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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022184529
(43)【公開日】2022-12-13
(54)【発明の名称】劣化検査装置及び劣化検査方法
(51)【国際特許分類】
   G01R 31/26 20200101AFI20221206BHJP
【FI】
G01R31/26 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021092445
(22)【出願日】2021-06-01
(71)【出願人】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(71)【出願人】
【識別番号】317011920
【氏名又は名称】東芝デバイス&ストレージ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】間島 秀明
【テーマコード(参考)】
2G003
【Fターム(参考)】
2G003AA02
2G003AB02
2G003AB04
2G003AB06
2G003AB08
2G003AB16
2G003AE06
2G003AH01
2G003AH10
(57)【要約】
【課題】MOSトランジスタの劣化状態を容易に検査することが出来る劣化検査装置及び劣化検査方法を提供すること。
【解決手段】一つの実施形態によれば、劣化検査装置は、MOSトランジスタと、前記MOSトランジスタの主電流路に直列に接続され、前記MOSトランジスタがオン状態の時に前記MOSトランジスタと共に閉ループを構成するインダクタと、前記MOSトランジスタのオン/オフを制御する制御回路と、前記インダクタが放出する電流を検出する電流センサと、前記MOSトランジスがオン状態の時に前記インダクタが放出する電流の減衰特性から前記MOSトランジスタのオン抵抗を算出し、前記MOSトランジスタがオフ状態の時に前記インダクタが放出する電流の減衰特性から前記MOSトランジスタのしきい値電圧を算出する算定回路と、を具備する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
MOSトランジスタと、
前記MOSトランジスタの主電流路に直列に接続され、前記MOSトランジスタがオン状態の時に前記MOSトランジスタと共に閉ループを構成するインダクタと、
前記MOSトランジスタのオン/オフを制御する制御回路と、
前記インダクタが放出する電流を検出する電流センサと、
前記MOSトランジスタがオン状態の時に前記インダクタが放出する電流の減衰特性から前記MOSトランジスタのオン抵抗を算出し、前記MOSトランジスタがオフ状態の時に前記インダクタが放出する電流の減衰特性から前記MOSトランジスタのしきい値電圧を算出する算定回路と、
を具備することを特徴とする劣化検査装置。
【請求項2】
前記MOSトランジスタの温度を検出する温度センサを具備することを特徴とする請求項1に記載の劣化検査装置。
【請求項3】
予め設定したオン抵抗及びしきい値電圧のしきい値と、前記算定回路が算出した前記MOSトランジスタのオン抵抗としきい値電圧とを比較して前記MOSトランジスタの劣化状態を判定する判定回路を備えることを特徴とする請求項1または2に記載の劣化検査装置。
【請求項4】
前記MOSトランジスタは、横型MOSトランジスタであることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の劣化検査装置。
【請求項5】
前記MOSトランジスタはGaNトランジスタであることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の劣化検査装置。
【請求項6】
インダクタと共に閉ループを構成するMOSトランジスタがオン状態の時に前記インダクタが放出する電流の減衰特性から前記MOSトランジスタのオン抵抗を算出するステップと、
前記MOSトランジスタがオフ状態の時に前記インダクタが放出する電流の減衰特性から前記MOSトランジスタのしきい値電圧を算出するステップと、
を具備することを特徴とする劣化検査方法。
【請求項7】
予め設定したオン抵抗及びしきい値電圧のしきい値と、算出した前記MOSトランジスタのオン抵抗としきい値電圧とを比較して前記MOSトランジスタの劣化状態を判定するステップを備えることを特徴とする請求項6に記載の劣化検査方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本実施形態は、劣化検査装置及び劣化検査方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、出力トランジスタを構成するMOSトランジスタとしてGaN(窒化ガリウム)トランジスタを用いた電源回路の技術が開示されている。GaNトランジスタは高耐圧で低損失である為、高電圧を出力する電源回路への適用に好適する。