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特開2022-184547空調機器の微生物・ウィルス殺菌装置及び微生物・ウィルス殺菌方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022184547
(43)【公開日】2022-12-13
(54)【発明の名称】空調機器の微生物・ウィルス殺菌装置及び微生物・ウィルス殺菌方法
(51)【国際特許分類】
   A61L 9/16 20060101AFI20221206BHJP
   A61L 9/18 20060101ALI20221206BHJP
   A61L 2/07 20060101ALI20221206BHJP
   A61L 2/12 20060101ALI20221206BHJP
   F24F 13/28 20060101ALI20221206BHJP
   F24F 8/108 20210101ALI20221206BHJP
   F24F 8/192 20210101ALI20221206BHJP
   F24F 8/20 20210101ALI20221206BHJP
   F24F 8/80 20210101ALI20221206BHJP
【FI】
A61L9/16 F
A61L9/18
A61L2/07
A61L2/12
F24F13/28
F24F8/108
F24F8/192
F24F8/20
F24F8/80 400
F24F8/80 250
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021092471
(22)【出願日】2021-06-01
(71)【出願人】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(71)【出願人】
【識別番号】317015294
【氏名又は名称】東芝エネルギーシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001380
【氏名又は名称】弁理士法人東京国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岡崎 幸基
(72)【発明者】
【氏名】田嶋 直樹
(72)【発明者】
【氏名】岡部 寛史
(72)【発明者】
【氏名】角谷 玲菜
【テーマコード(参考)】
4C058
4C180
【Fターム(参考)】
4C058AA19
4C058BB05
4C058BB06
4C058DD02
4C058DD04
4C058DD06
4C058JJ06
4C058JJ16
4C058JJ29
4C058KK04
4C058KK23
4C058KK44
4C180AA07
4C180AA16
4C180DD05
4C180DD08
4C180DD09
4C180EA52Y
4C180HH03
4C180HH05
4C180JJ03
4C180LL01
(57)【要約】
【課題】フィルタに捕捉された微生物またはウィルスを、有害な薬剤ガスや多量の温水を用いることなく確実に不活性化もしくは殺菌して、フィルタによる二次汚染を抑制できること。
【解決手段】空気を導入するダクト12に、非多孔質体のフィルタ13を備えたフィルタユニット14が接続されて、フィルタにより空気中の塵埃、微生物またはウィルスを捕捉して除去し清浄空気Bを生成する空調機器11の微生物・ウィルス殺菌装置10であって、微生物またはウィルスを捕捉したフィルタ13に、加熱された水蒸気を含む空気(加湿空気C)を供給する加湿除湿機構16と、加湿除湿機構16による加熱された加湿空気Cの供給時に作動して、微生物またはウィルスを捕捉したフィルタ13にマイクロ波Mを照射するマイクロ波照射機構15と、を有するものである。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
空気を導入するダクトに、非多孔質体のフィルタを備えたフィルタユニットが接続されて、前記フィルタにより空気中の塵埃、微生物またはウィルスを捕捉して除去し清浄空気を生成する空調機器の微生物・ウィルス殺菌装置であって、
微生物またはウィルスを捕捉した前記フィルタに、加熱された水蒸気を含む空気を供給する加湿機構と、
前記加湿機構の作動時に作動して、微生物またはウィルスを捕捉した前記フィルタにマイクロ波を照射するマイクロ波照射機構と、を有して構成されたことを特徴とする空調機器の微生物・ウィルス殺菌装置。
【請求項2】
空気を導入するダクトに、非多孔質体のフィルタを備えたフィルタユニットが接続されて、前記フィルタにより空気中の塵埃、微生物またはウィルスを捕捉して除去し清浄空気を生成する空調機器の微生物・ウィルス殺菌装置であって、
微生物またはウィルスを捕捉した前記フィルタに、帯電した水滴を供給する加湿機構と、
前記加湿機構の作動時または作動後に作動して、微生物またはウィルスを捕捉した前記フィルタにマイクロ波を照射するマイクロ波照射機構と、を有して構成されたことを特徴とする空調機器の微生物・ウィルス殺菌装置。
【請求項3】
前記フィルタにマイクロ波を照射して前記フィルタに捕捉された微生物またはウィルスを不活性化もしくは殺菌した後に、前記フィルタに乾燥空気を供給する除湿機構を更に有し、
前記除湿機構による乾燥空気の供給と共に、マイクロ波照射機構を作動させるよう構成されたことを特徴とする請求項1または2に記載の空調機器の微生物・ウィルス殺菌装置。
【請求項4】
