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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022184477
(43)【公開日】2022-12-13
(54)【発明の名称】ガラス部材
(51)【国際特許分類】
   C03C 15/00 20060101AFI20221206BHJP
   C03C 23/00 20060101ALI20221206BHJP
【FI】
C03C15/00 Z
C03C23/00 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021092354
(22)【出願日】2021-06-01
(71)【出願人】
【識別番号】000114215
【氏名又は名称】ミネベアミツミ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001771
【氏名又は名称】弁理士法人虎ノ門知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】原田 高志
(72)【発明者】
【氏名】岡 博之
【テーマコード(参考)】
4G059
【Fターム(参考)】
4G059AA01
4G059AC01
4G059BB01
4G059BB04
(57)【要約】
【課題】軽量で強度の高いガラス部材を提供すること。
【解決手段】実施形態のガラス部材は、第1の領域と、第2の領域とを備える。前記第1の領域は、平坦で第1の厚みである。前記第2の領域は、前記第1の領域の一方の面に平坦に連続し、前記第1の領域の他方の面の端部から傾斜が始まり、厚みが増大する。前記第1の領域の一方の平坦な面に対する前記第2の領域の傾斜する面の勾配角度は、0°より大きく30°以下である。
【選択図】図11
【特許請求の範囲】
【請求項1】
平坦で第1の厚みの第1の領域と、
前記第1の領域の一方の面に平坦に連続し、前記第1の領域の他方の面の端部から傾斜が始まり、厚みが増大する第2の領域と、
を備え、
前記第1の領域の一方の平坦な面に対する前記第2の領域の傾斜する面の勾配角度が、0°より大きく30°以下である、
ガラス部材。
【請求項2】
前記第1の領域の他方の面と前記第2の領域の傾斜する面との接続部分の曲率が変わる部分は、所定の半径の円弧面により形成される、
請求項1に記載のガラス部材。
【請求項3】
前記第1の領域の前記第1の厚みに対する、前記第2の領域の前記第1の領域と反対側の端部の厚みの比は1より大きく、応力低減効果を高める場合、前記厚みの比を更に大きくする、
請求項1または2に記載のガラス部材。
【請求項4】
前記第2の領域の前記第1の領域と反対側の端部には、平坦なまたは湾曲した他の領域が連続する、
請求項1~3のいずれか一つに記載のガラス部材。
【請求項5】
前記第1の領域の前記第2の領域と反対側の端部には、平坦なまたは湾曲した他の領域が連続する、
請求項1~4のいずれか一つに記載のガラス部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガラス部材に関する。
【背景技術】
【0002】
スマートフォン等の筐体の一部として、ガラスを素材としたガラス部材が用いられることがある(例えば、特許文献1~3等を参照)。ガラス部材は、高級感があり、デザイン的に優れている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表2003-502257号公報
【特許文献2】特表2015-512057号公報
【特許文献3】特開2021-11400号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、ガラス部材は、強度をもたせるために厚みを大きくすると重くなり、軽くするためむやみに厚みを小さくすると強度が低下して落下時等に割れやすいという問題があった。
【0005】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、軽量で強度の高いガラス部材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明の一態様に係るガラス部材は、第1の領域と、第2の領域とを備える。前記第1の領域は、平坦で第1の厚みである。前記第2の領域は、前記第1の領域の一方の面に平坦に連続し、前記第1の領域の他方の面の端部から傾斜が始まり、厚みが増大する。前記第1の領域の一方の平坦な面に対する前記第2の領域の傾斜する面の勾配角度は、0°より大きく30°以下である。
【0007】
