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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022184463
(43)【公開日】2022-12-13
(54)【発明の名称】自動半田付システム
(51)【国際特許分類】
   B23K 3/06 20060101AFI20221206BHJP
   B23K 3/00 20060101ALI20221206BHJP
   H05K 3/34 20060101ALI20221206BHJP
   H01R 43/02 20060101ALI20221206BHJP
【FI】
B23K3/06 S
B23K3/00 310F
H05K3/34 501Z
H01R43/02 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021092328
(22)【出願日】2021-06-01
(71)【出願人】
【識別番号】000214836
【氏名又は名称】長野日本無線株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088579
【弁理士】
【氏名又は名称】下田 茂
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】市川 毅
(72)【発明者】
【氏名】山田 巧
(72)【発明者】
【氏名】大平 倫之
【テーマコード(参考)】
5E051
5E319
【Fターム(参考)】
5E051KA06
5E051KB03
5E319AB10
5E319CC54
5E319CD04
5E319GG09
5E319GG15
(57)【要約】
【課題】 線材の接続強度を確保し、接続品質の向上及び接続不良(接触不良)を解消するとともに、生産効率を低下させることなく小型化及び低コスト化に寄与する。
【解決手段】 回転制御可能な回転軸Rcを有するロボット機構2…と、被接続部Aj…の接続面Jf…に対する面直角方向Djから見て、当該接続面Jf…の面方向Dsにおける中心軸線Lcに対する線材Wa…の先端位置Ws…におけるオフセット量Od…を検出するオフセット検出機能部Fdと、このオフセット検出機能部Fdの検出結果に基づき、線材Wa…の先端位置Ws…が、面直角方向Djから見て、回転軸Rcに一致する当該回転軸Rcの修正回転角Qc…を求める演算処理機能部Fpとを備える。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークの被接続部に線材を自動で半田付けする自動半田付システムにおいて、回転制御可能な回転軸を有するロボット機構と、前記被接続部の接続面に対する面直角方向から見て、当該接続面の面方向における前記中心軸線に対する前記線材の先端位置におけるオフセット量を検出するオフセット検出機能部と、このオフセット検出機能部の検出結果に基づき、前記線材の先端位置が、前記面直角方向から見て、前記回転軸に一致する当該回転軸の修正回転角を求める演算処理機能部と、前記修正回転角に対応する回転角制御量を出力する制御出力機能部とを有するシステムコントローラを備えることを特徴とする自動半田付システム。
【請求項2】
前記ロボット機構は、前記線材の中心軸線が前記回転軸と同一軸線上になるように当該線材を把持するハンド部を少なくとも備えることを特徴とする請求項1記載の自動半田付システム。
【請求項3】
前記線材には、少なくとも、先端一部の被覆部を除去し、露出した導線部を有するリード線を含むことを特徴とする請求項1記載の自動半田付システム。
【請求項4】
前記オフセット検出機能部は、カメラにより撮影して得た画像データに対する画像処理により前記オフセット量を検出する画像処理機能部を備えることを特徴とする請求項1記載の自動半田付システム。
【請求項5】
前記オフセット検出機能部は、前記ワークに対して必要となる前記線材の全部を一括してクランパーにセットし、このクランパーを、前記カメラによりまとめて撮影することを特徴とする請求項4記載の自動半田付システム。
【請求項6】
前記制御出力機能部は、前記回転軸を回転させる際に、前記線材の先端位置を、前記被接続部に対する接近方向に前記回転軸を回転させる制御信号を出力することを特徴とする請求項1記載の自動半田付システム。
【請求項7】
