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特開2022-184558クロマグロの遺伝的性判別に用いる雄特異的塩基配列
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  • 特開-クロマグロの遺伝的性判別に用いる雄特異的塩基配列 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022184558
(43)【公開日】2022-12-13
(54)【発明の名称】クロマグロの遺伝的性判別に用いる雄特異的塩基配列
(51)【国際特許分類】
   C12Q 1/6879 20180101AFI20221206BHJP
   C12Q 1/6851 20180101ALI20221206BHJP
   C12N 15/09 20060101ALN20221206BHJP
【FI】
C12Q1/6879 Z ZNA
C12Q1/6851 Z
C12N15/09 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021092491
(22)【出願日】2021-06-01
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)令和2年度、水産庁、「国際漁業資源評価調査・情報提供委託事業」委託事業、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】501168814
【氏名又は名称】国立研究開発法人水産研究・教育機構
(74)【代理人】
【識別番号】110000084
【氏名又は名称】特許業務法人アルガ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】藤原 篤志
(72)【発明者】
【氏名】中村 洋路
【テーマコード(参考)】
4B063
【Fターム(参考)】
4B063QA01
4B063QQ08
4B063QQ42
4B063QR08
4B063QR55
4B063QR56
4B063QR62
4B063QS26
4B063QS34
4B063QX02
(57)【要約】
【課題】クロマグロの遺伝的性の判別に有用な性別特異的なDNA及び高精度で迅速、簡便なクロマグロの遺伝的性判別方法の提供。
【解決手段】クロマグロ被検体より採取された試料において、雄特異的DNAを検出することを含む、クロマグロの性判別方法。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
クロマグロ被検体より採取された試料において、雄特異的なDNAを検出することを含む、クロマグロの性判別方法であって、
該DNAが以下の(a)~(d)からなる群より選択される少なくとも1種のDNAである、方法:
(a)配列番号1で表される塩基配列又はその部分塩基配列からなるDNA;
(b)配列番号1で表される塩基配列と90%以上の同一性を有する塩基配列又は配列番号1で表される塩基配列の部分塩基配列と90%以上の同一性を有する塩基配列からなるDNA;
(c)配列番号1で表される塩基配列において1若しくは数個の塩基が欠失、置換若しくは付加された塩基配列又は配列番号1で表される塩基配列の部分塩基配列において1若しくは数個の塩基が欠失、置換若しくは付加された塩基配列からなるDNA;
(d)配列番号1で表される塩基配列又はその部分塩基配列の相補配列とストリンジェントな条件でハイブリダイズするDNA。
【請求項2】
前記検出の結果に基づいて前記被検体の雌雄を判別することをさらに含む、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記DNAが配列番号1で表される塩基配列又はその部分塩基配列からなるDNAである、請求項1又は2記載の方法。
【請求項4】
前記検出をLAMP法により行うものである、請求項1~3のいずれか1項記載の方法。
【請求項5】
以下の(a)~(d)からなる群より選択される少なくとも1種のDNAである、クロマグロの雄特異的なDNA:
(a)配列番号1で表される塩基配列又はその部分塩基配列からなるDNA;
(b)配列番号1で表される塩基配列と90%以上の同一性を有する塩基配列又は配列番号1で表される塩基配列の部分塩基配列と90%以上の同一性を有する塩基配列からなるDNA;
(c)配列番号1で表される塩基配列において1若しくは数個の塩基が欠失、置換若しくは付加された塩基配列又は配列番号1で表される塩基配列の部分塩基配列において1若しくは数個の塩基が欠失、置換若しくは付加された塩基配列からなるDNA;
(d)配列番号1で表される塩基配列又はその部分塩基配列の相補配列とストリンジェントな条件でハイブリダイズするDNA。
【請求項6】
請求項5記載のDNAを含む、クロマグロの性判別用マーカー。
【請求項7】
請求項5記載のDNAのクロマグロの性判別のための使用。
【請求項8】
請求項5記載のDNAを特異的に増幅することができる、クロマグロの性判別用プライマー。
【請求項9】
請求項5記載のDNAに特異的にハイブリダイズすることができる、クロマグロの性判別用プローブ。
【請求項10】
請求項8記載のプライマー及び/又は請求項9記載のプローブを含む、クロマグロの性判別用キット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クロマグロの遺伝的性判別に用いる雄特異的塩基配列に関する。
【背景技術】
【0002】
日本は世界最大のマグロ消費国であることから、マグロ類の資源管理や持続的利用に関して国際的な責任を負っている。資源管理施策の立案には、漁獲物や資源調査サンプルから取得された各種の生物情報を必要とし、体長、年齢、種等のデータとともに、性別データは重要な情報の1つである。
【0003】
現在、マグロ類の性判別は、生殖腺の目視あるいは組織学的切片観察という古典的な手法により行われている。しかし、これらの手法には、1)生殖腺が発達していない稚仔魚及び若齢個体、並びに市場流通する内臓処理済み個体の性判別には利用できない、2)検査に労力と時間がかかる、3)個体を生かした状態で性判別することが困難である、という欠点がある。そのため、例えば、クロマグロ(Thunnus orientalis)資源調査サンプルの大部分で性別データが欠損したままとなり、クロマグロ生活史における時間的・空間的な移動・分布や成長特性などにおける性別の影響は分かっていない。また、近年のマグロ養殖では、天然ヨコワから人工種苗への転換が進められているが、飼育個体を生かした状態で性判別することが困難であるため、養成中の親魚群が産卵に適した性比で構成されているかどうかを調べることも出来ない。このような理由から、マグロ類の簡便で高精度な性判別方法の開発が望まれている。
【0004】
本発明者らは、これまでに、ゲノム中の性別特異的なDNA多型を検出することによるマグロ類の遺伝的性判別方法を開発している(特許文献1、2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2019-088234号公報
