(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022184464
(43)【公開日】2022-12-13
(54)【発明の名称】空気調和熱源機
(51)【国際特許分類】
F25B 13/00 20060101AFI20221206BHJP
F25B 1/00 20060101ALI20221206BHJP
【FI】
F25B13/00 R
F25B1/00 399Y
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021092332
(22)【出願日】2021-06-01
(71)【出願人】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001081
【氏名又は名称】弁理士法人クシブチ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】庄山 直芳
(72)【発明者】
【氏名】橋本 俊一
(72)【発明者】
【氏名】広田 正宣
(72)【発明者】
【氏名】松井 大
【テーマコード(参考)】
3L092
【Fターム(参考)】
3L092AA02
3L092BA11
(57)【要約】
【課題】本開示は、筐体の導入管と導出管の上下を入れ替えることなく、暖房運転時に凝縮器となる水熱交換器を対向流とし、冷媒の凝縮温度を下げることで、圧縮機の吐出圧力を下げ、暖房運転時の圧縮機の入力を低減する空気調和熱源機を提供する。
【解決手段】本開示における空気調和機は、冷媒回路を内包する筺体7と、筺体7の上部に位置し筺体7内の空気を外部に排出するファン10と、を備え、水熱交換器3は、下から上に向かって流れる水流路と、暖房運転時に上から下に向かって流れる冷媒流路と、を備え、筺体7は、水熱交換器3の出水口30と出水管72で接続された導出口70と、水熱交換器3の入水口31と入水管73で接続された導入口71と、を備え、導入口71は導出口70より上部に位置している。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷媒を循環させる圧縮機と、四方弁と、空気と冷媒を熱交換させる空気熱交換器と、膨張弁と、水と冷媒の間で熱交換させる水熱交換器を、環状に接続した冷媒回路を備えた空気調和熱源機であって、
前記冷媒回路を内包する筐体と、前記筐体の上部に位置し前記筐体内の空気を外部に排出するファンと、を備え、
前記水熱交換器は、下から上に向かって流れる水流路と、暖房運転時に上から下に向かって流れる冷媒流路と、を備え
前記筐体は、前記水熱交換器の出水口と出水管で接続された導出口と、前記水熱交換器の入水口と入水管で接続された導入口と、を備え、
前記導入口は前記導出口より上部に位置していることを特徴とする空気調和熱源機。
【請求項2】
前記出水管のうち、前記筐体の前記導出口と同じ高さにある配管長が、前記水熱交換器の前記出水口と同じ高さにある配管長よりも長い構成、
もしくは、
前記入水管のうち、前記水熱交換器の前記入水口と同じ高さにある配管長が、前記筐体の前記導入口と同じ高さにある配管長よりも長い構成、の少なくともいずれかの構成になっていることを特徴とする請求項1に記載の空気調和熱源機。
【請求項3】
前記入水管と前記出水管とがそれぞれ2つ以下の転向部を備え、
前記導入口のある前記筐体の側面に投影した時に、前記導入口と前記入水口を結ぶ直線と、前記導出口と前記水熱交換器の前記出水口とを結ぶ直線が交差していることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の空気調和熱源機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、冷房と暖房の両方の機能を持つ空気調和機であって、熱媒体として冷水もしくは温水を生成する空気調和熱源機に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1の熱源機は水熱交換器を備えており、暖房運転時に、建物等の暖房負荷で低温となった水を筐体の導入口から取り込み、水熱交換器で過熱して温水を生成し、筐体の導出口から建物などの暖房負荷へ送り出す。冷房運転時には温水を導入管から取り込み、冷水を生成して導出口から送り出す。水熱交換器は水流路と冷媒流路の一部を構成し、冷媒流路は、圧縮機と四方弁と空気熱交換器と膨張弁とレシーバタンクと水熱交換器とを備え、これらが環状に接続された冷媒回路を冷媒が循環することで冷凍サイクルを構成している。
