(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022184490
(43)【公開日】2022-12-13
(54)【発明の名称】室外機
(51)【国際特許分類】
F24F 1/30 20110101AFI20221206BHJP
F24F 1/10 20110101ALI20221206BHJP
F25B 1/00 20060101ALI20221206BHJP
F25B 31/00 20060101ALI20221206BHJP
【FI】
F24F1/30
F24F1/10
F25B1/00 311Z
F25B31/00 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021092379
(22)【出願日】2021-06-01
(71)【出願人】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001081
【氏名又は名称】弁理士法人クシブチ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】橋本 俊一
(72)【発明者】
【氏名】松井 大
(72)【発明者】
【氏名】広田 正宣
(72)【発明者】
【氏名】庄山 直芳
【テーマコード(参考)】
3L054
【Fターム(参考)】
3L054BC01
(57)【要約】
【課題】本開示は、室外機内のレイアウト差による各圧縮機の吐出温度差を解消して、冷房能力が向上する室外機を提供する。
【解決手段】第2圧縮機111bと室外熱交換器114との距離は、第1圧縮機111aと室外熱交換器114との距離よりも小さく形成され、インジェクション配管120は、分岐部123にて分岐される第1分岐管121aと第2分岐管121bを有し、第1分岐管121aは第1圧縮機111aの圧縮室に接続され、第2分岐管121bは第2圧縮機111bの圧縮室に接続され、分岐部123は第1圧縮機111aおよび第2圧縮機111bよりも上方に設置され、第2分岐管121bの高さが第1分岐管121aの高さよりも大きくなるように設置される。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
室外熱交換器と、
第1圧縮機と、
前記第1圧縮機よりも前記室外熱交換器との距離が小さい第2圧縮機と、
高圧冷媒配管と、
前記高圧冷媒配管より分岐されるインジェクション配管と、
前記室外熱交換器の上方に設置される室外ファンと、
を備え、
前記インジェクション配管は、分岐部にて分岐される第1分岐管と第2分岐管を有し、
前記第1分岐管は前記第1圧縮機の圧縮室に接続され、
前記第2分岐管は前記第2圧縮機の圧縮室に接続され、
前記分岐部は前記第1圧縮機および前記第2圧縮機よりも上方に設置され、
前記第2分岐管は前記第1分岐管よりも高い位置に設置されている
ことを特徴とする室外機。
【請求項2】
前記第1圧縮機は第1吐出管と第1吸入管とを有し、
前記第2圧縮機は第2吐出管と第2吸入管とを有し、
前記第2分岐管は、前記第2吐出管と前記第2吸入管の両方よりも高い位置に設置される
ことを特徴とする請求項1に記載の室外機。
【請求項3】
室外熱交換器と、
第1圧縮機と、
前記第1圧縮機よりも前記室外熱交換器との距離が小さい第2圧縮機と、
高圧冷媒配管と、
前記高圧冷媒配管より分岐されるインジェクション配管と、
前記室外熱交換器の上方に設置される室外ファンと、
を備え、
前記インジェクション配管は、分岐部にて分岐される第1分岐管と第2分岐管を有し、
前記第1分岐管は前記第1圧縮機の圧縮室に接続され、
前記第2分岐管は前記第2圧縮機の圧縮室に接続され、
前記第2分岐管と前記室外熱交換器との距離が、前記第1分岐管と前記室外熱交換器との距離よりも小さくなるように、前記第1分岐管と前記第2分岐管とが設置されている
ことを特徴とする室外機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、冷媒の一部を圧縮機内の圧縮室などにインジェクションさせる室外機に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、冷媒の一部を圧縮機内において中間圧となる圧縮室などにインジェクションさせる空気調和機を開示する。
この空気調和機は、複数の圧縮機と四方弁と室外熱交換器とレシーバータンクと過冷却熱交換器と室内膨張弁と室内熱交換器と、が環状に接続された冷凍サイクルを行う冷媒回路を備える。また、冷媒回路は、冷房運転時には室外熱交換器を通過した液体冷媒が流れる液管と、液管から分岐して流れる第一分岐管と、第一分岐管上に設けられた過冷却膨張弁と、を備えている。液管内の冷媒は、過冷却膨張弁を通過した分岐冷媒と熱交換することで過冷却される。熱交換後の分岐冷媒は、圧縮機に設けられた、圧縮機において中間圧となる圧縮室にインジェクションされる。さらに、この空気調和機は、過冷却膨張弁と室内膨張弁との両方について開度を制御するコントローラーと、液管の温度を測定できる液温度センサーと、を備える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示は、室外機内のレイアウトに起因する各圧縮機の冷媒吐出温度差を解消して、冷房能力の向上を可能とする室外機を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示における室外機は、室外熱交換器と、第1圧縮機と、前記第1圧縮機よりも前記室外熱交換器との距離が小さい第2圧縮機と、高圧冷媒配管と、前記高圧冷媒配管より分岐されるインジェクション配管と、前記室外熱交換器の上方に設置される室外ファンと、を備え、前記インジェクション配管は、分岐部にて分岐される第1分岐管と第2分岐管を有し、前記第1分岐管は前記第1圧縮機の圧縮室に接続され、前記第2分岐管は前記第2圧縮機の圧縮室に接続され、前記分岐部は前記第1圧縮機および前記第2圧縮機よりも上方に設置され、前記第2分岐管は前記第1分岐管よりも高い位置に設置されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本開示における室外機の運転時には、室外ファンによって吸引された外気は室外熱交換器を通過する。この時、室外ファンに近い室外熱交換器の上方の風速は、室外ファンから遠い下方の風速よりも大きい。よって、第2分岐管を第1分岐管よりも高く設置することで、第2分岐管は第1分岐管よりも風速の大きい外気と熱交換する。これにより、第2分岐管内の冷媒は、第1分岐管内の冷媒よりも外気との熱交換量が大きくなる。従って、冷房運転時において、第2分岐管内の冷媒は第1分岐管内の冷媒よりもガス冷媒の比率が高くなり、逆に第1分岐管内の冷媒は第2分岐管内の冷媒よりも液体冷媒の比率が高くなる。そのため、インジェクションされる冷媒による冷媒吐出温度の低下量は、第1圧縮機のほうが第2圧縮機よりも大きくなる。
