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特開2022-18446直動転がり支承及びそれを含む構造物の振動抑制装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022018446
(43)【公開日】2022-01-27
(54)【発明の名称】直動転がり支承及びそれを含む構造物の振動抑制装置
(51)【国際特許分類】
   F16F 15/03 20060101AFI20220120BHJP
   F16F 15/02 20060101ALI20220120BHJP
   E04H 9/02 20060101ALI20220120BHJP
【FI】
F16F15/03 G
F16F15/02 L
E04H9/02 351
E04H9/02 331D
E04H9/02 331B
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020121556
(22)【出願日】2020-07-15
(71)【出願人】
【識別番号】504242342
【氏名又は名称】株式会社免制震ディバイス
(74)【代理人】
【識別番号】100095566
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 友雄
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【弁理士】
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【弁理士】
【氏名又は名称】小田 直
(72)【発明者】
【氏名】中南 滋樹
【テーマコード(参考)】
2E139
3J048
【Fターム(参考)】
2E139AA01
2E139AB03
2E139AC19
2E139BA10
2E139CA03
2E139CA14
2E139CA16
2E139CB19
2E139CC02
3J048AA07
3J048AD05
3J048BE08
3J048BG02
3J048DA01
3J048EA38
(57)【要約】
【課題】減衰機能を有する直動転がり支承を提供するとともに、その直動転がり支承を用いることで、建設コストの低減を図ることができる構造物の振動抑制装置を提供する。
【解決手段】水平に延びる第1レール11と、これに沿って移動自在の第1移動体12と、第1移動体12に設けられた第1磁石ホルダ13と、これに取り付けられた複数の第1永久磁石14と、第1レール11と直交しかつ水平に延びる第2レール21と、これに沿って移動自在の第2移動体22と、第2移動体22に設けられた第2磁石ホルダ23と、これに取り付けられた複数の第2永久磁石24と、を備え、第1レール11は、第1移動体12の移動の際に、その移動を妨げる抵抗力を発生させるための渦電流が生じ、第2レール21は、第2移動体22の移動の際に、その移動を妨げる抵抗力を発生させるための渦電流が生じるように構成されている。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水平に所定長さ延びる第1レールと、
この第1レールに複数の転動体を介して係合し、当該第1レールに沿って移動自在の第1移動体と、
この第1移動体に設けられ、当該第1移動体から前記第1レールに沿って延びる第1磁石ホルダと、
この第1磁石ホルダに取り付けられ、前記第1レールに間隔を隔てて対向しかつ当該第1レールの長さ方向に沿って配置された複数の第1永久磁石と、
前記第1移動体の上方に設けられ、前記第1レールと直交しかつ水平に所定長さ延びる第2レールと、
前記第1移動体上に載置された状態で連結され、前記第2レールに複数の転動体を介して係合するとともに当該第2レールに沿って移動自在の第2移動体と、
この第2移動体に設けられ、当該第2移動体から前記第2レールに沿って延びる第2磁石ホルダと、
この第2磁石ホルダに取り付けられ、前記第2レールに間隔を隔てて対向しかつ当該第2レールの長さ方向に沿って配置された複数の第2永久磁石と、
を備え、
前記第1レールは、前記複数の第1永久磁石と間隔を隔てて対向する面において、前記第1移動体の移動の際に、その移動を妨げる抵抗力を発生させるための渦電流が生じるように構成され、
前記第2レールは、前記複数の第2永久磁石と間隔を隔てて対向する面において、前記第2移動体の移動の際に、その移動を妨げる抵抗力を発生させるための渦電流が生じるように構成されていることを特徴とする直動転がり支承。
【請求項2】
前記第1磁石ホルダは、前記第1レールに沿って延びかつ当該第1レールとほぼ同じ長さを有する平坦な板状に形成され、長さ方向の中央部が前記第1移動体の上面に固定されており、
前記第2磁石ホルダは、前記第2レールに沿って延びかつ当該第2レールとほぼ同じ長さを有する平坦な板状に形成され、長さ方向の中央部が前記第2移動体の下面に固定されていることを特徴とする請求項1に記載の直動転がり支承。
【請求項3】
前記第1磁石ホルダは、前記第1移動体を間にして、当該第1移動体から前記第1レールに沿って互いに反対方向にそれぞれ所定長さ延び、当該第1レールの上面及び両側面に対向するよう、横断面が下方に開放するコ字状に形成されており、
前記第2磁石ホルダは、前記第2移動体を間にして、当該第2移動体から前記第2レールに沿って互いに反対方向にそれぞれ所定長さ延び、当該第2レールの下面及び両側面に対向するよう、横断面が上方に開放するコ字状に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の直動転がり支承。
【請求項4】
前記複数の第1永久磁石は、隣り合う磁石の前記第1レールに臨む磁極が互いに異なるように配置されており、
前記複数の第2永久磁石は、隣り合う磁石の前記第2レールに臨む磁極が互いに異なるように配置されていることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の直動転がり支承。
【請求項5】
前記第1磁石ホルダには、磁性材から成り、前記複数の第1永久磁石のうちの前記第1磁石ホルダの長さ方向の端部に配置された磁石である第1端部磁石に隣接し、当該第1端部磁石とでループ状の磁力線を生成するための第1磁性部材が取り付けられ、
前記第2磁石ホルダには、磁性材から成り、前記複数の第2永久磁石のうちの前記第2磁石ホルダの長さ方向の端部に配置された磁石である第2端部磁石に隣接し、当該第2端部磁石とでループ状の磁力線を生成するための第2磁性部材が取り付けられていることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の直動転がり支承。
【請求項6】
前記第1レール及び前記第2レールは、所定種類の金属で構成されており、
前記第1レール及び前記第2レールの表面は、前記所定種類の金属よりも電気抵抗が小さい導電材料でコーティングされていることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の直動転がり支承。
【請求項7】
前記第1磁石ホルダには、当該第1磁石ホルダの長さ方向に沿って延びるとともに、前記第1レールの下端付近まで垂下し、前記複数の第1永久磁石を、前記第1レールの長さ方向の両側方から覆うように、第1磁石カバーが取り付けられており、
前記第2磁石ホルダには、当該第2磁石ホルダの長さ方向に沿って延びるとともに、前記第2レールの上端付近まで起立し、前記複数の第2永久磁石を、前記第2レールの長さ方向の両側方から覆うように、第2磁石カバーが取り付けられていることを特徴とする請求項2に記載の直動転がり支承。
【請求項8】
前記第1レール及び前記第1移動体を一組とする二組の第1リニアガイドを備えており、
当該二組の第1リニアガイドにおける前記第1レール同士が互いに所定距離を隔てて平行に延びるように配置され、
