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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022184554
(43)【公開日】2022-12-13
(54)【発明の名称】変形性関節症予防用食品組成物
(51)【国際特許分類】
   A23L 33/10 20160101AFI20221206BHJP
   A61K 35/644 20150101ALI20221206BHJP
   A61P 19/02 20060101ALI20221206BHJP
【FI】
A23L33/10 ZNA
A61K35/644
A61P19/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021092481
(22)【出願日】2021-06-01
(71)【出願人】
【識別番号】521236483
【氏名又は名称】檜井 栄一
(71)【出願人】
【識別番号】398062998
【氏名又は名称】株式会社秋田屋本店
(71)【出願人】
【識別番号】592207809
【氏名又は名称】森川健康堂株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】檜井 栄一
(72)【発明者】
【氏名】池野 久美子
(72)【発明者】
【氏名】永松 剛
【テーマコード(参考)】
4B018
4C087
【Fターム(参考)】
4B018MD76
4B018ME14
4B018MF01
4C087AA01
4C087AA02
4C087BB22
4C087NA14
4C087ZA96
(57)【要約】
【課題】変形性関節症を好適に予防する。
【解決手段】変形性関節症予防用食品組成物は、ローヤルゼリー又はその抽出物を有効成分とする。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ローヤルゼリー又はその抽出物を有効成分とすることを特徴とする変形性関節症予防用食品組成物。
【請求項2】
炎症性サイトカインの発現を抑制する請求項1に記載の変形性関節症予防用食品組成物。
【請求項3】
軟骨破壊酵素の産生を抑制する請求項1又は2に記載の変形性関節症予防用食品組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、変形性関節症予防用食品組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、ローヤルゼリー又はその処理物を有効成分として含有する関節痛及び腰痛改善剤について記載している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2016-113412号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
加齢に伴い、関節の軟骨とその周囲の組織の損傷による関節炎が発生しやすくなることが知られている。近年、単なる老化に伴う関節痛や腰痛とは異なり、若年層でも発症することのある変形性関節症に対する関心が高まっている。
【0005】
変形性関節症は、股関節や膝関節等を構成する骨や関節軟骨に不具合が生じることで、関節軟骨の減少、骨の変形を来す病気である。病状の進行に伴い関節の痛みや動きに制限が生じ、日常生活にも支障が出る場合がある。加齢や体重増加などをきっかけに関節自体が変性する一次性のものと、他の病気や先天的な要因による二次性のものとに分けられる。変形性関節症の予防に効果を奏する食品組成物を提供することが課題として挙げられる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するための変形性関節症予防用食品組成物は、ローヤルゼリー又はその抽出物を有効成分とすることを要旨とする。
上記変形性関節症予防用食品組成物について、炎症性サイトカインの発現を抑制することが好ましい。
【0007】
上記変形性関節症予防用食品組成物について、軟骨破壊酵素の産生を抑制することが好ましい。
【発明の効果】
【0008】
