術システムの概略的な構成の一例を示す図である。
図21】カメラヘッド及びCCUの機能構成の一例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本開示を実施するための形態について、図面を参照して詳細に説明する。以下の説明は本開示の一具体例であって、本開示は以下の態様に限定されるものではない。また、本開示は、各図に示す各構成要素の配置や寸法、寸法比などについても、それらに限定されるものではない。なお、説明は以下の順序で行う。

1.クランプ処理
2.実施の形態
列方向に隣接するHOPB領域を設けた例(図1図9
3.変形例
変形例A:補正係数のバリエーション(図10図13
変形例B:列方向の両側にOPB領域を設けた例(図14図15
変形例C:行方向に隣接するVOPB領域を設けた例(図16図17
4.応用例
移動体への応用例(図18図19
内視鏡手術システムへの応用例(図20図21
【0012】
<1.クランプ処理>
クランプ処理と呼ばれる、黒レベルを補正するための処理の概要について説明する。
【0013】
一般的にイメージセンサでは、シリコン基板上に作り込まれたフォトダイオードに対して光が照射されることにより、光エネルギーによって励起されたシリコン内部の電子を、画像信号として読み出す。このような特性から、フォトダイオードに対して光が入力されていない状態においては、当該フォトダイオードから読み出される画像信号の信号レベルは0となっていることが望ましい。なお、フォトダイオードに対して光が入力されていない状態において、当該フォトダイオードから読み出される画像信号の信号レベルが「黒レベル」に相当する。
【0014】
しかしながら、フォトダイオードに入射する光を完全に遮光した場合においても、当該フォトダイオードから読み出される信号が0にならない場合がある。具体的な一例として、暗電流や読み出しノイズの影響により、フォトダイオードから読み出される信号が0とならない場合がある。この暗電流や読み出しノイズは、例えば、温度や電源の状態に応じて刻々と変化するため、あらかじめ測定しておくことが困難である。このような状況を鑑み、イメージセンサでは、開口した領域(以降では、「有効画素領域」とも称する)の近傍に、メタル等により遮光されたOPB(Optical Black)領域と呼ばれる領域が設けられる場合がある。
【0015】
図1は、従来のイメージセンサの画素アレイ部1110の概略構成例を表す図である。図1に示したように、画素アレイ部1110には、有効画素領域1111と、OPB領域1112とが設けられている。有効画素領域1111において、ハッチングが施された部分が、フォトダイオードを含む複数の画素1111a(以降では、「有効画素」とも称する)が設けられた部分を示している。OPB領域1112において、ハッチングが施された部分が、フォトダイオードを含む複数の画素1112a(以降では、「周辺画素」とも称する)が設けられた部分を示している。有効画素領域1111に設けられた複数の画素1111aから読み出された画素信号に基づいて1フレーム分の画像データが得られる。
【0016】
上記のようにOPB領域1112を設けることで、例えば、OPB領域1112に設けられた画素1112aから出力される画素信号のレベルを測定することにより、光が入射していない状態における暗電流や読み出しノイズの影響を含んだ信号の信号レベル(オフセット量)を認識することが可能となる。即ち、有効画素領域1111中の画素1111aから読み出された画素信号の信号レベルから、OPB領域1112中の画素1112aから出力される画素信号の信号レベル(オフセット量)を減算することで、理想的には黒レベルを0に補正することが可能となる。このように、画素信号の黒レベルを0に補正するための処理が、クランプ処理と称される。
【0017】
ところが、イメージセンサのサイズ(即ち、チップサイズ)の制約から、OPB領域1112の広さが制限される傾向にある。そのため、OPB領域1112中の画素1112aの数が制限される。その結果、OPB領域1112中の複数の画素1112aから得られた画素信号の平均をとったとしても、特に高ゲイン時には、ノイズの影響を完全に除去することが難しく、結果としてオフセット量がフレームごとにばらついてしまう。
【0018】
そこで、例えば、上記特許文献1に記載の発明では、上記クランプ処理がなされた画素信号に対して、有効画素領域1111における黒レベルの画素信号を用いたクランプ処理を更に実行することで、画素信号の信号レベルを補正することが提案されている。確かに、これにより、オフセット量のフレームごとのばらつきを抑えることができる。しかし、このようにした場合には、次フレームの画素信号を補正することになり、補正に対して1フレーム分の遅延が発生する。フレームメモリを設けることで遅延を回避することも理論的には可能であるが、回路規模や演算処理量の観点から、フレームメモリを設けることは現実的ではない。そこで、本願発明者は、フレームメモリを用いなくても、補正による遅延を抑制することの可能な新たな手法について以下に提案する。
【0019】
<2.実施の形態>
[構成]
まず、図2を参照して、本開示の一実施形態に係るカメラモジュール1の概略構成について、特に、撮像結果を画像データとして出力する部分の構成に着目して説明する。図2は、カメラモジュール1の概略構成例を表す図である。
【0020】
カメラモジュール1は、例えば、図2に示したように、イメージセンサ100および信号処理LSI(Large Scale Integration)200を備える。
【0021】
イメージセンサ100は、被写体を撮像し、撮像画像のデジタルデータを得る撮像素子であり、例えば、CMOS(Complementary Metal-Oxide Semiconductor)イメージセンサまたはCCD(Charge Coupled Device)イメージセンサである。イメージセンサ100は、画素アレイ部110を含んで構成される。画素アレイ部110は、例えば、図3に示したように、複数の画素111aが行列(アレイ)状に配置された画素アレイ部111を有する。イメージセンサ100において画素アレイ部110が設けられた領域がイメージセンサ100の受光面に相当し、有効画素領域に相当する。
【0022】
画素アレイ部110は、さらに、例えば、図3に示したように、画素アレイ部111の行方向に隣接する画素アレイ部112を含んで構成される。画素アレイ部112は、例えば、図3に示したように、画素アレイ部111の、行方向における両側にそれぞれ配置される。画素アレイ部112は、例えば、図4に示したように、画素アレイ部111の、行方向におけるいずれか一方側だけに配置されてもよい。画素アレイ部112では、複数の画素112aが行列(アレイ)状に配置される。イメージセンサ100において画素アレイ部112が設けられた領域は、イメージセンサ100の受光面に隣接する周辺画素領域であって、かつメタル等で遮光された領域(HOPB(Horizontal Optical Black)領域)に相当する。
【0023】
