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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022184479
(43)【公開日】2022-12-13
(54)【発明の名称】多段変速機
(51)【国際特許分類】
   F16H 3/66 20060101AFI20221206BHJP
【FI】
F16H3/66 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021092359
(22)【出願日】2021-06-01
(71)【出願人】
【識別番号】000001236
【氏名又は名称】株式会社小松製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松尾 拓
(72)【発明者】
【氏名】安田 伸人
(72)【発明者】
【氏名】塩原 正樹
(72)【発明者】
【氏名】相田 倫弘
【テーマコード(参考)】
3J528
【Fターム(参考)】
3J528EA09
3J528EA25
3J528EA30
3J528EB62
3J528EB66
3J528EB83
3J528EB93
3J528FB03
3J528FC13
3J528FC25
3J528FC62
3J528GA07
3J528GA12
3J528HA12
3J528JA03
3J528JD06
3J528JE04
3J528JF02
3J528JG04
3J528JH02
3J528JM03
(57)【要約】
【課題】速度段の増加、部品数の低減、および総段間比の拡大を実現する。
【解決手段】多段変速機100は、入力部材7と、出力部材10と、第1~第3遊星歯車セット1~3と、第1~第4クラッチ51~54と、第1~第2ブレーキ61~62とを備えている。各々の遊星歯車セット1~3は、サンギヤ、遊星キャリアおよびリングギヤを含んでいる。第1~第4クラッチ51~54および第1~第2ブレーキ61~62の少なくとも1つが、各遊星歯車セット1~3に動作可能に結合され、入力部材7と出力部材10との間に、少なくとも前進10段のギヤ比と少なくとも後進1段のギヤ比とを含む異なるギヤ比のセットを生成するように、選択的に係合可能である。第1クラッチ51は、第1遊星歯車セット1の第1サンギヤ11と、第2遊星歯車セット2の第2リングギヤ23とを、選択的に連結する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力部材と、
出力部材と、
各々がサンギヤ、遊星キャリアおよびリングギヤを含む、3つ以下の遊星歯車セットと、
6つ以下の制御要素とを備え、
少なくとも1つの制御要素が、各遊星歯車セットに動作可能に結合され、前記入力部材と前記出力部材との間に異なるギヤ比のセットを生成するように選択的に係合可能であり、前記異なるギヤ比のセットは少なくとも前進10段のギヤ比と少なくとも後進1段のギヤ比とを含み、
前記6つ以下の制御要素のうちの1つの制御要素は、前記3つ以下の遊星歯車セットのうちの1つの遊星歯車セットの前記サンギヤと、前記3つ以下の遊星歯車セットのうちの他の1つの遊星歯車セットの前記リングギヤと、を選択的に連結する、多段変速機。
【請求項2】
入力部材と、
出力部材と、
各々がサンギヤ、遊星キャリアおよびリングギヤを含む、前記入力部材に連結された第1遊星歯車セット、第2遊星歯車セット、前記出力部材に連結された第3遊星歯車セットと、
6つ以下の制御要素とを備え、
少なくとも1つの制御要素が、各遊星歯車セットに動作可能に結合され、前記入力部材と前記出力部材との間に異なるギヤ比のセットを生成するように選択的に係合可能であり、前記異なるギヤ比のセットは少なくとも前進10段のギヤ比と少なくとも後進1段のギヤ比とを含み、
前記第2遊星歯車セットの前記サンギヤと前記第3遊星歯車セットの前記リングギヤとに連続的に連結される中間結合部材をさらに備える、多段変速機。
【請求項3】
入力部材と、
出力部材と、
各々がサンギヤ、遊星キャリアおよびリングギヤを含む、前記入力部材に連結された第1遊星歯車セット、第2遊星歯車セット、前記出力部材に連結された第3遊星歯車セットと、
6つ以下の制御要素とを備え、
少なくとも1つの制御要素が、各遊星歯車セットに動作可能に結合され、前記入力部材と前記出力部材との間に異なるギヤ比のセットを生成するように選択的に係合可能であり、前記異なるギヤ比のセットは少なくとも前進10段のギヤ比と少なくとも後進1段のギヤ比とを含み、
前記6つ以下の制御要素のうちの1つの制御要素は、前記第1遊星歯車セットの前記サンギヤと前記第2遊星歯車セットの前記リングギヤとを選択的に連結する、多段変速機。
【請求項4】
入力部材と、
出力部材と、
各々がサンギヤ、遊星キャリアおよびリングギヤを含む、前記入力部材に連結された第1遊星歯車セット、第2遊星歯車セット、前記出力部材に連結された第3遊星歯車セットと、
6つ以下の制御要素とを備え、
少なくとも1つの制御要素が、各遊星歯車セットに動作可能に結合され、前記入力部材と前記出力部材との間に異なるギヤ比のセットを生成するように選択的に係合可能であり、前記異なるギヤ比のセットは少なくとも前進10段のギヤ比と少なくとも後進1段のギヤ比とを含み、
