(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022184468
(43)【公開日】2022-12-13
(54)【発明の名称】駆動回路
(51)【国際特許分類】
H02M 1/08 20060101AFI20221206BHJP
H03K 17/16 20060101ALI20221206BHJP
【FI】
H02M1/08 A
H03K17/16 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021092339
(22)【出願日】2021-06-01
(71)【出願人】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(71)【出願人】
【識別番号】504145342
【氏名又は名称】国立大学法人九州大学
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100124062
【弁理士】
【氏名又は名称】三上 敬史
(74)【代理人】
【識別番号】100148013
【弁理士】
【氏名又は名称】中山 浩光
(72)【発明者】
【氏名】石原 義昭
(72)【発明者】
【氏名】森 昌吾
(72)【発明者】
【氏名】野下 裕市
【テーマコード(参考)】
5H740
5J055
【Fターム(参考)】
5H740BA12
5H740BC01
5H740BC02
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5H740MM01
5J055AX25
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5J055EZ01
5J055EZ03
5J055EZ07
5J055GX01
5J055GX05
(57)【要約】
【課題】サージ電圧を抑制しつつ、スイッチング損失の低減を図れる駆動回路を提供する。
【解決手段】駆動回路1は、駆動用電源13の正極と負極との間に直列に接続されている第一トランジスタTr1及び第二トランジスタTr2であって、正極に接続されている第一トランジスタTr1及び負極に接続されている第二トランジスタTr2と、第一トランジスタTr1及び第二トランジスタTr2のそれぞれのソース端子と、電圧駆動素子3のゲート端子との間に接続されているゲート抵抗R1と、第一トランジスタTr1及び第二トランジスタTr2のそれぞれのゲート端子に接続されている抵抗R2と、第二トランジスタTr2のドレイン端子と抵抗R2との間に接続されているコンデンサCと、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電圧駆動素子を駆動する駆動回路であって、
駆動用電源の正極と負極との間に直列に接続されている第一スイッチング素子及び第二スイッチング素子であって、前記正極に接続されている前記第一スイッチング素子及び前記負極に接続されている前記第二スイッチング素子と、
前記第一スイッチング素子及び前記第二スイッチング素子のそれぞれのソース端子又はエミッタ端子と、前記電圧駆動素子のゲート端子又はベース端子との間に接続されている第一抵抗と、
前記第一スイッチング素子及び前記第二スイッチング素子のそれぞれのゲート端子又はベース端子に接続されている第二抵抗と、
前記第一スイッチング素子のドレイン端子又はコレクタ端子と前記第二抵抗との間、及び、前記第二スイッチング素子のドレイン端子又はコレクタ端子と前記第二抵抗との間の少なくとも一方に接続されているコンデンサと、を備える、駆動回路。
【請求項2】
前記電圧駆動素子のターンオフの動作において、前記電圧駆動素子のドレインソース電圧又はベースエミッタ電圧が所定電圧に到達する期間、及び、前記電圧駆動素子のドレイン端子又はコレクタ端子に流れる電流の電流値がゼロになるまでの期間が、前記第一抵抗の抵抗値、前記第二抵抗の抵抗値及び前記コンデンサの静電容量値によって設定されている、請求項1に記載の駆動回路。
【請求項3】
アクティブゲート制御回路と共に使用される、請求項1又は2に記載の駆動回路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、駆動回路に関する。
【背景技術】
【0002】
駆動回路として、例えば
