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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022184562
(43)【公開日】2022-12-13
(54)【発明の名称】光角度変調器及び光送信装置
(51)【国際特許分類】
   H04B 10/548 20130101AFI20221206BHJP
【FI】
H04B10/548
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021092498
(22)【出願日】2021-06-01
(71)【出願人】
【識別番号】000208891
【氏名又は名称】KDDI株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003281
【氏名又は名称】弁理士法人大塚国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】石村 昇太
【テーマコード(参考)】
5K102
【Fターム(参考)】
5K102AA61
5K102AH02
5K102AH27
5K102AK02
5K102PA02
5K102PB00
5K102PC13
5K102PH01
5K102PH15
5K102PH50
(57)【要約】
【課題】帯域幅の広い光角度変調信号を生成できる技術を提供する。
【解決手段】光角度変調器は、電気信号により連続光を角度変調した第1角度変調光及び第2角度変調光を生成する第1生成手段と、前記第1角度変調光と前記第2角度変調光との一部縮退四光波混合により、第3角度変調光を生成する第2生成手段と、を備え、前記第1角度変調光の帯域と前記第2角度変調光の帯域は異なり、前記電気信号により前記第1角度変調光の角度が増加している間、前記電気信号により前記第2角度変調光の角度は減少し、前記電気信号により前記第1角度変調光の角度が減少している間、前記電気信号により前記第2角度変調光の角度は増加する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気信号により連続光を角度変調した第1角度変調光及び第2角度変調光を生成する第1生成手段と、
前記第1角度変調光と前記第2角度変調光との一部縮退四光波混合により、第3角度変調光を生成する第2生成手段と、
を備え、
前記第1角度変調光の帯域と前記第2角度変調光の帯域は異なり、
前記電気信号により前記第1角度変調光の角度が増加している間、前記電気信号により前記第2角度変調光の角度は減少し、前記電気信号により前記第1角度変調光の角度が減少している間、前記電気信号により前記第2角度変調光の角度は増加することを特徴とする光角度変調器。
【請求項2】
前記第2生成手段は、
前記第1角度変調光と前記第2角度変調光との一部縮退四光波混合により、第4角度変調光及び第5角度変調光を生成し、前記第1角度変調光と、前記第2角度変調光と、前記第4角度変調光と、前記第5角度変調光と、を含む信号光を出力する混合手段と、
前記信号光をフィルタリングすることで、前記第4角度変調光を前記第3角度変調光として出力するフィルタと、
を備えていることを特徴とする請求項1に記載の光角度変調器。
【請求項3】
前記混合手段は、光ファイバであることを特徴とする請求項2に記載の光角度変調器。
【請求項4】
前記光ファイバの分散値が0となる周波数は、前記第1角度変調光の帯域内、前記第2角度変調光の帯域内、或いは、前記第1角度変調光の帯域と前記第2角度変調光の帯域との間の帯域内に有ることを特徴とする請求項3に記載の光角度変調器。
【請求項5】
前記混合手段は、光半導体増幅器であることを特徴とする請求項2に記載の光角度変調器。
【請求項6】
前記第2生成手段は、複数のセットを直列接続した構成を有し、
前記複数のセットそれぞれは、混合手段と、当該混合手段の出力が入力されるフィルタと、を有し、
前記複数のセットそれぞれの前記混合手段は、入力される2つの入力角度変調光の一部縮退四光波混合により、2つの新規角度変調光を生成し、前記2つの入力角度変調光と、前記2つの新規角度変調光とを含む信号光を出力し、