出力トランジスタを構成するMOSトランジスタのオン抵抗の増加は電源回路の消費電力の増加を招き、また、しきい値電圧の変化はオン/オフの制御性に影響を与える。MOSトランジスタのオン抵抗、及び、しきい値電圧は経時的に変化する。MOSトランジスタの劣化状態を容易に検査することが出来る劣化検査装置及び劣化検査方法が望まれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-145576号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一つの実施形態は、MOSトランジスタの劣化状態を容易に検査することが出来る劣化検査装置及び劣化検査方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
一つの実施形態によれば、劣化検査装置は、MOSトランジスタと、前記MOSトランジスタの主電流路に直列に接続され、前記MOSトランジスタがオン状態の時に前記MOSトランジスタと共に閉ループを構成するインダクタと、前記MOSトランジスタのオン/オフを制御する制御回路と、前記インダクタが放出する電流を検出する電流センサと、前記MOSトランジスがオン状態の時に前記インダクタが放出する電流の減衰特性から前記MOSトランジスタのオン抵抗を算出し、前記MOSトランジスタがオフ状態の時に前記インダクタが放出する電流の減衰特性から前記MOSトランジスタのしきい値電圧を算出する算定回路と、を具備する。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1図1は、第1の実施形態の劣化検査装置の構成を示す図。
図2図2は、トランジスタがオン状態の場合の還流電流を説明する為の図。
図3図3は、還流電流の減衰特性を説明する為の図。
図4図4は、トランジスタがオフ状態の場合の還流電流を説明する為の図。
図5図5は、劣化検査方法の一つの実施形態を示すフローチャート。
図6図6は、第2の実施形態の劣化検査装置の構成を示す図。
図7図7は、GaNトランジスタの導通状態と還流電流の減衰特性との関係を説明する為の図。
図8図8は、劣化検査方法の他の一つの実施形態を示すフローチャート。
図9図9は、還流電流の実測値と算出データのフィッティングについて説明する為の図。
図10図10は、第3の実施形態の劣化検査装置の構成を示す図。
図11図11は、第4の実施形態の劣化検査装置の構成を示す図。
図12図12は、ローサイドのGaNトランジスタの劣化状態を判定する場合のインダクタ電流を説明する為の図。
図13図13は、ローサイドのGaNトランジスタの劣化状態を判定する場合の還流電流を説明する為の図。
図14図14は、ハイサイドのGaNトランジスタの劣化状態を判定する場合のインダクタ電流を説明する為の図。
図15図15は、ハイサイドのGaNトランジスタの劣化状態を判定する場合の還流電流を説明する為の図。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下に添付図面を参照して、実施形態にかかる劣化検査装置及び劣化検査方法を詳細に説明する。なお、これらの実施形態により本発明が限定されるものではない。
【0008】
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態の劣化検査装置の構成を示す図である。MOSトランジスタ10は、被検査対象のNチャネル型のMOSトランジスタである。本実施形態は、MOSトランジスタ10のドレインが接続されるノードN1に一端が接続され、他端がMOSトランジスタ10のソースが接続されるノードN2に接続されるインダクタ6を有する。インダクタ6は、MOSトランジスタ10の主電流路であるソース・ドレイン路に直列に接続され、MOSトランジスタ10がオン状態の時にMOSトランジスタ10と共に閉ループを構成する。
【0009】
ノードN1には、電源7が接続される。ノードN2と接地との間にはスイッチ12を有する。
【0010】
本実施形態は、MOSトランジスタ10のオン/オフを制御する制御回路1を有する。制御回路1は、MOSトランジスタ10のゲートに駆動信号VGを供給し、MOSトランジスタ10のオン/オフを制御する。制御回路1は、スイッチ12に制御信号VSを供給する。制御回路1は、制御信号VSによりスイッチ12のオン/オフを制御する。スイッチ12のオン/オフにより、MOSトランジスタ10とインダクタ6によって構成される閉ループを還流する還流電流が制御される。還流電流の制御については、後述する。制御回路1は、駆動信号VG及び制御信号VSを出力したタイミングを示すタイミング信号VTを処理回路2に供給する。
【0011】
本実施形態は、電流センサ4を有する。電流センサ4は、インダクタ6が放出する電流を検出する。電流センサ4の検出信号は、処理回路2に供給される。
【0012】
処理回路2は、MOSトランジスタ10がオン状態の時にインダクタ6が放出する電流の減衰特性からMOSトランジスタ10のオン抵抗を算出し、MOSトランジスタ10がオフ状態の時にインダクタ6が放出する電流の減衰特性からMOSトランジスタ10のしきい値電圧Vthを算出する。処理回路2は、例えば、演算処理を行うCPU(Central Processing Unit)(図示せず)と、演算結果を保存するメモリ(図示せず)を有する。