【特許文献2】特開2020-184917号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ゲノム中の性別特異的DNA多型を検出することによるマグロ類の遺伝的性判別方法では、該DNA多型を検出するための特定の系を構築しなければならず、その実施にPCR装置、リアルタイムPCR装置などの高額機器や電気泳動などの煩雑な操作が必要であった。本発明の課題は、斯かる方法を実施できないあるいは実施が難しい調査船、漁港、養殖場などのサンプリング現場においてもクロマグロの性判別を可能とする性別特異的なDNA及び性判別方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
そこで、本発明者らは、上記課題を解決するために種々検討した結果、クロマグロゲノムに約230kbの雄特異的DNAを初めて見出した。また、該DNAを利用することで、クロマグロの遺伝的性を高い精度で迅速、簡便に判別でき、汎用性の高い性判別方法を構築できることを見出し、本発明を完成した。
【0008】
すなわち、本発明は、次の〔1〕~〔10〕を提供するものである。
〔1〕クロマグロ被検体より採取された試料において、雄特異的なDNAを検出することを含む、クロマグロの性判別方法であって、
該DNAが以下の(a)~(d)からなる群より選択される少なくとも1種のDNAである、方法:
(a)配列番号1で表される塩基配列又はその部分塩基配列からなるDNA;
(b)配列番号1で表される塩基配列と90%以上の同一性を有する塩基配列又は配列番号1で表される塩基配列の部分塩基配列と90%以上の同一性を有する塩基配列からなるDNA;
(c)配列番号1で表される塩基配列において1若しくは数個の塩基が欠失、置換若しくは付加された塩基配列又は配列番号1で表される塩基配列の部分塩基配列において1若しくは数個の塩基が欠失、置換若しくは付加された塩基配列からなるDNA;
(d)配列番号1で表される塩基配列又はその部分塩基配列の相補配列とストリンジェントな条件でハイブリダイズするDNA。
〔2〕前記検出の結果に基づいて前記被検体の雌雄を判別することをさらに含む、〔1〕記載の方法。
〔3〕前記DNAが配列番号1で表される塩基配列又はその部分塩基配列からなるDNAである、〔1〕又は〔2〕記載の方法。
〔4〕前記検出をLAMP法により行うものである、〔1〕~〔3〕のいずれか1項記載の方法。
〔5〕以下の(a)~(d)からなる群より選択される少なくとも1種のDNAである、クロマグロの雄特異的なDNA:
(a)配列番号1で表される塩基配列又はその部分塩基配列からなるDNA;
(b)配列番号1で表される塩基配列と90%以上の同一性を有する塩基配列又は配列番号1で表される塩基配列の部分塩基配列と90%以上の同一性を有する塩基配列からなるDNA;
(c)配列番号1で表される塩基配列において1若しくは数個の塩基が欠失、置換若しくは付加された塩基配列又は配列番号1で表される塩基配列の部分塩基配列において1若しくは数個の塩基が欠失、置換若しくは付加された塩基配列からなるDNA;
(d)配列番号1で表される塩基配列又はその部分塩基配列の相補配列とストリンジェントな条件でハイブリダイズするDNA。
〔6〕〔5〕記載のDNAを含む、クロマグロの性判別用マーカー。
〔7〕〔5〕記載のDNAのクロマグロの性判別のための使用。
〔8〕〔5〕記載のDNAを特異的に増幅することができる、クロマグロの性判別用プライマー。
〔9〕〔5〕記載のDNAに特異的にハイブリダイズすることができる、クロマグロの性判別用プローブ。
〔10〕〔8〕記載のプライマー及び/又は〔9〕記載のプローブを含む、クロマグロの性判別用キット。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、クロマグロの雄特異的DNA、該DNAを検出するクロマグロの遺伝的性判別方法、並びに該方法に利用できるプライマー、プローブ及びキットが提供される。該DNAを性判別の指標とすれば、性別特異的DNA多型を指標とする従来技術と比較して、性判別の精度を損なうことなく汎用性の高い性判別方法を構築することができる。PCRなどを用いた性判別だけでなく、標的配列に高い特異性が求められるため、従来、系構築が困難であったLAMP法を用いた性判別も可能となる。LAMP法は、特異性が高く、迅速かつ簡便で、実験リソースの限られる調査船、漁港、養殖場などのサンプリング現場における実施にも適している。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】太平洋クロマグロ雌雄計14個体について、性判別のためのPCRを行い、増幅産物をアガロースゲル電気泳動した結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本明細書における塩基配列(ヌクレオチド配列)、核酸などの略号による表示は、IUPAC-IUB規定(IUPAC-IUB communication on Biological Nomenclature, Eur. J. Biochem., 138:9-37, 1984)、「塩基配列又はアミノ酸配列を含む明細書等の作製のためのガイドライン」(特許庁編)などの、当該分野で慣用される記号で記載されている。本明細書において「デオキシリボ核酸(DNA)」は、2本鎖DNAのみならず、それを構成するセンス鎖及びアンチセンス鎖という各1本鎖DNAを包含する。
【0012】
本明細書において、「ヌクレオチド」、「オリゴヌクレオチド」及び「ポリヌクレオチド」は、核酸と同義であって、DNA及びRNAの両方を含むものとする。当該DNAには、cDNA、ゲノムDNA及び合成DNAのいずれもが含まれる。また当該RNAには、total RNA、mRNA、rRNA及び合成のRNAのいずれもが含まれる。また、「ヌクレオチド」、「オリゴヌクレオチド」及び「ポリヌクレオチド」は2本鎖であっても1本鎖であってもよく、ある配列を有する「ヌクレオチド」(又は「オリゴヌクレオチド」、「ポリヌクレオチド」)といった場合、特に言及しない限り、これに相補的な配列を有する「ヌクレオチド」(又は「オリゴヌクレオチド」、「ポリヌクレオチド」)も包括的に意味するものとする。
【0013】
本明細書において、「遺伝子」とは、ゲノムDNAを含む2本鎖DNAの他、cDNAを含む1本鎖DNA(正鎖)、当該正鎖と相補的な配列を有する1本鎖DNA(相補鎖)、及びこれらの断片を包含するものであって、DNAを構成する塩基の配列情報の中に、何らかの生物学的情報が含まれているものを意味する。また、本明細書で「遺伝子」とは、特に言及しない限り、調節領域、コード領域、エキソン、及びイントロンを区別することなく示すものとする。
【0014】
本明細書において「クロマグロ」は、太平洋クロマグロ(Thunnus orientalis)を指す。クロマグロには、天然魚及び養殖魚のいずれもが包含される。以下、太平洋クロマグロを単にクロマグロと記載することがある。クロマグロの染色体数は1組24本であり、ゲノムサイズは約8億塩基対である。
【0015】
本発明者らは、後述の実施例に示すとおり、クロマグロのゲノムDNAにおいて、配列番号1で表される232647塩基の塩基配列からなるDNAが雄にのみ存在することを見出した。また、該雄特異的DNAを検出することで、クロマグロの遺伝的性を高い精度で迅速、簡便に判別できることを見出した。よって、該雄特異的DNAは、クロマグロの遺伝的性を判別するための指標(マーカー)として有用である。ここで、「遺伝的性」とは、遺伝によって決まる性別のことをいい、以下、単に「性」あるいは「性別」ともいう。
