(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022184486
(43)【公開日】2022-12-13
(54)【発明の名称】画像形成システム及び画像形成方法
(51)【国際特許分類】
G06F 3/12 20060101AFI20221206BHJP
H04N 1/00 20060101ALI20221206BHJP
B41J 5/30 20060101ALI20221206BHJP
【FI】
G06F3/12 371
G06F3/12 320
G06F3/12 329
G06F3/12 347
G06F3/12 391
H04N1/00 127B
B41J5/30 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021092369
(22)【出願日】2021-06-01
(71)【出願人】
【識別番号】000006150
【氏名又は名称】京セラドキュメントソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003443
【氏名又は名称】弁理士法人TNKアジア国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100129997
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 米藏
(72)【発明者】
【氏名】エドゥワルド ジェイ・シラドル
【テーマコード(参考)】
2C187
5C062
【Fターム(参考)】
2C187AC06
2C187AD04
2C187AD14
2C187BF14
2C187BG03
2C187BG15
2C187FB12
2C187FB15
2C187FC17
5C062AA05
5C062AA13
5C062AA29
5C062AB22
5C062AB38
5C062AB40
5C062AC04
5C062AC22
5C062AC34
(57)【要約】
【課題】ドキュメント単位よりも小さい単位でハッシュ値への置き換えを行って、印刷処理に要するデータの取扱量を低減し、記憶領域を節約する。
【解決手段】画像形成装置1と端末装置2とを含んで構成される画像形成システム11であって、端末装置2は、印刷データに含まれるオブジェクトデータが画像形成装置1に保管されていると認められる場合、オブジェクトデータを当該オブジェクトデータに対応するハッシュ値に置き換え、当該置き換えを行った印刷データを画像形成装置1に送信し、画像形成装置1は、印刷データに含まれるハッシュ値を保管しているオブジェクトデータに戻し、印刷処理を実行する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録媒体に画像を形成して印刷処理を行う画像形成部を備える画像形成装置と、
印刷対象となるドキュメントを前記画像形成装置で解析可能な印刷データに変換し、当該変換で得られた印刷データを前記画像形成装置に送信することにより、前記画像形成装置に対して前記ドキュメントの印刷を要求する印刷制御部を備える端末装置と、を含んで構成される画像形成システムであって、
前記画像形成装置は、
前記端末装置から送信されてきた前記印刷データを解析することによりビットマップデータを生成し、当該生成したビットマップデータに基づく前記印刷処理を前記画像形成部に実行させる制御部と、
前記ドキュメントを構成する各オブジェクトのオブジェクトデータを、当該オブジェクトデータに対応するハッシュ値と関連付けて記憶し保管するオブジェクトデータ記憶部と、を更に備え、
前記制御部は、更に、前記端末装置から送信されてきた前記印刷データに含まれているハッシュ値を、前記オブジェクトデータ記憶部に保管されている、当該ハッシュ値に対応するオブジェクトデータに置き換え、当該置き換えを行った前記印刷データを解析して前記印刷処理を実行し、
前記端末装置は、
前記画像形成装置に保管されているオブジェクトデータに対応するハッシュ値を記憶するハッシュ値記憶部を更に備え、
前記印刷制御部は、更に、前記変換で得られた印刷データに含まれるオブジェクトデータに対応するハッシュ値を生成し、当該生成したハッシュ値が前記ハッシュ値記憶部に記憶されている場合、前記オブジェクトデータを当該生成したハッシュ値に置き換え、当該置き換えを行った前記印刷データを前記画像形成装置に送信する画像形成システム。
【請求項2】
前記画像形成装置の前記制御部は、更に、
前記端末装置から送信されてきた前記印刷データに含まれるオブジェクトデータに対応するハッシュ値を生成し、当該生成したハッシュ値に関連付けて、当該ハッシュ値に対応するオブジェクトデータを前記オブジェクトデータ記憶部に記憶させて保管する請求項1に記載の画像形成システム。
【請求項3】
前記画像形成装置の前記制御部は、予め定められた条件に基づいて決定される保管優先度に基づいて、前記オブジェクトデータ記憶部にオブジェクトデータを記憶又は削除する請求項2に記載の画像形成システム。