図3に示される回路が知られている。
図3に示されるように、駆動回路100は、電圧駆動素子102のゲート端子に接続されている。電圧駆動素子102には、ダイオード104を介して、電圧源106が接続されている。電圧駆動素子102又は電圧源106には、電流源108から一定の電流Iが供給される。駆動回路100は、nチャネル型の第一トランジスタTr1と、pチャネル型の第二トランジスタTr2と、ゲート抵抗R1と、抵抗R2と、を備えている。電圧駆動素子102、第一トランジスタTr1及び第二トランジスタTr2のそれぞれは、MOSFET(Metal-Oxide-Semiconductor Field Effect Transistor)である。
【0003】
第一トランジスタTr1及び第二トランジスタTr2は、駆動用電源110に直列に接続されている。ゲート抵抗R1は、第一トランジスタTr1及び第二トランジスタTr2のそれぞれのソース端子と、電圧駆動素子102のゲート端子との間に接続されている。抵抗R2は、指令値Vrefが入力される入力端子112と、第一トランジスタTr1及び第二トランジスタTr2のそれぞれのゲート端子との間に接続されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】“MOSFETゲート駆動回路 Application Note”、東芝デバイス&ストレージ株式会社、2018年7月26日、p13-14
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
駆動回路100の動作について、
図4(a)、
図4(b)、
図4(c)及び
図4(d)を参照して説明する。以下では、電圧駆動素子102のターンオフ動作について説明する。
図4(a)に示されるように、指令値VrefがHiからLoに変化すると、第一トランジスタTr1がオフになると共に第二トランジスタTr2がオンになり、
図4(b)に示されるように、電圧Vuが直ちにHiからLoになる。これにより、電圧駆動素子102のゲートソース間容量(寄生容量)Cgsからゲート抵抗R1を通して電荷が放電され、
図4(c)に示されるように、ゲートソース電圧Vgsが低下し始める。時刻t1において、ゲートソース電圧Vgsがゲートミラー電圧(ゲートプラトー電圧)Vplに到達すると、ゲートドレイン間容量(寄生容量)Cgdからゲート抵抗R1を通して電荷が放電され、
図4(d)に示されるように、ドレインソース電圧Vdsが上昇し始める。
【0006】
続いて、時刻t2において、ドレインソース電圧Vdsが電圧源106の電源電圧Vdcに到達すると、ゲートドレイン間容量Cgdからの放電が終了する。また、時刻t2において、ゲートソース間容量Cgsからゲート抵抗R1を通して電荷が再び放電され、
図4(d)に示されるように、ドレイン電流Idが低下し始める。ドレイン電流Idが「0(ゼロ)」になる時刻がt3である。時刻t3は、ゲートソース電圧Vgsが閾値電圧Vthよりも小さくなる時刻でもある。ゲートソース電圧Vgsが閾値電圧Vthよりも小さくなると、電圧駆動素子102がターンオフする。駆動回路100では、時刻t2から時刻t3までの期間においてドレイン電流Idが変化すると、配線インダクタンス等の浮遊インダクタンスLによって、電圧ΔVds=L(di/dt)が発生する。当該電圧は、サージ電圧である。
【0007】
駆動回路100では、サージ電圧の発生によって電圧駆動素子102のドレインソース電圧Vdsが閾値(素子耐圧)を超えないように、サージ電圧を抑制する必要がある。上記浮遊インダクタンスLが一定の場合、サージ電圧を一定値以下にするためには、ドレイン電流Idの変化(di/dt)を小さくすることが必要となる。すなわち、時刻t2から時刻t3までの期間を延ばし、ドレイン電流Idの傾きを小さくする必要がある。
【0008】
また、電圧駆動素子102のターンオフの動作においては、スイッチング損失が発生する。スイッチング損失を低減させるためには、時刻t1と時刻t2との間の期間、及び、時刻t2と時刻t3との間の期間を短くすることが必要となる。このように、サージ電圧を抑制するためには、時刻t2から時刻t3までの期間を長くする必要があり、スイッチング損失を低減させるためには、時刻t1から時刻t3までの期間を短くする必要がある。つまり、サージ電圧の抑制とスイッチング損失の低減とは、相反する関係にある。時刻t1と時刻t2との間の期間は、ゲートドレイン間容量Cgdの放電時間であり、時刻t2と時刻t3との間の期間は、ゲートソース間容量Cgsの放電時間である。これらの放電時間は、ゲート抵抗R1の抵抗値によって設定される。