本発明の一態様に係るガラス部材は、軽量で強度の高いものとすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、一実施形態にかかるガラス部材の例を示す正面図である。
図2図2は、図1のガラス部材の斜視図である。
図3図3は、ガラス部材の他の例を示す正面図(1)である。
図4図4は、ガラス部材の他の例を示す正面図(2)である。
図5図5は、ガラス部材の他の例を示す正面図(3)である。
図6図6は、ガラス部材の他の例を示す正面図(4)である。
図7図7は、ガラス部材の他の例を示す正面図(5)である。
図8図8は、ガラス部材の他の例を示す正面図(6)である。
図9図9は、ガラス部材の他の例を示す正面図(7)である。
図10図10は、ガラス部材の他の例を示す正面図(8)である。
図11図11は、図1図10のガラス部材の着目部分を抽出した正面図である。
図12図12は、2つの領域の接続部の曲率が変わる部分が所定の半径の円弧面により形成される場合における、勾配角度の定義と、領域の境界の定義とを説明する図である。
図13図13は、接続部の勾配角度が大きい比較例のガラス部材の例を示す正面図である。
図14図14は、シミュレーションに用いられたガラス部材の形状と寸法を示す斜視図である。
図15図15は、図14における接続部付近の正面図である。
図16図16は、シミュレーション結果による、接続部の勾配角度と応力との関係を示す図である。
図17A図17Aは、勾配角が10°の場合における応力の分布を示す斜視図である。
図17B図17Bは、図17Aにおける接続部付近の拡大図である。
図18A図18Aは、勾配角が90°の場合における応力の分布を示す斜視図である。
図18B図18Bは、図18Aにおける接続部付近の拡大図である。
図19A図19Aは、勾配角が10°で板厚比が3の場合における応力の分布を示す斜視図である。
図19B図19Bは、図19Aにおける接続部C付近の拡大図である。
図20A図20Aは、勾配角が10°で板厚比が1.3の場合における応力の分布を示す斜視図である。
図20B図20Bは、図20Aにおける接続部C付近の拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、実施形態に係るガラス部材について図面を参照して説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。また、図面における各要素の寸法の関係、各要素の比率などは、現実と異なる場合がある。図面の相互間においても、互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれている場合がある。また、1つの実施形態や変形例に記載された内容は、原則として他の実施形態や変形例にも同様に適用される。
【0010】
図1は、一実施形態にかかるガラス部材1の例を示す正面図である。図1において、破線は、領域の境界を示している(以下、同様)。図2は、図1のガラス部材1の斜視図である。なお、奥行の幅は任意である。
【0011】
図1および図2において、ガラス部材1は、複数の領域11~15を備えている。すなわち、平坦で厚みが一定の領域11と、領域11に一端が接続され、図における下側が平坦で厚みが増加する領域12と、領域12に一端が接続され、平坦で厚みが一定の領域13と、領域13に一端が接続され、厚みが一定で湾曲する領域14と、領域14に一端が接続され、平坦で厚みが一定の領域15とを備えている。なお、勾配面(傾斜面)を有する領域12と、湾曲面を有する領域14との間の平坦な領域13の長さ(X軸方向の長さ)は、極めて短いものであってもよい。
【0012】
また、領域11と領域12との接続部Cの曲率が変わる部分は、所定の半径の円弧面により形成される。領域12と領域13との接続部(図の上側の接続部)の曲率が変わる部分についても同様に、所定の半径の円弧面により形成される。また、後述のように、接続部Cの勾配角度(領域11の一方の平坦な面に対する領域12の傾斜する面の勾配角度)は、0°より大きく30°以下であるものとされる。
【0013】
また、ガラス部材1の製造方法としては、先ず、板状のガラスに対し、化学エッチングまたは研削加工により、領域12の勾配面と、この勾配面に連なる領域11の平坦面とを形成する偏肉加工が行われる。なお、化学エッチングには、ウエットエッチングとドライエッチングとが含まれる。研削加工には、フライスやその他の研削・切削手段が含まれる。その後、背面より真空ポンプ等により吸引が行われる金型に、偏肉加工が行われた板状のガラスがセットされ、領域14に対応する曲げ部分に赤外線の照射等が行われてガラスの軟化が行われ、吸引により金型の形状に沿って曲げ加工が行われる。
【0014】
