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特開2022-184538読取装置、搬送動作制御方法及びプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022184538
(43)【公開日】2022-12-13
(54)【発明の名称】読取装置、搬送動作制御方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   B65H 5/06 20060101AFI20221206BHJP
   B65H 7/20 20060101ALI20221206BHJP
   G03G 21/00 20060101ALI20221206BHJP
【FI】
B65H5/06 J
B65H7/20
G03G21/00 370
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021092460
(22)【出願日】2021-06-01
(71)【出願人】
【識別番号】000001270
【氏名又は名称】コニカミノルタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001254
【氏名又は名称】弁理士法人光陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 政行
(72)【発明者】
【氏名】峰 英紀
(72)【発明者】
【氏名】藤森 春充
(72)【発明者】
【氏名】志岐 卓信
【テーマコード(参考)】
2H270
3F048
3F049
【Fターム(参考)】
2H270LA19
2H270LA37
2H270LA98
2H270LC10
2H270LD03
2H270LD05
2H270MC55
2H270MD10
2H270MD12
2H270ZC03
2H270ZC04
3F048AA02
3F048AB01
3F048BA05
3F048BB03
3F048CC03
3F048CC13
3F048CC15
3F048DA06
3F048DC05
3F048EB29
3F049AA10
3F049DA12
3F049EA12
3F049EA28
3F049LA02
3F049LB03
(57)【要約】
【課題】より効率よく、かつ読取精度の低下を抑えながら記録媒体を搬送することのできる読取装置、搬送動作制御方法及びプログラムを提供する。
【解決手段】画像形成後の記録媒体(M)の表面を読み取る読取装置(1)は、読取搬送経路に沿って配置された複数の駆動ローラー(101)を有し、これらに跨って記録媒体(M)を搬送する搬送部(10)と、複数の駆動ローラー(101)をそれぞれ回転動作させる複数のブラシレスモーター(20)と、制御部とを備える。制御部は、記録媒体(M)の搬送方向について下流側に位置する駆動ローラー(101)であるほど回転速度が大きくなるようにブラシレスモーター(20)の動作を制御し、ブラシレスモーター(20)の少なくとも1つについて、その動作状態に応じて、回転速度を調整する第1の制御と、トルクを調整する第2の制御と、を切り替えて行う。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像形成後の記録媒体の表面を読み取る読取部と、
前記読取部による読取範囲を通る搬送経路に沿って配置された複数のローラーを有し、前記複数のローラーに跨ってそれぞれの記録媒体を搬送する搬送部と、
前記複数のローラーをそれぞれ回転動作させる複数のモーターと、
制御部と、
を備え、
前記制御部は、
前記記録媒体の搬送方向について下流側に位置する前記ローラーであるほど回転速度が大きくなるように前記複数のモーターの動作を制御し、
前記複数のモーターの少なくとも1つについて、当該モーターの動作状態に応じて、回転速度を調整する第1の制御と、トルクを調整する第2の制御と、を切り替えて行う
ことを特徴とする読取装置。
【請求項2】
前記第1の制御では、前記回転速度が所定の回転速度になるように前記モーターを制御することを特徴とする請求項1記載の読取装置。
【請求項3】
前記第2の制御では、前記モーターのトルクを所定の基準範囲内とする制御を行うことを特徴とする請求項1又は2記載の読取装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記第1の制御により前記モーターのトルクが所定の基準範囲から外れた場合には、当該モーターの動作について前記第2の制御に切り替える
ことを特徴とする請求項3記載の読取装置。
【請求項5】
前記第2の制御では、制御対象の前記モーターのトルクと、前記制御対象のモーターが回転動作させる前記ローラーよりも前記搬送方向について下流側に位置するローラーを回転動作させる前記モーターのトルクとの差が所定の基準差の範囲内となるように制御が行われることを特徴とする請求項3又は4記載の読取装置。
【請求項6】
前記制御部は、制御対象の前記モーターのトルクと前記制御対象のモーターが回転動作させる前記ローラーよりも前記搬送方向について下流側に位置するローラーを回転動作させる前記モーターのトルクとの差が所定の基準範囲から外れた場合には、当該モーターの動作について前記第2の制御に切り替える
ことを特徴とする請求項3~5のいずれか一項に記載の読取装置。
【請求項7】
前記制御部は、前記第2の制御により前記モーターの回転速度が予め定められた設定速度範囲から外れた場合には、当該モーターの動作について前記第1の制御に切り替える
ことを特徴とする請求項1~6のいずれか一項に記載の読取装置。
【請求項8】
前記制御部は、
前記ローラーの回転動作の開始時には、前記第1の制御を行い、
前記ローラーの回転速度が上昇した後に、前記第2の制御に切り替える
ことを特徴とする請求項1~7のいずれか一項に記載の読取装置。
【請求項9】
特定の位置で記録媒体を検出する記録媒体検出部を備え、
前記制御部は、前記記録媒体検出部の結果に基づいて前記記録媒体の位置を特定し、特定された前記位置に応じて前記第1の制御と前記第2の制御とを切り替える
ことを特徴とする請求項1~8のいずれか一項に記載の読取装置。
【請求項10】
前記複数のローラーに対し、前記複数のローラーの回転に従ってそれぞれ回転する複数の従動ローラーを有することを特徴とする請求項1~9のいずれか一項に記載の読取装置。
【請求項11】
前記モーターはブラシレスモーターであることを特徴とする請求項1~10のいずれか一項に記載の読取装置。
【請求項12】
画像形成後の記録媒体の表面を読み取る読取部と、前記読取部による読取範囲を通る搬送経路に沿って配置された複数のローラーを有し、前記複数のローラーに跨ってそれぞれの記録媒体を搬送する搬送部と、前記複数のローラーをそれぞれ回転動作させる複数のモーターと、を備える読取装置の搬送動作制御方法であって、
前記記録媒体の搬送方向について下流側に位置する前記ローラーであるほど回転速度が大きくなるように前記複数のモーターの設定速度が定められ、
前記複数のモーターの少なくとも1つについて、当該モーターの動作状態に応じて、回転速度を調整する第1の制御と、トルクを調整する第2の制御と、を切り替えて行う制御切替ステップ、
を含むことを特徴とする搬送動作制御方法。
【請求項13】
画像形成後の記録媒体の表面を読み取る読取部と、前記読取部による読取範囲を通る搬送経路に沿って配置された複数のローラーを有し、前記複数のローラーに跨ってそれぞれの記録媒体を搬送する搬送部と、前記複数のローラーをそれぞれ回転動作させる複数のモーターと、を備え、前記記録媒体の搬送方向について下流側に位置する前記ローラーであるほど回転速度が大きくなるように前記複数のモーターの設定速度が定められる読取装置のコンピューターに、
前記複数のモーターの少なくとも1つについて、当該モーターの動作状態に応じて、回転速度を調整する第1の制御と、トルクを調整する第2の制御と、を切り替えて行う制御切替ステップ、
を実行させることを特徴とするプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、読取装置、搬送動作制御方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
