(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022184561
(43)【公開日】2022-12-13
(54)【発明の名称】顔料分散液
(51)【国際特許分類】
G03F 7/004 20060101AFI20221206BHJP
C09D 17/00 20060101ALI20221206BHJP
【FI】
G03F7/004 504
C09D17/00
G03F7/004 505
G03F7/004 501
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021092496
(22)【出願日】2021-06-01
(71)【出願人】
【識別番号】000005957
【氏名又は名称】三菱鉛筆株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100160705
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 健太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100193404
【弁理士】
【氏名又は名称】倉田 佳貴
(72)【発明者】
【氏名】門端 孝太
(72)【発明者】
【氏名】加藤 直裕
【テーマコード(参考)】
2H225
4J037
【Fターム(参考)】
2H225AC70
2H225AM77P
2H225AN38P
2H225AN39P
2H225AN81P
2H225AP08P
2H225BA01P
2H225BA16P
2H225BA35P
2H225CA24
2H225CB02
2H225CC01
2H225CC13
4J037AA30
4J037CC16
4J037CC24
4J037CC26
4J037EE28
4J037EE43
4J037FF05
(57)【要約】
【課題】フォトリソグラフィー用樹脂組成物の着色のための顔料分散液を提供する。
【解決手段】本発明の分散液は、顔料、分散剤、及び有機溶剤を少なくとも含有しており、かつ分散剤が、以下の条件を満足する、フォトリソグラフィー用樹脂組成物の着色のための分散液である:
(a)平均一次粒子径200nm以下のインジウムスズ酸化物粒子を1質量%、分散剤を0.2質量%、残りをプロピレングリコールモノメチルエーテルとした配合において、粒子径が0.3mmのジルコニアビーズを用いて分散させ、そして動的光散乱法により測定したときに、インジウムスズ酸化物粒子の平均二次粒子径が、300nm以上となり、かつ
(b)有機顔料を10質量%、分散剤を1.5質量%、残りをプロピレングリコールモノメチルエーテルとした配合において、粒子径が0.3mmのジルコニアビーズを用いて分散させ、そして動的光散乱法により測定したときに、有機顔料の平均二次粒子径が、300nm未満となる。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機顔料、分散剤、及び有機溶剤を少なくとも含有しており、かつ前記分散剤が、以下の(a)及び(b)の条件を満足する、フォトリソグラフィー用樹脂組成物の着色のための分散液:
(a)平均一次粒子径200nm以下のインジウムスズ酸化物粒子を1質量%、前記分散剤を0.2質量%、残りをプロピレングリコールモノメチルエーテルとした配合において、粒子径が0.3mmのジルコニアビーズを用いて分散させ、そして動的光散乱法により測定したときに、前記インジウムスズ酸化物粒子の平均二次粒子径が、300nm以上となり、かつ
(b)前記有機顔料を10質量%、分散剤を1.5質量%、残りをプロピレングリコールモノメチルエーテルとした配合において、粒子径が0.3mmのジルコニアビーズを用いて分散させ、そして動的光散乱法により測定したときに、前記有機顔料の平均二次粒子径が、300nm未満となる。
【請求項2】
前記インジウムスズ酸化物が下記を満たす、請求項1に記載の分散液:
前記インジウムスズ酸化物1質量%、前記インジウムスズ酸化物の分散に適した分散剤を0.2質量%、残りをプロピレングリコールモノメチルエーテルとした配合において、粒子径が0.3mmのジルコニアビーズを用いて分散させ、そして動的光散乱法により測定したときに、前記インジウムスズ酸化物粒子の平均二次粒子径が、200nm以下となる。
