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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022184433
(43)【公開日】2022-12-13
(54)【発明の名称】基礎構造およびその構築方法
(51)【国際特許分類】
   E02D 27/01 20060101AFI20221206BHJP
   E02D 27/50 20060101ALI20221206BHJP
【FI】
E02D27/01 Z
E02D27/50
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021092279
(22)【出願日】2021-06-01
(71)【出願人】
【識別番号】000206211
【氏名又は名称】大成建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】市川 直樹
(72)【発明者】
【氏名】千野 和彦
【テーマコード(参考)】
2D046
【Fターム(参考)】
2D046BA00
(57)【要約】
【課題】基礎の簡略化を図り、材料費や施工費用を低減できる基礎構造を提供する。
【解決手段】地表面に構築される構造物(太陽光パネル架台2)を支持する柱脚体10を備える基礎構造1であって、柱脚体10は、直接基礎部14を有する第一柱脚体11と、杭基礎部16を有する第二柱脚体12とを備えている。第一柱脚体11は、第二柱脚体12および別途地中に埋め込まれた埋設支柱30の少なくとも一方に、引張抵抗材20を介して連結されていることを特徴とする。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
地表面に構築される構造物を支持する柱脚体を備える基礎構造であって、
前記柱脚体は、直接基礎部を有する第一柱脚体と、杭基礎部を有する第二柱脚体とを備えてなり、
前記第一柱脚体は、前記第二柱脚体および別途地中に埋め込まれた埋設支柱の少なくとも一方に、引張抵抗材を介して連結されている
ことを特徴とする基礎構造。
【請求項2】
前記引張抵抗材は、シート状部材からなり、前記直接基礎部の上面および下面を囲うように敷設されている
ことを特徴とする請求項1に記載の基礎構造。
【請求項3】
前記直接基礎部の上部および下部の少なくとも一方には、ハンチが形成されている
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の基礎構造。
【請求項4】
前記構造物は、太陽光パネルを支持する架台である
ことを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載の基礎構造。
【請求項5】
地表面に構築される構造物を支持する柱脚体と、地中に埋め込まれた埋設支柱とを備える基礎構造であって、
前記柱脚体は、直接基礎部および杭基礎部の少なくとも一方を有し、
前記柱脚体は、前記埋設支柱に引張抵抗材を介して連結されている
ことを特徴とする基礎構造。
【請求項6】
地表面に構築された構造物を支持する複数の柱脚体を備える基礎構造であって、
前記柱脚体は、杭基礎部または直接基礎部を有しており、
前記柱脚体同士は、引張抵抗材を介して連結されている
ことを特徴とする基礎構造。
【請求項7】
地表面に構築される構造物を支持する柱脚体を備える基礎構造の構築方法であって、
直接基礎部を有する第一柱脚体と、杭基礎部を有する第二柱脚体とを形成する柱脚体形成工程と、
前記第一柱脚体を、前記第二柱脚体および別途地中に埋め込まれた埋設支柱の少なくともいずれか一方に、引張抵抗材を介して連結する連結工程と、を備えた
