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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022184525
(43)【公開日】2022-12-13
(54)【発明の名称】締め付け部材
(51)【国際特許分類】
   E03C 1/22 20060101AFI20221206BHJP
   E03C 1/12 20060101ALI20221206BHJP
   F16B 31/02 20060101ALI20221206BHJP
   B25B 23/153 20060101ALI20221206BHJP
【FI】
E03C1/22 A
E03C1/12 Z
F16B31/02 Z
B25B23/153
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021092431
(22)【出願日】2021-06-01
(71)【出願人】
【識別番号】000157212
【氏名又は名称】丸一株式会社
(72)【発明者】
【氏名】櫻 健一
【テーマコード(参考)】
2D061
3C038
【Fターム(参考)】
2D061AD01
2D061DA03
2D061DA04
2D061DE01
3C038AA03
3C038CA03
(57)【要約】
【課題】
所定トルクでの締め付け完了が容易に認識可能な締め付け部材、及び常に安定してトルクリミット機構が作動する締め付け部材を提供する。
【解決手段】
締め付け部材1は所定以上のトルクで締め付けが行われた際に作動するトルクリミット機構を備えている。締め付け部材1は水回り部材200に形成された被係合部211と係合する係合部14を備え、当該係合部14は所定以上のトルクで締め付けが行われた際に変形し、締め付け方向に加えられた応力を締め付け部材1が水回り部材200から離間する方向への応力へと変換する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水回り部材の締め付けを行う締め付け部材であって、
所定以上のトルクで締め付けが行われた際に、水回り部材から離間する方向に変位するトルクリミット機構を備えることを特徴とする締め付け部材。
【請求項2】
前記トルクリミット機構は、
所定以上のトルクで締め付けが行われた際に、締め付け方向に加えられた応力を締め付け部材が水回り部材から離間する方向への応力へと変換することを特徴とする請求項1に記載の締め付け部材。
【請求項3】
前記締め付け部材は、
水回り部材と係合する係合部を備え、
前記係合部は所定以上のトルクで締め付けが行われた際に変形することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の締め付け部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水回り部材の締め付けを行うための締め付け部材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
水回り部材は締め付け対象との間にパッキンが配置され、当該パッキンを螺合により圧縮することによって止水を行う。従って、締め付けに係るトルクが低過ぎる場合、パッキンが十分に圧縮されずに止水不良となる。一方で、上記トルクが高過ぎる場合、部材の破損が生じる恐れを有している。
そこで、水回り部材の締め付けを行う際には、トルクリミット機構を備えた締め付け部材が使用される。
【0003】
特許文献1の締め付け部材は、使用者が操作を加える第一部材と、水回り部材と係合する第二部材から成り、第一部材と第二部材が空回りすることにより所定以上のトルクによる締め付けを防止するトルクリミット機構を備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2019-049132号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、締め付け部材は所定トルク以上での締め付けを防止する効果の他、締め付けの完了を容易に認識できる構造が望まれている。
又、従来の締め付け部材は、一度使用した後に再度使用すると、樹脂の摩耗・破損・変形によって所定トルク未満で空回りが生じてしまい、所定トルクでの締め付けが不可能となるという問題があった。
【0006】
本発明は上記問題に鑑み、所定トルクでの締め付け完了が容易に認識可能な締め付け部材、及び常に安定してトルクリミット機構が作動する締め付け部材を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するための請求項1に記載の本発明は、水回り部材の締め付けを行う締め付け部材であって、
所定以上のトルクで締め付けが行われた際に、水回り部材から離間する方向に変位するトルクリミット機構を備えることを特徴とする締め付け部材である。
【0008】
本発明では、離間した締め付け部材を視認することによって、容易に締め付け完了を認識することが可能となる。
【0009】
請求項2に記載の本発明は、前記トルクリミット機構は、
所定以上のトルクで締め付けが行われた際に、締め付け方向に加えられた応力を締め付け部材が水回り部材から離間する方向への応力へと変換することを特徴とする請求項1に記載の締め付け部材である。
【0010】
本発明では、複雑な構造を備えることなくトルクリミット機構を構成することができる。
【0011】
請求項3に記載の本発明は、前記締め付け部材は、
水回り部材と係合する係合部を備え、
前記係合部は所定以上のトルクで締め付けが行われた際に変形することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の締め付け部材である。