前記第1磁石ホルダは、前記二組の第1リニアガイドにおける2つの前記第1レールの長さ方向に沿って延びかつ2つの前記第1移動体間にわたるように設けられ、
前記第1磁石ホルダには、前記各組の第1リニアガイドごとに前記複数の第1永久磁石が取り付けられるとともに、前記二組の第1リニアガイドにおける2つの前記第1レール間に対応する領域において、当該第1レールの長さ方向に沿って、互いに間隔を隔てて配置された複数の第1レール間永久磁石が取り付けられており、
前記二組の第1リニアガイドにおける2つの前記第1レール間には、当該第1レールの長さ方向に沿って水平に延び、前記複数の第1レール間永久磁石に所定間隔を隔てて対向する第1レール間対向部材を、さらに備えており、
前記第1レール間対向部材は、前記二組の第1リニアガイドにおける2つの前記第1移動体の移動の際に、当該移動を妨げる抵抗力を発生させるための渦電流が生じるように構成されていることを特徴とする請求項1から7のいずれかに記載の直動転がり支承。
【請求項9】
前記第2レール及び前記第2移動体を一組とする二組の第2リニアガイドを備えており、
当該二組の第2リニアガイドにおける前記第2レール同士が互いに所定距離を隔てて平行に延びるように配置され、
前記第2磁石ホルダは、前記二組の第2リニアガイドにおける2つの前記第2レールの長さ方向に沿って延びかつ2つの前記第2移動体間にわたるように設けられ、
前記第2磁石ホルダには、前記各組の第2リニアガイドごとに前記複数の第2永久磁石が取り付けられるとともに、前記二組の第2リニアガイドにおける2つの前記第2レール間に対応する領域において、当該第2レールの長さ方向に沿って、互いに間隔を隔てて配置された複数の第2レール間永久磁石が取り付けられており、
前記二組の第2リニアガイドにおける2つの前記第2レール間には、当該第2レールの長さ方向に沿って水平に延び、前記複数の第2レール間永久磁石に所定間隔を隔てて対向する第2レール間対向部材を、さらに備えており、
前記第2レール間対向部材は、前記二組の第2リニアガイドにおける2つの前記第2移動体の移動の際に、当該移動を妨げる抵抗力を発生させるための渦電流が生じるように構成されていることを特徴とする請求項8に記載の直動転がり支承。
【請求項10】
構造物と地盤との間及び/又は構造物の中層部に設定された免震層に設置され、当該免震層よりも下側の下層部から上側の上層部へ伝達される振動を抑制する構造物の振動抑制装置であって、
当該振動抑制装置が、請求項1から9のいずれかに記載の直動転がり支承を含むことを特徴とする構造物の振動抑制装置。
【請求項11】
前記直動転がり支承の前記第1レールが、前記免震層の下側の下層部上面に固定され、前記第2レールが、前記免震層の上側の上層部底面に固定されていることを特徴とする請求項10に記載の構造物の振動抑制装置。
【請求項12】
前記振動抑制装置が、前記免震層の下側の下層部と上側の上層部との間に生じた変位を元の位置に戻す復元機能を有する免震装置を、更に含むことを特徴とする請求項10又は11に記載の構造物の振動抑制装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、減衰機能を有する直動転がり支承、及びその直動転がり支承を含む構造物の振動抑制装置に関し、特に、構造物と地盤の間や構造物の中層部などに設定される免震層に設置され、構造物に伝達される振動を抑制する構造物の振動抑制装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、一般的な直動転がり支承として、例えば特許文献1に開示されたものが知られている。この直動転がり支承は、いずれも水平に所定長さ延びるとともに、互いに上下方向に所定間隔を隔てて配置されかつ平面的に見て直交する2つの転動レールと、各転動レールに移動自在に設けられ、互いに所定の緩衝体を介して上下方向に接合された2つの転動ブロックと、を備えている。各転動ブロックは、その内部において循環し、鋼製の球体などから成る多数の転動体を介して、対応する転動レールに係合している。これにより、各転動ブロックは、転動レールに対し、摩擦抵抗が極めて小さい状態で、その長さ方向に沿って非常に滑らかにスライドするようになっている。
【0003】
この直動転がり支承が、例えば地盤と一体の基礎とその上の構造物との間の免震層に設置される場合、下側の転動レールが基礎の上面に固定される一方、上側の転動レールが構造物の底面に固定される。これにより、直動転がり支承が構造物を下方から支持しながら、例えば地震によって基礎が地盤とともに水平に振動しても、その振動が構造物に伝わるのを大幅に低減することが可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10-280730号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記の直動転がり支承は、構造物の鉛直荷重を支持しながら、その構造物の固有周期を長周期化することが可能である。しかし、直動転がり支承は通常、地震後に構造物を元の位置に戻す復元機能を有しておらず、加えて、地震時に免震層の変形を抑制する減衰機能も有していない。そのため、免震層には通常、直動転がり支承に加えて、鉛直荷重支持機能及び復元機能を有する免震装置(例えば積層ゴム支承)や減衰機能を有する減衰装置(例えばオイルダンパ、粘性ダンパ、鋼材ダンパ)を設置しなければならず、その分、構造物の建設コストの上昇を招いてしまう。
【0006】
本発明は、以上のような課題を解決するためになされたものであり、減衰機能を有する直動転がり支承を提供するとともに、その直動転がり支承を用いることで、減衰機能を有する専用の減衰装置を省略することができ、その分、設置コストの低減を図ることができる構造物の振動抑制装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するために、請求項1に係る発明は、水平に所定長さ延びる第1レールと、この第1レールに複数の転動体を介して係合し、第1レールに沿って移動自在の第1移動体と、この第1移動体に設けられ、第1移動体から第1レールに沿って延びる第1磁石ホルダと、この第1磁石ホルダに取り付けられ、第1レールに間隔を隔てて対向しかつ第1レールの長さ方向に沿って配置された複数の第1永久磁石と、第1移動体の上方に設けられ、第1レールと直交しかつ水平に所定長さ延びる第2レールと、第1移動体上に載置された状態で連結され、第2レールに複数の転動体を介して係合するとともに第2レールに沿って移動自在の第2移動体と、この第2移動体に設けられ、第2移動体から第2レールに沿って延びる第2磁石ホルダと、この第2磁石ホルダに取り付けられ、第2レールに間隔を隔てて対向しかつ第2レールの長さ方向に沿って配置された複数の第2永久磁石と、を備え、第1レールは、複数の第1永久磁石と間隔を隔てて対向する面において、第1移動体の移動の際に、その移動を妨げる抵抗力を発生させるための渦電流が生じるように構成され、第2レールは、複数の第2永久磁石と間隔を隔てて対向する面において、第2移動体の移動の際に、その移動を妨げる抵抗力を発生させるための渦電流が生じるように構成されていることを特徴とする。
【0008】
この構成によれば、第1移動体は、水平に所定長さ延びる第1レールに複数の転動体を介して係合し、その第1レールに沿って移動自在に構成されている。一方、第2移動体は、第1移動体上に載置された状態で連結され、第1レールと直交しかつ水平に所定長さ延びる第2レールに複数の転動体を介して係合し、その第2レールに沿って移動自在に構成されている。また、第1移動体には、第1レールに沿って延びる第1磁石ホルダが設けられ、この第1磁石ホルダに取り付けられた複数の第1永久磁石が、第1レールに間隔を隔てて対向しかつ第1レールの長さ方向に沿って配置されている。一方、第2移動体には、第2レールに沿って延びる第2磁石ホルダが設けられ、この第2磁石ホルダに取り付けられた複数の第2永久磁石が、第2レールに間隔を隔てて対向しかつ第2レールの長さ方向に沿って配置されている。