ことを特徴とする基礎構造の構築方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基礎構造およびその構築方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば太陽光パネルを固定する太陽光パネル架台は、太陽光パネルを支持する支持部と、支持部を支える支柱とを備えたものが知られていた。支柱は、杭基礎や特許文献1に示す基礎上に設けられている。特許文献1では、地面に溝を掘り、溝の底部に帯状または面状のアンカーシートを敷設し、溝にコンクリートを打設することで、ブロック状の基礎が構築されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2013-253445号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
太陽光パネルは、太陽に対向するように斜めに設置されるので、背面側から正面側に風が吹くと、太陽光パネルに上向きの力が作用し、杭やアンカーシートを引き抜こうとする力が発生する。太陽光パネルや架台の荷重はそれ程大きくないが、強風時などに作用する引抜力に基づいて支柱や基礎の仕様を決定するため、基礎が大掛かりな構造となる。また、太陽光パネル架台では、架台の両端部に設けられる端部支柱の基礎と、架台の中間に設けられる中間支柱の基礎とは、同じ仕様で設計される場合が多く、必要以上の仕様になる基礎が存在し、材料費の増大を招く問題があった。また、杭基礎や特許文献1の基礎では、施工に多くの手間と時間を要し、施工費が増大してしまう。
このような観点から、本発明は、基礎の簡略化を図り、材料費や施工費用を低減できる基礎構造およびその構築方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
このような課題を解決するための第一の本発明は、地表面に構築される構造物を支持する柱脚体を備える基礎構造である。かかる基礎構造の前記柱脚体は、直接基礎部を有する第一柱脚体と、杭基礎部を有する第二柱脚体とを備えてなり、前記第一柱脚体は、前記第二柱脚体および別途地中に埋め込まれた埋設支柱の少なくとも一方に、引張抵抗材を介して連結されていることを特徴とする。
本発明に係る基礎構造によれば、引張抵抗材に第一柱脚体を連結することで、第一柱脚体に作用する引抜力を、第二柱脚体または埋設支柱に伝達することができる。したがって、第一柱脚体は上部構造物の荷重を支えることができれば良く、直接基礎形式としても引抜力に抵抗することができるので、基礎が簡略化され、材料費の増大を防止でき、ひいては施工費用を低減することができる。
本発明の基礎構造において、前記引張抵抗材は、シート状部材からなり、前記直接基礎部の上面および下面を囲うように敷設されているものが好ましい。このような構成によれば、シート状部材で直接基礎部の上面を覆うので、第一柱脚体に作用する引抜力を分散させ易くなる。また、シート状部材で直接基礎部の下面を覆うことで地盤の支持力が増加するので、直接基礎を採用し易くなる。
本発明の基礎構造において、前記直接基礎部の上部および下部の少なくとも一方には、ハンチが形成されているものが好ましい。このような構成によれば、シート状部材で直接基礎部の上面または下面に沿わして設置し易くなる。
本発明の基礎構造において、前記構造物は、太陽光パネルを支持する架台であるものが好ましい。このような構成によれば、太陽光パネルを支持する架台を簡略化された基礎構造で支持することができる。
【0006】
前記課題を解決するための第二の本発明は、地表面に構築される構造物を支持する柱脚体と、地中に埋め込まれた埋設支柱とを備える基礎構造である。かかる基礎構造の前記柱脚体は、直接基礎部および杭基礎部の少なくとも一方を有し、前記柱脚体は、前記埋設支柱に引張抵抗材を介して連結されていることを特徴とする。
本発明に係る基礎構造によれば、引張抵抗材で柱脚体と埋設支柱を連結することで、柱脚体に作用する引抜力を埋設支柱に伝達することができる。したがって、柱脚体は上部構造物の荷重を支えることができれば良く、直接基礎形式としても引抜力に抵抗することができるので、基礎が簡略化され、材料費の増大を防止でき、ひいては施工費用を低減することができる。
