(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022184552
(43)【公開日】2022-12-13
(54)【発明の名称】回転電機のロータ、及び回転電機
(51)【国際特許分類】
H02K 1/28 20060101AFI20221206BHJP
H02K 1/27 20220101ALI20221206BHJP
【FI】
H02K1/28 A
H02K1/27 501C
H02K1/27 501H
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021092477
(22)【出願日】2021-06-01
(71)【出願人】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】佐竹 康
【テーマコード(参考)】
5H601
5H622
【Fターム(参考)】
5H601AA08
5H601CC01
5H601CC15
5H601DD01
5H601DD09
5H601DD11
5H601DD47
5H601EE12
5H601GA02
5H601JJ05
5H601KK13
5H622CA01
5H622CA07
5H622PP03
5H622PP18
(57)【要約】
【課題】軸部材を筒部材に圧入し易くできる回転電機のロータ、及び回転電機を提供すること。
【解決手段】筒部材16と、筒部材16の内部に配置された永久磁石17と、筒部材16に圧入された第1挿入部21を有する第1軸部材20と、を備えている。筒部材16の内周面Isのうち永久磁石17よりも筒部材16の第1端16a寄りには、筒部材16の軸線が延びる方向において、筒部材16の第1端16aから筒部材16の内部に向かうにつれて徐々に拡径された円錐面Is1を含み、第1挿入部21の周面は、第1軸部材20の軸線が延びる方向において、第1挿入部21の第1端20aに向かうにつれて徐々に拡径された円錐面Osを含み、筒部材16の円錐面Is1と第1挿入部21の円錐面Osとは、全周に亘って接触している。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒部材と、
前記筒部材の内部に配置された磁性体と、
前記筒部材に圧入された挿入部を有する軸部材と、を備え、
前記筒部材の内周面のうち前記磁性体よりも前記筒部材の端寄りは、前記筒部材の軸線が延びる方向において、前記筒部材の端から前記筒部材の内部に向かうにつれて徐々に拡径された第1面を含み、
前記挿入部の周面は、前記軸部材の軸線が延びる方向において、前記挿入部の端に向かうにつれて徐々に拡径された第2面を含み、
前記第1面と前記第2面とは、全周に亘って接触していることを特徴とする回転電機のロータ。
【請求項2】
前記筒部材の外径は、前記筒部材の軸線が延びる方向に一定であり、
前記筒部材の軸線に直交する方向における前記筒部材の端の厚さは、前記筒部材の軸線に直交する方向における前記筒部材の厚さの中で最も厚いことを特徴とする請求項1に記載の回転電機のロータ。
【請求項3】
前記筒部材に前記挿入部が圧入された部分を圧入部とすると、
前記圧入部において、前記挿入部及び前記筒部材のいずれか一方には、溝が設けられ、且つ前記挿入部及び前記筒部材のいずれか他方には、前記溝に嵌る突部が設けられていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の回転電機のロータ。
【請求項4】
前記溝の形状は、前記突部の外形に沿っていることを特徴とする請求項3に記載の回転電機のロータ。
【請求項5】
前記第1面は、前記筒部材に設けられ、
前記第2面は、前記挿入部に設けられ、
前記溝は、前記第1面に設けられ、
前記突部は、前記第2面に設けられ、
前記挿入部の端は、前記軸部材の軸線に直交する方向において前記突部よりも外側に突出していることを特徴とする請求項3又は請求項4に記載の回転電機のロータ。
【請求項6】