水は熱源機の外部に設置された遠心型ポンプにより建物に圧送される場合がある。遠心型ポンプの吸込口は通常回転軸と同じ高さであり、吐出口は上向きとなっている。よって、特許文献1の熱源機のように水の導出口は、水の導入口よりも低い位置にあるのが一般的である。また、水熱交の出水口が入水口よりも低い位置にあり、水は常に水流路を上から下に向かって流れている。導入口と水熱交の入水口を繋ぐ入水管と、導出口と水熱交の出水口を繋ぐ出水管はほぼ落差がなく水平であり、お互い交わることなく上下関係を維持している。
冷媒流路の流れ方向は冷暖房の動作モードによって変わり、冷凍サイクルが冷房運転時、すなわち水熱交換器か蒸発器として動作する場合は、液相を多く含む渇き度の低い冷媒が冷媒流路の下部口から流入し、蒸発した気相冷媒が上部口から流出する。冷凍サイクルが暖房運転時、すなわち水熱交換器か凝縮器として動作する場合は、気相冷媒が冷媒流路の上部口から流入し、凝縮した液相冷媒が下部口から流出する。このように動作モードによらず、上部口は気相冷媒、下部口は液相冷媒が流れるため、重力による液相の逆流などの不安定流れが抑えられる。冷房運転時に水熱交換器は対向流となるため、冷媒と水の温度差が対向流の場合と比べて小さく、水熱交換器の入水温度を一定としたときに、水よりも低温である冷媒の蒸発温度が高くなる。これにより、圧縮機の吸入冷媒圧力が高くなるため、少ない動力で運転できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示は、筐体の導入管と導出管の上下を入れ替えることなく、暖房運転時に凝縮器となる水熱交換器を対向流とし、冷媒の凝縮温度を下げることで、圧縮機の吐出圧力を下げ、暖房運転時の圧縮機の入力を低減する空気調和熱源機を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示における空気調和熱源機は、冷媒を循環させる圧縮機と、四方弁と、空気と冷媒を熱交換させる空気熱交換器と、膨張弁と、水と冷媒の間で熱交換させる水熱交換器を、環状に接続した冷媒回路を備えた空気調和熱源機であって、前記冷媒回路を内包する筐体と、筐体の上部に位置し筐体内の空気を外部に排出するファンと、を備え、前記水熱交換器は、下から上に向かって流れる水流路と、暖房運転時に上から下に向かって流れる冷媒流路と、を備え前記筐体は、前記水熱交換器の出水口と出水管で接続された導出口と、前記水熱交換器の入水口と入水管で接続された導入口と、を備え、前記導入口は導出口より上部に位置していることを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本開示によれば、冷媒回路が暖房運転している場合、圧縮機から吐出された高温気相冷媒が四方弁を経由して、水熱交換器の上部口に流入する。水熱交換器で凝縮した液相冷媒はレシーバタンクに流入する。つまり、水熱交換器の冷媒流路の流れ方向は上から下向きになる。水熱交換器の導出口は導入口より上部に位置しているため、暖房運転時に水熱交換器は対向流となるので、冷媒の凝縮温度が低下して圧縮機の吐出圧力が下がり、暖房運転時の圧縮機の入力を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本開示の実施の形態1における暖房運転時の空気調和熱源機の構成図
【
図2】本開示の実施の形態2における水熱交換器を導入口側から見た図
【発明を実施するための形態】
【0008】
(本開示の基礎となった知見等)
発明者らが本開示に想到するに至った当時、水熱交換器を備えた空気調和熱源機においては、筐体の導入口が導出口よりも高い位置にある関係であり、水熱交換器の水流路の入水口と出水口の位置は、導入口と導出口の上下関係を維持するように接続していた。