前記6つ以下の制御要素のうちの1つの制御要素は、前記第2遊星歯車セットの前記遊星キャリアと前記第3遊星歯車セットの前記遊星キャリアとを選択的に連結する、多段変速機。
【請求項5】
入力部材と、
出力部材と、
各々がサンギヤ、遊星キャリアおよびリングギヤを含む、前記入力部材に連結された第1遊星歯車セット、第2遊星歯車セット、前記出力部材に連結された第3遊星歯車セットと、
6つ以下の制御要素とを備え、
少なくとも1つの制御要素が、各遊星歯車セットに動作可能に結合され、前記入力部材と前記出力部材との間に異なるギヤ比のセットを生成するように選択的に係合可能であり、前記異なるギヤ比のセットは少なくとも前進10段のギヤ比と少なくとも後進1段のギヤ比とを含み、
前記6つ以下の制御要素のうちの1つの制御要素は、前記第1遊星歯車セットの前記遊星キャリアと前記第2遊星歯車セットの前記遊星キャリアとを選択的に連結する、多段変速機。
【請求項6】
入力部材と、
出力部材と、
各々がサンギヤ、遊星キャリアおよびリングギヤを含む、前記入力部材に連結された第1遊星歯車セット、第2遊星歯車セット、前記出力部材に連結された第3遊星歯車セットと、
6つ以下の制御要素とを備え、
少なくとも1つの制御要素が、各遊星歯車セットに動作可能に結合され、前記入力部材と前記出力部材との間に異なるギヤ比のセットを生成するように選択的に係合可能であり、前記異なるギヤ比のセットは少なくとも前進10段のギヤ比と少なくとも後進1段のギヤ比とを含み、
前記6つ以下の制御要素のうちの1つの制御要素は、前記第1遊星歯車セットの前記リングギヤと前記第2遊星歯車セットの前記リングギヤとを選択的に連結する、多段変速機。
【請求項7】
入力部材と、
出力部材と、
各々がサンギヤ、遊星キャリアおよびリングギヤを含む、前記入力部材に連結された第1遊星歯車セット、第2遊星歯車セット、前記出力部材に連結された第3遊星歯車セットと、
6つ以下の制御要素とを備え、
少なくとも1つの制御要素が、各遊星歯車セットに動作可能に結合され、前記入力部材と前記出力部材との間に異なるギヤ比のセットを生成するように選択的に係合可能であり、前記異なるギヤ比のセットは少なくとも前進10段のギヤ比と少なくとも後進1段のギヤ比とを含み、
前記6つ以下の制御要素のうちの1つの制御要素は、前記第2遊星歯車セットの前記リングギヤと前記第3遊星歯車セットの前記サンギヤとを選択的に連結する、多段変速機。
【請求項8】
入力部材と、
出力部材と、
各々がサンギヤ、遊星キャリアおよびリングギヤを含む、前記入力部材に連結された第1遊星歯車セット、第2遊星歯車セット、前記出力部材に連結された第3遊星歯車セットと、
6つ以下の制御要素とを備え、
少なくとも1つの制御要素が、各遊星歯車セットに動作可能に結合され、前記入力部材と前記出力部材との間に異なるギヤ比のセットを生成するように選択的に係合可能であり、前記異なるギヤ比のセットは少なくとも前進10段のギヤ比と少なくとも後進1段のギヤ比とを含み、
前記6つ以下の制御要素のうちの1つの制御要素は、前記第2遊星歯車セットの前記リングギヤと前記第3遊星歯車セットの前記遊星キャリアとを選択的に連結する、多段変速機。
【請求項9】
前記第1遊星歯車セットの前記リングギヤおよび前記第3遊星歯車セットの前記サンギヤに連続的に連結される中間結合部材をさらに備える、請求項3から請求項8のいずれか1項に記載の多段変速機。
【請求項10】
前記入力部材は、前記第1遊星歯車セットの前記遊星キャリアに連続的に連結される、請求項2から請求項9のいずれか1項に記載の多段変速機。
【請求項11】
前記出力部材は、前記第3遊星歯車セットの前記遊星キャリアに連続的に連結される、請求項2から請求項10のいずれか1項に記載の多段変速機。
【請求項12】
前記第1遊星歯車セットと前記第3遊星歯車セットとは、シングルピニオン式の遊星歯車機構であり、
前記第2遊星歯車セットは、シングルピニオン式またはダブルピニオン式の遊星歯車機構である、請求項2から請求項11のいずれか1項に記載の多段変速機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、多段変速機に関する。
【背景技術】
【0002】
ダンプトラックなどの作業車両は、複数の遊星歯車セットを有する多段変速機を備えている。遊星歯車式の多段変速機は、各遊星歯車セットの回転要素を適宜組み合わせて使用することによって、所望の減速比を得ることができる。従来の遊星歯車式変速機は、たとえば、米国特許第9188200号明細書(特許文献1)に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許第9188200号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
多段変速機においては、燃費の改善および走行性能の向上のために速度段の増加が要望されており、重量低減および小型化のために部品数の低減が要望されており、最大牽引力の向上および最大車速の向上のために総段間比の拡大が要望されている。
【0005】