請求項1~請求項5のいずれか一項に記載の回転電機のロータを備える回転電機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転電機のロータ、及び回転電機に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に開示された回転電機のロータは、筒部材と、筒部材内に配置された磁性体と、筒部材に固定された軸部材と、を備えている。軸部材は、例えば筒部材内に磁性体が配置された状態で筒部材に圧入される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、軸部材を筒部材に圧入するとき、筒部材が弾性変形する。筒部材は、弾性変形した形状から元の形状に戻るための復元力を発生させる。例えば、筒部材の内周面が一定の内径であると、復元力は、筒部材の軸線に直交する方向における内側に向けて作用する。軸部材の周面には、軸部材の筒部材への圧入が進むほど筒部材の復元力が強く作用する。このため、軸部材が筒部材に圧入しきれない虞がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決する回転電機のロータは、筒部材と、前記筒部材の内部に配置された磁性体と、前記筒部材に圧入された挿入部を有する軸部材と、を備え、前記筒部材の内周面のうち前記磁性体よりも前記筒部材の端寄りは、前記筒部材の軸線が延びる方向において、前記筒部材の端から前記筒部材の内部に向かうにつれて徐々に拡径された第1面を含み、前記挿入部の周面は、前記軸部材の軸線が延びる方向において、前記挿入部の端に向かうにつれて徐々に拡径された第2面を含み、前記第1面と前記第2面とは、全周に亘って接触している。
【0006】
これによれば、挿入部が筒部材の端から圧入されると、筒部材は拡径するように弾性変形するが、挿入部が筒部材の内部に向かうと、筒部材が弾性変形した形状から元の形状に戻るための復元力が挿入部に作用する。第1面の形状によって、筒部材の復元力は、筒部材の軸線に直交する方向における内側に向かう力と、筒部材の端から筒部材の内部に向かう力とに分力される。このため、筒部材の内周面の内径が一定である場合と比較して、挿入部に作用する筒部材の軸線に直交する方向における内側に向かう力が小さくなる。よって、挿入部を筒部材に圧入し易くなる。また、挿入部には、筒部材の端から筒部材の内部に向かう力が作用する。よって、挿入部が筒部材の端から筒部材の内部に向けてより圧入し易くなる。したがって、軸部材を筒部材に圧入し易くできる。
【0007】
上記の回転電機のロータにおいて、前記筒部材の外径は、前記筒部材の軸線が延びる方向に一定であり、前記筒部材の軸線に直交する方向における前記筒部材の端の厚さは、前記筒部材の軸線に直交する方向における前記筒部材の厚さの中で最も厚いとよい。
【0008】
これによれば、挿入部を筒部材に圧入するとき、挿入部に作用する筒部材の復元力は、筒部材の端で最も大きくなる。このため、挿入部を筒部材の端から圧入し始めたとき、挿入部には、筒部材の軸線が延びる方向のうち筒部材の内部に向かう方向に作用する力が最も強く作用する。よって、軸部材を筒部材により圧入し易くなる。
【0009】
上記の回転電機のロータにおいて、前記筒部材に前記挿入部が圧入された部分を圧入部とすると、前記圧入部において、前記挿入部及び前記筒部材のいずれか一方には、溝が設けられ、且つ前記挿入部及び前記筒部材のいずれか他方には、前記溝に嵌る突部が設けられているとよい。
【0010】
これによれば、溝に突部が嵌ることにより挿入部が筒部材の端から抜け難くなる。このため、軸部材と筒部材との圧入状態を維持し易くなる。
上記の回転電機のロータにおいて、前記溝の形状は、前記突部の外形に沿っているとよい。
【0011】
これによれば、突部が溝内で移動し難い。このため、筒部材及び軸部材それぞれの軸線が延びる方向において軸部材と筒部材との位置ずれを抑制できる。よって、軸部材と筒部材との圧入状態を維持し易くなる。
【0012】
上記の回転電機のロータにおいて、前記第1面は、前記筒部材に設けられ、前記第2面は、前記挿入部に設けられ、前記溝は、前記第1面に設けられ、前記突部は、前記第2面に設けられ、前記挿入部の端は、前記軸部材の軸線に直交する方向において前記突部よりも外側に突出しているとよい。
【0013】
これによれば、挿入部を筒部材の端から圧入しているときに突部が筒部材に干渉し難くなる。このため、軸部材を筒部材に圧入し易くなる。