【0009】
しかしながら、前記構成では、暖房運転時には水熱交換器が並行流となり、水流路と冷媒流路の温度差が増加し、ヒートポンプサイクルの凝縮温度が上昇するため、圧縮機の入力が増大してしまう。導入口と導出口の上下関係を入れ替えると、筺体外部に設置する水循環ポンプとの接続配管が複雑になるという課題を発明者らは発見し、その課題を解決するために、本開示の主題を構成するに至った。
本開示は、筐体の導入管と導出管の上下を入れ替えることなく、暖房運転時に凝縮器となる水熱交換器を対向流とし、冷媒の凝縮温度を下げることで、圧縮機の吐出圧力を下げ、暖房運転時の圧縮機の入力を低減する空気調和熱源機を提供する。
【0010】
以下、図面を参照しながら実施の形態を詳細に説明する。但し、必要以上に詳細な説明は省略する場合がある。例えば、既によく知られた事項の詳細説明、または、実質的に同一の構成に対する重複説明を省略する場合がある。
なお、添付図面および以下の説明は、当業者が本開示を十分に理解するために提供されるのであって、これらにより特許請求の範囲に記載の主題を限定することを意図していない。
【0011】
(実施の形態1)
以下、
図1を用いて、実施の形態1について説明する。
[1-1.構成]
図1は、本開示の実施の形態1における空気調和熱源機が暖房モードで動作中の構成図を示したものである。本開示を実施するための空気調和熱源機について説明する。
空調を行う建物9と、熱源機100と、水ポンプ8とが水配管80で接続されている。
【0012】
熱源機100の筺体7は、水配管80に接続された水の導出口70と導入口71とを備えている。導出口70から水配管80を介して建物9に水を送るとともに、建物9から戻る水が導入口71から流入する。
熱源機100は、水熱交換器3を備えている。水熱交換器3の出水口30は、出水管72を通じて導出口70に接続されている。水熱交換器3の入水口31は、入水管73を通じて導入口71に接続されている。
熱源機100は、圧縮機1と、四方弁2と、水熱交換器3と、レシーバタンク4と、膨張弁5と、空気熱交換器6と、を環状に接続した冷媒回路を構成している。
熱源機100は、筐体7の上部に設けられたファン10を備えている。そして、ファン10を駆動することにより、筐体7の中の空気が排出されるとともに、筺体7の側面から空気が流入して空気熱交換器6を外気が通過することで、空気熱交換器6により冷媒と空気との熱交換が行われる。
【0013】
水熱交換器3の冷媒流路の上部口32は四方弁2と接続され、水熱交換器3の下部口33はレシーバタンク4と接続されている。上部口32は下部口33より上部に位置している。水熱交換器3の出水口30は入水口31より上側に位置している。
出水管72は、配管の向きを変える2か所以上の転向部75を備え、出水管72のうち、筐体7の導出口70と同じ高さにある配管長は、水熱交換器3の出水口30と同じ高さにある配管長よりも長く形成されている。また、入水管73は、配管の向きを変える2か所以上の転向部75を備え、入水管73のうち、水熱交換器3の入水口31と同じ高さにある配管長が、筐体7の導入口71と同じ高さにある配管長よりも長く形成されている。
【0014】
[1-2.動作]
以上のように構成された空気調和機100について、以下その動作、作用を説明する。
暖房動作時、四方弁は
図1に示すようになっており、圧縮機1により圧縮された高温冷媒が四方弁2を通じて水熱交換器3の上部口32に流入する。
冷媒は凝縮しながら水熱交換器3の水流路を流れる水を加熱したのち、下部口33から液相となって流出し、レシーバタンク4に入る。膨張弁5で膨張し低温になった冷媒は空気熱交換器6で温められ蒸発し、気相冷媒となって圧縮機1に入る。
水熱交換器3で加熱された水は、水ポンプ8により導出口70を介して建物9に送られ、空調負荷により冷却される。例えば、5℃温度が下がる。建物9から出た水は、導入口71を介して再び熱源機100の水熱交換器3に戻される。
【0015】
この場合に、暖房モードでの動作時に水熱交換器3の水流路が、