一方で、本開示における室外機機内のレイアウトによれば、第1圧縮機は第2圧縮機と比較して室外熱交換器から遠い位置に設置されている。そのため、第1圧縮機と外気との熱交換量は、第2圧縮機と外気との熱交換量よりも小さい。従って、圧縮機のレイアウトのみを考慮した場合は、第2圧縮機よりも、第1圧縮機の冷媒吐出温度のほうが高くなりやすい。
ここで、上述した通り、本開示において各圧縮機にインジェクションされる冷媒による冷媒吐出温度の低下量は、第1圧縮機において第2圧縮機よりも大きくなる。これにより、第1圧縮機と第2圧縮機のレイアウトによって生じる冷媒吐出温度の差は低減され、冷媒吐出温度が高い第1圧縮機の回転数を高回転として、冷房能力をより高めた運転が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】実施の形態1における室外機を含む冷媒回路の構成を示す図
【
図2】実施の形態1における室外機のレイアウト正面図
【
図3】実施の形態1における室外機のレイアウト上面図
【
図4】空気調和機における冷媒状態を示すモリエル線図
【
図5】第1圧縮機を経由する冷媒状態を示すモリエル線図
【
図6】第2圧縮機を経由する冷媒状態を示すモリエル線図
【
図7】本開示の実施の形態2における室外機のレイアウト正面図
【
図8】本開示の実施の形態2における室外機内での風速分布グラフ
【発明を実施するための形態】
【0008】
(本開示の基礎となった知見等)
発明者らが本開示に想到するに至った当時、空気調和機において、エネルギー効率の向上が求められていた。そのため、当該業界では、空気調和機において、圧縮機のエネルギー効率を向上させる技術が存在した。
【0009】
その空気調和機は、複数の圧縮機と四方弁と室外熱交換器とレシーバータンクと過冷却熱交換器と室内膨張弁と室内熱交換器と、が環状に接続された冷凍サイクルを行う冷媒回路を備える。また、冷媒回路は、冷房運転時には室外熱交換器を通過した液体冷媒が流れる液管と、液管から分岐して流れる第一分岐管と、第一分岐管上に設けられた過冷却膨張弁と、を備えている。この空気調和機において、液管内の冷媒は、過冷却膨張弁を通過した分岐冷媒と熱交換することで過冷却される。熱交換後の分岐冷媒は、圧縮機に設けられた、圧縮機において中間圧となる圧縮室にインジェクションされる。さらに、この空気調和機は、過冷却膨張弁と室内膨張弁との両方について開度を制御するコントローラーと、液管の温度を測定できる液温度センサーと、を備える。コントローラーは、室内熱交換器の冷却負荷に応じて過冷却された液管の冷媒の目標温度を設定し、液温度センサーが測定する温度が目標温度となるように過冷却膨張弁の開度制御を行う。
これによれば、冷却負荷に応じて圧縮室にインジェクションされる冷媒量が変化するので、圧縮機が行う無駄な仕事が減少し、エネルギー効率が高くなる。ここで、冷房運転時に過冷却熱交換器に流れる分岐冷媒量が増大する一方、室内熱交換器に流れる液体冷媒量は減少する。しかし、液体冷媒量が減少すると配管抵抗が小さくなるので、結果的に室内熱交換器における液体冷媒の循環量の低下量は小さくなり、過冷却膨張弁の開度制御による確実な冷房能力の増強が可能となる。
【0010】
しかしながら、上記従来の構成では、室外機内のレイアウトに起因して、冷房能力を十分に発揮できない場合があるという課題を有していた。
具体的には、各圧縮機と室外熱交換器との距離が異なる場合、室外熱交換器を通過した外気と各圧縮機との熱交換量が異なるので、各圧縮機の冷媒吐出温度に差が生じる。特に冷房運転時において、各圧縮機が高回転で運転すると、室外熱交換器との距離が遠い圧縮機は、室外熱交換器との距離が近い圧縮機よりも先に冷媒吐出温度基準に達してしまう。そのため、室外熱交換器との距離が遠い圧縮機の回転数が制限され、冷房能力の向上が難しくなる。
【0011】
そうした状況下において、発明者らは、異なる乾き度の冷媒を各圧縮機にインジェクションし、各圧縮機の冷媒吐出温度を均一化するという着想を得た。そして、発明者らは、その着想を実現するには、インジェクション用の各分岐管での冷媒と外気の熱交換量が一律であるという課題があることを発見し、その課題を解決するために、本開示の主題を構成するに至った。
そこで、本開示は、各圧縮機に異なる乾き度の冷媒をインジェクションし、レイアウトによる各圧縮機の冷媒吐出温度の差を低減できる室外機を提供する。
【0012】
以下、図面を参照しながら実施の形態を詳細に説明する。但し、必要以上に詳細な説明は省略する場合がある。例えば、既によく知られた事項の詳細説明、または、実質的に同一の構成に対する重複説明を省略する場合がある。
なお、添付図面および以下の説明は、当業者が本開示を十分に理解するために提供されるのであって、これらにより特許請求の範囲に記載の主題を限定することを意図していない。
【0013】
(実施の形態1)
以下、実施の形態1について説明する。
[1-1.構成]
[1-1-1.冷媒回路の構成]
図1は、本開示の実施の形態1における室外機を含む空気調和機の冷媒回路を示す構成図である。
実施の形態1の空気調和機100は、室外機110と、室内空調ユニット150と、液管140と、ガス管160と、を有している。
なお、
図1では室内空調ユニット150が2台並列して接続されている例が記載されているが、室内空調ユニット150は1台または3台以上が接続されていてもよい。
【0014】