【0009】
非特許文献1には、MOSFETのゲート駆動回路において、ゲート抵抗の抵抗値が大きい場合、スイッチングスピードが遅くなるため、スイッチング損失が増加し、ゲート抵抗の抵抗値が小さい場合、スイッチングスピードが速くなるため、サージ電圧等が発生し得ることが記載されている。非特許文献1には、ゲート抵抗の抵抗値を変えることにより、最適なスイッチング時間に調整することが記載されている。しかしながら、駆動回路100において、ゲート抵抗R1の抵抗値を調整したとしても、上記放電時間を個々に設定することができないため、サージ電圧の抑制、及び、スイッチング損失の低減の両方を実現することは困難である。
【0010】
本発明の一側面は、サージ電圧を抑制しつつ、スイッチング損失の低減を図れる駆動回路を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の一側面に係る駆動回路は、電圧駆動素子を駆動する駆動回路であって、駆動用電源の正極と負極との間に直列に接続されている第一スイッチング素子及び第二スイッチング素子であって、正極に接続されている第一スイッチング素子及び負極に接続されている第二スイッチング素子と、第一スイッチング素子及び第二スイッチング素子のそれぞれのソース端子又はエミッタ端子と、電圧駆動素子のゲート端子又はベース端子との間に接続されている第一抵抗と、第一スイッチング素子及び第二スイッチング素子のそれぞれのゲート端子又はベース端子に接続されている第二抵抗と、第一スイッチング素子のドレイン端子又はコレクタ端子と第二抵抗との間、及び、第二スイッチング素子のドレイン端子又はコレクタ端子と第二抵抗との間の少なくとも一方に接続されているコンデンサと、を備える。
【0012】
本発明の一側面に係る駆動回路は、第一スイッチング素子のドレイン端子又はコレクタ端子と第二抵抗との間、及び、第二スイッチング素子のドレイン端子又はコレクタ端子と第二抵抗との間の少なくとも一方に接続されているコンデンサを備える。駆動回路では、コンデンサ及び第二抵抗を備えることにより、コンデンサ及び第二抵抗による時定数を設定することができる。駆動回路では、時定数を設定することによって、第一スイッチング素子及び第二スイッチング素子の少なくとも一方のゲートドレイン電圧(上記電圧Vu)又はベースコレクタ電圧の下降速度(変化速度)を設定できる。第一スイッチング素子及び第二スイッチング素子の少なくとも一方のゲートドレイン電圧又はベースコレクタ電圧の下降速度を遅くすることによって(下降時間を長くすることによって)、電圧駆動素子のゲートソース電圧(上記ゲートソース電圧Vgs)又はベースエミッタ電圧の下降速度も遅くすることができる。すなわち、駆動電圧素子のゲートソース間容量(上記ゲートソース間容量Cgs)又はベースエミッタ間容量から第一抵抗を通して電荷が放電される放電時間を長くすることができる。したがって、電圧駆動素子のドレイン端子又はコレクタ端子に流れる電流の電流値がゼロになるまでの期間(上記時刻t2と時刻t3との間の期間)を延ばすことができる。その結果、駆動回路では、サージ電圧を抑制することができる。
【0013】
また、駆動回路では、コンデンサ及び第二抵抗の時定数によって電圧駆動素子のドレイン端子又はコレクタ端子に流れる電流の電流値がゼロになるまでの期間を設定できるため、第一抵抗の抵抗値を小さくすることができる。これにより、電圧駆動素子のゲートドレイン間容量(上記ゲートドレイン間容量Cgd)又はベースコレクタ容量から第一抵抗を通して電荷が放電される放電時間を短くすることができる。そのため、電圧駆動素子のドレインソース電圧(上記ドレインソース電圧Vds)又はベースエミッタ電圧が所定電圧(上記電源電圧Vdc)に到達する期間(上記時刻t1と時刻t2との間の期間)を短くすることができる。したがって、駆動回路では、スイッチング損失の低減を図ることができる。
【0014】