記録媒体上の画像を撮像して読み取る画像読取装置がある。画像読取装置では、記録媒体を搬送させながら固定されたラインセンサーなどにより表面を順に撮像していくものがある(例えば、特許文献1)。記録媒体の搬送は、ローラー対で記録媒体を挟持しながら当該ローラー対をモーターにより回転させ、この回転に応じて当該記録媒体を移動させて、複数のローラー対の間で受け渡していく方法が知られている。モーターとしては、正確な回転量を得ることの容易なステッピングモーターが広く用いられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2017-72632号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、読取装置で記録媒体を搬送する場合に、記録媒体の搬送速度、材質、表面物性やサイズなどに応じてモーターがローラー対を回転させるのに必要な力(トルク)が変化する。ステッピングモーターにより記録媒体を正確に搬送するには、当該ステッピングモーターの脱調を防ぐために、想定される最大のトルクが得られるように駆動されるので、多くの場合に過大な力で駆動されて電力消費が大きくなるという課題がある。
【0005】
これに対して、ステッピングモーターとは異なるモーター、例えば、ブラシレスモーターを用いることが考えられる。しかしながら、ステッピングモーターを他のモーターに置き換えた場合、以下の問題が生じることが分かった。
画像形成後の記録媒体上の画像を読み取る読取部を備えたシステムでは、読取精度確保のため、読取部のセンサーと記録媒体との間の距離を一定距離に維持する必要がある。そのために、上流側ローラーから下流側ローラーに向けて速度差を付けるようにモーターを駆動制御し、記録媒体を下流方向に引っ張りながら搬送しなければならない。ここで、下流側ローラーが上流側ローラーの分の大きな負荷を引っ張る状態で記録媒体の搬送を行っている状態で記録媒体の後端が上流側ローラーを抜けると、急激な負荷変動が発生し、下流側ローラーに大きな速度変動が発生する。これにより記録媒体の搬送速度が大きく変動する(揺らぐ)ことで、読取範囲の記録媒体に振動やたるみが発生し、読取部のセンサーと記録媒体との距離を一定に維持できなくなり、読取精度が大きく低下してしまう。
【0006】
この発明の目的は、より効率よく、かつ読取精度の低下を抑えながら記録媒体を搬送することのできる読取装置、搬送動作制御方法及びプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記目的を達成するため、請求項1記載の発明は、
画像形成後の記録媒体の表面を読み取る読取部と、
前記読取部による読取範囲を通る搬送経路に沿って配置された複数のローラーを有し、前記複数のローラーに跨ってそれぞれの記録媒体を搬送する搬送部と、
前記複数のローラーをそれぞれ回転動作させる複数のモーターと、
制御部と、
を備え、
前記制御部は、
前記記録媒体の搬送方向について下流側に位置する前記ローラーであるほど回転速度が大きくなるように前記複数のモーターの動作を制御し、
前記複数のモーターの少なくとも1つについて、当該モーターの動作状態に応じて、回転速度を調整する第1の制御と、トルクを調整する第2の制御と、を切り替えて行う
ことを特徴とする読取装置である。
【0008】
また、請求項2記載の発明は、請求項1記載の読取装置において、
前記第1の制御では、前記回転速度が所定の回転速度になるように前記モーターを制御することを特徴とする。
【0009】
また、請求項3記載の発明は、請求項1又は2記載の読取装置において、
前記第2の制御では、前記モーターのトルクを所定の基準範囲内とする制御を行うことを特徴とする。
【0010】
また、請求項4記載の発明は、請求項3記載の読取装置において、
前記制御部は、前記第1の制御により前記モーターのトルクが所定の基準範囲から外れた場合には、当該モーターの動作について前記第2の制御に切り替える
ことを特徴とする。
【0011】
また、請求項5記載の発明は、請求項3又は4記載の読取装置において、
前記第2の制御では、制御対象の前記モーターのトルクと、前記制御対象のモーターが回転動作させる前記ローラーよりも前記搬送方向について下流側に位置するローラーを回転動作させる前記モーターのトルクとの差が所定の基準差の範囲内となるように制御が行われることを特徴とする。
【0012】
また、請求項6記載の発明は、請求項3~5のいずれか一項に記載の読取装置において、
前記制御部は、制御対象の前記モーターのトルクと前記制御対象のモーターが回転動作させる前記ローラーよりも前記搬送方向について下流側に位置するローラーを回転動作させる前記モーターのトルクとの差が所定の基準範囲から外れた場合には、当該モーターの動作について前記第2の制御に切り替える
ことを特徴とする。
【0013】
また、請求項7記載の発明は、請求項1~6のいずれか一項に記載の読取装置において、
前記制御部は、前記第2の制御により前記モーターの回転速度が予め定められた設定速度範囲から外れた場合には、当該モーターの動作について前記第1の制御に切り替える
ことを特徴とする。
【0014】
また、請求項8記載の発明は、請求項1~7のいずれか一項に記載の読取装置において、
前記制御部は、
前記ローラーの回転動作の開始時には、前記第1の制御を行い、
前記ローラーの回転速度が上昇した後に、前記第2の制御に切り替える
ことを特徴とする。
【0015】
また、請求項9記載の発明は、請求項1~8のいずれか一項に記載の読取装置において、
特定の位置で記録媒体を検出する記録媒体検出部を備え、
前記制御部は、前記記録媒体検出部の結果に基づいて前記記録媒体の位置を特定し、特定された前記位置に応じて前記第1の制御と前記第2の制御とを切り替える
ことを特徴とする。
【0016】
また、請求項10記載の発明は、請求項1~9のいずれか一項に記載の読取装置において、
前記複数のローラーに対し、前記複数のローラーの回転に従ってそれぞれ回転する複数の従動ローラーを有することを特徴とする。
【0017】
また、請求項11記載の発明は、請求項1~10のいずれか一項に記載の読取装置において、
前記モーターはブラシレスモーターであることを特徴とする。
【0018】
また、請求項12記載の発明は、
画像形成後の記録媒体の表面を読み取る読取部と、前記読取部による読取範囲を通る搬送経路に沿って配置された複数のローラーを有し、前記複数のローラーに跨ってそれぞれの記録媒体を搬送する搬送部と、前記複数のローラーをそれぞれ回転動作させる複数のモーターと、を備える読取装置の搬送動作制御方法であって、
前記記録媒体の搬送方向について下流側に位置する前記ローラーであるほど回転速度が大きくなるように前記複数のモーターの設定速度が定められ、
前記複数のモーターの少なくとも1つについて、当該モーターの動作状態に応じて、回転速度を調整する第1の制御と、トルクを調整する第2の制御と、を切り替えて行う制御切替ステップ、
を含むことを特徴とする。
【0019】
また、請求項13記載の発明は、
画像形成後の記録媒体の表面を読み取る読取部と、前記読取部による読取範囲を通る搬送経路に沿って配置された複数のローラーを有し、前記複数のローラーに跨ってそれぞれの記録媒体を搬送する搬送部と、前記複数のローラーをそれぞれ回転動作させる複数のモーターと、を備え、前記記録媒体の搬送方向について下流側に位置する前記ローラーであるほど回転速度が大きくなるように前記複数のモーターの設定速度が定められる読取装置のコンピューターに、
前記複数のモーターの少なくとも1つについて、当該モーターの動作状態に応じて、回転速度を調整する第1の制御と、トルクを調整する第2の制御と、を切り替えて行う制御切替ステップ、
を実行させることを特徴とするプログラムである。
【発明の効果】
【0020】
本発明に従うと、読取装置において、より効率よく、かつ読取精度の低下を抑えながら記録媒体を搬送することができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】画像形成システムの全体構成の概略を示す図である。
図2】本実施形態の読取装置の構成を示す図である。
図3】本実施形態の読取装置の機能構成を示すブロック図である。
図4】記録媒体の位置と記録媒体の速度及び各ブラシレスモーターのトルクについて説明する図である。
図5】トルクの調整について説明する図である。