前記ハンド部は、前記線材に対して矯正器により外的な力を直接作用させることにより、当該線材のオフセット量を矯正処理する矯正処理機構部を備えることを特徴とする請求項1,2又は3記載の自動半田付システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワークの被接続部に線材を自動で半田付けする際に用いて好適な自動半田付システムに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、電子部品等のワークの被接続部に、リード線又はワイヤハーネス等の線材を接続する場合、半田付けにより接続されることも多い。このため、半田付けを自動で行う自動半田付装置も各種提案されている。
【0003】
従来、この種の自動半田付装置としては、特許文献1で開示される自動被覆電線取付装置及び特許文献2で開示される自動ハンダ付装置が知られている。同文献1の自動被覆電線取付装置は、被覆電線等の線材の原線からの加工と、スイッチ端子やターミナル端子等への配線,接続固定を自動的に行なえるようにしたものであり、具体的には、本体テーブルの上に回転テーブルを配置し、該回転テーブルの周囲に部品整列装置,部品供給装置,部品端子矯正装置,複数の被覆電線加工供給装置,折曲げ装直,被覆電線保持リール,ハンダ付装置,完成品取出し装置を配し、前記回転テーブル上に部品固定治具を複数個配置し、モーター等で前記回転テーブルを間欠動作させる事により部品を順次移載し、前記各装置により前記部品に対し各々の作業を実施することにより、前記部品に対する複数の種類の被覆電線を定寸切断,被覆の定寸ストリップ,部品への供給,電線の折曲げ,部品と電線のハンダによる接続の一連の作業を自動的に行なうように構成したものである。
【0004】
また、特許文献2の自動ハンダ付装置は、例えば電気部品等の溶接に使用されるものであり、具体的には、基板上に設置されたハンダ繰出装置と、上記基板と一体をなす支持台に摺動自在に設けられた摺動部材と、この摺動部材にばねを介して緩く嵌装されたハンダ送出管と、このハンダ送出管内を引き通され、しかも可撓管を介して上記ハンダ繰出装置に連結した線状のハンダと、上記基板上に一対をなす案内杆で摺動自在に設けられた一対のカム部を有するワーク保持体と、上記基板上に上記ワーク保持体に対して跨って直交して設けられ、かつ、上記各カム部によって接触離脱し得るようにした一対の可動電極とより構成したものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭60-177587号公報
【特許文献2】実開昭54-102540号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上述した従来の自動半田付装置(自動被覆電線取付装置,自動ハンダ付装置)は、次のような問題点があった。
【0007】
即ち、線材として、柔軟性を有するリード線を半田付けする場合、接続するリード線には湾曲(曲げ)が発生しやすい。湾曲が発生した場合、リード線の先端である導線部分がワークの被接続部に対して位置がずれ、結果的に接続時のバラツキが生じやすくなる。したがって、接続部分における接続強度の低下を招く虞れがあるとともに、線材の導出位置や導出方向のバラツキを生じるなど、接続品質の低下及び接続不良(接触不良)が発生しやすい難点があった。
【0008】
一方、矯正手段により、リード線の湾曲を半田付けを行う前に矯正することも行われているが、被覆部は弾性を有しているが故に、十分に矯正することは容易でない。しかも、矯正には、ある程度の必要な時間が取られるとともに、機械的に構成する故に、半田付け機構の大型化及びコストアップを招く問題があった。
【0009】
本発明は、このような背景技術に存在する課題を解決した自動半田付システム1の提供を目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る自動半田付システム1は、上述した課題を解決するため、ワークAの被接続部Aj…に線材Wa…を自動で半田付けするシステム構成するに際して、回転制御可能な回転軸Rcを有するロボット機構2…と、被接続部Aj…の接続面Jf…に対する面直角方向Djから見て、当該接続面Jf…の面方向Dsにおける中心軸線Lcに対する線材Wa…の先端位置Ws…におけるオフセット量Od…を検出するオフセット検出機能部Fdと、このオフセット検出機能部Fdの検出結果に基づき、線材Wa…の先端位置Ws…が、面直角方向Djから見て、回転軸Rcに一致する当該回転軸Rcの修正回転角Qc…を求める演算処理機能部Fpと、修正回転角Qc…に対応する回転角制御量を出力する制御出力機能部Feとを有するシステムコントローラCsを備えることを特徴とする。
【0011】