前記複数のセットの内の前記直列接続における最後のセットとは異なるセットの前記フィルタは、同じセットの前記混合手段からの信号光に含まれる、前記2つの入力角度変調光を阻止し、前記2つの新規角度変調光を出力し、
前記複数のセットの内の前記直列接続における最後のセットの前記フィルタは、同じセットの前記混合手段からの信号光に含まれる、前記2つの新規角度変調光の内の一方を前記第3角度変調光として出力し、
前記複数のセットの内の前記直列接続における最初のセットの前記混合手段には前記第1角度変調光と前記第2角度変調光が入力されることを特徴とする請求項1に記載の光角度変調器。
【請求項7】
前記第1生成手段は、
第1連続光を生成する第1光源と、
第2連続光を生成する第2光源と、
前記第1連続光を前記電気信号で角度変調することで前記第1角度変調光を生成する第1変調手段と、
前記第2連続光を前記電気信号で角度変調することで前記第2角度変調光を生成する第2変調手段と、
を備えていることを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載の光角度変調器。
【請求項8】
前記電気信号の振幅に基づき前記第1変調手段が前記第1連続光の位相を進めている間、前記第2変調手段は、前記第2連続光の位相を遅らせる、或いは、前記電気信号の振幅に基づき前記第1変調手段が前記第1連続光の周波数を増加させている間、前記第2変調手段は、前記第2連続光の周波数を減少させることを特徴とする請求項7に記載の光角度変調器。
【請求項9】
前記第1連続光の周波数と前記第2連続光の周波数との周波数差は、前記第1角度変調光及び前記第2角度変調光の内の帯域が広い方の角度変調光の帯域幅の3倍と、前記第1角度変調光及び前記第2角度変調光の内の帯域が狭い方の角度変調光の帯域幅と、の和の半分より大きいことを特徴とする請求項7又は8に記載の光角度変調器。
【請求項10】
前記第1角度変調光の電界成分と前記第2角度変調光の電界成分は複素共役の関係にあることを特徴とする請求項1から9のいずれか1項に記載の光角度変調器。
【請求項11】
前記第1生成手段は、
前記電気信号に基づき正弦波を角度変調して角度変調信号を出力する角度変調手段と、
連続光を生成する光源と、
前記光源が生成した連続光を前記角度変調信号で強度変調する変調手段と、
を備えていることを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載の光角度変調器。
【請求項12】
前記第1生成手段は、前記変調手段が出力する強度変調光の搬送波成分を抑圧する帯域阻止フィルタをさらに備えている請求項11に記載の光角度変調器。
【請求項13】
前記変調手段は、前記光源が生成した連続光を前記角度変調信号で搬送波抑圧強度変調することを特徴とする請求項11に記載の光角度変調器。
【請求項14】
前記正弦波の周波数は、前記角度変調信号の帯域幅より大きいことを特徴とする請求項11から13のいずれか1項に記載の光角度変調器。
【請求項15】
請求項1から14のいずれか1項に記載の光角度変調器を備えることを特徴とする光送信装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光角度変調技術に関する。
【背景技術】
【0002】
非特許文献1及び非特許文献2は、角度変調を行う光変調器(光角度変調器)を開示している。なお、角度変調とは、周波数変調及び位相変調の総称である。この様な光角度変調器が生成する角度変調光の信号対雑音比は、その帯域幅が広い程、良好になる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】S.Ishimura,et.al.,"SSBI-Free Direct-Detection System Employing Phase Modulation for Analog Optical Links",in Journal of Lightwave Technology,vol.38,no.9,pp.2719-2725,2020年
