(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022184519
(43)【公開日】2022-12-13
(54)【発明の名称】多連同軸コネクタ
(51)【国際特許分類】
H01R 13/42 20060101AFI20221206BHJP
H01R 24/38 20110101ALI20221206BHJP
【FI】
H01R13/42 F
H01R24/38
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021092422
(22)【出願日】2021-06-01
(71)【出願人】
【識別番号】000194918
【氏名又は名称】ホシデン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121706
【弁理士】
【氏名又は名称】中尾 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128705
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 幸雄
(74)【代理人】
【識別番号】100147773
【弁理士】
【氏名又は名称】義村 宗洋
(72)【発明者】
【氏名】岩本 侑大
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 大輔
【テーマコード(参考)】
5E087
5E223
【Fターム(参考)】
5E087EE08
5E087GG26
5E087MM05
5E087RR25
5E223AC21
5E223AC23
5E223CA13
5E223EA17
5E223GA08
(57)【要約】
【課題】シェルASSYのハウジングへの固定を簡易かつ確実に行うことができる多連同軸コネクタを提供する。
【解決手段】シェルASSYは、その外周を一周する窪みおよびフランジを含むシェルを含み、N行×M列配列されてハウジングに固定され、ハウジングは、シェルASSYの先端それぞれが挿通されるN×M個の挿通穴と、挿通穴のそれぞれの内側面の斜めに隣接する挿通穴に近接する位置に形成され窪みと係り合う係合部と、挿通穴の延伸方向と直交する方向にハウジングを切り欠いて形成され、その内側面に第1の溝および第2の溝を形成したスリットを含み、リテーナは、スリットに挿通された際に第1の溝および第2の溝に係合する爪と、爪が第1の溝と係合した状態において、シェルおよびフランジの挿通穴内の移動を妨げず、爪が第2の溝と係合した状態において、シェルASSYが挿通され側面がフランジと当接するN個の凹部を含む。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シェルASSYと、ハウジングと、リテーナを含む多連同軸プラグであって、
前記シェルASSYは、
その外周を一周する窪みおよびフランジを含むシェルと、
前記シェルに収容されるボディと、
前記ボディに収容されるコンタクトと、
前記シェル、前記コンタクトと接続された同軸ケーブルからなり、
前記シェルASSYは、
前記シェルASSYの延伸方向である第1の方向と直交する第2の方向にN行、第1、第2の方向の何れとも直交する第3の方向にM列(ただし、N,Mは2以上の整数)配列されて前記ハウジングに固定され、
前記ハウジングは、
前記シェルASSYの先端それぞれが挿通されるN×M個の挿通穴と、
前記挿通穴のそれぞれの内側面の、斜めに隣接する前記挿通穴に近接する位置に形成され、前記窪みと係り合う係合部と、
前記挿通穴の延伸方向と直交する方向に前記ハウジングを切り欠いて形成され、前記挿通穴と連絡され、その内側面に前記ハウジングの中心部から遠い順に第1の溝および第2の溝を形成したスリットを含み、
前記リテーナは、
前記スリットに挿通された際に前記第1の溝および前記第2の溝に係合する爪と、
前記爪が前記第1の溝と係合した状態である仮止め状態において、前記シェルおよび前記フランジの前記挿通穴内の移動を妨げず、前記爪が前記第2の溝と係合した状態である固定状態において、シェルASSYが挿通され側面が前記フランジと当接するN個の凹部を含む
多連同軸プラグ。
【請求項2】
請求項1に記載の多連同軸プラグであって、
前記係合部は、
ハーフロック形状で前記窪みと係り合っている
多連同軸プラグ。
【請求項3】
請求項1または2に記載の多連同軸プラグであって、
前記スリットは前記ハウジングの対抗する面に対となるように設けられ、
2つの前記リテーナが各スリットから挿通される
多連同軸プラグ。
【請求項4】
請求項1から3の何れかに記載の多連同軸プラグであって、
前記凹部の側面は、
前記フランジの周長の半分以上の長さにおいて、前記フランジと当接する形状である
多連同軸プラグ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は多連同軸コネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
一つのハウジングに複数のケーブルを挿入して形成されるコネクタの従来例として、特許文献1がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