上記課題を解決する回転電機は、上述した請求項1~請求項5のいずれか一項に記載の回転電機のロータを備える。
【0014】
これによれば、挿入部が筒部材の端から圧入されると、筒部材は拡径するように弾性変形するが、挿入部が筒部材の内部に向かうと、筒部材が弾性変形した形状から元の形状に戻るための復元力が挿入部に作用する。第1面の形状によって、筒部材の復元力は、筒部材の軸線に直交する方向における内側に向かう力と、筒部材の端から筒部材の内部に向かう力とに分力される。このため、筒部材の内周面の内径が一定である場合と比較して、挿入部に作用する力であって、筒部材の軸線に直交する方向に沿って内側に向かう力が小さくなる。よって、挿入部を筒部材に圧入し易くなる。また、挿入部には、筒部材の端から筒部材の内部に向かう力が作用する。よって、挿入部が筒部材の端から筒部材の内部に向けてより圧入し易くなる。したがって、軸部材を筒部材に圧入し易くできる。
【0015】
また、筒部材から抜けるように軸部材に外力が作用した場合、軸部材の第2面が筒部材の第1面に押し付けられる。このため、ロータが回転しているとき、軸部材が筒部材から離脱することを防止できる。
【発明の効果】
【0016】
この発明によれば、軸部材を筒部材に圧入し易くできる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図3】第1挿入部を筒部材の第1端部に圧入したときに第1挿入部に作用する力を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、回転電機のロータ、及び回転電機を具体化した一実施形態を
図1及び
図2にしたがって説明する。
<回転電機の構成>
図1に示すように、回転電機10は、筒状のハウジング11内に収容されている。ハウジング11は、筒状の第1ハウジング構成体12と、第1ハウジング構成体12に連結される板状の第2ハウジング構成体13と、を備えている。第1ハウジング構成体12及び第2ハウジング構成体13は金属製である。第1ハウジング構成体12及び第2ハウジング構成体13は、例えばアルミニウム製である。
【0019】
第1ハウジング構成体12は、板状の端壁12aと、筒状の周壁12bとを有している。周壁12bは、端壁12aの外周部から端壁12aの厚さ方向に延びている。第2ハウジング構成体13は、周壁12bにおける端壁12aとは反対側の開口を閉塞している。第2ハウジング構成体13は、第1ハウジング構成体12に連結されている。第1ハウジング構成体12及び第2ハウジング構成体13は、回転電機10を収容するモータ室S1を区画している。
【0020】
端壁12aにおけるモータ室S1に臨む面には、円筒状のボス部12cが設けられている。ボス部12cは、端壁12aから第2ハウジング構成体13に向けて突出している。ボス部12cの軸線は、周壁12bの軸線と一致している。第2ハウジング構成体13におけるモータ室S1に臨む面には、円筒状のボス部13aが設けられている。ボス部13aは、第2ハウジング構成体13から端壁12aに向けて突出している。ボス部13aの軸線は、周壁12bの軸線と一致している。よって、ボス部12cの軸線と、ボス部13aの軸線とは一致している。
【0021】
回転電機10は、ステータ14と、ロータ15とを備えている。ステータ14は、円筒状のステータコア14aと、コイル14bとを有している。ステータコア14aは、周壁12bの内周面に固定されている。コイル14bは、ステータコア14aに巻回されている。ロータ15は、ステータコア14aの内側に回転可能な状態で配置されている。
【0022】
<ロータの構成>
図1に示すように、ロータ15は、筒部材16と、磁性体である永久磁石17と、軸部材としての第1軸部材20と、第2軸部材30とを備えている。
【0023】
筒部材16は、軸線が直線状に延びる円筒状である。筒部材16は、例えばインコネル製である。筒部材16は、筒部材16の軸線が延びる方向に第1端16a及び第2端16bを有している。筒部材16は、内周面Isと、外周面Psとを有している。筒部材16の外周面Psは、筒部材16の軸線が延びる方向における筒部材16の全長に亘って延びる円筒面である。筒部材16の外径は、筒部材16の軸線が延びる方向に一定である。