本実施の形態において、室外機110は、室外熱交換器114と、第1圧縮機111aと、第2圧縮機111bと、四方弁112と、室外膨張弁116と、を備える。ここで、
図1のように、室外機110は高圧冷媒が流れる配管上に、レシーバータンク118を有してもよい。また、本実施の形態においては、室外機110内において、液管140はインジェクション配管120と分岐している。
【0015】
本実施の形態の室外機110は、1台の室外機110対して、第1圧縮機111aと第2圧縮機111bのように複数台の圧縮機が設置された構成となっている。
第1圧縮機111aと第2圧縮機111bは、冷媒を圧縮する機械装置である。第1圧縮機111aは第1吸入管115aから冷媒を吸入して圧縮し、圧縮された冷媒を第1吐出管117aに吐出する。同様に、第2圧縮機111bは第2吸入管115bから冷媒を吸入して圧縮し、圧縮された冷媒を第2吐出管117bに吐出する。
なお、第1圧縮機111aと第2圧縮機111bには、密閉容器内に圧縮工程が収められ、中間圧室にインジェクション用のポートを備える圧縮機や、低圧側圧縮機と高圧側圧縮機とが密閉容器内に収まった二段圧縮機等を用いることができる。
また、本実施の形態での構成とは異なり、2台以上の圧縮機が並列または直列に接続されてもよい。
【0016】
四方弁112は、空気調和機100の冷房運転時と暖房運転時の冷媒流れ方向を切り替える弁であり、第1吐出管117aと第2吐出管117bとの合流部および、第1吸入管115aと第2吸入管115bとの合流部と接続されている。なお、第1吸入管115aと第2吸入管115bとの合流部には、冷媒の気液分離のためのアキュムレータ119が備えられている。
室外熱交換器114は、室外熱交換器114の周囲の外気と冷媒とが熱交換する熱交換器である。室外熱交換器114には、一般的にはフィン&チューブ型やマイクロチューブ型の熱交換器が利用される。
【0017】
また、第1吐出管117a及び第2吐出管117bにはそれぞれ、各圧縮機から吐出される冷媒の温度を検出する、第1吐出温度センサー137aおよび第2吐出温度センサー137bが設けられている。同様に、第1吸入管115a及び第2吸入管115bにはそれぞれ、各圧縮機が吸入する冷媒の温度を検出する、第1吸入温度センサー135a及び第2吸入温度センサー135bが設けられている。
【0018】
インジェクション配管120には、液管140から分岐した分岐冷媒を減圧する過冷却膨張弁127と、分岐冷媒と液管140内の冷媒とで熱交換を行う過冷却熱交換器125が備えられている。過冷却熱交換器125としては、二重管やプレート熱交換器等が利用できる。
さらに、インジェクション配管120は分岐部123で、第1分岐管121aと第2分岐管121bと、に分岐する。第1分岐管121aは第1圧縮機111aの圧縮室に接続し、第2分岐管121bは第2圧縮機111bの圧縮室に接続する。第1分岐管121a及び第2分岐管121bとしては、例えば、溝なし管を用いることができる。
また、第1分岐管121aには、第1圧縮機111aの圧縮室にインジェクションされる冷媒の温度を検出する、第1分岐管温度センサー131aが取り付けられている。同様に、第2分岐管121bには、第2圧縮機111bの圧縮室にインジェクションされる冷媒の温度を検出する、第2分岐管温度センサーが取り付けられている。
【0019】
室外熱交換器114と室内熱交換器151とを接続する液管140は、液温度センサー139を備えている。液温度センサー139は、過冷却熱交換器125で熱交換された後の液管140内の冷媒の温度を検出する。ここで、液管140は、高圧冷媒配管に対応している。
【0020】
それぞれの室内空調ユニット150は、室内の空気と冷媒との間で熱交換を行う室内熱交換器151を備える。また、
図1のように、それぞれの室内空調ユニット150は室内膨張弁153を備えてもよい。
空気調和機100に備えられた各機器は、コントローラー(図示しない)によって制御される。
【0021】
[1-1-2.室外機の構成]
以下、
図2と
図3とを参照しながら、室外機110内における各機器のレイアウトについて説明する。
図2は本実施の形態における室外機110内の正面から見たレイアウトを示す模式図であり、
図3は本実施の形態における室外機110内を上面から見たレイアウトを示す模式図である。
【0022】
図2に示すように、本実施の形態においては、室外機110の上面には室外ファン101が設けられている。室外ファン101はファンモーター(図示しない)によって駆動され、室外機110内の空気を外に送り出すことで、外気103を、室外熱交換器114を通して室外機110に取り込む。これにより、外気103と室外熱交換器114との間での熱交換が促進される。
【0023】
また、
図2に示すように、インジェクション配管120の分岐部123は、第1圧縮機111aの本体と第2圧縮機111bの本体との両方よりも高い位置となるように設けられている。さらに、分岐部123から分岐する第1分岐管121aと第2分岐管121bとは、第2分岐管121bの高さが第1分岐管121aの高さよりも大きくなるように設置されている。
ここで、第1分岐管121a及び第2分岐管121bの高さとは、それぞれの分岐管の最上部の高さを指す。以下、分岐管の最上部の高さのことを、単に分岐管の高さと記載する。
【0024】
図3に示すように、本実施の形態において、室外熱交換器114は、室外機110の4つの側面のうち、3つの側面に設けられている。室外機110の側面のうち、室外熱交換器114が設けられた側面では、室外機110内に外気103を取り込むことができる。一方、室外機110の側面のうち、室外熱交換器114が設けられていない側面は、操作パネル(図示しない)や基盤(図示しない)が設けられるため、空気の流れを遮断する側面となる。
【0025】
また、
図3の室外機110内のレイアウト上面図では、第1圧縮機111aと第2圧縮機111bとの位置関係が示されている。
図3に示すように、第1圧縮機111aと室外熱交換器114とは、矢印Xの方向(以下X方向と呼ぶ)には距離Ixだけ離れており、矢印Yの方向(以下Y方向と呼ぶ)には距離Iyだけ離れている。同様に、第2圧縮機111bと室外熱交換器114とは、X方向には距離IIxだけ離れており、Y方向には距離IIyだけ離れている。