一実施形態においては、電圧駆動素子のターンオフの動作において、電圧駆動素子のドレインソース電圧又はベースエミッタ電圧が所定電圧に到達する期間、及び、電圧駆動素子のドレイン端子又はコレクタ端子に流れる電流の電流値がゼロになるまでの期間が、第一抵抗の抵抗値、第二抵抗の抵抗値及びコンデンサの静電容量値によって設定されていてもよい。電圧駆動素子のドレインソース電圧等が所定電圧(上記電源電圧Vdc)に到達する期間(上記時刻t1と時刻t2との間の期間)は、主として、第一抵抗の抵抗値を小さくすることによって短くすることができる。これにより、駆動回路では、スイッチング損失の低減が図れる。また、電圧駆動素子のドレイン端子等に流れる電流(上記ドレイン電流Id)がゼロになるまでの期間(上記時刻t2と時刻t3との間の期間)は、主として、第二抵抗の抵抗値及びコンデンサの静電容量値によって定まる時定数を適切に設定することによって長くすることができる。これにより、駆動回路では、サージ電圧を抑制することができる。
【0015】
一実施形態においては、駆動回路は、アクティブゲート制御回路と共に使用されてもよい。
【発明の効果】
【0016】
本発明の一側面によれば、サージ電圧を抑制しつつ、スイッチング損失の低減を図れる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】
図1は、一実施形態に係る駆動回路を含む回路図である。
【
図3】
図3は、従来の駆動回路を含む回路図である。
【
図5】
図5は、他の実施形態に係る駆動回路を含む回路図である。
【
図6】
図6は、他の実施形態に係る駆動回路を含む回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、添付図面を参照して、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、図面の説明において同一又は相当要素には同一符号を付し、重複する説明は省略する。
【0019】
図1は、一実施形態に係る駆動回路を含む回路図である。
図1に示されるように、電圧駆動素子3は、電圧源5に接続されている。電圧駆動素子3と電圧源5との間には、ダイオード7が接続されている。電圧駆動素子3又は電圧源5には、電流源9から一定の電流Iが供給される。
【0020】
電圧駆動素子3は、例えば、MOSFET(Metal-Oxide-Semiconductor Field Effect Transistor)である。電圧駆動素子3では、ゲート端子とドレイン端子との間に浮遊容量であるゲートドレイン間容量Cgdが形成され、ゲート端子とソース端子との間に浮遊容量であるゲートソース間容量Cgsが形成される。また、電圧駆動素子3のドレイン端子と電圧源5との間に浮遊インダクタンスL(配線インダクタンス等)が形成される。電圧駆動素子3のソース端子は、グラウンドに接続されている。
【0021】
駆動回路1は、電圧駆動素子3のゲート端子に接続されている。駆動回路1は、第一トランジスタTr1(第一スイッチング素子)と、第二トランジスタ(第二スイッチング素子)Tr2と、ゲート抵抗(第一抵抗)R1と、抵抗(第二抵抗)R2と、コンデンサCと、を備えている。駆動回路1は、入力端子11に入力される指令値Vref(Hi・Lo)に基づいて動作する。指令値Vrefは、指令部(図示省略)から出力される信号である。
【0022】
第一トランジスタTr1と第二トランジスタTr2とは、駆動用電源13(直流電源)に直列に接続されている。第一トランジスタTr1は、例えば、nチャネル型のMOSFETである。第一トランジスタTr1は、いわゆる上アームを構成する。第一トランジスタTr1のゲート端子には、抵抗R2が接続されている。第一トランジスタTr1のドレイン端子には、駆動用電源13の正極が接続されている。第一トランジスタTr1のソース端子には、ゲート抵抗R1が接続されている。
【0023】
第二トランジスタTr2は、例えば、pチャネル型のMOSFETである。第二トランジスタTr2は、いわゆる下アームを構成する。第二トランジスタTr2のゲート端子には、抵抗R2が接続されている。第二トランジスタTr2のドレイン端子には、駆動用電源13の負極が接続されている。第二トランジスタTr2のドレイン端子は、グラウンドに接続されている。第二トランジスタTr2のソース端子には、ゲート抵抗R1が接続されている。
【0024】