各画素111aおよび各画素112aは、それぞれ、光電変換を行うフォトダイオードを含んで構成される。画素111aと画素112aとは、互いに等しい構成となっていてもよいし、互いに異なる構成となっていてもよい。イメージセンサ100は、光学系を介して入射した光を各画素111aで光電変換し、各画素111aの画素値をA/D変換することで、被写体の撮像画像を示す画像データ(以降では、「第1画像データ」と称する)を生成する。第1画像データは、各画素111aから得られた複数の画素信号(デジタル信号)によって構成される。イメージセンサ100は、さらに、各画素112aでの光電変換により得られた各画素112aの画素値をA/D変換することで、黒レベルもしくは黒レベルに近いレベルの画像データ(以降では、「第2画像データ」と称する)を生成する。第2画像データは、各画素112aから得られた複数の画素信号(デジタル信号)によって構成される。イメージセンサ100は、生成した画像データ(第1画像データおよび第2画像データ)を信号処理LSI200に出力する。
【0024】
信号処理LSI200は、イメージセンサ100から出力された画像データ(第1画像データおよび第2画像データ)を取得する。信号処理LSI200は、取得した第1画像データに対して所定の信号処理を施し、信号処理後の画像データを、例えば、表示部に画像として表示させる。これにより、ユーザは、撮像された画像を、表示部を介して確認することが可能となる。また、信号処理LSI20は、信号処理後の画像データを、例えば、図示しない記憶部に画像データとして記憶させてもよい。
【0025】
信号処理LSI200は、画像データ(第1画像データおよび第2画像データ)を用いた黒レベル補正(クランプ処理)を行う信号処理部210を有する。図5は、信号処理部210における黒レベル補正(クランプ処理)を説明するための図である。
【0026】
ここで、有効画素領域(画素アレイ部111)における複数の画素111aのうち、HOPB領域(画素アレイ部112)に隣接する領域内の複数の画素111aを複数の画素111a’と称するものとする。また、HOPB領域における複数の画素112aおよび有効画素領域における複数の画素111a’における各行の複数の画素信号をライン信号Slと称するものとする。ライン信号Slには、複数の画素112aから得られる複数のHOPB信号Shと、複数の画素111a’から得られる複数の有効画素信号Svとが含まれる。
【0027】
ここで、HOPB信号Shと有効画素信号Svとの間には所定の相関関係がある。例えば、HOPB信号Shと有効画素信号Svとの差分の値が大きい場合には、有効画素領域に光が入射していることが考えられる。一方で、例えば、HOPB信号Shと有効画素信号Svとの差分の値が小さい場合には、HOPB信号Shが想定よりも大きな値となっているときであっても、それは有効画素領域に光が入射している訳ではないと考えられる。従って、HOPB信号Shと有効画素信号Svとの差分の値を用いることで、有効画素領域に光が入射しているか否かの判断を行うことが可能である。
【0028】
ライン信号Slに含まれる画素信号の総数(総サンプル数)を、総数Nmと称するものとする。総数Nmは、例えば、256となっている。ライン信号Slに含まれる周辺画素信号Shの数(サンプル数)は、例えば、200となっている。また、ライン信号Slに含まれる有効画素信号Svの数(サンプル数)は、例えば、56となっている。このとき、ライン信号Slに含まれる周辺画素信号Shの数(サンプル数)は、ライン信号Slに含まれる有効画素信号Svの数(サンプル数)よりも多くなっている。
【0029】
ライン信号Slにおける有効画素領域寄りの複数の画素信号を、内側信号Saと称するものとする。また、ライン信号SlにおけるHOPB領域寄りの複数の画素信号を、外側信号Sbと称するものとする。ライン信号Slにおける複数の内側信号Saは、ライン信号Slにおける有効画素領域内の複数の画素111a’と、ライン信号SlにおけるHOPB領域内の複数の画素112aであって、かつ有効画素領域寄りの複数の画素112aとから得られる複数の画素信号である。ライン信号Slにおける複数の内側信号Saに、HOPB領域内の複数の画素112aが含まれるのは、遮光されているHOPB領域に対して光漏れが生じる可能性があるからである。一方、ライン信号Slにおける複数の外側信号Sbは、ライン信号SlにおけるHOPB領域内の複数の画素112aであって、かつ有効画素領域から離れた複数の画素112aから得られる複数の画素信号である。
【0030】
ライン信号Slに含まれる内側信号Saの数(サンプル数)は、例えば、64となっている。ライン信号Slに含まれる外側信号Sbの数(サンプル数)は、例えば、128となっている。このとき、ライン信号Slに含まれる外側信号Sbの数(サンプル数)は、ライン信号Slに含まれる内側信号Saの数(サンプル数)よりも多くなっている。ライン信号Slにおける複数の内側信号Saの平均値を、内側信号平均値Sa_avgと称するものとする。ライン信号Slにおける複数の外側信号Sbの平均値を、外側信号平均値Sb_avgと称するものとする。内側信号平均値Sa_avgと、外側信号平均値Sb_avgとの差分を、平均値差ΔAVG(=Sa_avg-Sb_avg)と称するものとする。
【0031】
信号処理部210は、HOPB領域における複数の画素112aと、有効画素領域における複数の画素111a’とから得られる複数の画素信号を行単位で処理することにより、黒レベルのオフセット量Soを行単位で算出する。信号処理部210は、平均値差ΔAVGと、ライン信号Slに含まれる全ての画素信号の積算値Ssとを用いて黒レベルのオフセット量Soを導出する。
【0032】
ところで、図6に示したように、内側信号平均値Sa_avgと、外側信号平均値Sb_avgとの差分(平均値差ΔAVG(=Sa_avg-Sb_avg))が所定の閾値Sthを超えたか否かで、オフセット量Soの導出方法を切り替えるとする。例えば、平均値差ΔAVGが所定の閾値Sth以下のときは、オフセット量Soとしてライン信号Slの平均値Sl_avgを用い、平均値差ΔAVGが所定の閾値Sthを超えたときは、オフセット量Soとして外側信号平均値Sb_avgを用いるとする。このようにした場合には、例えば、図6に示したような段差が生じてしまう。その結果、段差の生じた箇所を境界とする黒ずれが1フレーム分の画像の中に生じてしまう。
【0033】
そこで、本実施の形態では、信号処理部210は、この段差を緩和するために補正係数Lを用いる。信号処理部210は、例えば、平均値差ΔAVGが大きくなるにつれて大きくなる補正係数L(図7参照)を平均値差ΔAVGに掛けることにより得られる値と、積算値Ssとを用いて黒レベルのオフセット量Soを導出する。補正係数Lは、例えば、図7に示したように、平均値差ΔAVGが所定の閾値Vth1よりも小さいとき0となり、平均値差ΔAVGが所定の閾値Vth2(>Vth1)よりも大きいとき、ライン信号Slにおける内側信号Saの数Na(サンプル数)となる。さらに、補正係数Lは、例えば、図7に示したように、平均値差ΔAVGが所定の閾値Vth1以上、所定の閾値Vth2以下のとき、平均値差ΔAVGが大きくなるにつれて線形で大きくなる値となっている。
【0034】
閾値Vth1には、例えば、ランダムノイズ等の平均値のばらつきよりも大きな値が設定され得る。これは、ランダムノイズ等によってオフセット量Soが敏感に変位するのを防ぐためである。閾値Vth2は、補正係数Lが線形で変位する箇所の傾きの大きさに応じて設定され得る。
【0035】
信号処理部210は、例えば、以下の式を用いて、黒レベルのオフセット量Soを導出する。その結果、補正係数Lは、例えば、図8(A)に示したような変化を示し、オフセット量Soは、例えば、図8(B)に示したようななだらかな変化を示す。
【0036】