本開示では、速度段の増加、部品数の低減、および総段間比の拡大を実現できる、多段変速機が提案される。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示のある局面に係る多段変速機は、入力部材と、出力部材とを備えている。多段変速機は、3つ以下の遊星歯車セットを備えている。各々の遊星歯車セットは、サンギヤ、遊星キャリアおよびリングギヤを含んでいる。多段変速機は、6つ以下の制御要素を備えている。少なくとも1つの制御要素が、各遊星歯車セットに動作可能に結合され、入力部材と出力部材との間に異なるギヤ比のセットを生成するように選択的に係合可能である。異なるギヤ比のセットは、少なくとも前進10段のギヤ比と、少なくとも後進1段のギヤ比とを含んでいる。上記6つ以下の制御要素のうちの1つの制御要素は、上記3つ以下の遊星歯車セットのうちの1つの遊星歯車セットのサンギヤと、上記3つ以下の遊星歯車セットのうちの他の1つの遊星歯車セットのリングギヤと、を選択的に連結する。
【発明の効果】
【0007】
本開示の多段変速機によると、速度段の増加、部品数の低減、および総段間比の拡大を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】第1実施形態に係る多段変速機の概略図である。
図2】第1実施形態に係る多段変速機の各速度段においてオン状態となる各クラッチまたは各ブレーキを示す表である。
図3】第1実施形態に係る多段変速機の各遊星歯車セットにおける歯数比を示す表である。
図4】第2実施形態に係る多段変速機の概略図である。
図5】第2実施形態に係る多段変速機の各速度段においてオン状態となる各クラッチまたは各ブレーキを示す表である。
図6】第2実施形態に係る多段変速機の各遊星歯車セットにおける歯数比を示す表である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、多段変速機100の各実施形態について、図面を参照しつつ説明する。なお、以下の説明において、回転軸方向とは、回転軸線Oが延びる方向を示す。径方向とは、回転軸線Oを中心とした円の径方向を示す。図1においては、回転軸方向は図中の左右方向であり、径方向は図中の上下方向である。回転軸線Oとは、入力部材7および出力部材10の中心線を示す。入力側とは、多段変速機100が動力を入力する側を示す。出力側とは、多段変速機100が動力を出力する側を示す。図1においては、入力側は図中の左側、出力側は図中の右側である。
【0010】
[第1実施形態]
図1は、第1実施形態に係る多段変速機100の概略図である。多段変速機100は、ディーゼルエンジンに代表される内燃機関、電気モータなどの、図示しない任意の駆動源から入力される動力の回転速度を変速して出力する。駆動源からの動力は、トルクコンバータを介して多段変速機100に入力されてもよい。
【0011】
多段変速機100は、複数の遊星歯車セット1~3、複数のクラッチ51~54、複数のブレーキ61~62、入力部材7、第1中間結合部材81、第2中間結合部材82、出力部材10、およびハウジング9を備えている。各遊星歯車セット1~3、各クラッチ51~54、各ブレーキ61~62、入力部材7、第1中間結合部材81、第2中間結合部材82、および出力部材10は、ハウジング9に収容されている。
【0012】
複数の遊星歯車セットは、第1遊星歯車セット1、第2遊星歯車セット2、および第3遊星歯車セット3を含んでいる。複数のクラッチは、第1クラッチ51、第2クラッチ52、第3クラッチ53、および第4クラッチ54を含んでいる。複数のブレーキは、第1ブレーキ61および第2ブレーキ62を含んでいる。各クラッチ51~54および各ブレーキ61~62は、実施形態の制御要素に相当する。6つの制御要素は、第1クラッチ51、第2クラッチ52、第3クラッチ53、第4クラッチ54、第1ブレーキ61、および第2ブレーキ62を含んでいる。
【0013】
第1遊星歯車セット1、第2遊星歯車セット2、および第3遊星歯車セット3は、回転軸線Oを中心に回転可能に支持されている。第1遊星歯車セット1、第2遊星歯車セット2、および第3遊星歯車セット3は、回転軸方向に沿って、この順に配置されている。詳細には、入力側から出力側に向かって、第1遊星歯車セット1、第2遊星歯車セット2、および第3遊星歯車セット3の順で並べられている。
【0014】
入力部材7は、回転軸線Oを中心に回転するように構成されている。回転軸線Oは、入力部材7の中心線である。エンジンなどからの動力が、入力部材7に入力される。
【0015】
第1中間結合部材81は、回転軸線Oを中心に回転するように構成されている。第1中間結合部材81は、回転軸方向に延びている。第1中間結合部材81の中心線と、入力部材7の中心線とは、実質的に同じである。
【0016】
第2中間結合部材82は、回転軸線Oを中心に回転するように構成されている。第2中間結合部材82は、中空状である。第1中間結合部材81は、第2中間結合部材82の径方向内側に配置されている。第2中間結合部材82の中心線と、入力部材7の中心線とは、実質的に同じである。
【0017】
第1遊星歯車セット1は、シングルピニオン式の遊星歯車機構である。第1遊星歯車セット1は、回転要素として、第1サンギヤ11、複数の第1プラネタリギヤ12、第1リングギヤ13、および第1遊星キャリア14を有している。
【0018】
第1サンギヤ11は、回転軸線Oを中心に回転可能に配置されている。第1サンギヤ11は、入力部材7の径方向外側に配置されている。詳細には、第1サンギヤ11は環状であって、入力部材7は第1サンギヤ11を貫通している。第1サンギヤ11と入力部材7とは、相対回転可能である。