シェル、ボディ、コンタクトおよび、同軸ケーブルを含むシェルASSYを手作業で同時に複数個ハウジングに挿通し、これらの位置関係を整合させたまま固定することは難しい。
【0005】
そこで本発明では、シェルASSYのハウジングへの固定を簡易かつ確実に行うことができる多連同軸コネクタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の多連同軸コネクタは、シェルASSYと、ハウジングと、リテーナを含む。
【0007】
シェルASSYは、その外周を一周する窪みおよびフランジを含むシェルと、シェルに収容されるボディと、ボディに収容されるコンタクトと、シェル、コンタクトと接続された同軸ケーブルからなる。
【0008】
シェルASSYは、シェルASSYの延伸方向である第1の方向と直交する第2の方向にN行、第1、第2の方向の何れとも直交する第3の方向にM列(ただし、N,Mは2以上の整数)配列されてハウジングに固定される。
【0009】
ハウジングは、シェルASSYの先端それぞれが挿通されるN×M個の挿通穴と、挿通穴のそれぞれの内側面の、斜めに隣接する挿通穴に近接する位置に形成され、窪みと係り合う係合部と、挿通穴の延伸方向と直交する方向にハウジングを切り欠いて形成され、挿通穴と連絡され、その内側面にハウジングの中心部から遠い順に第1の溝および第2の溝を形成したスリットを含む。
【0010】
リテーナは、スリットに挿通された際に第1の溝および第2の溝に係合する爪と、爪が第1の溝と係合した状態である仮止め状態において、シェルおよびフランジの挿通穴内の移動を妨げず、爪が第2の溝と係合した状態である固定状態において、シェルASSYが挿通され側面がフランジと当接するN個の凹部を含む。
【発明の効果】
【0011】
本発明の多連同軸コネクタによれば、シェルASSYのハウジングへの固定を簡易かつ確実に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図5】係合部の構造が現れる長手方向断面における断面図およびその一部拡大図。
【
図6】係合部の構造が現れる短手方向断面における断面図。
【
図7】ハウジングに形成されるスリットとリテーナの構造を表す斜視図。
【
図8】リテーナの構造が現れる短手方向断面における断面図。
【
図9】実施例1の多連同軸コネクタのリテーナを仮止め位置まで挿入した状態を示す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。なお、同じ機能を有する構成部には同じ番号を付し、重複説明を省略する。
【実施例0014】
以下、
図1、
図2、
図3を参照して実施例1の多連同軸コネクタの構造を説明する。
図1、
図2に示すように、本実施例の多連同軸コネクタは、シェルASSY1と、ハウジング2と、リテーナ3を含む。
【0015】
図1、
図3に示すように、シェルASSY1は、その外周を一周する窪み111およびフランジ112を含むシェル11と、シェル11に収容されるボディ12と、ボディ12に収容されるコンタクト13と、シェル11、コンタクト13と接続された同軸ケーブル14と、同軸ケーブル14を覆うシールド部材15からなる。
【0016】
<シェルASSY1>
シェルASSY1は、シェルASSY1の延伸方向である第1の方向(
図1において、ボールド体で表した「1」とこれに対応する矢印の向きを参照)と直交する第2の方向(
図1において、ボールド体で表した「2」とこれに対応する矢印の向きを参照)にN行(Nは2以上の整数)、第1、第2の方向の何れとも直交する第3の方向(
図1において、ボールド体で表した「3」とこれに対応する矢印の向きを参照)にM列(Mは2以上の整数)配列されてハウジング2に固定される。本実施例では、N=2、M=2とし、シェルASSY1を2×2=4つ含む構造とする。
【0017】
<ハウジング2>
以下、
図4~
図7を参照してハウジング2の詳細な構造を説明する。
図4に示すように、ハウジング2は、シェルASSY1の先端それぞれが挿通されるN×M個(本実施例では2×2個)の挿通穴21を含む。
図4、
図5に示すように、ハウジング2は、窪み111と係り合うようにハウジング内側方向に突出する突出部2111を有する係合部211(本実施例では、ハーフロック形状)を含む。
図4、
図6に示すように、係合部211は、挿通穴21のそれぞれの内側面の、斜めに隣接する挿通穴21に近接する位置に設けられる。
【0018】
係合部211は例えば樹脂バネで実現できる。本実施例では、シェル11を挿通穴21に押し込むことにより、係合部211は一旦、ハウジング外側方向に弾性変形する。次に係合部211の突出部2111が窪み111内に落ち込むことにより、係合部211はハウジング内側方向に弾性復帰する。弾性復帰と同時または復帰直後に、ハウジング2の当接面22がフランジ112と当接することにより、ハウジング2とシェルASSY1の位置決めが行われる(
図5)。
【0019】
ただし、この段階では、シェルASSY1の、特に抜き取り方向の力に対して十分なロックがかかっているとは言えない。そこで、後述するリテーナ3による固定が行われる。