【0016】
本発明のクロマグロの性判別マーカー(以下、本発明のマーカーと称する)は、以下の(a)~(d)からなる群より選択される少なくとも1種のDNAを含む。
(a)配列番号1で表される塩基配列又はその部分塩基配列からなるDNA;
(b)配列番号1で表される塩基配列と90%以上の同一性を有する塩基配列又は配列番号1で表される塩基配列の部分塩基配列と90%以上の同一性を有する塩基配列からなるDNA;
(c)配列番号1で表される塩基配列において1若しくは数個の塩基が欠失、置換若しくは付加された塩基配列又は配列番号1で表される塩基配列の部分塩基配列において1若しくは数個の塩基が欠失、置換若しくは付加された塩基配列からなるDNA;
(d)配列番号1で表される塩基配列又はその部分塩基配列の相補配列とストリンジェントな条件でハイブリダイズするDNA。
(a)~(d)のDNAは、雄特異的DNAである。(b)~(d)のDNAには、クロマグロの性判別マーカーとして機能する限りにおいて、(a)の変異体が含まれる。当該変異体には、天然の対立遺伝子変異体や、当該分野で周知の変異誘発技術を用いて生成され得る天然に存在しない変異体が包含される。
【0017】
ここで、「雄特異的DNA」とは、その存在が雄という性別と関連づけられていることを意味し、被験体由来の試料において該DNAが検出されると該被検体が雄であると判定できるものである。
【0018】
配列番号1で表される塩基配列の部分塩基配列は、配列番号1で表される塩基配列中の連続する塩基からなる塩基配列であればよく、配列番号1で表される塩基配列のうち、好ましくは連続する50塩基以上の塩基配列であり、より好ましくは連続する50~100000塩基の塩基配列であり、さらに好ましくは連続する50~50000塩基の塩基配列であり、さらに好ましくは連続する50~10000塩基の塩基配列であり、さらに好ましくは連続する50~5000塩基の塩基配列であり、さらに好ましくは連続する50~3000塩基の塩基配列であり、さらに好ましくは連続する50~1500塩基の塩基配列であり、さらに好ましくは連続する50~1000塩基の塩基配列であり、さらに好ましくは連続する50~500塩基の塩基配列であり、さらに好ましくは連続する100~500塩基の塩基配列である。部分塩基配列の一例としては、配列番号1で表される塩基配列において遺伝子と予測された領域である9390~9818位、16389~17603位、32614~64628位、76852~77963位、82490~82919位、118954~119841位、168127~168456位、176645~176974位、186243~186572位、195859~196188位、200940~201269位、207325~207654位の塩基配列、及びそれらの部分塩基配列が挙げられる。このうち、配列番号1の32614~64628位の塩基配列からなる遺伝子は、メダカ(Oryzias latipes)のestrogen sulfotransferaseをコードするsult1st6遺伝子と塩基配列の同一性が高く、実際にクロマグロの近縁種であるミナミマグロでestrogen sulfotransferaseの発現が確認されているため、クロマグロにおいても遺伝子として機能していると考えられる。一般的に非遺伝子領域よりも遺伝子領域の方が、また、イントロン領域よりもエキソン領域の方が、配列保存性が高いことから、配列番号1で表される塩基配列の部分塩基配列としては、配列番号1の32614~64628位の塩基配列又はその部分塩基配列が好ましく、エキソン領域である配列番号1の32614~32800位、34058~34186位、46409~46506位、46707~46833位、61282~61376位、61471~61651位、64519~64628位の塩基配列、又はそれらの部分塩基配列がより好ましい。
【0019】
配列番号1で表される塩基配列と90%以上の同一性を有する塩基配列又は配列番号1で表される塩基配列の部分塩基配列と90%以上の同一性を有する塩基配列としては、好ましくは93%以上、より好ましくは95%以上、さらに好ましくは97%以上、さらに好ましくは98%以上、さらに好ましくは99%以上の同一性を有する塩基配列が挙げられる。塩基配列の同一性は、Karlin and AltschulによるアルゴリズムBLAST(Pro.Natl.Acad.Sci.USA,1993,90:5873-5877)を用いて決定することができる。このアルゴリズムBLASTに基づいて、BLASTNやBLASTXとよばれるプログラムが開発されている(J.Mol.Biol.,1990,215,p.403-410)。また、遺伝情報処理ソフトウェアGenetyxのホモロジー解析(Search homology)プログラムを用いてもよい。これらの解析方法の具体的な手法は公知である(www.ncbi.nlm.nih.gov参照)。
【0020】
本明細書において、別途定義されない限り、塩基配列における塩基の欠失、置換又は付加に関して使用される「1又は数個」とは、例えば、1~120個、好ましくは1~90個、より好ましくは1~60個、さらに好ましくは1~30個、さらに好ましくは、1~10個、さらに好ましくは1~5個、さらに好ましくは1~3個、さらに好ましくは1個であり得る。また本明細書において、塩基の「付加」には、配列の一末端及び両末端への1又は数個の塩基の付加が含まれる。
【0021】
本明細書において、ストリンジェントな条件とは、同一性が高い塩基配列同士がハイブリダイズし、それより同一性が低い塩基配列同士がハイブリダイズしない条件をいう。「ストリンジェントな条件」とは、求める同一性の高低によって、適宜条件を変えることができる。より高ストリンジェントな条件であるほど、より同一性の高い配列のみがハイブリダイズすることになる。例えば、ストリンジェントな条件として、Molecular Cloning:A Laboratory Manual (Second Edition,J.Sambrook et.al,1989)に記載の条件等が挙げられる。すなわち、6×SSC(1×SSCの組成:0.15M塩化ナトリウム、0.015Mクエン酸ナトリウム、pH7.0)、0.5%SDS、5×デンハート及び100mg/mLニシン精子DNAを含む溶液にプローブとともに65℃で8~16時間恒温し、ハイブリダイズさせる条件等が挙げられる。洗浄条件としては、1×SSC、60℃以上が好ましく、1×SSC、73℃以上がより好ましい。
【0022】
本発明のマーカーとしては、(a)~(d)からなる群より選択される1種のDNAを用いてもよく、2種以上のDNAを組み合わせて用いてもよい。本発明のマーカーは、好ましくは(a)のDNAであり、より好ましくは配列番号1の32614~64628位の塩基配列又はその部分塩基配列からなるDNAであり、さらに好ましくは配列番号1の32614~32800位、34058~34186位、46409~46506位、46707~46833位、61282~61376位、61471~61651位、及び64519~64628位の塩基配列、又はそれらの部分塩基配列からなるDNAである。
【0023】