【0019】
各第1プラネタリギヤ12は、第1サンギヤ11に噛み合うように構成されている。各第1プラネタリギヤ12は、第1サンギヤ11の径方向外側に配置されている。詳細には、各第1プラネタリギヤ12は、周方向に間隔をあけて配置されている。
【0020】
各第1プラネタリギヤ12は、第1サンギヤ11の周りを公転するように構成されている。各第1プラネタリギヤ12は、回転軸線Oを中心に回転するように構成されている。また、各第1プラネタリギヤ12は、自転するように構成されている。
【0021】
第1リングギヤ13は、各第1プラネタリギヤ12と噛み合っている。第1リングギヤ13は、回転軸線Oを中心に回転するように構成されている。
【0022】
第1リングギヤ13は、第1中間結合部材81と一体的に回転するように構成されている。詳細には、第1リングギヤ13は、第1中間結合部材81に固定されている。第1リングギヤ13と第1中間結合部材81とは、1つの部材によって形成されていてもよい。
【0023】
第1遊星キャリア14は、各第1プラネタリギヤ12を支持している。各第1プラネタリギヤ12は、第1遊星キャリア14に支持された状態で、自転可能である。第1遊星キャリア14は、回転軸線Oを中心に回転するように構成されている。
【0024】
第1遊星キャリア14は、入力部材7と一体的に回転するように構成されている。詳細には、第1遊星キャリア14は、入力部材7に固定されている。入力部材7は、第1遊星歯車セット1の第1遊星キャリア14に連続的に連結されている。第1遊星キャリア14と入力部材7とは、1つの部材によって形成されていてもよい。
【0025】
第2遊星歯車セット2は、シングルピニオン式の遊星歯車機構である。第2遊星歯車セット2は、回転要素として、第2サンギヤ21、複数の第2プラネタリギヤ22,第2リングギヤ23、および第2遊星キャリア24を有している。
【0026】
第2サンギヤ21は、回転軸線Oを中心に回転するように構成されている。第2サンギヤ21は、第1中間結合部材81の径方向外側に配置されている。詳細には、第2サンギヤ21は環状であって、第1中間結合部材81は第2サンギヤ21を貫通している。第2サンギヤ21と第1中間結合部材81とは相対回転可能である。
【0027】
第2サンギヤ21は、第2中間結合部材82と一体的に回転するように構成されている。詳細には、第2サンギヤ21は、第2中間結合部材82に固定されている。第2サンギヤ21と第2中間結合部材82とは、1つの部材によって形成されていてもよい。
【0028】
各第2プラネタリギヤ22は、第2サンギヤ21に噛み合うように構成されている。各第2プラネタリギヤ22は、第2サンギヤ21の径方向外側に配置されている。詳細には、各第2プラネタリギヤ22は、周方向に間隔をあけて配置されている。
【0029】
各第2プラネタリギヤ22は、第2サンギヤ21の周りを公転するように構成されている。各第2プラネタリギヤ22は、回転軸線Oを中心に回転するように構成されている。また、各第2プラネタリギヤ22は、自転するように構成されている。
【0030】
第2リングギヤ23は、各第2プラネタリギヤ22と噛み合っている。第2リングギヤ23は、回転軸線Oを中心に回転するように構成されている。
【0031】
第2遊星キャリア24は、各第2プラネタリギヤ22を支持している。各第2プラネタリギヤ22は、第2遊星キャリア24に支持された状態で、自転可能である。第2遊星キャリア24は、回転軸線Oを中心に回転するように構成されている。
【0032】
第3遊星歯車セット3は、シングルピニオン式の遊星歯車機構である。第3遊星歯車セット3は、回転要素として、第3サンギヤ31、複数の第3プラネタリギヤ32、第3リングギヤ33、および第3遊星キャリア34を有している。
【0033】
第3サンギヤ31は、第1中間結合部材81と一体的に回転するように構成されている。詳細には、第3サンギヤ31は、第1中間結合部材81に固定されている。第3サンギヤ31と第1中間結合部材81とは、1つの部材によって形成されていてもよい。第1中間結合部材81は、第1遊星歯車セット1の第1リングギヤ13と、第3遊星歯車セット3の第3サンギヤ31とに、連続的に連結されている。第1リングギヤ13と第3サンギヤ31とは、互いに一体的に回転するように構成されている。
【0034】
各第3プラネタリギヤ32は、第3サンギヤ31に噛み合うように構成されている。各第3プラネタリギヤ32は、第3サンギヤ31の径方向外側に配置されている。詳細には、各第3プラネタリギヤ32は、周方向に間隔をあけて配置されている。
【0035】
各第3プラネタリギヤ32は、第3サンギヤ31の周りを公転するように構成されている。各第3プラネタリギヤ32は、回転軸線Oを中心に回転するように構成されている。また、各第3プラネタリギヤ32は、自転するように構成されている。
【0036】
第3リングギヤ33は、各第3プラネタリギヤ32と噛み合っている。第3リングギヤ33は、回転軸線Oを中心に回転するように構成されている。
【0037】