この場合、発明の好適な態様により、ロボット機構2…には、線材Wa…の中心軸線Lcが回転軸Rcと同一軸線上になるように当該線材Wa…を把持するハンド部2h…を少なくとも設けることができる。また、線材Wa…には、少なくとも、先端一部の被覆部Wt…を除去し、露出した導線部Wm…を有するリード線(Wa…)を含ませることができる。一方、オフセット検出機能部Fdには、カメラ5により撮影して得た画像データに対する画像処理によりオフセット量Odを検出する画像処理機能部Fdvを設けることができるとともに、ワークA…に対して必要となる線材Wa…の全部を一括してクランパー6にセットし、このクランパー6を、カメラ5によりまとめて撮影することができる。また、制御出力機能部Feは、回転軸Rcを回転させる際に、線材Wa…の先端位置Ws…を、被接続部Aj…に対する接近方向Diに回転軸Rcを回転させる制御信号を出力することが望ましい。さらに、ハンド部2h…には、線材Wa…に対して矯正器7により外的な力を直接作用させることにより、当該線材Wa…のオフセット量Od…を矯正処理する矯正処理機構部Fsを設けることができる。
【発明の効果】
【0012】
このような構成を有する本発明に係る自動半田付システム1によれば、次のような顕著な効果を奏する。
【0013】
(1) 柔軟性を有するリード線のような線材Wa…が湾曲したり折曲している状態であっても、ワークAの被接続部Aj…に対する線材Wa…における先端位置Ws…のズレを有効に回避できる。これにより、半田付け部分における接続強度の確保及び製造上のバラツキを低減できるなど、接続品質の向上及び接続不良(接触不良)の解消、更にはワークAに対する線材Wa…の導出位置や導出方向を均一化することができる。
【0014】
(2) 線材Wa…を次工程に移送するタクト内に修正処理を行うことができるため、別途の修正処理工程を設けることが不要となり、生産効率を高めることができる。加えて、ロボット機構2…を構成する六軸目の軸機能等をそのまま利用できるため、ロボット機構2…には線材Wa…を把持するハンド部2h…を設ければ足りるなど、システムの小型化及び低コスト化に寄与できる。
【0015】
(3) 好適な態様により、ロボット機構2…に、線材Wa…の中心軸線Lcが回転軸Rcと同一軸線上になるように当該線材Wa…を把持するハンド部2h…を少なくとも設ければ、ハンド部2h…を修正回転角Qc…だけ回転制御するのみで、オフセット量Od…を迅速かつ正確に修正することができる。
【0016】
(4) 好適な態様により、線材Wa…に、少なくとも、先端一部の被覆部Wt…を除去し、露出した導線部Wm…を有するリード線(Wa…)を含ませれば、本発明の課題を包含するリード線(Wa…)に適用できるため、パフォーマンスを確保する観点から最適な形態として実施することができる。
【0017】
(5) 好適な態様により、オフセット検出機能部Fdに、カメラ5により撮影して得た画像データに対する画像処理によりオフセット量Od…を検出する画像処理機能部Fdvを設ければ、オフセット量Od…に対する二次元的な検出を、より容易かつ確実に行うことができるとともに、湾曲した状態が複雑な場合などであっても線材Wa…の不良等として事前に検出し、必要な異常発生処理等を行うことができる。
【0018】
(6) 好適な態様により、オフセット検出機能部Fdに、ワークA…に対して必要となる線材Wa…の全部を一括してクランパー6にセットし、このクランパー6を、カメラ5によりまとめて撮影するようにすれば、一回に複数の線材Wa…に対するオフセット量Od…を検出し、各検出データを分配利用できるため、処理の効率化を図れるとともに、一つのワークAに使用する全部の線材Wa…に係わる検出データを一括して利用できるため、データ同士のバラツキを最小にすることができる。
【0019】
(7) 好適な態様により、制御出力機能部Feに、回転軸Rcを回転させる際に、線材Wa…の先端位置Ws…を、被接続部Aj…に対する接近方向Diに回転軸Rcを回転させる制御信号を出力する機能を設ければ、線材Wa…の傾斜した浮き上がりを押さえ込むことができるため、被接続部Aj…に対して効果的に密着(線接触)させることができるなど、より好適な半田付け処理を行うことができる。
【0020】
(8) 好適な態様により、ハンド部2h…に、線材Wa…に対して矯正器7により外的な力を直接作用させることにより、当該線材Wa…のオフセット量Od…を矯正処理する矯正処理機構部Fsを設ければ、本発明に係る自動半田付システム1の主要効果に加え、線材Wa…の湾曲や折曲を、半田付け処理前に矯正する機能を追加することができるため、より接続品質を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の好適実施形態に係る自動半田付システムのブロック系統図、
図2】同自動半田付システムの概略工程図、
図3】同自動半田付システムの処理を順次説明するためのフローチャート、