ゲート抵抗R1は、電圧駆動素子3のゲート端子と、第一トランジスタTr1及び第二トランジスタTr2のそれぞれのソース端子と、の間に接続されている。ゲート抵抗R1は、一つの抵抗素子であってもよいし、複数の抵抗素子で構成されていてもよい。
【0025】
抵抗R2は、入力端子11と、第一トランジスタTr1及び第二トランジスタTr2のゲート端子との間に接続されている。抵抗R2は、一つの抵抗素子であってもよいし、複数の抵抗素子で構成されていてもよい。
【0026】
コンデンサCは、抵抗R2と、第二トランジスタTr2のドレイン端子との間に接続されている。抵抗R2とコンデンサCとは、入力端子11と第二トランジスタTr2のドレイン端子との間において、直列に接続されている。コンデンサCは、一つのコンデンサ素子であってもよいし、複数のコンデンサ素子によって構成されていてもよい。
【0027】
駆動回路1では、電圧駆動素子3のターンオフの動作において、電圧駆動素子3のゲートソース電圧Vgsが電源電圧(所定電圧)Vdcに到達する期間、及び、電圧駆動素子3のドレイン端子に流れるドレイン電流Idの電流値がゼロになる期間が、ゲート抵抗R1の抵抗値、抵抗R2の抵抗値及びコンデンサCの静電容量値によって設定されている。すなわち、後述する時刻t1と時刻t2との間の第一期間、及び、時刻t2と時刻t3との間の第二期間が所望する長さ(時間)となるように、ゲート抵抗R1の抵抗値、抵抗R2の抵抗値、及び、コンデンサCの静電容量値が設定されている。第一期間は、ゲート抵抗R1によるゲートドレイン間容量Cgdの放電時間であり、第二期間は、ゲート抵抗R1によるゲートソース間容量Cgsの放電時間である。
【0028】
本実施形態では、ゲート抵抗R1の抵抗値は、主として、第一期間に寄与する。駆動回路1では、ゲート抵抗R1の抵抗値を小さくすることにより、ゲートソース間容量Cgsからゲート抵抗R1を通して放電される電荷の放電時間(第一期間)が短くなる。ゲート抵抗R1の抵抗値は、実験、シミュレーション等によって適宜設定される。
【0029】
本実施形態では、抵抗R2の抵抗値及びコンデンサCの静電容量値は、主として、第二期間に寄与する。抵抗R2の抵抗値及びコンデンサCの静電容量値を変更することにより、後述する電圧Vuの変化速度が変化する。駆動回路1では、抵抗R2の抵抗値及びコンデンサCの静電容量値を適宜設定し、所定の時定数(τ=R2・C)に設定することで、電圧Vuの下降速度を遅くすることができる(電圧Vuの下降時間を長くすることができる)。電圧駆動素子3のゲートソース電圧Vgsの下降速度は、電圧Vuの下降速度によって律速される。これにより、電圧駆動素子3のゲートソース間容量Cgsからの電荷の放電時間(第二期間)を設定できる。抵抗R2の抵抗値及びコンデンサCの静電容量値は、実験、シミュレーション等によって適宜設定される。
【0030】
続いて、駆動回路1の動作について、
図2(a)、
図2(b)、
図2(c)及び
図2(d)を参照して説明する。駆動回路1は、第一トランジスタTr1がオンになると電圧駆動素子3をターンオンさせ、第二トランジスタTr2がオフになると電圧駆動素子3をターンオフさせる。以下では、駆動回路1が電圧駆動素子3をターンオフさせる動作について説明する。
図2(a)、
図2(b)、
図2(c)及び
図2(d)は、
図1に示す駆動回路の動作を示すタイミングチャートである。
図2(a)は、指令値Vrefを示す図である。
図2(b)は、電圧Vuを示す図である。
図2(c)は、ゲートソース電圧Vgsを示す図である。
図2(d)は、ドレインソース電圧Vds及びドレイン電流Idを示す図である。
【0031】
図2(a)に示されるように、入力端子11に入力される指令値VrefがHiからLoに変化すると、第一トランジスタTr1がオフになると共に第二トランジスタTr2がオンになり、
図2(b)に示されるように、電圧VuがHiからLoになる。これにより、電圧駆動素子3のゲートソース間容量Cgsからゲート抵抗R1を通して電荷が放電され、
図2(c)に示されるように、ゲートソース電圧Vgsが低下し始める。時刻t1において、ゲートソース電圧Vgsがゲートミラー電圧Vplに到達すると、ゲートドレイン間容量Cgdからゲート抵抗R1を通して電荷が放電され、
図2(d)に示されるように、ドレインソース電圧Vdsが上昇し始める。
【0032】