【0013】
本実施形態は、MOSトランジスタ10の温度を検出する温度センサ5を有する。温度センサ5の検出信号は、劣化判定回路3に供給される。
【0014】
劣化判定回路3は、処理回路2が算出したMOSトランジスタ10のオン抵抗RONとしきい値電圧Vthを、予め設定したオン抵抗RON及びしきい値電圧Vthの夫々のしきい値と比較してMOSトランジスタ10の劣化状態を判定する。劣化判定回路3は、例えば、オン抵抗RONが所定のしきい値に対して許容される範囲の抵抗値を超えた場合、あるいは、しきい値電圧Vthが所定のしきい値に対して許容される範囲の電圧値を超えた場合に、MOSトランジスタ10に劣化が生じていると判定する。
【0015】
MOSトランジスタ10のオン抵抗RON、あるいは、しきい値電圧Vthは、MOSトランジスタ10の温度によって変化する。従って、MOSトランジスタ10の劣化判定の為のしきい値は、例えば、温度に関連付けられた値として劣化判定回路3の所定のテーブル(図示せず)に保存され、劣化判定回路3において処理回路2からの演算結果と比較される。
【0016】
処理回路2からの演算結果としきい値との比較に基づく判定結果が判定信号CPとして出力される。例えば、処理回路2からのMOSトランジスタ10のオン抵抗RON、及び、しきい値電圧Vthの値が、予め設定したしきい値に対して所定の範囲内にある場合には、MOSトランジスタ10は劣化無しと判定され、所定の範囲外の場合には、MOSトランジスタ10に劣化有りと判定される。
【0017】
図2乃至図4を用いて、MOSトランジスタ10のオン抵抗RON、及びしきい値電圧Vthの検出方法を説明する。図2は、トランジスタがオン状態の場合の還流電流を説明する為の図である。図1の実施形態において、制御回路1からの制御信号VSによりスイッチ12をオン状態からオフ状態にし、MOSトランジスタ10に駆動信号VGONを供給してMOSトランジスタ10をオン状態にすると、インダクタ6は現状の電流状態を維持して電流を流し続けようとする為、MOSトランジスタ10とインダクタ6によって構成される閉ループを還流電流iONが流れる。MOSトランジスタ10がオン状態の時にインダクタ6が放出する電力Pは、P=(MOSトランジスタ10のオン抵抗RON×還流電流iON )で示される。還流電流iONは、MOSトランジスタ10による電圧降下によって消費される。インダクタ6が単位時間当たりに放出する電力は、MOSトランジスタ10において単位時間当たりの熱として消費される。還流電流iONは、インダクタ6が放出する電流であり、式(1)で示される。
【0018】
【数1】
ここで、Ioは、還流電流iONの初期値、Lはインダクタ6のインダクタンス、RLOOPは、MOSトランジスタ10とインダクタ6の閉ループの抵抗値の合計値を示す。RLOOPは、MOSトランジスタ10のオン抵抗RONとインダクタ6の寄生抵抗Rを含む。式(1)に示すiONは減衰特性を示す。還流電流iONの初期値Iは、制御回路1から供給されるタイミング信号VTに応じて、電流センサ4により測定することが出来る。スイッチ12のオン時間の調整により、初期値Iの値を調整することが出来る。
【0019】
図3は、還流電流の減衰特性を説明する為の図である。実線100は、還流電流iONを示す。記述した式(1)を微分すると、係数としてRLOOP/Lが得られる。式(1)の微分は、還流電流iONの傾きを求めることに等しい。従って、図3に示す還流電流iONの所定の時間t1からt2までの時間差Δtにおける還流電流iONの電流値i1からi2までの電流の変化値Δiを求めることで、還流電流iONの傾きの係数RLOOP/Lを算出することが出来る。
【0020】
Lの値としてインダクタ6の既知の値を用い、また、RLOOPの値からインダクタ6の寄生抵抗の値を引き算することで、MOSトランジスタ10のオン抵抗RONを算出することが出来る。
【0021】
電流センサ4を用いて実測した還流電流iONと、還流電流iONの減衰特性から求めた係数RLOOP/Lを用いて算出した還流電流iONのシミュレーションのデータを比較し、その両者の誤差を最小化するフィッティングを行うことで、MOSトランジスタ10のオン抵抗RONの算出の精度を高めることが出来る。誤差の算出とフィッティングは、処理回路2において実行することが出来る。
【0022】
図4は、MOSトランジスタ10がオフ状態の場合の還流電流を説明する為の図である。MOSトランジスタ10とインダクタ6の閉ループに還流電流が流れる状態で、制御回路1から駆動信号VGOFFをMOSトランジスタ10のゲートに供給してMOSトランジスタ10をオフにすると、MOSトランジスタ10とインダクタ6の閉ループに還流電流iOFFが流れる。MOSトランジスタ10がオフ状態の時にインダクタ6が放出する電力Pは、P=(MOSトランジスタ10のしきい値電圧Vth×還流電流iOFF)で示される。また、MOSトランジスタ10がオフの状態の時の還流電流iOFFは式(2)で示される。