前記加湿機構は、加熱した水蒸気を生成する水蒸気生成部と、生成した水蒸気を含む空気を冷却し飽和水蒸気として、微生物またはウィルスを捕捉したフィルタに供給する冷却部と、を有して構成されたことを特徴とする請求項1または3に記載の空調機器の微生物・ウィルス殺菌装置。
【請求項5】
前記加湿機構は、加熱した水蒸気を含む空気を生成する加湿部と、生成した水蒸気を含む空気を更に加熱して、微生物またはウィルスを捕捉したフィルタに供給する再加熱部と、を有して構成されたことを特徴とする請求項1に記載の空調機器の微生物・ウィルス殺菌装置。
【請求項6】
前記マイクロ波照射機構が照射するマイクロ波は、その周波数範囲が0.013GHz~6GHzであることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の空調機器の微生物・ウィルス殺菌装置。
【請求項7】
空気を導入するダクトに、非多孔質体のフィルタを備えたフィルタユニットが接続されて、前記フィルタにより空気中の塵埃、微生物またはウィルスを捕捉して除去し清浄空気を生成する空調機器の微生物・ウィルス殺菌方法であって、
微生物またはウィルスを捕捉した前記フィルタに、加熱された水蒸気を含む空気を供給しながらマイクロ波を照射して、前記フィルタに捕捉された微生物またはウィルスを不活性化もしくは殺菌することを特徴とする空調機器の微生物・ウィルス殺菌方法。
【請求項8】
空気を導入するダクトに、非多孔質体のフィルタを備えたフィルタユニットが接続されて、前記フィルタにより空気中の塵埃、微生物またはウィルスを捕捉して除去し清浄空気を生成する空調機器の微生物・ウィルス殺菌方法であって、
微生物またはウィルスを捕捉した前記フィルタに、帯電した水滴を供給して付着させた後にマイクロ波を照射して、前記フィルタに捕捉された微生物またはウィルスを不活性化もしくは殺菌することを特徴とする空調機器の微生物・ウィルス殺菌方法。
【請求項9】
前記フィルタに捕捉された微生物またはウィルスを不活性化もしくは殺菌した後、前記フィルタに乾燥空気を供給しながらマイクロ波を照射して、前記フィルタを乾燥させることを特徴とする請求項7または8に記載の空調機器の微生物・ウィルス殺菌方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、空調機器のフィルタに捕捉された微生物またはウィルスを不活性化もしくは殺菌する空調機器の微生物・ウィルス殺菌装置、及び空調機器の微生物・ウィルス殺菌方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
コロナウィルスの蔓延による状況から、微生物災害への危機管理が世界的に求められている。空気清浄機等の空調機器には、空気中に含まれる塵埃等を取り除く目的でHEPAフィルタを内蔵したものが多数あり、単独でまたは飛沫等の粒子状物質に含まれる形で空気中を浮遊する微生物またはウィルスが上記HEPAフィルタに捕捉される。ところが、この空調機器ではHEPAフィルタに、微生物またはウィルスが捕捉されて濃縮されることで、空調機器の点検・メンテナンス時やHEPAフィルタ交換時に二次汚染が発生する恐れがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2008/001471号
【特許文献2】特開2012-78071号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
これまで、空調システム内の微生物またはウィルスに対する殺菌方法としては、紫外線照射による殺菌手法、オゾンによる殺菌手法、過酸化水素ガスによる滅菌手法(特許文献1)、温水による殺菌手法などが提案されている。
【0005】
しかしながら、紫外線による殺菌の効果はフィルタの表面近傍のみであり、フィルタ内部の微生物またはウィルスの殺菌効果については期待できない。また、オゾンについては、一般に高濃度で用いられるため、オゾンキラーなどの装置を併用しても、呼吸器や目等の人体に対するリスクが懸念される。更に、過酸化水素ガスによる滅菌は、有害な薬剤ガスの回収機構に不具合が生じると健康上の影響が懸念される。これらのオゾンや薬剤ガスを用いる方法は、外部にオゾンや薬剤ガスが残留しないように安全を確保するための機構を付加する必要があり、設備上の負担も大きい。また、温水による殺菌は、多量の温水を必要とするため、ボイラや温水配管などの付属設備が必要となる等の課題がある。
【0006】
特許文献2は気化式加湿器に関するものである。この気化式加湿器は、加湿部分を担っている「フィン」と呼ばれる多孔質体を、マイクロ波吸収体を塗布、含浸、蒸着または混練したものに変更した上で、湿潤させたフィンにマイクロ波Mを照射する。これにより、マイクロ波吸収体及び多孔質体の空胞に保持された水分がマイクロ波Mを吸収してフィンが発熱し、高温化してフィンに発生した細菌を殺菌するものである。
【0007】
この方法をHEPAフィルタの殺菌に応用した場合、HEPAフィルタの濾紙が、非多孔質体のガラス繊維で形成されているので多量の水分を保持できず、このため、マイクロ波Mの照射でHEPAフィルタを効率的に加熱することができない。また、HEPAフィルタの濾紙の一部あるいは全てを多孔質体に変更して、湿潤により水分を保持させる方法も考えられる。しかし、この場合には湿度が高くなるため細菌の発生リスクが高まり、濾紙が細菌の温床になって、却って二次汚染を促進させる要因になる恐れがある。
【0008】