続いて、時刻t2において、ドレインソース電圧Vdsが電圧源5の電源電圧Vdcに到達すると、ゲートドレイン間容量Cgdからの放電が終了する。また、時刻t2において、ゲートソース間容量Cgsからゲート抵抗R1を通して電荷が再び放電され、
図2(d)に示されるように、ドレイン電流Idが低下し始める。ドレイン電流Idが「0」になる時刻がt3である。時刻t3は、ゲートソース電圧Vgsが閾値電圧Vthよりも小さくなる時刻でもある。ゲートソース電圧Vgsが閾値電圧Vthよりも小さくなると、電圧駆動素子3がターンオフする。以上のように、駆動回路1によって、電圧駆動素子3がターンオフする。
【0033】
駆動回路1では、時刻t2から時刻t3までの第二期間においてドレイン電流Idが変化すると、浮遊インダクタンスLによって、電圧ΔVds=L(di/dt)が発生する。当該電圧は、サージ電圧である。駆動回路1では、サージ電圧の発生によって電圧駆動素子3のドレインソース電圧Vdsが閾値(素子耐圧)を超えないように、サージ電圧を一定値以下に抑制する必要がある。サージ電圧を一定値以下にするためには、ドレイン電流Idの変化(di/dt)を小さくすることが必要となる。すなわち、時刻t2から時刻t3までの期間を延ばし、ドレイン電流Idの傾きを小さくする必要がある。
【0034】
駆動回路1では、所定の時定数となるように抵抗R2の抵抗値及びコンデンサCの静電容量値を設定することで、電圧Vuを設定できる。駆動回路1では、抵抗R2及びコンデンサCの時定数によって、
図2(b)に示されるように、電圧VuがHiからLoまで非線形で徐々に下降する。すなわち、電圧Vuは、HiからLoまで直ちに下降しない。電圧Vuの下降速度の変化によって、ゲートソース電圧Vgsの下降速度が変化する。すなわち、ゲートソース電圧Vgsの下降速度は、電圧Vuの下降速度に律速される。第二期間は、電圧駆動素子3のゲートソース間容量Cgsからゲート抵抗R1を通して電荷が放電される時間であり、ゲートソース電圧Vgsの下降速度が電圧Vuの下降速度に律速されることによって長くなる。これにより、ドレイン電流Idの変化(di/dt)を小さくすることができる。その結果、サージ電圧を一定値以下とすることができる。抵抗R2の抵抗値及びコンデンサCの静電容量値は、例えば、電圧駆動素子3のゲートソース間容量Cgsからの電荷の放電時間が、
図3に示される駆動回路100における電圧駆動素子102のゲートソース間容量Cgsからの電荷の放電時間と同じになるように設定することができる。
【0035】
駆動回路1では、電圧Vuの下降速度が遅くなると、第二期間と共に第一期間も長くなり得る。これについて、駆動回路1では、ゲート抵抗R1の抵抗値を十分に小さくすることによって、ゲートドレイン間容量Cgdからゲート抵抗R1を通して電荷が放電される放電時間を短くすることができる。そのため、第一期間を短くすることができる。これにより、スイッチング損失を低減させることができる。ゲート抵抗R1の抵抗値は、例えば、
図3に示される駆動回路100のゲート抵抗R1の抵抗値よりも十分に小さく設定することができる。
【0036】
以上説明したように、本実施形態に係る駆動回路1は、第二トランジスタTr2のドレイン端子と抵抗R2との間に接続されているコンデンサCを備える。駆動回路1では、コンデンサC及び抵抗R2を備えることにより、コンデンサC及び抵抗R2による時定数を設定することができる。駆動回路1では、時定数を設定することによって、第二トランジスタTr2の電圧Vuの下降速度を設定できる。第二トランジスタTr2の電圧Vuの下降速度を遅くすることによって(下降時間を長くすることによって)、電圧駆動素子3のゲートソース電圧Vgsの下降速度も遅くすることができる。すなわち、電圧駆動素子3のゲートソース間容量Cgsからゲート抵抗R1を通して電荷が放電される放電時間を長くすることができる。したがって、電圧駆動素子3のドレイン端子に流れるドレイン電流Idの電流値がゼロになるまでの期間(上記時刻t2と時刻t3との間の第二期間)を延ばすことができる。その結果、駆動回路1では、サージ電圧を抑制することができる。
【0037】