【0023】
【数2】
ここで、VGSは、MOSトランジスタ10のゲート・ソース間電圧、Vthは、MOSトランジスタ10のしきい値電圧を示す。式(2)に示す還流電流iOFFは、減衰特性を示す。尚、式(2)においては、Ioは、還流電流iOFFの初期値を示す。
【0024】
MOSトランジスタ10の性質として、ソース側から電流が注入されると、ゲート電位をしきい値電圧Vth以下に下げても、ソース側から供給される電流によってドレイン電位が下がり、ドレインから見たゲート電位がしきい値電圧Vth以上に上昇して電流が流れる。すなわち、ゲートを中心にして、ソースがドレインとして機能し、ドレインがソースとして対称的、且つ可逆的に機能する性質を有する。この可逆的な機能の性質は、半導体基板(図示せず)の表面に、ソースとドレインが形成される、所謂、プレーナ型の横型MOSトランジスタが有する。この可逆的な機能の性質を利用して、MOSトランジスタ10のゲート・ドレイン間の電圧をしきい値電圧Vthとして算出し、MOSトランジスタ10の劣化状態を判定する指標とすることが出来る。
【0025】
MOSトランジスタ10を流れる還流電流iOFFは、MOSトランジスタ10の飽和領域の電流の式に従って流れ、MOSトランジスタ10のソース・ドレイン間には、しきい値電圧Vth程度の電圧Eが発生する。この電圧Eは、MOSトランジスタ10がオンするのに必要な電圧であり、還流電流iOFFが流れる間は、MOSトランジスタ10を定電圧源と見做すことが出来る。還流電流iOFFは、MOSトランジスタ10による電圧降下によって消費される。インダクタ6が単位時間当たりに放出する電力は、MOSトランジスタ10において単位時間当たりの熱として消費される。
【0026】
既述した還流電流iONの減衰特性の場合と同様に、式(2)を微分すると、(I-(VGS-Vth)/RLOOP)とRLOOP/Lを含む係数が得られる。式(2)の微分は、還流電流iOFFの傾きを求めることに等しい。従って、図3に示す還流電流iONの場合と同様に、所定の時間差Δtにおける還流電流iOFFの変化値Δiを求めることで、還流電流iOFFの傾きを算出することが出来る。還流電流iOFFの初期値Iは、制御回路1から供給されるタイミング信号VTに応答して、電流センサ4により測定することが出来る。
【0027】
Lの値としてインダクタ6の既知の値を用い、また、RLOOPの値からインダクタ6の寄生抵抗の値を引き算することで、MOSトランジスタ10のオン抵抗RONを算出することが出来る。尚、MOSトランジスタ10のオン抵抗RONの値としては、既述した様に、還流電流iONの減衰特性から求めた値を用いることが出来る。
【0028】
MOSトランジスタ10のゲート・ソース間電圧VGSは、MOSトランジスタ10のゲートに印加される駆動信号VGOFFの電圧とノードN2の電圧の電圧差で示される。ノードN2の電圧は、電源7の電圧で定まる。算出した還流電流iOFFの傾きと、初期値I、RLOOP、L、VGSを用いて演算することで、しきい値電圧Vthを算出することが出来る。尚、還流電流iOFFの減衰特性からMOSトランジスタ10の劣化状態を判定する場合には、未知の値として求めるパラメータはMOSトランジスタ10のオン抵抗RONとしきい値電圧Vthとなる為、還流電流iOFFの減衰特性から3点以上の値を測定して2つ以上の還流電流iOFFの減衰特性の傾きを算出する。
【0029】
還流電流iOFFの減衰特性からMOSトランジスタ10のしきい値電圧Vthを算出する場合も、電流センサ4を用いて実測した還流電流iOFFの値と、還流電流iOFFの減衰特性から求めた(I-(VGS-Vth)/RLOOP)とRLOOP/Lを含む係数を用いて算出した還流電流iOFFのシミュレーションのデータを比較し、その誤差を最小化するフィッティングを行うことで、MOSトランジスタ10のしきい値電圧Vthの算出の精度を高めることが出来る。誤差の算出とフィッティングは、処理回路2において実行することが出来る。
【0030】
図5は、劣化検査方法の一つの実施形態を示すフローチャートである。既述した第1の実施形態の劣化検査装置において、図2乃至図4を用いて説明した方法で実行される。
【0031】
MOSトランジスタ10がオン状態の時の還流電流iONの減衰特性からMOSトランジスタ10のオン抵抗RONを算出する(S10)。還流電流iONの減衰特性からRLOOP/Lを求めてMOSトランジスタ10のオン抵抗RONを算出する方法は、記述した通りである。
【0032】
MOSトランジスタ10がオフ状態の時の還流電流iOFFの減衰特性からMOSトランジスタ10のしきい値電圧Vthを算出する(S11)。還流電流iOFFの減衰特性からRLOOP/Lを求めてMOSトランジスタ10のしきい値電圧Vthを算出する方法は、記述した通りである。
【0033】
尚、MOSトランジスタ10がオフ状態の時の還流電流iOFFの減衰特性からMOSトランジスタ10のしきい値電圧Vthを算出し、次に、MOSトランジスタ10がオン状態の時の還流電流iONの減衰特性からMOSトランジスタ10のオン抵抗RONを算出しても良い。