So={Ss-L×ΔAVG}/Nm
Ss:ライン信号Slに含まれる全ての画素信号の積算値
L:補正係数
ΔAVG:内側信号平均値Sa_avgと外側信号平均値Sb_avgとの差分
Nm:ライン信号Slに含まれる画素信号の総数
【0037】
図9は、信号処理部210の概略構成例を表す図である。信号処理部210は、例えば、全体積算部211、内側平均値算出部212、外側平均値算出部213、減算部214、補正係数算出部215、乗算部216、減算部217、平均値算出部218および補正部219を有する。
【0038】
全体積算部211は、HOPB領域における複数の画素112aと、有効画素領域における複数の画素111a’とから得られる複数の画素信号を行単位で積算することにより、積算値Ssを行単位で算出する。全体積算部211は、積算値Ssが得られるたびに、積算値Ssを減算部217に出力する。
【0039】
内側平均値算出部212は、複数の内側信号Saの平均値(内側信号平均値Sa_avg)を行単位で算出する。内側平均値算出部212は、内側信号平均値Sa_avgが得られるたびに、内側信号平均値Sa_avgを減算部214に出力する。外側平均値算出部213は、複数の外側信号Sbの平均値(外側信号平均値Sb_avg)を行単位で算出する。外側平均値算出部213は、外側信号平均値Sb_avgが得られるたびに、外側信号平均値Sb_avgを減算部214に出力する。
【0040】
減算部214は、内側信号平均値Sa_avgから外側信号平均値Sb_avgを減じることにより平均値差ΔAVGを行単位で算出する。減算部214は、算出した平均値差ΔAVGを補正係数算出部215および乗算部216に出力する。補正係数算出部215は、平均値差ΔAVGに基づいて補正係数Lを導出する。補正係数算出部215は、導出した補正係数Lを乗算部216に出力する。乗算部216は、補正係数Lを平均値差ΔAVGに掛け、それにより得られた値(L×ΔAVG)を減算部217に出力する。
【0041】
減算部217は、積算値SsからL×ΔAVGを減じ、それにより得られた値(Ss-L×ΔAVG)を平均値算出部218に出力する。平均値算出部218は、減算部217から入力された値(Ss-L×ΔAVG)を、ライン信号Slに含まれる画素信号の総数Nmで除算することにより、行単位でオフセット量Soを算出する。平均値算出部218は、得られたオフセット量Soを補正部219に出力する。補正部219は、有効画素領域における各画素111aから得られた画素信号に対して、オフセット量Soを用いた黒レベル補正を行単位で行う。補正部219は、有効画素領域における各画素111aから得られた画素信号からオフセット量Soを減じる処理を行単位で実行する。補正部219は、このようにして黒レベルを補正した画素信号を信号処理LSI200に出力する。
【0042】
[効果]
次に、カメラモジュール1の効果について説明する。
【0043】
本実施の形態では、HOPB領域内の複数の画素112aと、有効画素領域内の複数の画素111a’とから得られる複数の画素信号を処理することにより、黒レベルのオフセット量が算出される。これにより、HOPB領域の画素数を大幅に増やすことなく、フレーム間での黒レベルのばらつきを抑えることができる。また、本実施の形態では、黒レベルのオフセット量が行単位で算出される。これにより、1フレーム分の遅延を発生させることなく、黒レベル補正を行うことができる。その結果、補正による遅延を抑制することができる。
【0044】
また、本実施の形態では、ライン信号Slにおける有効画素領域寄りの複数の画素信号(内側信号Sa)の平均値(Sv_avg)と、ライン信号SlにおけるHOPB領域寄りの複数の画素信号(外側信号Sb)の平均値(Sb_avg)との差分(ΔAVG)と、ライン信号Slに含まれる全ての画素信号の積算値Ssとを用いてオフセット量Soが導出される。これにより、有効画素領域に光が入射する場合においても適切に有効画素領域における黒レベルのオフセット量Soを推定することが可能である。
【0045】
また、本実施の形態では、平均値差ΔAVGが大きくなるにつれて大きくなる補正係数Lを平均値差ΔAVGに掛けることにより得られる値と、積算値Ssとを用いてオフセット量Soが導出される。これにより、オフセット量Soに生じる段差を緩和することができる。その結果、オフセット量Soに起因する黒ずれが1フレーム分の画像の中に生じるのを低減することができる。
【0046】
また、本実施の形態では、平均値差ΔAVGを求める際に用いる内側信号Saに、HOPB領域内の複数の画素112aが含まれる。これにより、遮光されているHOPB領域に対して光漏れが生じている場合であっても、その影響を抑えつつ、有効画素領域における黒レベルのオフセット量Soを行ごとに推定することが可能である。
【0047】
<3.変形例>
次に、カメラモジュール1の変形例について説明する。
【0048】
[変形例A]
上記実施の形態において、補正係数Lは、例えば、図10に示したように、平均値差ΔAVGが所定の閾値Vth1以上、所定の閾値Vth2以下のとき、平均値差ΔAVGが大きくなるにつれて折れ線状に大きくなる値となっていてもよい。このようにした場合には、画素アレイ部100の特性に応じてオフセット量Soを適切に調整することが可能となる。
【0049】
上記実施の形態において、補正係数Lは、例えば、図11に示したように、平均値差ΔAVGが所定の閾値Vth1以上、所定の閾値Vth2以下のとき、平均値差ΔAVGが大きくなるにつれてS字状に大きくなる値となっていてもよい。このようにした場合には、回路コストが増大するものの、オフセット量Soに生じる段差をより一層、緩和することができる。その結果、オフセット量Soに起因する黒ずれが1フレーム分の画像の中に生じるのをより一層、低減することができる。
【0050】
上記実施の形態において、補正係数Lは、例えば、図12に示したように、平均値差ΔAVGが所定の閾値Vth1以上、所定の閾値Vth2以下のとき、平均値差ΔAVGが大きくなるにつれて放物線状に大きくなる値となっていてもよい。このようにした場合には、有効画素領域への光入射の影響を急速に低減することができる。
【0051】
上記実施の形態において、補正係数Lは、例えば、図13に示したように、平均値差ΔAVGが0以上、所定の閾値Vth2以下のとき、平均値差ΔAVGが大きくなるにつれて線形状に大きくなる値となっていてもよい。このようにした場合には、有効画素領域への光入射の影響の可能性を最大限、なくすことができる。
【0052】
[変形例B]
上記実施の形態およびその変形例において、画素アレイ部112が、例えば、図3に示したように、画素アレイ部111の、行方向における両側にそれぞれ配置されている場合には、信号処理部210は、例えば、図14に示したように、左側検出部210Aと、右側検出部210Bとを有していてもよい。
【0053】
このとき、左側検出部210Aは、画素アレイ部111の、行方向における左側に配置された画素アレイ部112を用いた信号検出を行うものである。左側検出部210Aは、例えば、全体積算部211、内側平均値算出部212、外側平均値算出部213、減算部214、補正係数算出部215、乗算部216、減算部217および平均値算出部218を有する。右側検出部210Bは、画素アレイ部111の、行方向における右側に配置された画素アレイ部112を用いた信号検出を行うものである。左側検出部210Bは、例えば、全体積算部211、内側平均値算出部212、外側平均値算出部213、減算部214、補正係数算出部215、乗算部216、減算部217および平均値算出部218を有する。