第3リングギヤ33は、第2中間結合部材82と一体的に回転するように構成されている。詳細には、第3リングギヤ33は、第2中間結合部材82に固定されている。第3リングギヤ33と第2中間結合部材82とは、1つの部材によって形成されていてもよい。第2中間結合部材82は、第2遊星歯車セット2の第2サンギヤ21と、第3遊星歯車セット3の第3リングギヤ33とに、連続的に連結されている。第2サンギヤ21と第3リングギヤ33とは、互いに一体的に回転するように構成されている。
【0038】
第3遊星キャリア34は、各第3プラネタリギヤ32を支持している。各第3プラネタリギヤ32は、第3遊星キャリア34に支持された状態で、自転可能である。第3遊星キャリア34は、回転軸線Oを中心に回転するように構成されている。
【0039】
第3遊星キャリア34は、出力部材10と一体的に回転するように構成されている。第3遊星キャリア34は、出力部材10に固定されている。出力部材10は、第3遊星歯車セット3の第3遊星キャリア34に連続的に連結されている。第3遊星キャリア34と出力部材10とは、1つの部材によって形成されていてもよい。出力部材10は、動力を出力する。詳細には、出力部材10は、多段変速機100によって変速された回転速度を有する動力を、出力する。
【0040】
第1クラッチ51は、第1遊星歯車セット1の第1サンギヤ11と、第2遊星歯車セット2の第2リングギヤ23とを、選択的に連結するように構成されている。第1クラッチ51は、たとえば、油圧式のクラッチ機構であって、複数のディスクから構成することができる。
【0041】
第1クラッチ51は、オン状態のとき、第1サンギヤ11と第2リングギヤ23とを連結する。したがって、第1サンギヤ11と第2リングギヤ23とが一体的に回転する。第1クラッチ51は、オフ状態のとき、第1サンギヤ11と第2リングギヤ23との連結を解除する。したがって、第1サンギヤ11と第2リングギヤ23とは、互いに相対的に回転可能である。
【0042】
第2クラッチ52は、第1遊星歯車セット1の第1遊星キャリア14と、第2遊星歯車セット2の第2リングギヤ23とを、選択的に連結するように構成されている。第2クラッチ52は、たとえば、油圧式のクラッチ機構であって、複数のディスクから構成することができる。
【0043】
第2クラッチ52は、オン状態のとき、第1遊星キャリア14と第2リングギヤ23とを連結する。したがって、第1遊星キャリア14と第2リングギヤ23とが一体的に回転する。第2クラッチ52は、オフ状態のとき、第1遊星キャリア14と第2リングギヤ23との連結を解除する。したがって、第1遊星キャリア14と第2リングギヤ23とは、互いに相対的に回転可能である。
【0044】
第3クラッチ53は、第2遊星歯車セット2の第2遊星キャリア24と、第1中間結合部材81とを、選択的に連結するように構成されている。第3クラッチ53は、第2遊星キャリア24と、第1遊星歯車セット1の第1リングギヤ13および第3遊星歯車セット3の第3サンギヤ31とを、選択的に連結するように構成されている。第3クラッチ53は、たとえば、油圧式のクラッチ機構であって、複数のディスクから構成することができる。
【0045】
第3クラッチ53は、オン状態のとき、第2遊星キャリア24と第1中間結合部材81とを連結する。第3クラッチ53は、オン状態のとき、第1中間結合部材81を介して第2遊星キャリア24と第1リングギヤ13および第3サンギヤ31とを連結する。したがって、第2遊星キャリア24と、第1リングギヤ13と、第3サンギヤ31とが一体的に回転する。第3クラッチ53は、オフ状態のとき、第2遊星キャリア24と第1中間結合部材81との連結を解除する。したがって、第2遊星キャリア24は、第1リングギヤ13および第3サンギヤ31に対して、相対的に回転可能である。
【0046】
第4クラッチ54は、第2遊星歯車セット2の第2遊星キャリア24と、第3遊星歯車セット3の第3遊星キャリア34とを、選択的に連結するように構成されている。第4クラッチ54は、たとえば、油圧式のクラッチ機構であって、複数のディスクから構成することができる。
【0047】
第4クラッチ54は、オン状態のとき、第2遊星キャリア24と第3遊星キャリア34とを連結する。したがって、第2遊星キャリア24と第3遊星キャリア34とが一体的に回転する。第4クラッチ54は、オフ状態のとき、第2遊星キャリア24と第3遊星キャリア34との連結を解除する。したがって、第2遊星キャリア24と第3遊星キャリア34とは、互いに相対的に回転可能である。
【0048】
第1ブレーキ61は、第1遊星歯車セット1の第1サンギヤ11とハウジング9とを選択的に連結するように構成されている。
【0049】
第1ブレーキ61は、オン状態のとき、第1サンギヤ11とハウジング9とを連結する。オン状態の第1ブレーキ61が第1サンギヤ11の回転を制動し、第1サンギヤ11は回転不能とされる。第1ブレーキ61は、オフ状態のとき、第1サンギヤ11とハウジング9との連結を解除する。オフ状態の第1ブレーキ61は、第1サンギヤ11の回転を制動せず、第1サンギヤ11は回転可能である。
【0050】
第2ブレーキ62は、第2遊星歯車セット2の第2サンギヤ21および第3遊星歯車セット3の第3リングギヤ33と、ハウジング9とを選択的に連結するように構成されている。
【0051】