本発明のクロマグロの性判別方法(以下、本発明の方法と称する)は、クロマグロ被検体より採取された試料において、上記の本発明のマーカーを検出することを含む。ここで、「マーカーの検出」とは、試料におけるマーカーの存在又は不存在を明らかにする意味である。本発明のマーカーは雄特異的なマーカーであるため、該マーカーの検出結果に基づいて、クロマグロ被検体が雄であるか雌であるかを判別することができる。具体的には、本発明のマーカーが検出されれば被験体は雄であると判別でき、検出されなければ被験体は雌であると判別できる。
【0024】
本発明の方法に供されるクロマグロ被検体は、性別を確認したいクロマグロの個体であり、天然魚であってもよいし、養殖魚であってもよく、その生育ステージは制限されない。被検体から採取される試料としては、ゲノムDNAを含有する試料である限り特に制限されず、細胞、組織、ヒレ、筋肉、内臓、体表粘液などを例示することができる。該試料より、公知の方法によりゲノムDNAを抽出すればよい。ゲノムDNAの抽出法としては、例えば、フェノール法、CTAB法、アルカリSDS法等が挙げられる。ゲノムDNAは、必要に応じて、公知の方法により精製してもよい。ゲノムDNA抽出のための試薬やキットは市販されており、これを用いてもよい。本発明の方法は、クロマグロ被検体より試料を採取することをさらに含んでいてもよい。また、本発明の方法は、クロマグロ被検体より採取された試料からゲノムDNAを抽出することをさらに含んでいてもよい。
【0025】
本発明のマーカーは、当該分野で通常用いられる核酸の検出方法に従って検出することができる。斯かる検出方法の例としては、PCR、リアルタイムPCR(例えばTaqMan(登録商標)PCR)、LAMP(Loop-mediated Isothermal Amplification)法、ICAN(登録商標)(Isothermal and Chimeric primer-initiated Amplification of Nucleic acids)法、RCA(Rolling Circle Amplification)法、LCR(Ligase Chain Reaction)法、SDA(Strand Displacement Amplification)法、HRM(High Resolution Melting)法、サザンブロットハイブリダイゼーション、ドットブロットハイブリダイゼーション、スロットブロットハイブリダイゼーション、DNAチップ、DNAマイクロアレイ、ダイレクトシークエンスなどの核酸又はその増幅産物を検出する方法が挙げられる。核酸検出のための試薬やキットは、市販されており、これを用いてもよい。核酸の検出方法は、これらに限定されるものではなく、他の公知の方法を利用してもよい。また、これらの方法を単独で用いても、2以上の方法を組み合わせて用いてもよい。
【0026】
PCRを用いて本発明のマーカーを検出する場合、試料由来のゲノムDNAを鋳型とし、本発明のマーカーの全部又は一部の領域を標的としてこれを特異的に増幅するように設計したプライマーペアを用いて該領域をPCRにて増幅し、次いで増幅産物を検出すればよい。所望のサイズの増幅産物が検出される場合、被験体は雄と判別でき、増幅産物が検出されない又は増幅産物が所望のサイズではない場合、被験体は雌と判別できる。
【0027】
PCRに用いるプライマーは、標的とする領域に応じて、GC含有率、塩基の偏り、Tm値、二次構造などを考慮して適宜設計すればよく、例えば、Primer3(https://primer3.ut.ee)などのプライマー設計支援ソフトを用いて設計することができる。PCRの特異性を高めるため、設計したプライマーについて、該プライマー及び該プライマーによる増幅領域が標的領域に特異的であることを確認することが好ましい。特異的であるか否かは、例えば上述のBLASTを用いた検索によって確認することができる。
プライマーの塩基長は、通常15~50塩基であり、好ましくは15~35塩基である。該プライマーは、標的領域を特異的に増幅できる限りにおいて、鋳型DNAの塩基配列と1~数個、好ましくは1~5個、さらに好ましくは1~3個のミスマッチを有していてもよい。
増幅サイズとしては、約50~3000bpが好ましく、約50~1500bpがより好ましく、約50~500bpがさらに好ましい。
【0028】
PCRに用いるプライマーの具体的な例としては、本発明のマーカーの部分配列からなるオリゴヌクレオチド又はその相補鎖を利用することができる。該「相補鎖」とは、本発明のマーカーを特異的に認識する限り、完全に相補的な配列に限られず、好ましくは80%以上、より好ましくは90%以上、さらに好ましくは95%以上の配列同一性を有する配列であればよい。
プライマーのさらに具体的な例としては、これらに限定されるものではないが、配列番号2~5のいずれかで表される塩基配列からなるプライマーが挙げられる。プライマーペアとしては、例えば、配列番号2で表される塩基配列からなるプライマー及び配列番号3で表される塩基配列からなるプライマーを含むプライマーペア、並びに配列番号4で表される塩基配列からなるプライマー及び配列番号5で表される塩基配列からなるプライマーを含むプライマーペアが挙げられる。
【0029】
PCRの反応条件は、特に限定されず、使用するプライマーペアや増幅領域の長さなどに応じて最適条件を定めればよいが、例えば、以下の条件が挙げられる。
1)2本鎖DNAの1本鎖DNAへの熱変性:通常94~98℃程度で、通常10秒間~1分間程度加熱する。
2)アニーリング:通常50~65℃程度で、通常10秒間~1分間程度加熱する。
3)DNA伸長反応:通常68~72℃程度で、通常10秒間~3分間程度加熱する。
ここで、アニーリングとDNA伸長反応は分けずに同時に行うことも可能である。
上記1)~3)の反応を、通常25~40サイクル程度行うことにより、標的領域を検出可能な程度に増幅することができる。
上記のような一連の操作は、一般的にPCRに使用されるサーマルサイクラーを用いて実施することができる。
【0030】
PCR増幅産物の検出には、増幅産物を特異的に認識することができる公知の手段を用いることができる。例えば、得られた増幅産物を電気泳動し、二本鎖DNAにインターカレートして蛍光を発するエチジウムブロマイド、SYBR(登録商標)GreenIなどの試薬で染色し、蛍光をUV装置、蛍光プレートリーダーなどを用いて検出することで本発明のマーカーを検出することができる。あるいは、増幅反応の過程で取り込まれるdNTPに、放射性同位体、蛍光物質、発光物質等の標識体を作用させ、この標識体を検出することもできる。標識したdNTPを取り込んだ増幅産物を観察する方法としては、上述した標識体を検出するための当技術分野で公知の方法であればいずれの方法でもよい。例えば、標識体として放射性同位体を用いた場合には、放射活性を、例えば液体シンチレーションカウンター、γ-カウンター等により計測することができる。また標識体として蛍光を用いた場合には、その蛍光をUV装置、蛍光プレートリーダー等を用いて検出することができる。
【0031】
尚、PCR増幅産物が見られないことがPCRの失敗に起因するものでないことを示すため、PCR増幅反応時に、コントロールとして、雌雄の別なく存在する遺伝子や塩基配列を同時に増幅してもよい。このような遺伝子の例として、ミトコンドリアのCOI遺伝子、ND4遺伝子などが挙げられる。
【0032】
本発明のマーカーは、増幅産物量をリアルタイムでモニターし解析するリアルタイムPCRによって検出することもできる。PCRの反応条件は、上述のとおりである。リアルタイムPCRは、サーマルサイクラーと分光蛍光光度計を一体化したリアルタイムPCR専用の装置を用いて行うことができる。