図4】同自動半田付システムのクランパーに移載されたリード線と修正用カメラを示す平面図、
図5】同自動半田付システムのクランパーに移載されたリード線を先端側から見た側面図、
図6】同自動半田付システムのロボット機構のハンド部によりリード線を把持した直後の平面図、
図7】同自動半田付システムのロボット機構のハンド部によりリード線を把持して修正した後の平面図、
図8】同自動半田付システムのロボット機構のハンド部により修正したリード線を半田付けする際の正面図、
図9】同自動半田付システムによりワークの被接続部にリード線を半田付けした状態の平面図、
図10】同自動半田付システムの変更例に係るロボット機構のハンド部によりリード線を把持した直後の平面図、
図11】同自動半田付システムの変更例に係るロボット機構のハンド部によりリード線を把持して修正した後の平面図、
【発明を実施するための形態】
【0022】
次に、本発明に係る好適実施形態を挙げ、図面に基づき詳細に説明する。
【0023】
まず、本実施形態に係る自動半田付システム1の全体構成について、図2図4図11)を参照して説明する。
なお、例示する自動半田付システム1は、ワークAとして、センサモジュールの中間アセンブリMを示す。この中間アセンブリMは、図9に示すように、プリント基板Mpに四つの被接続部(接続端子)Aj…を備えている。また、この被接続部Aj…に半田付けする線材(Wa…)は、リード線Wa,Wb,Wc,Wdである。このリード線Wa…は、図6及び図7に示すように、先端一部の被覆部Wt…を除去して先端側の導線部Wm…の一部を露出させた形態を備えている。したがって、導線部Wm…の先端がリード線Wa…の先端位置Ws…となる。このように、線材(Wa…)に、少なくとも、先端一部の被覆部Wt…を除去し、露出した導線部Wm…を有するリード線Wa,Wb…を含ませれば、本発明の課題を包含するリード線Wa…に適用できるため、パフォーマンスを確保する観点から最適な形態として実施することができる。
【0024】
次に、自動半田付システム1のる機械系における全体構成について説明する。自動半田付システム1は、図2に示すように、中央に、ワーク半田付ライン11を設置し、このワーク半田付ライン11は、上流側から四つの半田付処理部11a,11b,11c,11dを順次通過する。即ち、ワーク半田付ライン11は、ワークAをセットしたパレット14を順次搬送する機能を備え、各パレット14にセットした各ワークAを、各半田付処理部11a,11b…に一定時間停止させつつ順次搬送する機能を備える。
【0025】
また、ワーク半田付ライン11の搬送方向Dmの左側には、各半田付処理部11a,11b…に対応する四台の半田付ユニット12,12,12.12を順次配設する。一台の半田付ユニット12は、図8に示すように、半田鏝部22及び半田供給部23を備える半田付ヘッド部21を備え、この半田付ヘッド部21は不図示のロボット機構部によりXYZ方向へ移動することができる。図8中、24は、半田鏝部22の先端付近を撮影する位置決用カメラを示す。
【0026】
他方、ワーク半田付ライン11の搬送方向Dmの右側には、各半田付処理部11a,11b…に対応する四台のロボット機構2,2,2.2を順次配設する。一台のロボット機構2は、図6図8に示すように、六軸の産業用ロボットであり、先端に、六軸目の回転出力部25に取付けたハンド部2hを備える。この回転出力部25は、回転制御可能な回転軸Rcとなる。ハンド部2hは、チャック部26,及び矯正器7を有する矯正処理機構部Fsを備える。チャック部26は、リード線Wa(Wb…)を把持する機能を備え、図6及び図7に示すように、リード線Waを把持した際に、リード線Waの中心軸線Lcは、回転軸Rcと同一軸線上になるように構成する。このように構成すれば、ハンド部2hを修正回転角Qcだけ回転制御するのみで、オフセット量Odを迅速かつ正確に修正することができる。なお、中心軸線Lcと回転軸Rcが同一軸線上にない場合には、ロボット機構2の他の駆動軸を制御することにより中心軸線Lcと回転軸Rcが同一軸線上に位置するように制御することができる。
【0027】
図6図8に例示した矯正処理機構部Fsでは、矯正器7をリード線Waの外周面に対して摺動可能に装着し、中心軸線Lcに沿って反復的に移動させることにより、リード線Waの曲げ(オフセット)を矯正する機能を備える。即ち、リード線Waに対して外的な力を直接作用させ、後述するオフセット量Odを矯正処理する機能を備える。なお、矯正処理機構部Fsは、オプション的な機能である。図10及び図11は、矯正処理機構部Fsを設けない構成、即ち、図6図8に示す構成から矯正処理機構部Fsの構成を除いた変更例を示す。このため、図10及び図11において、図6図8に対して、同一部分には同一符号を付してその構成を明確にするとともに、その詳細な説明は省略する。