【0024】
永久磁石17は、中実円柱状である。永久磁石17は、永久磁石17の軸線が延びる方向における永久磁石17の長さは、筒部材16の軸線が延びる方向における筒部材16の長さよりも短い。永久磁石17は、永久磁石17の軸線が延びる方向において第1端面17a及び第2端面17bを有している。第1端面17a及び第2端面17bは、永久磁石17の軸線に直交する方向に延びる平面である。
【0025】
永久磁石17は、筒部材16の内側に圧入されている。永久磁石17の第1端面17aは、筒部材16の第1端16aよりも筒部材16の内部寄りに位置している。筒部材16の第1端部161は、第1端面17aよりも第1端16aに向けて突出している。筒部材16の第1端部161は、筒部材16のうち永久磁石17の第1端面17aよりも筒部材16の第1端16a寄りの部分である。永久磁石17の第2端面17bは、筒部材16の第2端16bよりも筒部材16の内部寄りに位置している。筒部材16の第2端部162は、第2端面17bよりも第2端16bに向けて突出している。筒部材16の第2端部162は、筒部材16のうち永久磁石17の第2端面17bよりも筒部材16の第2端16b寄りの部分である。永久磁石17は、筒部材16の内部に配置されている。
【0026】
第1軸部材20の一部は、筒部材16の第1端部161に圧入されている。第1軸部材20の軸線は、筒部材16の軸線と一致している。第2軸部材30は、筒部材16の第2端部162に設けられている。第2軸部材30の軸線は、筒部材16の軸線と一致している。第1軸部材20及び第2軸部材30は、例えばチタン製である。
【0027】
第1軸部材20は、第1軸部材20の軸線が延びる方向において、第1端20a及び第2端20bを有している。第1軸部材20は、挿入部としての第1挿入部21と、第1挿入部21に連続する第1支持部22とを有している。第1挿入部21は、筒部材16の第1端部161に圧入されている。第1端20aは、第1挿入部21に設けられている。第1端20aは、筒部材16の内部に位置している。第1端20aは、永久磁石17の第1端面17aに当接している。第1支持部22は、筒部材16の第1端16aよりも筒部材16の軸線が延びる方向における外側に位置している。第1支持部22は、第1軸部材20における筒部材16の第1端部161から突出している部位である。第2端20bは、第1支持部22に設けられている。第2端20bは、筒部材16の外側に位置している。
【0028】
第1支持部22は、ボス部13aの内側を通過している。第1支持部22は、第2ハウジング構成体13を貫通してハウジング11の外へ突出している。ボス部13aの内周面と第1支持部22の周面との間には、第1軸受41が設けられている。第1軸部材20は、第1支持部22が第1軸受41を介してボス部13aに支持されることにより、ハウジング11に回転可能な状態で支持されている。
【0029】
第2軸部材30は、第2軸部材30の軸線が延びる方向において、第1端30a及び第2端30bを有している。第2軸部材30は、第2挿入部31と、第2挿入部31に連続する第2支持部32とを有している。第2挿入部31は、筒部材16の第2端部162に圧入されている。第1端30aは、第2挿入部31に設けられている。第1端30aは、筒部材16の内部に位置している。第1端30aは、永久磁石17の第2端面17bに当接している。第2支持部32は、筒部材16の第2端16bよりも筒部材16の軸線が延びる方向における外側に位置している。第2支持部32は、第2軸部材30における筒部材16の第2端部162から突出している部位である。第2端30bは、第2支持部32に設けられている。第2端30bは、筒部材16の外側に位置している。
【0030】
第2支持部32は、ボス部12cの内側を通過している。ボス部12cの内周面と、第2支持部32の周面との間には、第2軸受42が設けられている。第2軸部材30は、第2支持部32が第2軸受42を介してボス部12cに支持されることにより、ハウジング11に回転可能な状態で支持されている。
【0031】
<筒部材及び第1軸部材の構成>