【0033】
TaqMan PCRを用いて本発明のマーカーを検出する場合、試料由来のゲノムDNAを鋳型とし、本発明のマーカーの全部又は一部の領域を標的としてこれを増幅するように設計したプライマーペアと、増幅領域内部に特異的にハイブリダイズするように設計したプローブであって5’末端が蛍光物質で、3’末端がクエンチャー(消光物質)で標識されたプローブを用いて、該領域をTaq DNAポリメラーゼによるPCRにて増幅し、次いで増幅に伴い発せられる蛍光を検出すればよい。蛍光が検出される場合、被験体は雄と判別でき、蛍光が検出されない場合、被験体は雌と判別できる。
【0034】
TaqMan PCRに用いるプライマー、増幅サイズ、PCR反応条件は、上述のPCRの場合と同様である。
TaqMan PCRに用いるプローブは、標的とする領域に応じて適宜設計すればよい。TaqMan PCRの特異性を高めるため、設計したプローブが標的領域に特異的であることを確認することが好ましい。特異的であるか否かは、例えば上述のBLASTを用いた検索によって確認することができる。
プローブの塩基長は、通常15~50塩基であり、好ましくは15~35塩基である。該プライマーは、標的領域と特異的にハイブリダイズできる限りにおいて、鋳型DNAの塩基配列と1~数個、好ましくは1~5個、さらに好ましくは1~3個のミスマッチを有していてもよい。該プローブは、5'末端がFITCやVICなどの蛍光物質で、3'末端がTAMRAなどのクエンチャー(消光物質)でそれぞれ標識されている。
【0035】
TaqMan PCRに用いるプローブの具体的な例としては、本発明のマーカーの部分配列からなるオリゴヌクレオチド又はその相補鎖の両末端に上記の標識を有するものを利用することができる。該「相補鎖」とは、本発明のマーカーを特異的に認識する限り、完全に相補的な配列に限られず、好ましくは80%以上、より好ましくは90%以上、さらに好ましくは95%以上の配列同一性を有する配列であればよい。
【0036】
TaqMan PCRにより発せられる蛍光は、UV装置、蛍光プレートリーダー等の公知の手段を用いて検出することができ、好適には、リアルタイムPCR専用の装置を用いてリアルタイムに検出することができる。
【0037】
LAMP法を用いて本発明のマーカーを検出する場合、試料由来のゲノムDNAを鋳型とし、本発明のマーカーの全部又は一部の領域を標的としてこれを特異的に増幅するように設計したプライマーセットを用いて該領域を増幅し、次いで増幅産物を検出すればよい。増幅産物が検出される場合、被験体は雄と判別でき、増幅産物が検出されない場合、被験体は雌と判別できる。
【0038】
LAMP法は、4種類又は6種類のプライマーからなるプライマーセットを用い、鎖置換型DNAポリメラーゼによる鎖置換反応を利用して一定温度で標的配列を増幅する方法である(国際公開第2000/028082号)。LAMP法では、標的となるDNA領域の一方の鎖の3’末端側からF3c、F2c、F1cという3つの領域を、5’末端側からB3、B3、B1という3つの領域をそれぞれ規定する。これらの領域と相補的な領域は、それぞれ、F3、F2、F1、B3c、B2c、B1cと表される。これらの領域の塩基配列に基づいて、FIP、F3プライマー、BIP、B3プライマーの4種類のプライマーを設計する。FIPは、5’末端側にF1c領域の塩基配列を、3’側にF2領域の塩基配列を含む塩基配列からなる。F3プライマーは、F3領域の塩基配列からなる。BIPは、5’末端側にB1c領域の塩基配列を、3’側にB2領域の塩基配列を含む塩基配列からなる。B3プライマーは、B3領域の塩基配列からなる。LAMP法においては、上記の4種類のプライマーにループプライマーF及びループプライマーBの2種類のプライマーを加えた6種類のプライマーを用いてもよい。ループプライマーFは、F1領域とF2領域の間の領域と相補的な塩基配列からなり、ループプライマーBは、B1領域とB2領域の間の領域と相補的な塩基配列からなる。ループプライマーを用いることで、核酸増幅の起点を増やして増幅反応を促進することができる。これらのプライマーは、Tm値、末端安定性、GC含量、二次構造、プライマー間距離などを考慮して適宜設計すればよい。プライマー間距離は、F2領域の外側からB2領域の外側までの距離(LAMP法の増幅領域)を約100~500塩基とするのが好ましく、約120~160塩基とするのがより好ましく、F2領域の5’末端からF1領域の5’末端までの距離(ループ形成領域)を40~60塩基とすることが好ましく、F2領域とF3領域の間の距離を0~60塩基とすることが好ましい。斯かるプライマーは、例えば、PrimerExplorer(http://primerexplorer.jp)などのプライマー設計支援ソフトを用いて設計することができる。
【0039】
LAMP法に用いるプライマーの具体的な例としては、これらに限定されるものではないが、配列番号8~37のいずれかで表される塩基配列からなるプライマーが挙げられる。プライマーセットとしては、例えば、配列番号8で表される塩基配列からなるF3プライマー、配列番号9で表される塩基配列からなるB3プライマー、配列番号10で表される塩基配列からなるFIPプライマー、及び配列番号11で表される塩基配列からなるBIPプライマーを含むプライマーセット;配列番号12で表される塩基配列からなるF3プライマー、配列番号13で表される塩基配列からなるB3プライマー、配列番号14で表される塩基配列からなるFIPプライマー、及び配列番号15で表される塩基配列からなるBIPプライマーを含むプライマーセット;配列番号16で表される塩基配列からなるF3プライマー、配列番号17で表される塩基配列からなるB3プライマー、配列番号18で表される塩基配列からなるFIPプライマー、及び配列番号19で表される塩基配列からなるBIPプライマーを含むプライマーセット;配列番号20で表される塩基配列からなるF3プライマー、配列番号21で表される塩基配列からなるB3プライマー、配列番号22で表される塩基配列からなるFIPプライマー、及び配列番号23で表される塩基配列からなるBIPプライマーを含むプライマーセット;配列番号24で表される塩基配列からなるF3プライマー、配列番号25で表される塩基配列からなるB3プライマー、配列番号26で表される塩基配列からなるFIPプライマー、及び配列番号27で表される塩基配列からなるBIPプライマーを含むプライマーセット;配列番号24で表される塩基配列からなるF3プライマー、配列番号25で表される塩基配列からなるB3プライマー、配列番号26で表される塩基配列からなるFIPプライマー、配列番号27で表される塩基配列からなるBIPプライマー、配列番号36で表される塩基配列からなるループプライマーF、及び配列番号37で表される塩基配列からなるループプライマーBを含むプライマーセット;配列番号28で表される塩基配列からなるF3プライマー、配列番号29で表される塩基配列からなるB3プライマー、配列番号30で表される塩基配列からなるFIPプライマー、及び配列番号31で表される塩基配列からなるBIPプライマーを含むプライマーセット;並びに配列番号32で表される塩基配列からなるF3プライマー、配列番号33で表される塩基配列からなるB3プライマー、配列番号34で表される塩基配列からなるFIPプライマー、及び配列番号35で表される塩基配列からなるBIPプライマーを含むプライマーセットが挙げられる。
