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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022184457
(43)【公開日】2022-12-13
(54)【発明の名称】液体タンクの製造方法
(51)【国際特許分類】
   F16J 12/00 20060101AFI20221206BHJP
【FI】
F16J12/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021092318
(22)【出願日】2021-06-01
(71)【出願人】
【識別番号】593166462
【氏名又は名称】サムテック株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000000099
【氏名又は名称】株式会社IHI
(71)【出願人】
【識別番号】521238487
【氏名又は名称】株式会社MJOLNIR SPACEWORKS
(74)【代理人】
【識別番号】100143085
【弁理士】
【氏名又は名称】藤飯 章弘
(72)【発明者】
【氏名】阪口 善樹
(72)【発明者】
【氏名】山崎 全彦
(72)【発明者】
【氏名】三島 慎一
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 光紀
(72)【発明者】
【氏名】バニョール ティボ
(72)【発明者】
【氏名】ビスコア トール
【テーマコード(参考)】
3J046
【Fターム(参考)】
3J046AA14
3J046BA05
3J046BD11
3J046DA10
3J046EA10
(57)【要約】
【課題】歪みや強度低下といった欠陥が生じることを回避しつつ、より一層簡便に内部に板状部材を備えた液体タンクを得ることができる液体タンクの製造方法を提供する。
【解決手段】円筒状の素管内に円環状の板状部材を配置する板状部材配置ステップと、前記素管内に配置された前記板状部材の配置位置近傍の前記素管領域を縮径させる縮径工程により、前記板状部材の周縁部に係合する係合手段を前記素管の内周面に形成して前記板状部材を前記素管内に加締める板状部材固定ステップと、前記素管の両端部を端部に進むにつれて縮径させることによってドーム部を形成するドーム部形成ステップと、を備える液体タンクの製造方法。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒状の素管内に円環状の板状部材を配置する板状部材配置ステップと、
前記素管内に配置された前記板状部材の配置位置近傍の前記素管領域を縮径させる縮径工程により、前記板状部材の周縁部に係合する係合手段を前記素管の内周面に形成して前記板状部材を前記素管内に加締める板状部材固定ステップと、
前記素管の両端部を端部に進むにつれて縮径させることによってドーム部を形成するドーム部形成ステップと、を備える液体タンクの製造方法。
【請求項2】
前記板状部材固定ステップは、前記板状部材の外周に沿う環状の前記係合手段を形成する請求項1に記載の液体タンクの製造方法。
【請求項3】
前記板状部材固定ステップは、前記係合手段として、前記板状部材に対して、前記素管の端部側に設けられる端部側係合部を形成する請求項1又は2に記載の液体タンクの製造方法。
【請求項4】
前記板状部材固定ステップは、前記係合手段として、前記板状部材に対して、前記素管の長手方向中央位置側に設けられる中央側係合部、および、前記素管の端部側に設けられる端部側係合部を形成する請求項1又は2に記載の液体タンクの製造方法。
【請求項5】
前記板状部材固定ステップは、前記中央側係合部を形成したのち、前記端部側係合部を形成する請求項4に記載の液体タンクの製造方法。
【請求項6】
前記板状部材固定ステップにおける前記縮径工程は、スピニング加工により前記板状部材の配置位置近傍の前記素管領域を縮径させる工程であり、
前記中央側係合部は、前記素管の長手方向中央位置側から前記板状部材配置位置に向けて前記スピニング加工を行うことにより形成されており、