本発明の変形性関節症予防用食品組成物によれば、変形性関節症を好適に予防することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】変形性関節症と炎症性サイトカインによる炎症反応との関連を示す模式図。
図2】変形性関節症モデルマウスの膝関節の顕微鏡写真。
図3】実施例1のローヤルゼリーと、比較例1の組成物を投与した変形性関節症モデルマウスの膝関節の顕微鏡写真。
図4】OARSIスコアによる摩耗状態の評価結果を示す棒グラフ。
図5】遺伝子発現解析の結果を示す棒グラフ。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の変形性関節症予防用食品組成物を具体化した一実施形態を説明する。
本実施形態の変形性関節症予防用食品組成物(以下、単に「食品組成物」ともいう。)は、ローヤルゼリー(以下、「RJ」ともいう。)又はその抽出物を有効成分とする。なお、以下では、変形性関節症を、単にOAともいうものとする。
【0011】
<RJについて>
RJは、ミツバチの若い働き蜂が花粉や蜂蜜を食べ、体内で分解し、合成して、上顎と下顎の咽頭腺や大腮腺から分泌する乳白色のクリーム状の物質である。女王蜂となる幼虫や、成虫となった女王蜂に給餌される食物であり、広義には、働き蜂となる若齢幼虫に給餌される食物であるワーカーゼリーを含む。
【0012】
RJの種類は、特に制限されない。例えば、RJを採取した後、不純物を濾過した生RJ、生RJを乾燥させて粉末化したRJ粉末、溶媒を用いて抽出したRJの抽出物、酵素を利用してRJに含まれるたんぱく質を分解した酵素分解RJ等が挙げられる。
【0013】
RJの抽出物の作製に用いられる溶媒としては、特に制限されず、例えば水や有機溶媒を挙げることができる。有機溶媒としては、例えばメタノール、エタノール、プロパノール、アセトン等が挙げられる。さらに、RJやRJの抽出物を、公知の分離、精製手段で精製したものであってもよい。
【0014】
RJには、タンパク質、フルクトースやグルコース等の単糖類、ポリサッカライド等の多糖類、脂質、ビタミン、ミネラル等が広く含まれている。
RJに含まれる上記各成分の含有量は特に制限されない。例えば生RJは、タンパク質を10質量%以上20質量%以下含有することが好ましく、12質量%以上16質量%以下含有することがより好ましい。
【0015】
また、上記単糖類や多糖類等の糖類を、合計で11質量%以上20質量%以下含有することが好ましく、14質量%以上17質量%以下含有することがより好ましい。
また、単糖類として、グルコースを3質量%以上10質量%以下含有することが好ましく、4質量%以上8質量%以下含有することがより好ましい。
【0016】
また、フルクトースを4質量%以上12質量%以下含有することが好ましく、6質量%以上9質量%以下含有することがより好ましい。
また、脂質を2質量%以上6質量%以下含有することが好ましく、3質量%以上5質量%以下含有することがより好ましい。なお、生RJは、一般に、水分を60質量%以上70質量%以下程度含有している。
【0017】
食品組成物は、本発明による効果を妨げない限り、他の成分を更に含有していてもよい。他の成分としては、食品として許容される成分が挙げられる。
食品として許容される成分の具体例としては、例えば溶剤、軟化剤、油、乳化剤、防腐剤、酸味料、甘味料、苦味料、pH調整剤、安定剤、着色剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、保湿剤、増粘剤、固着剤、分散剤、流動性改善剤、湿潤剤、香科、調味料、風味調整剤等が挙げられる。
【0018】
食品組成物の形態としては特に制限されず、例えば、液状、粉末状、フレーク状、顆粒状、ペースト状、打錠状等が挙げられる。上記液状としては、飲料、スープ、カレー等が挙げられる。上記粉末状としては、粉末飲料、粉末スープ等が挙げられる。
【0019】
食品組成物の形態としては、より具体的には、調味料(甘味料、食塩代替組成物、醤油、酢、味噌、ソース、ケチャップ、ドレッシング、スパイス、ハーブ、フレーク(ふりかけ、炊飯添加剤等)、焼き肉のたれ、ルーペースト(カレールーペースト等))、食材プレミックス品等が挙げられる。
【0020】