図3は、ガラス部材1の他の例を示す正面図である。なお、図の奥行方向(Y軸方向)に幅を有するのは、図2と同様である。図3において、図1および図2と異なるのは、領域11と領域12との接続部Cの曲率が変わる部分(領域12と領域13との接続部についても同様)が図における下側になっている点である。他は図1および図2と同様である。
【0015】
図4は、ガラス部材1の他の例を示す正面図である。なお、図の奥行方向(Y軸方向)に幅を有するのは、図2と同様である。図4において、ガラス部材1は、複数の領域11-1~13を備えている。すなわち、平坦で厚みが一定の領域11-1と、領域11-1に一端が接続され、厚みが一定で湾曲する領域11-2と、領域11-2に一端が接続され、平坦で厚みが一定の領域11-3と、領域11-3に一端が接続され、図における右側が平坦で厚みが増加する領域12と、領域12に一端が接続され、平坦で厚みが一定の領域13とを備えている。なお、勾配面(傾斜面)を有する領域12と、湾曲面を有する領域11-2との間の平坦な領域11-3の長さ(Z軸方向の長さ)は、極めて短いものであってもよい。
【0016】
また、領域11-3と領域12との接続部Cの曲率が変わる部分は、所定の半径の円弧面により形成される。領域12と領域13との接続部(図の左側の接続部)の曲率が変わる部分についても同様に、所定の半径の円弧面により形成される。また、後述のように、接続部Cの勾配角度(領域11-3の一方の平坦な面に対する領域12の他方の面の勾配角度)は、0°より大きく30°以下であるものとされる。ガラス部材1の製造方法は、図1および図2のガラス部材1について説明したのと同様である。
【0017】
図5は、ガラス部材1の他の例を示す正面図である。なお、図の奥行方向(Y軸方向)に幅を有するのは、図2と同様である。図5において、図4と異なるのは、領域11-3と領域12との接続部Cの曲率が変わる部分(領域12と領域13との接続部についても同様)が図における右側になっている点である。他は図4と同様である。
【0018】
図6は、ガラス部材1の他の例を示す正面図である。なお、図の奥行方向(Y軸方向)に幅を有するのは、図2と同様である。図6において、ガラス部材1は、複数の領域11-1~13を備えている。すなわち、平坦で厚みが一定の領域11-1と、領域11-1に一端が接続され、厚みが一定で湾曲する領域11-2と、領域11-2に一端が接続され、平坦で厚みが一定の領域11-3と、領域11-3に一端が接続され、図における下側が平坦で厚みが増加する領域12と、領域12に一端が接続され、平坦で厚みが一定の領域13とを備えている。なお、勾配面(傾斜面)を有する領域12と、湾曲面を有する領域11-2との間の平坦な領域11-3の長さ(X軸方向の長さ)は、極めて短いものであってもよい。
【0019】
また、領域11-3と領域12との接続部Cの曲率が変わる部分は、所定の半径の円弧面により形成される。領域12と領域13との接続部(図の上側の接続部)の曲率が変わる部分についても同様に、所定の半径の円弧面により形成される。また、後述のように、接続部Cの勾配角度(領域11-3の一方の平坦な面に対する領域12の他方の面の勾配角度)は、0°より大きく30°以下であるものとされる。ガラス部材1の製造方法は、図1および図2のガラス部材1について説明したのと同様である。
【0020】
図7は、ガラス部材1の他の例を示す正面図である。なお、図の奥行方向(Y軸方向)に幅を有するのは、図2と同様である。図7において、図6と異なるのは、領域11-3と領域12との接続部Cの曲率が変わる部分(領域12と領域13との接続部についても同様)が図における下側になっている点である。他は図6と同様である。
【0021】
図8は、ガラス部材1の他の例を示す正面図である。なお、図の奥行方向(Y軸方向)に幅を有するのは、図2と同様である。図8において、ガラス部材1は、複数の領域11~15を備えている。すなわち、平坦で厚みが一定の領域11と、領域11に一端が接続され、図における右側が平坦で厚みが増加する領域12と、領域12に一端が接続され、平坦で厚みが一定の領域13と、領域13に一端が接続され、厚みが一定で湾曲する領域14と、領域14に一端が接続され、平坦で厚みが一定の領域15とを備えている。なお、勾配面(傾斜面)を有する領域12と、湾曲面を有する領域14との間の平坦な領域13の長さ(Z軸方向の長さ)は、極めて短いものであってもよい。
【0022】
また、領域11と領域12との接続部Cの曲率が変わる部分は、所定の半径の円弧面により形成される。領域12と領域13との接続部(図の左側の接続部)の曲率が変わる部分についても同様に、所定の半径の円弧面により形成される。また、後述のように、接続部Cの勾配角度(領域11の一方の平坦な面に対する領域12の他方の面の勾配角度)は、0°より大きく30°以下であるものとされる。ガラス部材1の製造方法は、図1および図2のガラス部材1について説明したのと同様である。