本発明の実施形態は、上述の事情を考慮してなされたものであり、フィルタに捕捉された微生物またはウィルスを、有害な薬剤ガスや多量の温水を用いることなく確実に不活性化もしくは殺菌して、フィルタによる二次汚染を抑制できる空調機器の微生物・ウィルス殺菌装置、及び空調機器の微生物・ウィルス殺菌方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の実施形態における空調機器の微生物・ウィルス殺菌装置は、空気を導入するダクトに、非多孔質体のフィルタを備えたフィルタユニットが接続されて、前記フィルタにより空気中の塵埃、微生物またはウィルスを捕捉して除去し清浄空気を生成する空調機器の微生物・ウィルス殺菌装置であって、微生物またはウィルスを捕捉した前記フィルタに、加熱された水蒸気を含む空気を供給する加湿機構と、前記加湿機構の作動時に作動して、微生物またはウィルスを捕捉した前記フィルタにマイクロ波を照射するマイクロ波照射機構と、を有して構成されたことを特徴とするものである。
【0010】
また、本発明の実施形態における空調機器の微生物・ウィルス殺菌装置は、空気を導入するダクトに、非多孔質体のフィルタを備えたフィルタユニットが接続されて、前記フィルタにより空気中の塵埃、微生物またはウィルスを捕捉して除去し清浄空気を生成する空調機器の微生物・ウィルス殺菌装置であって、微生物またはウィルスを捕捉した前記フィルタに、帯電した水滴を供給する加湿機構と、前記加湿機構の作動時または作動後に作動して、微生物またはウィルスを捕捉した前記フィルタにマイクロ波を照射するマイクロ波照射機構と、を有して構成されたことを特徴とするものである。
【0011】
本発明の実施形態における空調機器の微生物・ウィルス殺菌方法は、空気を導入するダクトに、非多孔質体のフィルタを備えたフィルタユニットが接続されて、前記フィルタにより空気中の塵埃、微生物またはウィルスを捕捉して除去し清浄空気を生成する空調機器の微生物・ウィルス殺菌方法であって、微生物またはウィルスを捕捉した前記フィルタに、加熱された水蒸気を含む空気を供給しながらマイクロ波を照射して、前記フィルタに捕捉された微生物またはウィルスを不活性化もしくは殺菌することを特徴とするものである。
【0012】
また、本発明の実施形態における空調機器の微生物・ウィルス殺菌方法は、空気を導入するダクトに、非多孔質体のフィルタを備えたフィルタユニットが接続されて、前記フィルタにより空気中の塵埃、微生物またはウィルスを捕捉して除去し清浄空気を生成する空調機器の微生物・ウィルス殺菌方法であって、微生物またはウィルスを捕捉した前記フィルタに、帯電した水滴を供給して付着させた後にマイクロ波を照射して、前記フィルタに捕捉された微生物またはウィルスを不活性化もしくは殺菌することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明の実施形態によれば、フィルタに捕捉された微生物またはウィルスを、有害な薬剤ガスや多量の温水を用いることなく確実に不活性化もしくは殺菌して、フィルタによる二次汚染を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】第1実施形態に係る空調機器の微生物・ウィルス殺菌装置を示す構成図。
図2】第2実施形態に係る空調機器の微生物・ウィルス殺菌装置を示す構成図。
図3】第3実施形態に係る空調機器の微生物・ウィルス殺菌装置を示す構成図。
図4】第4実施形態に係る空調機器の微生物・ウィルス殺菌装置を示す構成図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を実施するための形態を、図面に基づき説明する。
[A]第1実施形態(図1
図1は、第1実施形態に係る空調機器の微生物・ウィルス殺菌装置を示す構成図である。この図1に示す空調機器の微生物・ウィルス殺菌装置10は、空調機器11のフィルタ13に捕捉された微生物またはウィルスを不活性化もしくは殺菌するものであり、マイクロ波照射機構15と、加湿機構及び除湿機構が一体化された加湿除湿機構16と、を有して構成される。ここで、空調機器11は、空気(例えば室内空気)Aを導入するダクト12と、非多孔質体のフィルタ13を備えると共にダクト12に接続されたフィルタユニット14と、を有して構成される。
【0016】
フィルタユニット14のユニットケース17内にフィルタ13が収容される。このフィルタ13は、非多孔質体、例えば非多孔質のガラス繊維で構成されるHEPAフィルタ(High Efficiency Particulate Air Filter)である。つまり、このフィルタ13は、セパレータ(不図示)を間に挟んでシート状のガラス繊維を幾重にも折り返して形成されたものである。
【0017】
空調機器11の運転により、ダクト12内を流れる空気Aがフィルタユニット14のユニットケース17の空気導入口18からフィルタ13内に流れる。このフィルタ13は、単独でまたは飛沫等の粒子状物質に含まれる形で空気A中に浮遊する微生物またはウィルスを、空気中の塵埃と共に捕捉し濃縮した状態で除去する。これにより、空気Aは清浄空気Bとなって、ユニットケース17の空気排出口19から排出される。
【0018】
マイクロ波照射機構15は、フィルタユニット14内のフィルタ13にマイクロ波Mを照射するものであり、発振器21、導波管20、アイソレータ22、パワーモニタ23及びチューナ24を有して構成される。
【0019】
