(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022184563
(43)【公開日】2022-12-13
(54)【発明の名称】媒体繰出装置
(51)【国際特許分類】
B65H 3/06 20060101AFI20221206BHJP
B65H 1/02 20060101ALI20221206BHJP
B65H 1/28 20060101ALI20221206BHJP
B65H 1/14 20060101ALI20221206BHJP
G07D 9/00 20060101ALI20221206BHJP
【FI】
B65H3/06 350A
B65H1/02 A
B65H1/28 320A
B65H3/06 C
B65H3/06 340E
B65H1/14 322C
G07D9/00 481Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021092499
(22)【出願日】2021-06-01
(71)【出願人】
【識別番号】000000295
【氏名又は名称】沖電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100129067
【弁理士】
【氏名又は名称】町田 能章
(74)【代理人】
【識別番号】100183162
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 義文
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】桐淵 雅光
【テーマコード(参考)】
3E141
3F343
【Fターム(参考)】
3E141AA05
3E141AA07
3F343FA16
3F343FB07
3F343FC21
3F343GA04
3F343GB01
3F343GC01
3F343GD01
3F343HA17
3F343HB03
3F343HC03
3F343HC24
3F343HC30
3F343HD15
3F343JA01
3F343JA13
3F343KB03
3F343KB04
3F343KB17
3F343LA03
3F343LA15
3F343LC01
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3F343LC06
3F343LC07
3F343LC11
3F343LC15
3F343LC27
3F343LD01
3F343MA04
3F343MA13
3F343MA32
3F343MA38
3F343MA39
3F343MA53
3F343MB04
3F343MB13
3F343MC11
3F343MC12
(57)【要約】
【課題】作業者にとって利便性がよい媒体繰出装置を提供するものである。
【解決手段】媒体繰出装置100は、前記媒体を収納する複数の収納部としての通帳カセット131と、収納部から前記媒体を繰り出して内部に取り込むキャリア124と、制御部128とを備え、各々の収納部は、弾性力によって媒体をキャリア124側に押し付けるプレスプレート132を有し、キャリア124は、繰出しローラ4と、弾性力に抗して媒体を押し込む方向に繰出しローラ4を移動させる移動手段とを有し、制御部128は、繰出し時における繰出しローラ4の基準となる基準位置の情報と、前記繰出しローラの位置調整の基準となる調整位置の情報とを有しており、前記調整位置に基づく位置調整動作によって前記収納部毎の補正値を算出し、繰出し時における繰出しローラ4の繰出し位置を前記基準位置および前記補正値に基づいて前記収納部毎に算出する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
収納する媒体を繰り出す媒体繰出装置であって、
並設して設けられ、前記媒体を収納する複数の収納部と、
並設方向に移動可能であり、各々の前記収納部まで移動して当該収納部から前記媒体を繰り出して内部に取り込むキャリアと、
制御部と、を備え、
各々の前記収納部は、弾性力によって媒体を前記キャリア側に押し付けるプレスプレートを有し、
前記キャリアは、前記収納部内の媒体に圧接した状態で回転して前記媒体を繰り出す繰出しローラと、前記弾性力に抗して前記媒体を押し込む方向に前記繰出しローラを移動させる移動手段と、を有し、