【非特許文献2】D.Che,et.al.,"High-fidelity angle-modulated analog optical link",Opt.Express,vol.24,pp.16 320-16 328,2016年
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
光角度変調器は、印加される電気信号(情報を搬送)の振幅に応じて、連続光の角度、つまり、位相や周波数を変化させる。広帯域な角度変調光を生成するためには、光角度変調器に印加する電気信号の振幅、つまり電気信号の電圧レベルを大きくしなければならない。しかしながら、線形性を保ちながら電圧レベルの高い電気信号を生成するのは容易ではなく、かつ、消費電力が増加する。
【0005】
本発明は、帯域幅の広い角度変調光の生成技術を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様によると、光角度変調器は、電気信号により連続光を角度変調した第1角度変調光及び第2角度変調光を生成する第1生成手段と、前記第1角度変調光と前記第2角度変調光との一部縮退四光波混合により、第3角度変調光を生成する第2生成手段と、を備え、前記第1角度変調光の帯域と前記第2角度変調光の帯域は異なり、前記電気信号により前記第1角度変調光の角度が増加している間、前記電気信号により前記第2角度変調光の角度は減少し、前記電気信号により前記第1角度変調光の角度が減少している間、前記電気信号により前記第2角度変調光の角度は増加することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によると、帯域幅の広い角度変調光を生成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】一実施形態による光角度変調器の構成図。
図2】一実施形態による光角度変調器の内部で生成される信号を示す図。
図3】一実施形態による第1生成部の構成図。
図4】一実施形態による第1生成部の構成図。
図5】一実施形態による第1生成部の内部で生成される信号を示す図。
図6】一実施形態による第2生成部の構成図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照して実施形態を詳しく説明する。なお、以下の実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではなく、また実施形態で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明に必須のものとは限らない。実施形態で説明されている複数の特徴のうちの二つ以上の特徴が任意に組み合わされてもよい。また、同一若しくは同様の構成には同一の参照番号を付し、重複した説明は省略する。
【0010】
<第一実施形態>
図1は、本実施形態による光角度変調器の構成図である。第1生成部100は、情報を搬送する電気信号に基づき、図2に示す中心周波数がfの角度変調光91と、中心周波数がfの角度変調光92と、を生成して第2生成部200に出力する。なお、本実施形態では、図2に示す様に、f>fとし、fとfとの周波数差をXとする。
【0011】
角度変調光91と、角度変調光92は、同じ電気信号に基づき生成されたものであるが、角度変調光91の電界成分と角度変調光92の電界成分は、例えば、互いに複素共役の関係となる様に第1生成部100は、角度変調光91及び角度変調光92を生成する。つまり、例えば、電気信号の振幅が正である場合に連続光の位相を進め、電気信号の振幅が負である場合に連続光の位相を遅らせることで角度変調光91が生成されているのであれば、電気信号の振幅が負である場合に連続光の位相を進め、電気信号の振幅が正である場合に連続光の位相を遅らせることで角度変調光92は生成される。同様に、例えば、電気信号の振幅が正である場合に連続光の周波数を増加させ、電気信号の振幅が負である場合に連続光の周波数を減少させることで角度変調光91が生成されているのであれば、電気信号の振幅が負である場合に連続光の周波数を増加させ、電気信号の振幅が正である場合に連続光の周波数を減少させることで角度変調光92は生成される。
【0012】
したがって、電気信号をm(t)と表記すると、角度変調光91の電界成分E及び角度変調光92の電界成分Eは、それぞれ、