前記課題を解決するための第三の本発明は、地表面に構築された構造物を支持する複数の柱脚体を備える基礎構造である。かかる基礎構造の前記柱脚体は、杭基礎部または直接基礎部を有しており、前記柱脚体同士は、引張抵抗材を介して連結されていることを特徴とする。
本発明に係る基礎構造によれば、既存の杭基礎の基礎耐力を向上させることができるので、上部構造物を増加することができる。
前記課題を解決するための第四の本発明は、地表面に構築される構造物を支持する柱脚体を備える基礎構造の構築方法である。かかる基礎構造の構築方法は、直接基礎部を有する第一柱脚体と、杭基礎部を有する第二柱脚体とを形成する柱脚体形成工程と、前記第一柱脚体を、前記第二柱脚体および別途地中に埋め込まれた埋設支柱の少なくともいずれか一方に、引張抵抗材を介して連結する連結工程と、を備えたことを特徴とする。
本発明に係る基礎構造の構築方法によれば、引張抵抗材に第一柱脚体を連結することで、第一柱脚体に作用する引抜力を、第二柱脚体または埋設支柱に伝達することができる。したがって、第一柱脚体は上部構造物の荷重を支えることができれば良く、直接基礎形式としても引抜力に抵抗することができるので、基礎が簡略化され、材料費の増大を防止でき、ひいては施工費用を低減することができる。
【発明の効果】
【0007】
本発明の基礎構造およびその構築方法によれば、基礎の簡略化を図り、材料費や施工費用を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の第一の実施形態に係る基礎構造を備えた太陽光パネル架台を示した図であって、(a)は平面図、(b)は(a)のA-A線断面図、(c)は側面図である。
図2】本発明の第一の実施形態に係る基礎構造を示した要部側面図である。
図3】本発明の第一の実施形態に係る基礎構造の第一の変形例を示した要部側面図である。
図4】本発明の第一の実施形態に係る基礎構造の第二の変形例を示した要部側面図である。
図5】本発明の第二の実施形態に係る基礎構造を備えた太陽光パネル架台を示した側面図である。
図6】既存の太陽光パネル架台を示した図であって、(a)は断面図、(b)は側面図である。
図7】本発明の第三の実施形態に係る基礎構造を備えた太陽光パネル架台を示した図であって、(a)は断面図、(b)は側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の第一の実施形態に係る基礎構造および基礎構造の構築方法について、添付した図面を参照しながら説明する。図1は、基礎構造を備えた太陽光パネル架台を示した図であって、(a)は平面図、(b)は(a)のA-A線断面図、(c)は側面図である。図2は、柱脚体の要部側面図である。本実施形態では、図1に示すように、基礎構造1が太陽光パネル架台2を支持する場合を例に挙げて説明する。以下の説明において、前後左右の方向は、太陽光パネル架台2を正面側から見た際の向きである(図1の(a)参照)。太陽光パネル架台2は、太陽光パネル3を支持する架台であって、柱脚体10と、横桁5と、垂木6と、を備えている。
柱脚体10は、横桁5,垂木6および太陽光パネル3からなる上部構造体を支持する部材であり、複数本設けられている。柱脚体10は、前後左右に所定間隔をあけて、複数列設けられている。柱脚体10は、本発明の基礎構造1の一部を構成するものである。柱脚体10を含む基礎構造1の構成の詳細は後述する。
横桁5は、左右方向に延在する部材であり、前後に間隔をあけて二本設けられている。横桁5は、例えば角型鋼管からなり、左右方向に隣り合う柱脚体10の上端に掛け渡されている。前方の横桁5は、南側に位置し、後方の横桁5よりも低い位置に配置されている。
垂木6は、前後方向に延在する部材であり、左右に間隔をあけて複数本設けられている。垂木6は、太陽光パネル3を固定する部材である。垂木6は、例えば角型鋼管からなり、隣り合う垂木6,6間に太陽光パネル3が掛け渡される。垂木6は、前後の横桁5上に掛け渡されており、後方が高くなるように傾斜している。これによって、太陽光パネル3が南に向かって傾斜し、太陽光を効率的に受光する。