【0054】
信号処理部210は、さらに、例えば、図14に示したように、補正部219および左右間補間部220を有していてもよい。このとき、左右間補間部220は、左側検出部210Aで得られたオフセット量So(=SoL)と、右側検出部210Bで得られたオフセット量So(=SoR)との間に差異がある場合に、その差異を考慮した新たなオフセット量So’を導出する。左右間補間部220は、例えば、図15に示したように、効画素領域における左端の画素111aをX=0とし、効画素領域における右端の画素111aをX=Nとする以下の式で導出される値をオフセット量So’としてもよい。
So’=((SoR-SoL)/N)×X+SoL
【0055】
補正部219は、有効画素領域における各画素111aから得られた画素信号からオフセット量So’を減じる処理を行単位で実行する。補正部219は、このようにして黒レベルを補正した画素信号を信号処理LSI200に出力する。このようにした場合には、有効画素の黒レベルがX方向(行方向)に傾斜をもっていた場合であっても、黒レベルを精度よく補正することができる。
【0056】
[変形例C]
上記実施の形態およびその変形例において、画素アレイ部110が、例えば、図15に示したように、画素アレイ部111の、列方向に隣接する画素アレイ部113を更に含んで構成されていてもよい。このとき、画素アレイ部113では、複数の画素113aが行列(アレイ)状に配置される。各画素113aは、光電変換を行うフォトダイオードを含んで構成される。イメージセンサ100において画素アレイ部113が設けられた領域は、イメージセンサ100の受光面に隣接する周辺画素領域であって、かつメタル等で遮光された領域(VOPB(Vertical Optical Black)領域)に相当する。
【0057】
本変形例において、ライン信号Slに含まれる画素信号の総数Nmは、例えば、200となっている。ライン信号Slに含まれる周辺画素信号Shの数(サンプル数)は、例えば、16となっている。ライン信号Slに含まれる有効画素信号Svの数(サンプル数)は、例えば、184となっている。ライン信号Slに含まれる内側信号Saの数(サンプル数)は、例えば、8となっている。ライン信号Slに含まれる外側信号Sbの数(サンプル数)は、例えば、192となっている。
【0058】
イメージセンサ100は、各画素113aでの光電変換により得られた各画素113aの画素値をA/D変換することで、黒レベルもしくは黒レベルに近いレベルの画像データ(以降では、「第3画像データ」と称する)を生成する。第3画像データは、各画素113aから得られた複数の画素信号(デジタル信号)によって構成される。イメージセンサ100は、生成した画像データ(第1画像データ、第2画像データおよび第3画像データ)を信号処理LSI200に出力する。
【0059】
信号処理LSI200は、イメージセンサ100から出力された画像データ(第1画像データ、第2画像データおよび第3画像データ)を取得する。信号処理LSI200は、取得した第1画像データに対して所定の信号処理を施し、信号処理後の画像データを、例えば、表示部に画像として表示させる。これにより、ユーザは、撮像された画像を、表示部を介して確認することが可能となる。
【0060】
信号処理部210は、画像データ(第1画像データ、第2画像データおよび第3画像データ)を用いた黒レベル補正(クランプ処理)を行う。信号処理部210は、例えば、図16に示したように、左側検出部210Aと右側検出部210Bとを有していてもよい。
【0061】
このとき、左側検出部210Aは、画素アレイ部111の、行方向における左側に配置された画素アレイ部112と、画素アレイ部113とを用いた信号検出を行うものである。左側検出部210Aは、例えば、全体平均値算出部221、VOPB平均値算出部222、内側平均値算出部212、外側平均値算出部213、減算部214、補正係数算出部215およびブレンド部223を有する。
【0062】
右側検出部210Bは、画素アレイ部111の、行方向における右側に配置された画素アレイ部112と、画素アレイ部113とを用いた信号検出を行うものである。左側検出部210Bは、例えば、全体平均値算出部221、VOPB平均値算出部222、内側平均値算出部212、外側平均値算出部213、減算部214、補正係数算出部215およびブレンド部223を有する。
【0063】
左側検出部210Aにおいて、全体平均値算出部221は、HOPB領域における複数の画素112aと、有効画素領域における複数の画素111a’とから得られる複数の画素信号の平均値S_avg1を行単位で算出する。右側検出部210Bにおいて、全体平均値算出部221は、HOPB領域における複数の画素112aと、有効画素領域における複数の画素111a’とから得られる複数の画素信号の平均値S_avg2を行単位で算出する。左側検出部210Aおよび右側検出部210Bにおいて、平均値算出部222は、VOPB領域における複数の画素113aから得られる複数の画素信号の平均値S_avg3を算出する。
【0064】
左側検出部210Aにおいて、ブレンド部223は、平均値S_avg1、平均値S_avg3、および補正係数Lを用いて、オフセット量Soを導出する。ブレンド部223は、例えば、以下の式を用いてオフセット量Soを導出する。
So=(S_avg1×(Na-L)+S_avg3×L)/Na
【0065】
この式からは、有効画素領域内の全ての画素111a’に光が入射している場合、有効画素領域における複数の画素111a’をオフセット量Soの導出に使わず、VOPB領域における複数の画素113aをオフセット量Soの導出に使うことがわかる。つまり、ブレンド部223は、有効画素領域に対する光入射に応じて、有効画素領域をオフセット量Soの導出に用いるか否かを判定するようになっていてもよい。
【0066】
本変形例では、VOPB領域における複数の画素113aから得られる複数の画素信号もオフセット量Soの導出に用いられる。これにより、上記で例示したように、HOPB領域の画素数を少なくせざるを得ない場合であっても、黒レベルを精度よく補正することができる。
【0067】
[変形例D]
上記実施の形態およびその変形例において、ライン信号Slに含まれる周辺画素信号Shの数(サンプル数)が、ライン信号Slに含まれる有効画素信号Svの数(サンプル数)よりも少なくなっていてもよい。この場合、総数Nmは、例えば、200となっている。ライン信号Slに含まれる周辺画素信号Shの数(サンプル数)は、例えば、64となっている。また、ライン信号Slに含まれる有効画素信号Svの数(サンプル数)は、例えば、136となっている。
【0068】
ライン信号Slに含まれる周辺画素信号Shの数(サンプル数)が、例えば、更に少ない16となっており、ライン信号Slに含まれる有効画素信号Svの数(サンプル数)が、例えば、192となっていてもよい。このようにした場合、変形例Cに記載したように、VOPB領域に複数の画素113aを設け、VOPB領域における複数の画素113aから得られる複数の画素信号もオフセット量Soの導出に用いることが好ましい。その結果、オフセット量Soを精度よく推定することができる。
【0069】
<4.応用例>
[応用例1]