【請求項4】
前記予め定められた条件に、オブジェクトデータの使用頻度及びデータ量が含まれ、
前記画像形成装置の前記制御部は、使用頻度が高く、なおかつデータ量が大きいほど、前記保管優先度を上位にする請求項3に記載の画像形成システム。
【請求項5】
前記画像形成装置の前記制御部は、前記オブジェクトデータ記憶部に保管されているオブジェクトデータに対応するハッシュ値を、前記端末装置に送信し、
前記印刷制御部は、前記画像形成装置から送信されてきたハッシュ値を受信すると、当該受信した内容に基づいて、前記ハッシュ値記憶部を更新する請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の画像形成システム。
【請求項6】
記録媒体に画像を形成して印刷処理を行う画像形成部を備える画像形成装置と、
印刷対象となるドキュメントを前記画像形成装置で解析可能な印刷データに変換し、当該変換で得られた印刷データを前記画像形成装置に送信することにより、前記画像形成装置に対して前記ドキュメントの印刷を要求する印刷制御ステップを有する端末装置と、を含んで構成される画像形成システムによる画像形成方法であって、
前記画像形成装置は、
前記端末装置から送信されてきた前記印刷データを解析することによりビットマップデータを生成し、当該生成したビットマップデータに基づく前記印刷処理を前記画像形成部に実行させる制御ステップと、
前記ドキュメントを構成する各オブジェクトのオブジェクトデータを、当該オブジェクトデータに対応するハッシュ値と関連付けて記憶し保管する保管ステップとを有し、
前記制御ステップでは、更に、前記端末装置から送信されてきた前記印刷データに含まれているハッシュ値を、前記オブジェクトデータ記憶部に保管されている、当該ハッシュ値に対応するオブジェクトデータに置き換え、当該置き換えを行った前記印刷データを解析して前記印刷処理を実行し、
前記端末装置は、
前記画像形成装置に保管されているオブジェクトデータに対応するハッシュ値を記憶するハッシュ値記憶ステップを有し、
前記印刷制御ステップでは、更に、前記変換で得られた印刷データに含まれるオブジェクトデータに対応するハッシュ値を生成し、当該生成したハッシュ値が前記ハッシュ値記憶ステップで記憶されている場合、前記オブジェクトデータを当該オブジェクトデータに対応するハッシュ値に置き換え、当該置き換えを行った前記印刷データを前記画像形成装置に送信する、画像形成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成システム及び画像形成方法に関し、特に、効率の良い印刷を実現するための技術に関する。
【背景技術】
【0002】
画像形成システムでは、ネットワーク上の画像形成装置に対して、パソコンなどの端末装置が指示を出すことにより、当該画像形成装置において印刷処理を実行する技術が提案されている。一般的な画像形成システムでは、端末装置において、ユーザーにより、印刷対象となるドキュメントが指定されると、当該ドキュメントは画像形成装置で解析可能なページ技術言語(PDL:Page Description Language)による記述のデータに変換されて、ネットワークを通じて画像形成装置に向けて送信される。
【0003】
画像形成装置は、端末装置から送信されてきた上記データを展開してビットマップデータ(ラスターイメージデータ)に変換し、このビットマップデータに基づく画像形成処理(印刷処理)を実行する。
【0004】
下記特許文献1,2では、画像形成装置で、端末装置から送信されてきたデータを展開することにより生成されたビットマップデータを、当該ビットマップデータから生成されたハッシュ値と関連付けて記憶しておき、それ以降に、記憶しているハッシュ値と一致するハッシュ値が端末装置から送信されてきた場合に、当該ハッシュ値と関連付けて記憶されているビットマップデータに基づく印刷処理を実行することが提案されている。
【0005】
すなわち、上記特許文献1,2に記載された発明では、同一のドキュメントを、再度、印刷する場合において、ビットマップデータの生成処理を省略することができ、印刷処理の簡略化を図ることが可能になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2018-199277号公報
【特許文献2】特開2019-001003号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところが、上記特許文献1,2に記載された発明では、ドキュメント全体のビットマップデータをまるまる記憶させておかなければならず、大量のデータを記憶させておく必要があり、あまり実用的であるとは言えない。また、同一のドキュメントでしか、印刷処理を簡略化することができない。
【0008】