【0010】
基礎構造1は、地表面に構築される構造物(太陽光パネル架台2)を支持する柱脚体10と、引張抵抗材20とを備えている。
柱脚体10は、第一柱脚体11と、第二柱脚体12とを備えてなる。第一柱脚体11は、支柱13と直接基礎部14とを有する支柱部材である。支柱13は、直接基礎部14から上方に向かって立ち上がり、横桁5を支持する。支柱13は、例えば角型鋼管からなる。直接基礎部14は、支柱13の下部に接続された支持プレートにて構成されている。支持プレートは、鋼製または鉄筋コンクリート造の平板部材であり、地盤4の表面の近傍部に載置されている。支持プレートの平面形状は、長期荷重を負担できる寸法であり、死荷重作用時におけるプレート面の接地圧が地耐力以下であるように設定されている。直接基礎部14と支柱13の下端部との接合部には、上向きのハンチ15が設けられている。ハンチ15の側面は上方に向かうにつれて支柱13の側面に近づくように傾斜している。
【0011】
第二柱脚体12は、支柱13と杭基礎部16とを備えている。杭基礎部16は、例えば鋼管杭またはコンクリート杭にて構成されており、地盤4に埋め込まれている。杭基礎部16は、従来の基礎構造と同じ形状であって、短期荷重作用時に支柱13に生じる引抜力に対抗できる形状に設定されている。
本実施形態では、柱脚体10は、左右方向に所定ピッチで5本設けられている。第二柱脚体12は、左右両端部と中間部にそれぞれ配置されており、第一柱脚体11は、左端の第二柱脚体12と中間の第二柱脚体12との間と、右左端の第二柱脚体12と中間の第二柱脚体12との間の二か所にそれぞれ配置されている。左右方向に配置された5本の柱脚体10は、前後方向に間隔をあけて2列設けられている。後方の柱脚体10の支柱13の上端部は、前方の柱脚体10の支柱13の上端部よりも高い位置になっている。なお、柱脚体10の本数および配置は、一例であって、太陽光パネル3の重量、太陽光パネル架台2の形状および大きさ、および地盤の状態等の各種条件に応じて適宜設定される。
【0012】
引張抵抗材20は、第一柱脚体11を第二柱脚体12に連結する部材であって、第一柱脚体11に作用する引抜力F1(図2参照)を第二柱脚体12に伝達する。引張抵抗材20は、シート状部材からなる。シート状部材は、例えば不織布や織布のように透水性のある繊維を材料としたシートにて構成されている。引張抵抗材20は、第一柱脚体11に作用する引抜力F1を第二柱脚体12に伝達可能な強度を備え、張力F2(図2参照)を発揮する。引張抵抗材20は、全柱脚体10の設置領域より大きく、柱脚体10およびその周囲の地盤4を覆うように敷設されている(図1の(a)参照)。なお、引張抵抗材20は、シート状部材に限定されるものではなく、アラミド繊維や樹脂等にて形成された地盤補強用の格子状のグリッド部材(ジオテキスタイル)であってもよい。
引張抵抗材20は、光ファイバーを内蔵したセンサー機能で歪み量管理が可能なものを採用してもよい。このような構成によれば、例えば歪み量が危険領域に達すれば引張抵抗材20を交換することで、長期繰り返し荷重による長期耐久性を管理することができる。
引張抵抗材20は、柱脚体10が挿通される部分で分割されており、支柱13を例えば左右両側から挟むように配置されている。分割された引張抵抗材20の端部には、支柱13の断面と同形状の切欠き部が形成されており、支柱13を両側から挟むことで、支柱13の全周が囲われる。分割された引張抵抗材20の端縁部同士は重合しており、重合部は接合されている。第一柱脚体11を挿通する部分では、引張抵抗材20は、直接基礎部14のハンチ15を上方から覆っている。直接基礎部14の周辺部では、浮上り防止用のピン(図示せず)が、引張抵抗材20の上方から地盤4に向けて差し込まれている。浮上り防止用のピンは所定間隔をあけて直接基礎部14を覆うように配置されている。