図7に示すように、ハウジング2は、挿通穴21の延伸方向と直交する方向にハウジング2を切り欠いて形成したスリット22を含む。
図8に示すように、スリット22は、挿通穴21と連絡され、その内側面にハウジング2の中心部から遠い順に第1の溝221および第2の溝222が形成される。本実施例では、スリット22はハウジング2の対抗する面に対となるように設けられている。
【0020】
<リテーナ3>
本実施例では、2つのリテーナ3が2つのスリット22のそれぞれに挿通される。
図7、
図8に示すように、リテーナ3は、スリット22に挿通された際に第1の溝221および第2の溝222に係合する爪31と、N個(本実施例では2個)の凹部32を含む。
【0021】
凹部32は、爪31が第1の溝221と係合した状態である仮止め状態において、シェル1およびフランジ112の挿通穴21内の移動を妨げず、爪31が第2の溝221と係合した状態である固定状態において、シェルASSY1が挿通され側面がフランジ112と当接するように形成されている。
【0022】
凹部32の側面を、フランジ112の周長の半分以上の長さにおいて、フランジ112と当接する形状とすれば、さらに強固にシェルASSY1をハウジング2に固定することができ、好適である。
【0023】
<効果:係合部211>
本実施例の多連同軸コネクタの係合部211(樹脂バネ)は、挿通穴21のそれぞれの内側面の、斜めに隣接する挿通穴21に近接する位置、すなわちコネクタの中心部寄りに形成されているため、コネクタ外形を小型化できる。
【0024】
本実施例の多連同軸コネクタの係合部211(樹脂バネ)は、いずれも多連同軸コネクタの中心部寄りに形成されているので同一形状とすることができる。係合部211(樹脂バネ)が全て同一形状であることにより、バネ特性を考慮した設計の簡素化、金型設計の簡素化、金型メンテナンスでコアパーツを共用できるメンテナンスコスト削減が見込まれる。
【0025】
上述したように、本実施例の多連同軸コネクタの係合部211は配置上いずれもハウジング2の中心部寄りに配置されることになり、ハウジング成形において、係合部211(樹脂バネ)へのゲート位置からの材料充填時間が均等となり、ショートショットを防止するための成形条件の管理が容易になるなどの効果も得られる。
【0026】
<効果:係合部211=ハーフロック形状>
各シェルASSY1と対応する挿通穴21は、あらかじめ決められているものの、誤った挿通穴21にシェルASSY1を挿入してしまう可能性がある。この場合、係合部211がフルロック形状でシェル11と係合していると、シェル11をハウジング2から抜き去るのに、係合部211を変位させる専用治具が必要となる。専用治具を用いての抜き去り作業は、ケーブルの長さや自重の影響を受けるため、非常に作業性が悪く、ケーブルの自重によっては係合部211を損壊させてしまう場合がある。係合部211がハーフロック形状でシェル11と係合している場合、係合部211を損壊させることなくシェル11をハウジング2から抜き去ることができるため、誤配線時のリワーク作業が容易である。
【0027】
<効果:リテーナ3>
係合部211は構造上、窪み111と係合する突出部2111を大きくすることができないため、シェル11と当接する面積が小さくなる。よって、シェルASSY1に抜去方向に荷重が加わると、突出部2111が破損してシェルASSY1がハウジング2から脱落してしまうという構造上の問題がある。これに対し、シェルASSY1はリテーナ3と直接当接してハウジング2に完全固定されるため、完全固定状態では係合部211に頼ることなく抜去耐力をコントロールできる。
【0028】
上述したように、リテーナ3がシェル11のフランジ112に当接する構造とすると、フランジ112との当接面積は、係合部211の突出部2111が当接する面積より大きくすることが可能であり、要求されるシェルASSY1の抜去耐力を実現維持することは容易である。
【0029】
図9に示すように、リテーナ3を仮止め位置の状態でシェルASSY1をハウジング2へ挿入することができるので、リテーナ3を完全固定する作業工程が簡素化される。
【0030】
リテーナ3をハウジング2に仮固定することが可能なので、サービスパーツとしてユーザーへ部品提供する場合、仮組した状態で提供できるので、在庫管理が容易になり、作業性が良くなる効果もある。
【0031】
リテーナ3を仮組みする工程が追加されたことにより工数が増加したものの、同軸ケーブル14の自重によって生じる作業性の悪化を防止し、シェルASSY1挿入後の行程を簡素化することができるため、トータルの作業時間を短縮することができる。
【0032】
リテーナ3を完全固定させる工程用の治具も簡素化できる(治具無しで手作業で組立可能)。
【0033】
上述したように、リテーナ3を1対とし、それぞれを各スリット22に挿通することとしたので、リテーナ3とシェル11のフランジ112との当接面積を広げることが可能となり、抜去耐力が向上する。
【0034】
<変形例>
実施例1では、N=2,M=2の例を開示したが、例えば、シェルASSY1および挿通穴21が2行3列となっている場合、3行3列となっている場合であっても同様の効果が得られる。