本開示に係る技術(本技術)は、様々な製品へ応用することができる。例えば、本開示に係る技術は、自動車、電気自動車、ハイブリッド電気自動車、自動二輪車、自転車、パーソナルモビリティ、飛行機、ドローン、船舶、ロボット等のいずれかの種類の移動体に搭載される装置として実現されてもよい。
【0070】
図18は、本開示に係る技術が適用され得る移動体制御システムの一例である車両制御システムの概略的な構成例を示すブロック図である。
【0071】
車両制御システム12000は、通信ネットワーク12001を介して接続された複数の電子制御ユニットを備える。図18に示した例では、車両制御システム12000は、駆動系制御ユニット12010、ボディ系制御ユニット12020、車外情報検出ユニット12030、車内情報検出ユニット12040、及び統合制御ユニット12050を備える。また、統合制御ユニット12050の機能構成として、マイクロコンピュータ12051、音声画像出力部12052、及び車載ネットワークI/F(interface)12053が図示されている。
【0072】
駆動系制御ユニット12010は、各種プログラムにしたがって車両の駆動系に関連する装置の動作を制御する。例えば、駆動系制御ユニット12010は、内燃機関又は駆動用モータ等の車両の駆動力を発生させるための駆動力発生装置、駆動力を車輪に伝達するための駆動力伝達機構、車両の舵角を調節するステアリング機構、及び、車両の制動力を発生させる制動装置等の制御装置として機能する。
【0073】
ボディ系制御ユニット12020は、各種プログラムにしたがって車体に装備された各種装置の動作を制御する。例えば、ボディ系制御ユニット12020は、キーレスエントリシステム、スマートキーシステム、パワーウィンドウ装置、あるいは、ヘッドランプ、バックランプ、ブレーキランプ、ウィンカー又はフォグランプ等の各種ランプの制御装置として機能する。この場合、ボディ系制御ユニット12020には、鍵を代替する携帯機から発信される電波又は各種スイッチの信号が入力され得る。ボディ系制御ユニット12020は、これらの電波又は信号の入力を受け付け、車両のドアロック装置、パワーウィンドウ装置、ランプ等を制御する。
【0074】
車外情報検出ユニット12030は、車両制御システム12000を搭載した車両の外部の情報を検出する。例えば、車外情報検出ユニット12030には、撮像部12031が接続される。車外情報検出ユニット12030は、撮像部12031に車外の画像を撮像させるとともに、撮像された画像を受信する。車外情報検出ユニット12030は、受信した画像に基づいて、人、車、障害物、標識又は路面上の文字等の物体検出処理又は距離検出処理を行ってもよい。
【0075】
撮像部12031は、光を受光し、その光の受光量に応じた電気信号を出力する光センサである。撮像部12031は、電気信号を画像として出力することもできるし、測距の情報として出力することもできる。また、撮像部12031が受光する光は、可視光であっても良いし、赤外線等の非可視光であっても良い。
【0076】
車内情報検出ユニット12040は、車内の情報を検出する。車内情報検出ユニット12040には、例えば、運転者の状態を検出する運転者状態検出部12041が接続される。運転者状態検出部12041は、例えば運転者を撮像するカメラを含み、車内情報検出ユニット12040は、運転者状態検出部12041から入力される検出情報に基づいて、運転者の疲労度合い又は集中度合いを算出してもよいし、運転者が居眠りをしていないかを判別してもよい。
【0077】
マイクロコンピュータ12051は、車外情報検出ユニット12030又は車内情報検出ユニット12040で取得される車内外の情報に基づいて、駆動力発生装置、ステアリング機構又は制動装置の制御目標値を演算し、駆動系制御ユニット12010に対して制御指令を出力することができる。例えば、マイクロコンピュータ12051は、車両の衝突回避あるいは衝撃緩和、車間距離に基づく追従走行、車速維持走行、車両の衝突警告、又は車両のレーン逸脱警告等を含むADAS(Advanced Driver Assistance System)の機能実現を目的とした協調制御を行うことができる。
【0078】
また、マイクロコンピュータ12051は、車外情報検出ユニット12030又は車内情報検出ユニット12040で取得される車両の周囲の情報に基づいて駆動力発生装置、ステアリング機構又は制動装置等を制御することにより、運転者の操作に拠らずに自律的に走行する自動運転等を目的とした協調制御を行うことができる。
【0079】
また、マイクロコンピュータ12051は、車外情報検出ユニット12030で取得される車外の情報に基づいて、ボディ系制御ユニット12020に対して制御指令を出力することができる。例えば、マイクロコンピュータ12051は、車外情報検出ユニット12030で検出した先行車又は対向車の位置に応じてヘッドランプを制御し、ハイビームをロービームに切り替える等の防眩を図ることを目的とした協調制御を行うことができる。
【0080】
音声画像出力部12052は、車両の搭乗者又は車外に対して、視覚的又は聴覚的に情報を通知することが可能な出力装置へ音声及び画像のうちの少なくとも一方の出力信号を送信する。図18の例では、出力装置として、オーディオスピーカ12061、表示部12062及びインストルメントパネル12063が例示されている。表示部12062は、例えば、オンボードディスプレイ及びヘッドアップディスプレイの少なくとも一つを含んでいてもよい。
【0081】
図19は、撮像部12031の設置位置の例を示す図である。
【0082】
車両12100は、撮像部12031として、撮像部12101,12102,12103,12104,12105を有する。
【0083】
撮像部12101,12102,12103,12104,12105は、例えば、車両12100のフロントノーズ、サイドミラー、リアバンパ、バックドア及び車室内のフロントガラスの上部等の位置に設けられる。フロントノーズに備えられる撮像部12101及び車室内のフロントガラスの上部に備えられる撮像部12105は、主として車両12100の前方の画像を取得する。サイドミラーに備えられる撮像部12102,12103は、主として車両12100の側方の画像を取得する。リアバンパ又はバックドアに備えられる撮像部12104は、主として車両12100の後方の画像を取得する。撮像部12101及び12105で取得される前方の画像は、主として先行車両又は、歩行者、障害物、信号機、交通標識又は車線等の検出に用いられる。
【0084】
なお、図19には、撮像部12101ないし12104の撮影範囲の一例が示されている。撮像範囲12111は、フロントノーズに設けられた撮像部12101の撮像範囲を示し、撮像範囲12112,12113は、それぞれサイドミラーに設けられた撮像部12102,12103の撮像範囲を示し、撮像範囲12114は、リアバンパ又はバックドアに設けられた撮像部12104の撮像範囲を示す。例えば、撮像部12101ないし12104で撮像された画像データが重ね合わせられることにより、車両12100を上方から見た俯瞰画像が得られる。
【0085】
撮像部12101ないし12104の少なくとも1つは、距離情報を取得する機能を有していてもよい。例えば、撮像部12101ないし12104の少なくとも1つは、複数の撮像素子からなるステレオカメラであってもよいし、位相差検出用の画素を有する撮像素子であってもよい。
【0086】