【請求項3】
前記有機顔料が、ベンゾフラノン系顔料である、請求項1又は2に記載の分散液。
【請求項4】
前記分散剤が、ポリエステル系分散剤、ポリウレタン系分散剤、及びポリアクリル系分散剤からなる群より選ばれる少なくとも1種である、請求項1~3のいずれか一項に記載の分散液。
【請求項5】
前記有機溶剤が、グリコールエーテル類又はエステル類からなる群より選ばれる少なくとも1種である、請求項1~4のいずれか一項に記載の分散液。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか一項に記載の顔料分散液、及び感光性樹脂を含有している、フォトリソグラフィー用樹脂組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特にフォトリソグラフィー用樹脂組成物の着色のための顔料分散液に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、有機電界ディスプレイや有機電界照明などに含まれる有機電界発光(有機EL)素子は、基板上に、隔壁(バンク)を形成した後に、隔壁に囲まれた領域内に、種々の機能層を積層して製造されている。このような隔壁を容易に形成する方法として、感光性樹脂組成物を用いたフォトリソグラフィー法により形成する方法が知られている。
【0003】
特許文献1では、(A)光重合開始剤、(B)アルカリ可溶性樹脂、(C)光重合性化合物、(D)着色剤、及び(E)撥液剤を含有する感光性着色樹脂組成物であって、前記(A)光重合開始剤が、波長400nmにおける吸光度が、波長300~400nm間の極大吸収波長(λmax)における吸光度に対して20%以上であるオキシムエステル系光重合開始剤(A1)と、波長400nmにおける吸光度が、波長300~400nm間の極大吸収波長(λmax)における吸光度に対して10%以下であるオキシムエステル系光重合開始剤(A2)を含有し、前記(E)撥液剤が、架橋基を有するフッ素原子含有樹脂を含有することを特徴とする感光性着色樹脂組成物が開示されている。
【0004】
特許文献2では、(A)アルカリ可溶性樹脂、(B)ラジカル重合性化合物、(C)光重合開始剤及び(Da)黒色顔料を含有するネガ型感光性樹脂組成物であって、前記(A)アルカリ可溶性樹脂が、(A1-1)ポリイミド、(A1-2)ポリイミド前駆体、(A1-3)ポリベンゾオキサゾール、及び(A1-4)ポリベンゾオキサゾール前駆体から選ばれる1種類以上を含み、前記(C)光重合開始剤が少なくとも、(C1)オキシムエステル系光重合開始剤及び(C2)α-ヒドロキシケトン系光重合開始剤を含み、前記(C)光重合開始剤に占める前記(C1)オキシムエステル系光重合開始剤の含有比率が51~95質量%であり、前記(Da)黒色顔料の含有比率が、ネガ型感光性樹脂組成物の全固形分中に対して5~50質量%であることを特徴とする、ネガ型感光性樹脂組成物。
【0005】
特許文献3では、ラクタムブラック、紫色顔料、青色顔料及び/又は緑色顔料、カーボンブラックを含有する黒色顔料分散組成物が開示されている。
【0006】
特許文献4では、(A)色材、(B)分散剤、(C)アルカリ可溶性樹脂、及び(D)光重合開始剤を少なくとも含有する感光性着色組成物であって、前記(A)色材が(A-1)所与の式(1)で表される化合物、その幾何異性体、その塩、またはその幾何異性体の塩である有機黒色顔料及び(A-2)有機着色顔料を含み、前記(A)色材100質量%に対する、前記(A-1)有機黒色顔料の含有割合が30~90質量%であり、前記(A)色材の含有量が、感光性着色組成物中の全固形分量に対して20質量%以上であり、かつ、前記(B)分散剤が4級アンモニウム塩基を官能基として有する高分子分散剤を含む感光性着色組成物が開示されている。
【0007】
特許文献5では、(a)着色剤、(b)アルカリ可溶性樹脂、(c)光重合開始剤、(d)エチレン性不飽和化合物、(e)溶剤、及び(f)分散剤を含有する感光性着色組成物であって、前記(a)着色剤が、所与の式で表される化合物、その幾何異性体、その塩、またはその幾何異性体の塩である有機黒色顔料を含み、前記(c)光重合開始剤が、別の所与の式で表されるジフェニルスルフィド骨格を有するオキシムエステル系化合物を含むことを特徴とする感光性着色組成物が開示されている。
【0008】