第2ブレーキ62は、オン状態のとき、第2サンギヤ21とハウジング9とを連結し、第3リングギヤ33とハウジング9とを連結する。オン状態の第2ブレーキ62が第2サンギヤ21および第3リングギヤ33の回転を制動し、第2サンギヤ21および第3リングギヤ33は回転不能とされる。第2ブレーキ62は、オフ状態のとき、第2サンギヤ21とハウジング9との連結を解除し、第3リングギヤ33とハウジング9との連結を解除する。オフ状態の第2ブレーキ62は、第2サンギヤ21および第3リングギヤ33の回転を制動せず、第2サンギヤ21および第3リングギヤ33は回転可能である。
【0052】
以上のように構成された多段変速機100では、第1~第3遊星歯車セット1~3に、第1~第4クラッチ51~54および第1~第2ブレーキ61~62が、動作可能に結合されている。第1~第4クラッチ51~54と第1~第2ブレーキ61~62とを選択的に係合して、第1~第3遊星歯車セット1~3の回転要素の回転を規制することにより、入力部材7と出力部材10との間に異なるギヤ比のセットが生成される。異なるギヤ比のセットは、少なくとも前進10段のギヤ比と後進1段のギヤ比とを含んでいる。
【0053】
図2は、第1実施形態に係る多段変速機100の各速度段においてオン状態となる各クラッチ51~54または各ブレーキ61~62を示す表である。図2には、各速度段に対応する第1~第4クラッチ51~54および第1~第2ブレーキ61~62の作動状態が図示されている。第1~第4クラッチ51~54および第1~第2ブレーキ61~62の欄に×印が付されている場合、オン(係合)状態にあることを示し、空欄の場合、オフ(非係合)状態にあることを示す。
【0054】
多段変速機100の速度段を前進の第1速(F1)とする際は、第2クラッチ52、第3クラッチ53および第2ブレーキ62をオン状態にし、第1クラッチ51、第4クラッチ54および第1ブレーキ61をオフ状態にする。オン状態の第2クラッチ52が、第1遊星キャリア14と第2リングギヤ23とを連結する。オン状態の第3クラッチが、第2遊星キャリア24と、第1リングギヤ13および第3サンギヤ31とを連結する。オン状態の第2ブレーキ62が、第2サンギヤ21および第3リングギヤ33の回転を制動する。
【0055】
多段変速機100の速度段を前進の第2速(F2)とする際には、第1クラッチ51、第3クラッチ53および第2ブレーキ62をオン状態にし、第2クラッチ52、第4クラッチ54および第1ブレーキ61をオフ状態にする。オン状態の第1クラッチ51が、第1サンギヤ11と第2リングギヤ23とを連結する。オン状態の第3クラッチが、第2遊星キャリア24と、第1リングギヤ13および第3サンギヤ31とを連結する。オン状態の第2ブレーキ62が、第2サンギヤ21および第3リングギヤ33の回転を制動する。
【0056】
多段変速機100の速度段を前進の第3速(F3)にする際には、第1クラッチ51、第2クラッチ52および第2ブレーキ62をオン状態にし、第3クラッチ53、第4クラッチ54および第1ブレーキ61をオフ状態にする。オン状態の第1クラッチ51が、第1サンギヤ11と第2リングギヤ23とを連結する。オン状態の第2クラッチ52が、第1遊星キャリア14と第2リングギヤ23とを連結する。オン状態の第2ブレーキ62が、第2サンギヤ21および第3リングギヤ33の回転を制動する。
【0057】
多段変速機100の速度段を前進の第4速(F4)にする際には、第1クラッチ51、第4クラッチ54および第2ブレーキ62をオン状態にし、第2クラッチ52、第3クラッチ53および第1ブレーキ61をオフ状態にする。オン状態の第1クラッチ51が、第1サンギヤ11と第2リングギヤ23とを連結する。オン状態の第4クラッチ54が、第2遊星キャリア24と第3遊星キャリア34とを連結する。オン状態の第2ブレーキ62が、第2サンギヤ21および第3リングギヤ33の回転を制動する。
【0058】
多段変速機100の速度段を前進の第5速(F5)にする際には、第4クラッチ54、第1ブレーキ61および第2ブレーキ62をオン状態にし、第1クラッチ51、第2クラッチ52および第3クラッチ53をオフ状態にする。オン状態の第4クラッチ54が、第2遊星キャリア24と第3遊星キャリア34とを連結する。オン状態の第1ブレーキ61が、第1サンギヤ11の回転を制動する。オン状態の第2ブレーキ62が、第2サンギヤ21および第3リングギヤ33の回転を制動する。
【0059】
多段変速機100の速度段を前進の第6速(F6)にする際には、第2クラッチ52、第4クラッチ54および第2ブレーキ62をオン状態にし、第1クラッチ51、第3クラッチ53および第1ブレーキ61をオフ状態にする。オン状態の第2クラッチ52が、第1遊星キャリア14と第2リングギヤ23とを連結する。オン状態の第4クラッチ54が、第2遊星キャリア24と第3遊星キャリア34とを連結する。オン状態の第2ブレーキ62が、第2サンギヤ21および第3リングギヤ33の回転を制動する。
【0060】
多段変速機100の速度段を前進の第7速(F7)にする際には、第2クラッチ52、第4クラッチ54および第1ブレーキ61をオン状態にし、第1クラッチ51、第3クラッチ53および第2ブレーキ62をオフ状態にする。オン状態の第2クラッチ52が、第1遊星キャリア14と第2リングギヤ23とを連結する。オン状態の第4クラッチ54が、第2遊星キャリア24と第3遊星キャリア34とを連結する。オン状態の第1ブレーキ61が、第1サンギヤ11の回転を制動する。
【0061】