ここで、第1圧縮機111aと室外熱交換器114との距離を、距離Ixと距離Iyとの和であると定義し、第2圧縮機111bと室外熱交換器114との距離を、距離IIxと距離IIyとの和であると定義する。この場合、第1圧縮機111aと室外熱交換器114との距離は、第2圧縮機111bと室外熱交換器114との距離よりも大きくなるように設置されている。
【0026】
[1-2.動作]
以上のように構成された室外機110、および室外機110を含む空気調和機100について、その動作、作用を説明する。
【0027】
空気調和機100の冷房運転時には、四方弁112は、第1吐出管117aと第2吐出管117bとが合流した配管と、室外熱交換器114とを連通させる。したがって、第1圧縮機111aと第2圧縮機111bで圧縮された冷媒は、吐出圧力での飽和温度よりも高温の吐出過熱度を有する高温高圧なガス冷媒となって室外熱交換器114に流入する。
室外熱交換器114に流入した高温高圧のガス冷媒は、室外ファン101によって吸引された周囲の外気103に熱を放出して凝縮することで、高圧かつ過冷却状態の液体冷媒となる。
【0028】
液管140を流れる、室外熱交換器114を通過した高圧の過冷却状態の液体冷媒の一部は、インジェクション配管120に分岐して流入し、過冷却膨張弁127で減圧される。ここで減圧された冷媒は過冷却熱交換器125を通過することで、液管140内の高圧冷媒と熱交換をする。
【0029】
インジェクション配管120内の冷媒は、過冷却熱交換器125を通過して熱を受け取る。この冷媒は、インジェクション配管120から分岐部123で分岐され、第1分岐管121aと第2分岐管121bを通過し、第1圧縮機111aの圧縮室及び第2圧縮機111bの圧縮室にインジェクションされる。
冷媒と外気103との熱交換量が、第1分岐管121aと第2分岐管121bとの間において等しい場合は、各圧縮機にインジェクションされる冷媒は、
図4のモリエル線図における点Gに相当する飽和線近傍の冷媒となる。
【0030】
一方、第1吸入管115a及び第2吸入管115bから第1圧縮機111a及び第2圧縮機111bに吸入された
図4の点Eに相当する低圧の冷媒は加圧され、
図3の点Hに相当する状態の冷媒となっている。
よって、各圧縮機の圧縮室内では、インジェクションされる点Gの状態の冷媒と、加圧された点Hの状態の冷媒と、が混合され、
図4の点Iに相当する状態の冷媒となる。
すなわち、各圧縮機において中間圧となる圧縮室内の冷媒は、圧縮されながら、インジェクションされる冷媒によって冷却される。これにより、第1圧縮機111aと第2圧縮機111bの冷媒吐出温度は、分岐冷媒を圧縮室にインジェクションしない場合と比べて低下する。
【0031】
一方で、液管140内の高圧冷媒は、過冷却熱交換器125で熱を放出して過冷却度が増大する。過冷却熱交換器125を通過した高圧冷媒は、室外機110から液管140を通って室内空調ユニット150に流入する。室内空調ユニット150に流入した冷媒は、室内膨張弁153で減圧され、気液二相冷媒となる。
気液二相冷媒のうち、液体冷媒は室内熱交換器151で室内空気から熱を奪って蒸発し低圧の過熱ガス状態となる。ここで熱を奪われた室内空気は室内の気温を下げるので、空気調和機100は冷房装置として機能する。
【0032】
加熱ガス状態となった冷媒は、室内空調ユニット150からガス管160を通過して室外機110に戻る。室外機110に戻ったガス冷媒は、四方弁112、アキュムレータ119を経て、第1圧縮機111aと第2圧縮機111bに吸入される。
【0033】
一方、空気調和機100の暖房運転時には、四方弁112は、第1吐出管117aと第2吐出管117bとが合流した配管と、室内熱交換器151と、をガス管160を通じて連通させる。
したがって、第1圧縮機111aと第2圧縮機111bで圧縮された冷媒は、吐出圧力における飽和温度よりも高温の吐出過熱度を有する高温高圧なガス冷媒となって室内空調ユニット150に流入する。室内空調ユニット150に流入したガス冷媒は、室内熱交換器151で室内空気に熱を放出して凝縮することで、高圧かつ過冷却状態の液冷媒となる。ここで熱を受け取った室内空気は室内の気温を上昇させるので、空気調和機100は暖房装置として機能する。
【0034】
室内熱交換器151から出た高圧冷媒は液管140を通過して室外機110に流入する。室外機110に入った高圧かつ過冷却状態の液冷媒は、一部が分岐してインジェクション配管120に流入し、過冷却膨張弁127で減圧される。
減圧された冷媒は過冷却熱交換器125を通過することで、液管140内の高圧冷媒と熱交換をする。
【0035】
インジェクション配管120内の冷媒は、過冷却熱交換器125で熱を受け取る。この状態の冷媒は、インジェクション配管120から分岐部123で分岐され、第1分岐管121aと第2分岐管121bを通過し、第1圧縮機111aの圧縮室及び第2圧縮機111bの圧縮室にインジェクションされる。
冷媒と外気103との熱交換量が、第1分岐管121aと第2分岐管121bとの間において等しい場合は、各圧縮機にインジェクションされる冷媒は、
図4のモリエル線図における点Gに相当する飽和線近傍の冷媒となる。
【0036】
一方、第1吸入管115a及び第2吸入管115bから第1圧縮機111a及び第2圧縮機111bに吸入された
図4の点Eに相当する低圧の冷媒は加圧され、
図3の点Hに相当する状態の冷媒となっている。
よって、各圧縮機の圧縮室内では、インジェクションされる点Gの状態の冷媒と、加圧された点Hの状態の冷媒と、が混合され、
図4の点Iに相当する状態の冷媒となる。
すなわち、各圧縮機において中間圧となる圧縮室内の冷媒は、圧縮されながら、インジェクションされる冷媒によって冷却される。これにより、第1圧縮機111aと第2圧縮機111bの冷媒吐出温度は、分岐冷媒を圧縮室にインジェクションしない場合と比べて低下する。
【0037】
一方で、液管140内の高圧冷媒は、過冷却熱交換器125で熱を放出したことで、過冷却度が増大する。過冷却熱交換器125を通過した高圧冷媒は、室外膨張弁116で減圧され、気液二相冷媒となる。