特許文献6では、着色剤(E)を含む着色剤分散液であって、前記着色剤(E)が、顔料(E1)と、分散剤(E2)とを含み、前記分散剤(E2)が、所与の式で表される構成単位を有するシルセスキオキサン化合物を含む、着色剤分散液が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】国際公開第2020/017576号
【特許文献2】国際公開第2019/150938号
【特許文献3】特開2019-81857号公報
【特許文献4】特許第6489008号公報
【特許文献5】特許第6528475号公報
【特許文献6】特開2018-70695号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
フォトリソグラフィー用樹脂組成物における感光性樹脂としては、概して透明な樹脂、例えばポリイミドが用いられているので、バンクを通して電気配線が見えてしまうことの防止、反射の防止、及び/又はコントラストの向上のために、フォトリソグラフィー用樹脂組成物は、着色剤を含有している。
【0011】
そこで、本発明では、フォトリソグラフィー用樹脂組成物の着色のための顔料分散液を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、鋭意検討したところ、以下の手段により上記課題を解決できることを見出して、本発明を完成させた。すなわち、本発明は、下記のとおりである:
〈態様1〉有機顔料、分散剤、及び有機溶剤を少なくとも含有しており、かつ前記分散剤が、以下の(a)及び(b)の条件を満足する、フォトリソグラフィー用樹脂組成物の着色のための分散液:
(a)平均一次粒子径200nm以下のインジウムスズ酸化物1質量%、前記分散剤を0.2質量%、残りをプロピレングリコールモノメチルエーテルとした配合において、粒子径が0.3mmのジルコニアビーズを用いて分散させ、そして動的光散乱法により測定したときに、前記インジウムスズ酸化物粒子の平均二次粒子径が、300nm以上となり、かつ
(b)前記有機顔料を10質量%、分散剤を1.5質量%、残りをプロピレングリコールモノメチルエーテルとした配合において、粒子径が0.3mmのジルコニアビーズを用いて分散させ、そして動的光散乱法により測定したときに、前記有機顔料の平均二次粒子径が、300nm未満となる。
〈態様2〉前記インジウムスズ酸化物が下記を満たす、態様1に記載の分散液:
前記インジウムスズ酸化物1質量%、前記インジウムスズ酸化物の分散に適した分散剤を0.2質量%、残りをプロピレングリコールモノメチルエーテルとした配合において、粒子径が0.3mmのジルコニアビーズを用いて分散させ、そして動的光散乱法により測定したときに、前記インジウムスズ酸化物粒子の平均二次粒子径が、200nm以下となる。
〈態様3〉前記有機顔料が、ベンゾフラノン系顔料である、態様1又は2に記載の分散液。
〈態様4〉前記分散剤が、ポリエステル系分散剤、ポリウレタン系分散剤、及びポリアクリル系分散剤からなる群より選ばれる少なくとも1種である、態様1~3のいずれか一項に記載の分散液。
〈態様5〉前記有機溶剤が、グリコールエーテル類又はエステル類からなる群より選ばれる少なくとも1種である、態様1~4のいずれか一項に記載の分散液。
〈態様6〉態様1~5のいずれか一項に記載の顔料分散液、及び感光性樹脂を含有している、フォトリソグラフィー用樹脂組成物。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、フォトリソグラフィー用樹脂組成物の着色のための顔料分散液を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
《分散液》
本発明の分散液は、顔料、分散剤、及び有機溶剤を少なくとも含有しており、かつ前記分散剤が、以下の(a)及び(b)の条件を満足する、フォトリソグラフィー用樹脂組成物の着色のための分散液である:
(a)平均一次粒子径200nm以下のインジウムスズ酸化物粒子を1質量%、前記分散剤を0.2質量%、残りをプロピレングリコールモノメチルエーテルとした配合において、粒子径が0.3mmのジルコニアビーズを用いて分散させ、そして動的光散乱法により測定したときに、前記インジウムスズ酸化物粒子の平均二次粒子径が、300nm以上となり、かつ