なお、引張抵抗材20の柱脚体10周りの構成は、前記構成に限定されるものではない。引張抵抗材20の所定位置に支柱13の挿通孔を形成しておき、柱脚体10を立設した後に、引張抵抗材20を上方から被せて、支柱13を挿通孔に挿通させる構成でもよい。また、第二柱脚体12では、杭基礎部16と支柱13との接続部に定着板(図示せず)を設け、定着板で引張抵抗材20を挟み込んで固定してもよい。
【0013】
次に、本実施形態の基礎構造1の構築方法を説明する。かかる基礎構造1の構築方法は、地盤形成工程と、柱脚体形成工程と、連結工程と、を備えている。
地盤形成工程は、基礎構造1を設置する地盤4を整地して、第一柱脚体11と第二柱脚体12の接地部を形成する工程である。地盤形成工程では、地盤4を水平あるいは一定の傾斜角度に整地する。
柱脚体形成工程は、直接基礎部14を有する第一柱脚体11と、杭基礎部16を有する第二柱脚体12とを地盤4上に立設する工程である。柱脚体形成工程では、直接基礎部14を地盤4上に載置して第一柱脚体11を設置するとともに、杭基礎部16を例えばハンマーで打撃し、所定の深さまで貫入させ第二柱脚体12を設置する。
連結工程は、第一柱脚体11を、引張抵抗材20を介して第二柱脚体12に連結する工程である。連結工程では、分割された引張抵抗材20を、柱脚体10の支柱13を挟むように敷設する。このとき、切欠き部を支柱13に入り込ませるとともに、分割された引張抵抗材20の端縁部同士を重ね合わせる。その後、重合部を接着する。以上の工程で基礎構造1が構築される。
なお、引張抵抗材20が支柱13の挿通孔を備えるものである場合は、引張抵抗材20を、柱脚体10の上方から被せて、支柱13を挿通孔に挿通させて、地盤4上に敷設する。
その後、横桁5と垂木6を設置して太陽光パネル架台2が構築される。
【0014】
本実施形態の基礎構造1およびその構築方法によれば、引張抵抗材20で第一柱脚体11を第二柱脚体12に連結しているので、例えば後方から前方に向かって強風が吹いた時に第一柱脚体11に作用する引抜力F1を、第二柱脚体12に伝達することができる(図2参照)。そして、第二柱脚体12に伝達された力は、地盤4で支持される。したがって、第一柱脚体11は、上部構造物の荷重を支えることができれば良く、直接基礎形式とすることができる。このように、従来、杭基礎を備えた柱脚体を設置していた部分に直接基礎部14を備えた第一柱脚体11を設置することができるので、基礎が簡略化され、材料費の増大を防止でき、ひいては施工費用を低減することができる。
また、引張抵抗材20がシート状部材からなり、直接基礎部14の上面を囲っているので、第一柱脚体11に作用する引抜力F1を分散させ易くなっている。さらに、直接基礎部14の上部にハンチ15が形成されているので、引張抵抗材20を直接基礎部14の上面に沿わして設置し易くなる。さらに、引張抵抗材20と第一柱脚体11との接地面積が大きくなるとともに、傾斜面を介して応力の向きが変えられるので、引抜力F1が引張抵抗材20に円滑に伝達し易くなる。
【0015】
次に、本実施形態の第一の変形例に係る基礎構造を説明する。図3に示すように、第一の変形例では、第一柱脚体11と引張抵抗材20との接続状態が第一の実施形態と異なっている。
本変形例の引張抵抗材20は、直接基礎部14の下面を覆うように構成されている。直接基礎部14の下部には、下向きのハンチ17が形成されている。ハンチ17の側面は、下方に向かって窄まるように傾斜している。引張抵抗材20は、ハンチ17の下側に敷設されている。
前記構成の引張抵抗材20を敷設するに際しては、地盤形成工程において、第一柱脚体11の設置位置に、凹部25を形成する。凹部25は、引張抵抗材20とハンチ17を収容可能な形状に形成する。本変形例の柱脚体形成工程では、第二柱脚体12を先に立設し、第一柱脚体11を後に立設する。第一柱脚体11を立設する前に、引張抵抗材20の敷設を行う。引張抵抗材20は、第一柱脚体11を設置する凹部25を覆って敷設する。第一柱脚体11は、引張抵抗材20の上に載置する。