【0028】
このように、矯正処理機構部Fsを設けるか否かは任意である。しかし、矯正処理機構部Fsを設けた場合には、本発明に係る自動半田付システム1の主要効果に加え、リード線Waの湾曲や折曲を、半田付け処理前に矯正する機能を追加することができるため、より接続品質を高めることができる。
【0029】
さらに、ロボット機構2,2,2…の右側には、クランパー6にクランプしたリード線Wa…を上述したワークA…(パレット14…)に同期して搬送するリード線搬送ライン15を配設する。クランパー6は、一個のワークAに使用する色の異なる四本のリード線Wa,Wb,Wc,Wdをクランプする機能を備える。例示のクランパー6は、図4及び図5に示すように、ブロック体6mの上面から四つのU形スリット6s,6s…を形成したものである。また、図1に示すように、リード線搬送ライン15の近傍には、多数のリード線Wa…,Wb…,Wc…,Wd…をストックしたリード線ストッカー16が配設される。
【0030】
その他、図1に示すように、ワーク半田付ライン11に対する上流側には、ワーク搬入部17を配設するとともに、このワーク搬入部17により搬送されたワークAをスタンバイさせるワーク導入部17sを備える。さらに、ワーク導入部17sの近傍には、不図示のリード線移載ロボットを設置するとともに、リード線搬送ライン15の上流側には、クランパースタンバイ部Xpを設け、リード線移載ロボットにより、このスタンバイ部Xpにセットされたクランパー6に対して、リード線ストッカー16にストックされたリード線Wa,Wb……を順次移載することができる。他方、ワーク半田付ライン11に対して、下流側には半田付け処理の終了したワークAを、ワーク半田付ライン11から搬出するワーク搬出部18を備える。2pは半田付け処理の終了したワークAを取出すワーク取出ロボットを示す。また、スタンバイ部Xpにセットされたクランパー6のリード線Wa…における先端位置Ws…の前方には、図2図4及び図5に示すように、修正用カメラ5を設置する。
【0031】
次に、自動半田付システム1における制御系及び駆動系を含む全体のシステム構成について、図1を参照して説明する。
【0032】
図1中、Csはシステムコントローラを示す。システムコントローラCsは、システムコントローラ本体31を備え、このシステムコントローラ本体31には、タッチパネル31tを有するディスプレイ31dが付属する。また、システムコントローラ本体31には、本発明に関連して、前述した位置決用カメラ24及び修正用カメラ5をそれぞれインターフェイス32及び33を介して接続する。一方、システムコントローラ本体31には、半田付処理部11aにおける、ハンド部2h及び各ロボット軸を駆動する各種のアクチュエータ群2oを含むロボット機構2をインターフェイス34を介して接続する。半田付処理部11aについて説明したが、他の半田付処理部11b,11c,11dについても、半田付処理部11aと同様に接続する。さらに、各半田付ユニット12…をインターフェイス35…を介して接続する。その他、ワーク取出ロボット2p及びリード線移載ロボット(不図示)、ワーク半田付ライン11,リード線搬送ライン15,ワーク搬入部17及びワーク搬出部18の各駆動機構(不図示)も必要なインターフェイスを介してシステムコントローラ本体31に接続される。
【0033】
また、システムコントローラCsは、CPU及び内部メモリ36等を内蔵するコンピュータ機能を備え、内部メモリ36mには、各種演算処理及び各種制御処理(シーケンス制御)を実行するため包括的な制御プログラム(ソフトウェア)を格納するプログラムエリア36mpを有するとともに、各種データ(データベース)類を書込可能なデータエリア36mdが含まれる。
【0034】
そして、プログラムエリア36mpには、本発明に係る自動半田付システム1を機能させるための半田付シーケンスプログムCpfが格納されることにより各機能部が実行される。具体的には、主要な機能部として、オフセット検出機能部Fd,画像処理機能部Fdv,演算処理機能部Fp,制御出力機能部Fe,矯正処理機能部Fs,位置決め制御機能部Fcが含まれる。この場合、オフセット検出機能部Fdは、被接続部Aj…の接続面Jf…に対する面直角方向Djから見て、当該接続面Jf…の面方向Dsにおける中心軸線Lcに対するリード線Wa…の先端位置Ws…におけるオフセット量Od…を検出する機能を備える。このオフセット検出機能部Fdには、カメラ5により撮影して得た画像データに対する画像処理によりオフセット量Odを検出する画像処理機能部Fdvが含まれる。また、演算処理機能部Fpは、このオフセット検出機能部Fdの検出結果に基づき、リード線Wa…の先端位置Ws…が、面直角方向Djから見て、回転軸Rcに一致する当該回転軸Rcの修正回転角Qc…を求める機能を備える。さらに、制御出力機能部Feは、修正回転角Qcに対応する回転角制御量を出力する機能を備える。他方、矯正処理機構部Fsは、前述したように、ハンド部2h…に設けた矯正器7を駆動制御し、リード線Wa…に対して外的な力を直接作用させることにより、リード線Wa…のオフセット量Od…を矯正処理する機能を備える。