【0034】
算出したMOSトランジスタ10のオン抵抗RON、しきい値電圧Vthが所定の範囲内にあるか否かを判定する(S12)。すなわち、所定のしきい値と算出したオン抵抗RON、しきい値電圧Vthを比較して、所定の範囲内にあるか否かを判定する。
【0035】
算出したオン抵抗RON、しきい値電圧Vthが所定の範囲内にある場合(S12:Yes)の場合には、MOSトランジスタ10に劣化無しと判定する(S13)。算出したオン抵抗RON、しきい値電圧Vthが所定の範囲内にない場合(S12:No)の場合には、MOSトランジスタ10に劣化有りと判定する(S14)。
【0036】
第1の実施形態によれば、MOSトランジスタ10とインダクタ6が構成する閉ループを流れる還流電流iON、iOFFの減衰特性から、MOSトランジスタ10のオン抵抗RON、及び、しきい値電圧Vthを算出し、所定のしきい値と比較することで、MOSトランジスタ10の劣化状態を容易に判定することが出来る。尚、劣化判定回路3において用いる所定のしきい値は、温度に関連付けた値でなくても良い。例えば、しきい値は所定の許容範囲を設けたしきい値として設定し、温度センサ5は省略する構成でも良い。
【0037】
(第2の実施形態)
図6は、第2の実施形態の劣化検査装置の構成を示す図。既述した実施形態に対応する構成には、同一符号を付し、重複する記載は必要な場合にのみ行う。以降、同様である。
【0038】
本実施形態は、ハイサイドにGaN(窒化ガリウム)トランジスタ10Gとシリコンで形成されたスイッチングトランジスタ10Lを有する。GaNトランジスタ10Gは、ドレイン・ソース間の主電流路がGaNで構成されるノーマリオン型のMOSトランジスタである。スイッチングトランジスタ10Lは、ノーマリオフ型のMOSトランジスタである。GaNトランジスタ10Gとスイッチングトランジスタ10Lはカスコード接続されている。
【0039】
制御回路1は、駆動信号VG1をGaNトランジスタ10Gのゲートに供給し、駆動信号VG2をスイッチングトランジスタ10Lのゲートに供給する。駆動信号VG1によってGaNトランジスタ10Gのオン/オフが制御され、駆動信号VG2によってスイッチングトランジスタ10Lのオン/オフが制御される。電源ライン8には、正側の電源電圧VDC_Pが印加される。
【0040】
本実施形態は、ローサイドにGaNトランジスタ11Gとシリコンで形成されたスイッチングトランジスタ11Lを有する。GaNトランジスタ11Gとスイッチングトランジスタ11Lはカスコード接続されている。制御回路1は、駆動信号VG3をGaNトランジスタ11Gのゲートに供給し、駆動信号VG4をスイッチングトランジスタ11Lのゲートに供給する。駆動信号VG3によってGaNトランジスタ11Gのオン/オフが制御され、駆動信号VG4によってスイッチングトランジスタ11Lのオン/オフが制御される。電源ライン9には、負側の電源電圧VDC_Mが印加される。
【0041】
本実施形態は、電源ライン8、9に印加されるDC電圧を所定のDC電圧に変換して出力するDC/DCコンバータにおいて、高耐圧で低損失のGaNトランジスタ10G、11Gが出力トランジスタとして用いられた場合を示す。ハイサイドのGaNトランジスタ10G、スイッチングトランジスタ10L、及びローサイドのGaNトランジスタ11G、スイッチングトランジスタ11Lは、ハーフブリッジ回路を構成する。ノードN1に接続されるインダクタ6の一端は、DC/DCコンバータにおいては、負荷(図示せず)側に接続される。ハイサイドのGaNトランジスタ10Gの劣化判定においては、図示の様に、インダクタ6はGaNトランジスタ10Gとスイッチングトランジスタ10Lと共に閉ループを形成する様に接続される。
【0042】
ハイサイド側のGaNトランジスタ10Gのオン抵抗RON、しきい値電圧Vthの算出方法を、図7を用いて説明する。
【0043】
図7は、GaNトランジスタの導通状態と還流電流の減衰特性との関係を説明する為の図である。図7の上段は、GaNトランジスタ10G、スイッチングトランジスタ10Lがオン状態で、還流電流iONが流れる状態を示す。
【0044】
還流電流iONは、インダクタ6が放出する電流であり、式(3)で示される。還流電流iONは、減衰特性を示す。
【0045】
【数3】
ここで、Ioは、還流電流iONの初期値、Lはインダクタ6のインダクタンス、RLOOPは、GaNトランジスタ10G、スイッチングトランジスタ10L、及びインダクタ6が構成する閉ループの抵抗値を示す。RLOOPは、GaNトランジスタ10Gとスイッチングトランジスタ10Lのオン抵抗、及びインダクタ6の寄生抵抗Rを含む。
【0046】
スイッチングトランジスタ10Lのオン抵抗を無視すると、記述した実施形態1の場合と同様となり、還流電流iONの減衰特性からGaNトランジスタ10Gのオン抵抗RONを算出することが出来る。また、電流センサ4を用いて実測した還流電流iONと、還流電流iONの減衰特性から求めた係数RLOOP/Lを用いて算出した還流電流iONのシミュレーションのデータを比較し、その誤差を最小化するフィッティングを行うことで、GaNトランジスタ10Gのオン抵抗RONの算出の精度を高めることが出来る。