前記制御部は、繰出し時における前記繰出しローラの基準となる基準位置の情報と、前記繰出しローラの位置調整の基準となる調整位置の情報とを有しており、前記調整位置に基づく位置調整動作によって前記収納部毎の補正値を算出し、繰出し時における前記繰出しローラの繰出し位置を前記基準位置および前記補正値に基づいて前記収納部毎に算出する、
ことを特徴とする媒体繰出装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記収納部に前記媒体を収納していない状態で、前記位置調整動作を実行し、
前記位置調整動作では、前記調整位置に前記繰出しローラを移動させた状態で、前記プレスプレートと前記繰出しローラとが接触しているか否かを作業者に確認する確認画面を表示部に表示させ、前記作業者により入力される確認結果に基づいて前記補正値を調整する、
ことを特徴とする請求項1に記載の媒体繰出装置。
【請求項3】
前記プレスプレートと前記繰出しローラとが接触している場合に前記作業者が選択する接触ボタンと、前記プレスプレートと前記繰出しローラとが接触していない場合に前記作業者が選択する非接触ボタンとを有する操作部をさらに備え、
前記制御部は、前記接触ボタンが選択された場合に前記繰出しローラが前記プレスプレートから離れるように所定量だけ前記補正値を変更し、また、前記非接触ボタンが選択された場合に前記繰出しローラが前記プレスプレートに近づくように所定量だけ前記補正値を変更する、
ことを特徴とする請求項2に記載の媒体繰出装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記確認画面を用いた位置調整動作を繰り返し実行し、前記プレスプレートと前記繰出しローラとが接触している状態から非接触の状態に変化した場合に、一つ前の位置調整動作時の補正値を正式な値として決定して前記位置調整動作を完了し、また、前記プレスプレートと前記繰出しローラとが非接触の状態から接触している状態に変化した場合に、今回の位置調整動作時の補正値を正式な値として決定して前記位置調整動作を完了する、
ことを特徴とする請求項3に記載の媒体繰出装置。
【請求項5】
前記移動手段は、先端に前記繰出しローラが設置されたアームと、前記アームの基端を中心にして揺動させる駆動部とを備える、
ことを特徴とする請求項1ないし請求項4の何れか一項に記載の媒体繰出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、媒体繰出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
金融機関等には、通帳発行装置が設置される。例えば顧客が銀行等で新たに口座を開設する場合や発行済みの通帳を使い終わった場合に、この通帳発行装置を用いて新規通帳の発行が行われる。通帳発行装置には、例えば特許文献1に示す構造のものがある。
特許文献1に示す通帳発行装置は、多数の通帳や証書を収納するために複数の収納部および収納部から通帳を繰り出す繰出しローラを内部に備えている。繰出しローラは、収納部に近づくように揺動し、収納部内の通帳に圧接する。そして、圧接した状態で繰出しローラを回動させることで通帳を繰り出すようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、特許文献1に記載される構造の通帳発行装置では、繰出しローラの位置によって通帳への圧接力が変化するため、圧接力が弱すぎると通帳が繰り出せなくなり、圧接力が強すぎると複数個の通帳が同時に繰り出されてしまう。これを防ぐためには、製造における寸法のばらつきや使用による部材の消耗などを考慮して、装置毎に通帳への圧接時における繰出しローラの位置を調整することが必要である。
【0005】
従来では、専用の治具を用いてこの調整を行っていたので、治具を所持していないと調整が行えないという問題があった。例えば、金融機関等で保守作業を行っている最中にこの調整が必要となった場合に、保守拠点へ治具を取りに帰らなければならず、保守作業の効率が低下するという問題があった。なお、全ての保守作業でこの治具を所持することは手間であり、保守作業を行う作業者にとっては望ましくない。
【0006】
なお、この問題は通帳発行装置に限らず、通帳以外の媒体を繰出しローラで圧接して繰り出す場合にも同様に発生する。
【0007】