さらに、食品組成物の形態としては、タブレット菓子、ゼリー類、スナック類、焼き菓子、揚げ菓子、ケーキ類、チョコレート、ガム、飴、グミ等の菓子類、麺類、ハム・ソーセージ、アイスクリーム、豆腐、チーズ、ヨーグルト等も挙げられる。
【0021】
<変形性関節症と炎症反応との関連について>
本実施形態の食品組成物は、炎症性サイトカインの発現を抑制するものであることが好ましい。
【0022】
図1に示すように、OAを発症すると、関節内にIL-1β等の炎症性サイトカインが大量に発生することが知られている。炎症性サイトカインは、生理活性物質であるサイトカインの一種である。炎症性サイトカインは、体内の炎症反応を促進する働きを有している。そのため、関節内に炎症性サイトカインが大量に発生すると、関節内の細胞に炎症反応が生じて軟骨の破壊が引き起こされる。これに伴い、OAが進展する。
【0023】
本実施形態の食品組成物が、炎症性サイトカインの発現を抑制するものであることにより、関節内の炎症反応を抑制することができる。これにより、OAの進展を抑制することができる。さらに、炎症性サイトカインの発現を抑制することによって、OA自体の発症を予防することも可能になる。
【0024】
炎症性サイトカインの具体例としては、例えばIL-1β、IL-6、TGF-β、THF-α等が挙げられる。なお、図1は、Zsuzsa J.et al.,Cellular Signal.(2019)から抜粋した。
【0025】
<変形性関節症と軟骨破壊酵素との関連について>
本実施形態の食品組成物は、軟骨破壊酵素の産生を抑制するものであることが好ましい。軟骨破壊酵素は、タンパク質のペプチド結合を切断する酵素である。軟骨の主成分であるコラーゲンやプロテオグリカン等を分解することが知られている。関節内に軟骨破壊酵素が産生すると、関節内の軟骨が破壊されてOAを発症しやすくなる。
【0026】
本実施形態の食品組成物が、軟骨破壊酵素の産生を抑制するものであることにより、軟骨破壊酵素による軟骨の破壊を抑制することができる。これにより、OAを予防することが可能になる。仮にOAを発症したとしても、OAの進展を抑制することができる。
【0027】
軟骨破壊酵素の具体例としては、例えばAdamts-5、Adamts-13等のAdamtsファミリータンパク質や、MMP-1、MMP-2、MMP-3等のMMPファミリータンパク質等が挙げられる。
【0028】
<食品組成物の分類、用途について>
食品組成物の分類としては、特に制限されず、一般食品や保健機能食品、特別用途食品等に使用することができる。また、保健機能食品としては、特定保健用食品、栄養機能食品、機能性表示食品等に使用することができる。
【0029】
食品組成物の用途を付す場合、各種法律、施行規則、ガイドライン等によって定められた表示が挙げられる。用途の表示には、例えば包装、容器等のパッケージへの表示の他、パンフレット等の広告媒体への表示も含まれる。
【0030】
本実施形態の用途の表示としては、例えば、「変形性関節症の予防」、「変形性関節症の改善」、「膝が痛くなりにくい」、「膝の痛みを和らげる」等の表示や、これらを示唆する表示が挙げられる。
【0031】
本実施形態の作用及び効果について説明する。
(1)本実施形態の食品組成物は、ローヤルゼリー又はその抽出物を有効成分とする。したがって、OAを好適に予防することができる。
【0032】
(2)食品組成物は、炎症性サイトカインの発現を抑制するものである。予め、本実施形態の食品組成物を摂取することにより、OAの要因となる炎症反応を抑制することができる。したがって、OAの予防に貢献することができる。また、仮にOAを発症したとしても、OAの進展を抑制することができる。
【0033】
(3)食品組成物は、軟骨破壊酵素の産生を抑制するものである。予め、本実施形態の食品組成物を摂取することにより、OAの要因となる軟骨の減少を抑制することができる。したがって、OAの予防に貢献することができる。また、仮にOAを発症したとしても、OAの進展を抑制することができる。
【0034】
本実施形態は、以下のように変更して実施することができる。本実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