図6】本実施形態の読取装置で実行される搬送動作制御処理の制御手順を示すフローチャートである。
図7】搬送動作制御処理の変形例1を示すフローチャートである。
図8】搬送動作制御処理の変形例2を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本実施形態の画像形成システムUの全体構成を示す図である。
画像形成システムUは、画像形成装置2と、読取装置1とを含む。
【0023】
画像形成装置2は、例えば、原稿から読み取った画像データを記録媒体に画像形成して出力したり、PC等の外部装置(図示省略)からLAN(Local Area Network)などを介して受信した画像データに基づいて記録媒体に対し、例えば、電子写真方式で画像形成して出力したりする複合機である。
【0024】
画像形成装置2は、制御部91と、原稿読取部92と、画像形成動作部93と、操作受付部94と、表示部95などを備えている。
【0025】
制御部91は、CPU(Central Processing Unit)及びRAM(Random Access Memory)などを備え、画像形成装置2の動作を統括的に制御する。CPUは、操作受付部94から入力される操作信号又は図示略の通信部により受信される指示信号に応じて画像形成に係る各種設定や動作を行う。
【0026】
原稿読取部92は、原稿台又は自動原稿搬送部(ADF:Auto Document Feeder)に載置された原稿の画像を走査露光装置の光学系により走査露光し、その反射光をラインイメージセンサーにより読み取り、これにより、画像信号を得る。この画像信号に対し、A/D変換、シェーディング補正、圧縮などの処理が施されて画像データが生成される。
【0027】
画像形成動作部93は、形成対象の原画像データの各画素の4色の画素値に応じて、例えば、C(シアン)、M(マゼンタ)、Y(イエロー)及びK(黒色)の4色からなるカラー画像を記録媒体上に形成して、当該記録媒体を読取装置1へ排出する。画像形成動作部93は、4個の書込部931、中間転写ベルト932、2次転写ローラー933及び定着部934などを有する。
【0028】
4個の書込部931は、中間転写ベルト932のベルト面に沿って直列(タンデム)に並び、C、M、Y及びKの各色の画像を形成する。各書込部931の構成は、同一であってよく、例えば、光走査部931a、感光体(像担持体)931b、現像部931c、帯電部931d、クリーニング部931e及び1次転写ローラー931fを備える。
【0029】
各書込部931では、帯電部931dにより感光体931bを一様に帯電させた後、原画像データに基づいて光走査部931aが出射した光束で感光体931b上を走査露光し、静電潜像を形成する。この静電潜像に対して現像部931cによりトナーなどの色材を供給して現像することで、感光体931b上に画像が形成される。
【0030】
4個の書込部931の感光体931b上にそれぞれ形成された画像は、それぞれの1次転写ローラー931fにより、中間転写ベルト932上に順次重ねて転写(1次転写)される。これにより、中間転写ベルト932上には各色からなる画像が形成される。中間転写ベルト932は、複数のローラーに巻き回されて周回移動している。1次転写の後、感光体931b上に残留する色材は、クリーニング部931eにより除去される。
【0031】
画像形成動作部93では、周回移動する中間転写ベルト932上の画像が2次転写ローラー933の位置に至るタイミングに合わせて、供給トレイ935から記録媒体が送出される。2次転写ローラー933は、1対のローラーを有し、一方のローラーが中間転写ベルト932に圧接し、他方のローラーが中間転写ベルト932を巻き回す複数のローラーのうちの1つを構成している。2次転写ローラー933により圧接されて中間転写ベルト932から記録媒体上に画像が転写(2次転写)される。
【0032】
その後、当該記録媒体は、定着部934に搬送されて、定着処理が施される。定着部934は、互いに圧接され、少なくとも一方が加熱可能な1対の定着ローラーを有する。定着処理では、定着ローラーにより記録媒体を加熱及び加圧して画像を記録媒体に定着させる。
【0033】
記録媒体の両面に画像を形成する場合には、一方の面に画像が形成、定着された記録媒体は、反転経路936に送られて表裏が反転された後、2次転写ローラー933の上流側位置へ戻される。画像形成が片面だけである場合及び両面への画像形成が終了した場合には、記録媒体は、読取装置1へ排出される。
【0034】
操作受付部94は、表示部95の画面上に設けられるタッチパネルと、表示部95の画面周囲に配置される各種ハードキーなどを備え、ユーザーなどによる外部からの入力操作を受け付ける。受け付けられた操作内容は、内容に応じた操作信号に変換されて、制御部91に出力される。タッチパネルは、例えば、感圧式、静電式や光式などのいずれであってもよい。
【0035】
表示部95は、例えば、カラー液晶ディスプレイなどを有し、制御部91の制御に基づいて各種情報を表示する。
【0036】
読取装置1は、記録媒体の搬送方向において画像形成装置2の下流側に位置している。読取装置1は、撮像部50を備える。読取装置1は、画像形成装置2から出力された画像形成後の記録媒体Mを搬送経路FRに沿って搬送しながらその両面を撮像部50により光学的に読み取る。読みられたデータは、画像形成装置2における色特性や画質の調整及び/又は画像の異常を検出するのに用いられてもよい。読取後の記録媒体は、排出トレイEに排出される。あるいは、記録媒体の搬送経路について読取装置1の下流側に更に後処理装置が位置していてもよい。後処理装置は、例えば、断裁処理などを行うものであってもよい。
【0037】
図2は、本実施形態の読取装置1の構成を拡大して示す図である。
読取装置1は、外部から供給される記録媒体Mを搬送する搬送部10と、前記搬送部10により記録媒体Mを設定速度で移動させる動作を行わせるブラシレスモーター20と、供給された記録媒体Mを検出する記録媒体検出部30と、搬送されている記録媒体Mの各面を撮像して読み取る上述の撮像部50(読取部)などを備える。
【0038】
搬送部10は、例えば、3組のローラー対11~13を有し、記録媒体Mの搬送方向について上流側から下流側に順番に並んで位置している。ブラシレスモーター20は、ローラー対11~13にそれぞれ対応する第1モーター21、第2モーター22及び第3モーター23を有する。ローラー対11、12の間隔及びローラー対12、13の間隔は、いずれも通常の記録媒体Mの搬送方向についての長さよりも短い。また、両端のローラー対11、13の間隔も、ここでは、通常の記録媒体Mの搬送方向についての長さよりも短い。これにより、記録媒体Mは、隣り合う複数のローラー対により部分的に重複して挟持されて、受け渡し搬送される。記録媒体Mは、例えば、種々の印刷用紙であるが、これに限られない。
【0039】
ローラー対11は、第1モーター21により駆動される駆動ローラー111と、駆動ローラー111と対になる従動ローラー112とを有する。駆動ローラー111と従動ローラー112との間に記録媒体Mが挿入されると、駆動ローラー111及び従動ローラー112は、いずれも記録媒体Mに接してこの記録媒体Mを挟持する。記録媒体Mは、駆動ローラー111の回転速度に応じて移動し、従動ローラー112は、記録媒体Mの移動速度に応じて(すなわち、駆動ローラー111の回転に従って)回転する。なお、従動ローラー112は、記録媒体Mがない場合でも駆動ローラー111に接して、駆動ローラー111の回転に応じた回転を生じるものであってもよい。
【0040】
ローラー対12は、駆動ローラー121及び従動ローラー122を有し、駆動ローラー121は、第2モーター22により駆動される。ローラー対13は、駆動ローラー131及び従動ローラー132を有し、駆動ローラー131は、第3モーター23により駆動される。駆動ローラー121(131)及び従動ローラー122(132)の位置関係は、それぞれ駆動ローラー111及び従動ローラー112の位置関係と同一であるので、説明を省略する。
駆動ローラー111、121、131をまとめて駆動ローラー101(複数のローラー)とも記す(図3参照)。従動ローラー112、122、132をまとめて従動ローラー102(押さえ部材)とも記す。
【0041】