発振器21は、マイクロ波Mを発生するデバイスであって、例えばマグネトロン等が用いられる。この発振器21が発生するマイクロ波Mの周波数は0.013GHz~6GHz、好ましくは2.4GHz~2.5GHzである。また、導波管20は、金属製の配管であり、上流端に発振器21が、下流端にフィルタユニット14がそれぞれ接続され、上流側からアイソレータ22、パワーモニタ23、チューナ24が順次配設される。この導波管20は、発振器21からのマイクロ波Mが内部を伝搬し、マイクロ波Mが外部へ貫通しないように断面積の大きさや板厚が規定される。
【0020】
アイソレータ22は、マイクロ波Mの反射波を内部で吸収して、反射波が発振器21へ戻らないようにするものである。パワーモニタ23は、導波管20内部を伝搬するマイクロ波Mの進行波出力と反射波出力をモニタするデバイスであり、進行波出力を管理するために使用される。チューナ24は、マイクロ波Mの伝搬モードを調整して整合状態に近づけるためのデバイスであり、電解と磁界を別々に調整するEHチューナ等が用いられる。
【0021】
フィルタユニット14のユニットケース17における導波管20の下流端との境界には、マイクロ波Mを透過するガス閉止板25が設置される。更に.このユニットケース17は、空気導入口18と空気排出口19が金属メッシュ26で覆われ、これらのガス閉止板25及び金属メッシュ26が存在しない部分が金属板27で覆われている。金属メッシュ26は、マイクロ波Mの波長(例えばマイクロ波Mの周波数が2.45GHzの場合に12cm)に対して十分に細かいサイズ(例えば1mmピッチ)のメッシュにて形成されており、空気A、清浄空気Bを通過させるが、マイクロ波Mを通過させない。また、金属板27も、マイクロ波Mが通過しないような材質及び厚さに設定される。
【0022】
加湿除湿機構16は、フィルタユニット14のフィルタ13に、加熱された加湿空気(水蒸気を含む空気)Cと加熱された乾燥空気Dとを選択して供給するものであり、配管30、ファン31、バブラ32.三方弁33A及び33B、第1シャッタ34並びに第2シャッタ35を有して構成される。
【0023】
このうち、第1シャッタ34は空調機器11のダクト12内に配置されて、フィルタユニット14のフィルタ13への空気Aの供給を開操作時に許容し、閉操作時に遮断する。また、第2シャッタ35は、ダクト12における第1シャッタ34の下流側に設置されて、配管30の下流端に接続され、開または閉操作される。
【0024】
配管30は、上流端がマイクロ波照射機構15の発振器21に接続され、この上流端からファン31、三方弁33A、33Bが順次配設される。ファン31は、発振器21の排熱により加熱された空気を送風するものであり、翼式のファンやエアポンプ等が用いられる。
【0025】
バブラ32は、液体の水Wを内蔵し、発振器21からの加熱空気が水W中を通過することで空気に水蒸気を混入させ、上記加熱空気を加湿して加熱された加湿空気Cとする。また、三方弁32A及び32Bは、発振器21からの加熱空気の流れを変更するものである。つまり、三方弁33A及び33Bは、実線矢印αに示すように、発振器21からの加熱空気をバブラ32に供給し、このバブラ32にて生成された加熱された加湿空気Cを第2シャッタ35に供給する場合と、破線矢印βに示すように、発振器21からの加熱空気を、加熱された乾燥空気Dとして直接第2シャッタ35へ供給する場合とを切り替える。
【0026】
次に、空調機器の微生物・ウィルス殺菌装置10の作用を説明する。
この空調機器の微生物・ウィルス殺菌装置10は、フィルタ13に捕捉された微生物またはウィルスを殺菌する殺菌過程を実施し、その後、フィルタ13を乾燥させる乾燥過程を実施する。殺菌過程は、微生物またはウィルスが捕捉されたフィルタ13に、加湿除湿機構16の作動により加熱された加湿空気Cを供給して通過させながら、マイクロ波照射機構15の作動によりマイクロ波Mを照射し、これにより、フィルタ13に捕捉された微生物またはウィルスを不活性化もしくは殺菌するものである。また、乾燥過程は、上記殺菌過程の後に、加湿除湿機構16の作動により加熱された乾燥空気Dをフィルタ13に供給して通過させながら、このフィルタ13に、マイクロ波照射機構15の作動によりマイクロ波Mを照射し、これによりフィルタ13を乾燥させるものである。
【0027】
まず、殺菌過程について詳説する。発振器21で発生したマイクロ波Mは導波管20の内部を伝搬し、アイソレータ22、パワーモニタ23及びチューナ24を経て、フィルタユニット14のフィルタ13に照射される。フィルタユニット14のフィルタケース17には金属メッシュ26及び金属板27が配置されているため、マイクロ波Mは外部に放出されずに反射され、フィルタユニット14内にマイクロ波Mの定在波が生じる。
【0028】
一方、三方弁33A及び三方弁33Bは、図1の実線矢印αで示した向きに空気が流れるよう設定され、発振器21の排熱による加熱空気は、ファン31によりバブラ32に送られ、このバブラ32に内蔵された水W中を通り加湿されて、加熱された加湿空気Cとなる。また、空調機器11の運転時には第1シャッタ34が開、第2シャッタ35が閉の状態であるが、空調機器の微生物・ウィルス殺菌装置10の作動時には第1シャッタ34が閉、第2シャッタ35が開の状態に操作される。これにより、加熱された加湿空気Cが、フィルタユニット14の空気導入口18からフィルタ13の内部に導入される。フィルタユニット14への導入直前の加熱された加湿空気Cの温度は、例えば60℃~100℃である。
【0029】