筒部材16及び第1軸部材20の構成について以下詳述する。
図2に示すように、筒部材16の内周面Isは、円錐面Is1と、円筒面Is2とを有している。
【0032】
円錐面Is1は、筒部材16の第1端部161の内部に位置する面である。円錐面Is1は、筒部材16の内周面Isのうち永久磁石17の第1端面17aよりも筒部材16の第1端16a寄りの面である。円錐面Is1は、筒部材16の軸線が延びる方向において、筒部材16の第1端16aから筒部材16の内部に向かうにつれて徐々に拡径されている。円錐面Is1は、筒部材16の軸線に対して傾斜したテーパ面である。
図2に記載された円錐面Is1の筒部材16の軸線に対する傾斜は、誇張して記載している。なお、筒部材16の第1端16aは、請求項上の筒部材の端の一例である。また、円錐面Is1は、請求項上の第1面の一例である。
【0033】
円筒面Is2は、筒部材16の内周面Isのうち円錐面Is1を除く全ての面である。円筒面Is2は、筒部材16の軸線が延びる方向において、筒部材16の円錐面Is1から筒部材16の第2端16bまで延びている。円筒面Is2の内径は、筒部材16の軸線が延びる方向に一定である。筒部材16の円筒面Is2には、永久磁石17及び第2挿入部31が圧入されている。なお、永久磁石17の第1端面17aは、円錐面Is1と円筒面Is2との境界に位置している。
【0034】
筒部材16の軸線に直交する方向において、筒部材16の第1端部161の厚さは、円錐面Is1と円筒面Is2との境界から第1端16aに向かうほど厚くなる。よって、筒部材16の軸線に直交する方向における筒部材16の第1端16aの厚さは、筒部材16の軸線に直交する方向における筒部材16の厚さの中で最も厚くなる。
【0035】
図2に示すように、第1軸部材20の第1挿入部21の周面は、第1軸部材20の軸線が延びる方向において、第1挿入部21の第1端20aに向かうにつれて徐々に拡径された円錐面Osを有している。円錐面Osは、第1軸部材20の軸線に対して傾斜したテーパ面である。第1挿入部21の第1端20aには、面取り作業が実施される。第1挿入部21の第1端20aには、面取り作業により図示しない傾斜面が形成される。すなわち、第1挿入部21の周面は、面取り作業による傾斜面と円錐面Osとを含んでいる。
図2に記載された円錐面Osの第1軸部材20の軸線に対する傾斜は、誇張して記載している。なお、第1挿入部21の第1端20aは、請求項上の挿入部の端の一例である。また、円錐面Osは、請求項上の第2面の一例である。
【0036】
筒部材16の軸線が延びる方向における筒部材16の第1端部161の長さは、第1軸部材20の軸線が延びる方向における第1挿入部21の長さと同じである。筒部材16の軸線に直交する方向において、筒部材16の第1端16aの内径を内径D1minとする。筒部材16の軸線に直交する方向において、筒部材16における円錐面Is1と円筒面Is2との境界における内径を内径D1maxとする。内径D1minは、筒部材16の内径の中で最も小さい。内径D1maxは、筒部材16の内径の中で最も大きい。筒部材16の円筒面Is2の内径は、内径D1maxである。
【0037】
第1軸部材20の軸線に直交する方向において、第1挿入部21の第1端20aの直径を直径D2maxとする。第1軸部材20の軸線に直交する方向において、第1挿入部21と第1支持部22との境界の直径を直径D2minとする。直径D2maxは、第1挿入部21の直径の中で最も大きい。直径D2minは、第1挿入部21の直径の中で最も小さい。第1支持部22の直径は、直径D2minである。
【0038】
筒部材16の内径D1minは、第1挿入部21の直径D2maxよりも小さい。筒部材16の内径D1minは、第1挿入部21の直径D2minと同じである。筒部材16の内径D1maxは、第1挿入部21の直径D2maxと同じである。すなわち、第1挿入部21を筒部材16の第1端部161に設けるとき、第1挿入部21は筒部材16の第1端部161に圧入される。よって、筒部材16の第1端部161と第1軸部材20の第1挿入部21により、筒部材16に第1挿入部21が圧入された圧入部50が構成されている。
【0039】