ブラシレスモーター20は、制御部60(図3参照)からの制御信号に基づいてそれぞれ駆動されて動作し、その回転に応じて駆動ローラー101を回転動作させる。ブラシレスモーター20と駆動ローラー101とが連動して回転するように、これらの軸の間には、回転を伝達する構成、例えば、ベルトや歯車などが位置していてもよい。制御信号は、それぞれ駆動ローラー101の回転速度を制御するものである。ブラシレスモーター20は、駆動回路と、ステーターと、ローターと、ローターの回転検出部とを有し、駆動回路は、回転検出部から得られる回転位相に応じた位相の電流信号をステーターに出力することで、ローターを回転させる。また、駆動回路は、設定されている速度(設定速度)と回転検出部が検出する回転位相の変化に応じた回転速度とを比較して、回転速度が設定された所定の回転速度に近づくように電流の大きさを調整する(回転速度を調整する第1の制御:定速度制御)。電流が大きいほどトルクが大きくなり、ローターをより高速で回転させることができる。速度に応じた電流の大きさは、回転対象(すなわち、ここでは駆動ローラー111~131)の負荷に応じて異なる。すなわち、ブラシレスモーター20では、所望の回転速度を得るのに必要なトルクが得られる電流が出力されるので、ステッピングモーターと比較して電力消費が過大になりにくい。
【0042】
3組のローラー対11~13のうち搬送方向について最上流側のローラー対11の更に上流側には、記録媒体検出部30が位置している。記録媒体検出部30は、例えば、記録媒体Mの有無を検出可能な光学センサーであり、入射する光(波長が限定されていてもよい。また、所定の強度の光を照射して記録媒体Mからの反射有無を検出するものであってもよい)の強度などを検出して制御部60に出力する。制御部60は、記録媒体Mの未検出状態から記録媒体Mの検出有状態に変化したタイミングで記録媒体Mの先頭が記録媒体検出部30の検出位置(特定の位置)を通過したものと特定することができる。検出の基準は、制御部60により記録媒体Mの種別などに応じて変更されてもよい。
【0043】
撮像部50は、第1撮像部51と、第2撮像部52とを有する。第1撮像部51は、記録媒体Mの表面(図2の上側)を撮像し、第2撮像部52は、記録媒体Mの裏面(図2の下側)を撮像する。第1撮像部51及び第2撮像部52は、例えば、それぞれラインセンサーであり、搬送方向に交差する方向(ここでは、垂直な方向)に並ぶ複数の撮像素子で搬送されていく記録媒体Mを適切な間隔で撮影していくことで、記録媒体Mの各面を二次元的に読み取る。特には限られないが、例えば、第1撮像部51による撮影範囲(読取範囲)は、ローラー対11とローラー対12の間に挟まれて位置し、第2撮像部52による撮影範囲は、ローラー対12とローラー対13の間に挟まれて位置する。後述のように搬送速度が一定ではない場合には、必要に応じて撮影の空間的な間隔が一定となるように時間間隔が調整されてもよい。
【0044】
搬送経路FRを間に挟み、第1撮像部51と対向して背景板54が位置している。また、搬送経路FRを間に挟み、第2撮像部52と対向して背景板55が位置している。これら背景板54、55は、それぞれ第1撮像部51、第2撮像部52の読み取り基準となるものであり、例えば白色の平板であってもよい。
【0045】
図3は、本実施形態の読取装置1の機能構成を示すブロック図である。
読取装置1は、上述のブラシレスモーター20と、記録媒体検出部30と、撮像部50に加えて、モーター動作検出部40(動作検出部)と、制御部60と、通信部70などを備える。
【0046】
モーター動作検出部40は、第1モーター21に対応する第1検出部41、第2モーター22に対応する第2検出部42、及び第3モーター23に対応する第3検出部43を有する。
【0047】
モーター動作検出部40は、例えば、駆動ローラー101の回転速度及び各ブラシレスモーター20のトルクをそれぞれ検出する。回転速度は、ブラシレスモーター20のローター回転検出部の検出結果に基づくものであり、トルクの計測部は、ブラシレスモーター20のローターとこのローターにより回転される軸との間に位置していてもよい。なお、出力電流自体をトルク(トルクに対応する値)として取得してもよい。
【0048】
制御部60は、読取装置1の全体動作を統括制御するコンピューターである。制御部60は、CPU61と、記憶部62などを備える。
【0049】
CPU61は、演算処理を行い、上記の各部の動作に係る制御動作を行うハードウェアプロセッサーである。CPU61は、1つであってもよいし、複数のCPUを有して処理を並列に行うことが可能であってもよい。また、複数のCPUには、撮像部50による撮像データの処理に係る専用のものなどが含まれていてもよい。
【0050】
記憶部62は、揮発性メモリー(RAM)と不揮発性メモリーを含んでいてよい。揮発性メモリーはCPU61に作業用のメモリー空間を提供し、一時データを記憶する。一時データには、撮像部50から取得された未処理の撮像データや処理中の撮像データなどが含まれてもよい。不揮発性メモリーには、プログラム621及び基準値622のデータが含まれる。基準値622は、後述のように搬送動作の制御において制御種別を切り替えるための条件判別に用いられるデータである。また、不揮発性メモリーには、処理済みの撮像データが撮像情報などとともに記憶保持されてもよい。不揮発性メモリーは、フラッシュメモリーなどに加えて又は代えて、HDD(Hard Disk Drive)などが含まれていてもよい。
【0051】
通信部70は、所定の通信規格に従って外部の電子機器などとの間で行われるデータの送受信(通信)を制御する。通信規格には、例えば、LAN(Local Area Network)を介したTCP/IP通信などが含まれていてもよいし、無線LAN及び/又はブルートゥース(登録商標)を介した無線通信が可能であってもよい。また、USB(Universal Serial Bus)などによる外部機器との1対1での通信が可能であってもよい。
【0052】
また、読取装置1は、上記に加えて操作受付部及び表示部などを備え、ユーザーなどからの入力操作を受け付けたり、読取装置1のステータスの表示や操作受付部で受付可能なメニューなどの表示を行ったりしてもよい。操作受付部には、例えば、タッチパネル、テンキー、電力供給スイッチなどが含まれていてもよい。表示部には、例えば、液晶ディスプレイや単色又は複数色のLEDランプなどが含まれていてもよい。なお、読取装置1は、画像形成装置2の制御部91を介して操作受付部94及び表示部95を利用可能であってもよい。
【0053】
次に、本実施形態の読取装置1における記録媒体の搬送動作について説明する。
読取装置1に供給された記録媒体Mは、ローラー対11~13により部分的に重複して同時に(跨って)搬送されて、搬送方向について下流側へ移動していく。このとき、搬送方向について下流側のローラー対ほど回転速度が大きくなるように各ブラシレスモーター20の動作を制御することで、記録媒体Mに弛みが生じるのを抑える。
【0054】
図4は、記録媒体Mの位置と記録媒体Mの速度及び各ブラシレスモーター20のトルクについて説明する図である。
図4(a)に示すように、ローラー対11~13は、それぞれ挟持位置x1~x3で記録媒体Mを挟持する。第1モーター21は、駆動ローラー111が設定速度V1で回転動作するように設定され、第2モーター22は、駆動ローラー121が設定速度V2で回転動作するように設定され、第3モーター23は、駆動ローラー131が設定速度V3で回転動作するように設定されている。なお、ここでは説明のために設定速度V1~V3の差を明確に示しているが、実際には差が微小であってよい。記録媒体Mは、搬送方向について先頭の位置(最下流側位置)が位置x11でローラー対11の挟持位置から外れ、位置x12でローラー対12の挟持位置から外れる。上述のように、制御(第1の制御)は、実際の回転速度と設定速度とを比較して回転速度を設定速度に近づけるように電流を調整することで行われる。
【0055】