(b)前記有機顔料を10質量%、分散剤を1.5質量%、残りをプロピレングリコールモノメチルエーテルとした配合において、粒子径が0.3mmのジルコニアビーズを用いて分散させ、そして動的光散乱法により測定したときに、前記有機顔料の平均二次粒子径が、300nm未満となる。
【0015】
本発明者らは、バンクを作製するためにフォトリソグラフィー用樹脂組成物の不要部分を除去した際に、分散剤及び/又は顔料のようなフォトリソグラフィー用樹脂組成物の成分が、基材、特に基材の電極表面上に残留し、それによって、得られる有機EL素子において好ましくない影響を与える場合があることを見出した。
【0016】
これに対し、本発明者らは、フォトリソグラフィー用樹脂組成物に特定の分散剤を含有させることにより、バンクの作製の際に、フォトリソグラフィー用樹脂組成物の成分が基材上に残留することを抑制できることを見出した。
【0017】
以下では、本発明の各構成要素について説明する。
【0018】
〈顔料〉
顔料としては、非晶質炭素粉末、グラフェン、カーボンナノチューブ、黒鉛、及びカーボンブラック等の炭素系顔料を用いることができる。また、顔料としては、ベンゾフラノン系顔料、アゾ系顔料、縮合アゾ系顔料、フタロシアニン系顔料、アンスラキノン顔料、キナクドリン顔料、イソインドリノン系顔料、ジケトピロロピロール系顔料、各種レーキ顔料等の有機顔料を用いることができる。
【0019】
顔料としては、黒色顔料を用いることが、隠蔽性の観点から好ましい。
【0020】
顔料の平均粒子径は、50nm以上、70nm以上、80nm以上、100nm以上、120nm以上、150nm以上、170nm以上、200nm以上、220nm以上、250nm以上、270nm以上、又は300nm以上であってよく、また1000nm以下、800nm以下、700nm以下、600nm以下、550nm以下、500nm以下、450nm以下、又は400nm以下であってよい。
【0021】
ここで、本明細書において、平均二次粒子径は、動的光散乱法を用いた平均粒子径である。具体的には、この平均二次粒子径は、濃厚系粒子アナライザーFPAR-1000(大塚電子株式会社)を用いて算出された、散乱強度分布におけるキュムラント法解析の平均粒子径の値である。
【0022】
顔料分散液における顔料の含有率は、顔料分散液の質量を基準として、5質量%以上、10質量%以上、又は12質量%以上であってよく、また30質量%以下、25質量%以下、20質量%以下、又は15質量%以下であってよい。
【0023】
〈分散剤〉
分散剤は、以下の(a)及び(b)の条件を満足する分散剤である:
(a)平均一次粒子径200nm以下、特に平均一次粒子径150nm以下のインジウムスズ酸化物粒子を1質量%、前記分散剤を0.2質量%、残りをプロピレングリコールモノメチルエーテルとした配合において、粒子径が0.3mmのジルコニアビーズを用いて分散させ、そして動的光散乱法により測定したときに、前記インジウムスズ酸化物粒子の平均二次粒子径が、300nm以上となり、かつ
(b)前記有機顔料を10質量%、分散剤を1.5質量%、残りをプロピレングリコールモノメチルエーテルとした配合において、粒子径が0.3mmのジルコニアビーズを用いて分散させ、そして動的光散乱法により測定したときに、前記有機顔料の平均二次粒子径が、300nm未満となる。
【0024】
ここで、上記(a)において用いられているインジウムスズ酸化物は下記を満たすものであってよい:
インジウムスズ酸化物1質量%、インジウムスズ酸化物の分散に適した分散剤を0.2質量%、残りをプロピレングリコールモノメチルエーテルとした配合において、粒子径が0.3mmのジルコニアビーズを用いて分散させ、そして動的光散乱法により測定したときに、前記インジウムスズ酸化物粒子の平均二次粒子径が、200nm以下、特に150nm以下となる。なお、インジウムスズ酸化物粒子としては、例えばITO-R(CIKナノテック社)を用いることができる。
【0025】
ここで、インジウムスズ酸化物の分散に適した分散剤としては、下記を挙げることができる:
DISPERBYK‐167(BYK Additives & Instruments社)、
アジスパーPB-881(味の素ファインテクノ社)、
DISPERBYK‐2200(BYK Additives & Instruments社)、
DISPERBYK‐2155(BYK Additives & Instruments社)、