【0023】
図9は、ガラス部材1の他の例を示す正面図である。なお、図の奥行方向(Y軸方向)に幅を有するのは、図2と同様である。図8と異なるのは、領域11と領域12との接続部Cの曲率が変わる部分(領域12と領域13との接続部についても同様)が図における右側になっている点である。他は図8と同様である。
【0024】
図10は、ガラス部材1の他の例を示す正面図であり、曲げ加工がされていない板状のものとなっている。なお、図の奥行方向(Y軸方向)に幅を有するのは、図2と同様である。図10において、ガラス部材1は、複数の領域11~13を備えている。すなわち、平坦で厚みが一定の領域11と、領域11に一端が接続され、図における下側が平坦で厚みが増加する領域12と、領域12に一端が接続され、平坦で厚みが一定の領域13とを備えている。
【0025】
なお、領域11と領域12との接続部Cの曲率が変わる部分は、所定の半径の円弧面により形成される。領域12と領域13との接続部(図の上側の接続部)の曲率が変わる部分についても同様に、所定の半径の円弧面により形成される。また、後述のように、接続部Cの勾配角度(領域11の一方の平坦な面に対する領域12の他方の面の勾配角度)は、0°より大きく30°以下であるものとされる。
【0026】
図11は、図1図10のガラス部材1の着目部分を抽出した正面図である。すなわち、図1および図3における領域11、12、図4および図5における領域11-3、12、図6および図7における領域11-3、12、図8および図9における領域11、12、図10における領域11、12の部分が抽出されたものである。なお、図1図3図4図5図6図7図8図9では接続部Cの曲率が変わる部分が上下または左右で入れ替わっているが、領域11、12の部分としての抽出においては接続部Cの曲率が変わる部分の向きを揃えている。
【0027】
図11において、第1の領域11の厚みをT1、第2の領域12の最大の厚みをT0、領域11の一方の平坦な面(図における下側)に対する領域12の他方の面(図における上側)の勾配角度をθとしている。前述のように、勾配角度θは0°より大きく30°以下であるものとされる。
【0028】
図12は、2つの領域11、12の接続部Cの曲率が変わる部分が所定の半径の円弧面により形成される場合における、勾配角度θの定義と、領域11、12の境界の定義とを説明する図である。図12において、領域11の上側の平坦な面から外挿した線EL2と、傾斜した面から外挿した線EL1とのなす角度が勾配角度θとなる。また、線EL1と線EL2との交点から上下に垂直に延ばした線BL1が領域11と領域12との境界となる。
【0029】
図13は、接続部C’の勾配角度が大きい比較例のガラス部材1’の例を示す正面図である。図13において、図中の矢印のような方向に応力が加わると、領域11’と領域12’との接続部C’の曲率が変わる部分の付近に応力が集中し、勾配角度θが大きいと応力の値が過大となり、破壊に至りやすい。なお、図13に示されるような方向に応力が加わるのは、領域11’の左端が接続部C’側に対して下側に、または領域12’の右端が接続部C’側に対して下側に変位する方向に荷重が加わった場合である。この点、図11のように、勾配角度θが0°より大きく30°以下である場合、後述のシミュレーション結果から示されるように、応力の値が抑えられ、破壊を防ぎ、軽量で強度の高いガラス部材1を提供することができる。
【0030】
また、図11におけるガラス部材1の領域11と領域12との接続部Cの曲率が変わる部分は、前述のように、所定の半径の円弧面により形成される。後述のシミュレーションは、円弧面なし(半径0の円弧面)によるものであるが、円弧面が設けられることで、応力の集中が緩和され、強度が向上する。また、厚みT0または厚みT1のいずれか一方を一定とした場合、板厚比T0/T1が大きい方が、応力低減効果も大きくなり好ましい。これは、板厚比T0/T1が大きくなると、勾配面の距離が長くなり、勾配面の長さが応力の集中を分散させ、緩和させることによる。
【0031】
図14は、シミュレーションに用いられたガラス部材1の形状と寸法を示す斜視図である。なお、図14において、ガラス部材1の右側の端面21が固定され、左側の端面22に荷重Pが加えられるものとしている。なお、図1図3図4図5図6図7図8図9のように接続部Cの曲率が変わる部分が上下または左右で入れ替わっている場合であっても、接続部C付近に働く応力については図14のシミュレーションによりカバーされる。図15は、図14における接続部C付近の正面図である。各部の名称(Name)と値(Value)は次の表1に示す通りである。
【0032】
【表1】
【0033】