マイクロ波Mの照射が無い場合、加湿除湿機構16からの加熱された加湿空気Cの熱によって、フィルタユニット14の空気導入口18付近のガラス繊維に捕捉された微生物またはウィルスは不活性化もしくは殺菌される。ところが、フィルタ13における空気導入口18から離れた内部は加熱されないため、フィルタ13の内部のガラス繊維に捕捉された微生物またはウィルスに損傷を与えることができない。これに対し、マイクロ波Mの照射を伴う場合、フィルタ13の内部に導入された水がマイクロ波Mによって選択的に加熱されることから、フィルタ13の内部は高温になる。
【0030】
例えば、マイクロ波Mの周波数が2.45GHzの場合、水の電力半減深度は1.5cmであり、フィルタ13のガラス繊維の正確な電力半減深度は誘電率と誘電損失を測定する必要があるものの、たとえばソーダガラス成分と同一と仮定すると30cm程度となる。しかも、この30cmはインゴットのような塊のガラスを想定しているため、ガラス繊維の電力半減深度は更に大きな値になる。このように、マイクロ波Mの同一の周波数において水に比べてガラス繊維の電力半減深度が著しく大きいため、マイクロ波Mのエネルギは、ガラス繊維にはほとんど吸収されず、水に選択的に吸収されることになる。
【0031】
従って、バブラ32からの加熱された加湿空気Cによりフィルタ13の内部まで運ばれた水分がマイクロ波Mによって加熱され、フィルタ13の内部のガラス繊維が高温になる。また、フィルタ13の一部にマイクロ波Mが照射されないあるいは照射強度が低い部分があっても、マイクロ波Mにより生成された高温の水蒸気が、上述のマイクロ波Mが照射されない部分に侵入するため、フィルタ13の全体が均一に加熱される。更に、発振器21の排熱により加熱された加湿空気Cがフィルタ13に導入されることで、加湿空気Cに加熱の無い場合よりも効率よくフィルタ13を加熱することができる。これらの結果、フィルタ13全体の温度はマイクロ波Mの照射によって例えば60℃~100℃になり、このフィルタ13に捕捉された微生物またはウィルスが不活性化もしくは殺菌される。
【0032】
次に、乾燥過程について説明する。一般に水蒸気の流通経路では、各位置での水蒸気圧が温度によって決まる飽和水蒸気圧を超過すると、結露が発生する可能性がある。結露が発生すると周囲は湿潤な状態になり、微生物またはウィルスの温床になる可能性が増大する。そこで、この乾燥過程では、水蒸気を用いた殺菌過程の後に、水蒸気の流通経路となるダクト12の一部及びフィルタユニット14の内部を乾燥させる。
【0033】
つまり、三方弁33A及び33Bを図1の破線矢印βで示した向きに空気が流れるよう切り替え、発振器21の排熱による加熱空気を加熱された乾燥空気Dとして、バブラ32を通過させないで、第2シャッタ35を経てフィルタユニット14のフィルタ13に直接送給し、同時にフィルタ13にマイクロ波照射機構15によりマイクロ波Mを照射する。バブラ32を通過させない上記乾燥空気Dによって、フィルタ13を通過する空気の水蒸気圧を飽和水蒸気圧よりも低下させることが可能になる。しかも、マイクロ波Mの照射によって、フィルタ13に残留した水分が加熱されて気化し蒸発することで、フィルタユニット14におけるフィルタ13及びその周辺部を乾燥することが可能になる。
【0034】
以上のように構成されたことから、本第1実施形態によれば、次の効果(1)及び(2)を奏する。
(1)微生物またはウィルスが捕捉された非多孔質体のフィルタ13に、加湿除湿機構16により加熱された加湿空気Cを供給し、この状態で、マイクロ波照射機構15によりマイクロ波Mを照射する。これにより、加熱された加湿空気Cの加熱された水蒸気が付着したフィルタ13を、加熱されていない水蒸気の付着の場合よりも、マイクロ波Mにより効率よく加熱して、フィルタ13の全体を高温化することができる。この結果、フィルタ13に捕捉された微生物またはウィルスを、有害な薬剤ガスや多量の温水を用いることなく確実に不活性化もしくは殺菌して、フィルタ13による二次汚染を抑制することができる。
【0035】
(2)フィルタ13に捕捉された微生物またはウィルスを不活性化もしくは殺菌した後に、このフィルタ13に加湿除湿機構16が、加熱された乾燥空気Dを供給して通過させながら、マイクロ波照射機構15がマイクロ波Mを照射している。これにより、フィルタ13を十分に乾燥させることができるので、フィルタ13が微生物またはウィルスの温床になることを防止することができる。
【0036】
[B]第2実施形態(図2
図2は、第2実施形態に係る空調機器の微生物・ウィルス殺菌装置を示す構成図である。この第2実施形態において第1実施形態と同様な部分については、第1実施形態と同一の符号を付すことにより説明を簡略化し、または省略する。
【0037】
本第2実施形態の空調機器の微生物・ウィルス殺菌装置40が第1実施形態と異なる点は、加湿除湿機構が加湿機構41と除湿機構42とに明確に分離して構成され、加湿機構41が水蒸気生成部43、冷却部44及び第3シャッタ45を有し、除湿機構42が第1実施形態の配管30、ファン31及び第2シャッタ35を有する点である。
【0038】
加湿機構41の水蒸気生成部43は、水Wを内蔵する容器46と、可変電源48により駆動されるヒータ47とを備えてなり、ヒータ47が容器46内の水Wを加熱して沸騰させ水蒸気を生成する。加湿機構41の冷却部44は、冷却器49と温度計50と温度調節器51とを備え、冷却器49が容器46にて生成された水蒸気を導入して冷却し、飽和水蒸気とする。温度計50は、冷却器49に設置されて飽和水蒸気の温度を計測する。温度調節器51は、温度計50の計測値に基づき可変電源48の出力を調整して、冷却器49内の飽和水蒸気の温度を例えば60℃~100℃に設定する。