例えば、マイクロコンピュータ12051は、撮像部12101ないし12104から得られた距離情報を基に、撮像範囲12111ないし12114内における各立体物までの距離と、この距離の時間的変化(車両12100に対する相対速度)を求めることにより、特に車両12100の進行路上にある最も近い立体物で、車両12100と略同じ方向に所定の速度(例えば、0km/h以上)で走行する立体物を先行車として抽出することができる。さらに、マイクロコンピュータ12051は、先行車の手前に予め確保すべき車間距離を設定し、自動ブレーキ制御(追従停止制御も含む)や自動加速制御(追従発進制御も含む)等を行うことができる。このように運転者の操作に拠らずに自律的に走行する自動運転等を目的とした協調制御を行うことができる。
【0087】
例えば、マイクロコンピュータ12051は、撮像部12101ないし12104から得られた距離情報を元に、立体物に関する立体物データを、2輪車、普通車両、大型車両、歩行者、電柱等その他の立体物に分類して抽出し、障害物の自動回避に用いることができる。例えば、マイクロコンピュータ12051は、車両12100の周辺の障害物を、車両12100のドライバが視認可能な障害物と視認困難な障害物とに識別する。そして、マイクロコンピュータ12051は、各障害物との衝突の危険度を示す衝突リスクを判断し、衝突リスクが設定値以上で衝突可能性がある状況であるときには、オーディオスピーカ12061や表示部12062を介してドライバに警報を出力することや、駆動系制御ユニット12010を介して強制減速や回避操舵を行うことで、衝突回避のための運転支援を行うことができる。
【0088】
撮像部12101ないし12104の少なくとも1つは、赤外線を検出する赤外線カメラであってもよい。例えば、マイクロコンピュータ12051は、撮像部12101ないし12104の撮像画像中に歩行者が存在するか否かを判定することで歩行者を認識することができる。かかる歩行者の認識は、例えば赤外線カメラとしての撮像部12101ないし12104の撮像画像における特徴点を抽出する手順と、物体の輪郭を示す一連の特徴点にパターンマッチング処理を行って歩行者か否かを判別する手順によって行われる。マイクロコンピュータ12051が、撮像部12101ないし12104の撮像画像中に歩行者が存在すると判定し、歩行者を認識すると、音声画像出力部12052は、当該認識された歩行者に強調のための方形輪郭線を重畳表示するように、表示部12062を制御する。また、音声画像出力部12052は、歩行者を示すアイコン等を所望の位置に表示するように表示部12062を制御してもよい。
【0089】
以上、本開示に係る技術が適用され得る移動体制御システムの一例について説明した。本開示に係る技術は、以上説明した構成のうち、撮像部12031に適用され得る。具体的には、撮像装置3は、撮像部12031に適用することができる。撮像部12031に本開示に係る技術を適用することにより、高画質な撮影画像を得ることができるので、移動体制御システムにおいて撮影画像を利用した高精度な制御を行うことができる。
【0090】
[応用例2]
図20は、本開示に係る技術(本技術)が適用され得る内視鏡手術システムの概略的な構成の一例を示す図である。
【0091】
図20では、術者(医師)11131が、内視鏡手術システム11000を用いて、患者ベッド11133上の患者11132に手術を行っている様子が図示されている。図示するように、内視鏡手術システム11000は、内視鏡11100と、気腹チューブ11111やエネルギー処置具11112等の、その他の術具11110と、内視鏡11100を支持する支持アーム装置11120と、内視鏡下手術のための各種の装置が搭載されたカート11200と、から構成される。
【0092】
内視鏡11100は、先端から所定の長さの領域が患者11132の体腔内に挿入される鏡筒11101と、鏡筒11101の基端に接続されるカメラヘッド11102と、から構成される。図示する例では、硬性の鏡筒11101を有するいわゆる硬性鏡として構成される内視鏡11100を図示しているが、内視鏡11100は、軟性の鏡筒を有するいわゆる軟性鏡として構成されてもよい。
【0093】
鏡筒11101の先端には、対物レンズが嵌め込まれた開口部が設けられている。内視鏡11100には光源装置11203が接続されており、当該光源装置11203によって生成された光が、鏡筒11101の内部に延設されるライトガイドによって当該鏡筒の先端まで導光され、対物レンズを介して患者11132の体腔内の観察対象に向かって照射される。なお、内視鏡11100は、直視鏡であってもよいし、斜視鏡又は側視鏡であってもよい。
【0094】
カメラヘッド11102の内部には光学系及び撮像素子が設けられており、観察対象からの反射光(観察光)は当該光学系によって当該撮像素子に集光される。当該撮像素子によって観察光が光電変換され、観察光に対応する電気信号、すなわち観察像に対応する画像信号が生成される。当該画像信号は、RAWデータとしてカメラコントロールユニット(CCU: Camera Control Unit)11201に送信される。
【0095】
CCU11201は、CPU(Central Processing Unit)やGPU(Graphics Processing Unit)等によって構成され、内視鏡11100及び表示装置11202の動作を統括的に制御する。さらに、CCU11201は、カメラヘッド11102から画像信号を受け取り、その画像信号に対して、例えば現像処理(デモザイク処理)等の、当該画像信号に基づく画像を表示するための各種の画像処理を施す。
【0096】
表示装置11202は、CCU11201からの制御により、当該CCU11201によって画像処理が施された画像信号に基づく画像を表示する。
【0097】
光源装置11203は、例えばLED(Light Emitting Diode)等の光源から構成され、術部等を撮影する際の照射光を内視鏡11100に供給する。
【0098】
入力装置11204は、内視鏡手術システム11000に対する入力インタフェースである。ユーザは、入力装置11204を介して、内視鏡手術システム11000に対して各種の情報の入力や指示入力を行うことができる。例えば、ユーザは、内視鏡11100による撮像条件(照射光の種類、倍率及び焦点距離等)を変更する旨の指示等を入力する。
【0099】
処置具制御装置11205は、組織の焼灼、切開又は血管の封止等のためのエネルギー処置具11112の駆動を制御する。気腹装置11206は、内視鏡11100による視野の確保及び術者の作業空間の確保の目的で、患者11132の体腔を膨らめるために、気腹チューブ11111を介して当該体腔内にガスを送り込む。レコーダ11207は、手術に関する各種の情報を記録可能な装置である。プリンタ11208は、手術に関する各種の情報を、テキスト、画像又はグラフ等各種の形式で印刷可能な装置である。
【0100】
なお、内視鏡11100に術部を撮影する際の照射光を供給する光源装置11203は、例えばLED、レーザ光源又はこれらの組み合わせによって構成される白色光源から構成することができる。RGBレーザ光源の組み合わせにより白色光源が構成される場合には、各色(各波長)の出力強度及び出力タイミングを高精度に制御することができるため、光源装置11203において撮像画像のホワイトバランスの調整を行うことができる。また、この場合には、RGBレーザ光源それぞれからのレーザ光を時分割で観察対象に照射し、その照射タイミングに同期してカメラヘッド11102の撮像素子の駆動を制御することにより、RGBそれぞれに対応した画像を時分割で撮像することも可能である。当該方法によれば、当該撮像素子にカラーフィルタを設けなくても、カラー画像を得ることができる。