圧入部50において、円錐面Osの第1軸部材20の軸線に対する傾斜角度は、筒部材16の円錐面Is1の筒部材16の軸線に対する傾斜角度と同じである。円錐面Is1と円錐面Osとは、第1軸部材20及び筒部材16それぞれの軸線を中心とした周方向における全周に亘って接触している。円錐面Is1と円錐面Osとは、第1軸部材20及び筒部材16それぞれの軸線が延びる方向における全長に亘って接触している。よって、筒部材16の円錐面Is1と第1挿入部21の円錐面Osとは、全領域において互いに接触している。
【0040】
<圧入部の構成>
圧入部50の構成について更に詳述する。
図2に示すように、圧入部50において、筒部材16の円錐面Is1には、溝61が設けられている。溝61は、筒部材16の軸線を中心とした周方向において円環状をなしている。溝61は、円錐面Is1に直交する方向に深さを有している。筒部材16の軸線が延びる方向において、溝61は、筒部材16の円筒面Is2よりも第1端16a寄りに設けられている。溝61は、筒部材16の軸線に沿って切断した断面がU字形状となっている。
【0041】
圧入部50において、第1挿入部21の円錐面Osには、突部62が設けられている。突部62は、円錐面Osから突出している。突部62は、第1挿入部21の軸線を中心とした周方向において円環状をなしている。突部62は、円錐面Osに直交する方向において円錐面Osから突出している。第1挿入部21の軸線が延びる方向において、突部62は、第1端20aよりも第1支持部22寄りに設けられている。突部62は、第1挿入部21の軸線に沿って切断した断面を見たとき、外形がU字形状となっている。
【0042】
突部62は、第1挿入部21の軸線に直交する方向において、第1挿入部21の第1端20aよりも突出していない。換言すると、第1挿入部21の第1端20aは、第1挿入部21の軸線に直交する方向において、突部62よりも外側に突出している。圧入部50において、突部62は、溝61に隙間なく嵌っている。溝61の形状は、突部62の外形に沿っている。
【0043】
<本実施形態の作用>
本実施形態の作用を説明する。
図3に示すように、ロータ15において、第1挿入部21を筒部材16の第1端16aから圧入するとき、第1挿入部21の第1端20aは、筒部材16の円錐面Is1に摺接しながら筒部材16の内部に向けて挿入される。
【0044】
図2に示すように、第1挿入部21の第1端20aが、筒部材16の円錐面Is1と円筒面Is2との境界に到達したとき、第1挿入部21の筒部材16の第1端部161への圧入が完了する。
【0045】
第1挿入部21が筒部材16の第1端16aから圧入されると、筒部材16は拡径するように弾性変形するが、第1挿入部21が筒部材16の内部に向かうと、筒部材16が弾性変形した形状から元の形状に戻るための復元力が第1挿入部21に作用する。
【0046】
図3に示すように、筒部材16の円錐面Is1の形状によって、筒部材16の復元力は、筒部材16の軸線に直交する方向における内側に向かう力F1と、筒部材16の第1端16aから筒部材16の内部に向かう力F2とに分力される。第1挿入部21には、力F1及び力F2が作用する。
【0047】
<本実施形態の効果>
本実施形態の効果を説明する。
(1)筒部材16の内周面Isの内径が一定である場合と比較して、第1挿入部21に作用する力F1が小さくなる。よって、第1挿入部21を筒部材16に圧入し易くなる。また、第1挿入部21には、力F2が作用する。よって、第1挿入部21が筒部材16の第1端16aから筒部材16の内部に向けてより圧入し易くなる。したがって、第1軸部材20を筒部材16に圧入し易くできる。
【0048】
(2)第1挿入部21を筒部材16に圧入するとき、第1挿入部21に作用する筒部材16の復元力は、筒部材16の第1端16aで最も大きくなる。このため、第1挿入部21を筒部材16の第1端16aから圧入し始めたとき、第1挿入部21には、筒部材16の軸線が延びる方向のうち筒部材16の内部に向かう方向に作用する力が最も強く作用する。よって、第1軸部材20を筒部材16により圧入し易くなる。
【0049】
(3)溝61に突部62が嵌ることにより第1挿入部21が筒部材16の第1端16aから抜け難くなる。このため、第1軸部材20と筒部材16との圧入状態を維持し易くなる。