【0039】
加湿機構41の作動時には第1シャッタ34及び第2シャッタ35が閉操作され、第3シャッタ45が開操作される。これにより、冷却器49にて生成された飽和水蒸気は、水蒸気生成部43内で生成された水蒸気の圧力により、第3シャッタ45を経て空気と共に、加熱された加湿空気Cとしてフィルタユニット14のフィルタ13へ供給される。一方、除湿機構42の作動時には第1シャッタ34及び第3シャッタ45が閉操作され、第2シャッタ35が開操作される。これにより、ファン31が作用することで、マイクロ波照射機構15の発振器21の排熱により加熱された乾燥空気Dが、第2シャッタ35を経てフィルタユニット14のフィルタ13へ供給される。
【0040】
次に、空調機器の微生物・ウィルス殺菌装置40の作用(殺菌過程、乾燥過程)を説明する。
殺菌過程では、第1シャッタ34及び第2シャッタ35が閉、第3シャッタ45が開の状態とし、加湿機構41から加熱された加湿空気Cを、その圧力によってフィルタユニット14の空気導入口18からフィルタ13の内部に導入する。つまり、加湿機構41の水蒸気生成部43の容器46に内蔵された水Wがヒータ47で加熱されて沸騰し、水蒸気が発生する。この水蒸気は冷却部44の冷却器49に導入され、この冷却器49で冷却されて飽和水蒸気となることで水蒸気量が調整される。冷却器49の内部の温度を温度計50が測定し、温度調節器51が可変電源48の出力を調整することにより、飽和水蒸気の温度を調整する。飽和水蒸気の温度は、例えば60℃~100℃となるようにする。
【0041】
飽和水蒸気は空気と共に、加熱された加湿空気Cとなってフィルタユニット14の空気導入口18からフィルタ13の内部に導入される。このフィルタ13では、加湿機構41からの加熱された加湿空気Cと、マイクロ波照射機構15からのマイクロ波Mの照射とにより、フィルタ13に捕捉された微生物またはウィルスが不活性化もしくは殺菌される。
【0042】
次に、乾燥過程について説明する。この乾燥過程では、第1シャッタ34及び第3シャッタ45が閉、第2シャッタ35が開の状態に切り替えられる。除湿機構42のファン31が作動して、マイクロ波照射機構15の発振器21の排熱により加熱された乾燥空気Dをフィルタユニット14のフィルタ13に送給し、同時に、マイクロ波照射機構15によりマイクロ波Mをフィルタ13に照射する。これにより、フィルタ13内の水分が加熱されてフィルタ13を乾燥することが可能になる。
【0043】
以上のように構成されたことから、本第2実施形態においても、第1実施形態の効果(1)及び(2)と同様な効果を奏するほか、次の効果(3)を奏する。
【0044】
(3)加湿機構41の容器46内で沸騰する水Wの蒸気圧により、冷却器49内の飽和水蒸気を加熱された加湿空気Cとして非多孔質体のフィルタ13へ供給するので、この加湿空気Cをフィルタ13へ供給するための駆動源を別途用意する必要がない。
【0045】
[C]第3実施形態(図3
図3は、第3実施形態に係る空調機器の微生物・ウィルス殺菌装置を示す構成図である。この第3実施形態において第1実施形態と同様な部分については、第1実施形態と同一の符号を付すことにより説明を簡略化し、または省略する。
【0046】
本第3実施形態の空調機器の微生物・ウィルス殺菌装置55が第1実施形態と異なる点は、加湿除湿機能のうち除湿機能が存在せず、加湿機能が加湿機構56として存在し、この加湿機構56が加湿部57、再加熱部58及び第4シャッタ59を有する点である。
【0047】
加湿部57は、水Wを内蔵するバブラ60と、可変電源62により駆動されるヒータ61と、バブラ60内に空気を送給するエアポンプ63と、温度調節器64とを備えてなる。この加湿部57は、ヒータ61により加熱されたバブラ60内の水W中にエアポンプ63が空気を通すことで、この空気に水蒸気を混入させて、加熱された水蒸気を含む空気を生成する。温度調節器64は、バブラ60内に設置された温度計65の計測値に基づき、可変電源62の出力を調節してバブラ60内の水温を調整し、生成される空気の水蒸気圧を調整する。
【0048】
再加熱部58は、配管67を内蔵した恒温槽66と、可変電源69により駆動されるヒータ68と、温度調節器70とを備えてなる。この再加熱部58は、加湿部57にて生成された水蒸気を含む空気を、ヒータ68により加熱された恒温槽66における配管67内に流すことで再加熱する。
【0049】
このとき、温度調節器70は、恒温槽66に設置された温度計71の計測値に基づき可変電源69の出力を調節する。これにより、温度調節器70は、再加熱される水蒸気を含む空気(再加熱された加湿空気C)の温度を、加湿部57からの水蒸気を含む空気の温度よりも高い温度、例えば60℃以上に調整する。この加湿機構56の作動時には、第1シャッタ34が閉操作されると共に第4シャッタ59が開操作されるので、加湿機構56の再加熱部58からの再加熱された加湿空気Cは、第4シャッタ59を経てフィルタユニット14のフィルタ13へ供給される。
【0050】
マイクロ波照射機構15は、加湿機構56から再加熱された加湿空気Cがフィルタユニット14のフィルタ13に供給された状態で、このフィルタ13にマイクロ波Mを照射する。その際、マイクロ波照射機構15は、フィルタ13の内部温度が、加湿機構56の恒温槽66の内部温度(つまり再加熱された乾燥空気D)よりも高くなるようにマイクロ波Mの出力を調整して、フィルタ13の内部で水蒸気圧が飽和水蒸気圧よりも低くなるように調整する。