【0040】
LAMP法では、鋳型DNA、プライマーセット、鎖置換型DNAポリメラーゼ、基質等を混合し、約60~65℃の一定温度で保温することにより、核酸増幅反応が進行する。等温で増幅反応が進行するため、反応は温度を一定に維持できる装置を用いて実施することができる。該装置としては、インキュベーター、サーマルサイクラー、リアルタイムPCR装置などが挙げられる。
【0041】
LAMP法による増幅産物の検出には、増幅産物を特異的に認識することができる公知の手段を用いることができる。例えば、反応溶液に二本鎖DNAにインターカレートして蛍光を発するエチジウムブロマイド、SYBR GreenIなどの試薬を共存させておき、増幅反応後に反応チューブをUV装置にかざすなどして蛍光を検出することで、増幅の有無を目視で容易に確認することができる。あるいは、伸長反応の際にdNTPから遊離されるピロリン酸イオンが反応溶液中のマグネシウムイオンと結合し、ピロリン酸マグネシウムが生成し、反応溶液に白濁が生じる。よって、反応チューブ内の反応溶液の濁度を目視や簡易な測定機器で検出することで、増幅の有無を容易に確認することができる。
【0042】
サザンブロッティング法を用いて本発明のマーカーを検出する場合、例えば、常法に従ってメンブレン上に試料由来のゲノムDNAを適当な制限酵素で消化したものをトランスファーし、次いで放射性同位体、蛍光物質、発光物質、酵素、ビオチン等で標識したプローブを該ゲノムDNAにハイブリダイズさせればよい。形成された標識プローブとゲノムDNAとの二重鎖から該標識に由来するシグナルを検出することにより、本発明のマーカーを検出することができる。ここで、プローブとしては、本発明のマーカーの全部又は一部に特異的にハイブリダイゼーションし、該マーカーを検出できるプローブであることが好ましい。プローブの塩基長は、好ましくは100~5000塩基であり、より好ましくは500~1000塩基である。該プローブは、本発明のマーカーと特異的にハイブリダイゼーションできる限りにおいて、鋳型DNAの塩基配列と1~数個、好ましくは1~5個、さらに好ましくは1~3個のミスマッチを有していてもよい。
【0043】
プローブの具体的な例としては、本発明のマーカーの全部又は部分配列からなるポリヌクレオチド、オリゴヌクレオチド又はそれらの相補鎖を利用することができる。該「相補鎖」とは、本発明のマーカーを特異的に認識する限り、完全に相補的な配列に限られず、好ましくは80%以上、より好ましくは90%以上、さらに好ましくは95%以上の配列同一性を有する配列であればよい。
【0044】
上記のプライマー又はプローブは、DNAあるいはRNAであることができ、合成されたものでも天然のものでもよい。該プライマー又はプローブは、通常のホスホルアミダイト法、リン酸トリエステル法などの化学合成法によって合成してもよいし、また市販されている自動オリゴヌクレオチド合成装置などを使用して合成してもよい。あるいは、クロマグロのゲノムDNAより常法に従って調製してもよい。
【0045】
前記特許文献1では、性別特異的なDNA多型という雌雄共通のゲノムDNA配列中の特定位置の特定塩基が性判別のマーカーであるため、該特定塩基を検出する必要があり、性判別方法の構築に制約があった。一方、本発明のマーカーは、雄特異的なDNAであって約230kbの長さを有しており、前記特許文献1に比べて性判別方法の構築の自由度がはるかに高く、汎用性が高い。
【0046】
本発明の方法によれば、雄特異的DNAを検出とすることで、性判別の精度を損なうことなく、迅速、簡便にクロマグロの性を判別することができる。該DNAの検出には種々の手法を利用できるが、なかでも、LAMP法は簡易な装置での実施が可能である。また、4種類又は6種類のプライマーを使用して6領域を認識することから、増幅の特異性が極めて高い。さらに、増幅効率が高く、15分~1時間程度の反応で標的領域を検出可能な程度に増幅することができ、迅速性に優れている。高い増幅効率のため、増幅産物の量が多く、蛍光や濁度を利用して増幅の有無を容易に確認できる。また、一連の操作を反応チューブ内で完結でき、反応溶液のコンタミネーションや取り違えの可能性が低い。斯様に、LAMP法は迅速性及び簡便性に優れ、従来、設備上の理由で実施できなかったあるいは実施が難しかった施設においてもクロマグロの性判別が可能となる。したがって、本発明の雄特異的DNAの検出には、LAMP法を用いるのが好ましい。
【0047】
本発明の方法は、単独で実施しても、他の性判別方法と組み合わせて行ってもよい。他の性判別方法としては、生殖腺の目視、組織学的切片観察、性別特異的DNA多型の検出などが挙げられる。
【0048】
本発明の方法は、本発明のマーカーを検出するための試薬キットを利用することによって、より簡便に実施することができる。該キットは、性判別用プライマー及び/又は性判別用プローブを含む。例えば、該キットとしては、PCRに用いる性判別用プライマーペアを含むキット、TaqMan PCRなどに用いる性判別用プライマーペア及び性判別用プローブを含むキット、LAMP法に用いる性判別用プライマーセットを含むキット、サザンブロットハイブリダイゼーションに用いる性判別用プローブを含むキットなどが挙げられる。
【0049】
本発明のキットは、任意成分として、標識剤、PCRに必要な試薬(例えば、DNAポリメラーゼ、dNTPなど)、TaqMan PCRなどに必要な試薬(例えば、TaqDNAポリメラーゼ、dNTPなど)、LAMP法に必要な試薬(例えば、鎖置換型DNAポリメラーゼ、dNTPなど)を例示することができる。更に該キットには、測定の実施の便益のために適当な反応希釈液、緩衝液、制限酵素などが含まれていてもよい。
【実施例0050】
次に実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は何らこれに限定されるものではない。
【0051】
実施例1 クロマグロの性別特異的な塩基配列の同定
太平洋クロマグロ雄1個体(生殖腺及び特許文献2の方法による性判別済み)を材料に用いてPacBioロングリードシーケンスを行った。得られた塩基配列データを用いてゲノムアセンブリ作業(HGAP4によるコンティグ作成、Pilonによる配列修正、LINKSによるコンティグ連結作業)を行った結果、雌には存在しない雄特異的なDNA断片(配列番号1、配列名:M175、約230kb)が得られた。尚、雌のゲノム配列は、DNA Data Bank of Japan(DDBJ)にAccession No.DDBJ:BKCK01000001~BKCK01000444として登録されている。
【0052】
公開データベース(Ensemble)のタンパク質データ(アミノ酸配列)を用いて、この領域の遺伝子予測(Exonarate)を行った結果、下記表1に示す12遺伝子が予測された。
【0053】
【表1】
【0054】
表1において、開始位置及び終了位置は、それぞれ、配列番号1における塩基の位置を表している。上記12遺伝子のうち、g3以外は転位因子に関連する遺伝子と同一性が高かった。一方、g3は、メダカ(Oryzias latipes)のestrogen sulfotransferaseをコードするsult1st6遺伝子と同一性が高く、これをsult1st6y遺伝子と命名した。M175は、雄特異的であることから性判別の指標として有用と考えられるが、一般に遺伝子領域は非遺伝子領域に比べて配列保存性が高いことを踏まえ、以下の実施例2~6ではM175のsult1st6y遺伝子の領域を指標として用いた。