本発明は、上記の事情に鑑みなされたものであり、ドキュメント単位よりも小さい単位でハッシュ値への置き換えを行って、印刷処理に要するデータの取扱量を低減し、記憶領域を節約することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一局面に係る画像形成システムは、記録媒体に画像を形成して印刷処理を行う画像形成部を備える画像形成装置と、印刷対象となるドキュメントを前記画像形成装置で解析可能な印刷データに変換し、当該変換で得られた印刷データを前記画像形成装置に送信することにより、前記画像形成装置に対して前記ドキュメントの印刷を要求する印刷制御部を備える端末装置と、を含んで構成される画像形成システムであって、前記画像形成装置は、前記端末装置から送信されてきた前記印刷データを解析することによりビットマップデータを生成し、当該生成したビットマップデータに基づく前記印刷処理を前記画像形成部に実行させる制御部と、前記ドキュメントを構成する各オブジェクトのオブジェクトデータを、当該オブジェクトデータに対応するハッシュ値と関連付けて記憶し保管するオブジェクトデータ記憶部と、を更に備え、前記制御部は、更に、前記端末装置から送信されてきた前記印刷データに含まれているハッシュ値を、前記オブジェクトデータ記憶部に保管されている、当該ハッシュ値に対応するオブジェクトデータに置き換え、当該置き換えを行った前記印刷データを解析して前記印刷処理を実行し、前記端末装置は、前記画像形成装置に保管されているオブジェクトデータに対応するハッシュ値を記憶するハッシュ値記憶部を更に備え、前記印刷制御部は、更に、前記変換で得られた印刷データに含まれるオブジェクトデータに対応するハッシュ値を生成し、当該生成したハッシュ値が前記ハッシュ値記憶部に記憶されている場合、前記オブジェクトデータを当該生成したハッシュ値に置き換え、当該置き換えを行った前記印刷データを前記画像形成装置に送信する。
【0010】
また、本発明の一局面に係る画像形成方法は、記録媒体に画像を形成して印刷処理を行う画像形成部を備える画像形成装置と、
【0011】
印刷対象となるドキュメントを前記画像形成装置で解析可能な印刷データに変換し、当該変換で得られた印刷データを前記画像形成装置に送信することにより、前記画像形成装置に対して前記ドキュメントの印刷を要求する印刷制御ステップを有する端末装置と、を含んで構成される画像形成システムによる画像形成方法であって、前記画像形成装置は、前記端末装置から送信されてきた前記印刷データを解析することによりビットマップデータを生成し、当該生成したビットマップデータに基づく前記印刷処理を前記画像形成部に実行させる制御ステップと、前記ドキュメントを構成する各オブジェクトのオブジェクトデータを、当該オブジェクトデータに対応するハッシュ値と関連付けて記憶し保管する保管ステップとを有し、前記制御ステップでは、更に、前記端末装置から送信されてきた前記印刷データに含まれているハッシュ値を、前記オブジェクトデータ記憶部に保管されている、当該ハッシュ値に対応するオブジェクトデータに置き換え、当該置き換えを行った前記印刷データを解析して前記印刷処理を実行し、前記端末装置は、前記画像形成装置に保管されているオブジェクトデータに対応するハッシュ値を記憶するハッシュ値記憶ステップを有し、前記印刷制御ステップでは、更に、前記変換で得られた印刷データに含まれるオブジェクトデータに対応するハッシュ値を生成し、当該生成したハッシュ値が前記ハッシュ値記憶ステップで記憶されている場合、前記オブジェクトデータを当該オブジェクトデータに対応するハッシュ値に置き換え、当該置き換えを行った前記印刷データを前記画像形成装置に送信する。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、ドキュメント単位ではなく、それより小さい、ドキュメントを構成するオブジェクト単位でドキュメントのデータをハッシュ値に置き換えるため、画像形成装置において、ドキュメント全体のデータをハッシュ値としてまるまる保管させておく必要がない。このため、ハッシュ値を用いてデータを低減した上で印刷を行う場合において、印刷処理に要するデータ量が更に削減可能となり、記憶領域を節約することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の一実施形態に係る画像形成システムの全体を示す図である。
【
図2】印刷対象となるドキュメントの一例を示す図である。
【
図3】ドキュメントに含まれるオブジェクトがPDLによる記述に変換された状態を示す図である。
【
図4】画像形成装置の主要内部構成を概略的に示す機能ブロック図である。
【
図5】
図3に示したオブジェクトデータに対応するハッシュ値を示す図である。
【
図6】オブジェクト属性情報記憶部に記憶されるデータ構成の一例を示す図である。
【
図7】画像形成装置から端末装置に対してハッシュ値が送信されるイメージを示す図である。
【
図8】ユーザーからドキュメントの印刷が指示された場合に、端末装置で行われる処理を示すフローチャートである。
【
図9】オブジェクトデータがハッシュ値に置き換えられることによって得られた印刷データを示す図である。