【0009】
上記の直動転がり支承が、例えば構造物と地盤の間に設置された場合、その構造物は、直動転がり支承の第1及び第2移動体の可動範囲内において、地盤に対して水平方向に移動自在の状態で下方から支持される。これにより、地震の発生に伴い、地盤が振動しても、その振動の構造物への伝播が抑制され、その結果、構造物の揺れを和らげることができる。
【0010】
また、地盤の振動に伴い、第1及び第2移動体がそれぞれ移動する場合、第1磁石ホルダ及びそれに取り付けられた複数の第1永久磁石が、第1移動体と一体に第1レールに沿って移動する一方、第2磁石ホルダ及びそれに取り付けられた複数の第2永久磁石が、第2移動体と一体に第2レールに沿って移動する。これにより、第1及び第2永久磁石による磁場が変化することで、それらの第1及び第2永久磁石にそれぞれ対向する第1及び第2レールの表面には、電磁誘導による渦電流が生じる。そして、これらの渦電流によるローレンツ力及びその反作用力が、第1移動体と第1レールの相対移動、及び第2移動体と第2レールの相対移動を妨げる抵抗力として作用する。このように、本発明の直動転がり支承は、地盤などの下方からの振動エネルギーを、渦電流による抵抗力によって吸収し、構造物などの上方への振動を減衰させることができ、上記振動を抑制する減衰機能を得ることができる。
【0011】
請求項2に係る発明は、請求項1に記載の直動転がり支承において、第1磁石ホルダは、第1レールに沿って延びかつ第1レールとほぼ同じ長さを有する平坦な板状に形成され、長さ方向の中央部が第1移動体の上面に固定されており、第2磁石ホルダは、第2レールに沿って延びかつ第2レールとほぼ同じ長さを有する平坦な板状に形成され、長さ方向の中央部が第2移動体の下面に固定されていることを特徴とする。
【0012】
この構成によれば、複数の第1永久磁石が取り付けられる第1磁石ホルダは、第1レールに沿って延びかつ第1レールとほぼ同じ長さを有する平坦な板状に形成される一方、複数の第2永久磁石が取り付けられる第2磁石ホルダは、第2レールに沿って延びかつ第2レールとほぼ同じ長さを有する平坦な板状に形成されている。また、第1磁石ホルダの長さ方向の中央部が第1移動体の上面に固定され、第2磁石ホルダの長さ方向の中央部が第2移動体の下面に固定されている。以上のように、第1磁石ホルダ及び第2磁石ホルダは、比較的単純な板状部材によって構成され、それぞれ固定された第1移動体及び第2移動体により、安定した姿勢に保持される。
【0013】
請求項3に係る発明は、請求項1に記載の直動転がり支承において、第1磁石ホルダは、第1移動体を間にして、第1移動体から第1レールに沿って互いに反対方向にそれぞれ所定長さ延び、第1レールの上面及び両側面に対向するよう、横断面が下方に開放するコ字状に形成されており、第2磁石ホルダは、第2移動体を間にして、第2移動体から第2レールに沿って互いに反対方向にそれぞれ所定長さ延び、第2レールの下面及び両側面に対向するよう、横断面が上方に開放するコ字状に形成されていることを特徴とする。
【0014】
この構成によれば、第1磁石ホルダは、第1レールの上面及び両側面に対向するよう、横断面が下方に開放するコ字状に形成されている。一方、第2磁石ホルダは、第2レールの下面及び両側面に対向するよう、横断面が上方に開放するコ字状に形成されている。
【0015】
上記の第1磁石ホルダに複数の第1永久磁石を取り付ける場合、第1レールの上面及び両側面にそれぞれ対向する第1磁石ホルダの内面に取り付けることにより、第1移動体の移動の際に、第1レールの上面及び両側面に渦電流を発生させることができる。このように、第1レールの上面に加えて、両側面にも渦電流を発生させることにより、第1レールの上面のみで渦電流を発生させる場合に比べて、第1移動体の移動を妨げる抵抗力を大きくすることができ、減衰力を高めることができる。同様に、第2レールの下面及び両側面にそれぞれ対向する第2磁石ホルダの内面に、複数の第2永久磁石を取り付けることにより、第2移動体の移動の際に、第2レールの下面及び両側面に渦電流を発生させることができる。これにより、第2レールの下面のみで渦電流を発生させる場合に比べて、第2移動体の移動を妨げる抵抗力を大きくすることができ、減衰力を高めることができる。
【0016】
また、平坦な板状に形成された、請求項2の第1磁石ホルダ及び第2磁石ホルダに比べて、第1磁石ホルダ及び第2磁石ホルダの長さ方向の寸法を短くしても、第1及び第2磁石ホルダに、数や磁力が同程度の第1及び第2永久磁石をそれぞれ取り付けることにより、請求項2の第1及び第2磁石ホルダを採用する直動転がり支承と同程度の抵抗力を確保することができる。したがって、本発明によれば、請求項2の直動転がり支承と同程度の抵抗力を確保しながら、第1及び第2磁石ホルダの長さ方向の寸法を短くすることができ、その分、第1磁石ホルダを含む第1移動体、及び第2磁石ホルダを含む第2移動体を、コンパクトに構成することができる。
【0017】
請求項4に係る発明は、請求項1から3のいずれかに記載の直動転がり支承において、複数の第1永久磁石は、隣り合う磁石の第1レールに臨む磁極が互いに異なるように配置されており、複数の第2永久磁石は、隣り合う磁石の第2レールに臨む磁極が互いに異なるように配置されていることを特徴とする。
【0018】
この構成によれば、第1磁石ホルダに取り付けられた複数の第1永久磁石において、隣り合う磁石の第1レールに臨む磁極が互いに異なるように配置されることにより、隣り合う磁石と対向する第1レールとの間に、N極からS極に向かうループ状の磁力線が生じる。このような磁力線を有する磁界において、第1移動体が第1レールに沿って移動することにより、第1レールに渦電流が効率よく発生し、その渦電流によるローレンツ力を、第1移動体の移動を妨げる抵抗力として効果的に作用させることができる。同様に、第2磁石ホルダに取り付けられた複数の永久磁石において、隣り合う磁石の第2レールに臨む磁極が互いに異なるように配置されることにより、隣り合う磁石と対向する第2レールとの間に、N極からS極に向かうループ状の磁力線が生じる。このような磁力線を有する磁界において、第2移動体が第2レールに沿って移動することにより、第2レールに渦電流が効率よく発生し、その渦電流によるローレンツ力を、第2移動体の移動を妨げる抵抗力として効果的に作用させることができる。
【0019】
請求項5に係る発明は、請求項1から4のいずれかに記載の直動転がり支承において、第1磁石ホルダには、磁性材から成り、複数の第1永久磁石のうちの第1磁石ホルダの長さ方向の端部に配置された磁石である第1端部磁石に隣接し、第1端部磁石とでループ状の磁力線を生成するための第1磁性部材が取り付けられ、第2磁石ホルダには、磁性材から成り、複数の第2永久磁石のうちの第2磁石ホルダの長さ方向の端部に配置された磁石である第2端部磁石に隣接し、第2端部磁石とでループ状の磁力線を生成するための第2磁性部材が取り付けられていることを特徴とする。
【0020】
この構成によれば、第1磁石ホルダにおいて、複数の第1永久磁石のうちの第1磁石ホルダの長さ方向の端部に配置された磁石である第1端部磁石に隣接するように、磁性材から成る第1磁性部材が取り付けられている。これにより、第1端部磁石と第1磁性部材との間でループ状の磁力線が生成され、第1端部磁石の磁力が外部に漏れるのを抑制しながら、その磁力を第1レールに安定して及ぼすことができる。同様に、第2磁石ホルダには、上記の第2端部磁石に隣接するように、磁性材から成る第2磁性部材が取り付けられているので、第2端部磁石と第2磁性部材との間でループ状の磁力線が生成され、それにより、第2端部磁石の磁力が外部に漏れるのを抑制しながら、その磁力を第2レールに安定して及ぼすことができる。
【0021】
請求項6に係る発明は、請求項1から5のいずれかに記載の直動転がり支承において、第1レール及び第2レールは、所定種類の金属で構成されており、第1レール及び第2レールの表面は、所定種類の金属よりも電気抵抗が小さい導電材料でコーティングされていることを特徴とする。