【0035】
次に、本実施形態に係る自動半田付システム1の動作、即ち、半田付方法について、各図を参照しつつ図3に示すフローチャートに従って説明する。
【0036】
まず、図2において、ワーク搬入部17により搬入されたワークA(中間アセンブリM)は、スタンバイ位置となるワーク導入部17sにおけるパレット14上にセットされる(ステップS1)。また、不図示のリード線移載ロボットにより、リード線ストッカー16から色の異なる一番目のリード線Waが、リード線搬送ライン15におけるクランパースタンバイ部Xpに位置するクランパー6の対応するU形スリット6sにセット(移載)される(ステップS2)。このような移載処理は、残りの三本(一般にはN本)のリード線Wb,Wc,Wdに対しても同様に行われる(ステップS3)。移載が完了した状態を、図4及び図5に示す。
【0037】
移載が完了したなら、オフセット検出機能部Fdの実行に基づき、修正用カメラ5により、この状態におけるリード線Wa,Wb,Wc,Wdの全体が撮影される(ステップS4)。修正用カメラ5から見た被写体となるリード線Wa,Wb,Wc,Wdの先端Ws…の画像は図5に示すようになる。例示の場合、リード線Wa,Wcの二本に湾曲が生じている状態を示している。図5中、DjはワークAの被接続部Ajの接続面Jfに対する面直角方向になるとともに、Do…は湾曲が生じているリード線Wa,Wcの中心軸線Lc…の方向を示している。このように、オフセット検出機能部Fdに、ワークA…に対して必要となるリード線Wa…の全部を一括してクランパー6にセットし、このクランパー6を、カメラ5によりまとめて撮影するようにすれば、一回に複数のリード線Wa…に対する後述するオフセット量Od…を検出し、各検出データを分配利用できるため、処理の効率化を図れるとともに、一つのワークAに使用する全部のリード線Wa…に係わる検出データを一括して利用できるため、データ同士のバラツキを最小にすることができる。そして、修正用カメラ5による撮影が終了したなら、リード線搬送ライン15によりクランパー6は、次工程である一番目のリード線Waの半田付けを行う半田付処理部11aに移送される(ステップS5)。
【0038】
一方、修正用カメラ5により撮影された画像データ(検出データ)は、システムコントローラ本体31に付与される。これにより、システムコントローラCsにおける画像処理機能部Fdvでは、画像処理により、オフセット量Od…が検出される。即ち、図4に示すように、被接続部Aj…の接続面Jf…に対する面直角方向Djから見て、当該接続面Jf…の面方向Dsにおける中心軸線Lcに対する各リード線Wa…の先端位置Ws…におけるオフセット量Od…の検出処理が行われる(ステップS6)。
【0039】
このように、オフセット検出機能部Fdに、カメラ5により撮影して得た画像データに対する画像処理によりオフセット量Od…を検出する画像処理機能部Fdvを設ければ、オフセット量Od…に対する二次元的な検出を、より容易かつ確実に行うことができるとともに、湾曲した状態が複雑な場合などであってもリード線Wa…の不良等として事前に検出し、必要な異常発生処理等を行うことができる。この場合、二次元的な検出とは、リード線Wa…の湾曲方向を、XY軸により検出,又は360゜の角度で検出することを意味する。したがって、見掛上のオフセット量Od…が「0」の場合であっても、後述する修正回転角Qcが不要な本来の「0゜」の場合と「180゜」の場合が存在するため、「180゜」を検出した場合には、修正回転角Qcを180゜として修正処理することができる。
【0040】
次いで、演算処理機能部Fpにより修正回転角Qc…を求める。即ち、オフセット検出機能部Fdの検出結果に基づき、リード線Wa…の先端位置Ws…が、面直角方向Djから見て、回転軸Rcに一致させるための当該回転軸Rcの修正回転角Qcを演算処理により求める(ステップS7)。具体的には、修正用カメラ5により湾曲方向をXY座標により認識し、その座標を演算処理して修正回転角Qc…を求める。なお、この際、図5に示すリード線Wdでは、左回転による上方への回転移動と右回転による下方への回転移動が存在するため、制御出力機能部Feは、回転軸Rcを回転させる際に、リード線Wa…の先端位置Ws…を、被接続部Aj…に対する接近方向Diに回転軸Rcを回転させる制御信号を出力する。これにより、図8に示すように、リード線Wa…の傾斜した浮き上がりを押さえ込むことができるため、被接続部Aj…に対して効果的に密着(線接触)させることができるなど、より好適な半田付け処理を行うことができる。