【0013】
【数1】
で表される。ここで、ω=2πfであり、ω=2πfであり、kは変調指数である。km(t)は、角度変調による連続光の位相又は周波数の変化量(角度変化量)に対応し、km(t)の最大値が大きい程、角度変調光の帯域幅は広くなる。つまり、角度変調光91及び角度変調光92の帯域幅は、km(t)に対応し、km(t)の値が大きい程、角度変調光91及び角度変調光92の帯域幅は広くなる。なお、図2に示す様に、本例においては、km(t)に対応する角度変調光91及び角度変調光92の帯域幅をBとしている。
【0014】
第2生成部200の四光波混合(FWM)部20は、角度変調光91と、角度変調光92との一部縮退四光波混合を生じさせる。一部縮退四光波混合とは、四光波混合の一態様であり、周波数f及び周波数fの2つの光から、周波数2f-f(又は、2f-f)の新たな光が発生する現象を意味する。周波数fの光の電界成分をEとし、周波数fの光の電界成分をEとすると、一部縮退四光波混合により生じる周波数2f-fの光の電界成分は、E* となる。なお、E* は、Eの複素共役である。同様に、一部縮退四光波混合により生じる周波数2f-fの光の電界成分は、E* となる。
【0015】
したがって、FWM部20における一部縮退四光波混合により、図2に示す、中心周波数が2f-fの角度変調光93と、中心周波数が2f-fの角度変調光94が生成される。ここで、角度変調光93の電界成分E及び角度変調光94の電界成分Eは、それぞれ、
【0016】
【数2】
となる。式(3)及び式(4)より、角度変調光93及び角度変調光94の角度変化量は、3km(t)、つまり、角度変調光91及び角度変調光92の3倍となることが分かる。したがって、図2に示す様に、角度変調光93及び角度変調光94の帯域幅Bは、角度変調光91及び角度変調光92の帯域幅の3倍、つまり、3Bになる。図2は、FWM部20が出力する信号光の周波数成分を示している。
【0017】
フィルタ部21は、図2に示すFWM部20が出力する信号光の内の角度変調光93を通過させ、その他の角度変調光を減衰させて阻止する。なお、フィルタ部21は、角度変調光94を通過させ、その他の角度変調光を減衰させて阻止するものであっても良い。これにより、光角度変調器は、角度変調光91、92の3倍の帯域を有する角度変調光を生成して出力することができる。したがって、同じ電圧レベルの電気信号に基づき従来の3倍の帯域の角度変調光を生成することができる。
【0018】
FWM部20は、例えば、分散シフトファイバ等の光ファイバにより構成することができる。四光波混合は、光ファイバに入力される光の周波数(波長)が、当該光ファイバの波長分散値が零となる周波数(波長)に近い場合に強く発生する。例えば、一部縮退四光波混合の場合、角度変調光91の周波数における光ファイバの波長分散値が零近傍である場合、周波数2f-fの角度変調光93が強く生じる。したがって、フィルタ部21が、角度変調光93を通過させる場合、角度変調光91の帯域内に光ファイバの分散が0となる周波数(波長)が位置する様に周波数f及び周波数fを決定することで、角度変調光93を効率的に生成することができる。一例として、周波数fを、光ファイバの分散が0となる周波数に設定することで、角度変調光93を効率的に生成することができる。
【0019】
同様に、角度変調光92の周波数における光ファイバの波長分散値が零近傍である場合、周波数2f-fの角度変調光94が強く生じる。したがって、フィルタ部21が、角度変調光94を通過させる場合、角度変調光92の帯域内に光ファイバの分散が0となる周波数(波長)が位置する様に周波数f及び周波数fを決定することで、角度変調光94を効率的に生成することができる。一例として、周波数fを、光ファイバの分散が0となる周波数に設定することで、角度変調光94を効率的に生成することができる。
【0020】