いずれかの駆動ローラー101により搬送されている記録媒体Mがこの駆動ローラー101よりも下流側のローラー対の挟持位置に到達すると、下流側のローラー対及びこれよりも遅く回転する上流側のローラー対の両方から張力を受ける。このとき、ブラシレスモーター20は、従来のステッピングモーターとは異なる性質を示す。ステッピングモーターでは、脱調しない限りにおいて上流側のローラー対も下流側のローラー対も、駆動ローラーに対して設定されたとおりの回転速度で回転動作する。したがって、記録媒体Mは、各ローラー対の挟持力の大小などに応じて、例えば、挟持力の大きい下流側のローラー対の回転速度に応じて移動して(vs)、上流側のローラー対に対しては滑りを生じる。一方、ブラシレスモーター20では、記録媒体Mは、ローラー対に対して滑りを生じず、反対に、負荷の上昇に応じて下流側の駆動ローラー及びブラシレスモーター20が減速され、上流側の駆動ローラー及びブラシレスモーター20が加速される(vb)。
【0056】
図4(b)に示すように、最上流側に位置する駆動ローラー111への第1モーター21の出力トルク(電流値)は(太実線)、記録媒体Mの負荷がかかっていない状態から記録媒体Mを挟持することで上昇する。その後、記録媒体Mの先端が更にローラー対12の挟持位置x2に到達すると、駆動ローラー121により、より高速で記録媒体Mが引っ張られるので、この記録媒体Mにより駆動ローラー111の回転速度が引き上げられることになり、第1モーター21は、回転速度に比して小さいトルクでの回転動作が可能になる。
【0057】
駆動ローラー121への第2モーター22の出力トルク(電流値)は(破線)、第1モーター21よりも回転速度が速い分だけ当初からわずかに大きい(ここでは、説明のために差を大きく示している)。記録媒体Mの先頭がローラー対12の挟持位置x2に到達すると、第2モーター22は、駆動ローラー121を回転させて記録媒体Mを運ぶ負荷だけでなく、第2モーター22よりも遅い第1モーター21及び駆動ローラー111の回転速度を上昇させる負荷も生じるので、トルクが大きく上昇する。記録媒体Mの先頭がローラー対13の挟持位置x3に到達すると、一転して駆動ローラー131により、より高速で記録媒体Mが引っ張られるので、この記録媒体Mにより駆動ローラー121の回転速度が引き上げられて、第2モーター22は、回転速度に比して小さいトルクでの回転動作が可能になる。
【0058】
駆動ローラー131への第3モーター23の出力トルク(電流値)は(細実線)、記録媒体Mを挟持、搬送しない状況では、同じ状況の第2モーターよりも更に若干大きい。記録媒体Mの先頭がローラー対13の挟持位置x3に到達すると、第3モーター23は、記録媒体Mを運ぶ負荷に加えて、第1モーター21及び第2モーター22の回転速度を引き上げる負荷がかかるので、出力トルクが大きく上昇する。記録媒体Mの後端がローラー対11の挟持位置から外れる位置x11に当該記録媒体Mの先端が到達すると、上記のうち第1モーター21の回転速度を引き上げる負荷がなくなるので、第3モーター23の出力トルクが若干低下する。さらに、記録媒体Mの後端がローラー対12の挟持位置から外れる位置x12に当該記録媒体Mの先端が到達すると、第2モーター22の回転速度を引き上げる負荷も不要となって、出力トルクが低下する。
【0059】
このように複数のローラー対に跨って記録媒体Mが搬送される場合、下流側のより高速なブラシレスモーター20、例えば、第2モーター22が記録媒体Mを設定速度V2で搬送しようとするものの、上流側のより低速なブラシレスモーター20、例えば、第1モーター21の動作に引っ張られて、設定速度V2が得られない。その結果、第2モーター22には、トルクをより大きくするようにフィードバックがかかる。一方で、上流側の第1モーター21は、第2モーター22の動作により設定速度V1よりも速い速度で搬送される記録媒体Mに応じて、回転速度が上昇する。その結果、第1モーター21には、トルクをより小さくするようにフィードバックがかかる。すなわち、第2モーター22のトルクと第1モーター21のトルクを広げる方向に制御動作がなされることになる。
【0060】
このような状態が続くと、作業効率が低下する。また、このように2つのブラシレスモーター20の間で負荷が大きく異なると、記録媒体Mが搬送されて上流側のローラー対11の挟持範囲から外れた場合に、記録媒体Mに対して搬送方向に主に力を加えていた下流側の第2モーター22に対して記録媒体Mを介して上流側のローラー対11及び第1モーター21からかかっていた負荷が一度に消滅して、一時的に記録媒体Mに対して著しく大きな力がかかることになる。この結果、記録媒体Mの搬送速度には、大きな揺らぎが生じる(図4(a)の範囲d)。ローラー対12の挟持範囲から記録媒体Mが外れた場合にも、第3モーター23に対して第2モーター22及びローラー対12からかかっていた負荷が消滅して、やはり搬送速度に大きな揺らぎが生じる。搬送速度の揺らぎが生じると、そのタイミングで撮像されていた記録媒体Mの位置が特定できなくなり、読取精度が低下する。したがって、記録媒体Mの搬送にブラシレスモーター20を用いる場合には、ステッピングモーターを用いる場合とは異なる制御が必要となる。
【0061】
本実施形態の読取装置1では、ブラシレスモーター20(駆動ローラー101)の動作状態に応じて通常の回転速度に応じた制御(第1の制御)と、トルク(又は出力電流。以下、トルクに基づく制御についての記載において、全て同じ)に応じた制御(第2の制御:定トルク制御)とを切り替えて実行する。具体的には、各ブラシレスモーター20のトルクが所定の基準範囲(所定のトルク範囲)から外れた場合には、トルクを正常化させる、すなわち、トルクが基準範囲内となることを優先する制御に切り替える。
【0062】
図5は、トルクの調整について説明する図である。
基準範囲(所定のトルク範囲)の下限は、例えば、記録媒体Mを挟持していない状態での各ブラシレスモーター20のトルクに定められてもよい。図5(a)に示すように、対象のブラシレスモーター20が回転動作させる駆動ローラー101が、最下流側に位置する駆動ローラー101を回転動作させるものではなくなったタイミングにおける対象のブラシレスモーター20の負荷の急激な低下が抑止される。これにより少なくとも、本来ブラシレスモーター20が設定どおりに駆動ローラーを回転させるために必要なトルクを自身で発生させて、下流側の駆動ローラー101を回転動作させるブラシレスモーター20に無駄な負荷をかけさせない。すなわち、下流側のブラシレスモーター20のトルクの著しい上昇も抑えられる。
【0063】
このとき、下流側のブラシレスモーター20に必要なトルクは、駆動ローラー101を回転動作させる負荷に対し、追加負荷として、実際の搬送速度で記録媒体Mを搬送させる負荷、及び上流側のブラシレスモーター20の回転動作を設定速度から搬送速度に引き上げるのに要する負荷を加えたものに対応する大きさとなる。これに応じて、基準範囲の上限としては、例えば、記録媒体Mを単独で挟持した状態でのブラシレスモーター20のトルクが用いられてもよい。この場合には、上記追加負荷の分だけ、自身のブラシレスモーター20の回転速度が設定速度から低下した状態で記録媒体Mの搬送が行われる。基準範囲の上限を上昇させると、記録媒体Mの搬送速度の低下が抑制され得る。
【0064】
すなわち、各ブラシレスモーター20のトルクに係る基準範囲は、他のブラシレスモーター20の動作を考慮しないで単独で搬送する場合の記録媒体Mの有無に応じた範囲(図5(a)に示した矢印の範囲)を若干広げて(主に上側)定められてもよい。これにより、各ブラシレスモーター20のトルクのばらつきも低下し、上流側のローラー対による挟持位置から記録媒体Mが外れた場合に下流側のローラー対にかかる負荷が大きく変化するのも抑制される(位置x11、x12では、第3モーター23のトルクは上流側のローラー対11、12による負荷の減少は、搬送速度の上昇でほぼ相殺される)。したがって、搬送速度の大きな揺らぎも低減されて、読取精度の低下も抑えられる。基準範囲は、基準値622として予め記憶部62に記憶されていてよい。
【0065】
記録媒体Mの搬送に係る負荷の大きさは、記録媒体Mの材質及びサイズ、並びに環境状態などにも依存するので、一律にトルクの基準範囲を定めるのは難しい。すなわち、一律なトルクの制御のみを行うと、記録媒体Mによっては搬送速度が設定速度から大きくずれる場合があり得る。したがって、トルクの制御中に設定速度範囲から外れたブラシレスモーター20がある場合には、少なくとも当該ブラシレスモーター20については、回転速度の制御(第1の制御)に戻す。設定速度範囲は、例えば、設定速度に対して所定の幅で定められてよい。設定速度範囲の上限は、下流側の設定速度よりも小さく、下限は、上流側の設定速度よりも大きい。第1の制御により、再びトルクの大きさが基準範囲から外れる場合には、単純にトルクの制御に戻してもよいし、この状態の基準範囲として、設定されているトルクの基準範囲を補正してからトルクの制御に戻してもよい。