【
図10A】端末装置から送信されてきた印刷データを受信した場合に画像形成装置で行われる処理を示すフローチャートである。
【
図10B】端末装置から送信されてきた印刷データを受信した場合に画像形成装置で行われる処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の一実施形態に係る画像形成システム及び画像形成方法について図面を参照して説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る画像形成システムの全体を示す図である。
【0015】
一実施形態に係る画像形成システム11は、インターネット等のネットワーク上に存在する、画像形成装置1と、端末装置2と、を含んで構成されている。画像形成装置1は、例えば、コピー機能、プリンター機能、スキャナー機能、及びファクシミリ機能のような複数の機能を兼ね備えた複合機である。
【0016】
端末装置2は、例えば、パソコンであり、制御ユニット21と、操作部22と、表示部23と、通信部24と、記憶装置25と、を備える。これらの各構成は、互いに通信パスによりデータ又は信号の送受信が可能とされている。
【0017】
操作部22は、キーボードやマウス等から構成され、制御ユニット21にコマンドや文字を入力し、更に、表示部23における画面上のポインターを操作したりする。操作部22は、ユーザーによる操作に基づく、ユーザーからの指示の入力を受け付ける。表示部23は、LCD(Liquid Crystal Display)等からなり、制御ユニット21からの応答やデータ結果を表示する。
【0018】
通信部24は、ローカルエリア内、又はインターネット上の画像形成装置1等の外部装置と種々のデータの送受信を行う通信インターフェイスである。
【0019】
記憶装置25は、HDD(Hard Disk Drive)又はSSD(Solid State Drive)等の大容量記憶装置であり、各種の制御プログラムを記憶する。また、端末装置2には、プログラムとしてのプリンタードライバー250がインストールされている。当該プリンタードライバー250は記憶装置25に記憶されている。また、記憶装置25は、ハッシュ値記憶部251を備える。ハッシュ値記憶部251については、後で説明する。
【0020】
制御ユニット21は、プロセッサー、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、及び専用のハードウェア回路を含んで構成される。プロセッサーは、例えばCPU(Central Processing Unit)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、又はMPU(Micro Processing Unit)等である。制御ユニット21は、制御部210と、印刷制御部211と、を備えている。
【0021】
制御ユニット21は、記憶装置25に記憶されている制御プログラムに従った上記プロセッサーによる動作により、制御部210として機能し、記憶装置25に記憶されているプリンタードライバー250に従った上記プロセッサーによる動作により、印刷制御部211として機能する。但し、制御部210等は、制御ユニット21による制御プログラムに従った動作によらず、それぞれハードウェア回路により構成することも可能である。以下、特に触れない限り、各実施形態について同様である。
【0022】
制御部210は、端末装置2の全体的な動作制御を司る。制御部210は、操作部22、表示部23、通信部24、及び記憶装置25と接続され、これら各部の駆動制御等を行う。
【0023】
印刷制御部211は、印刷対象となるドキュメントを画像形成装置1で解析可能な印刷データに変換し、当該変換で得られた印刷データを、通信部24を介して、画像形成装置1に送信することにより、画像形成装置1に対してドキュメントの印刷を要求する。
【0024】
図2は、印刷対象となるドキュメントの一例を示す図である。
図2に示すドキュメント51は、複数のオブジェクトJ1~J3を含む画像を示す。オブジェクトJ1はロゴマーク、J2は文字列、J3はイラストを示している。例えば、印刷制御部211は、
図2に示したドキュメント51についてのユーザーからの印刷指示を、操作部22を介して受け付けると、ドキュメント51をページ技術言語(PDL)による記述に変換して印刷データを生成し、当該生成した印刷データを、通信部24を介して、画像形成装置1に送信することにより画像形成装置1に対して印刷を要求する。
【0025】
図3は、ドキュメント51に含まれるオブジェクトJ1~J3がPDLによる記述に変換された状態を示す図である。印刷データ52は、ドキュメント51をPDLによる記述に変換したものである。印刷データ52には、オブジェクトデータD1~D3が含まれている。オブジェクトデータD1~D3はそれぞれ、オブジェクトJ1~J3をPDLによる記述に変換したものである。
【0026】