【0047】
図7の下段は、GaNトランジスタ10Gがオフで、スイッチングトランジスタ10Lがオン状態の場合の還流電流iOFFが流れる状態を示す。
【0048】
還流電流iOFFは、インダクタ6が放出する電流であり、式(4)で示される。すなわち、還流電流iOFFは、減衰特性を示す。
【0049】
【数4】
ここで、Vは、GaNトランジスタ10GのゲートとノードN2との間の電圧、Vthは、GaNトランジスタ10Gのしきい値電圧を示す。式(4)で示す還流電流iOFFは、減衰特性を示す。
【0050】
横型MOSトランジスタとして形成されるGaNトランジスタ10Gの性質としてソース側から電流が注入されると、ゲート電位をしきい値電圧Vth以下に下げても、ソース側から供給される電流によってドレイン電位が下がり、ドレインから見たゲート電位がしきい値電圧Vth以上に上昇して電流が流れる。ソースがドレインとして機能し、ドレインがソースとして機能する可逆的な機能の性質によりGaNトランジスタ10Gに電流が流れる。すなわち、還流電流iOFFが流れる。この可逆的な機能の性質を利用して、GaNトランジスタ10Gのゲート・ドレイン間の電圧をしきい値電圧Vthとして算出し、GaNトランジスタ10Gの劣化状態を判定する指標とすることが出来る。
【0051】
GaNトランジスタ10Gを流れる還流電流iOFFは、GaNトランジスタ10Gの飽和領域の電流の式に従って流れ、GaNトランジスタ10Gのソース・ドレイン間には、しきい値電圧Vth程度の電圧Eが発生する。この電圧Eは、GaNトランジスタ10Gがオンするのに必要な電圧であり、還流電流iOFFが流れる間は、GaNトランジスタ10Gは定電圧源と見做すことが出来る。還流電流iOFFはGaNトランジスタ10Gによる電圧降下によって消費される。インダクタ6が単位時間当たりに放出する電力は、GaNトランジスタ10Gにおいて単位時間当たりの熱として消費される。
【0052】
既述した還流電流iONの減衰特性の場合と同様に、式(4)を微分すると、係数としてRLOOP/Lが得られる。式(4)の微分は、還流電流iOFFの傾きを求めることに等しい。従って、図3に示す還流電流iONの場合と同様に、所定の時間差Δtにおける還流電流iOFFの変化値Δiを求めることで、還流電流iOFFの傾きを示すRLOOP/Lを算出することが出来る。
【0053】
Lの値としてインダクタ6の既知の値を用い、また、RLOOPの値からインダクタ6の寄生抵抗の値を引き算することで、GaNトランジスタ10Gのオン抵抗RONを算出することが出来る。尚、GaNトランジスタ10Gのオン抵抗RONの値としては、既述した様に、還流電流iONの減衰特性から求めた値を用いることが出来る。GaNトランジスタ10Gのゲート・ソース間電圧VGSは、GaNトランジスタ10Gのゲートに印加される駆動信号VGOFFとノードN2との間の電圧差で示される。ノードN2の電圧は、電源ライン8、9に印加される電源電圧VDC_PとVDC_Mにより、例えば、0Vに設定される。
【0054】
図8は、劣化検査方法の他の一つの実施形態を示すフローチャートである。既述した第2の実施形態において実施することが出来る。
【0055】
ハイサイドとローサイドのスイッチングトランジスタ10L、11Lはオン状態にし、ハイサイドとローサイドのGaNトランジスタ10G、11Gは、オフ状態にする(S20)。
【0056】
ローサイドのGaNトランジスタ11Gをオンさせ、インダクタ6に電流が流れる状態にする(S21)。これにより、インダクタ6に電力を蓄積する。GaNトランジスタ11Gのオン時間の調整により、還流電流の初期値を調整することが出来る。
【0057】
ローサイドのGaNトランジスタ11Gをオフさせ、ハイサイドのGaNトランジスタ10Gとインダクタ6に還流電流が流れる状態にする(S22)。
【0058】
ハイサイドのGaNトランジスタ10Gをオンさせる(S23)。すなわち、制御回路1から駆動信号VG1ONをGaNトランジスタ10Gのゲートに供給する。
【0059】
還流電流iONの減衰特性からハイサイドのGaNトランジスタ10Gのオン抵抗RONを算出する(S24)。既述した様に、還流電流iONの減衰特性の傾きを求めることで、オン抵抗RONを含むRLOOPとインダクタLの係数RLOOP/Lを算出することが出来る。
【0060】
ハイサイドのGaNトランジスタ10Gをオフさせる(S25)。
【0061】
ローサイドのGaNトランジスタ11Gをオンさせ、インダクタ6に電流が流れる状態にする(S26)。これにより、インダクタ6に電力を蓄積する。
【0062】
ローサイドのGaNトランジスタ11Gをオフさせ、ハイサイドのGaNトランジスタ10Gとインダクタ6に電流が流れる状態にする(S27)。すなわち、還流電流iOFFが流れる状態にする。
【0063】
還流電流iOFFの減衰特性からハイサイドのGaNトランジスタ10Gのしきい値電圧Vthを算出する(S28)。