前記構成の基礎構造によれば、第一柱脚体11の支柱13に押込力F3が作用した際に、押込力F3を引張抵抗材20に分散できるので、地盤4に作用する応力を低減できる。これによって、支柱13の沈下を抑制することができる。また、引張抵抗材20で直接基礎部14の下面を覆うことで地盤4の支持力が増加するので、直接基礎を採用し易くなる。これらの作用効果は、地盤4が弱いときに、より一層有効となる。
【0016】
次に、本実施形態の第二の変形例に係る基礎構造を説明する。図4に示すように、第二の変形例では、第一柱脚体11と引張抵抗材20との接続状態が第一の実施形態と異なっている。
本変形例の引張抵抗材20は、直接基礎部14の上面および下面を覆うように構成されている。直接基礎部14の上部には上向きのハンチ15が形成され、下部には下向きのハンチ17が形成されている。上下の各ハンチ15,17は、前記実施形態と第一の変形例のハンチ15,17と同じ形状であるので説明を省略する。
引張抵抗材20は、ハンチ17の下側に敷設されており、その上部に、直接基礎部14の上面を覆う上部引張抵抗材21が追加して設けられている。上部引張抵抗材21は、直接基礎部14より大きく形成されており、周縁部が下側の引張抵抗材20に接着されている。上部引張抵抗材21の中央部には、支柱13の挿通孔が形成されている。
前記構成の引張抵抗材20を敷設するに際しては、第一の変形例と同様に、地盤形成工程において、第一柱脚体11の設置位置に、凹部25を形成する。柱脚体形成工程では、第二柱脚体12を先に立設し、第一柱脚体11を後に立設する。第一柱脚体11を立設する前に、引張抵抗材20の敷設を行う。引張抵抗材20は、第一柱脚体11を設置する凹部25を覆って敷設する。第一柱脚体11は、引張抵抗材20の上に載置する。その後、上部引張抵抗材21を、上方から被せて、支柱13を挿通孔に挿通させる。そして、上部引張抵抗材21の周縁部を、直接基礎部14の周囲の引張抵抗材20に接着する。
前記構成の基礎構造によれば、前記実施形態のように基礎の簡略化を図り、材料費や施工費用を低減することができるとともに、第一柱脚体11に作用する引抜力と押込力の両方に抵抗することができる。
【0017】
次に、本発明の第二の実施形態に係る基礎構造について、図5を参照しながら説明する。図5は、第二の実施形態に係る基礎構造1aを備える太陽光パネル架台2を示した側面図である。本実施形態の基礎構造1aは、柱脚体10が直接基礎部14を有する第一柱脚体11にて構成された既存の基礎構造を補強するものである。かかる基礎構造1aでは、第一柱脚体11は、図5に示すように、支柱に埋め込まれた埋設支柱30に、引張抵抗材20を介して連結されている。
埋設支柱30は、柱脚体10とは別途に設けられた杭基礎部からなる。埋設支柱30は、地上に立設される支柱は備えておらず、杭基礎部の頭部31が地盤4上に露出している。埋設支柱30は、基礎構造1aの前方と後方にそれぞれ設けられている。杭基礎部は、例えば鋼管杭またはコンクリート杭にて構成されており、地盤4に埋め込まれている。杭基礎部は、短期荷重作用時に支柱13に生じる引抜力に対抗できる形状に設定されている。且つ、杭基礎部は、地震等の水平荷重作用時に、太陽光パネル架台2に作用する水平力、滑動力に抵抗可能な形状に設定されている。
本実施形態の基礎構造1aによれば、第一柱脚体11に作用する引抜力を、埋設支柱30に伝達することができる。そして、埋設支柱30に伝達された力は、地盤4に支持される。したがって、基礎構造1aでは、基礎を増設することなく、既存基礎の補強を行うことができる。また、新たに設置する埋設支柱30は、柱脚体10より簡単な構成であるため、補強工事の施工費用を抑制することができる。
さらに、太陽光パネル架台2に前方から後方に向かって水平力F4が作用した際には、引張抵抗材20に張力F5が発生するが、前方に設けられた埋設支柱30が前向きの水平抵抗力F6を発揮し、太陽光パネル架台2の滑動を防止する。一方、太陽光パネル架台2に後方から前方に向かって水平力が作用した際には、引張抵抗材20に張力が発生し、後方に設けられた埋設支柱30が後向きの水平抵抗力を発揮し、太陽光パネル架台2の滑動を防止する