図16は、シミュレーション結果による、接続部Cの勾配角度と応力との関係を示す図である。なお、四角のプロットは板厚比T0/T1=1.3、白丸のプロットは板厚比T0/T1=2、黒三角のプロットは板厚比T0/T1=3の場合である。各板厚比T0/T1における、勾配角度θ≦30°の領域における平均傾きα’、勾配角度θ>30°の領域における平均傾きα、傾きの比α’/αが次の表2に示されている。
【0034】
【表2】
【0035】
図16および表2において、勾配角度θ≦30°の領域における平均傾きα’は、勾配角度θ>30°の領域における平均傾きαよりも大きい。すなわち、板厚比T0/T1に関わらず、勾配角度θ=30°付近で勾配角度-応力の線は変曲し、勾配角度θ≦30°の領域での平均傾きα’は3倍以上大きくなる。よって、勾配角度θ>30°と比較して勾配角度θ≦30°の領域は勾配角度θの変化による応力低減効果が高い。
【0036】
また、一般的に、板厚比T0/T1が大きい(断面がより急変する)方が応力集中は大きくなる(後述のθ=90°の場合を参照)が、板厚比T0/T1が大きい方が勾配角度θの変化による応力値変化の効果は高いため、勾配角度θ≦30°付近で板厚比T0/T1と応力値の関係は逆転し、勾配角度θ≦30°の領域では板厚比T0/T1が大きい方が応力は低くなる。
【0037】
図17Aは、勾配角が10°の場合における応力の分布を示す斜視図である。図17Bは、図17Aにおける接続部C付近の拡大図である。また、図18Aは、勾配角が90°の場合における応力の分布を示す斜視図である。図18Bは、図18Aにおける接続部C付近の拡大図である。
【0038】
図17Aおよび図17Bの低勾配角モデルと、図18Aおよび図18Bの比較対象モデルとについての、最大主応力が次の表3に示されている。図17A図17B図18A図18Bおよび表3から明らかなように、勾配角度θ=90°の比較対象モデルに対し、勾配角度θ=10°の低勾配角モデルの最大主応力は小さくなり、強度が高いといえる。
【0039】
【表3】
【0040】
図19Aは、勾配角が10°で板厚比が3の場合における応力の分布を示す斜視図である。図19Bは、図19Aにおける接続部C付近の拡大図である。図20Aは、勾配角が10°で板厚比が1.3の場合における応力の分布を示す斜視図である。図20Bは、図20Aにおける接続部C付近の拡大図である。
【0041】
図19Aおよび図19Bの板厚比大の場合と、図20Aおよび図20Bの板厚比小の場合とについての、最大主応力が次の表4に示されている。図19A図19B図20A図20Bおよび表4から明らかなように、板厚比小の場合に対し、板厚比大の場合の最大主応力は小さくなり、強度が高いといえる。
【0042】
【表4】
【0043】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて種々の変更が可能である。
【0044】
以上のように、実施形態に係るガラス部材は、平坦で第1の厚みの第1の領域と、第1の領域の一方の面に平坦に連続し、第1の領域の他方の面の端部から傾斜が始まり、厚みが増大する第2の領域とを備え、第1の領域の一方の平坦な面に対する第2の領域の傾斜する面の勾配角度が、0°より大きく30°以下である。これにより、軽量で強度の高いものとすることができる。
【0045】
また、第1の領域の他方の面と第2の領域の傾斜する面との接続部分の曲率が変わる部分は、所定の半径の円弧面により形成される。これにより、応力の集中が緩和され、強度をいっそう高めることができる。
【0046】
また、第1の領域の第1の厚みに対する、第2の領域の第1の領域と反対側の端部の厚みの比は1より大きく、応力低減効果を高める場合、厚みの比を更に大きくする。これにより、第1の領域の一方の平坦な面に対する第2の領域の傾斜する面の勾配角度以外でも強度を制御することができる。
【0047】
また、第2の領域の第1の領域と反対側の端部には、平坦なまたは湾曲した他の領域が連続する。これにより、多様な形状に対応することができる。
【0048】
また、第1の領域の第2の領域と反対側の端部には、平坦なまたは湾曲した他の領域が連続する。これにより、多様な形状に対応することができる。
【0049】
また、上記実施の形態により本発明が限定されるものではない。上述した各構成要素を適宜組み合わせて構成したものも本発明に含まれる。また、さらなる効果や変形例は、当業者によって容易に導き出すことができる。よって、本発明のより広範な態様は、上記の実施の形態に限定されるものではなく、様々な変更が可能である。
【符号の説明】
【0050】
1 ガラス部材,11~15 領域,C 接続部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17A
図17B
図18A
図18B
図19A
図19B
図20A
図20B