EFKA(登録商標) PX4701(BASF社)、
Solsperse 76500(Lubrizol社)、
ディスパロン(登録商標) SPD-202SS(楠本化成社)、
ディスパロン(登録商標)DA 7301(楠本化成社)、
フローレンDOPA-17HF(共栄社化学社)、
Borchi(登録商標) gen 1051(Borcher社)、
TEGO(登録商標)DISPERS 670(Evonik社)。
【0026】
動的光散乱法により測定されるインジウムスズ酸化物粒子の平均二次粒子径は、動的光散乱法により測定される有機顔料の平均二次粒子径の1.0倍超、1.2倍以上、1.5倍以上、2.0倍以上、2.5倍以上、又は3.0倍以上であってよく、また、20.0倍以下、18.0倍以下、16.0倍以下、14.0倍以下、12.0倍以下、10.0倍以下、9.0倍以下、8.0倍以下、7.0倍以下、6.0倍以下であってよい。
【0027】
本発明において用いる分散剤は、インジウムスズ酸化物粒子を分散させる能力が低く、かつ分散液において用いる顔料に対する分散性が良好である。このような分散剤によれば、顔料を良好に分散させつつ、基材のインジウムスズ酸化物層に分散剤が付着することを抑制し、それによって、得られる有機ELの特性を改良できることを見出した。
【0028】
かかる分散剤としては、ポリエステル系分散剤、ポリウレタン系分散剤、及びポリアクリル系分散剤を用いることができる。また、具体的には、かかる分散剤としては、下記を挙げることができる:
アジスパーPB-821(味の素ファインテクノ社)
Solsperse 20000(Lubrizol社)
Solsperse 16000(Lubrizol社)
エスリームAD 508E(日油社)
エスリームAD 374M(日油社)。
【0029】
顔料分散液における分散剤の含有率は、分散液の固形分質量を基準として、0.25質量%以上、0.5質量%以上、1質量%以上、3質量%以上、5質量%以上、7質量%以上、又は9質量%以上であってよく、また30質量%以下、25質量%以下、20質量%以下、15質量%以下、又は10質量%以下であってよい。
【0030】
分散剤の含有量は、顔料100質量部に対して、5質量部以上、10質量部以上、15質量部以上、20質量部以上、25質量部以上、30質量部以上、35質量部以上、40質量部以上、45質量部以上、50質量部以上、55質量部以上、60質量部以上、又は65質量部以上であってよく、また100質量部以下、90質量部以下、85質量部以下、80質量部以下、75質量部以下、又は70質量部以下であってよい。
【0031】
〈有機溶剤〉
有機溶剤としては、例えば芳香族類、アルコール類、多価アルコール類、グリコールエーテル類、炭化水素類、エステル類等を用いることができる。これらの溶剤は、単独で用いてもよく、又は組み合わせて用いてもよい。
【0032】
芳香族類としては、例えばベンジルアルコール、エチレングリコールモノフェニルエーテル、エチレングリコールモノベンジルエーテル、プロピレングリコールモノフェニルエーテル、ジエチレングリコールモノフェニルエーテル、アルキルスルフォン酸フェニルエステル、フタル酸ブチル、フタル酸エチルヘキシル、フタル酸トリデシル、トリメリット酸エチルヘキシル、ジエチレングリコールジベンゾエート、ジプロピレングリコールジベンゾエート等を用いることができる。
【0033】
アルコール類としては、例えばエタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、n-ブタノール、イソブタノール、tert-ブチルアルコール、1-ペンタノール、イソアミルアルコール、sec-アミルアルコール、3-ペンタノール、tert-アミルアルコール、n-ヘキサノール、メチルアミルアルコール、2-エチルブタノール、n-ヘプタノール、2-ヘプタノール、3-ヘプタノール、n-オクタノール、2-オクタノール、2-エチルヘキサノール、3,5,5-トリメチルヘキサノール、ノナノール、n-デカノール、ウンデカノール、n-デカノール、トリメチルノニルアルコール、テトラデカノール、ヘプタデカノール、シクロヘキサノール、2-メチルシクロヘキサノール等を用いることができる。
【0034】