本発明は、前記問題に鑑みてなされたものであり、作業者にとって利便性がよい媒体繰出装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するため、本発明の一態様に係る媒体繰出装置は、収納する媒体を繰り出す媒体繰出装置であって、並設して設けられ、前記媒体を収納する複数の収納部と、並設方向に移動可能であり、各々の前記収納部まで移動して当該収納部から前記媒体を繰り出して内部に取り込むキャリアと、制御部と、を備え、各々の前記収納部は、弾性力によって媒体を前記キャリア側に押し付けるプレスプレートを有し、前記キャリアは、前記収納部内の媒体に圧接した状態で回転して前記媒体を繰り出す繰出しローラと、前記弾性力に抗して前記媒体を押し込む方向に前記繰出しローラを移動させる移動手段と、を有し、前記制御部は、繰出し時における前記繰出しローラの基準となる基準位置の情報と、前記繰出しローラの位置調整の基準となる調整位置の情報とを有しており、前記調整位置に基づく位置調整動作によって前記収納部毎の補正値を算出し、繰出し時における前記繰出しローラの繰出し位置を前記基準位置および前記補正値に基づいて前記収納部毎に算出することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、作業者にとって利便性がよい媒体繰出装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の実施形態に係る媒体繰出装置の内部構造を説明するための模式図である。
【
図2】本発明の実施形態に係る媒体繰出装置が有するキャリアの内部構造を説明するための模式図である。
【
図3】繰出しローラの位置調整動作における画面例である。
【
図4】繰出し動作時における繰出しローラの位置を説明するための図である。
【
図5】比較例としての治具を用いた従来の位置調整動作を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態について詳細に説明する。各図は、本発明を十分に理解できる程度に、概略的に示してあるに過ぎない。よって、本発明は、図示例のみに限定されるものではない。また、参照する図面において、本発明を構成する部材の寸法は、説明を明確にするために誇張して表現されている場合がある。なお、各図において、共通する構成要素や同様な構成要素については、同一の符号を付し、それらの重複する説明を省略する。
【0012】
<実施形態に係る媒体繰出装置の構成について>
図1および
図2を参照して、実施形態に係る媒体繰出装置100の構成について説明する。
図1は、媒体繰出装置100の内部構造を説明するための模式図である。
図2は、媒体繰出装置100が有するキャリア124の内部構造を説明するための模式図である。
媒体繰出装置100の説明における「上下」、「前後」、「左右」は、
図1の矢印に従う。当該方向は、説明の便宜上定めるものであり、本発明を限定するものではない。本実施形態では、媒体繰出装置100として通帳証書発行装置を想定して説明する。
図1に示す媒体繰出装置100が取り扱う媒体には、主に通帳および証書がある。
【0013】
図1に示すように、媒体繰出装置100は、装置下側に配置される媒体繰出しユニット121と、装置上部前側に配置されるインサータユニット122と、装置上部後側に配置される印字ユニット123と、装置上面に設置されるタッチディスプレイ127と、制御部128とを主に備える。
【0014】
媒体繰出しユニット121は、媒体を収納すると共に、収納された媒体を装置上部に繰り出す部分である。
インサータユニット122は、媒体繰出しユニット121から繰り出された媒体を外部へ搬送する部分である。
印字ユニット123は、媒体への印字や通帳の頁めくりを行う部分である。
タッチディスプレイ127は、状態表示を行うと共に情報の入力を受け付ける部分である。なお、タッチディスプレイ127は、「表示部」および「操作部」の例示である。
制御部128は、媒体繰出装置100(媒体繰出しユニット121を含む)の動作を制御する部分である。
【0015】
図1に示すように、媒体繰出しユニット121には、媒体を運搬するキャリア124、通帳カセット131A~131J、および、証書分離ユニット126が設けられている。通帳カセット131A~131Jは、上下方向に並設して設けられている。通帳カセット131A~131Jは同様の構造であり、通帳カセット131A~131Jを区別せずに説明する場合に、単に「通帳カセット131」と記す場合がある。なお、通帳カセット131A~131Jは、媒体を収納する「収納部」の例示である。