【0051】
次に、空調機器の微生物・ウィルス殺菌装置55の作用(殺菌過程)を説明する。
殺菌過程では、第1シャッタ34が閉、第4シャッタ59が開の状態とし、加湿機構56からの再加熱された加湿空気Cを、フィルタユニット14の空気導入口18からフィルタ13の内部に導入する。つまり、加湿機構56の加湿部57のヒータ61でバブラ60内の水Wを加熱し、この水W中にエアポンプ63で送給した空気を通すことにより、空気に水蒸気を混入させる。バブラ60内部の水温を温度計65で計測し、この計測値に基づき温度調節器64が可変電源62の出力を調整することで、水蒸気が混入された空気中の水蒸気圧を調整する。
【0052】
この水蒸気を含んだ空気を、再加熱部58のヒータ68で加熱された恒温槽66の配管67に通す。恒温槽66の内部温度を温度計71で計測し、この計測値に基づき温度調節器70が可変電源69の出力を調整することで、恒温槽66からフィルタユニット14へ供給される再加熱された加湿空気Cの温度を調整する。このときの再加熱された加湿空気Cの温度は、バブラ60からの水蒸気を含む空気の温度よりも高くする。再加熱された加湿空気Cは、フィルタユニット14の空気導入口18からフィルタ13の内部に導入される。このフィルタ13への導入直前の再加熱された加湿空気Cの温度は、例えば60℃以上となるようにする。
【0053】
再加熱された加湿空気Cのフィルタ13への導入とマイクロ波照射機構15からのマイクロ波Mの照射とにより、フィルタ13に捕捉された微生物またはウィルスが殺菌される。この際、マイクロ波照射機構15は、マイクロ波Mの出力を調整して、フィルタ13の内部温度を恒温槽66の内部温度(再加熱された乾燥空気D)より高くすることで、フィルタ13内部での水蒸気圧を飽和水蒸気圧より低くする。このように、フィルタ13内で水蒸気圧が飽和水蒸気圧より低くなるので、フィルタ13の内部に結露が発生しない。
【0054】
以上のように構成されたことから、本第3実施形態によれば、第1実施形態の効果(1)と同様な効果を奏するほか、次の効果(4)を奏する。
【0055】
(4)加湿機構56は、加湿部57が、加熱された水蒸気を含む空気を生成し、再加熱部58が、加湿部57からの水蒸気を含む空気を更に加熱して再加熱された加湿空気Cとし、この再加熱された加湿空気Cを、微生物またはウィルスが捕捉された非多孔質体のフィルタ13へ供給する。マイクロ波照射機構15は、再加熱された加湿空気Cがフィルタ13に供給された状態でこのフィルタ13にマイクロ波Mを照射する。この際、マイクロ波照射機構15は、フィルタ13の内部温度が、再加熱部58の恒温槽66の内部温度(再加熱された加湿空気Cの温度)よりも高くなるようにマイクロ波Mの出力を調整する。
【0056】
これにより、フィルタ13の内部での水蒸気圧を飽和水蒸気圧よりも低くすることができるので、フィルタ13の内部で結露の発生を防止できる。この結果、フィルタ13に捕捉された微生物またはウィルスを不活性化もしくは殺菌した後に、このフィルタ13を乾燥させる乾燥過程を実施する必要がなく、乾燥過程を実施しなくても、フィルタ13が微生物またはウィルスの温床になることを防止することができる。
【0057】
[D]第4実施形態(図4
図4は、第4実施形態に係る空調機器の微生物・ウィルス殺菌装置を示す構成図である。この第4実施形態において第1及び第2実施形態と同様な部分については、第1及び第2実施形態と同一の符号を付すことにより説明を簡略化し、または省略する。
【0058】
本第4実施形態の空調機器の微生物・ウィルス殺菌装置75が第1及び第2実施形態と異なる点は、加湿除湿機構が加湿機構76と除湿機構42とに明確に分離して構成され、加湿機構76がスプレー77、電極78及び高圧電源79を有する点である。
【0059】
加湿機構76のスプレー77には配管80を用いて水が供給され、また、このスプレー77はアースに接地されている。スプレー77は、供給された水をミスト状の水滴としてダクト12内に放出する。また、電極78は、スプレー77の放出口の近傍に設置される。この電極78は、金属製で高圧電源79の正極に接続され、表面に絶縁性の樹脂がコーティングされている。高圧電源79は直流電源であり、例えば1kV~10kVの正の高電圧を電極78に印加する。
【0060】
スプレー77がミスト状の水滴を放出した状態で、電極78に高圧電源79から高電圧が印加されると、静電誘導帯電効果によりミスト状の水滴が負に帯電する。この負に帯電した水滴Eがフィルタユニット14の空気導入口18に向けてダクト12内に放出され、フィルタユニット14のフィルタ13内に流入すると、静電力が生じてフィルタ13のガラス繊維の表面が正に分極し、この表面に負に帯電した水滴が効率良く付着する。
【0061】
除湿機構42は、第2実施形態と同様に配管30、ファン31及び第2シャッタ35を有して構成される。加湿機構76が停止してこの除湿機構42を動作させるときには、第1シャッタ34が閉操作され、第2シャッタ35が開操作された状態でファン31が作動する。このファン31の作動により、マイクロ波照射機構15の発振器21の排熱により加熱された乾燥空気Dが、第2シャッタ35を経てフィルタユニット14の空気導入口18に向けてダクト12内に供給される。
【0062】
次に、空調機器の微生物・ウィルス殺菌装置75の作用を説明する。