【0055】
実施例2 性判別解析1
M175の塩基配列のうちsult1st6y遺伝子の塩基配列を標的とし、これをPCRにて増幅するための複数のプライマーペアを設計し、クロマグロ被検体の性判別解析を行った。sult1_LP2Fプライマー(配列番号2)及びsult1_LP2Rプライマー(配列番号3)を用いたPCR増幅では、1352bpのDNA断片の増幅が認められた場合に、被検体の遺伝的性は雄であると判定でき、該DNA断片の増幅が認められなかった場合に、被検体の遺伝的性は雌であると判定することができる。このとき、性別非特異的な486bpのDNA断片も増幅するため、これによりPCRの成否を確認することができる。また、sult1Y_F1プライマー(配列番号4)及びsult1Y_R1プライマー(配列番号5)を用いたPCR増幅では、77bpのDNA断片の増幅が認められた場合に、被検体の遺伝的性は雄であると判定でき、該DNA断片の増幅が認められなかった場合に、被検体の遺伝的性は雌であると判定することができる。尚、人為的ミスでPCR増幅に失敗し、雄個体から77bpのDNA断片が増幅されずに雌と誤判定されてしまう偽陰性を防止するため、ミトコンドリアDNAのND4遺伝子(内部陽性対照)の増幅用のND4_Fプライマー(配列番号6)及びND4_Rプライマー(配列番号7)も作製した。これらプライマーを用いたPCR増幅では、268bpのDNA断片が増幅される。各プライマーの配列を表2に示す。表2中、5’posは、プライマーの5’末端の塩基の位置を配列番号1の塩基配列における塩基位置で示す。
【0056】
【表2】
【0057】
具体的な試験方法は、以下のとおりである。天然太平洋クロマグロの雌4個体(図1のレーン1~4)、養殖太平洋クロマグロの雌2個体(図1のレーン5及び6)、養殖太平洋クロマグロの雄3個体(図1のレーン7、11及び12)及び天然太平洋クロマグロの雄3個体(図1のレーン8~10)からなる雄6個体及び雌6個体(生殖腺による性判別済み)の計12個体の各個体より、ハサミ等を用いて筋肉を採取し、TNES・Urea 6M溶液(10mM Tris-HCl、125mM NaCl、10mM EDTA、0.5% SDS、6M Urea)中でプロテアーゼ処理を行い、自動DNA抽出装置(Maxwell RSCシステム、Maxwell RSC Blood DNA kit、プロメガ株式会社製)を用いてゲノムDNAを調製した。該ゲノムDNA(最終濃度0.5ng/μL)を鋳型とし、PrimeSTAR GXL kit(タカラバイオ株式会社製)と、sult1_LP2Fプライマー(最終濃度0.5μM)及びsult1_LP2Rプライマー(最終濃度0.5μM)を用いて、ProflexPCRシステム(アプライドバイオシステムズ製)によりPCR反応(98℃10秒、60℃30秒、68℃1分のサイクルを35サイクル)を行った。得られたPCR増幅産物を2%アガロースゲルにアプライし、100Vで15分間、電気泳動を行った。
また、別の養殖太平洋クロマグロの雌1個(図1のレーン13)体及び雄1個体(図1のレーン14)(生殖腺による性判別済み)の計2個体の各個体より、上記の手法にてゲノムDNAを調製した。該ゲノムDNA(最終濃度0.5ng/μL)を鋳型とし、PrimeSTAR GXL kit(タカラバイオ株式会社製)と、sult1Y_F1プライマー(最終濃度0.4μM)及びsult1Y_R1プライマー(最終濃度0.4μM)並びにND4_Fプライマー(最終濃度0.05μM)及びND4_Rプライマー(最終濃度0.05μM)を用いて、ProflexPCRシステム(アプライドバイオシステムズ製)によりPCR反応(98℃10秒、60℃15秒、68℃15秒のサイクルを35サイクル)を行った。得られたPCR増幅産物を2%アガロースゲルにアプライし、100Vで15分間、電気泳動を行った。
【0058】
結果を図1に示す。図1のレーン1~12は、sult1_LP2Fプライマー及びsult1_LP2Rプライマーを用いたPCR増幅の結果を示す。1352bpのDNA断片は、雌個体(レーン1~6)には認められず、雄個体(レーン7~12)に特異的に認められた。全レーンに性別非特異的な486bpのDNA断片が認められており、PCRが正常に実施されたことが明らかである。また、図1のレーン13及び14は、sult1Y_F1プライマー及びsult1Y_R1プライマーを用いたPCR増幅の結果を示す。77bpのDNA断片は、雌個体(レーン13)には認められず、雄個体(レーン14)に特異的に認められた。全レーンにND4遺伝子由来の268bpの増幅産物が認められており、PCRが正常に実施されたことが明らかである。試験した全個体で性を正確に判別でき、今回見出されたM175を指標とすることで、クロマグロ被検体の遺伝的性を高い精度で判別できることが示された。
【0059】
実施例3 性判別解析2
LAMP法を用い、クロマグロの性判別解析を行った。雄特異的DNAを標的としたLAMP法による解析では、増幅産物が検出された場合に被検体の性は雄であると判別でき、増幅産物が検出されなった場合に被検体の性は雌であると判別できる。
具体的な試験方法は、以下のとおりである。養殖太平洋クロマグロの雄1個体及び雌1個体(生殖腺及び特許文献2の方法による性判別済み)の計2個体の各個体より、実施例2と同様の手法にてゲノムDNAを調製した。該ゲノムDNA(最終濃度2ng/μL)を鋳型とし、LoopampDNA増幅試薬D及び蛍光・目視検出試薬(栄研科学株式会社製)と下記表3に示す(i)~(vii)のいずれかのプライマーセット(F3及びB3プライマーは最終濃度0.2μM、FIP及びBIPプライマーは最終濃度1.6μM)を用いて、ProflexPCRシステム(アプライドバイオシステムズ製)により反応(63℃50分、95℃5分)を行った。ネガティブコントロール(NTC)としてDNAなしの反応も行った。得られた増幅産物を反応チューブのまま青色LEDトランスイルミネーター(LEDB-SBOXHP、オプトコード株式会社製)にかざし、蛍光を目視で確認した。尚、表3中、5’posは、プライマーの5’末端の塩基の位置を配列番号1の塩基配列における塩基位置で示す。FIP及びBIPは逆方向の2配列を合成したプライマーのため、位置情報は示していない。
【0060】
【表3】
【0061】
結果を表4に示す。表4において、「+」は緑色の蛍光がみられたことを、「-」は蛍光がみられなかったことを表す。7種類のプライマーセットのいずれを用いた場合でも、雄個体では標的DNA断片の増幅に伴う蛍光がみられた一方、雌個体では蛍光がみられなかった。よって、LAMP法によりクロマグロの性を正確に判別できた。
【0062】
【表4】
【0063】
実施例4 性判別解析3
表3に示すプライマーセットのうち、プライマー領域にイントロンよりも保存性が高いエキソンの配列を含むプライマーセット(iii)及び(iv)を用い、LAMP法での性判別解析を行った。実施例3で用いたのとは別の天然太平洋クロマグロの雄6個体及び雌7個体(特許文献2の方法による性判別済み)、並びに実施例3で使用した養殖太平洋クロマグロ雄1個体及び雌1個体の計15個体の各個体より、実施例2と同様の手法によりゲノムDNAを調製した。該ゲノムDNA(最終濃度1.5~3ng/μL)を鋳型とし、プライマーセット(iii)又は(iv)を用いた以外は実施例3と同様の手法によりクロマグロ被検体の性判別解析を行った。ネガティブコントロール(NTC)としてDNAなしの反応も行った。