前記端部側係合部は、前記素管の端部側から前記板状部材配置位置に向けて前記スピニング加工を行うことにより形成される請求項4又は5に記載の液体タンクの製造方法。
【請求項7】
前記板状部材固定ステップは、前記端部側係合部の前記板状部材に対する加締め量が、前記中央側係合部の前記板状部材に対する加締め量よりも多くなるように、前記板状部材の配置位置近傍の前記素管領域を縮径させる請求項4から6のいずれかに記載の液体タンクの製造方法。
【請求項8】
前記板状部材配置ステップは、前記板状部材の内周面を保持しつつ外周面側に向く突っ張り力を前記板状部材の内周面に付加した状態で前記板状部材を前記素管内に配置する工程を備えている請求項1から7のいずれかに記載の液体タンクの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体タンクの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から各種装置または各種設備において使用される様々な液体タンクが知られている。例えば、車両に搭載される液体燃料タンク(ガソリン、軽油、重油などの液体燃料のタンク)、ロケットに搭載される酸化剤タンク(液体酸素、過酸化水素、四酸化窒素等の酸化剤のタンク)、水素ステーションに設置される蓄圧タンク(水素貯留用のタンク)等が知られている。
【0003】
これら液体タンクにおいては、内部に貯留されている液体の波立ち防止や剛性確保のために、円環状の板状部材がタンクの内面に溶接によって取り付けられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005-219678
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、板状部材を溶接によってタンク内面に固定すると、熱影響による歪みや強度低下という問題が発生するおそれがあり、また、溶接部分の点検・品質確認が容易でないという問題があった。
【0006】
本発明は上記問題を解決すべくなされたものであり、歪みや強度低下といった欠陥が生じることを回避しつつ、より一層簡便に内部に板状部材を備えた液体タンクを得ることができる液体タンクの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の前記目的は、円筒状の素管内に円環状の板状部材を配置する板状部材配置ステップと、前記素管内に配置された前記板状部材の配置位置近傍の前記素管領域を縮径させる縮径工程により、前記板状部材の周縁部に係合する係合手段を前記素管の内周面に形成して前記板状部材を前記素管内に加締める板状部材固定ステップと、前記素管の両端部を端部に進むにつれて縮径させることによってドーム部を形成するドーム部形成ステップと、を備える液体タンクの製造方法により達成される。
【0008】
また、上記液体タンクの製造方法において、前記板状部材固定ステップは、前記板状部材の外周に沿う環状の前記係合手段を形成することが好ましい。
【0009】
また、前記板状部材固定ステップは、前記係合手段として、前記板状部材に対して、前記素管の端部側に設けられる端部側係合部を形成することが好ましい。
【0010】
また、前記板状部材固定ステップは、前記係合手段として、前記板状部材に対して、前記素管の長手方向中央位置側に設けられる中央側係合部、および、前記素管の端部側に設けられる端部側係合部を形成することが好ましい。
【0011】
また、前記板状部材固定ステップは、前記中央側係合部を形成したのち、前記端部側係合部を形成することが好ましい。
【0012】
また、前記板状部材固定ステップにおける前記縮径工程は、スピニング加工により前記板状部材の配置位置近傍の前記素管領域を縮径させる工程であり、前記中央側係合部は、前記素管の長手方向中央位置側から前記板状部材配置位置に向けて前記スピニング加工を行うことにより形成されており、
前記端部側係合部は、前記素管の端部側から前記板状部材配置位置に向けて前記スピニング加工を行うことにより形成されることが好ましい。
【0013】
また、前記板状部材固定ステップは、前記端部側係合部の前記板状部材に対する加締め量が、前記中央側係合部の前記板状部材に対する加締め量よりも多くなるように、前記板状部材の配置位置近傍の前記素管領域を縮径させることが好ましい。