【0022】
この構成によれば、第1レール及び第2レールの表面が、両レールを構成する所定種類の金属よりも電気抵抗が小さい導電材料でコーティングされているので、第1レール及び第2レールの表面において発生する渦電流をより大きくすることができる。それにより、第1及び/又は第2移動体の移動の際に、渦電流による抵抗力が大きくなり、直動転がり支承の減衰機能を高めることができる。
【0023】
請求項7に係る発明は、請求項2に記載の直動転がり支承において、第1磁石ホルダには、第1磁石ホルダの長さ方向に沿って延びるとともに、第1レールの下端付近まで垂下し、複数の第1永久磁石を、第1レールの長さ方向の両側方から覆うように、第1磁石カバーが取り付けられており、第2磁石ホルダには、第2磁石ホルダの長さ方向に沿って延びるとともに、第2レールの上端付近まで起立し、複数の第2永久磁石を、第2レールの長さ方向の両側方から覆うように、第2磁石カバーが取り付けられていることを特徴とする。
【0024】
この構成によれば、第1磁石ホルダに、上記の第1磁石カバーが取り付けられ、第2磁石ホルダに、上記の第2磁石カバーが取り付けられている。これらの磁石カバーにより、ゴミや埃などが各レールと永久磁石との間に入るのを防止することができる。また、各磁石カバーを、磁気をシールド可能な材料で構成することにより、各永久磁石の磁気が外部へ漏れるのを防止することができる。
【0025】
請求項8に係る発明は、請求項1から7のいずれかに記載の直動転がり支承において、第1レール及び第1移動体を一組とする二組の第1リニアガイドを備えており、二組の第1リニアガイドにおける第1レール同士が互いに所定距離を隔てて平行に延びるように配置され、第1磁石ホルダは、二組の第1リニアガイドにおける2つの第1レールの長さ方向に沿って延びかつ2つの第1移動体間にわたるように設けられ、第1磁石ホルダには、各組の第1リニアガイドごとに複数の第1永久磁石が取り付けられるとともに、二組の第1リニアガイドにおける2つの第1レール間に対応する領域において、第1レールの長さ方向に沿って、互いに間隔を隔てて配置された複数の第1レール間永久磁石が取り付けられており、二組の第1リニアガイドにおける2つの第1レール間には、第1レールの長さ方向に沿って水平に延び、複数の第1レール間永久磁石に所定間隔を隔てて対向する第1レール間対向部材を、さらに備えており、第1レール間対向部材は、二組の第1リニアガイドにおける2つの第1移動体の移動の際に、移動を妨げる抵抗力を発生させるための渦電流が生じるように構成されていることを特徴とする。
【0026】
この構成によれば、第1レール及び第1移動体を一組とする二組の第1リニアガイドを備え、これらの第1リニアガイドの2つの第1レールと、その上方の第2レールとにより、その第2レールが単一の場合には、平面的に見てキの字状に構成されたキ型の直動転がり支承が構成される。また、第1磁石ホルダは、二組の第1リニアガイドにおける2つの第1レールの長さ方向に沿って延びかつ2つの第1移動体間にわたるように設けられている。そして、この第1磁石ホルダには、各組の第1リニアガイドごとに複数の第1永久磁石が取り付けられるとともに、二組の第1リニアガイドにおける2つの第1レール間に対応する領域に、複数の第1レール間永久磁石が取り付けられている。これらの第1レール間永久磁石は、第1レールの長さ方向に沿って、互いに間隔を隔てて配置されている。
【0027】
また、二組の第1リニアガイドにおける2つの第1レール間には、第1レール間対向部材が設けられている。この第1レール間対向部材は、第1レールの長さ方向に沿って水平に延びるとともに、複数の第1レール間永久磁石に所定間隔を隔てて対向しており、加えて、二組の第1リニアガイドにおける2つの第1移動体の移動の際に、その移動を妨げる抵抗力を発生させるための渦電流が生じるように構成されている。
【0028】
上記のように構成されたキ型の直動転がり支承によれば、第1リニアガイドが一組のみの直動転がり支承に比べて、鉛直方向の荷重をより安定して支持しながら、二組の第1リニアガイドにおける2つの第1移動体の移動の際に、第1永久磁石及び第1レール間永久磁石により、より大きな抵抗力を発生させることができる。その結果、直動転がり支承による減衰機能をより高めることができる。
【0029】
請求項9に係る発明は、請求項8に記載の直動転がり支承において、第2レール及び第2移動体を一組とする二組の第2リニアガイドを備えており、二組の第2リニアガイドにおける第2レール同士が互いに所定距離を隔てて平行に延びるように配置され、第2磁石ホルダは、二組の第2リニアガイドにおける2つの第2レールの長さ方向に沿って延びかつ2つの第2移動体間にわたるように設けられ、第2磁石ホルダには、各組の第2リニアガイドごとに複数の第2永久磁石が取り付けられるとともに、二組の第2リニアガイドにおける2つの第2レール間に対応する領域において、第2レールの長さ方向に沿って、互いに間隔を隔てて配置された複数の第2レール間永久磁石が取り付けられており、二組の第2リニアガイドにおける2つの第2レール間には、第2レールの長さ方向に沿って水平に延び、複数の第2レール間永久磁石に所定間隔を隔てて対向する第2レール間対向部材を、さらに備えており、第2レール間対向部材は、二組の第2リニアガイドにおける2つの第2移動体の移動の際に、移動を妨げる抵抗力を発生させるための渦電流が生じるように構成されていることを特徴とする。
【0030】
この構成によれば、第2レール及び第2移動体を一組とする二組の第2リニアガイドを備え、これらの第2リニアガイドの2つの第2レールと、上記請求項8における二組の第1リニアガイドの2つの第1レールとにより、平面的に見て井桁状に構成された井型の直動転がり支承が構成される。また、第2磁石ホルダは、二組の第2リニアガイドにおける2つの第2レールの長さ方向に沿って延びかつ2つの第2移動体間にわたるように設けられている。そして、この第2磁石ホルダには、各組の第2リニアガイドごとに複数の第2永久磁石が取り付けられるとともに、二組の第2リニアガイドにおける2つの第2レール間に対応する領域に、複数の第2レール間永久磁石が取り付けられている。これらの第2レール間永久磁石は、第2レールの長さ方向に沿って、互いに間隔を隔てて配置されている。
【0031】
また、二組の第2リニアガイドにおける2つの第2レール間には、第2レール間対向部材が設けられている。この第2レール間対向部材は、第2レールの長さ方向に沿って水平に延びるとともに、複数の第2レール間永久磁石に所定間隔を隔てて対向しており、加えて、二組の第2リニアガイドにおける2つの第2移動体の移動の際に、その移動を妨げる抵抗力を発生させるための渦電流が生じるように構成されている。
【0032】
上記のように構成された井型の直動転がり支承によれば、いずれも一組の第1リニアガイド及び第2リニアガイドを備えた十字型の直動転がり支承や、前述したキ型の直動転がり支承に比べて、鉛直方向の荷重をより一層安定して支持しながら、二組の第2リニアガイドにおける2つの第2移動体の移動の際に、第2永久磁石及び第2レール間永久磁石により、より大きな抵抗力を発生させることができる。その結果、十字型及びキ型の直動転がり支承に比べて、減衰機能をより一層高めることができる。
【0033】
請求項10に係る発明は、構造物と地盤との間及び/又は構造物の中層部に設定された免震層に設置され、免震層よりも下側の下層部から上側の上層部へ伝達される振動を抑制する構造物の振動抑制装置であって、振動抑制装置が、請求項1から9のいずれかに記載の直動転がり支承を含むことを特徴とする。
【0034】
この構成によれば、構造物と地盤との間及び/又は構造物の中層部に免震層が設定され、その免震層に、前述した直動転がり支承を含む振動抑制装置が設置されている。前述したように、直動転がり支承は、減衰機能を有しているので、上記構成の振動抑制装置が免震層に設置されることにより、免震層よりも下側の下層部から上側の上層部への振動に対し、減衰機能を発揮させながら、効果的に抑制することができる。