気液二相冷媒のうち、液冷媒は室外熱交換器114で周囲の外気103から熱を奪って蒸発し、低圧の過熱ガス状態となる。このガス冷媒は、四方弁112、アキュムレータ119を経て、第1圧縮機111aと第2圧縮機111bに吸入される。
【0038】
上記の冷房運転時および暖房運転時において、実際には室外機110では室外ファン101が回転しており、室外熱交換器114と外気103との熱交換を促進する。
ここで、室外ファン101によって吸引された外気103は室外熱交換器114を通過するが、室外機110内での外気103の風速は、室外ファン101に近い、室外熱交換器114の上方では大きく、室外ファン101から遠い下方では小さい。
【0039】
本実施の形態においては、第2分岐管121bは、第1分岐管121aよりも風速の大きい外気と接触する位置に配置されている。具体的には、第2分岐管121bの高さが、第1分岐管121aの高さよりも大きくなるように設置されることにより、第2分岐管121b内の冷媒は第1分岐管121a内の冷媒よりも多くの外気と熱交換する。よって、第2分岐管121b内の冷媒は多くの熱を受け取るので、第1分岐管121a内の冷媒よりもガス成分の比率が高くなる。逆に、第1分岐管121a内の冷媒が受け取る熱は少ないので、第2分岐管121b内の冷媒よりも液成分の比率が高くなる。
【0040】
図4においては、第1分岐管121aと第2分岐管121bとにおける、冷媒が外気103と熱交換する量が等しい場合のモリエル線図が描かれている。これは、第1分岐管121aと第2分岐管121bの高さが等しい場合に相当する。
しかし、実際には、本実施の形態の室外機110内のレイアウトを考慮すると、冷媒と空気との熱交換量が、第1分岐管121aと第2分岐管121bとの間において異なる。
【0041】
図5は、室外機110内のレイアウトを反映し、第1分岐管121a高さが
図4の場合よりも小さくなるように設置された場合における、空気調和機100の運転中に第1圧縮機111aを通る冷媒のモリエル線図を示す。
第1圧縮機111aにインジェクションされる、第1分岐管121aを通過する冷媒は、第1分岐管121aの高さが
図4の場合よりも小さくなるように設置されたことで、風速の小さい外気103と熱交換するため、外気103との熱交換量が小さくなる。よって、第1分岐管121aを通過した冷媒は
図4の場合よりも乾き度が小さくなり、
図5の点Gaに相当する状態となる。
従って、第1圧縮機111aの圧縮室内において圧縮中の、
図5の点Hに相当する状態の冷媒と、点Gaに相当する状態の冷媒と、が混合した点Iaに相当する状態の冷媒は、
図4の点Iに相当する状態の冷媒よりも温度が低下する。これにより、第1圧縮機111aから吐出される冷媒は、点Aaに相当する状態となり、点Aに相当する状態の冷媒よりも温度が低下する。
【0042】
図6は、第2分岐管121bの高さが
図4の場合よりも大きくなるように設置された場合における、空気調和機100の運転中に第2圧縮機111bを通る冷媒のモリエル線図を示している。
第2圧縮機111bにインジェクションされる、第2分岐管121bを通過する冷媒は、第2分岐管121bの高さが
図4の場合よりも大きくなるように設置されたことで、風速の大きい外気103と熱交換するため、外気103との熱交換量が大きくなる。よって、第2分岐管121bを通過した冷媒は
図4の場合よりも乾き度が大きくなり、
図6の点Gbに相当する状態となる。
従って、第2圧縮機111bの圧縮室内において圧縮中の、
図6の点Hに相当する状態の冷媒と、点Gbに相当する状態の冷媒と、が混合した点Ibに相当する状態の冷媒は、
図4の点Iに相当する状態の冷媒よりも温度が上昇する。これにより、第2圧縮機111bから吐出される冷媒は、点Abに相当する状態となり、点Aに相当する状態の冷媒よりも温度が上昇する。
【0043】
また、分岐部123が第1圧縮機111aおよび第2圧縮機111bの上端よりも下方に設置された場合は、冷媒が分岐部123の後に通る第1分岐管121aと第2分岐管121bとの高さが、第1圧縮機111aと第2圧縮機111bとの高さと同等になる。よって、室外ファン101によって吸引された外気103が室外熱交換器114を通過して第1圧縮機111aと第2圧縮機111bやその他の構造物に接触し、第1圧縮機111aと第2圧縮機111bの周りは不均一な外気103風速や温度となる。その結果、第1圧縮機111aと第2圧縮機111bが、第1吐出管117aと第2吐出管117bとに吐出する冷媒の温度は不均一な温度となる。
しかし、本実施の形態において、分岐部123は第1圧縮機111aおよび第2圧縮機111bの上端よりも上方に設置されている。これにより、冷媒が分岐部123の後に通る第1分岐管121aと第2分岐管121bとの高さが、第1圧縮機111aと第2圧縮機111bとの高さよりも大きくなる。従って、室外ファン101によって吸引された外気103が室外熱交換器114を通過して第1圧縮機111aと第2圧縮機111bやその他の構造物に接触せず、第1圧縮機111aと第2圧縮機111bの周りは不均一な外気103風速や温度とならない。その結果、第1圧縮機111aと第2圧縮機111bの第1吐出管117aと第2吐出管117bの吐出温度は均一した温度となる。
【0044】
また、本開示においては、空気調和機100の運転モードによって、第1分岐管121a及び第2分岐管121bと、外気103との間での熱交換量は異なる。
空気調和機100の冷媒にR32冷媒を使用した場合の、運転モード毎の熱交換量の違いを以下に例示する。
空気調和機100が外気温度35℃のもとで、室内空調ユニット150からの吹出温度が15℃となるように冷房運転を行った時の低圧部の冷媒は、温度は室内空調ユニット150からの吹出温度より5K低い10℃であり、圧力は、1.1MPaであるとする。さらに、インジェクションされる冷媒について、圧力は低圧部の圧力を1.4倍した1.5MPaとし、温度は21℃とする。すると、第1分岐管121a及び第2分岐管121bを流れる冷媒の温度と、外気温度と、の温度差は約14Kとなる。
【0045】