多段変速機100の速度段を前進の第8速(F8)にする際には、第2クラッチ52、第3クラッチ53および第4クラッチ54をオン状態にし、第1クラッチ51、第1ブレーキ61および第2ブレーキ62をオフ状態にする。オン状態の第2クラッチ52が、第1遊星キャリア14と第2リングギヤ23とを連結する。オン状態の第3クラッチが、第2遊星キャリア24と、第1リングギヤ13および第3サンギヤ31とを連結する。オン状態の第4クラッチ54が、第2遊星キャリア24と第3遊星キャリア34とを連結する。
【0062】
多段変速機100の速度段を前進の第9速(F9)にする際には、第3クラッチ53、第4クラッチ54および第1ブレーキ61をオン状態にし、第1クラッチ51、第2クラッチ52および第2ブレーキ62をオフ状態にする。オン状態の第3クラッチが、第2遊星キャリア24と、第1リングギヤ13および第3サンギヤ31とを連結する。オン状態の第4クラッチ54が、第2遊星キャリア24と第3遊星キャリア34とを連結する。オン状態の第1ブレーキ61が、第1サンギヤ11の回転を制動する。
【0063】
多段変速機100の速度段を前進の第10速(F10)にする際には、第2クラッチ52、第3クラッチ53および第1ブレーキ61をオン状態にし、第1クラッチ51、第4クラッチ54および第2ブレーキ62をオフ状態にする。オン状態の第2クラッチ52が、第1遊星キャリア14と第2リングギヤ23とを連結する。オン状態の第3クラッチが、第2遊星キャリア24と、第1リングギヤ13および第3サンギヤ31とを連結する。オン状態の第1ブレーキ61が、第1サンギヤ11の回転を制動する。
【0064】
多段変速機100の速度段を後進の第1速(R1)にする際には、第1クラッチ51、第4クラッチ54および第1ブレーキ61をオン状態にし、第2クラッチ52、第3クラッチ53および第2ブレーキ62をオフ状態にする。オン状態の第1クラッチ51が、第1サンギヤ11と第2リングギヤ23とを連結する。オン状態の第4クラッチ54が、第2遊星キャリア24と第3遊星キャリア34とを連結する。オン状態の第1ブレーキ61が、第1サンギヤ11の回転を制動する。
【0065】
多段変速機100の速度段を追加の速度段である前進の第11速(F11)にする際には、第1クラッチ51、第3クラッチ53および第1ブレーキ61をオン状態にし、第2クラッチ52、第4クラッチ54および第2ブレーキ62をオフ状態にする。オン状態の第1クラッチ51が、第1サンギヤ11と第2リングギヤ23とを連結する。オン状態の第3クラッチが、第2遊星キャリア24と、第1リングギヤ13および第3サンギヤ31とを連結する。オン状態の第1ブレーキ61が、第1サンギヤ11の回転を制動する。
【0066】
ここで、各遊星歯車セット1~3に関して、サンギヤの歯数をa、リングギヤの歯数をb、サンギヤの回転数比をNa、リングギヤの回転数比をNb、遊星キャリアの回転数比をNcとすると、以下の関係式が成立する。なお、各ギヤの回転数比とは、入力部材7の回転数に対する各ギヤの回転数の比をいう。
【0067】
a・Na+b・Nb=(a+b)・Nc
各遊星歯車セット1~3における、サンギヤの歯数に対するリングギヤの歯数の比(歯数比)は、図3に示される通りである。なお図3は、第1実施形態に係る多段変速機100の各遊星歯車セット1~3における歯数比を示す表である。
【0068】
図2に示される、上述した各速度段における減速比は、上記の関係式と、図3に示される歯数比とを用いて、求めることができる。
【0069】
なお、図2に示される段間比とは、各速度段の減速比の比を表す。詳細には、隣同士の速度段の減速比について、低速段の減速比を高速段の減速比で除した値を段間比という。総段間比とは、最低速段の減速比を最高速段の減速比で除した値をいう。本実施形態の多段変速機100は、前進10段の速度段を有している。本実施形態の多段変速機100の総段間比は、前進の第1速の減速比を、前進の第10速の減速比で除した値である。
【0070】
本実施形態の多段変速機100は、前進の速度段を10段有するとともに後進の速度段を1段有しており、多段変速機100の速度段が増加している。これにより、多段変速機100を搭載する車両の燃費を改善することができ、多段変速機100を搭載する車両の走行性能を向上することができる。
【0071】
本実施形態では、前進10段、後進1段の速度段を実現するために、多段変速機100は3つの遊星歯車セット1~3と合計6つの制御要素(第1~第4クラッチ51~54および第1~第2ブレーキ61~62)とを有しており、部品数が低減している。これにより、多段変速機100の重量低減とコンパクト化とを実現することができる。
【0072】
本実施形態の多段変速機100では、図2に示される総段間比が8.23であり、総段間比が拡大している。これにより、多段変速機100を搭載する車両の最大牽引力を向上でき、最大車速も向上することができる。
【0073】
[第2実施形態]
図4は、第2実施形態に係る多段変速機100の概略図である。図5は、第2実施形態に係る多段変速機100の各速度段においてオン状態となる各クラッチ51~54または各ブレーキ61~62を示す表である。図6は、第2実施形態に係る多段変速機100の各遊星歯車セット1~3における歯数比を示す表である。
【0074】