【0101】
また、光源装置11203は、出力する光の強度を所定の時間ごとに変更するようにその駆動が制御されてもよい。その光の強度の変更のタイミングに同期してカメラヘッド11102の撮像素子の駆動を制御して時分割で画像を取得し、その画像を合成することにより、いわゆる黒つぶれ及び白とびのない高ダイナミックレンジの画像を生成することができる。
【0102】
また、光源装置11203は、特殊光観察に対応した所定の波長帯域の光を供給可能に構成されてもよい。特殊光観察では、例えば、体組織における光の吸収の波長依存性を利用して、通常の観察時における照射光(すなわち、白色光)に比べて狭帯域の光を照射することにより、粘膜表層の血管等の所定の組織を高コントラストで撮影する、いわゆる狭帯域光観察(Narrow Band Imaging)が行われる。あるいは、特殊光観察では、励起光を照射することにより発生する蛍光により画像を得る蛍光観察が行われてもよい。蛍光観察では、体組織に励起光を照射し当該体組織からの蛍光を観察すること(自家蛍光観察)、又はインドシアニングリーン(ICG)等の試薬を体組織に局注するとともに当該体組織にその試薬の蛍光波長に対応した励起光を照射し蛍光像を得ること等を行うことができる。光源装置11203は、このような特殊光観察に対応した狭帯域光及び/又は励起光を供給可能に構成され得る。
【0103】
図21は、図20に示すカメラヘッド11102及びCCU11201の機能構成の一例を示すブロック図である。
【0104】
カメラヘッド11102は、レンズユニット11401と、撮像部11402と、駆動部11403と、通信部11404と、カメラヘッド制御部11405と、を有する。CCU11201は、通信部11411と、画像処理部11412と、制御部11413と、を有する。カメラヘッド11102とCCU11201とは、伝送ケーブル11400によって互いに通信可能に接続されている。
【0105】
レンズユニット11401は、鏡筒11101との接続部に設けられる光学系である。鏡筒11101の先端から取り込まれた観察光は、カメラヘッド11102まで導光され、当該レンズユニット11401に入射する。レンズユニット11401は、ズームレンズ及びフォーカスレンズを含む複数のレンズが組み合わされて構成される。
【0106】
撮像部11402は、撮像素子で構成される。撮像部11402を構成する撮像素子は、1つ(いわゆる単板式)であってもよいし、複数(いわゆる多板式)であってもよい。撮像部11402が多板式で構成される場合には、例えば各撮像素子によってRGBそれぞれに対応する画像信号が生成され、それらが合成されることによりカラー画像が得られてもよい。あるいは、撮像部11402は、3D(Dimensional)表示に対応する右目用及び左目用の画像信号をそれぞれ取得するための1対の撮像素子を有するように構成されてもよい。3D表示が行われることにより、術者11131は術部における生体組織の奥行きをより正確に把握することが可能になる。なお、撮像部11402が多板式で構成される場合には、各撮像素子に対応して、レンズユニット11401も複数系統設けられ得る。
【0107】
また、撮像部11402は、必ずしもカメラヘッド11102に設けられなくてもよい。例えば、撮像部11402は、鏡筒11101の内部に、対物レンズの直後に設けられてもよい。
【0108】
駆動部11403は、アクチュエータによって構成され、カメラヘッド制御部11405からの制御により、レンズユニット11401のズームレンズ及びフォーカスレンズを光軸に沿って所定の距離だけ移動させる。これにより、撮像部11402による撮像画像の倍率及び焦点が適宜調整され得る。
【0109】
通信部11404は、CCU11201との間で各種の情報を送受信するための通信装置によって構成される。通信部11404は、撮像部11402から得た画像信号をRAWデータとして伝送ケーブル11400を介してCCU11201に送信する。
【0110】
また、通信部11404は、CCU11201から、カメラヘッド11102の駆動を制御するための制御信号を受信し、カメラヘッド制御部11405に供給する。当該制御信号には、例えば、撮像画像のフレームレートを指定する旨の情報、撮像時の露出値を指定する旨の情報、並びに/又は撮像画像の倍率及び焦点を指定する旨の情報等、撮像条件に関する情報が含まれる。
【0111】
なお、上記のフレームレートや露出値、倍率、焦点等の撮像条件は、ユーザによって適宜指定されてもよいし、取得された画像信号に基づいてCCU11201の制御部11413によって自動的に設定されてもよい。後者の場合には、いわゆるAE(Auto Exposure)機能、AF(Auto Focus)機能及びAWB(Auto White Balance)機能が内視鏡11100に搭載されていることになる。
【0112】
カメラヘッド制御部11405は、通信部11404を介して受信したCCU11201からの制御信号に基づいて、カメラヘッド11102の駆動を制御する。
【0113】
通信部11411は、カメラヘッド11102との間で各種の情報を送受信するための通信装置によって構成される。通信部11411は、カメラヘッド11102から、伝送ケーブル11400を介して送信される画像信号を受信する。
【0114】
また、通信部11411は、カメラヘッド11102に対して、カメラヘッド11102の駆動を制御するための制御信号を送信する。画像信号や制御信号は、電気通信や光通信等によって送信することができる。
【0115】
画像処理部11412は、カメラヘッド11102から送信されたRAWデータである画像信号に対して各種の画像処理を施す。
【0116】
制御部11413は、内視鏡11100による術部等の撮像、及び、術部等の撮像により得られる撮像画像の表示に関する各種の制御を行う。例えば、制御部11413は、カメラヘッド11102の駆動を制御するための制御信号を生成する。
【0117】
また、制御部11413は、画像処理部11412によって画像処理が施された画像信号に基づいて、術部等が映った撮像画像を表示装置11202に表示させる。この際、制御部11413は、各種の画像認識技術を用いて撮像画像内における各種の物体を認識してもよい。例えば、制御部11413は、撮像画像に含まれる物体のエッジの形状や色等を検出することにより、鉗子等の術具、特定の生体部位、出血、エネルギー処置具11112の使用時のミスト等を認識することができる。制御部11413は、表示装置11202に撮像画像を表示させる際に、その認識結果を用いて、各種の手術支援情報を当該術部の画像に重畳表示させてもよい。手術支援情報が重畳表示され、術者11131に提示されることにより、術者11131の負担を軽減することや、術者11131が確実に手術を進めることが可能になる。
【0118】
カメラヘッド11102及びCCU11201を接続する伝送ケーブル11400は、電気信号の通信に対応した電気信号ケーブル、光通信に対応した光ファイバ、又はこれらの複合ケーブルである。
【0119】
ここで、図示する例では、伝送ケーブル11400を用いて有線で通信が行われていたが、カメラヘッド11102とCCU11201との間の通信は無線で行われてもよい。
【0120】