【0016】
図1に示すように、通帳カセット131には、内部にセットされた通帳Tをキャリア124側へ押すためのプレスプレート132が設けられている。プレスプレート132は、図示しないスプリングの弾性力により、常にキャリア124側へ押し付けられている。通帳カセット131のプレスプレート132に対向する位置には、傾斜部133(
図2参照)が設けられており、プレスプレート132と傾斜部133とで通帳Tを挟み込んで通帳Tを保持する。通帳Tは、綴じられた部分が上側にくるようにして通帳カセット131内に並べられている。
図2に示すように、通帳カセット131内に通帳Tがセットされていない場合には、傾斜部133がプレスプレート132のストッパとなり、プレスプレート132の移動を規制する。
【0017】
キャリア124は、上下方向に設置された図示しないレール、アクチュエータ、駆動機構によって符号125で示す範囲内を上下動する。キャリア124は、媒体を収納した状態で媒体繰出しユニット121内を移動し、装置上部のインサータユニット122に媒体を搬送する。
媒体繰出しユニット121は、キャリア124に対向する部分に、通帳カセット131と同数のブラケット151が設けられている。ブラケット151は、キャリア124が備えるピン5が引っかかる部分である。
【0018】
図2を参照して、キャリア124の内部構造について説明する。キャリア124は、通帳カセット131A~131Jが並んだ並設方向(上下方向)に移動可能であり、各々の通帳カセット131まで移動して通帳カセット131から媒体を繰り出して内部に取り込む。キャリア124は、軸2と、アーム3と、繰出しローラ4と、ピン5とを有する。
【0019】
軸2は、側面視した場合にキャリア124の中央部分に位置し、左右方向に配置される。軸2は、図示しないアクチュエータ(駆動部)に接続されており、アクチュエータの駆動力によってα1,α2方向の角度を変更する。軸2には、ディテクタ6が固定されており、キャリア124の不動部分(例えば筐体)に固定されたフォトインタラプタ7の光軸7aを遮ることができるように配置されている。具体的には、
図2に示すように、繰出しローラ4が軸2よりも前方側に位置する場合にディテクタ6が光軸7aを遮っており、この状態から軸2が紙面で時計回り(α2方向)に回転して繰出しローラ4が軸2の下まで来た場合に、ディテクタ6が光軸7aを遮らないような構成になっている。このように、軸2の回転角度は、ディテクタ6とフォトインタラプタ7とによって検知できる。なお、軸2、アーム3および軸2に接続されるアクチュエータは、繰出しローラ4の「移動手段」の例示である。
【0020】
アーム3は、一方の端部(「基端」と呼ぶ場合がある)が軸2に固定され、他方の端部(「先端」と呼ぶ場合がある)には繰出しローラ4が設けられている。アーム3は、軸2が駆動することで軸2を中心にして揺動する(
図2のα1,α2方向に移動する)。言い換えると、アーム3は、前後に配置される通帳カセット131に繰出しローラ4が接触するように揺動する。アーム3をα1方向に移動させることで、繰出しローラ4が前側の通帳カセット131に収納される通帳T(
図1参照)に圧接する。また、アーム3をα2方向に移動させることで、繰出しローラ4が後側の通帳カセット131に収納される通帳T(
図1参照)に圧接する。
【0021】
繰出しローラ4は、左右方向に配置される回転軸4aを中心にして回転する回転体である。繰出しローラ4は、通帳カセット131に収納される通帳Tに圧接し、圧接した状態で回動することで、通帳Tがキャリア124内に引き込まれる。
【0022】
ピン5は、キャリア124の上下方向における位置決めのために使用される部材である。ピン5は、
図2の前後方向に配置されており、図示しないリンクによってアーム3に連結されている。ピン5は、アーム3の揺動に合わせて前後方向(
図2のβ1,β2方向)にスライドする。例えば、繰出しローラ4が前方(α1方向)に移動した場合に、ピン5は後方(β2方向)にスライドし、ピン5の後端部5bが後側のブラケット151の上に突き出される。また、繰出しローラ4が後方(α2方向)に移動した場合に、ピン5は前方(β1方向)にスライドし、ピン5の前端部5aが前側のブラケット151の上に突き出される。ピン5がブラケット151の上に突き出されることで、キャリア124の下方向への移動が規制される。具体的には、ピン5を介してキャリア124が自重でブラケット151に引っかかることで、上下位置が決まるようになっている。