【0014】
また、前記板状部材配置ステップは、前記板状部材の内周面を保持しつつ外周面側に向く突っ張り力を前記板状部材の内周面に付加した状態で前記板状部材を前記素管内に配置する工程を備えていることが好ましい。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、歪みや強度低下といった欠陥が生じることを回避しつつ、より一層簡便に内部に板状部材を備えた液体タンクを得ることができる液体タンクの製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明に係る液体タンクの製造方法によって製造される液体タンクの一例を示す概略構成断面図である。
図2】本発明に係る液体タンクの製造方法を説明するためのブロック図である。
図3】本発明に係る液体タンクの製造方法が備える板状部材配置ステップを説明するための要部断面図である。
図4】板状部材保持設置手段を用いて板状部材が素管内に配置される状態を示す概略構成説明図である。
図5】(a)は、板状部材保持設置手段が備える設置部の概略構成正面図であり、(b)は、板状部材保持設置手段が備える保持部の概略構成正面図であり、(c)は、保持部の要部拡大断面図である。
図6図1に示す液体タンクの要部拡大断面図である。
図7】(a)~(d)は、板状部材固定ステップにおける縮径工程を説明するための説明図である。
図8図1に示す液体タンクの変形例を示す概略構成断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明に係る液体タンクの製造方法について添付図面を参照して説明する。なお、各図は、構成の理解を容易ならしめるために部分的に拡大・縮小している。
【0018】
本発明に係る液体タンクの製造方法は、図1の概略構成断面図に示すような内部に円環状の板状部材3を備える液体タンク1を製造する方法である。この液体タンク1は、タンク本体2と内部に配置される板状部材3とを備えて構成される。タンク本体2は、溶接またはボルト締結等による継ぎ目が存在しないシームレス構造として形成されており、両端部が端側に進むにつれて縮径した円筒状の形態を有している。また、タンク本体2の一方の端部2aの先端には、開口21が設けられており、他方の端部2bの先端には、開口22が設けられている。各開口21,22には、他の部材(例えば、栓又は配管等)が接続される。
【0019】
板状部材3は、円環状の部材であり、図1においては、複数の板状部材3が、タンク本体2の軸方向に沿って所定間隔を空けて配置されている。各板状部材3は、同軸上に配置されており、また、タンク本体2の内周面に沿って周方向に延在する。ここで、板状部材3は、液体タンクの内部に貯留される液体の波立ち防止を目的としたバッフル板や、液体タンクの剛性向上を目的とした補強板として用いられる部材である。
【0020】
このような液体タンク1は、以下のような製造方法によって製造することができる。すなわち、図2のブロック図に示すように、板状部材配置ステップS1と、板状部材固定ステップS2と、ドーム部形成ステップS3とを備える製造方法により製造することができる。
【0021】
板状部材配置ステップS1は、図3の要部断面図に示すように円筒状の素管Z内に円環状の板状部材3を配置する工程である。この板状部材配置ステップS1は、板状部材3の内周面を保持しつつ外周面側に向く突っ張り力を板状部材3の内周面に付加した状態で板状部材3を素管Z内に配置する工程を備えることが好ましい。このように、板状部材3の内周面側から外周面側に向く突っ張り力を板状部材3に付加しつつ板状部材3を素管Z内で保持することによって、素管Z内に配置された板状部材3の配置位置近傍の素管領域を縮径させる際に板状部材3が座屈変形することを効果的に防止することができる。
【0022】
この突っ張り力を板状部材3に付加しつつ、素管Z内に保持するためには、例えば、図4の概略構成説明図に示すような板状部材保持設置手段6を用いることができる。この板状部材保持設置手段6は、該保持設置手段6を素管Z内に設置固定するための設置部7と、板状部材3を保持する保持部8とを備えて構成されている。なお、図4においては、設置部7及び保持部8が備えるターンバックル72,82の一部を省略して示している。