なお、本発明は、光ファイバの分散が0となる周波数を、角度変調光91や角度変調光92の帯域内に設定することに限定されない。例えば、光ファイバの分散が0となる周波数を、角度変調光91の帯域と角度変調光92の帯域との間の帯域内に設定することで、角度変調光93や角度変調光94を生成する構成とすることもできる。さらに、光ファイバの分散が0となる周波数が角度変調光91の帯域より低くても、角度変調光92の帯域より高くても一部縮退四光波混合は生じるため、光ファイバの分散が0となる周波数は、角度変調光93又は角度変調光94が生じる限り、角度変調光91の帯域より低くても、角度変調光92の帯域より高くても良い。
【0021】
また、FWM部24は、半導体光増幅器で構成することができる。半導体光増幅器の非線形性により、四光波混合を生じさせることができる。
【0022】
なお、上記説明では、式(1)及び式(2)に示す様に、角度変調光91及び角度変調光92の変調指数を同じ値"k"としたが、角度変調光91及び角度変調光92の変調指数が同じである必要はない。例えば、角度変調光91の変調指数がkであり、角度変調光92の変調指数が0.5kであると、式(1)~式(4)より明らかな様に、角度変調光93の帯域幅は2.5Bとなり、角度変調光94の帯域幅は2Bとなり、変調指数が共にkである場の帯域幅である3Bより小さくなるが、角度変調光93及び角度変調光94の帯域幅が、角度変調光91及び角度変調光92の帯域幅より広くなることには変わりない。纏めると、式(1)~式(4)より明らかな様に、2つの角度変調光の帯域幅が同じ(変調指数が同じ)であると、一部縮退四光波混合により生じる角度変調光の帯域幅は、元の角度変調光の3倍になる。一方、2つの角度変調光の帯域幅が異なる(変調指数が異なる)と、一部縮退四光波混合により生じる2つの角度変調光の内の1つの角度変調光の帯域幅は、元の2つの角度変調光の内の帯域が広い方の帯域幅の3倍より小さくなるが、元の2つの角度変調光の内の帯域が広い方の帯域幅の2倍よりは大きくなる。
【0023】
なお、角度変調光91及び角度変調光92の変調指数が異なる場合、角度変調光91の電界成分Eと角度変調光92の電界成分Eは複素共役の関係とはならない。つまり、角度変調光91の電界成分Eと角度変調光92の電界成分Eを複素共役の関係とすることにより一部縮退四光波混合により生じる角度変調光の帯域幅を最大化することができるが、電界成分Eと電界成分Eを複素共役の関係とすることは、一部縮退四光波混合により生じる角度変調光の帯域幅を角度変調光91及び角度変調光92の帯域幅より広くするために必要な条件ではない。つまり、同じ電気信号から生成される角度変調光91及び角度変調光92について、角度変調光91の角度(位相又は周波数)が増加している間、角度変調光92の角度が減少し、角度変調光91の角度が減少している間、角度変調光92の角度が増加する様に角度変調光91及び角度変調光92が生成されていれば良く、その様な形態は本発明の範囲内である。
【0024】
また、上記説明においては、角度変調光91及び角度変調光92の振幅を同じとしていた。角度変調光91及び角度変調光92の振幅が異なる場合、それに応じて角度変調光93及び角度変調光94の振幅も異なることになるが、角度変調であるため問題にはならない。したがって、角度変調光91及び角度変調光92の振幅は異なるものであっても良い。
【0025】
なお、角度変調光93及び角度変調光94の帯域幅が角度変調光91及び92の3倍である場合、角度変調光93及び角度変調光94が角度変調光91及び92と干渉しない様にするには、図2から明らかな様に、X>2Bとする必要がある。なお、上述した様に、2つの角度変調光の変調指数が異なる場合、角度変調光93及び角度変調光94の帯域幅は、角度変調光91及び92の帯域幅の3倍とはならない。したがって、より一般的には、角度変調光93と角度変調光94の内の帯域が広い方の帯域幅をBとし、狭い方の帯域幅をBとすると、X>(3B+B)/2とすれば良い。
【0026】
続いて、第1生成部100の構成例について説明する。図3は、第1生成部100の構成例を示している。電気信号は、光変調部12に入力されると共に、反転部15に入力される。反転部15は、当該電気信号の振幅を反転させた反転電気信号を光変調部13に出力する。光源10は、周波数fの連続光を生成し、光源11は、周波数fの連続光を生成する。
【0027】