【0035】
請求項11に係る発明は、請求項10に記載の構造物の振動抑制装置において、直動転がり支承の第1レールが、免震層の下側の下層部上面に固定され、第2レールが、免震層の上側の上層部底面に固定されていることを特徴とする。
【0036】
この構成によれば、前述した直動転がり支承の第1レールが免震層の下側の下層部上面に固定され、第2レールが免震層の上側の上層部底面に固定されるので、免震層の上層部を、下層部に対し水平方向に移動自在の状態で、安定して支持することができる。
【0037】
請求項12に係る発明は、請求項10又は11に記載の構造物の振動抑制装置において、振動抑制装置が、免震層の下側の下層部と上側の上層部との間に生じた変位を元の位置に戻す復元機能を有する免震装置を、更に含むことを特徴とする。
【0038】
この構成によれば、振動抑制装置が、前述した直動転がり支承に加えて、上記の免震装置を含んでいるので、免震層の下側の下層部と上側の上層部との間に変位が生じても、その変位を元の位置に容易に戻すことができる。また、前述したように、直動転がり支承は、減衰機能を有しているので、振動抑制装置において、減衰機能のみを有する減衰装置を省略することができ、その分、振動抑制装置のコストを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
図1】本発明の第1実施形態による直動転がり支承を含む振動抑制装置を、これを適用した建物とともに概略的に示す図であり、(a)は正面図、(b)は(a)のA-A線に沿う断面図である。
図2】直動転がり支承の外観を示す斜視図である。
図3】直動転がり支承を上下の基礎の間に設置した状態を示す図であり、(a)は正面図、(b)は(a)のB-B線に沿う断面図である。
図4図3に示す直動転がり支承の下部リニアガイドにおける前半部(Y方向の半部)の磁石列及びその周囲を拡大して示す図であり、(a)は側断面図、(b)は(a)のC-C線に沿う断面図である。
図5図3に示す直動転がり支承の上部リニアガイドにおける左半部(X方向と反対方向の半部)の磁石列及びその周囲を拡大して示す図であり、(a)は側断面図、(b)は(a)のD-D線に沿う断面図である。
図6図3(b)と同様の図によって直動転がり支承の動作を説明する説明図であり、下部リニアガイドの移動ブロックがガイドレールの後端部(Y方向と反対方向の端部)に位置し、かつ上部リニアガイドの移動ブロックがガイドレールの右端部(X方向の端部)に位置する状態を示す。
図7図6と同様、直動転がり支承の動作を説明する説明図であり、下部リニアガイドの移動ブロックがガイドレールの前端部(Y方向の端部)に位置し、かつ上部リニアガイドの移動ブロックがガイドレールの左端部(X方向と反対方向の端部)に位置する状態を示す。
図8】第2実施形態による直動転がり支承を、図3と同様の図によって示しており、(a)は正面図、(b)は(a)のE-E線に沿う断面図である。
図9】直動転がり支承における磁石ホルダの変形例を説明する説明図であり、(a)は移動ブロック及びその周囲を示す側面図、(b)は(a)のF-F線に沿う断面図、(c)は(b)の永久磁石の配列による磁力線を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0040】
以下、図面を参照しながら、本発明の好ましい実施形態を詳細に説明する。図1は、本発明の第1実施形態による直動転がり支承を含む振動抑制装置を、これを適用した建物とともに概略的に示しており、(a)は正面図、(b)は(a)のA-A線に沿う断面図である。同図に示すように、本実施形態は、建物S(構造物)と地盤Gの間に設定された免震層Lに振動抑制装置1を設置することにより、いわゆる基礎免震建物を構成したものである。振動抑制装置1は、複数(図1では10個)の免震装置2及び複数(図1では2つ)の直動転がり支承3を備えている。
【0041】
建物Sの底部には、基礎梁Bと、その基礎梁Bから下方に突出する複数の上部基礎FSが一体に設けられている。これらの上部基礎FSは、互いに直交するX方向及びY方向にマトリックス状に配置されている。地盤Gには、複数の上部基礎FS(上層部)に対応する位置に、複数の下部基礎FG(下層部)が一体に設けられている。直動転がり支承3は、中央に位置する2組の上下の基礎FS及びFGの間にそれぞれ設置され、免震装置2は残りの上下の基礎FS及びFGの間にそれぞれ設置されている。なお、以下の説明では、図1(b)や後述する各図に示すY方向を「前方」又は「前側」とし、その反対方向を「後方」又は「後ろ側」として説明し、また、X方向を「右方」又は「右側」とし、その反対方向を「左方」又は「左側」として説明するものとする。
【0042】
詳細な図示は省略するが、免震装置2は、例えば鉛プラグや錫プラグを用いたプラグ入り積層ゴムなどで構成されている。また、この免震装置2は、建物Sの鉛直荷重を支持するとともに、地盤Gから入力される地震動に対して水平方向に変形可能であるとともに、元の位置に戻る復元機能を有している。
【0043】
図2は、直動転がり支承3の外観を示しており、図3(a)は直動転がり支承3が上下の基礎FS及びFG間に設置された状態、図3(b)は(a)のB-B線に沿う断面図を示している。これらの図に示すように、この直動転がり支承3は、減衰機能を有する2つのリニアガイド4、4を、上下対称にかつ平面的に見て直交する十字状に配置するように構成された十字型の直動転がり支承である。なお、以下の説明では、下側のリニアガイド4を「下部リニアガイド4A」、上側のリニアガイド4を「上部リニアガイド4B」というものとする。
【0044】
下部リニアガイド4Aは、前後方向(Y方向)に延びるガイドレール11(第1レール)と、このガイドレール11に係合し、その長さ方向に沿って移動自在の移動ブロック12(第1移動体)と、ガイドレール11に沿って延びるとともに、移動ブロック12の上面に取り付けられ、その移動ブロック12の前方及び後方にそれぞれ同じ所定長さ突出する磁石ホルダ13(第1磁石ホルダ)と、この磁石ホルダ13の下面に取り付けられた複数の永久磁石14及び磁極ブロック15と、を備えている。
【0045】
ガイドレール11は、導電性を有する材料、例えば炭素鋼や鋳鉄などの強磁性を有する金属から成り、比較的長い所定長さを有するとともに、横断面がほぼ矩形状に形成されている。また、ガイドレール11の上部の左右両側にはそれぞれ、後述する転動体が移動する2つの転動溝11a、11aが形成されている。さらに、ガイドレール11には、その長さ方向に沿って複数の固定用孔(図示せず)が形成されており、それらの固定用孔を介して、ガイドレール11よりも大きな所定サイズを有するフランジプレート16上にボルト止めされている。
【0046】
上記のガイドレール11については、その表面に、構成材料の金属よりも電気抵抗が小さい導電材料(例えば銅メッキ)によってコーティングを施してもよい。それにより、ガイドレール11の表面において発生する後述する渦電流を、より大きくすることができる。なお、ガイドレール11の構成材料として、前述した炭素鋼や鋳鉄以外に、例えばアルミニウムや銅、それらの合金など、非磁性材の金属を採用することも可能である。
【0047】
移動ブロック12は、その外観がブロック状に形成されている。この移動ブロック12は、ガイドレール11の転動溝11aを転動しながら循環する多数の鋼球から成る転動体(図示せず)を内蔵しており、それらの転動体を介して、ガイドレール12に係合している。これにより、移動ブロック12は、ガイドレール11に対し、非常に滑らかに移動可能になっている。
【0048】