【0050】
(4)溝61の形状が突部62の外形に沿っている。筒部材16及び第1軸部材20それぞれの軸線が延びる方向において突部62が溝61内で移動し難い。このため、第1軸部材20と筒部材16との位置ずれを抑制できる。よって、第1軸部材20と筒部材16との圧入状態を維持し易くなる。
【0051】
(5)第1挿入部21の第1端20aは、第1軸部材20の軸線に直交する方向において突部62よりも外側に突出している。第1挿入部21を筒部材16の第1端16aから圧入しているときに突部62が筒部材16に干渉し難くなる。このため、第1軸部材20を筒部材16に圧入し易くなる。
【0052】
(6)回転電機10において、ロータ15がステータコア14aの内側で回転しているときに筒部材16から抜けるように第1軸部材20に外力が作用した場合、第1軸部材20の円錐面Osが筒部材16の円錐面Is1に押し付けられる。このため、ロータ15が回転しているとき、第1軸部材20が筒部材16から離脱することを防止できる。
【0053】
<変更例>
なお、本実施形態は、以下のように変更して実施できる。本実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施できる。
【0054】
○ 筒部材16の内周面Is、及び第1挿入部21の周面を以下のように変更してもよい。
図4に示すように、筒部材16の内周面Isは、湾曲面Is3と、円筒面Is2とを有している。湾曲面Is3は、筒部材16の第1端部161の内部に位置する面である。湾曲面Is3は、筒部材16の内周面Isのうち永久磁石17の第1端面17aよりも筒部材16の第1端16a寄りの面である。湾曲面Is3は、筒部材16の軸線が延びる方向において、筒部材16の第1端16aから筒部材16の内部に向かうにつれて徐々に拡径されている。筒部材16の軸線に沿って筒部材16を切断した断面を見たとき、湾曲面Is3は、筒部材16の第1端16aから筒部材16の内部に向かって滑らかに湾曲している。
図4に記載された湾曲面Is3の湾曲の程度は、誇張して記載している。なお、湾曲面Is3は、請求項上の第1面の一例である。
【0055】
第1挿入部21の周面は、第1軸部材20の軸線が延びる方向において、第1挿入部21の第1端20aに向かうにつれて徐々に拡径された湾曲面Os2を有している。第1挿入部21の軸線に沿って第1挿入部21を切断した断面を見たとき、湾曲面Os2は、第1挿入部21の第1端20aから第1支持部22に向かって滑らかに湾曲している。湾曲面Os2の湾曲の程度は、湾曲面Is3の湾曲の程度と同じである。
図4に記載された湾曲面Os2の湾曲の程度は、誇張して記載している。なお、湾曲面Os2は、請求項上の第2面の一例である。
【0056】
○
図4に示すように、筒部材16の外径は、筒部材16の軸線が延びる方向で一定でなくてもよい。具体的には、筒部材16の外径は、筒部材16の軸線に直交する方向における筒部材16の厚さが、筒部材16の軸線が延びる方向で一定となるように設定されていてもよい。
【0057】
○
図5に示すように、溝61の形状が突部62の外形に沿っていなくてもよい。例えば、突部62は、第1挿入部21の軸線に沿って切断した断面を見たとき、外形が矩形をなしていてもよい。突部62は、溝61に嵌っていればよい。突部62は、溝61の内面における筒部材16の第1端16a寄りの面に接触しているとよい。このように変更すれば、筒部材16から抜けるように第1軸部材20に外力が作用したとしても、突部62が溝61の内面に係止する。このため、第1軸部材20と筒部材16とが第1軸部材20及び筒部材16それぞれの軸線が延びる方向に位置ずれしなくなる。なお、第1挿入部21の第1端20aは、第1挿入部21の軸線に直交する方向において突部62よりも外側に突出していることが好ましい。
【0058】
○ 第1挿入部21の第1端20aは、第1挿入部21の軸線に直交する方向において突部62よりも外側に突出していなくてもよい。すなわち、突部62は、第1挿入部21の軸線に直交する方向において第1挿入部21の第1端20aよりも外側に突出していてもよい。突部62の突出量は、第1挿入部21の筒部材16の第1端部161への圧入を妨げない程度に設定されるとよい。