【0041】
そして、得られた修正回転角Qc…に係わるデータは、直ちに対応する各ロボット機構2,2…に転送される。したがって、これらのシステムコントローラCsにおける各処理、即ち、オフセット検出機能部Fd,演算処理機能部Fp及び制御出力機能部Feの各処理は、クランパー6が半田付処理部11aに移送されるタクト内に実行される。
【0042】
一方、クランパー6が半田付処理部11aに移送されたなら、半田付処理部11aにおけるロボット機構2により、一番目のリード線Waがハンド部2hにより把持される。この状態を図6に示す。この状態では、リード線Waの中間位置は、チャック部26により把持固定されるとともに、矯正処理機構部Fsを構成する矯正器7は、リード線Waの外周面に対して摺動可能に装着される(ステップS8)。また、ロボット機構2により把持されたリード線Waは、直ちにワークAにおける対応する位置、即ち、被接続部Ajに対する対面位置(図8参照)まで移送される(ステップS9)。
【0043】
この際、前述したように、ロボット機構2には、既に、オフセット量Od…を修正する制御信号、即ち、回転出力部25を修正回転角Qc…だけ回転制御してオフセット量Od…を修正(相殺)する指令データが転送されているため、リード線Waは、被接続部Ajに移送されるタクト内に修正処理が行われる(ステップS10)。図6は、ロボット機構2の平面図であり、リード線Waは、図4と同じ位置関係となり、リード線Waの先端位置Ws側が、修正回転角Qcだけ必要となる状態を示している。
【0044】
したがって、ロボット機構2では、回転出力部25を回転制御し、図7に示すように、リード線Waの先端位置Wsが、面直角方向Djから見て、回転軸Rcに一致するように、修正回転角Qcだけ回転させることにより角度修正を行う。この場合、実際の回転角は、図5に示すように、先端位置Wsを、被接続部Ajに対する接近方向Diに回転軸Rcを回転させる。
【0045】
図7は修正されたリード線Waを平面方向から見た状態を示している。また、角度修正(方向修正)が終了したなら、必要により矯正処理機構部Fsを利用し、リード線Waに対する外的な力を直接作用させる矯正処理を行うことにより、オフセット量Odを低減させる矯正処理を行ってもよい(ステップS11)。この矯正処理では、矯正処理機構部Fsの矯正器7を、リード線Waの外周面に対して摺動可能に装着し、中心軸線Lcに沿って反復的に移動させることにより、リード線Waの湾曲(オフセット)を矯正することができる。
【0046】
そして、以上の処理が終了、即ち、リード線Waが被接続部Ajの対面位置に移送されたなら、図7に示すように、位置決用カメラ24によりリード線Waの先端位置Ws付近を撮影する(ステップS12)。これにより、位置決用カメラ24の画像データ(検出データ)は、システムコントローラ本体31に付与されるため、システムコントローラCsにおける位置決め制御機能部Fcにより、ロボット機構2のアクチュエータ群2oを駆動制御し、リード線Waの位置に対するフィードバック制御により位置決め処理を行う(ステップS13)。この結果、リード線Waの先端位置Wsが、被接続部Ajに対して定位置になったなら、半田付ユニット12を作動制御して半田付け処理を行う(ステップS14,S15)。
【0047】
以上により、ワークAに対する一番目のリード線Waの半田付け処理が終了するため、リード線搬送ライン15が駆動制御されることにより、リード線Waが除かれたクランパー6が、次工程となる半田付処理部11bに移送されるとともに、ワーク半田付ライン11が駆動制御されることにより、リード線Waの半田付けされたワークAが、次工程となる半田付処理部11bに移送される(ステップS17)。半田付処理部11bにおいても、基本的には、上述した半田付処理部11aと同様の処理が行われる(ステップS8-S16)。ただし、例示の場合、リード線Wbに対する湾曲の修正は不要のため、ステップS10及びS11の修正処理及び矯正処理は行われない。
【0048】
さらに、半田付処理部11cにおいて、上述した半田付処理部11aと同様の処理が行われるとともに、半田付処理部11dにおいて、上述した半田付処理部11bと同様の処理が行われる。これにより、半田付処理部11dによる半田付け処理の終了により、四本(一般的にはN本)のリード線Wa,Wb,Wc,Wdの半田付け処理が全て終了する(ステップS16)。