【0064】
結果を表5に示す。表5において、「+」は緑色の蛍光がみられたことを、「-」は蛍光がみられなかったことを表し、また、個体番号14及び15が実施例3で使用した個体を表す。いずれのプライマーセットを用いた場合でも、全ての雄個体では標的DNA断片の増幅に伴う蛍光がみられた一方、雌個体では蛍光がみられなかった。よって、LAMP法によりクロマグロの性を正確に判別できた。尚、プライマーセット(iii)を用いた場合、プライマーセット(iv)を用いた場合よりも蛍光強度が高く、性判別能が高かった。
【0065】
【表5】
【0066】
実施例5 性判別解析4
表3に示すプライマーセットのうち、性判別能のより高いプライマーセット(iii)を用い、LAMP法での性判別解析を行った。実施例3及び4で用いたのとは別の天然太平洋クロマグロの雄10個体及び雌11個体(生殖腺並びに特許文献1及び2の方法による性判別済み)、並びに実施例3で使用した養殖太平洋クロマグロの雄1個体及び雌1個体の計23個体の各個体より、実施例2と同様の手法によりゲノムDNAを調製した。該ゲノムDNA(最終濃度0.8~2ng/μL)を鋳型とし、プライマーセット(iii)を用いた以外は実施例3と同様の手法によりクロマグロ被検体の性判別解析を行った。ネガティブコントロール(NTC)としてDNAなしの反応も行った。
【0067】
結果を表6に示す。表6において、「+」は緑色の蛍光がみられたことを、「-」は蛍光がみられなかったことを表し、また、個体番号23及び24が実施例3で使用した個体を表す。全ての雄個体では標的DNA断片の増幅に伴う蛍光がみられた一方、雌個体では蛍光がみられなかった。よって、LAMP法によりクロマグロの性を正確に判別できた。
【0068】
【表6】
【0069】
実施例6 性判別解析5
表3に示すプライマーセットのうち、プライマーセット(v)について、さらにループプライマーF(5-LF: CATCCCAGAATTGGATTTGTGAGT、配列番号36)及びループプライマーB(5-LB: AAAAAGTGCCAAAACTACGGAGC、配列番号37)を設計し、ループプライマーを用いる場合と用いない場合でLAMP法での性判別解析を行った。具体的には、実施例3~5で用いたのとは別の天然太平洋クロマグロの雄2個体及び雌2個体(生殖腺及び特許文献2の方法による性判別済み)、並びに実施例3で使用した養殖太平洋クロマグロの雄1個体及び雌1個体の計6個体の各個体より、実施例2と同様の手法によりゲノムDNAを調製した。該ゲノムDNA(最終濃度0.2~2ng/μL)を鋳型とし、プライマーセット(v)を用い、ループプライマーを用いない場合には反応時間50分とし、ループプライマーを用いる場合には各20pmolを反応系に添加し、反応時間を30分とした以外は実施例3と同様の手法によりクロマグロ被検体の性判別解析を行った。ネガティブコントロール(NTC)としてDNAなしの反応も行った。
【0070】
結果を表7に示す。表7において、「+」は緑色の蛍光がみられたことを、「-」は蛍光がみられなかったことを表す。全ての雄個体では標的DNA断片の増幅に伴う蛍光がみられた一方、雌個体では蛍光がみられなかった。よって、LAMP法によりクロマグロの性を正確に判別できた。また、反応時間30分での性判別も可能であった。
【0071】
【表7】
【0072】
実施例2~6の結果より、LAMP法を用いることでクロマグロの性を高精度で判別できることが示された。LAMP法は、等温で反応が進行するため、装置としては一定温度を維持できる装置があればよく、PCRとは異なり高価な機器が必要ない。また、増幅反応が短時間で済む。さらに、増幅反応後、反応チューブをそのままUV装置にかざして蛍光を確認するだけで、増幅の有無を容易に確認できる。斯様に、LAMP法は迅速性と簡便性に優れ、養殖場など実験リソースの限られる状況下でも精度の高い性判別が可能となる。
【0073】
実施例7 プライマー
以下、本発明のクロマグロの性判別方法に用いるプライマーの設計例を挙げる。表8にPCRのためのプライマーペア1~10を、表9にLAMP法のためのプライマーセット11~15を示す。表中、5’posは、プライマーの5’末端の塩基の位置を配列番号1の塩基配列における塩基位置で示す。FIP及びBIPは逆方向の2配列を合成したプライマーのため、位置情報は示していない。
【0074】
【表8】
【0075】
【表9】
【0076】
参考例1 M175の構造の確認
M175全体は雄特異的な配列である。一方、M175の部分塩基配列を指標としてクロマグロの性判別方法を構築する場合、該部分塩基配列に雌のゲノムDNAと配列同一性の高い配列があると、プライマー又はプローブの設計に注意を要する。そこで、プライマーによる増幅産物の長さを100bpと仮定し、M175中の任意の連続する100塩基以上からなる塩基配列が雌のゲノム配列と100%マッチするか否かをBLASTにより検証した。結果を表10に示す。
【0077】
【表10-1】
【0078】
【表10-2】
【0079】
【表10-3】
【0080】
表10中、開始位置及び終了位置は、それぞれ、雌のゲノム配列に100%マッチする塩基配列の5’末端の塩基及び3’末端の塩基の位置を配列番号1における塩基位置で示したものである。表10に示すように、M175には雌のゲノム配列とマッチする部分塩基配列はあるが、当業者であれば、性判別用マーカーを検出する方法の特性に応じて、M175の全部又は適当な部分塩基配列からなるDNAをマーカーとして選択し、本発明のクロマグロの性判別方法を実施することができる。例えば、性判別にPCRを利用する場合、表10の部分塩基配列のいずれか1つの領域を標的としてプライマーペアを設計することを回避すればよく、該部分塩基配列のいずれか1つの領域を標的としてプライマーペアの一方のプライマーを設計しても、他方のプライマーを該領域外に設計すれば、性判別可能である。例えば、性判別にTaqMan PCRを利用する場合、表10の部分塩基配列のいずれか1つの領域を標的としてプライマーペア及びプローブを設計することを回避すればよく、プローブを表10の部分塩基配列外の領域を標的として設計するなどすれば、性判別可能である。例えば、性判別にLAMP法を利用する場合、該部分塩基配列のいずれか1つの領域を標的としてプライマーセットを設計することを回避するなど、雌雄で増幅の有無の違いが生じるようにプライマーセットを設計すれば、性判別可能である。また、例えば、性判別にサザンブロッティングハイブリダイゼーションを利用する場合、該部分塩基配列のいずれか1つの領域を標的としてプローブを設計しても、ゲノムDNAを消化する際に適当な制限酵素を使用することで、性判別可能である。斯様に、M175は、適当なマーカーの検出方法を用いることで、全部又はその部分塩基配列からなるDNAを性判別マーカーとして使用することができる。該マーカーとしては、表10のいずれか1つの部分塩基配列に含まれる塩基配列からなるDNAを除くことが好ましく、M175から表10の部分塩基配列を除いた塩基配列の部分塩基配列からなるDNAがより好ましい。
図1
【配列表】
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