【0023】
図2に示す制御部128は、媒体繰出装置100(媒体繰出しユニット121を含む)の動作を制御する。制御部128は、CPU(Central Processing Unit)、メモリなどで構成されており、メモリに格納されたプログラムを実行することにより、媒体繰出装置100の動作に必要な機能を実現する。
【0024】
制御部128は、通帳Tを繰り出すときの軸2の基準となる回転角度A(「基準位置A」と表記する場合がある)、回転角度A(基準位置A)の補正値B、および補正値Bを算出するために使用される回転角度C(「調整位置C」と表記する場合がある)を有している。基準位置A、調整位置Cは、固定値であり、予め制御部128に記憶されている。基準位置Aは、例えば設計図に基づいた場合に、通帳Tを繰出すための理想的な繰出しローラ4の位置(繰出しローラ4がプレスプレート132を少しだけ押し込んだ位置)である。調整位置Cは、例えば設計図に基づいた場合に、繰出しローラ4とプレスプレート132とがわずかに接触する位置である。調整位置Cは、後述する位置調整動作の基準となる位置である。一方、補正値Bは、変動値であり、例えば媒体繰出装置100の製造時に初期値が設置され、保守作業を行う作業者などが後述する位置調整動作を行うことによって更新される。補正値Bは、通帳カセット131A~131J毎に設定される値であり、製造における寸法のばらつきや使用による部材の消耗などが反映された値となる。制御部128は、通帳Tの繰り出しを行う場合に、基準位置Aと補正値Bとの和を基にしてアクチュエータを駆動する。つまり、繰出し時における繰出しローラ4の実際の繰出し位置Dは、基準位置Aおよび補正値Bに基づいて決定される。なお、基準位置Aや調整位置Cは、複数の通帳カセット131で共通の値(全ての通帳カセット131を含む)、および通帳カセット131A~131J毎に特有の値の何れでもあってよい。
【0025】
<実施形態に係る媒体繰出装置の動作について>
図1ないし
図3を参照して、媒体繰出装置100の動作を説明する。ここで説明する媒体繰出装置100の動作には、「イニシャル動作」、「繰出しローラの位置調整動作」、「通帳の繰り出し動作」がある。
図3は、繰出しローラの位置調整動作における画面例である。
【0026】
(イニシャル動作)
媒体繰出装置100を起動した際には、イニシャル動作が行われる。イニシャル動作は、繰出しローラ4の原点出し動作であり、キャリア124内の構成要素だけで完結する動作である。イニシャル動作の開始時に、例えばディテクタ6が光軸7aを遮っている場合を想定する(
図2参照)。この場合、制御部128は、図示されないアクチュエータにより軸2を時計回り(
図2のα2方向)に回転させ、光軸7aを遮らなくなった時点での位置を原点として設定し、制御部128に保存する。そして、制御部128は、ピン5を後側のブラケット151の上まで移動させるために、原点から予め設定されているホームポジション位置まで軸2を反時計回り(
図2のα1方向)に回転させる。この動作中、キャリア124は、図示されないアクチュエータによって、ピン5がブラケット151に自重で引っかかる位置より少し上の位置でホバリングした状態で位置制御されている。繰出しローラ4がホームポジションまで移動したあとに、アクチュエータの駆動を停止し、キャリア124が自重で落下してピン5が後側のブラケット151に引っかかって停止し、イニシャル動作完了となる。
【0027】
(繰出しローラの位置調整動作)
繰出しローラ4の位置調整動作は、イニシャル動作が完了した後であって、通帳カセット131から通帳Tを全て取り出した状態で行われる。繰出しローラ4の位置調整動作は、通帳カセット131毎に行われ、例えば通帳カセット131の数だけ繰り返し行われる。
【0028】
最初に、制御部128は、ホームポジションから調整位置Cまで軸2を回転させる。このとき、補正値Bには例えば「0(ゼロ)」が設定されている。次に、制御部128は、繰出しローラ4とプレスプレート132とが接触しているかの確認を促す確認画面200(