多価アルコール類としては、例えばエチレングリコール、ジエチレングリコール、3-メチル-1,3ブンタンジオール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3プロパンジオール、1,3ブタンジオール、1,5ペンタンジオール、ヘキシレングリコール、オクチレングリコール等を用いることができる。
【0035】
グリコールエーテル類としては、例えば、メチルイソプロピルエーテル、エチルエーテル、エチルプロピルエーテル、エチルブチルエーテル、イソプロピルエーテル、ブチルエーテル、ヘキシルエーテル、2-エチルヘキシルエーテル、エチレングリコールモノヘキシルエーテル、エチレングリコールモノ-2-エチルブチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、テトラエチレングリコールモノブチルエーテル、3-メチル-3-メトキシ-1-ブタノール、3-メトキシ-1-ブタノール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールターシャリーブチルエーテルジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノブチルエーテル、テトラプロピレングリコールモノブチルエーテル等を用いることができる。
【0036】
炭化水素類としては、例えばヘキサン、イソヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン等の直鎖炭化水素類、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン等の環状炭化水素類を用いることができる。
【0037】
エステル類としては、例えばプロピレングリコールメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールジアセテート、3-メチル-3-メトキシブチルアセテート、プロピレングリコールエチルエーテルアセテート、エチレングリコールエチルエーテルアセテート、ギ酸ブチル、ギ酸イソブチル、ギ酸イソアミル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、酢酸イソプロピル、酢酸イソブチル、酢酸イソアミル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸プロピル、プロピオン酸イソブチル、プロピオン酸イソアミル、酪酸メチル、酪酸エチル、酪酸プロピル、イソ酪酸メチル、イソ酪酸エチル、イソ酪酸プロピル、吉草酸メチル、吉草酸エチル、吉草酸プロピル、イソ吉草酸メチル、イソ吉草酸エチル、イソ吉草酸プロピル、トリメチル酢酸メチル、トリメチル酢酸エチル、トリメチル酢酸プロピル、カプロン酸メチル、カプロン酸エチル、カプロン酸プロピル、カプリル酸メチル、カプリル酸エチル、カプリル酸プロピル、ラウリン酸メチル、ラウリン酸エチル、オレイン酸メチル、オレイン酸エチル、カプリル酸トリグリセライド、クエン酸トリブチルアセテート、オキシステアリン酸オクチル、プロピレングリコールモノリシノレート、2-ヒドロキシイソ酪酸メチル、3-メトキシブチルアセテート等を用いることができる。
【0038】
《フォトリソグラフィー用樹脂組成物》
本発明のフォトリソグラフィー用樹脂組成物は、上記の顔料分散液、及び感光性樹脂を含有している。
【0039】
この樹脂組成物を用いたバンクは、例えばネガ型又はポジ型のフォトリソグラフィーにより作製することができる。
【0040】
より具体的には、ネガ型のフォトリソグラフィーの場合、有機EL素子用の基材、例えばインジウムスズ酸化物(ITO)層を有する基板上にこの樹脂組成物を塗布して樹脂層を形成し、次いでバンクに相当する箇所において、樹脂層を露光させ、次いで樹脂層を洗浄して露光されなかった部分を除去(現像)することによって、バンクを作製することができる。
【0041】
また、ポジ型のフォトリソグラフィーの場合、有機EL素子用の基材上にこの樹脂組成物を塗布して樹脂層を形成し、次いでバンクに相当する箇所以外の箇所において、樹脂層を露光させ、次いで樹脂層を洗浄して露光された部分を除去(現像)することによって、バンクを作製することができる。
【0042】
フォトリソグラフィー用樹脂組成物における顔料の含有率は、フォトリソグラフィー用樹脂組成物の質量を基準として、0.5質量%以上、1質量%以上、2質量%以上、3質量%以上、又は4質量%以上であってよく、また15質量%以下、13質量%以下、11質量%、9質量%以下、7質量%以下、6質量%以下、又は5質量%以下であってよい。添加量の問題