【0059】
○ 圧入部50において、第1挿入部21の円錐面Osに溝61が設けられ、且つ筒部材16の円錐面Is1から突出するように突部62が設けられていてもよい。すなわち、本実施形態及び本変更例において、圧入部50において、第1挿入部21及び筒部材16のいずれか一方に溝61が設けられ、且つ第1挿入部21及び筒部材16のいずれか他方に突部62が設けられていればよい。
【0060】
○ 溝61は、筒部材16の第1端16aよりも円筒面Is2寄りに設けられていてもよい。同様に、突部62は、第1挿入部21の第1端20aよりも第1支持部22寄りに設けられていてもよい。
【0061】
○ 溝61及び突部62は、円環状でなくてもよい。溝61及び突部62を割愛してもよい。
○ 筒部材16の第2端部162の内部に位置する面を、円錐面Is1と同じ構成としてもよい。同時に、第2軸部材30の第2挿入部31を、第1軸部材20の第1挿入部21と同じ構成としてもよい。なお、筒部材の第1端16aを請求項上の筒部材の端としたとき、第1挿入部21の第1端20aが請求項上の挿入部の端となる。同様に、筒部材16の第2端16bを請求項上の筒部材の端としたとき、第2軸部材30が請求項上の軸部材となるとともに第2挿入部31が請求項上の挿入部となる。また、筒部材16の第2端16bが請求項上の筒部材の端としたとき、第2挿入部31の第1端30aが請求項上の挿入部の端となる。
【0062】
○ 筒部材16の円錐面Is1と第1挿入部21の円錐面Osとは、全領域において互いに接触していなくてもよい。例えば、円錐面Is1と円錐面Osとは、第1軸部材20及び筒部材16それぞれの軸線が延びる方向における全長に亘って接触していてなくてもよい。具体的には、筒部材16の軸線が延びる方向における筒部材16の第1端部161の長さを、第1軸部材20の軸線が延びる方向における第1挿入部21の長さよりも短くしてもよい。すなわち、第1挿入部21の一部が筒部材16の第1端部161から突出していてもよい。
【0063】
○ 筒部材16の第1端部161の内部に位置する面を、円錐面Is1と、円筒面とにより構成してもよい。当該円筒面は、円筒面Is2と連続している。当該円筒面の内径は、円筒面Is2の内径D1maxと同じである。すなわち、筒部材16の内周面Isのうち永久磁石17の第1端面17aよりも筒部材16の第1端16a寄りには、円錐面Is1を含んでいればよい。このように変更した場合、第1挿入部21を筒部材16の第1端部161に設けたとき、第1挿入部21の第1端20aと、永久磁石17の第1端面17aとの間に隙間が形成される。すなわち、第1挿入部21の第1端20aと、永久磁石17の第1端面17aとが当接していなくてもよい。なお、第2挿入部31の第1端30aと永久磁石17の第2端面17bとが接触していなくてもよい。
【0064】
○ 筒部材16は、インコネル製であったが、これに限らない。筒部材16は、非磁性の金属製であってもよいし、炭素繊維強化プラスチック製であってもよい。
○ 磁性体としては、永久磁石17に限らず、例えば、積層コア、アモルファスコア、又は圧粉コアであってもよい。
【0065】
○ 第1軸部材20及び第2軸部材30は、チタン製に限らず、例えば非磁性の金属製であってもよい。
【符号の説明】
【0066】
10…回転電機、11…ハウジング、12…第1ハウジング構成体、12a…端壁、12b…周壁、12c…ボス部、13…第2ハウジング構成体、13a…ボス部、14…ステータ、14a…ステータコア、14b…コイル、15…ロータ、16…筒部材、16a…第1端、16b…第2端、17…永久磁石、17a…第1端面、17b…第2端面、20…第1軸部材、20a…第1端、20b…第2端、21…第1挿入部、22…第1支持部、30…第2軸部材、31…第2挿入部、32…第2支持部、41…第1軸受、42…第2軸受、50…圧入部、61…溝、62…突部、161…筒部材の第1端部、162…筒部材の第2端部、Is…内周面、Is1…円錐面、Is2…円筒面、Ps…外周面、Is3…湾曲面、Os2…湾曲面、F1,F2…力、D1min,D1max…内径、D2min,D2max…直径。