図4は、画像形成装置1の主要内部構成を概略的に示す機能ブロック図である。画像形成装置1は、制御ユニット10、原稿給送部6、原稿読取部5、画像形成部12、定着部13、給紙部14、操作部47、ネットワークインターフェイス部91、及び記憶装置7を含んで構成されている。
【0027】
原稿給送部6は、原稿読取部5の上面に図略のヒンジ等によって開閉可能に構成され、原稿給送部6は、図略のプラテンガラス上に載置された原稿を読み取る場合に原稿押さえカバーとして機能する。また、原稿給送部6は、ADF(Auto Document Feeder)であり、図略の原稿載置トレイを備え、原稿載置トレイに載置されている原稿を原稿読取部5へ供給する。
【0028】
画像形成装置1で原稿読取動作が行われる場合について説明する。原稿給送部6により原稿読取部5へ供給された原稿、又は上記プラテンガラス上に載置されている原稿の画像を、原稿読取部5が光学的に読み取り、そして画像データを生成する。原稿読取部5により生成された画像データは、図略の画像メモリー等に保存される。
【0029】
画像形成装置1で画像形成動作が行われる場合について説明する。原稿読取動作により生成された画像データや、画像メモリー等に記憶されている画像データ、ネットワーク接続されたコンピューターから受信した画像データ等に基づいて、画像形成部12が、給紙部14から給紙される記録媒体としての記録紙にトナー像を形成する。
【0030】
定着部13は、画像形成部12によりトナー像が形成された記録紙を加熱及び加圧して、トナー像を記録紙に定着させるものであり、定着処理が施された記録紙は図略の排出トレイに排出される。給紙部14は、給紙カセットを備える。
【0031】
操作部47は、各種の指示を受け付けるためのハードキー等を備え、画像形成装置1が実行可能な各種動作及び処理について、操作者から、画像形成動作実行指示等の指示を受け付ける。操作部47は、操作者への操作案内等を表示する表示部473を備えている。また、操作部47は、表示部473が有するタッチパネルを介して、表示部473に表示されている操作画面に対するユーザーによる操作(タッチ操作)に基づく、ユーザーからの指示の入力を受け付ける。
【0032】
表示部473は、LCD等からなる。表示部473は、タッチパネルを備えている。操作者は画面表示されるボタンやキーに触れる操作を行うと、タッチパネルにより、タッチ操作された位置に対応付けられた指示が受け付けられる。
【0033】
ネットワークインターフェイス部91は、ローカルエリア内、又はインターネット上の外部装置と種々のデータの送受信を行う通信インターフェイスである。例えば、ネットワークインターフェイス部91は、外部装置である端末装置2から送信されてくる印刷データを受信する。
【0034】
記憶装置7は、HDD又はSSD等の大容量記憶装置である。記憶装置7は、各種の制御プログラムを記憶すると共に、ハッシュ値記憶部70と、オブジェクトデータ記憶部71と、オブジェクト属性情報記憶部72と、を有する。ハッシュ値記憶部70、オブジェクトデータ記憶部71、及びオブジェクト属性情報記憶部72については、後で説明する。
【0035】
制御ユニット10は、プロセッサー、RAM、ROM、及び専用のハードウェア回路を含んで構成される。プロセッサーは、例えばCPU、ASIC、又はMPU等である。制御ユニット10は、制御部100を備えている。
【0036】
制御ユニット10は、記憶装置7に記憶されている制御プログラムに従った上記プロセッサーによる動作により、制御部100として機能する。但し、制御部100は、制御ユニット10による制御プログラムに従った動作によらず、それぞれハードウェア回路により構成することも可能である。以下、特に触れない限り、各実施形態について同様である。
【0037】
制御部100は、画像形成装置1の全体的な動作制御を司る。制御部100は、原稿給送部6、原稿読取部5、画像形成部12、定着部13、給紙部14、操作部47、ネットワークインターフェイス部91、及び記憶装置7と接続され、これら各部の駆動制御等を行う。例えば、制御部100は、端末装置2から送信されてきた印刷データを解析することによりビットマップデータを生成し、当該生成したビットマップデータに基づく印刷処理を画像形成部12等に実行させる。
【0038】
例えば、制御部100は、端末装置2から送信されてきた、
図3に示したような印刷データ52を受信すると、印刷データ52に含まれるオブジェクトデータD1~D3を解析することによりビットマップデータを生成し、当該生成したビットマップデータに基づく印刷処理を画像形成部12等に実行させる。
【0039】
また、制御部100は、端末装置2から送信されてきた印刷データに含まれるオブジェクトデータDからハッシュ値を生成し、当該生成したハッシュ値が新規のものである場合、識別番号Nを付し、当該識別番号Nに関連付けて、生成したハッシュ値をハッシュ値記憶部70に登録する。
【0040】