【0043】
フォトリソグラフィー用樹脂組成物における分散剤の含有率は、フォトリソグラフィー用樹脂組成物の質量を基準として、0.025質量%以上、0.05質量%以上、0.1質量%以上、0.3質量%以上、 0.5質量%以上、 0.7質量%以上、 1質量%以上、2質量%以上、又は3質量%以上であってよく、また15質量%以下、13質量%以下、11質量%以下、9質量%以下7質量%以下、5質量%以下、又は4質量%以下であってよい。また、フォトリソグラフィー用樹脂組成物において、分散剤の含有量は、顔料に対する分散材の割合が分散液に関して示した割合になるようにしてもよい。
【0044】
〈感光性樹脂〉
感光性樹脂としては、例えばネガ型感光性樹脂、又はポジ型感光性樹脂を用いることができる。
【0045】
ネガ型感光性樹脂としては、例えば特許文献2に教示されているように、アルカリ可溶性樹脂、ラジカル重合性化合物、及び光重合開始剤を含有している樹脂組成物を用いることができる。
【0046】
アルカリ可溶性樹脂としては、例えばポリイミド、ポリイミド前駆体、ポリベンゾオキサゾール、及びポリベンゾオキサゾール前駆体等を用いることができる。
【0047】
ラジカル重合性化合物としては、例えばジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、1,3-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9-ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、1,10-デカンジオールジ(メタ)アクリレート、ジメチロール-トリシクロデカンジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールヘプタ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールオクタ(メタ)アクリレート、テトラペンタエリスリトールノナ(メタ)アクリレート、テトラペンタエリスリトールデカ(メタ)アクリレート、ペンタペンタエリスリトールウンデカ(メタ)アクリレート、ペンタペンタエリスリトールドデカ(メタ)アクリレート、エトキシ化ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、2,2-ビス[4-(3-(メタ)アクリロキシ-2-ヒドロキシプロポキシ)フェニル]プロパン、1,3,5-トリス((メタ)アクリロキシエチル)イソシアヌル酸若しくは1,3-ビス((メタ)アクリロキシエチル)イソシアヌル酸又はそれらの酸変性体等を用いることができる。
【0048】
光重合開始剤は、例えば少なくともオキシムエステル系光重合開始剤及びα-ヒドロキシケトン系光重合開始剤を含む光重合開始剤であってよい。
【0049】
感光性樹脂の含有率は、フォトリソグラフィー用樹脂組成物の質量全体を基準として、20質量%以上、25質量%以上、30質量%以上、35質量%以上、40質量%以上、45質量%以上、50質量%以上、55質量%以上、60質量%以上、65質量%以上、又は70質量%以上であってよく、また95質量%以下、90質量%以下、85質量%以下、80質量%以下、又は75質量%以下であってよい。
【実施例0050】
実施例及び比較例により本発明を具体的に説明するが、本発明は、これらに限定されるものではない。
【0051】
《分散剤の評価》
〈インジウムスズ酸化物の分散性の評価〉
インジウムスズ酸化物粒子(CIKナノテック社)を1質量%、表1に示す分散剤を0.2質量%、残りをプロピレングリコールモノメチルエーテルとした分散液を作製した。この分散液におけるインジウムスズ酸化物粒子を、粒子径が0.3mmのジルコニアビーズを用いて分散させ、その後インジウムスズ酸化物粒子の平均粒子径を、動的光散乱法により測定した。
【0052】
〈有機顔料の分散性の評価〉
有機顔料(Irgaphor Black S0100CF、BASF社)を10質量%、表1に示す分散剤を0.2質量%、残りをプロピレングリコールモノメチルエーテルとした分散液を作製した。この分散液における有機顔料を、粒子径が0.3mmのジルコニアビーズを用いて分散させ、その後、有機顔料の平均粒子径を、動的光散乱法により測定した。