【0012】
本発明では、使用によって締め付け部材が変形することから再度の使用が不可能となる。これによって、上記締め付け部材を再度使用されることによる不具合を防止することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、所定トルク以上での締め付けを防止する効果の他、締め付けの完了を容易に認識することが可能となる。又、締め付け部材が複数回使用されることを防ぐことによって、常に安定してトルクリミット機構を作動させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】締め付け部材が水回り部材に取り付けられた状態を示す断面図である。
図2】締め付け部材及びフランジ部材を示す斜視図である。
図3】締め付け部材を示す正面図である。
図4】(a)所定トルク以下で締め付けが行われている状態を示す説明図、(b)(a)における係合部と被係合部を示す拡大図である。
図5】(a)所定トルク以上で締め付けが行われている状態を示す説明図、(b)(a)における係合部と被係合部を示す拡大図である。
図6】締め付け部材が水回り部材から離間した状態を示す説明図である。
図7】第二実施形態に係る水回り部材を示す(a)正面図、(b)断面図である。
図8】第二実施形態に係る締め付け部材を示す(a)上面図、(b)(a)のA-A‘断面図である。
図9】所定トルク以下で締め付けが行われている状態を示す説明図である。
図10】(a)所定トルク以下で締め付けが行われている状態における係合部と被係合部を示す拡大図である。(b)所定トルク以上で締め付けが行われている状態における係合部と被係合部を示す拡大図である。
図11】締め付け部材が水回り部材から離間した状態を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照しながら本発明の締め付け部材を説明する。尚、以下に記載する説明は実施形態の理解を容易にするものであって、これによって本発明が制限して理解されるものではない。
【0016】
[第一実施形態]
図1乃至図3に示すように、本実施形態の締め付け部材1は合成樹脂から成り、防水パン100に対して取り付けられる水回り部材200の締め付けに使用される。
防水パン100は洗濯機が載置されるとともに、洗濯機からの漏水を受ける水受け部分を有する槽体であって、底面に形成された開口に水回り部材200が取り付けられる。
水回り部材200は雄螺子が形成されたフランジ部材210と、雌螺子が形成された排水器220から成り、フランジ部材210と排水器220はパッキンを介して螺合されることによって取り付けられる。
フランジ部材210は上端から外向きにフランジが形成された円筒状であって、外側面には排水器220と螺合する雄螺子が形成されているとともに、内側面には、締め付け部材1と係合するための被係合部211が突設されている。
排水器220は上方が開放された円筒状であって、内側面にフランジ部材210と螺合する雌螺子が形成されているとともに、図示しない椀部等を取り付けることで内部に排水を貯留し、封水を形成するトラップ機能を備える。又、排水器220は側面に排出口を有し、流入した排水を下水側に向けて排出する。
【0017】
締め付け部材1は上面11、胴部12から成る円筒状であって、硬質の合成樹脂によって成形されている。又、締め付け部材1は所定以上のトルクで締め付けが行われた際に、水回り部材200から離間する方向に変位するトルクリミット機構を備えている。
操作部13は締め付け部材1の上面11の中央から延設された六角形の柱状であって、図示しないラチェットレンチによる締め付け操作が加えられる。
係合部14は胴部12の外周下端より上方へ向けて形成された溝状であって、フランジ部材210の被係合部211と合致する幅を有している。又、係合部14は下方が開放されているが、上方及び側方はそれぞれ上壁14a、側壁14bによって閉塞されている。
【0018】
以下に、締め付け部材1を用いた締め付けを説明するとともに、トルクリミット機構の作動について説明する。尚、図4及び図5は発明の理解を容易にするための説明図であり、図4(a)及び図5(a)においては被係合部211を破線にて示している。又、図4(b)及び図5(b)は図4(a)及び図5(a)の状態における係合部14と被係合部211の当接関係を簡易的に示しており、被係合部211を実線にて示している。
まず、締め付け部材1を水回り部材200の内側に配置する。この時、係合部14に被係合部211が係合し、締め付け部材1とフランジ部材210は相対回転不可能となる。
次に、操作部13に対して、ラチェットレンチ(図示せず)によって締め付け操作を加え、締め付け部材1を回動させる。この時、図4に示すように、所定トルク以下での締め付けが行われている間、係合部14と被係合部211が係合しており、側壁14bに被係合部211が当接することによって応力が伝達され、フランジ部材210が回転することで排水器220と螺合する。
上記螺合が進み、締め付け部材1に加わるトルクが所定以上となった時、トルクリミット機構が作動する。即ち、螺合が進むことによって締め付け部材1に係るトルクが増大すると、図5に示すように、係合部14の側壁14bが被係合部211によって押し広げられ、漸次変形する。この時、変形した側壁14bは上壁14aと係合部14の基端部を繋ぐテーパ状となり、締め付け方向に加えられた応力を締め付け部材1が水回り部材200から離間する方向への応力へと変換する。
そして、締め付けに係るトルクが所定以上になると、図6のように、変形した側壁14bによって、締め付け部材1は水回り部材200から離間する方向に変位し、水回り部材200から分離する。この時、締め付け部材1は水回り部材200から分離する際に生じる触感や音、そして分離した状態を視認させることにより所定以上のトルクでの締め付けが行われたことを触覚や聴覚、視覚を通じて使用者に通知する。