一方で、空気調和機100が外気温度7℃のもとで暖房運転を行った場合、低圧部の冷媒について、温度は蒸発器が着霜する温度である約-0.5℃であり、圧力は0.8MPaであるとする。さらに、インジェクションされる冷媒について、圧力は低圧部の圧力を1.4倍した1.1MPaとし、温度は10℃とする。この場合、外気温度と、第1分岐管121a及び第2分岐管121bを流れる冷媒の温度と、の温度差は約3Kとなる。
よって、外気温度と、第1分岐管121a及び第2分岐管121bを流れる冷媒の温度と、の温度差は、暖房運転時よりも冷房運転時の方が大きい。
従って、外気103と、第1分岐管121a及び第2分岐管121bを流れる冷媒と、の間で行われる熱交換の量は、空気調和機100の冷房運転時において、暖房運転時よりも大きくなる。
【0046】
[1-3.効果等]
本実施の形態において、室外機110は、第1圧縮機111aと、第2圧縮機111bと、室外熱交換器114と、液管140と、液管140より分岐するインジェクション配管120と、室外熱交換器114の上方に設置される室外ファン101と、を備える。第2圧縮機111bと室外熱交換器114との距離は、第1圧縮機111aと室外熱交換器114との距離よりも小さい。インジェクション配管120は、分岐部123にて分岐される第1分岐管121aと第2分岐管121bを有し、第1分岐管121aは第1圧縮機111aの圧縮室に接続され、第2分岐管121bは第2圧縮機111bの圧縮室に接続される。さらに、分岐部123は第1圧縮機111aおよび第2圧縮機111bよりも上方に設置され、第2分岐管121bの高さが第1分岐管121aの高さよりも大きくなるように設置される。
【0047】
これによれば、室外ファン101によって吸引された外気103は室外熱交換器114を通過するが、室外機110内での外気103の風速は、室外ファン101に近い室外熱交換器114の上方では大きく、室外ファン101から遠い下方では小さい。
そのため、第2分岐管121bの高さが、第1分岐管121aの高さよりも大きくなるように設置されることにより、第2分岐管121b内の冷媒は第1分岐管121a内の冷媒よりも多くの外気と熱交換する。よって、第2分岐管121b内の冷媒は多くの熱を受け取るので、第1分岐管121a内の冷媒よりもガス成分の比率が高くなる。
【0048】
つまり、第1分岐管121aを通過する冷媒は、第1分岐管121aの高さが
図4の場合よりも小さくなるように設置されたことで、風速の小さい外気103と熱交換するため、外気103との熱交換量が小さくなる。よって、第1分岐管121aを通過した冷媒は
図4の場合よりも乾き度が小さくなり、
図5の点Gaに相当する状態となって第1圧縮機111aにインジェクションされる。
従って、第1圧縮機111aの圧縮室内において圧縮中の、
図5の点Hに相当する状態の冷媒と、点Gaに相当する状態の冷媒と、が混合した点Iaに相当する状態の冷媒は、
図4の点Iに相当する状態の冷媒よりも温度が低下する。これにより、第1圧縮機111aから吐出される冷媒は、点Aaに相当する状態となり、点Aに相当する状態の冷媒よりも温度が低下する。
【0049】
さらに、第2分岐管121bを通過する冷媒は、第2分岐管121bの高さが
図4の場合よりも大きくなるように設置されたことで、風速の大きい外気103と熱交換するため、外気103との熱交換量が大きくなる。よって、第2分岐管121bを通過した冷媒は
図4の場合よりも乾き度が大きくなり、
図6の点Gbに相当する状態となって第2圧縮機111bにインジェクションされる。
従って、第2圧縮機111bの圧縮室内において圧縮中の、
図6の点Hに相当する状態の冷媒と、点Gbに相当する状態の冷媒と、が混合した点Ibに相当する状態の冷媒は、
図4の点Iに相当する状態の冷媒よりも温度が上昇する。これにより、第2圧縮機111bから吐出される冷媒は、点Abに相当する状態となり、点Aに相当する状態の冷媒よりも温度が上昇する。
【0050】
したがって、各分岐管からの冷媒のインジェクションによる、各圧縮機での冷媒吐出温度の低下量を、第1圧縮機111aでは大きく、第2圧縮機111bでは小さくすることができる。
そのため、室外熱交換器114との距離が遠く冷媒吐出温度が高くなりやすい第1圧縮機111aを、第2圧縮機111bと同様に高回転で運転することが可能になるので、冷房能力が向上できる。
【0051】
(実施の形態2)
以下、実施の形態2について説明する。
[2-1.構成]
[2-1-1.冷媒回路の構成]
実施の形態2の室外機110を含む空気調和機100の冷媒回路の構成は、実施の形態1と同様、
図1に示される通りである。そのため、冷媒回路の構成については説明を省略し、室外機110内のレイアウトについてのみ、以下で説明する。
【0052】
[2-1-2.室外機内のレイアウト]
以下、実施の形態2における室外機110内のレイアウトを説明する。
【0053】
図7は、実施の形態2の室外機110を正面から見たレイアウトを示す模式図である。
図7のように、実施の形態2にかかる室外機110において、第2圧縮機111bに接続する第2分岐管121bの高さは、第2吐出管117bと第2吸入管115bの両方の高さよりも大きくなるように設置されている。一方で、第1圧縮機111aに接続する第1分岐管121aの高さは、第1吐出管117aと第1吸入管115aの両方の高さよりも小さくなるように設置されている。
また、レシーバータンク118は、室外機110の底面積を小さくするため、高さ方向に伸びた形状となっている。
【0054】
[2-2.動作]
以上のように構成された室外機110を含む空気調和機100について、以下その動作、作用を説明する。ここで、冷媒回路の構成に依存した動作は、実施の形態1と同様なので省略する。
【0055】
室外機110内のレシーバータンク118は、過冷却状態の高圧液冷媒を内部に溜めて冷媒回路内の圧力を調整することで、冷房運転と暖房運転の間での必要冷媒量の格差や、冷暖房運転の強度による余剰冷媒量の格差を解消する。
【0056】
実施の形態1についての説明で述べたように、空気調和機100の運転時、室外ファン101によって吸引された外気103は室外熱交換器114を通過する。また、外気103の風速は、室外ファン101に近い室外熱交換器114の上方では大きく、室外ファン101から遠い下方では小さい。
さらに、実施の形態1についての説明で述べたように、室外機110に流入した外気103の流れは、第1圧縮機111aと第2圧縮機111bを含む構造物に遮蔽される。