【0066】
図5(b)に示すように、実際の各駆動ローラー101の回転速度は、最下流側の駆動ローラーに応じたブラシレスモーター20の設定速度V1~V3を基準に、上流側で他のローラー対12により挟持されている場合には、設定速度V1~V3よりも若干低下した速度となる。
【0067】
上記のように、ブラシレスモーター20のトルクは、上流側のローラー対に係るブラシレスモーター20のトルクが低下することで増加するので、上流側のローラー対に係るブラシレスモーター20のトルクの下限さえ定められれば、トルクが不要に増加しない。したがって、最下流側のローラー対13に係る第3モーター23に関しては、必ずしもトルクに基づく電流制御を行わなくてもよい。すなわち、この場合には第3モーター23は、常に回転速度が設定速度と等しくなるように制御される。
【0068】
図6は、本実施形態の読取装置1で実行される搬送動作制御処理の制御手順を示すフローチャートである。
この搬送動作制御処理は、制御部60により実行されるが、一部の処理はブラシレスモーター20内の駆動回路に含まれる制御回路などで実行されてもよい。また、搬送動作制御処理は、複数のブラシレスモーター20について各々実行されてよい。搬送動作制御処理は、搬送動作の開始時に起動され、搬送動作の終了や停止の命令があった場合には割込み動作などにより強制終了されてよい。
【0069】
搬送動作制御処理が開始されると、制御部60は、ブラシレスモーター20の回転速度、トルク及び出力している電流の強度の情報を第1検出部41から取得する(ステップS101)。上述のように、直接トルクを計測していない場合には、トルクの計測結果は取得内容から除外される。制御部60は、動作開始時か、又はトルクが基準範囲内であるか否かを判別する(ステップS102)。ここでいう動作開始時は、出力電流がゼロでブラシレスモーター20及び駆動ローラー101が回転動作していない状態から、一度設定速度に達する若しくはトルクが基準範囲に達するまで、又は通常であれば設定速度に到達するまでの所定時間が経過するまでなどとされ得る。基準範囲内であるか又は動作開始時であると判別された場合には(ステップS102で“YES”)、制御部60は、得られた回転速度と設定されている回転速度(設定速度)とを比較し、大小関係に応じて電流を調整する第1の制御を行う(ステップS103)。すなわち、回転速度が設定速度よりも大きい場合には、制御部60は、電流を減少させ、回転速度が設定速度よりも小さい場合には、制御部60は、電流を増加させる。それから、制御部60の処理は、ステップS101に戻る。
【0070】
ステップS102の判別処理で、動作開始時ではなく(ブラシレスモーター20の回転速度が上昇した後)かつトルクが基準範囲内ではないと判別された場合には(ステップS102で“NO”)、制御部60は、トルクに基づく電流の制御(第2の制御)に変更する(ステップS104)。制御部60は、トルクが下限値より小さいか否かを判別する(ステップS105)。下限値より小さいと判別された場合には(ステップS105で“YES”)、制御部60は、出力電流を増加させて、トルクを下限値まで上昇させる(ステップS106)。それから、制御部60の処理は、ステップS107へ移行する。トルクが下限値より小さくないと判別された場合には(ステップS105で“NO”)、制御部60の処理は、ステップS107へ移行する。
【0071】
ステップS107の処理へ移行すると、制御部60は、トルクが上限値よりも大きいか否かを判別する(ステップS107)。トルクが上限値よりも大きいと判別された場合には(ステップS107で“YES”)、制御部60は、出力電流を減少させてトルクを上限値まで低下させる(ステップS108)。それから、制御部60の処理は、ステップS109へ移行する。トルクが上限値よりも大きくないと判別された場合には(ステップS107で“NO”)、制御部60の処理は、ステップS109へ移行する。
ステップS105~S108の処理が、本実施形態の読取装置1における第2の制御の内容である。
【0072】
ステップS109の処理へ移行すると、制御部60は、ブラシレスモーター20から回転速度、トルク及び出力電流の情報を取得する(ステップS109)。制御部60は、回転速度が基準範囲内であるか否かを判別する(ステップS110)。回転速度が基準範囲内であると判別された場合には(ステップS110で“YES”)、制御部60の処理は、ステップS105に戻る。
【0073】
回転速度が基準範囲内ではないと判別された場合には(ステップS110で“NO”)、制御部60の処理は、ステップS103に移行する。
【0074】
以上の各処理のうち、ステップS102、S104、S110、S111の処理が本実施形態の搬送動作制御方法における制御切替ステップに当たる。
【0075】
なお、第2の制御が実行されている間の搬送速度は別途保持され、一定の間隔で撮像された画像の撮像位置の特定に用いられてもよいし、反対に、搬送速度に応じて撮像間隔が調整されてもよい。上記のような搬送速度の大きな揺らぎとは異なり、このような搬送速度のずれは、撮像動作や画像の読み取りに精度よく反映される。
【0076】
図7は、搬送動作制御処理の変形例1を示すフローチャートである。
上記では、各ブラシレスモーター20のトルク(出力電流)を基準として制御の切替を行ったが、対象のブラシレスモーター20と、このブラシレスモーター20が回転動作させる駆動ローラー101の1つ下流に位置する駆動ローラー101を回転動作させるブラシレスモーター20との間のトルクの差に応じて制御を切り替えてもよい。トルクの差に係る基準範囲には、大小関係(符号)が含まれていてよい。トルクの差に係る基準範囲は、上記実施形態のトルクの大きさに係る基準範囲とは別のものであって、基準値622として予め記憶保持されていてよい。
【0077】
ここでは、上記実施形態の搬送動作制御処理に対してステップS101a、S109aの処理が追加され、また、ステップS102、S105~S108の処理がそれぞれステップS102a、S105a~S108aの処理に置き換えられている。その他の処理は同一であり、同一の処理内容には同一の符号を付して詳しい説明を省略する。
【0078】
ステップS101の処理の後、制御部60は、1つ下流側の駆動ローラー101を回転動作させるブラシレスモーター20の回転速度、トルク及び出力電流をモーター動作検出部40から取得する(ステップS101a)。制御部60は、動作開始時であるか、又は2つのブラシレスモーター20のトルクを比較し、トルクの差が基準範囲内か、否かを判別する(ステップS102a)。ここでいうトルク差は、対象のブラシレスモーター20のトルク(出力電流)から1つ下流側のブラシレスモーター20のトルク(出力電流)を差し引いた値である。動作開始時であるか、又はトルクの差が基準範囲内であると判別された場合には(ステップS102aで“YES”)、制御部60の処理は、ステップS103へ移行する。動作開始時ではなく、かつトルク差が基準範囲内ではないと判別された場合には(ステップS102aで“NO”)、制御部60の処理は、ステップS104へ移行する。
【0079】
ステップS104の処理ののち、制御部60は、トルク差が下限未満であるか否かを判別する(ステップS105a)。ここでいう下限は負の値である。トルク差が下限未満であると判別された場合には(ステップS105aで“YES”)、制御部60は、トルク差が下限となるように対象のブラシレスモーター20の出力電流を変更させる(ステップS106a)。それから、制御部60の処理は、ステップS107aに移行する。トルク差が下限未満ではないと判別された場合には(ステップS105aで“NO”)、制御部60の処理は、ステップS107aに移行する。
【0080】
ステップS107aの処理に移行すると、制御部60は、トルク差が上限よりも大きいか否かを判別する(ステップS107a)。この上限の値も負の値である。トルク差が上限よりも大きいと判別された場合には(ステップS107aで“YES”)、制御部60は、トルク差が上限となるように対象のブラシレスモーター20の出力電流を変更させる(ステップS108a)。そして、制御部60の処理は、ステップS109へ移行する。トルク差が上限よりも大きくないと判別された場合には(ステップS107aで“NO”)、制御部60の処理は、ステップS109へ移行する。