本空調機器の微生物・ウィルス殺菌装置75では、加湿機構76が負に帯電した水滴Eをフィルタユニット14のフィルタ13に供給して、微生物またはウィルスが捕捉されたフィルタ13のガラス繊維に水滴を付着させる水滴供給過程を実施する。上記加湿機構76の作動時または作動後にマイクロ波照射機構15が作動して、微生物またはウィルスが捕捉され且つ水滴が付着されたフィルタ13にマイクロ波Mを照射して、微生物またはウィルスを不活性化もしくは殺菌する殺菌過程を実施する。上記殺菌過程後に、除湿機構42の作動により加熱された乾燥空気Dをフィルタ13に供給しながら、このフィルタ13にマイクロ波照射機構15の作動によりマイクロ波Mを照射して、フィルタ13を乾燥させる乾燥過程を実施する。
【0063】
まず、水滴供給過程について説明する。この水滴供給過程では、第1シャッタ34及び第2シャッタ35が閉操作される。この状態で、スプレー77は、供給された水をミスト状の水滴にして噴出し、フィルタユニット14の空気導入口18へ向ってダクト12内に放出する。この際、電極78に正の高電圧が印加されると、この正の高電圧の影響で静電誘導帯電効果が生じて、ミスト状の水滴は負に帯電する。この負に帯電した水滴Eがフィルタユニット14のフィルタ13の内部に導入されると、静電力の影響でフィルタ13のガラス繊維の表面が正に分極し、このガラス繊維の表面に負に帯電した水滴Eが効率よく付着する。この水滴は、微生物またはウィルスを捕捉したフィルタ13の空気導入口18側から空気排出口19側までほぼ均一に付着する。
【0064】
次に、殺菌過程を説明する。マイクロ波照射機構15の作用は第1実施形態と同様である。つまり、発振器21で発生したマイクロ波Mは導波管20の内部を伝搬し、アイソレータ22、パワーモニタ23及びチューナ24を経て、微生物またはウィルスを捕捉したフィルタ13に照射される。フィルタユニット14におけるガス閉止板25を除く境界には金属メッシュ26及び金属板27が配置されているため、マイクロ波Mは外部に放出されずに反射され、フィルタユニット14内にマイクロ波Mの定在波が生じる。
【0065】
マイクロ波Mの電力半減深度はフィルタ13のガラス繊維が水よりも大きいことから、マイクロ波Mのエネルギは水に選択的に吸収される。このため、フィルタ13のガラス繊維に付着した水滴が加熱されて蒸発し、ガラス繊維全体が高温化する。また、フィルタ13の一部にマイクロ波Mが照射されないあるいは照射強度が低い部分があっても、この部分に、マイクロ波Mにより生じた高温の水蒸気が侵入するため、フィルタ13の全体が均一に加熱される。上述のように、フィルタ13の全体にわたりガラス繊維を高温化できるので、フィルタ13のガラス繊維に捕捉された微生物またはウィルスを不活性化もしくは殺菌することが可能になる。
【0066】
次に、乾燥過程を説明する。この乾燥過程は第2実施形態と同様である。つまり、第1シャッタ34が閉、第2シャッタ35が開の状態に切り替えられる。この状態で除湿機構42のファン31を作動させて、マイクロ波照射機構15の発振器21の排熱により加熱された空気を加熱された乾燥空気Dとして、第2シャッタ35を経てダクト12内へ供給する。この加熱された乾燥空気Dがフィルタユニット14のフィルタ13を通過する間に、マイクロ波照射機構15からフィルタ13にマイクロ波Mが照射されることで、フィルタ13を乾燥させることが可能になる。
【0067】
以上のように構成されたことから、本第4実施形態によれば、第1実施形態の効果(2)と同様な効果を奏するほか、次の効果(5)を奏する。
【0068】
(5)微生物またはウィルスが捕捉された非多孔質体のフィルタ13に、加湿機構76により負に帯電した水滴Eを供給すると、静電力の影響でフィルタ13に分極が生じて、水滴がフィルタ13に効率良く付着する。この状態でマイクロ波照射機構15によりフィルタ13にマイクロ波Mを照射すると、付着した水滴が効率的に加熱されてフィルタ13の全体を高温に加熱することができる。この結果、フィルタ13に捕捉された微生物またはウィルスを、有害な薬剤ガスや多量の温水を用いることなく確実に不活性化もしくは殺菌して、フィルタ13による二次汚染を抑制することができる。
【0069】
以上、本発明の実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これらの実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができ、また、それらの置き換えや変更は、発明の範囲や要旨に含まれると共に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0070】
10…空調機器の微生物・ウィルス殺菌装置、11…空調機器、12…ダクト、13…フィルタ、14…フィルタユニット、15…マイクロ波照射機構、16…加湿除湿機構(加湿機構、除湿機構)、21…発振器、40…空調機器の微生物・ウィルス殺菌装置、41…加湿機構、42…除湿機構、43…水蒸気生成部、44…冷却部、46…容器、47…ヒータ、49…冷却器、55…空調機器の微生物・ウィルス殺菌装置、56…加湿機構、57…加湿部、58…再加熱部、60…バブラ、61…ヒータ、66…恒温槽、68…ヒータ、75…空調機器の微生物・ウィルス殺菌装置、76…加湿機構、77…スプレー、78…電極、A…空気、B…清浄空気、C…加湿空気、D…乾燥空気、E…負に帯電した水滴、M…マイクロ波
図1
図2
図3
図4