光変調部12は、光源10が生成した周波数fの連続光を、電気信号により光角度変調し、角度変調光91を出力する。一方、光変調部13は、光源11が生成した周波数fの連続光を、反転電気信号により光角度変調し、角度変調光92を出力する。なお、光変調部12及び光変調部13は、電気信号の振幅の正負に応じて連続光の角度を変化させる方向(増加又は減少)が同じであるものとする。図3の例では、光変調部12に電気信号m(t)を入力し、光変調部13には、反転電気信号-m(t)を入力しているため、角度変調光92の電界成分と角度変調光93の電界成分の位相又は周波数の増減方向は互いに逆方向となる。なお、反転部15を省略し、代わりに、電気信号の振幅の正負に応じて連続光の角度を変化させる方向(増加又は減少)を光変調部12と光変調部13とで異ならせる構成とすることもできる。例えば、反転部15と光変調部13とを含む機能ブロックを1つの光変調部とすること、つまり、反転部15を光変調部13内の要素とする構成とすることもできる。
【0028】
カップラ14は、光変調部12からの角度変調光91と光変調部13からの角度変調光92を合波し、角度変調光91と角度変調光92を含む信号光を出力する。
【0029】
なお、図3の構成例では、光変調部12及び光変調部13として同じ変調器を使用することで、角度変調光91及び角度変調光92の変調指数は同じにでき、よって、角度変調光93及び角度変調光94の帯域幅を角度変調光91及び角度変調光92の3倍とすることができる。しかしながら、上述した様に、光変調部12及び光変調部13における光角度変調の変調指数は同じでなくても良い。
【0030】
図4は、第1生成部100の他の構成例を示している。角度変調器16は、周波数f=X/2の正弦波信号を生成する発振器を有し、当該正弦波信号を電気信号m(t)で角度変調して角度変調信号を出力する。光源17は、周波数f=(f+f)/2の連続光を生成する。光変調部18は、周波数fの連続光を角度変調器16からの角度変調信号で光強度(振幅)変調し、強度変調光を出力する。
【0031】
図5は、光変調部18が出力する強度変調光を示している。図5において、参照符号95は、周波数fの光キャリア成分(搬送波)である。光強度変調により、角度変調信号に対応する上側波帯及び下側波帯が生じる。上側波帯及び下側波帯それぞれの中心周波数と、光キャリア成分95との周波数差は、正弦波信号の周波数に等しいX/2になる。したがって、下側波帯の中心周波数はfになり、上側波帯の中心周波数はfになる。また、上側波帯と下側波帯は複素共役の関係となる。したがって、下側波帯は角度変調光91に対応し、上側波帯は角度変調光92に対応する。
【0032】
図4に戻り、帯域阻止フィルタ(BSF)19は、光変調部18が出力する強度変調光の光キャリア成分95を減衰させて阻止する。したがって、BSF19が出力する信号光は、図3のカップラ14が出力する信号光と同様になる。
【0033】
なお、図4の構成においては、角度変調光91及び角度変調光92の変調指数は同じになるため、角度変調光93及び角度変調光94の帯域幅は、角度変調光91及び角度変調光92の帯域幅の3倍となる。したがって、X>2Bとする必要がある。なお、帯域幅Bは、角度変調部16が出力する角度変調信号の帯域幅でもある。したがって、角度変調器16が生成する正弦波信号の周波数f=X/2>Bとする必要がある。
【0034】
なお、図4では、BSF19により光キャリア成分95を抑圧しているが、光変調部18において、搬送波抑圧強度(振幅)変調を行ってBSF19を省略する構成とすることができる。また、搬送波抑圧強度(振幅)変調を行いつつ、BSF19で残留する光キャリア成分95を更に抑圧する構成とすることもできる。
【0035】
<第二実施形態>
続いて、第二実施形態について、第一実施形態との相違点を中心に説明する。第一実施形態では、一部縮退四光波混合を1回だけ生じさせ、これにより、角度変調光93及び角度変調光94を生成し、角度変調光93又は角度変調光94を光角度変調器の出力としていた。本実施形態では、一部縮退四光波混合を2回以上生じさせ、これにより、第一実施形態より帯域幅の広い角度変調光を生成する。なお、第一実施形態で述べた様に、角度変調光91の電界成分Eと角度変調光92の電界成分Eは、電気信号による角度の増減方向が互いに逆方向であれば良く、複素共役の関係にあることは必須ではないが、以下では説明を簡略化するため、角度変調光91の電界成分Eと角度変調光92の電界成分Eが複素共役の関係にあるものとする。