磁石ホルダ13は、磁性材から成り、ガイドレール11とほぼ同じ長さ寸法及びガイドレール11の横幅よりも長い横幅寸法を有する単一の平坦な板状に形成されている。また、磁石ホルダ13は、ガイドレール11に対し、上下方向に所定距離を隔てて平行に延びるように配置されている。この磁石ホルダ13の材料については、磁性材であれば特に限定されるものではなく、種々の材料を採用することが可能である。そして、この磁石ホルダ13の下面には、移動ブロック12の前側及び後ろ側にそれぞれ、4つの永久磁石(以下、単に「磁石」という。第1永久磁石)14及びその前後に2つの磁極ブロック15(第1磁性部材)が取り付けられている。
【0049】
各磁石14は、平面形状が矩形状で所定サイズのブロック状に形成され、上半部と下半部で磁極(N極及びS極)が異なるように構成されている。また、隣り合う磁石14、14では、ガイドレール11に臨む磁極が互いに異なるように配置されている。一方、各磁極ブロック15は、鉄などの磁性材から成り、磁石14と同様の形状及びサイズを有するブロック状に形成されている。これらの磁石14及び磁極ブロック15は、移動ブロック12の前後において、磁石ホルダ13の長さ方向(Y方向)に沿って、互いに所定間隔を隔てた状態で一列に配置され、ガイドレール11に対し上下方向に所定間隔を隔てて対向している。なお、以下の説明では、一列に配置された複数の磁石14をまとめて適宜、「磁石列14」というものとし、同様に、後述する複数の磁石24及び34についてもそれぞれ適宜、「磁石列24」及び「磁石列34」というものとする。
【0050】
上記の磁極ブロック15は、磁石列14の端部の磁石である端部磁石14a(第1端部磁石)に隣接するように配置されている。これにより、後述するように、端部磁石14aと磁極ブロック15との間で、ループ状の磁力線が生成される。
【0051】
また、磁石ホルダ13には、その左右両側部に、上記の磁石列14を左右の側方から覆う磁石カバー13a、13a(第1磁石カバー)が設けられている(図3(a)参照)。各磁石カバー13aは、磁石ホルダ13の長さ方向に沿って延びるとともに、ガイドレール11の下端付近まで垂下し、上端部が磁石ホルダ13の側部にねじ止めなどにより取り付けられている。これらの磁石カバー13a、13aにより、ゴミや埃などがガイドレール11と磁石14との間に入るのを防止することができる。また、各磁石カバー13aを、磁気をシールド可能な材料で構成することにより、各磁石14の磁気が外部に漏れるのを防止することができる。
【0052】
以上のように構成された下部リニアガイド4Aは、左右両端部に複数の固定用孔16aが形成されたフランジプレート16及び、下部基礎FGとの間のアンカープレート17を介して、上記の各固定用孔16aにアンカーボルト18を挿入した状態で、下部基礎FG上に固定されている。
【0053】
一方、上部リニアガイド4Bは、前述したように、上記の下部リニアガイド4Aと上下対称に構成されている。すなわち、図2及び図3に示すように、上部リニアガイド4Bは、左右方向(X方向)に延びるガイドレール21(第2レール)と、このガイドレール21に係合し、その長さ方向に沿って移動自在の移動ブロック22(第2移動体)と、ガイドレール21に沿って延びるとともに、移動ブロック22の下面に取り付けられ、その移動ブロック22の左方及び右方にそれぞれ同じ所定長さ突出する磁石ホルダ23(第2磁石ホルダ)と、この磁石ホルダ23の上面に取り付けられた複数の永久磁石(以下、単に「磁石」という。第2永久磁石)24及び磁極ブロック25(第2磁性部材)と、を備えている。
【0054】
上部リニアガイド4Bを構成するガイドレール21、移動ブロック22、磁石ホルダ23、磁石24及び磁極ブロック25はそれぞれ、前述した下部リニアガイド4Aのガイドレール11、移動ブロック12、磁石ホルダ13、磁石14及び磁極ブロック15と同様に構成されている。なお、図示しないが、上部リニアガイド4Bの磁石ホルダ23の前後端部には、下部リニアガイド4Aの磁石カバー13a、13aと同様の構成及び機能を有する磁石カバー(第2磁石カバー)が設けられている。
【0055】
以上のように構成された下部リニアガイド4Aと上部リニアガイド4Bは、上下の移動ブロック12及び22にそれぞれ対応する磁石ホルダ13及び23の中央部が、接合部材としてのゴムシム20を介して接合されている。なお、このゴムシム20は、例えば比較的厚いゴム板が上下から金属板で挟まれることなどによって構成されている。
【0056】
図4は、下部リニアガイド4Aの前半部における磁石列14及びその周囲を拡大して示すとともに、各磁石14によって生成される磁力線を示している。なお、下部リニアガイド4Aの前半部及び後半部における磁石列14及び磁極ブロック15は、前後対称に構成されているので、以下の説明では、下部リニアガイド4Aの前半部についてのみ説明するものとする。
【0057】
図4に示すように、磁石ホルダ13の下面に取り付けられた磁石列14では、各磁石14のN極から出た磁力線は、上側の磁石ホルダ13と下側のガイドレール11との間において、これらの磁石ホルダ13、ガイドレール11及び隣り合う2つの磁石14、14を通り、元の磁石14のS極に戻るように、ループ状に生成される。
【0058】
また、磁石列14の前後(図4では左右)に配置された2つの磁極ブロック15、15では、隣接する端部磁石14aとの間で、その端部磁石14aによる磁力線がループ状に生成される。上記のような磁極ブロック15を設けることにより、端部磁石14aの磁力が外部に漏れるのを抑制しながら、その磁力をガイドレール11に安定して及ぼすことができる。
【0059】
一方、図5は、上部リニアガイド4Bの左半部における磁石列24及びその周囲を拡大して示しており、上述した図4と同様、各磁石24によって生成される磁力線を示している。なお、上部リニアガイド4Bの左半部及び右半部における磁石列24及び磁極ブロック25は、前述した下部リニアガイド4Aの前半部及び後半部の関係と同様、左右対称に構成されている。
【0060】
図5に示すように、磁石ホルダ23の上面に取り付けられた磁石列24では、各磁石24のN極から出た磁力線は、下側の磁石ホルダ23と上側のガイドレール21との間において、これらの磁石ホルダ23、ガイドレール21及び隣り合う2つの磁石24、24を通り、元の磁石24のS極に戻るように、ループ状に生成される。
【0061】
また、磁石列24の左右に配置された2つの磁極ブロック25、25では、隣接する端部磁石24a(第2端部磁石)との間で、その端部磁石24aによる磁力線がループ状に生成される。したがって、前述した下部リニアガイド4Aの磁極ブロック15と同様、上記の磁極ブロック25により、端部磁石24aの磁力が外部に漏れるのを抑制しながら、その磁力をガイドレール21に安定して及ぼすことができる。
【0062】
次に、以上のように構成された直動転がり支承3の動作について、前述した図3(b)と、動作時の状態を表す図6及び図7を参照して説明する。図3(b)に示す状態から、地震により、地盤G及び下部基礎FGが前方(Y方向)に移動し、これに伴い、下部リニアガイド4Aのガイドレール11が、フランジプレート16と一体に前方に移動すると、図6に示すように、下部リニアガイド4Aの移動ブロック12は、磁石ホルダ13並びに磁石列14及び磁極ブロック15と一体に、相対的に後方(Y方向の反対方向)に移動する。なお、図6では、下部リニアガイド4Aの移動ブロック12が、ガイドレール11の後端部まで移動した状態を示している。
【0063】
上記のように、下部リニアガイド4Aの移動ブロック12が、磁石列14及び磁極ブロック15と一体に、ガイドレール11に対して移動すると、磁石列14による磁場が変化することで、ガイドレール11には、電磁誘導による渦電流が生じる。そして、その渦電流によるローレンツ力及びその反作用力が、ガイドレール11及び移動ブロック12に対し、両者の相対移動を妨げる抵抗力として作用する。
【0064】