例えば、制御部100は、予め定められたハッシュ関数を用いて、オブジェクトデータDから、32桁の16進数で表されるハッシュ値を生成する。すなわち、制御部100は、オブジェクトデータDに対応するハッシュ値を生成する。
図5は、
図3に示した印刷データ52のオブジェクトデータD1~D3に対応するハッシュ値を示す図である。ハッシュ値H1~H3はそれぞれ、オブジェクトデータD1~D3から上記ハッシュ関数を用いて生成されたハッシュ値である。
【0041】
また、制御部100は、ハッシュ値Hを識別する識別番号Nに関連付けて、当該ハッシュ値Hに対応するオブジェクトデータDをオブジェクトデータ記憶部71に記憶し保管する。但し、オブジェクトデータDのデータ量は小さくないので、オブジェクトデータ記憶部71に保管される各オブジェクトデータDの合計データ量又は数については、上限を設定する。
【0042】
制御部100は、予め定められた条件に基づいて決定される保管優先度Rに基づいて、オブジェクトデータ記憶部71にオブジェクトデータDを記憶又は削除する。保管優先度Rについては、後で詳しく説明する。
【0043】
制御部100は、更に、ハッシュ値Hを識別する識別番号Nに関連付けて、当該ハッシュ値Hに対応するオブジェクトデータDの属性情報を、識別番号N毎にオブジェクト属性情報記憶部72に記憶させる。
図6は、オブジェクト属性情報記憶部72に記憶されるデータ構成の一例を示す図である。オブジェクト属性情報記憶部72に記憶される属性情報には、オブジェクトデータDの使用回数(印刷に使用された回数)、データ量、使用頻度、データ比率、保管優先度R、及び保管フラグFが含まれている。オブジェクト属性情報記憶部72には、各オブジェクトデータDの識別番号Nと、識別番号N毎の属性情報とからなるデータ群が記憶される。
【0044】
使用頻度は、総使用回数に対する割合を示し、データ比率は、総データ量に対する割合を示す。保管優先度Rは、使用頻度とデータ比率との平均値を示している。保管フラグFは、オブジェクトデータDをオブジェクトデータ記憶部71に保管させるか否かを示すフラグである。
【0045】
制御部100は、保管フラグFが「1」である場合、対応するオブジェクトデータDをオブジェクトデータ記憶部71で保管し、保管フラグFが「0」である場合、対応するオブジェクトデータDをオブジェクトデータ記憶部71で保管しない。本実施形態では、制御部100は、保管フラグFを「1」にする割合を、全体の50%に設定し、更に、保管優先度Rが上位6個(全体12個のうちの50%)の保管フラグFを「1」にするように設定している。
【0046】
そのため、
図6に示したようなオブジェクトの属性情報が、オブジェクト属性情報記憶部72に記憶されている場合、識別番号Nが「0002」、「0004」~「0006」、「0010」、「0011」であるハッシュ値Hに対応するオブジェクトデータDがオブジェクトデータ記憶部71で保管される。
【0047】
なお、ここでは、全体に対する相対的な数値(全体の50%)を用いて、保管フラグFを「1」にする個数を設定する場合について説明しているが、別の実施形態として、制御部100は、全体に対する相対的な数値ではなく、絶対的な数値を用いて、保管フラグFを「1」にする個数を限定するようにしてもよい。例えば、保管フラグFを「1」に設定する個数を予め設定しておく。
【0048】
制御部100は、オブジェクトデータ記憶部71で保管されているオブジェクトデータDに対応するハッシュ値Hを、ネットワークインターフェイス部91を介して、端末装置2に対して送信する。
【0049】
端末装置2の印刷制御部211は、画像形成装置1から送信されてきたハッシュ値Hを、通信部24を介して受信すると、当該受信したハッシュ値Hを用いて、ハッシュ値記憶部251を更新する。これにより、端末装置2側で、画像形成装置1で保管されているオブジェクトデータDを把握することが可能になる。
【0050】
図7は、オブジェクトデータ記憶部71に現在保管されている、6個のオブジェクトデータDに対応するハッシュ値H11~H16が、画像形成装置1から端末装置2に対して送信されるイメージを示している。
【0051】
端末装置2が備えるプリンタードライバー250は、画像形成装置1(オブジェクトデータ記憶部71)で保管されているオブジェクトデータDを利用する「印刷キャッシュ(Print Cache)」という機能を備えている。印刷制御部211は、操作部22に入力されたユーザーからの設定指示に従って、「印刷キャッシュ」機能を有効又は無効に設定する。
【0052】
次に、ユーザーからドキュメントの印刷が指示された場合に、端末装置2で行われる処理を
図8に示すフローチャートなどを参照して説明する。
【0053】
ユーザーが、例えば、端末装置2の操作部22を介してドキュメントの印刷を指示すると、印刷制御部211は、印刷対象となるドキュメントをページ技術言語(PDL)による記述に変換して印刷データを生成する(S1)。更に、印刷制御部211は、「印刷キャッシュ」機能が有効であるか否かを判断する(S2)。
【0054】