【0081】
ステップS109の処理の後、制御部60は、1つ下流側の駆動ローラー101を回転動作させるブラシレスモーター20の回転速度、トルク及び出力電流をモーター動作検出部40から取得する(ステップS109a)。それから、制御部60の処理は、ステップS110に移行する。
【0082】
なお、1つ下流側の駆動ローラー101が記録媒体Mを搬送している駆動ローラー101のうち最下流側に位置するか否かで、2つのブラシレスモーター20の間でのトルクの差は全く異なる。したがって、基準範囲(上限及び下限)は、別個に定められてもよい。
【0083】
図8は、搬送動作制御処理の変形例2を示すフローチャートである。
【0084】
トルクに応じた出力電流の制御は、複数のローラー対11~13を跨いで記録媒体Mが位置している場合以外には行われないように、記録媒体Mの位置に応じて制御を切り替えてもよい。記録媒体Mの位置(ローラー対12の挟持位置x2まで)は、例えば、記録媒体検出部30により記録媒体Mの先頭(最も下流側の端)が検出されたタイミングから、第1モーター21の回転速度を積分して算出、特定される。記録媒体Mの先頭位置がローラー対12の挟持位置を通過した以降は、記録媒体Mを挟持している最下流側のローラー対の回転速度を積分して加算していけばよい。あるいは、より単純に、位置x12の下流側に別個に記録媒体検出部が位置して、2つ以上のローラー対12に跨って記録媒体Mが位置している状態の終了を特定することとしてもよい。
【0085】
トルクの制御を行う設定エリアは、予め対象のブラシレスモーター20ごとに各々定められていてもよい。
【0086】
これに伴って、この変形例2の搬送動作制御処理では、上記実施形態の搬送動作制御処理に対してステップS121~S124の処理が追加されている。その他の処理は同一であり、同一の処理内容には同一の符号を付して詳しい説明を省略する。
【0087】
搬送動作制御処理が開始されると、制御部60は、記録媒体Mの位置情報を取得する(ステップS121)。上述のように、記録媒体Mの位置は、記録媒体検出部30による記録媒体Mの先頭の検出タイミングと、記録媒体Mの搬送速度の積分値とにより求められる。記録媒体Mの位置は、搬送動作制御処理とは別途求められてもよいし、ステップS121の処理内で上記の情報を取得して制御部60が位置を特定してもよい。
【0088】
ステップS101の処理の後、制御部60は、記録媒体Mの位置が上記の設定されたエリア内であるか否かを判別する(ステップS122)。設定エリア内ではないと判別された場合には(ステップS122で“NO”)、制御部60の処理は、ステップS103へ移行する。設定エリア内であると判別された場合には(ステップS122で“YES”)、制御部60の処理は、ステップS102へ移行する。
【0089】
ステップS110の判別処理で、“YES”に分岐すると、制御部60は、記録媒体Mの位置情報を取得する(ステップS123)。処理の具体的な内容は、上記のステップS121の処理と同一である。制御部60は、記録媒体Mの現在位置が設定エリア内であるか否かを判別する(ステップS124)。設定エリア内であると判別された場合には(ステップS124で“YES”)、制御部60の処理は、ステップS105へ戻る。設定エリア内ではないと判別された場合には(ステップS124で“NO”)、制御部60の処理は、ステップS111へ移行する。
【0090】
以上のように、本実施形態の読取装置1は、画像形成装置2による画像形成後の記録媒体Mの表面を読み取る撮像部50と、撮像部50による読取範囲を通る経路に沿って配置された複数の駆動ローラー101を有し、これら複数の駆動ローラー101のうち少なくとも2つに跨ってそれぞれの記録媒体Mを搬送する搬送部10と、複数の駆動ローラー101をそれぞれ回転動作させる複数のブラシレスモーター20と、制御部60(ここでいう制御部には、ブラシレスモーター20の駆動回路で行われる判別、制御処理が含まれてもよい)と、を備える。制御部60は、記録媒体Mの搬送方向について下流側に位置する駆動ローラー101であるほど回転速度が大きくなるように複数のブラシレスモーター20の動作を制御し、これら複数のブラシレスモーター20のうち少なくとも1つについて、ブラシレスモーター20の動作状態に応じて、回転速度を調整する第1の制御と、トルクを調整する第2の制御と、を切り替えて行う。
ブラシレスモーター20は、通常、設定速度が得られるようにトルク(出力電流)が制御されるが、複数の駆動ローラー101の間で記録媒体Mを介して力が伝わって、不適切なフィードバックがかかる場合があり得る。したがって、ブラシレスモーター20の動作状態に応じてトルクを先に定めることで、複数のブラシレスモーター20をバランスよく本来のトルクから大きく逸脱しない範囲で安定して動作させるように調整することができる。これにより、読取装置1では、読取精度の低下を抑えつつ、効率のよい搬送動作が可能になる。また、記録媒体Mが一方の駆動ローラー101による保持位置から外れた場合に、他方の駆動ローラー101を回転動作させるブラシレスモーター20の負荷が大きく変化して記録媒体Mの搬送速度に大きな揺らぎが生じるのを抑制することができる。したがって、記録媒体Mを安定した速度で移動させながら、撮像部50による適正な撮像動作が可能となる。
【0091】
また、第1の制御では、回転速度が所定の回転速度となるようにブラシレスモーター20を制御する。すなわち、ブラシレスモーター20を定速度制御することで、搬送速度のむらを低減し、安定して撮像部50による読み取りを行わせることができる。
【0092】
また、第2の制御では、ブラシレスモーター20のトルクを所定の基準範囲内とする制御を行う。これにより、上流側の駆動ローラー101を回転動作させるブラシレスモーター20が本来自身の回転などに必要なトルクを、下流側の駆動ローラー101を回転動作させるブラシレスモーター20に行わせるのを低減することができる。また、各ブラシレスモーター20の制御を各々個別に行えるので、制御処理が容易である。
【0093】
また、制御部60は、第1の制御によりブラシレスモーター20のトルクが所定の基準範囲から外れた場合には、当該ブラシレスモーター20の動作について第2の制御に切り替えてもよい。搬送速度の制御により再びブラシレスモーター20の間でトルクの差が大きくなっていく場合には、トルクの制御に戻すことで、バランスよく効率的にブラシレスモーター20の動作制御を行うことができる。
【0094】
また、第2の制御では、制御対象のブラシレスモーター20のトルクと、制御対象のブラシレスモーター20が回転動作させる駆動ローラー101よりも搬送方向について下流側に位置する駆動ローラー101を回転動作させるブラシレスモーター20のトルクとの差が所定の基準差の範囲内となるように制御が行われる。これにより、必要以上に上流側の駆動ローラー101を回転動作させるブラシレスモーター20のトルクを下流側の駆動ローラー101を回転動作させるブラシレスモーター20が負担してバランスの悪い搬送動作になることを適切に抑制することができる。
【0095】
また、制御部60は、制御対象のブラシレスモーター20のトルクと制御対象のブラシレスモーターが回転動作させる駆動ローラー101よりも搬送方向について下流側に位置する駆動ローラー101を回転動作させるブラシレスモーター20のトルクとの差が所定の基準範囲から外れた場合には、当該ブラシレスモーター20の動作について第2の制御に切り替える。
搬送速度の制御に切り替えると、制御上、上記のように再びブラシレスモーター20の間でトルク(出力電流)の差が広がる方向に調整が生じるので、トルクの制御に戻すことで、バランスの悪い非効率なブラシレスモーター20の動作を解消することができる。
【0096】
また、制御部60は、第2の制御によりブラシレスモーター20の回転速度が予め定められた設定速度範囲から外れた場合には、当該ブラシレスモーター20の動作について第1の制御に切り替える。トルクだけを制御していると、記録媒体Mの種別や状態などに応じて設定速度からのずれが大きくなることもあるので、適切に速度の調整を挟むことで、より正確な搬送動作が可能となる。