また、図3(b)に示す状態から、地震により、地盤G及び下部基礎FGが右方(X方向)に移動し、これに伴い下部リニアガイド4Aも右方に移動すると、図6に示すように、上部リニアガイド4Bの移動ブロック22は、磁石ホルダ23並びに磁石列24及び磁極ブロック25と一体に、右方に移動する一方、ガイドレール21は、相対的に左方(X方向の反対方向)に移動する。なお、図6では、上部リニアガイド4Bの移動ブロック22が、ガイドレール21の右端部まで移動した状態を示している。
【0065】
上記のように、上部リニアガイド4Bの移動ブロック22が、磁石列24及び磁極ブロック25と一体に、ガイドレール21に対して移動すると、磁石列24による磁場が変化することで、ガイドレール21には、電磁誘導による渦電流が生じる。そして、その渦電流によるローレンツ力及びその反作用力が、ガイドレール21及び移動ブロック22に対し、両者の相対移動を妨げる抵抗力として作用する。
【0066】
なお、図6に示すように、下部リニアガイド4Aの移動ブロック12がガイドレール11の後端部に移動した際には、下部リニアガイド4Aの磁石ホルダ13の後半部が、フランジプレート16よりも後方に突出する一方、上部リニアガイド4Bの移動ブロック22がガイドレール21の右端部に移動した際には、上部リニアガイド4Bの磁石ホルダ23の右半部が、フランジプレート26よりも右方に突出した状態になる。これらの場合、上下の基礎FS及びFGの周囲に十分なスペースを確保することにより、磁石ホルダ13及び23が外方に大きく突出しても、他の部材や機器などに干渉することはない。
【0067】
一方、図7は、上述した図6とは逆に、図3(b)に示す状態から、地盤G及び下部基礎FGが、後方(Y方向の反対方向)及び左方(X方向の反対方向)に移動した状態を示している。すなわち、図3(b)に示す状態から、地盤G及び下部基礎FGが後方にし、これに伴い、下部リニアガイド4Aのガイドレール11が、フランジプレート16と一体に後方に移動すると、図7に示すように、下部リニアガイド4Aの移動ブロック12は、磁石ホルダ13並びに磁石列14及び磁極ブロック15と一体に、相対的に前方(Y方向)に移動する。なお、図7では、下部リニアガイド4Aの移動ブロック12が、ガイドレール11の前端部まで移動した状態を示している。
【0068】
上記のように、下部リニアガイド4Aの移動ブロック12が、磁石列14及び磁極ブロック15と一体に、ガイドレール11に対して移動することにより、前述した図6と同様、磁石列14による磁場の変化によって、ガイドレール11に渦電流が生じ、その渦電流によるローレンツ力及びその反作用力が、ガイドレール11と移動ブロック12の相対移動を妨げる抵抗力として作用する。また、上部リニアガイド4Bの移動ブロック22が、磁石列24及び磁極ブロック25と一体に、ガイドレール21に対して移動することにより、前述した図6と同様、磁石列24による磁場の変化によって、ガイドレール21に渦電流が生じ、その渦電流によるローレンツ力及びその反作用力が、ガイドレール21と移動ブロック22の相対移動を妨げる抵抗力として作用する。
【0069】
以上詳述したように、本実施形態の直動転がり支承3によれば、渦電流によるローレンツ力及びその反作用力が、下部リニアガイド4Aのガイドレール11と移動ブロック12の相対移動、及び上部リニアガイド4Bのガイドレール21と移動ブロック22の相対移動を妨げる抵抗力として作用するので、それらの抵抗力によって、地盤Gからの振動エネルギーを吸収し、建物Sへの振動を減衰させることができ、上記振動を抑制する減衰機能を得ることができる。
【0070】
また、複数の磁石14、24が取り付けられる磁石ホルダ13、23については、比較的単純な板状部材によって、容易に構成することができる。さらに、各リニアガイド4において、磁石列14(24)は、隣り合う磁石14(24)のガイドレール11(21)に臨む磁極が互いに異なるように配置されているので、ガイドレール11(21)に渦電流が効率よく発生し、その渦電流によるローレンツ力を、移動ブロック12(21)の移動を妨げる抵抗力として効率的に作用させることができる。
【0071】
また、上記の直動転がり支承3を含む振動抑制装置1によれば、直動転がり支承3が減衰機能を有しているので、地震動による地盤Gから建物Sへの振動に対し、減衰機能を発揮させながら、効果的に抑制することができる。さらに、上記の振動抑制装置1は、復元機能を有する免震装置2を備えているので、地震の際に、下部基礎FGと上部基礎FSの間に変位が生じても、その変位を元の位置に容易に戻すことができる。さらにまた、直動転がり支承3は、減衰機能を有しているので、振動抑制装置1において、減衰機能のみを有する減衰装置を省略することができ、その分、振動抑制装置1のコストを低減することができる。
【0072】
図8は、上述した第1実施形態の図3と同様の図であり、本発明の第2実施形態による直動転がり支承を示している。なお、本実施形態の直動転がり支承30において、第1実施形態の直動転がり支承3と同様の構成部品については、同じ符号を付して、その詳細な説明を省略するものとする。また、以下の説明では、第1実施形態の直動転がり支承3との相違点を中心に説明するものとする。
【0073】
この直動転がり支承30は、ガイドレール11及び移動ブロック12を一組とする二組の下部リニアガイド4A、4Aと、単一のガイドレール21及び2つの移動ブロック22、22を有する上部リニアガイド4Bとを備えている。また、この直動転がり支承30は、二組の下部リニアガイド4A、4Aにおける2つのガイドレール11、11と、上部リニアガイド4Bの単一のガイドレール21とにより、平面的に見てキの字状に構成されたキ型の直動転がり支承である。
【0074】
また、二組の下部リニアガイド4A、4Aは、共通の磁石ホルダ33(第1磁石ホルダ)を有している。すなわち、この磁石ホルダ33は、二組の下部リニアガイド4A、4Aにおける2つのガイドレール11、11の長さ方向に沿って延びかつ2つの移動ブロック12、12間にわたるように、両移動ブロック12、12の上面に取り付けられている。そして、この磁石ホルダ33の下面には、両移動ブロック12、12の前後において、複数の磁石14及び磁極ブロック15が取り付けられている。
【0075】
具体的には、4つの磁石14及びその前後の2つの磁極ブロック15が、各ガイドレール11の長さ方向に沿って、互いに所定間隔を隔てた状態で一列に配置され、各ガイドレール11に対し上下方向に所定間隔を隔てて対向している。加えて、磁石ホルダ33の下面には、2つのガイドレール11、11間に対応する領域(X方向の中央の領域)に、磁石ホルダ33の長さ方向(Y方向)に沿って、複数(図8(b)では12個)の永久磁石34(以下、単に「磁石」という。第1レール間永久磁石)及びその前後の2つの磁極ブロック35が、左右2列で配置されている。これらの磁石34では、前後方向及び左右方向に隣り合う磁石の下方に臨む磁極が互いに異なるように配置されている。
【0076】
また、2つのガイドレール11、11間には、上記2列の各磁石34に対し、上下方向に所定間隔を隔てて対向し、両ガイドレール11、11の長さ方向に沿って水平に延びるレール間対向部材36(第1レール間対向部材)がフランジプレート16上にボルト止めによって固定されている。このレール間対向部材36は、導電性を有する金属などで構成されている。
【0077】
一方、上部リニアガイド4Bは、二組の下部リニアガイド4A、4Aの2つの移動ブロック12、12に対応して、それらの上方に2つの移動ブロック22、22を備えており、それ以外の構成は、前述した第1実施形態の上部リニアガイド4Bと同様である。
【0078】
以上のように構成された直動転がり支承30では、二組の下部リニアガイド4A、4Aの2つの移動ブロック12、12がガイドレール11、11に沿って移動すると、磁石列14が対向する各ガイドレール11の上面に加えて、磁石列34が対向するレール間対向部材36の上面に、電磁誘導による渦電流が生じる。そして、これらの渦電流によるローレンツ力及びその反作用力が、各移動ブロック12とガイドレール11の相対移動、及び両移動ブロック12、12とレール間対向部材36との相対移動を妨げる抵抗力として作用する。