【0064】
算出したハイサイドのGaNトランジスタ10Gのオン抵抗RON、しきい値電圧Vthが所定の範囲内にあるか否かを判定する(S29)。すなわち、所定のしきい値と算出したオン抵抗RON、しきい値電圧Vthを比較して、所定の範囲内にあるか否かを判定する。
【0065】
算出したオン抵抗RON、しきい値電圧Vthが所定の範囲内にある場合(S29:Yes)には、ハイサイドのGaNトランジスタ10Gに劣化無しと判定する(S30)。算出したオン抵抗RON、しきい値電圧Vthが所定の範囲内にない場合(S29:No)のには、ハイサイドのGaNトランジスタ10Gに劣化有りと判定する(S31)。
【0066】
第2の実施形態によれば、ハイサイドのGaNトランジスタ10Gとインダクタ6が構成する閉ループを流れる還流電流iON、iOFFの減衰特性からハイサイドのGaNトランジスタ10Gの劣化状態を容易に判定することが出来る。GaNトランジスタ10Gは、使用中に電流コラプスにより、オン抵抗RON、あるいは、しきい値電圧Vthが変化する。本実施形態の劣化判定装置は、DC/DCコンバータを構成するインダクタ6を用いてGaNトランジスタ10Gの劣化状態を判定する構成である為、容易に構成することが出来る。
【0067】
図9は、還流電流の実測値とシミュレーションのデータのフィッティングについて説明する為の図である。第2の実施形態において実行することが出来る。横軸は時間、縦軸は電流を示す。実線101は、ハイサイドのGaNトランジスタ10Gをオン状態にした場合の還流電流iONの減衰特性の実測データを示す。ハイサイドのGaNトランジスタ10Gに還流電流が流れる状態にした時間t0から所定の時間遅れたタイミングで、ハイサイドのGaNトランジスタ10Gをオン状態にした場合である。
【0068】
既述した様に、還流電流iONは、式(3)で示す減衰特性に従って減衰する。任意の時間t3、t4間の時間差Δt1における還流電流iONの変化値Δi(図示せず)を算出して還流電流iONの減衰特性の傾きを求めることで、ハイサイドのGaNトランジスタ10Gのオン抵抗RONを含むRLOOPとインダクタLの係数RLOOP/Lを算出することが出来る。
【0069】
また、還流電流iONの減衰特性から求めた係数RLOOP/Lを用いて算出した還流電流iONのシミュレーションのデータと実測データを比較し、その誤差を最小化するフィッティングを行うことで、一点鎖線111で示すシミュレーションデータと実線101で示す実測データの誤差を最小化して、GaNトランジスタ10Gのオン抵抗RONの算出の精度を高めることが出来る。誤差の算出とフィッティングは、処理回路2において実行することが出来る。
【0070】
実線102は、ハイサイドのGaNトランジスタ10Gをオフ状態にした場合の還流電流iOFFの減衰特性の実測データを示す。ハイサイドのGaNトランジスタ10Gをオフにした状態で、時間t0において、ローサイドのGaNトランジスタ11Gをオフ状態にした場合である。
【0071】
既述した様に、還流電流iOFFは、式(4)で示す減衰特性に従って減衰する。任意の時間t10、t11間の時間差Δt11における還流電流iOFFの変化値Δi、及び時間t12、t13間の時間差Δt12における還流電流iOFFの変化値Δi(図示せず)を算出して還流電流iOFFの減衰特性の傾きを求めることで、ハイサイドのGaNトランジスタ10Gのしきい値電圧Vthを算出することが出来る。
【0072】
また、還流電流iOFFの実測データと、還流電流iOFFの減衰特性から求めた係数RLOOP/Lを用いて算出した還流電流iOFFのシミュレーションのデータとを比較し、両者の誤差を最小化するフィッティングを行うことで、一点鎖線112で示すシミュレーションデータと実線102で示す実測データの誤差を最小化し、GaNトランジスタ10Gのしきい値電圧Vthの算出の精度を高めることが出来る。誤差の算出とフィッティングは、処理回路2において実行することが出来る。
【0073】
(第3の実施形態)
図10は、第3の実施形態の劣化検査装置の構成を示す図である。本実施形態は、ローサイドのGaNトランジスタ11Gのオン抵抗RONとしきい値電圧Vthを算出して、ローサイドのGaNトランジスタ11Gの劣化状態を検査する構成の場合を示す。
【0074】
記述した第2の実施形態のハイサイドのGaNトランジスタ10GがローサイドのGaNトランジスタ11Gに対応し、ハイサイドのスイッチングトランジスタ10Lがローサイドのスイッチングトランジスタ11Lに対応する。制御回路1による制御の下、GaNトランジスタ10G、11G、スイッチングトランジスタ10L、11Lのオン/オフを制御することで、ローサイドのGaNトランジスタ11Gのオン抵抗RON、しきい値電圧Vthを算出して、GaNトランジスタ11Gの劣化状態を判定することが出来る。
【0075】
本実施形態によれば、DC/DCコンバータを構成するインダクタ6の負荷側の一端をノードN3に接続することで、DC/DCコンバータを構成するローサイドのGaNトランジスタ11Gの劣化状態を判定する劣化検査装置を容易に構成することが出来る。