本実施形態の食品組成物の用途は、食品に限定されない。例えば、医薬品、医薬部外品、化粧品としても使用することができる。
【実施例0035】
以下に実施例を挙げ、本実施形態をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
(実施例1)
実施例1として、表1に示す組成を有するRJを用いた。RJの水分量は、67質量%であった。
【0036】
【表1】
(比較例1)
比較例1として、表2に示す組成を有する組成物(以下、「Control」ともいう。)を用いた。Controlは、市販の各成分を用いて、表2の含有量となるように混合して調製した。Controlの水分量は、67質量%であった。
【0037】
【表2】
<OA進展度の評価>
(手順)
モデルマウス(7週齢の雄、C56BL/6J)に、実施例1のRJを経口投与した。同様に、別のモデルマウス(7週齢の雄、C56BL/6J)に、比較例1のControlを経口投与した。具体的には、マウスの体重当たり2g/kgの量を毎日投与し、8週間継続した。実施例1は、モデルマウスのn数を11とした。比較例1は、モデルマウスのn数を12とした。
【0038】
経口投与の開始から1週間後に、モデルマウスの右膝の半月板を切り、OAモデルマウスを作製した。OAモデルマウスの作製方法は、特に制限されないが、例えば以下の論文(Iezaki T.et al.,J.Pathol.(2016))に記載された方法に基づいて行うことができる。なお、モデルマウスの左膝を参考(以下、「Sham」ともいうものとする。)とした。
【0039】
図2に、OAモデルマウスの膝関節の顕微鏡写真を示す。上側が大腿骨、下側が脛骨である。大腿骨は、図2では下側が凸となる半球状に示されており、下端部の破線で囲まれた箇所に軟骨を有する。脛骨は、上側が凸となる半球状に示されており、上端部に軟骨を有している。大腿骨と脛骨の周囲に半月板が位置する。
【0040】
図2に示すように、半月板の一部が切られて、大腿骨の軟骨が脛骨の軟骨に接触している。これにより、メカニカルストレスが付与されるため、疑似的にOAを再現することができる。
【0041】
経口投与開始から9週間後、言い換えれば、OAモデルマウスの作製から8週間後に、OAモデルマウスの膝関節を解剖した。サフラニンO染色を行って膝関節の顕微鏡写真を撮影した。
【0042】
(評価)
図3に、実施例1のRJ、比較例1のControlを投与したOAモデルマウスの膝関節の顕微鏡写真を示す。
【0043】
図3に示すように、比較例1のControlを投与したOAモデルマウスでは、Shamの軟骨の厚さ(H1、H2)に比べてOAモデルマウスの軟骨の厚さ(H3、H4)が薄くなっており、軟骨が摩耗していることが確認された。また、大腿骨の軟骨に相対的に大きな凹部(矢印A参照)が観察された。
【0044】
これに対し、実施例1のRJを投与したOAモデルマウスでは、Shamの軟骨の厚さ(S1、S2)に比べてOAモデルマウスの軟骨の厚さ(S3、S4)は若干薄くなっているものの、比較例1の厚さ(H3、H4)よりも厚いことが確認された。また、大腿骨と脛骨の両方において、大きな凹凸は観察されず、軟骨は、比較的滑らかな半球状を維持していた。これらより、実施例1では軟骨の摩耗が抑制されている、もしくは軟骨の再生が促されていることが確認された。
【0045】
次に、実施例1、比較例1の顕微鏡写真を用いて、大腿骨と脛骨の摩耗状態を点数化した。具体的には、国際変形性関節症学会提唱の基準であるOARSIスコアに基づいて摩耗状態を点数化した。OARSIスコアでは、0、0.5、1、2、3、4、5、6の合計8段階で摩耗状態を評価する。点数が最も小さい0は、摩耗が見られない状態を意味し、点数が大きくなるにつれて摩耗状態が進行していることを意味する。結果を図4に示す。なお、図4の各棒グラフの点数は、各棒グラフの下に示すn数のモデルマウスにおけるOARSIスコアの平均値を意味する。
【0046】
図4に示すように、大腿骨と脛骨の両方において、OAモデルマウスでは、比較例1のControlの点数が1を超えていた。これに対し、実施例1のRJでは、Shamよりは高い点数であるものの、1未満に抑えられていた。以上のように、OARSIスコアからも、OAによる軟骨の摩耗が抑制されていること、もしくは軟骨の再生が促されていることが確認された。