【0019】
上記締め付け部材1はトルクリミット機構を備え、所定以上のトルクでの締め付けが行われた際に水回り部材200から離間する方向に変位する。これにより、使用者は視覚を通じて容易に締め付けの完了を容易に認識することができる。
又、締め付けを行った締め付け部材1は硬質樹脂ではから成るが、トルクリミット機構の作動によって強い応力を受けた結果、係合部14が変形しており、再度の使用は不可能となることから、締め付け部材1が繰り返し使用されることによる施工不良が生じることはない。
【0020】
[第二実施形態]
図7図乃至図11に示す第二実施形態において、締め付け部材3はシンク400に取り付けられる水回り部材500の締め付けに使用される。
シンク400は水栓からの上水を受ける水受け部分を有する槽体であって、底面に形成された開口に水回り部材500が取り付けられる。
水回り部材500は雌螺子が形成されたナット510と、雄螺子が形成された排水器520から成り、ナット510と排水器520はパッキンを介して螺合されることによって取り付けられる。
ナット510は外周に凸状の被係合部511が90°毎に形成されており、内側面には排水器520と螺合する雌螺子が形成されている。
排水器520は上方が開放された円筒状であって、内側面にナット510と螺合する雌螺子が形成されている。又、排水器520は側面に排出口を有し、流入した排水を下水側に向けて排出する。
【0021】
図8に示すように、締め付け部材3は把持部31と環状部32から成り、硬質の合成樹脂によって成形されている。又、締め付け部材3は所定以上のトルクで締め付けが行われた際に、水回り部材500を構成する部材であるナット510から離間する方向に変位するトルクリミット機構を備えている。
把持部31は使用者が直接把持して回転操作を加える棒状であって、端部には環状部32が形成されている。
環状部32は内側面に係合部33を有する円環状であって、係合部33はナット510の被係合部511と合致する幅を有している。尚、図8(b)に示すように、係合部33は上方が開放されているが、下方及び側方はそれぞれ底壁33a、側壁33bによって閉塞されている。
【0022】
以下に、締め付け部材3を用いた締め付けを説明するとともに、トルクリミット機構の作動について説明する。尚、図9乃至図11は発明の理解を容易にするための説明図であり、図9及び図11においては係合部33及び被係合部511を破線にて示している。又、図10においては締め付けの進行に伴う係合部33と被係合部511の当接関係を簡易的に示しており、係合部33及び被係合部511を実線にて示している。
まず、図9に示すように、ナット510を排水器520に対して素手で軽く螺合させた状態で、締め付け部材3をナット510に取り付ける。この時、合部33に被係合部511が係合し、締め付け部材3とナット510は相対回転不可能となる。
次に、把持部31を把持し、締め付け操作を行うことで締め付け部材3を回動させる。この時、図10(a)に示すように、所定トルク以下での締め付けが行われている間、係合部33っと被係合部511が係合しており、側壁33bに被係合部511が当接することによって応力が伝達され、ナット510が回転することで排水器520と螺合する。
上記螺合が進み、締め付け部材3に加わるトルクが所定以上となった時、トルクリミット機構が作動する。即ち、螺合が進むことによって締め付け部材3に係るトルクが増大すると、図10(b)に示すように、係合部33の側壁33bが被係合部511によって押し広げられ、漸次変形する。この時、変形した側壁33bは底壁33aと係合部33の基端部を繋ぐテーパ状となり、締め付け方向に加えられた応力を締め付け部材3が水回り部材500から離間する方向への応力へと変換する。
そして、締め付けに係るトルクが所定以上になると、図11のように、変形した側壁33bによって、締め付け部材1は水回り部材500から離間する方向に変位し、水回り部材500から分離する。この時、締め付け部材3は水回り部材500から分離する際に生じる触感や音、そして分離した状態を視認させることにより所定以上のトルクでの締め付けが行われたことを触覚や聴覚、視覚を通じて使用者に通知する。
【0023】
上記締め付けを行った締め付け部材3は、トルクリミット機構の作動によって係合部33が変形しており、再度の使用は不可能となる。
【0024】
上記締め付け部材3はトルクリミット機構を備え、所定以上のトルクでの締め付けが行われた際に水回り部材500から離間する方向に変位する。これにより、使用者は視覚を通じて容易に締め付けの完了を容易に認識することができる。
又、締め付けを行った締め付け部材3は、硬質樹脂から成るが、トルクリミット機構の作動によって強い応力を受けた結果、係合部33が変形しており、再度の使用は不可能となることから、締め付け部材3が繰り返し使用されることによる施工不良が生じることはない。
【0025】
本発明の実施形態は以上であるが、本発明は上記実施形態の構造に限られるものではない。例えば、本発明の締め付け部材は防水パン又はシンクに取り付けられる水回り部材の締め付けに使用されていたが、締め付け対象は限定されるものではなく、あらゆる部材の締め付けに使用されて良い。
【符号の説明】
【0026】
1 締め付け部材
11 上面
12 胴部
13 操作部
14 係合部
14a 上壁
14b 側壁
100 防水パン
200 水回り部材
210 フランジ部材
211 被係合部
220 排水器
3 締め付け部材
31 把持部
32 環状部
33 係合部
33a 底壁
33b 側壁
400 シンク
500 水回り部材
510 ナット
511 被係合部
520 排水器
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11