【0079】
なお、本実施形態の直動転がり支承30における上部リニアガイド4Bは、前述した第1実施形態における上部リニアガイド4Bと同様の動作を行う。
【0080】
以上詳述したように、本実施形態のキ型の直動転がり支承30によれば、第1実施形態の十字型の直動転がり支承3に比べて、鉛直方向の荷重をより安定して支持しながら、二組の下部リニアガイド4A、4Aにおける2つの移動ブロック12、12の移動の際に、多数の磁石14及び34により、より大きな抵抗力を発生させることができる。その結果、直動転がり支承30による減衰機能をより高めることができる。
【0081】
また、図示は省略するが、上部リニアガイド4Bについて、上述したキ型の直動転がり支承30の下部リニアガイド4A、4Aと同様、二組の上部リニアガイド4B、4Bを備えることにより、井型の直動転がり支承を構成することも、もちろん可能である。
【0082】
この場合には、上述した二組の下部リニアガイド4A、4Aと上下対称な二組の上部リニアガイド4B、4Bを、二組の下部リニアガイド4A、4Aの上方において、平面的に見て直交するように配置することにより、井型の直動転がり支承が構成される。また、この場合、上述したキ型の直動転がり支承30における2列の磁石34、磁極ブロック35及びレール間対向部材36と同様に構成された2列の磁石(第2レール間永久磁石)、磁極ブロック及びレール間対向部材(第2レール間対向部材)を、二組の上部リニアガイド4B、4B間に配置する。
【0083】
上記のように構成される井型の直動転がり支承によれば、十字型の直動転がり支承3や、キ型の直動転がり支承30に比べて、鉛直方向の荷重をより一層安定して支持しながら、二組の上部リニアガイド4B、4Bにおける2つの移動ブロック22、22の移動の際に、その移動を妨げるより大きな抵抗力を発生させることができる。その結果、十字型やキ型の直動転がり支承3、30に比べて、減衰機能をより一層高めることができる。
【0084】
なお、上述した第1及び第2実施形態では、磁石ホルダ13、23、33として、平坦な板状のものを採用したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば、ガイドレールを上下方向の一方と、長さ方向の両側方との三方から覆うように、横断面がコ字状に形成されたものを採用することも可能である。
【0085】
図9(a)及び(b)は、前述した第1実施形態の直動転がり支承3において、下部リニアガイド4Aの磁石ホルダ13に代えて、横断面がコ字状の磁石ホルダ43(第1磁石ホルダ)を採用したものを示している。同図(a)に示すように、磁石ホルダ43は、移動ブロック12の前後(図9(a)の左右)に設けられるとともに、内面に複数の永久磁石(以下、単に「磁石」という。第1永久磁石)44が取り付けられている。なお、これらの磁石ホルダ43及び磁石44は、前後対称に構成されている。
【0086】
図9(a)及び(b)に示すように、磁石ホルダ43は、ガイドレール11の長さ方向に沿って水平に所定長さ延びる水平壁と43aと、この水平壁43aの左右の端部から直角に屈曲して垂下する左右の垂下壁43b、43bとで、下方に開放するコ字状に形成されている。なお、図示しないが、磁石ホルダ43の移動ブロック12側の端部には、取付け用のフランジが設けられており、そのフランジを介して、両磁石ホルダ43、43が移動ブロック12の前壁及び後壁にそれぞれねじ止めされている。
【0087】
この磁石ホルダ43の水平壁43a及び両垂下壁43b、43bの内面には、ガイドレール11の長さ方向に沿って2列で、各列に複数(本例では3つ)の磁石44が、ガイドレール11に対して所定間隔を隔てて取り付けられている。なお、ガイドレール11の長さ方向の端部の磁石44に代えて、磁性材から成る磁極ブロックを配置することも可能である。
【0088】
上記のように構成された磁石ホルダ43を備えた下部リニアガイド4Aでは、磁石ホルダ43の水平壁43aとガイドレール11の上面との間、及び磁石ホルダ43の両垂下壁43b、43bとガイドレール11の両側面との間に、複数の磁石44によって、図9(c)に示すようなループ状の磁力線が生成される。この状態において、移動ブロック12がガイドレール11に沿って移動することにより、ガイドレール11の上面及び両側面に、電磁誘導による渦電流が生じる。そして、その渦電流によるローレンツ力及びその反作用力が、ガイドレール11及び移動ブロック12に対し、両者の相対移動を妨げる抵抗力として作用する。
【0089】
上記のように、ガイドレール11の上面及び両側面に渦電流が生じることにより、それら3つの面において上記の抵抗力が作用するので、磁石ホルダ43の長さ方向の寸法を短くしながら、例えば、前述した平坦な磁石ホルダ13を備えた第1実施形態の下部リニアガイド4Aと同程度の抵抗力を得ることができる。その結果、両磁石ホルダ43、43を含む移動ブロック12を、コンパクトに構成することができ、移動ブロック12がガイドレール11に沿って大きく移動しても、前述した図6図7の第1実施形態の磁石ホルダ13と異なり、磁石ホルダ43がガイドレール11から外方に大きく突出するのを回避することができる。
【0090】
また、上記の磁石ホルダ43については、下部リニアガイド4Aに適用した場合について説明したが、上部リニアガイド4Bにももちろん、適用することが可能である。すなわち、第1実施形態の直動転がり支承3における上部リニアガイド4Bの磁石ホルダ23に代えて、移動ブロック22の左右両側に、上述した磁石ホルダ43を上下反転した状態で、すなわち、横断面が上方に開放するコ字状に形成された磁石ホルダ(第2磁石ホルダ)を取り付けてもよい。
【0091】
なお、本発明は、説明した実施形態に限定されることなく、種々の態様で実施することができる。例えば、上述した実施形態では、直動転がり支承3、30を、建物Sと地盤Gとの間に設定された免震層Lに設置した場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、上記免震層Lに加えて、又は上記免震層Lに代えて、直動転がり支承3、30を建物Sの中層部に設定される免震層に設けることも可能である。
【0092】
また、実施形態では、十字型、キ型及び井型の直動転がり支承について説明したが、本発明では、下部リニアガイド4A及び上部リニアガイド4Bの少なくとも一方を、三組以上備えた直動転がり支承を構成することも可能である。
【0093】
さらに、実施形態で示した直動転がり支承3、30の細部の構成や、磁石14、24、34及び44の配列などは、あくまで例示であり、本発明の趣旨の範囲内で適宜、変更することができる。
【符号の説明】
【0094】
1 振動抑制装置
2 免震装置
3 直動転がり支承
4 リニアガイド
4A 下部リニアガイド
4B 上部リニアガイド
11 ガイドレール(第1レール)
12 移動ブロック(第1移動体)
13 磁石ホルダ(第1磁石ホルダ)
13a 磁石カバー(第1磁石カバー)
14 永久磁石(第1永久磁石)
14a 端部磁石(第1端部磁石)
15 磁極ブロック(第1磁性部材)
21 ガイドレール(第2レール)
22 移動ブロック(第2移動体)
23 磁石ホルダ(第2磁石ホルダ)
24 永久磁石(第2永久磁石)
24a 端部磁石(第2端部磁石)
25 磁極ブロック(第2磁性部材)
30 直動転がり支承
33 磁石ホルダ(第1磁石ホルダ)
34 永久磁石(第1レール間永久磁石)
35 磁極ブロック
36 レール間対向部材(第1レール間対向部材)
43 磁石ホルダ(第1磁石ホルダ)
43a 磁石ホルダの水平壁
43b 磁石ホルダの垂下壁
44 永久磁石(第1永久磁石)
S 建物(構造物)
G 地盤
L 免震層
B 基礎梁
FS 上部基礎(上層部)
FG 下部基礎(下層部)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9