【0057】
実施の形態2においては、第2分岐管121bの高さは、第2吐出管117bの高さと第2吸入管115bの高さの両方よりも大きいので、第2分岐管121bと外気103とを遮る配管がなくなる。従って、第2分岐管121bの高さが、第2吐出管117bの高さと第2吸入管115bの高さの両方よりも大きくない場合に比べて、第2分岐管121b内の冷媒はさらに外気103との熱交換量が増加する。これにより、第2分岐管121bから第2圧縮機111bにインジェクションされる冷媒のガス成分がさらに増加する。
一方で、第1分岐管121aの高さは、第1吐出管117aの高さと第1吸入管115aの高さの両方よりも小さい。従って、第1分岐管121aの高さが、第1吐出管117aの高さと第1吸入管115aの高さの両方より小さくない場合に比べて、第1分岐管121a内の冷媒は外気103との熱交換量が減少する。これにより、第1分岐管121aから第1圧縮機111aにインジェクションされる冷媒の液体成分は、さらに増加する。
【0058】
つまり、第2分岐管121bの高さが、第2吐出管117bの高さと第2吸入管115bの高さの両方よりも大きいので、第2分岐管121bの出口部分の冷媒は、実施の形態1における
図6の点Gbよりも乾き度が大きい状態となる。この冷媒は、第2圧縮機111bにインジェクションされ、第2圧縮機111b内で加圧された
図6の点Hに相当する状態の冷媒と混合され、点Ibに相当する状態よりもさらに乾き度が大きい冷媒となる。この冷媒は、
図6の点Ibに相当する状態の冷媒よりもさらに高温である。よって、第2圧縮機111bが第2吐出管117bに吐出する冷媒の温度がさらに高くなる。
【0059】
さらに、第1分岐管121aの高さが第1吐出管117aの高さと第1吸入管115aの高さよりも小さいので、第1分岐管121aの出口部分の冷媒は、実施の形態1における
図5の点Gaよりも乾き度が小さい状態となる。この冷媒は、第1圧縮機111aにインジェクションされ、第1圧縮機111a内で加圧された
図5の点Hに相当する状態の冷媒と混合され、
図5の点Iaに相当する状態よりもさらに乾き度が小さい冷媒となる。この冷媒は、
図5の点Iaに相当する状態の冷媒よりもさらに低温である。よって、第1圧縮機111aが第1吐出管117aに吐出する冷媒の温度がさらに低下する。
【0060】
また、
図8は、縦軸を室外機110の製品高さに対する風速測定高さとし、横軸を室外機110内に吸入された外気103の風速としたグラフである。
図8において、室外機110の製品高さの1/2近傍未満の風速測定高さでは外気103の風速はほぼ均一となっているが、室外機110の製品高さの1/2近傍より上方では、高い位置ほど外気103の風速が増加している。
つまり、第2分岐管121bの高さを室外機110の製品高さの1/2近傍以上とすることで、高さがおおきくなるにつれて外気103の風量が増加することから、第2分岐管121b内の冷媒は風速の大きい外気103と熱交換でき、ガス成分が増える。よって、第2分岐管121bが、第2吐出管117bと第2吸入管115bよりも高い位置に設置されることで、第2分岐管121bから第2圧縮機111bにインジェクションされる冷媒は気相域内となる。従って、第2圧縮機111b内で加圧された冷媒と混合される冷媒の温度が上昇し、結果として第2圧縮機111bの第2吐出管117bに吐出する冷媒の温度が高くなる。
【0061】
[2-3.効果等]
以上のように、本実施の形態において、室外機110内の第1圧縮機111aは、第1吐出管117aと第1吸入管115aとを有する。また、第2圧縮機111bは、第2吐出管117bと第2吸入管115bと、を備える。さらに、第2圧縮機111bの第2分岐管121bは、第2吐出管117bと第2吸入管115bの両方よりも高い位置に設置される。
【0062】
これによれば、第2分岐管121bの高さは、第2吐出管117bの高さと第2吸入管115bの高さの両方よりも大きいので、第2分岐管121bと外気103とを遮る配管がなくなる。従って、第2分岐管121bの高さが、第2吐出管117bの高さと第2吸入管115bの高さの両方よりも大きくない場合に比べて、第2分岐管121b内の冷媒はさらに外気103との熱交換量が増加する。これにより、第2分岐管121bから第2圧縮機111bにインジェクションされる冷媒のガス成分がさらに増加する。
一方で、第1分岐管121aの高さは、第1吐出管117aの高さと第1吸入管115aの高さの両方よりも小さい。従って、第1分岐管121aの高さ、が第1吐出管117aと第1吸入管115aの両方より小さくない場合に比べて、第1分岐管121a内の冷媒は外気103との熱交換量が減少する。これにより、第1分岐管121aから第1圧縮機111aにインジェクションされる冷媒の液体成分は、さらに増加する。
【0063】
つまり、第2分岐管121bの高さが、第2吐出管117bの高さと第2吸入管115bの高さの両方よりも大きいので、第2分岐管121bの出口部分の冷媒は、実施の形態1における
図6の点Gbよりも乾き度が大きい状態となる。この冷媒は、第2圧縮機111bにインジェクションされ、第2圧縮機111b内で加圧された
図6の点Hに相当する状態の冷媒と混合され、点Ibに相当する状態よりもさらに乾き度が大きい冷媒となる。この冷媒は、
図6の点Ibに相当する状態の冷媒よりもさらに高温である。よって、第2圧縮機111bが第2吐出管117bに吐出する冷媒の温度がさらに高くなる。
【0064】
さらに、第1分岐管121aの高さが第1吐出管117aの高さと第1吸入管115aの高さよりも小さいので、第1分岐管121aの出口部分の冷媒は、実施の形態1における
図5の点Gaよりも乾き度が小さい状態となる。この冷媒は、第1圧縮機111aにインジェクションされ、第1圧縮機111a内で加圧された
図5の点Hに相当する状態の冷媒と混合され、
図5の点Iaに相当する状態よりもさらに乾き度が小さい冷媒となる。この冷媒は、
図5の点Iaに相当する状態の冷媒よりもさらに低温である。よって、第1圧縮機111aが第1吐出管117aに吐出する冷媒の温度が低下する。
【0065】