なお、第二の実施形態では、基礎構造1aで既存の基礎を補強しているが、基礎構造1aを、新設の基礎構造としても採用できる。この場合、基礎が簡略化され、材料費の増大を抑制でき、ひいては施工費用を低減することができる。また、新設とする場合、第二柱脚体12と埋設支柱30とを併用してもよいし、第一柱脚体と第二柱脚体12と埋設支柱30とを併用してもよい。このようにすれば、埋設支柱30の本数を低減することができる。
【0018】
次に、本発明の第三の実施形態に係る基礎構造について、図6,7を参照しながら説明する。図6は、既存の太陽光パネル架台を示した図であって、(a)は断面図、(b)は側面図である。図7は、第三の実施形態に係る基礎構造1bを備えた太陽光パネル架台2を示した図であって、(a)は断面図、(b)は側面図である。
例えば、既存の太陽光パネル架台2において、モジュール更新工事や増強工事を行う際に、太陽光パネル3の範囲が当初より広がり、荷重が増えて基礎の補強が必要になった場合に、本実施形態の基礎構造1bを採用する。かかる基礎構造1bでは、既存の太陽光パネル架台2の基礎構造に引張抵抗材20を設置している。図6に示すように、既存の基礎構造は、全ての柱脚体が杭基礎部16を有する第二柱脚体12となっている。
本実施形態の基礎構造1bでは、図7に示すように、第二柱脚体12に引張抵抗材20を接続して、第二柱脚体12同士を連結している。引張抵抗材20は、第一の実施形態と同様に、柱脚体10が挿通する部分で分割されている。引張抵抗材20は、第二柱脚体12の支柱13を例えば左右両側から挟むように配置されている。分割された引張抵抗材20の端部には、支柱13の断面と同形状の切欠き部が形成されており、支柱13を両側から挟むことで、支柱13の全周が囲われる。分割された引張抵抗材20の端縁部同士は重合しており、重合部は接合されている。
本実施形態の基礎構造1bによれば、引張抵抗材20を設置するだけで、基礎構造の補強を行うことができ、太陽光パネル架台2の周囲に拡幅部2aを追加して、太陽光パネル3を拡大することができる。これによって、発電量を増加できる。また、引張抵抗材20を設置するだけでよく、基礎を増設することなく補強工事を行うことができるので、補強工事の施工費用を抑制することができる。
【0019】
第三の実施形態では、第二柱脚体12同士を引張抵抗材20で連結して補強を行っているが、これに加えて第二の実施形態の埋設支柱を合わせて追加してもよい。このような構成によれば、より一層補強効果が大きくなる。
また、第三の実施形態では、全ての柱脚体が杭基礎部16を有する第二柱脚体12である既存の基礎構造を補強しているが、全ての柱脚体が直接基礎部を有する第一柱脚体である既存の基礎構造においても、第一柱脚体同士を引張抵抗材で連結して補強することができる。このような構成においても、第三の実施形態と同様の作用効果を得られる。さらに、これに加えて第二の実施形態の埋設支柱を合わせて追加してもよい。
【0020】
以上、本発明を実施するための形態について説明したが、本発明は前記実施形態に限定する趣旨ではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜設計変更が可能である。たとえば、前記実施形態では、引張抵抗材20を地盤4上に敷設しているが、これに限定されるものではない。例えば、引張抵抗材20を耐候性不織布などの保護シートで被覆すれば、引張抵抗材20の紫外線劣化を防止できる。また、引張抵抗材20を地中に埋めたり、防炎シートで被覆したりすれば、耐火性を向上できる。
【符号の説明】
【0021】
1 基礎構造
2 太陽光パネル架台
3 太陽光パネル
4 地盤
5 横桁
6 垂木
10 柱脚体
11 第一柱脚体
12 第二柱脚体
13 支柱
14 直接基礎部
15 ハンチ
16 杭基礎部
17 ハンチ
20 引張抵抗材
30 埋設支柱
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7