第2実施形態に係る多段変速機100は、図6に示されるように、3つ以下の遊星歯車セット1~3が、少なくとも1つのダブルピニオン式の遊星歯車機構を含む点で、第1実施形態とは異なっている。具体的に、第2実施形態に係る多段変速機100においては、第2遊星歯車セット2がダブルピニオン式の遊星歯車機構として構成されている。
【0075】
第2遊星歯車セット2の第2プラネタリギヤ22は、内側ピニオンギヤと、外側ピニオンギヤとを有している。内側ピニオンギヤは、第2サンギヤ21と噛み合っている。外側ピニオンギヤは、第2リングギヤ23と噛み合っている。内側ピニオンギヤと外側ピニオンギヤ同士も噛み合っている。内側ピニオンギヤは第2リングギヤ23からは径方向内側に離れて配置され、外側ピニオンギヤは第2サンギヤ21からは径方向外側に離れて配置されている。第2遊星キャリア24は、内側ピニオンギヤと外側ピニオンギヤとの両方を、自転可能に支持している。
【0076】
図4に示されるように、第1クラッチ51は、第1遊星歯車セット1の第1サンギヤ11と、第2遊星歯車セット2の第2遊星キャリア24とを、選択的に連結するように構成されている。第1クラッチ51は、オン状態のとき、第1サンギヤ11と第2遊星キャリア24とを選択的に連結するように構成されている。したがって、第1サンギヤ11と第2遊星キャリア24とが一体的に回転する。第1クラッチ51は、オフ状態のとき、第1サンギヤ11と第2遊星キャリア24との連結を解除する。したがって、第1サンギヤ11と第2遊星キャリア24とは、互いに相対的に回転可能である。
【0077】
第2クラッチ52は、第1遊星歯車セット1の第1遊星キャリア14と、第2遊星歯車セット2の第2遊星キャリア24とを、選択的に連結するように構成されている。第2クラッチ52は、オン状態のとき、第1遊星キャリア14と第2遊星キャリア24とを連結する。したがって、第1遊星キャリア14と第2遊星キャリア24とが一体的に回転する。第2クラッチ52は、オフ状態のとき、第1遊星キャリア14と第2遊星キャリア24との連結を解除する。したがって、第1遊星キャリア14と第2遊星キャリア24とは、互いに相対的に回転可能である。
【0078】
第3クラッチ53は、第2遊星歯車セット2の第2リングギヤ23と、第1中間結合部材81とを、選択的に連結するように構成されている。第3クラッチ53は、第2リングギヤ23と、第1遊星歯車セット1の第1リングギヤ13および第3遊星歯車セット3の第3サンギヤ31とを、選択的に連結するように構成されている。
【0079】
第3クラッチ53は、オン状態のとき、第2リングギヤ23と第1中間結合部材81とを連結する。第3クラッチ53は、オン状態のとき、第1中間結合部材81を介して、第2リングギヤ23と第1リングギヤ13とを連結し、かつ第2リングギヤ23と第3サンギヤ31とを連結する。したがって、第2リングギヤ23と、第1リングギヤ13と、第3サンギヤ31とが一体的に回転する。第3クラッチ53は、オフ状態のとき、第2リングギヤ23と第1中間結合部材81との連結を解除する。したがって、第2リングギヤ23は、第1リングギヤ13および第3サンギヤ31に対して、相対的に回転可能である。
【0080】
第4クラッチ54は、第2遊星歯車セット2の第2リングギヤ23と、第3遊星歯車セット3の第3遊星キャリア34とを、選択的に連結するように構成されている。第4クラッチ54は、オン状態のとき、第2リングギヤ23と第3遊星キャリア34とを連結する。したがって、第2リングギヤ23と第3遊星キャリア34とが一体的に回転する。第4クラッチ54は、オフ状態のとき、第2リングギヤ23と第3遊星キャリア34との連結を解除する。したがって、第2リングギヤ23と第3遊星キャリア34とは、互いに相対的に回転可能である。
【0081】
このように構成された第2実施形態の多段変速機100においても、図5に示されるように、第1~第4クラッチ51~54および第1~第2ブレーキ61~62を選択的に係合して、第1~第3遊星歯車セット1~3の回転要素の回転を規制することにより、前進10段、後進1段のギヤ比を実現することができる。第2実施形態の多段変速機100においても、多段変速機100の速度段を増加でき、部品数を低減でき、総段間比を拡大できる効果を、第1実施形態と同様に得ることができる。
【0082】
前述の実施形態の多段変速機100は、多段変速機を備える任意の機械に使用され得るが、ダンプトラックなどの建設機械および鉱山機械に、特に適用可能である。
【0083】
今回開示された実施形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0084】
1 第1遊星歯車セット、2 第2遊星歯車セット、3 第3遊星歯車セット、7 入力部材、9 ハウジング、10 出力部材、11 第1サンギヤ、12 第1プラネタリギヤ、13 第1リングギヤ、14 第1遊星キャリア、21 第2サンギヤ、22 第2プラネタリギヤ、23 第2リングギヤ、24 第2遊星キャリア、31 第3サンギヤ、32 第3プラネタリギヤ、33 第3リングギヤ、34 第3遊星キャリア、51 第1クラッチ、52 第2クラッチ、53 第3クラッチ、54 第4クラッチ、61 第1ブレーキ、62 第2ブレーキ、81 第1中間結合部材、82 第2中間結合部材、100 多段変速機、O 回転軸線。
図1
図2
図3
図4
図5
図6