【0053】
用いた有機顔料の詳細は以下のとおりである:
IRGAPHOR BLACK S0100CF(一次粒子40~80nmのベンゾフラノン系黒色顔料)
【0054】
各分散剤の詳細及び評価結果を表1に示す。
【0055】
【0056】
表1で示すように、分散後のインジウムスズ酸化物粒子の平均二次粒子径が、300nm以上となり、かつ分散後の有機顔料の平均二次粒子径が、300nm未満となる分散剤を、実施例の分散剤とし、この条件を満たさない分散剤を、比較例の分散剤としている。なお、比較例10の分散剤を用いたときには、分散後のインジウムスズ酸化物粒子の平均二次粒子径が147nmとなっていることから明らかなように、評価において用いたインジウムスズ酸化物粒子の平均一次粒子径は、200nm以下、特に150nm以下である。
【0057】
《顔料分散液、塗膜、及び有機EL素子の作製》
4.13質量部の顔料(Irgaphor(登録商標) Black S0100CF、BASF社)、1.24質量部の実施例2の分散剤、及び22.14質量部のプロピレングリコールモノメチルエーテルを混合して、実施例2の顔料分散液を作製した。
【0058】
次いで、2.75質量部の作製した顔料分散液を、7.25質量部の感光性樹脂(DL-1000、東レ社)と混合させて、フォトリソグラフィー用樹脂組成物を作製した。
【0059】
インジウムスズ酸化物(ITO)層を有する基板上に、作製した樹脂組成物を塗布して樹脂層を形成し、次いでバンクの位置に対応する箇所において、樹脂層を、500mJのエネルギーで露光させ、次いで、樹脂層を、現像液としての水酸化テトラメチルアンモニウムで洗浄することによって、バンク以外の部分の樹脂層を除去(現像)して、厚さ1.2μmのバンクを作製した。
【0060】
次いで、評価のための有機EL素子を、特許文献2と同様にして作製した。
【0061】
具体的には、バンクを形成した陽極としてのITO基板上に、前処理として、窒素プラズマ処理を行った後、真空蒸着法により、正孔注入層、正孔輸送層、発光層、電子輸送材料、及び陰極をこの順で蒸着させた。正孔注入層、正孔輸送層、発光層、電子輸送材料、及び陰極の具体的な材料としては、特許文献2と同じものを用いた。
【0062】
実施例2の分散剤の代わりに、比較例1の分散剤を用いたことを除き、実施例2と同様にして、比較例1の顔料分散液、塗膜、及び有機EL素子を作製した。
【0063】
《有機EL表示装置の評価》
〈発光特性1〉
上記の方法で作製した有機EL素子を、85℃192時間の条件で保管したのち、印加電圧3.5Vにて発光させ、非発光領域や輝度ムラなどの発光不良がないかを、顕微鏡で観察した(顕微鏡本体:ECLIPSE、型式LV150、株式会社ニコン、顕微鏡対物レンズ:LU Plan Fluor 5x、株式会社ニコン)。輝度が変化している発光領域は輝度ムラが発生しているとみなし、輝度ムラが発生している領域は、発光していないとみなした。評価基準は以下のとおりである:
A:均一に発光し、輝度ムラが発生していない。
B:発光しているが、一部、輝度ムラが発生している。
C:発光が弱く、輝度ムラも発生している。
D:発光していない。
【0064】
〈発光特性2〉
上記の方法で作製した有機EL素子を、印加電圧5Vにて発光させ、電流の変化により、発光特性の評価を行った。
【0065】
発光特性の指標として、無着色(透明)のフォトリソグラフィー用樹脂組成物(DL-1000、東レ社)、すなわち顔料を含有していないフォトリソグラフィー用樹脂組成物を用いて作製した有機EL素子(表2では「比較例12」と言及している。)と比較した電流変化を下記式により算出した。
電流変化=Yb/Yc
Yb:顔料分散液を含むフォトリソグラフィー用樹脂組成物を使用した際の電流密度
Yc:無着色(透明)のフォトリソグラフィー用樹脂組成物(DL-1000)を使用した際の電流密度
【0066】
電流密度の測定は、IVL特性自動測定装置(ETS-170、システム技研株式会社)を用いて、5.0Vにおける電流密度測定を行った。
【0067】
評価基準は以下のとおりである:
A:0.90以上
B:0.80以上0.90未満
C:0.60以上0.80未満
D:0.60未満
【0068】
実施例及び比較例の構成及び評価結果を表2に示す。
【0069】