【0047】
なお、Shamでは、大腿骨と脛骨の両方において、比較例1と実施例1との間に有意差は無かった。
<各種サイトカインに対するRJの効果の評価>
(試験例1)
マウス軟骨前駆体細胞(以下、「ATDC5」ともいうものとする。)として、RIKEN細胞バンクより分譲されたものを用いた。細胞は、DMEM/F12 1:1培地(富士フィルム和光純薬株式会社製)にウシ胎児血清(オーストラリア産、Biowest社製)(以下、「FBS」ともいう。)を5%添加した培地を用いた。2.5×10個の細胞を播種して、37℃、CO濃度5%の条件下で培養した。
【0048】
培養開始から24時間経過後に、軟骨細胞分化誘導用試薬であるITS(Thermo Fisher Scientific社製)を1%添加して、軟骨細胞への分化誘導を行った。2~3日に一度、培地交換を行った。なお、ITSは、インスリン:1000mg/L、トランスフェリン:550mg/L、亜セレン酸ナトリウム:0.67mg/Lを含有したものを使用した。
【0049】
培養開始から7日後に、DMEM/F12 1:1培地にFBSを1%添加した培地とした。その後、実施例1のRJを培地の体積当たり2.5mg/mL加えた。
実施例1のRJを加えてから14時間経過後、サイトカイン(IL-1β:Cell Signaling Technology社製、TGF-β:富士フィルム和光純薬株式会社製、TNF-α:Miltenyi社製)を培地の体積当たり10ng/mL加えた。なお、サイトカインは、IL-1β、TGF-β、TNF-αをそれぞれ個別に使用した。
【0050】
サイトカインを培地に加えてから所定時間経過後(IL-1β:6時間後、TGF-β:4時間後、TNF-α:9時間後)、日本ジェネティクス株式会社製のリアルタイムPCR検査キットを用いて、遺伝子発現解析を行った。なお、遺伝子発現解析では、炎症性サイトカインであるIL-6と、軟骨基質分解酵素であるAdamts-5の発現量を評価した。
【0051】
PCRのプライマーは以下のものを使用した。
(プライマーの配列)
IL-6遺伝子増幅用のプライマーは以下の配列を有するものを用いた。
【0052】
IL-6(フォワード):CACCAAGAACGATAGTCAATTCCA
IL-6(リバース):TCACCAGCATCAGTCCCAAG
Adamts-5遺伝子増幅用のプライマーは以下の配列を有するものを用いた。
【0053】
Adamts-5(フォワード):GCAAAAGAGCCCAGAGTGAA
Adamts-5(リバース):TCCACAGGAAGGCAATAGATG
(試験例2)
上記試験例1において、培養開始から7日後に、DMEM/F12 1:1培地にFBSを1%添加した培地にはせず、且つ、実施例1のRJを加えなかったこと以外は、試験例1と同様の手順により軟骨細胞分化誘導を行った。また、試験例1と同様の手順でサイトカインを培地に加えてから、遺伝子発現解析を行った。
【0054】
(評価)
遺伝子発現解析の結果を図5に示す。
図5において、試験例1による結果をRJ、試験例2による結果をVehicleとして示す。
【0055】
図5では、試験例2のVehicleに、IL-1β、TGF-β、TNF-αを個別に加えた際の、IL-6、又はAdamts-5の遺伝子発現の強さを100として示す。そして、試験例1のRJを加えた軟骨細胞に、上記3種類の炎症性サイトカインを個別に加えた際の、IL-6、又はAdamts-5の遺伝子発現の強さを相対的に示している。
【0056】
図5より、試験例1のRJを加えた軟骨細胞では、上記3種類の炎症性サイトカインを加えた全ての場合において、IL-6とAdamts-5の遺伝子発現の強さが、試験例2よりも抑制されていることが確認された。試験例1のRJを加えた軟骨細胞では、IL-1β、TGF-β、TNF-α等の炎症性サイトカインの炎症反応を抑制することによって、IL-6の発現や、Adamts-5の産生を抑制できることが確認された。関節における炎症反応や、軟骨の減少を抑制することにより、OAを好適に予防できることが確認された。
図1
図2
図3
図4
図5