印刷制御部211は、「印刷キャッシュ」機能が有効であると判断した場合(S2でYES)、上記印刷データに含まれるオブジェクトデータを検出する(S3)。印刷制御部211は、画像形成装置1で用いられるハッシュ関数と同じハッシュ関数を記憶しており、当該ハッシュ関数を用いて、検出したオブジェクトデータについてのハッシュ値を生成する(S4)。印刷制御部211は、当該ハッシュ関数を用いて、検出したオブジェクトデータについて、当該オブジェクトデータよりもデータ量の小さいハッシュ値を生成する。
【0055】
例えば、
図3に示したドキュメント51が印刷対象である場合、印刷制御部211は、
図3に示したような、オブジェクトデータD1~D3が含まれる印刷データ52を生成し、オブジェクトデータD1~D3に対応するハッシュ値として、
図5に示したような、ハッシュ値H1~H3を生成する。
【0056】
続いて、印刷制御部211は、ハッシュ値記憶部251を参照して、S4で生成したハッシュ値の中に、ハッシュ値記憶部251に記憶されているものがあるか否かを判断する(S5)。
【0057】
印刷制御部211は、生成したハッシュ値の中に、ハッシュ値記憶部251に記憶されているものがあると判断した場合(S5でYES)、当該記憶されているハッシュ値Hに対応するオブジェクトデータDが画像形成装置1で保管されていると認められるので、印刷データ中のオブジェクトデータDを当該ハッシュ値Hに置き換え(S6)、当該置き換えを行った印刷データを、通信部24を介して、画像形成装置1に送信する(S7)。この後、処理は終了する。
【0058】
例えば、
図5に示した、オブジェクトデータD1に対応するハッシュ値H1がハッシュ値記憶部251に記憶されている場合、オブジェクトデータD1は画像形成装置1で保管されていると認められる。そのため、印刷制御部211(端末装置2)は、画像形成装置1に対して、オブジェクトデータD1を送信する代わりに、オブジェクトデータD1よりもデータ量の小さいハッシュ値H1を送信する。
【0059】
図9は、印刷データ52に含まれるオブジェクトデータD1がハッシュ値H1に置き換えられることによって得られた印刷データ52Aを示している。なお、印刷制御部211は、画像形成装置1でハッシュ値H1がハッシュ値であると判別できるように、オブジェクトデータD1を、予め定められた演算子OPをハッシュ値H1に付与したデータD_H1に置き換える。ここでは「hashvalue」という演算子OPが付与されている。
【0060】
一方、S5において、印刷制御部211は、生成したハッシュ値Hの中に、ハッシュ値記憶部251に記憶されているものがないと判断した場合(S5でNO)、S1で取得した印刷データをそのまま、通信部24を介して、画像形成装置1に送信する(S7)。この後、処理は終了する。
【0061】
S2において、印刷制御部211は、「印刷キャッシュ」機能が有効でないと判断した場合(S2でNO)にも、S1で取得した印刷データをそのまま、通信部24を介して、画像形成装置1に送信する(S7)。この後、処理は終了する。
【0062】
次に、端末装置2から送信されてきた印刷データを受信した場合に画像形成装置1で行われる処理を、
図10A及び
図10Bに示すフローチャートなどを参照して説明する。
【0063】
画像形成装置1の制御部100は、端末装置2から送信されてきた印刷データを、ネットワークインターフェイス部91を介して受信すると、当該受信した印刷データにハッシュ値Hが含まれているか否かを判断する(S11)。
【0064】
例えば、
図9に示したような印刷データ52Aを受信した場合、制御部100は、印刷データにハッシュ値Hが含まれていると判断し、
図3に示したような印刷データ52を受信した場合、制御部100は、印刷データにハッシュ値Hは含まれていないと判断する。
【0065】
制御部100は、印刷データにハッシュ値Hが含まれていると判断した場合(S11でYES)、印刷データに含まれているハッシュ値Hに対応するオブジェクトデータDを、オブジェクトデータ記憶部71から読み出し(S12)、印刷データに含まれているハッシュ値Hを、読み出したオブジェクトデータDに置き換える(S13)。これにより、画像形成装置1は、例えば、
図9に示したような印刷データ52Aを受信したとしても、
図3に示したような印刷データ52を取得することができる。
【0066】
制御部100は、取得した印刷データを解析することによりビットマップデータを生成し(S14)、生成したビットマップデータに基づく印刷処理を画像形成部12等に実行させる(S15)。これにより、例えば、
図9に示したような印刷データ52Aを受信したとしても、
図2に示したようなドキュメント51が印刷された印刷物を得ることができる。
【0067】
一方、S11において、制御部100は、印刷データにハッシュ値Hが含まれていないと判断した場合(S11でNO)、従来通りに、受信した印刷データを解析することによりビットマップデータを生成し(S14)、生成したビットマップデータに基づく印刷処理を画像形成部12等に実行させる(S15)。