【0023】
設置部7は、図4及び図5(a)の正面図に示すように中実円柱状又は中実多角柱状の軸部71と、軸部71の周囲に沿って所定間隔をあけて配置される複数のターンバックル72とを備えて構成されている。各ターンバックル72の一方端は、軸部71に接続固定されており、他方端には、素管Zの内周面に当接する素管当接部73が設けられている。各ターンバックル72は、その一方端の外周部に雄ネジ部が形成され、軸部71に形成される雌ネジ部を有するネジ穴に螺合させることによって、軸部71に設置固定することが好ましい。また、各ターンバックル72の他方端に設けられる素管当接部73は、プレート状に形成されており、図5(a)に示すように、素管Zの内周面に当接する当接面74は、素管Zの内周面に沿う形状に形成されることが好ましい。なお、素管Zの内周面を傷つけることを防止するために、当接面74には、例えば、弾性を有するゴム素材から形成さるシート体を貼着することがより好ましい。
【0024】
板状部材保持設置手段6が備える保持部8は、上記設置部7と類似の構造を有しており、図4図5(b)に示すように、中実円柱状又は中実多角柱状の軸部81と、軸部81の周囲に沿って所定間隔をあけて配置される複数のターンバックル82とを備えて構成されている。各ターンバックル82の一方端は、軸部81に接続固定されており、他方端には、板状部材3の内周面に当接しつつ、該内周面部を収容する収容部83が設けられている。各ターンバックル82は、その一方端の外周部に雄ネジ部が形成され、軸部81に形成される雌ネジ部を有するネジ穴に螺合させることによって、軸部81に設置固定することが好ましい。また、各ターンバックル82の他方端に設けられる収容部83は、図5(c)の要部拡大断面図に示すように、断面視凵状に形成されており、板状部材3の内周面に対向する面(当接面84)を有する底部85と、素管Zの軸方向を向く底部85の両側縁部に配置され、素管Zの半径方法外側に向けて突出する一対の側壁部86,86とを備えており、底部85および一対の側壁部86,86で囲まれる空間に板状部材3の内周面部側を収容できるよう構成されている。また、収容部83における底部85の当接面84は、板状部材3の内周面に沿う形状に形成されることが好ましい。なお、収容部83に収容される板状部材3の内周面部側を傷つけることを防止するために、収容部83における底部85の当接面84や、一対の側面部86,86において互いに対向する面上に、例えば、弾性を有するゴム素材から形成さるシート体を貼着することがより好ましい。
【0025】
上記構成の設置部7および保持部8は、図4に示すように、間に中実円柱状又は中実多角柱状のスペーサ部9を介して互いに連結され、これにより板状部材保持設置手段6が構成される。設置部7、保持部8およびスペーサ部9の連結には、例えば、設置部7の軸部71に該軸部71の軸線に沿った雌ネジ部を有するネジ穴を設け、スペーサ部9および保持部8の軸部81にボルト挿通用の貫通孔を形成し、該貫通孔を介してボルトを設置部7におけるネジ穴に螺合することにより行われる。
【0026】
このような板状部材保持設置手段6を用いて板状部材3を素管Z内部に配置する方法について以下に説明する。まず。設置部7を素管Z内部の所定箇所に配置し、各ターンバックル72を伸長させることにより各素管当接部73で素管Zの内周面を押圧させる。この各ターンバックル72の伸長に基づく素管当接部73による押圧によって、設置部7は、素管Z内部において固定された状態で設置される。次に、スペーサ部9を設置部7との間に介在させて、ボルトによって保持部8を設置部7に固定する。このとき保持部8が有する各ターンバックル82の長さは、軸部81と収容部83との距離が最も短くなるような長さに設定しておくことが好ましい。次いで、板状部材3を素管Zに挿入しつつ、保持部8が備える各ターンバックル82を伸長させることにより各収容部83に板状部材3の内周面側を収容し、更に各ターンバックル72を伸長させる。これにより、板状部材3の内周面を保持しつつ外周面側に向く突っ張り力を板状部材3の内周面に付加した状態で板状部材3を素管Z内に配置することができる。
【0027】