また、駆動回路1では、コンデンサC及び抵抗R2の時定数によって電圧駆動素子3のドレイン端子に流れるドレイン電流Idの電流値がゼロになるまでの第二期間を設定できるため、ゲート抵抗R1の抵抗値を小さくすることができる。これにより、電圧駆動素子3のゲートドレイン間容量Cgdからゲート抵抗R1を通して電荷が放電される放電時間を短くすることができる。そのため、電圧駆動素子3のドレインソース電圧Vdsが電源電圧Vdcに到達する期間(上記時刻t1と時刻t2との間の第一期間)を短くすることができる。したがって、駆動回路1では、スイッチング損失の低減を図ることができる。
【0038】
本実施形態に係る駆動回路1では、電圧駆動素子3のターンオフの動作において、電圧駆動素子3のゲートソース電圧Vgsが電源電圧Vdcに到達する期間、及び、電圧駆動素子3のドレイン端子に流れるドレイン電流Idの電流値がゼロになるまでの期間が、ゲート抵抗R1の抵抗値、抵抗R2の抵抗値及びコンデンサCの静電容量値によって設定されている。電圧駆動素子3のゲートソース電圧Vgsが電源電圧Vdcに到達する期間(時刻t1と時刻t2との間の期間)は、主として、ゲート抵抗R1の抵抗値を小さくすることによって短くすることができる。これにより、駆動回路1では、スイッチング損失の低減が図れる。また、電圧駆動素子3のドレイン端子に流れるドレイン電流Idがゼロになるまでの期間(時刻t2と時刻t3との間の期間)は、主として、抵抗R2の抵抗値及びコンデンサCの静電容量値によって定まる時定数を適切に設定することによって長くすることができる。これにより、駆動回路1では、サージ電圧を抑制することができる。
【0039】
以上、本発明の実施形態について説明してきたが、本発明は必ずしも上述した実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変更が可能である。
【0040】
上記実施形態では、第一トランジスタTr1及び第二トランジスタTr2が、MOSFETである形態を一例に説明した。しかし、第一トランジスタTr1及び第二トランジスタTr2は、例えば、バイポーラトランジスタ、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)等であってもよい。第一トランジスタTr1及び第二トランジスタTr2がバイポーラトランジスタ又はIGBTである場合、上記の「ゲート端子」は「ベース端子」に相当し、「ドレイン端子」は「コレクタ端子」に相当し、「ソース端子」は「エミッタ端子」に相当する。
【0041】
上記実施形態では、電圧駆動素子3が、MOSFETである形態を一例に説明した。しかし、電圧駆動素子3は、IGBTであってもよい。電圧駆動素子3が、IGBTである場合、上記の、「ドレイン端子」は「コレクタ端子」に相当し、「ソース端子」は「エミッタ端子」に相当する。「ドレインソース電圧」は「ベースエミッタ電圧」に相当し、「ゲートソース電圧」は「ゲートエミッタ電圧」に相当する。「ドレイン電流」は「コレクタ電流」に相当する。「ゲートソース間容量」は「ベースエミッタ間容量」に相当し、「ゲートドレイン間容量」は「ベースコレクタ間容量」に相当する。
【0042】
上記実施形態では、第二トランジスタTr2のドレイン端子と抵抗R2との間にコンデンサCが接続されている形態を一例に説明した。しかし、コンデンサCは、
図5に示されるように、第一トランジスタTr1のドレイン端子と抵抗R2との間に接続されていてもよいし、
図6に示されるように、第一トランジスタTr1のドレイン端子と抵抗R2との間、及び、第二トランジスタTr2のドレイン端子と抵抗R2との間のそれぞれに接続されていてもよい。
【0043】
本発明に係る駆動回路は、アクティブゲート制御回路と共に使用されてもよい。例えば、アクティブゲート制御回路は、駆動回路の制御対象である電圧駆動素子がオンすることで流れる主電流によってインダクタンス成分に生じた起電圧が伝送されるフィードバック配線と、フィードバック配線に印加された電圧と指令値とを加算し、その加算された加算電圧を第一スイッチング素子及び第二スイッチング素子のそれぞれのゲート端子又はベース端子に向けて出力する加算回路と、を備える。
【符号の説明】
【0044】
1…駆動回路、3…電圧駆動素子、13…駆動用電源、C…コンデンサ、R1…ゲート抵抗(第一抵抗)、R2…抵抗(第二抵抗)、Tr1…第一トランジスタ(第一スイッチング素子)、Tr2…第二トランジスタ(第二スイッチング素子)、Vdc…電源電圧(所定電圧)、Vds…ドレインソース電圧。