【0068】
続いて、制御部100は、印刷データに含まれるオブジェクトデータDを検出し(S21)、上記予め定められたハッシュ関数を用いて、検出した各オブジェクトデータDに対応するハッシュ値Hを生成する(S22)。例えば、制御部100は、
図5に示したように、オブジェクトデータD1~D3それぞれに対応する、ハッシュ値H1~H3を生成する。
【0069】
制御部100は、生成したハッシュ値Hの中に、ハッシュ値記憶部70に記憶されていない未登録のハッシュ値Hが存在するか否かを判断し(S23)、未登録のハッシュ値Hが存在すると判断した場合(S23でYES)、ハッシュ値Hを識別する識別番号Nを付し、当該識別番号Nに関連付けて、ハッシュ値Hをハッシュ値記憶部70に登録すると共に、当該ハッシュ値Hに対応するオブジェクトデータDの属性情報を、オブジェクト属性情報記憶部72に追加し、データ量を登録する(S24)。この後、処理はS25へ進む。
【0070】
一方、制御部100が、生成したハッシュ値Hの中に、未登録のハッシュ値Hは存在しないと判断した場合(S23でNO)、S24をスキップし、処理はS25へ進む。
【0071】
制御部100は、S22で生成したハッシュ値Hに対応する、オブジェクト属性情報記憶部72に記憶される項目「使用回数」に対するカウントアップを行う(S25)。
【0072】
制御部100は、オブジェクトデータDの使用回数に基づいて、使用頻度を算出し、データ量に基づいてデータ比率を算出し、オブジェクト属性情報記憶部72に記憶される項目「使用頻度」及び項目「データ比率」を更新する(S26)。更に、制御部100は、オブジェクトデータDの使用頻度及びデータ比率から保管優先度Rを算出し、オブジェクト属性情報記憶部72に記憶される項目「保管優先度R」を更新する(S27)。そして、制御部100は、保管優先度Rに基づいて、オブジェクトデータ記憶部71に保管しておくべきオブジェクトデータDを決定し、該当する保管フラグFを「1」に設定し、該当しない保管フラグFを「0」に設定する(S28)。
【0073】
制御部100は、保管フラグFに変更が生じたか否かを判断し(S29)、保管フラグFに変更が生じたと判断した場合(S29でYES)、保管フラグFに基づいて、オブジェクトデータ記憶部71にオブジェクトデータDを記憶又は削除する(S30)。これにより、保管優先度Rの低いオブジェクトデータDはオブジェクトデータ記憶部71から削除され、保管優先度Rの高いオブジェクトデータDがオブジェクトデータ記憶部71に記憶されることになる。
【0074】
制御部100は、オブジェクトデータ記憶部71で保管されているオブジェクトデータDに対応するハッシュ値H(すなわち、保管フラグFが「1」である識別番号Nが示すハッシュ値H)を、ネットワークインターフェイス部91を介して、端末装置2に送信する(S31)。この後、処理は終了する。ハッシュ値Hの送信イメージは、
図7に示した通りである。
【0075】
一方、S29において、制御部100が、保管フラグFに変更は生じていないと判断した場合(S29でNO)、オブジェクトデータ記憶部71で保管されるオブジェクトデータDに変更はないので、この処理は終了する。
【0076】
上記実施形態によれば、オブジェクトデータDの代わりに、それよりデータ量の小さいハッシュ値Hを端末装置2から画像形成装置1に対して送信することにより、ドキュメントの印刷を要求することが可能になるので、端末装置2から画像形成装置1への送信処理の効率化を図ることができる。従って、印刷速度を向上させることも可能になる。
【0077】
また、従来と異なり、ドキュメント単位ではなく、それより小さい、ドキュメントを構成するオブジェクト単位でドキュメントのデータをハッシュ値に置き換えるため、画像形成装置1において、ドキュメント全体のデータをハッシュ値としてまるまる保管させておく必要がない。このため、ハッシュ値を用いてデータを低減した上で印刷を行う場合において、印刷処理に要するデータ量が更に削減可能となり、記憶領域を節約することが可能になる。
【0078】
また、オブジェクトデータ記憶部71に保管させておくオブジェクトデータDについても、保管優先度Rの高いものに限定されるので、記憶領域をより効率よく用いることが可能になる。
【0079】
本発明は上記実施の形態の構成に限られず種々の変形が可能である。また、上記実施形態では、本発明に係る画像形成システムを構成する画像形成装置の一実施形態として複合機を用いて説明しているが、これは一例に過ぎず、例えば、コピー機能やプリンター機能を有した他の画像形成装置でもよい。
【0080】
また、上記実施形態では、
図1乃至
図10Bを用いて上記実施形態により示した構成及び処理は、本発明の一実施形態に過ぎず、本発明を当該構成及び処理に限定する趣旨ではない。
【符号の説明】
【0081】
1 画像形成装置
2 端末装置
11 画像形成システム
12 画像形成部
71 オブジェクトデータ記憶部
100 制御部
211 印刷制御部
251 ハッシュ値記憶部