上記のように円筒状の素管Z内に円環状の板状部材3を配置した後、板状部材固定ステップS2が行われる。この板状部材固定ステップS2は、素管Z内に配置された板状部材3の配置位置近傍の素管領域を縮径させる縮径工程により、板状部材3の周縁部に係合する係合手段25を素管Zの内周面に形成して板状部材3を素管Z内に加締める工程である。この板状部材固定ステップS2により形成される係合手段25は、板状部材3の外周に沿う環状の形態を有していることが好ましい。このような環状の形態を有するように係合手段25を形成することにより、板状部材3を素管Z内に強固に設置することができる。また、板状部材固定ステップS2により形成される係合手段25としては、図6の要部拡大断面図に示すように、板状部材3に対して、タンク本体2(素管Z)の長手方向中央位置側に設けられる中央側係合部251、および、タンク本体2(素管Z)の端部側に設けられる端部側係合部252を備えていることが好ましい。このように素管Zの軸方に沿って板状部材3の両側にそれぞれ中央側係合部251および端部側係合部252を形成することにより、より一層、板状部材3を素管Z内に強固かつ安定的に設置することが可能となる。なお、板状部材3を素管Zの長手方向中央位置に配置する場合には、素管Zの長手方向中央位置側に設けられる係合部が存在しないため、このような場合には、板状部材3に対して、素管Zの一方の端部2a側に設けられる係合部を中央側係合部251とし、素管Zの他方の端部2b側に設けられる係合部を端部側係合部252とされる。
【0028】
また、板状部材固定ステップS2においては、素管Zの長手方向中央位置側に設けられる中央側係合部251を形成したのち、素管Zの端部側に設けられる端部側係合部252を形成することが好ましい。このような順番で中央側係合部251および端部側係合部252を形成することにより、仮に、すでに素管Z内において一部の板状部材3の設置固定作業(加締め固定作業)が完了している状況で、設置作業中の板状部材3に対して中央側係合部251を形成した際に当該板状部材3に変形が生じたような場合であっても、素管Zの端部側から板状部材3を取り出して交換することが可能となり、製造途中の液体タンク1を廃棄しなくてはならない状況を効果的に回避することができる。
【0029】
ここで、板状部材固定ステップS2における上記縮径工程としては、例えば、スピニング加工により板状部材3の配置位置近傍の素管領域を縮径させることが好ましい。スピニング加工においては、素管Zを回転させた状態でスピニング加工装置が有するスピニングヘッドのローラを素管Zの径方向外側から押し付けることにより素管Zを縮径変形させる。この縮径工程においては、上記中央側係合部251を形成する場合には、図7(a)(b)に示すように、素管Zの長手方向中央位置側から板状部材3の配置位置に向けてスピニング加工装置のスピニングヘッドHを動かしてスピニング加工を行い、端部側係合部252を形成する場合には、図7(c)(d)に示すように、素管Zの端部側から板状部材3の配置位置に向けてスピニング加工装置のスピニングヘッドHを動かしてスピニング加工を行うことが好ましい。このようなスピニング加工を行うことにより、効率よく板状部材3の配置位置近傍の素管領域を縮径させることができ、また、スピニング加工時において、スピニング加工装置が有するスピニングヘッドのローラによる素管Zの押圧作用によって、素管Z内部に配置される板状部材3が座屈変形することを効果的に防止することができる。
【0030】
また、板状部材固定ステップS2においては、端部側係合部252の板状部材3に対する加締め量が、中央側係合部251の前記板状部材3に対する加締め量よりも多くなるように、板状部材3の配置位置近傍の素管領域を縮径させることが好ましい。換言すると、中央側係合部251の板状部材3に対する加締め量が、端部側係合部252の前記板状部材3に対する加締め量よりも小さくなるように、板状部材3の配置位置近傍の素管領域を縮径させることが好ましい。このように加締め量の大小を形成することにより、加締め量の小さい中央側係合部251によって板状部材3を仮止めした後、加締め量の大きい端部側係合部252によって強固に板状部材3を素管Z内部に加締め固定させることになり、中央側係合部251形成段階にて板状部材3が座屈変形するリスクを極めて効果的に低減させることが可能となる。