【0049】
このように、本実施形態に係る自動半田付システム1は、基本的な形態として、回転制御可能な回転軸Rcを有することにより、リード線Wa…の中心軸線Lcが回転軸Rcと同一軸線上になるように当該リード線Wa…を把持するハンド部2h…を少なくとも備えるロボット機構2…と、被接続部Aj…の接続面Jf…に対する面直角方向Djから見て、当該接続面Jf…の面方向Dsにおける中心軸線Lcに対するリード線Wa…の先端位置Ws…におけるオフセット量Od…を検出するオフセット検出機能部Fdと、このオフセット検出機能部Fdの検出結果に基づき、リード線Wa…の先端位置Ws…が、面直角方向Djから見て、回転軸Rcに一致する当該回転軸Rcの修正回転角Qc…を求める演算処理機能部Fpと、修正回転角Qc…に対応する回転角制御量を出力する制御出力機能部Feとを有するシステムコントローラCsを備えるため、柔軟性を有するリード線のようなリード線Wa…が湾曲したり折曲している状態であっても、ワークAの被接続部Aj…に対するリード線Wa…における先端位置Ws…のズレを有効に回避できる。これにより、半田付け部分における接続強度の確保及び製造上のバラツキを低減できるなど、接続品質の向上及び接続不良(接触不良)の解消、更にはワークAに対するリード線Wa…の導出位置や導出方向を均一化することができる。
【0050】
しかも、リード線Wa…を次工程に移送するタクト内に修正処理を行うことができるため、別途の修正処理工程を設けることが不要となり、生産効率を高めることができる。加えて、ロボット機構2…を構成する六軸目の軸機能等をそのまま利用できるため、ロボット機構2…にはリード線Wa…を把持するハンド部2h…を設ければ足りるなど、システムの小型化及び低コスト化に寄与できる。
【0051】
以上、変更例を含む好適実施形態について詳細に説明したが、本発明は、このような実施形態に限定されるものではなく、細部の構成,形状,素材,数量,数値等において、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、任意に変更,追加,削除することができる。
【0052】
例えば、線材(Wa)として、リード線Wa…例示したが、線材(Wa)には、ワイヤーハーネス,ケーブル,電線等の名称の異なる各種の電気系線材が含まれるとともに、必要により機械系や他の分野における線材にも適用可能である。また、ロボット機構2…は、同様の機能を有する機械的要素に置換可能であり、必ずしも一般的なロボットを意味するものではない。同様に、半田付けは、線材(Wa…)と被接続部Aj…を溶着(接続)する機能を有すれば足り、必ずしも一般的な半田付けを意味するものではない。オフセット検出機能部Fd及び画像処理機能部Fdvは、コンピュータ機能を有するシステムコントローラCsにより実行する場合を示したが、他の電子回路の組合わせにより機能させてもよい。一方、ワークA…に対して必要となる線材(Wa…)の全部を一括してクランパー6をセットし、カメラ5により、まとめて撮影する場合を例示したが、線材(Wa…)に対して一本単位で撮影する場合を排除しないとともに、制御出力機能部Feとして、回転軸Rc…を回転させるに際し、先端位置Ws…が被接続部Aj…に対して接近する接近方向Diに回転軸Rc…を回転させることが望ましいが、離間する反対方向に回転させる場合を排除するものではない。また、ハンド部2h…には、線材Wa…に対して、外的な力を直接作用させてオフセット量Od…を矯正処理する矯正処理機構部Fsを設けた場合を例示したが、前述したように無くてもよいし、或いは他の手法により矯正する場合を排除するものではない。
【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明に係る自動半田付システムは、電子部品や電子機器等の製造工程における各種ワークの被接続部に対してリード線やワイヤーハーネス等の各種線材を自動で半田付けする際に利用できる。
【符号の説明】
【0054】
1:自動半田付システム,2…:ロボット機構,2h…:ハンド部,5:カメラ,6:クランパー,A:ワーク,Aj…:ワークの被接続部,Jf:接続面,Wa…:線材(リード線),Ws…:先端位置,Wt…:被覆部,Wm…:導線部,Rc:回転軸,Lc:中心軸線,Dj:面直角方向,Ds:面方向,Od…:オフセット量,Di:接近方向,Fd:オフセット検出機能部,Fdv:画像処理機能部,Fp:演算処理機能部,Fe:制御出力機能部,Fs:矯正処理機構部,Qc…:修正回転角,Cs:システムコントローラ
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図11