【0036】
図6は、本実施形態による第2生成部200の構成図である。なお、図6は、一部縮退四光波混合を2回生じさせる場合の構成を示している。また、第1生成部100の構成は、第一実施形態と同様である。FWM部20は、第一実施形態と同様であり、よって、図2に示す信号光を生成する。フィルタ部22は、図2に示す信号光の内の角度変調光91及び角度変調光92を抑圧し、角度変調光93及び角度変調光94を含む信号光をFWM部23に出力する。
【0037】
FWM部23は、角度変調光93と角度変調光94との一部縮退四光波混合を生じさせる。式(3)及び式(4)より、角度変調光93と角度変調光94は複素共役の関係である。したがって、角度変調光93と、角度変調光94との一部縮退四光波混合により、角度変調光93、94より帯域幅の広い角度変調光をその成分として含む信号光を生成することができる。なお、角度変調光93と角度変調光94との一部縮退四光波混合により生じる角度変調光の中心周波数は、それぞれ、5f-4fと5f-4fである。また、角度変調光93と角度変調光94との一部縮退四光波混合により生じる角度変調光の帯域幅は、角度変調光91及び角度変調光92の帯域幅の9倍となる。フィルタ部24は、角度変調光93と角度変調光94との一部縮退四光波混合により生じる2つの角度変調光の内の1つのみを通過させ、その他の角度変調光を阻止する。
【0038】
なお、図6の第2生成部200は、一部縮退四光波混合を2回生じさせるものであるが、第2生成部200において一部縮退四光波混合を3回以上生じさせる構成とすることもできる。一般的に述べると、第2生成部200は、FWM部と、FWM部の出力が入力されるフィルタ部とのセットを、複数個、直列に接続した構成を有する。なお、直列接続するセット数は、一部縮退四光波混合を生じさせる回数に等しい。
【0039】
まず、直列接続の最初のセットのFWM部には、角度変調光91及び角度変調光92が入力角度変調光として入力される。また、直列接続の最初のセットとは異なるセットのFWM部には、1つ前のセットのフィルタ部から2つの入力角度変調光が入力される。各セットのFWM部は、2つの入力角度変調光の一部縮退四光波混合により、2つの新たな角度変調光(新規角度変調光)を生成し、2つの入力角度変調光及び2つの新規角度変調光を含む信号光を同じセットのフィルタ部に出力する。
【0040】
直列接続の最後のセットとは異なるセットのフィルタ部は、同じセットのFWM部から入力される信号光に含まれる2つの入力角度変調光を阻止し、2つの新規角度変調光を、後段のセットのFWM部に出力する。この2つの新規角度変調光は、後段のセットにおいては、2つの入力角度変調光として取り扱われる。
【0041】
また、直列接続の最後のセットのフィルタ部は、同じセットのFWM部から入力される信号光に含まれる4つの角度変調光の内の1つの新規角度変調光のみを通過させて、光角度変調器の出力とする。
【0042】
以上、同じ電気信号に基づき生成され、角度の増減方向が互いに異なる2つの角度変調光の一部縮退四光波混合により、これら2つの角度変調光より帯域幅の広い角度変調光を生成する。したがって、電気信号の電圧レベルを大きくすることなく、広帯域な角度変調光を生成することができる。なお、上記各実施形態による光角度変調器は、光角度変調を使用する光通信システムの光送信装置に適用することができる。したがって、本実施形態による光角度変調器を備えた光送信装置も、本発明の範囲に含まれる。
【0043】
発明は上記の実施形態に制限されるものではなく、発明の要旨の範囲内で、種々の変形・変更が可能である。
【0044】
以上の構成により、帯域幅の広い角度変調光を生成することができる。したがって、国連が主導する持続可能な開発目標(SDGs)の目標9「レジリエントなインフラを整備し、持続可能な産業化を推進するとともに、イノベーションの拡大を図る」に貢献することが可能となる。
【符号の説明】
【0045】
100:第1生成部、200:第2生成部
図1
図2
図3
図4
図5
図6