【0097】
また、制御部60は、駆動ローラー101の回転動作の開始時には第1の制御を行い、駆動ローラー101の回転速度が上昇した後に第2の制御に切り替える。搬送速度を設定速度程度に一度上昇させてから第2の制御によりトルクを安定的に維持させるので、効率よく搬送動作の制御を行うことができる。
【0098】
また、読取装置1は、特定の位置で記録媒体Mを検出する記録媒体検出部30を備える。制御部60は、記録媒体検出部30の結果に基づいて記録媒体Mの位置を特定し、特定された位置に応じて第1の制御と第2の制御とを切り替える。複数のブラシレスモーター20間で著しいトルクの不均衡を生じる記録媒体Mの位置範囲は一般的に限られるので、このような条件を満たす位置であるか否かを判別して、必要な場合だけにトルクを優先した制御を追加することで、搬送速度を設定速度に保ちやすくすることができる。
【0099】
また、読取装置1は、複数の駆動ローラー101に対し、当該複数の駆動ローラー101の回転に従ってそれぞれ回転する複数の従動ローラー102を有する。このように、駆動ローラー101と従動ローラー102とで挟持してこれらを回転させながら記録媒体Mを搬送するので、記録媒体Mを確実に両側から引っ張って弛みを生じさせない。また、記録媒体Mと押さえ部材である従動ローラー102とが摺動しないので、記録媒体Mの表面への悪影響が低減される。また、搬送動作に係る記録媒体Mの摩擦が小さくなるので、駆動ローラー101の回転トルクの増大を抑制することができる。
【0100】
また、第1モーター21~第3モーター23はブラシレスモーター20であってよい。ブラシレスモーター20ではなくとも、ステッピングモーターでなければ、本発明の搬送動作が適切に制御されるが、特に、ブラシレスモーター20を利用することで、搬送部のサイズの縮小や耐久性の向上などを図ることができる。
【0101】
また、本実施形態の読取装置1の搬送動作制御方法では、画像形成後の記録媒体Mの搬送方向について下流側に位置する駆動ローラー101であるほど回転速度が大きくなるように複数のブラシレスモーター20の設定速度が定められ、少なくとも1つのブラシレスモーター20について、ブラシレスモーター20の動作状態に応じて、回転速度を調整する第1の制御と、トルクを調整する第2の制御と、を切り替えて行う制御切替ステップ、を含む。このような搬送動作の制御方法により、複数のブラシレスモーター20をバランスよく本来のトルクから大きく逸脱しない範囲で安定して動作させるように調整することができる。これにより、読取装置1による読取精度の低下を抑えながら効率のよい搬送動作が可能になる。また、記録媒体Mが一方の駆動ローラー101による搬送支持位置から外れた場合に、他方の駆動ローラー101を回転動作させるブラシレスモーター20の負荷が大きく変化して記録媒体Mの搬送速度に大きな揺らぎが生じるのを抑制することができる。したがって、記録媒体Mを安定した速度で撮像部50による適正な撮像動作が可能となる。
【0102】
また、コンピューターとしての制御部60に上記制御切替ステップを実行させるプログラム621をインストールして実行させることで、ソフトウェア制御により容易に複数のブラシレスモーター20をバランスよく動作させ、安定して効率よく搬送動作を行わせることができる。また、これにより、撮像部50による撮像動作をより精度よく行わせることができる。
【0103】
なお、本発明は、上記実施の形態に限られるものではなく、様々な変更が可能である。
例えば、上記実施の形態では、表裏の両面を一度の搬送で読取可能に2つの撮像部50を有するものとして説明したが、これに限られない。片面のみが読取可能であってもよい。
【0104】
また、画像読取装置が読み取る対象の記録媒体Mから、画像形成装置2による画像形成がなされたものを読み取るが、この画像は、3次元的な凹凸などを有するものなどであってもよい。
【0105】
また、読取装置は、可視光により画像などを読み取るものに限られない。読取分解能が必要なものであれば、構造や構造の内部などを読み取るものであってもよく、そのために他の波長の電磁波が用いられてもよい。
【0106】
また、上記実施の形態では、駆動ローラー111に対して従動ローラー112を当接させて記録媒体Mを挟持するものとして説明したが、これに限られない。駆動ローラー111と平板との間に記録媒体Mを挟持してもよい。平板は、複数の駆動ローラー101に対して共通のものであってもよい。また、搬送部10は、記録媒体Mを直線に沿って搬送するものではなくてもよい。途中で搬送経路が湾曲、屈曲していてもよい。
【0107】
また、各駆動ローラー101の回転速度は、ブラシレスモーター20の回転速度から求められるのではなく、他の方法、例えば、ロータリーエンコーダーを用いて直接計測されてもよい。
【0108】
また、記録媒体Mの位置を特定するための記録媒体検出部30は、一個ではなくてもよい。複数個、例えば、各駆動ローラー101の直前及び/又は直後などにそれぞれ位置していてもよい。
【0109】
また、上記の変形例1では、隣り合う駆動ローラー101を動作させるブラシレスモーター20間でトルク(出力電流)の比較を行うこととしたが、比較対象はこれに限られない。記録媒体Mを搬送している最下流の駆動ローラー101を動作させるブラシレスモーター20が比較対象とされてもよい。
【0110】
また、上記実施の形態では、第2の制御に移行した場合に、トルク(出力電流)が基準範囲から外れた場合には一度に基準の範囲の上限値又は下限値に変更するように制御するものとして説明したが、基準の範囲からの外れ具合が大きい場合には、所定の変化幅又は変化率ずつ複数回の出力電流の変更で基準範囲内に収まるように制御がなされてもよい。
【0111】
また、上記実施の形態では、ブラシレスモーター20を利用するものとして説明したが、ステッピングモーターでなければ他のモーター、すなわち、ブラシモーターであってもよい。
【0112】
また、上記実施の形態では、ローラー対11~13により記録媒体Mを挟持して搬送するものとして説明したが、複数の駆動ローラー101に跨って搬送される記録媒体Mを介して前後の駆動ローラー101間で負荷が分配され、また、速度差により記録媒体Mのたるみの発生を抑える構成であれば、ローラー対により挟持する構成に限られるものではない。
【0113】
また、以上の説明では、本発明の搬送動作制御に係るプログラム621を記憶するコンピューター読み取り可能な媒体としてHDD又はフラッシュメモリーなどの不揮発性メモリーを有する記憶部62を例に挙げて説明したが、これらに限定されない。その他のコンピューター読み取り可能な媒体として、MRAMなどの他の不揮発性メモリー、及びCD-ROM、DVDディスクなどの可搬型記憶媒体を適用することが可能である。また、本発明に係るプログラムのデータを通信回線を介して提供する媒体として、キャリアウェーブ(搬送波)も本発明に適用される。
その他、上記実施の形態で示した具体的な構成、位置関係、処理動作の内容及び手順などは、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において適宜変更可能である。本発明の範囲は、特許請求の範囲に記載した発明の範囲とその均等の範囲を含む。
【符号の説明】
【0114】
1 読取装置
10 搬送部
11~13 ローラー対
101、111、121、131 駆動ローラー
102、112、122、132 従動ローラー
20 ブラシレスモーター
30 記録媒体検出部
40 モーター動作検出部
50 撮像部
60 制御部
61 CPU
62 記憶部
621 プログラム
622 基準値
70 通信部
91 制御部
92 原稿読取部
93 画像形成動作部
931 書込部
931a 光走査部
931b 感光体
931c 現像部
931d 帯電部
931e クリーニング部
931f 1次転写ローラー
932 中間転写ベルト
933 2次転写ローラー
934 定着部
935 供給トレイ
936 反転経路
94 操作受付部
95 表示部
E 排出トレイ
FR 搬送経路
M 記録媒体
U 画像形成システム
V1~V3 設定速度
x1~x3 挟持位置
x11、x12 位置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8