従って、第2分岐管121bからの冷媒のインジェクションによる、第2圧縮機111bでの冷媒吐出温度の低下量を、さらに小さくすることができる。
そのため、特にレイアウトが複雑な室外機110の場合、第2圧縮機111bの冷媒吐出温度と、レイアウトにより高くなりやすい第1圧縮機111aの冷媒吐出温度と、の温度差をさらに小さくすることができる。
【0066】
また、本実施形態のように、第1分岐管121aの高さは、第1吸入管115aの高さと第1吐出管の高さの両方よりも小さくしてもよい。
これにより、第1分岐管121aから第1圧縮機111aにインジェクションされる冷媒の液体成分がさらに増加する。
従って、第1分岐管121aからの冷媒のインジェクションによる、第1圧縮機111aでの冷媒吐出温度の低下量を、さらに大きくすることができる。
そのため、冷媒吐出温度が高くなりやすい第1圧縮機111aの冷媒吐出温度をさらに低下できるので、第1圧縮機111aを高回転で運転できることから冷房能力が向上できる。
【0067】
(他の実施の形態)
以上のように、本出願において開示する技術の例示として、実施の形態1、及び、2を説明した。しかしながら、本開示における技術は、これに限定されず、変更、置き換え、付加、省略などを行った実施の形態にも適用できる。また、上記実施の形態1、及び、2で説明した各構成要素を組み合わせて、新たな実施の形態とすることも可能である。
そこで、以下、他の実施の形態を例示する。
【0068】
実施の形態1および2では、第1分岐管121aと第2分岐管121bの一例として、溝なし管を説明した。しかし、本開示では、第1分岐管121aと第2分岐管121bとにおける冷媒と外気103との熱交換量を、分岐管の配置によって変更することで、各圧縮機での吐出温度差を抑制している。従って、第1分岐管121aと第2分岐管121bとの配置によって熱交換に相違が生じるようなものであればよい。したがって、第1分岐管121aと第2分岐管121bとは、溝なし管に限定されない。ただし、第1分岐管121aと第2分岐管121bの配管として、溝なし管を使用した場合は、製造コストの低減が可能である。
【0069】
また、各分岐管の材質を変更したり、分岐管として溝付管やフィンアンドチューブ管を用いたりしてもよい。例えば、第1分岐管121aとして断熱性の高い材料の溝なし管を用い、第2分岐管121bとして溝付管やフィンチューブ管を用いてもよい。この場合、各分岐管での熱交換量により大きな差がつき、インジェクションされる冷媒による温度低下量の差をより大きくでき、各圧縮機の吐出温度をさらに均等にできる。
【0070】
実施の形態1および2では、各圧縮機の冷媒吐出温度を変える手段の一例として、第1分岐管121aと外気103との熱交換量と、第2分岐管121bと外気103との熱交換量とに差をつけることを説明した。各圧縮機の冷媒吐出温度を変える手段は、各圧縮機で圧縮される冷媒における、圧縮機への流入時のエンタルピーを変えられるものであればよい。したがって、各圧縮機の冷媒吐出温度を変える手段は、第1分岐管121aと第2分岐管121bとの高さを変えることに限定されない。
【0071】
また、各圧縮機の冷媒吐出温度を変える手段として、第1圧縮機111aの第1吸入管115aは液成分を増やし、第2圧縮機111bの第2吸入管115bはガス成分を増やすように、第2吸入管115bは第1吸入管115aよりも高く設置してもよい。
また、第1分岐管121aと第2分岐管121bとの水平方向の配置を変更してもよい。この場合、第1分岐管121aは、外気103との熱交換量が小さくなるように、室外熱交換器114から遠ざける、または外気103の流れが構造物で遮られる領域に配置することで、第1圧縮機111aの冷媒吐出温度を低下できる。反対に、第2分岐管121bは、外気103との熱交換量が大きくなるように、室外熱交換器114に近づける、または外気103の流れが構造物に遮られない領域に配置することで、第2圧縮機111bの冷媒吐出温度を上昇させることができる。
よって、例えば、第2分岐管121bと室外熱交換器114との距離が、第1分岐管121aと室外熱交換器114との距離よりも小さくなるように、第1分岐管121aと第2分岐管121bとが設置されていてもよい。
【0072】
実施の形態1および2では、室外ファン101は室外熱交換器114の上方に設置されるとした。室外ファン101の設置位置は、室外熱交換器114での熱交換を促進できる位置であればよい。従って、室外ファン101の設置位置は、上方には限定されない。
従って、室外ファン101は室外熱交換器114と平行に設置することもできる。この場合、風量の多い場所に第2分岐管121bを配置し、風量の少ない場所に第1分岐管121aを配置することで、各圧縮機の冷媒吐出温度を均一化できる。この場合、室外機110内における外気103の風量分布が、室外ファン101を上方に設置した場合とは異なるので、各分岐管のレイアウトも室外ファン101を上方に設置した場合と異なる。
【0073】
なお、上述の実施の形態は、本開示における技術を例示するためのものであるから、特許請求の範囲またはその均等の範囲において種々の変更、置き換え、付加、省略などを行うことができる。
【産業上の利用可能性】
【0074】
本開示は、レイアウト差における各圧縮機の吐出温度差を解消することのできる室外機として好適に利用可能である。
【符号の説明】
【0075】
100 空気調和機
101 室外ファン
103 外気
110 室外機
111a 第1圧縮機
111b 第2圧縮機
112 四方弁
114 室外熱交換器
115a 第1吸入管
115b 第2吸入管
116 室外膨張弁
117a 第1吐出管
117b 第2吐出管
118 レシーバータンク
119 アキュムレータ
120 インジェクション配管
121 第2分岐管
121a 第1分岐管
121b 第2分岐管
123 分岐部
125 冷却熱交換器
127 冷却膨張弁
131a 第1分岐管温度センサー
135a 第1吸入温度センサー
135b 第2吸入温度センサー
137a 第1吐出温度センサー
137b 第2吐出温度センサー
139 液温度センサー
140 液管
150 室内空調ユニット
151 室内熱交換器
153 室内膨張弁
160 ガス管