図1において上から下に向かって流れる対向流になる。また、出水管72と入水管73のうち、ファン10により誘起される空気流れの流速が遅い筺体7底部に位置する配管長が長くなるため、外気温度よりも高温の水からの熱逃げが抑えられる。
これにより、水熱交換器3を流れる水の温度が下がり、同じ出水温度時の凝縮温度が下がる。
【0016】
[1-3.効果等]
以上述べたように、本実施の形態において、冷媒回路を内包する筺体7と、筺体7の上部に位置し筺体7内の空気を外部に排出するファン10と、を備え、水熱交換器3は、下から上に向かって流れる水流路と、暖房運転時に上から下に向かって流れる冷媒流路と、を備え、筺体7は、水熱交換器3の出水口30と出水管72で接続された導出口70と、水熱交換器3の入水口31と入水管73で接続された導入口71と、を備え、導入口71は導出口70より上部に位置している。
【0017】
これにより、暖房運転時に水熱交換器3において、冷媒と水とを対向流とすることができる。そのため、水流路と冷媒流路の温度差が小さくなり、冷媒流路の凝縮温度が減少する。その結果として、圧縮機1の吐出温度が下がり、圧縮機1の入力を減少させることができる。
【0018】
また、本実施の形態においては、出水管72のうち、筺体7の導出口70と同じ高さにある配管長が、水熱交換器3の出水口30と同じ高さにある配管長よりも長い構成、もしくは、入水管73のうち、水熱交換器3の入水口31と同じ高さにある配管長が、筺体7の導入口71と同じ高さにある配管長よりも長い構成、の少なくともいずれかの構成になっている。
【0019】
これにより、出水管72と入水管73のうち、ファン10により誘起される空気流れの流速が遅い筺体7底部に位置する配管長が長くなるため、外気温度よりも高温の水からの熱逃げを抑えることができる。そのため、冷媒流路の凝縮温度が減少するため、圧縮機1の入力をさらに減少させることができる。
【0020】
(実施の形態2)
次に、
図2を用いて、実施の形態2について説明する。
[2-1.構成]
図2は、本開示の実施の形態2における空気調和熱源機の水熱交換器3を、導入口71側から見た図を示したものである。本形態を実施するための空気調和熱源機について説明する。
【0021】
入水管73と出水管72は、それぞれ2つ以下の転向部75を備えており、導入口71のある筺体7の側面に投影した時に、導入口71と入水口31とを結ぶ直線と、導出口70と水熱交換器3の出水口30を結ぶ直線が交差するように構成されている。
【0022】
[2-2.作用]
本実施の形態においては、2か所の転向部75により、配管を最短経路とすることができるため、効率よく熱逃げを抑えることができる。
また、入水管73と出水管72を投影した線がクロスしているため、筺体7の入水口31と出水口30の横方向の水平方向距離Cを近づけることができる。
これにより、筺体7の外部の水配管80を短く施工できるため、筺体7の外部において配管から外気への熱逃げが抑えることができる。
【0023】
[2-3.効果等]
以上のように、本実施の形態においては、入水管73と出水管72とがそれぞれ2つ以下の転向部75を備え、導入口71のある筺体7の側面に投影した時に、導入口71と入水口31を結ぶ直線と、導出口70と水熱交換器3の出水口30とを結ぶ直線が交差している。
これにより、導出口70と導入口71の水平方向距離Cを小さくすることができ、コンパクトに配置することができるので、筺体7外部の水配管80を必要最小限の長さで施工できる。そのため、筺体7の外部の水配管80からの熱逃げが抑えられる。これにより、冷媒流路の凝縮温度が減少するため、圧縮機1の入力がさらに減少する。
【産業上の利用可能性】
【0024】
本開示は、冷房と暖房の両モードで動作する水熱交換器を備えた空気調和装置に適用可能である。具体的には、空調用熱源機などに、本開示は適用可能である。
【符号の説明】
【0025】
1 圧縮機
2 四方弁
3 水熱交換器
4 レシーバタンク
5 膨張弁
6 空気熱交換器
7 筐体
8 水ポンプ
9 建物
10 ファン
30 出水口
31 入水口
32 上部口
33 下部口
70 導出口
71 導入口
72 出水管
73 入水管
75 転向部
80 水配管
100 熱源機
C 導出口と導入口の水平方向距離