【0076】
(第4の実施形態)
図11は、第4の実施形態の劣化検査装置の構成を示す図である。本実施形態は、DC/DCコンバータの平滑コンデンサ20を有する。平滑コンデンサ20は、インダクタ6の一端が接続されたノードN4とノードN3との間に接続される。平滑コンデンサ20は、ノードN4の電圧を平滑して出力端21に供給する。出力端21の出力電圧は、負荷(図示せず)に供給される。ノードN1とノードN3の間には電源7が接続される。
【0077】
図12図13を用いて、ローサイドのGaNトランジスタ11Gの劣化状態を判定する場合について説明する。図12は、ローサイドのGaNトランジスタ11Gの劣化状態を判定する場合のインダクタ電流iを説明する為の図である。図13は、ローサイドのGaNトランジスタ11Gの劣化状態を判定する場合の還流電流iを説明する為の図である。
【0078】
ローサイドのGaNトランジスタ11Gの劣化状態を判定する場合には、図12に示す様に、ローサイドのGaNトランジスタ11G、スイッチングトランジスタ11Lをオフ状態にし、ハイサイドのGaNトランジスタ10G、及びスイッチングトランジスタ10Lをオン状態にして、電源7、ハイサイドのGaNトランジスタ10G、スイッチングトランジスタ10L、インダクタ6、及び平滑コンデンサ20で構成されるループを流れるインダクタ電流iによってインダクタ6をチャージする。
【0079】
次に、ハイサイドのGaNトランジスタ10G、スイッチングトランジスタ10Lをオフ状態にして、図13に示す様に、ローサイドのGaNトランジスタ11G、スイッチングトランジスタ11Lをオン状態にした時に、インダクタ6、及び平滑コンデンサ20と共に構成される閉ループをインダクタ6が放出する還流電流iが流れ得る状態にする。既述した実施形態と同様に、還流電流iが流れ得る状態で、制御回路1による制御の下、ローサイドのGaNトランジスタ11Gをオンさせた時の還流電流iの減衰特性からローサイドのGaNトランジスタ11Gのオン抵抗RONを算出し、ローサイドのGaNトランジスタ11Gをオフさせた時の還流電流iの減衰特性からローサイドのGaNトランジスタ11Gのしきい値電圧Vthを算出して、ローサイドのGaNトランジスタ11Gの劣化状態を判定する。
【0080】
次に、図14図15を用いて、ハイサイドのGaNトランジスタ10Gの劣化状態を判定する場合について説明する。図14は、ハイサイドのGaNトランジスタ10Gの劣化状態を判定する場合のインダクタ電流iを説明する為の図である。図15は、ハイサイドのGaNトランジスタ10Gの劣化状態を判定する場合の還流電流iを説明する為の図である。
【0081】
ハイサイドのGaNトランジスタ10Gの劣化状態を判定する場合には、図14に示す様に、ハイサイドのGaNトランジスタ10G、スイッチングトランジスタ10lをオフ状態にし、ローサイドのGaNトランジスタ11G、及びスイッチングトランジスタ11Lをオン状態にして、ローサイドのGaNトランジスタ11G、スイッチングトランジスタ11L、インダクタ6、及び平滑コンデンサ20で構成されるループを流れるインダクタ電流iによってインダクタ6をチャージする。インダクタ電流iは、平滑コンデンサ20の電荷の放電によって生成される。平滑コンデンサ20は、電源として機能する。
【0082】
次に、ローサイドのGaNトランジスタ11G、スイッチングトランジスタ11Lをオフ状態にして、図15に示す様に、ハイサイドのGaNトランジスタ10G、スイッチングトランジスタ10Lをオン状態にした時に、インダクタ6、平滑コンデンサ20、及び電源7と共に構成される閉ループをインダクタ6が放出する還流電流iが流れ得る状態にする。既述した実施形態と同様、還流電流iが流れ得る状態で、制御回路1による制御の下、ハイサイドのGaNトランジスタ10Gをオンさせた時の還流電流iの減衰特性からハイサイドのGaNトランジスタ10Gのオン抵抗RONを算出し、ハイサイドのGaNトランジスタ10Gをオフさせた時の還流電流iの減衰特性からハイサイドのGaNトランジスタ10Gのしきい値電圧Vthを算出して、ハイサイドのGaNトランジスタ10Gの劣化状態を判定する。
【0083】
本実施形態によれば、平滑コンデンサ20を備えたDC/DCコンバータの構成をそのまま使用して、ハイサイドのGaNトランジスタ10G、及びローサイドのGaNトランジスタ11Gの劣化状態を判定する劣化検査装置を容易に構成することが出来る。
【0084】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0085】
1 制御回路、2 処理回路、3 劣化判定回路、4 電流センサ、5 温度センサ、6 インダクタ、10 MOSトランジスタ、10G、11G GaNトランジスタ、10L、11L スイッチングトランジスタ、20 平滑コンデンサ。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
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図15