【0031】
上記板状部材固定ステップS2による各板状部材3のタンク本体2内における加締め固定が完了した後、ドーム部形成ステップS3が行われる。ドーム部形成ステップS3は、素管Zの両端部を端部に進むにつれて縮径させることによって、開口21,22を備えるドーム状のドーム部23,24を形成する工程である。このドーム部形成ステップS3において形成されるドーム状のドーム部23,24は、タンク本体2の中央部エリアの肉厚に比べて厚く形成される。なお、このドーム部形成ステップS3における素管Zの縮径工程についてもスピニング加工により行われることが好ましい。
【0032】
上述のように本発明は、従来のように溶接によって板状部材3をタンク本体2内に設置固定するのではなく、タンク本体2(素管Z)を縮径変形させて該タンク本体2内の板状部材3を加締め固定するようにして液体タンク1を製造することができるため、液体タンク1に溶接による歪みや強度低下といった欠陥が生じることを回避でき、また、溶接部分が存在しないことによって液体タンク1の軽量化を図ることが可能となる。さらに、上述のような欠陥の点検作業が不要になることから製造プロセスを短縮することが可能となり、より一層効率よく簡便に液体タンク1を製造することが可能となる。
【0033】
以上、本発明の一実施形態に係る液体タンク1の製造方法について説明したが、その具体的構成は、上記実施形態に限定されず、タンク本体2の内部に配置される円環状の板状部材3の形状としては、種々のものを採用することが可能である。例えば、板状部材3に、タンク本体2の軸方向に延在する貫通孔が形成されてもよい。このような貫通孔を板状部材3が備えることにより、タンク本体2内を洗浄液により洗浄し、洗浄液を開口21,22を介してタンク本体2外に排出する際に、タンク本体2内の洗浄液が貫通孔を通って円滑に排出されるため、タンク本体2内に洗浄剤が残留することを効果的に防止することができる。なお、タンク内に洗浄剤が残留することをより効果的に防止するために、複数の貫通孔を板状部材3に設けてもよい。
【0034】
また、板状部材3の内周面の形状として、図8の概略構成断面図に示すように、タンク本体2の軸方向に対して傾斜する傾斜面31を設けるようにしてもよい。このような傾斜面31を板状部材3の内周面に形成する場合、タンク本体2内に設置される板状部材3において、傾斜面31がタンク本体2の長手方向中央位置側を向くように配置される。このような傾斜面31を板状部材3の内周面に形成することにより、洗浄液を開口21,22を介してタンク本体2外に排出する際に、タンク本体2内の洗浄液が傾斜面31に沿って円滑に排出されるため、タンク本体2内に洗浄剤が残留することを効果的に防止することができる。なお、傾斜面31を板状部材3の内周面に形成する場合、上述の板状部材配置ステップS1において使用される板状部材保持設置手段6が備える保持部8が有する収容部83の底部当接面84は、上記傾斜面31に沿う形状として構成されることが好ましい。
【0035】
また、上記実施形態において、板状部材固定ステップS2は、図6の要部拡大断面図に示すように、板状部材3に対して、タンク本体2(素管Z)の長手方向中央位置側に設けられる中央側係合部251、および、タンク本体2(素管Z)の端部側に設けられる端部側係合部252を形成するように構成されているが、このような構成に限定されず、例えば、中央側係合部251のみを形成するように構成してもよく、あるいは、端部側係合部252のみを形成するように構成してもよい。
【符号の説明】
【0036】
1 液体タンク
2 タンク本体
21,22 開口
23,24 ドーム部
25 係合手段
251 中央側係合部
252 端部側係合部
3 板状部材
6 板状部材保持設置手段
7 設置部
72 ターンバックル
73 素管当接部
8 保持部
82 ターンバックル
83 収容部
84 当接面
9 スペーサ部
Z 素管
S1 板状部材配置ステップ
S2 板状部材固定ステップ
S3 ドーム部形成ステップ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8