以上、本開示に係る技術が適用され得る内視鏡手術システムの一例について説明した。本開示に係る技術は、以上説明した構成のうち、内視鏡11100のカメラヘッド11102に設けられた撮像部11402に好適に適用され得る。撮像部11402に本開示に係る技術を適用することにより、高画質な撮影画像を得ることができるので、高画質な内視鏡11100を提供することができる。
【0121】
以上、実施の形態およびその変形例、適用例および応用例を挙げて本開示を説明したが、本開示は実施の形態等に限定されるものではなく、種々変形が可能である。なお、本明細書中に記載された効果は、あくまで例示である。本開示の効果は、本明細書中に記載された効果に限定されるものではない。本開示が、本明細書中に記載された効果以外の効果を持っていてもよい。
【0122】
また、本開示は、以下のような構成を取ることも可能である。
(1)
受光面に設けられ、複数の第1画素が行列状に配置された有効画素領域と、前記受光面の行方向に隣接する遮光領域に設けられ、複数の第2画素が行列状に配置された周辺画素領域とを備えた撮像装置の信号処理方法であって、
前記複数の第2画素と、前記有効画素領域のうち、前記周辺画素領域に隣接する領域内の複数の第1画素である複数の隣接画素とから得られる複数の画素信号とを行単位で処理することにより、黒レベルのオフセット量を行単位で算出することと、
前記複数の第1画素から得られた複数の画素信号に対して、前記オフセット量を用いた黒レベル補正を行単位で行うことと
を含む
信号処理方法。
(2)
前記複数の第2画素および前記複数の隣接画素における各行の複数の画素信号をライン信号としたとき、前記ライン信号における前記有効画素領域寄りの複数の画素信号の平均値である第1平均値と、前記ライン信号における前記周辺画素領域寄りの複数の画素信号の平均値である第2平均値との差分と、前記ライン信号に含まれる全ての画素信号の積算値とを用いて前記オフセット量を導出することを更に含む
(1)に記載の信号処理方法。
(3)
前記差分が大きくなるにつれて大きくなる係数を前記差分に掛けることにより得られる値と、前記積算値とを用いて前記オフセット量を導出することを更に含む
(2)に記載の信号処理方法。
(4)
前記ライン信号における前記有効画素領域寄りの複数の画素信号は、前記ライン信号における前記有効画素領域内の複数の第1画素と、前記ライン信号における前記周辺画素領域内の複数の第2画素であって、かつ前記有効画素領域寄りの複数の第2画素とから得られる複数の画素信号であり、
前記ライン信号における前記周辺画素領域寄りの複数の画素信号は、前記ライン信号における前記周辺画素領域内の複数の第2画素であって、かつ前記有効画素領域から離れた複数の第2画素から得られる複数の画素信号である
(1)ないし(3)のいずれかつに記載の信号処理方法。
(5)
受光面に設けられ、複数の第1画素が行列状に配置された有効画素領域と、前記受光面の行方向に隣接する遮光領域に設けられ、複数の第2画素が行列状に配置された周辺画素領域とを備えた撮像装置における信号処理装置であって、
前記複数の第2画素と、前記有効画素領域のうち、前記周辺画素領域に隣接する領域内の複数の第1画素である複数の隣接画素とから得られる複数の画素信号とを行単位で処理することにより、黒レベルのオフセット量を行単位で算出するオフセット量算出部と、
前記複数の第1画素から得られた複数の画素信号に対して、前記オフセット量を用いた黒レベル補正を行単位で行う黒レベル補正部と
を備えた
信号処理装置。
(6)
受光面に設けられ、複数の第1画素が行列状に配置された有効画素領域と、
前記受光面の行方向に隣接する遮光領域に設けられ、複数の第2画素が行列状に配置された周辺画素領域と、
前記複数の第2画素と、前記有効画素領域のうち、前記周辺画素領域に隣接する領域内の複数の第1画素である複数の隣接画素とから得られる複数の画素信号とを行単位で処理することにより、黒レベルのオフセット量を行単位で算出するオフセット量算出部と、
前記複数の第1画素から得られた複数の画素信号に対して、前記オフセット量を用いた黒レベル補正を行単位で行う黒レベル補正部と
を備えた
撮像装置。
(7)
前記オフセット量算出部は、前記複数の第2画素および前記複数の隣接画素における各行の複数の画素信号をライン信号としたとき、前記ライン信号における前記有効画素領域寄りの複数の画素信号の平均値である第1平均値と、前記ライン信号における前記周辺画素領域寄りの複数の画素信号の平均値である第2平均値との差分と、前記ライン信号に含まれる全ての画素信号の積算値とを用いて前記オフセット量を導出する
(6)に記載の撮像装置。
(8)
前記オフセット量算出部は、前記差分が大きくなるにつれて大きくなる係数を前記差分に掛けることにより得られる値と、前記積算値とを用いて前記オフセット量を導出する
(7)に記載の撮像装置。
(9)
前記ライン信号における前記有効画素領域寄りの複数の画素信号は、前記ライン信号における前記有効画素領域内の複数の第1画素と、前記ライン信号における前記周辺画素領域内の複数の第2画素であって、かつ前記有効画素領域寄りの複数の第2画素とから得られる複数の画素信号であり、
前記ライン信号における前記周辺画素領域寄りの複数の画素信号は、前記ライン信号における前記周辺画素領域内の複数の第2画素であって、かつ前記有効画素領域から離れた複数の第2画素から得られる複数の画素信号である
(6)ないし(8)のいずれかつに記載の撮像装置。
【0123】
本開示の一実施の形態に係る信号処理方法、信号処理装置および撮像装置では、有効画素領域の行方向に隣接する周辺画素領域内の複数の第2画素と、有効画素領域のうち、周辺画素領域に隣接する領域内の複数の第1画素である複数の隣接画素とから得られる複数の画素信号を処理することにより、黒レベルのオフセット量が算出される。これにより、周辺画素領域の画素数を大幅に増やすことなく、フレーム間での黒レベルのばらつきを抑えることができる。また、本実施の形態では、黒レベルのオフセット量が行単位で算出される。これにより、1フレーム分の遅延を発生させることなく、黒レベル補正を行うことができる。その結果、補正による遅延を抑制することができる。
【符号の説明】
【0124】
1…カメラモジュール、100…イメージセンサ、110,111,112,113…画素アレイ部、111a,112a,113a…画素、200…信号処理LSI、210…信号処理部、210A…左側検出部、210B…右側検出部、211…全体積算部、212…内側平均値算出部、213…外側平均値算出部、214…減算部、215…補正係数算出部、216…乗算部、217…減算部、218…平均値算出部、219…補正部、220…左右間補間部、221…全体平均値算出部、222…VOPB平均値算出部、223…ブレンド部、1110…画素アレイ部、1111…有効画素領域、1111a,1112a…画素、1112…OPB領域、L…補正係数、Na…内側信号サンプル数、Sa…内側信号、Sa_avg…内側信号平均値、Sb…外側信号、Sb_avg…外側信号平均値、Sh…周辺画素信号、Sl…ライン信号、Sl_avg…ライン平均値、So…オフセット量、Sv…有効画素信号、Vth1,Vth2,Vth3,Vth4…閾値、ΔAVG…平均値差。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
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