図3参照)を、タッチディスプレイ127に表示する。確認画面200は、繰出しローラ4とプレスプレート132とが接触している場合に選択される接触ボタン201と、非接触の場合に選択される非接触ボタン202を有する。作業者は、確認画面200に従って、繰出しローラ4とプレスプレート132とが接触しているかどうかを確認する。確認方法は、プレスプレート132を前側(通帳カセット131の奥側)へ手で動かした後に、プレスプレート132から手を離してプレスプレート132が繰出しローラ4へ接触する瞬間の繰出しローラ4の挙動を確認することで接触の有無を判定する。
【0029】
接触していれば繰出しローラ4がプレスプレート132に押されて回転することが目視確認でき、接触していなければ繰出しローラ4は全く回転しないことが目視確認できる。この方法により、作業者は、接触の有無を判定して、接触していれば接触ボタン201を選択して“はい”を入力し、接触していなければ非接触ボタン202を選択して“いいえ”を確認画面200から入力する。
【0030】
位置調整を開始してから“接触していますか”の表示が初めて出たときに“はい”が入力された場合は、繰出しローラ4がプレスプレート132から離れるように補正値Bを所定量だけ変化させて軸2を時計回り(
図2のα2方向)に回転させる。タッチディスプレイ127には、
図3に示す確認画面200の表示が再度行われ、作業者は接触の有無を再判定してタッチディスプレイ127へ“はい”または“いいえ”を入力する。“いいえ”が入力されるまでは、上記動作を繰り返すが、“いいえ”が入力されると一回前の確認時の補正値Bが繰出しローラ4とプレスプレート132とが接触しだす位置となるため、補正値Bに一回前の値を設定して調整完了となる。
【0031】
位置調整を開始したときに“いいえ”が入力された場合は、繰出しローラ4がプレスプレート132に近づくように補正値Bを所定量だけ変化させて軸2を反時計回り(
図2のα1方向)に回転させる。作業者により“はい”が入力されるまでは上記動作を繰り返すが、“はい”が入力されると現在の補正値Bが繰出しローラ4とプレスプレート132とが接触しだす位置となるため、初めに“はい”が入力された場合とは違いそのまま調整完了となる(つまり、今回の位置調整動作の値が補正値Bとなる)。
【0032】
ここまで説明した位置調整動作は、全ての通帳カセット131A~131Jで実行され、算出された通帳カセット131A~131J毎の補正値Bは制御部128に記憶される。これにより、製造における寸法のばらつきや使用による部材の消耗などを考慮した適切な繰出し位置を、通帳カセット131A~131J毎に特定することが可能になる。
【0033】
(通帳の繰り出し動作)
上位のアプリケーションから通帳Tを繰り出すよう指示が出たときには、制御部128は、指定の通帳カセット131の位置へキャリア124を移動させ、繰出しローラ4を繰出し位置D(つまり、基準位置Aと補正値Bとの和)へ移動させる。そして、繰出しローラ4を通帳Tへ圧接して回転させることで通帳Tを繰り出してキャリア124に取り込ませる。キャリア124は、インサータユニット22へ通帳Tを受け渡し、印字ユニット123で印字等の処理が行われる。
【0034】
以上のように、本実施形態に係る媒体繰出装置100によれば、通帳Tが繰り出されるときの繰出しローラ4の実際の繰出し位置Dは、基準位置Aおよび補正値Bを基にして決定される。基準位置Aおよび補正値Bを基にした繰出し位置Dは、製造における寸法のばらつきや使用による部材の消耗などが反映されているので、
図4に示すように繰出しローラ4と通帳Tとの摩擦力を発生させるためにプレスプレート132を少しだけ押し込んだ位置となる(
図4では押し込み量に符号Hを付している)。そして、繰出し位置Dを特定するために用いられる補正値Bの算出は、調整位置Cを用いて繰出しローラ4とプレスプレート132とが接触しているか非接触であるかを判定することによって行われる。
したがって、専用の治具を使用しなくても繰出しローラ4の位置調整が可能であり、金融機関等の現地での急な位置調整が発生しても即座に対応することができる。また、調整時に作業者が誤って多大な補正値Bを入力することを抑制できるので、部品が破損することを防止することができる。
【0035】
[比較例]
比較例として、
図5を参照して、治具を用いた従来の補正値Bの設定について説明する。補正値Bは、図示されないインターフェースにより任意の値に設定可能だが、繰出しローラ4の位置調整を行う作業者は、繰出しローラ4と治具300との位置関係を目視確認することによって補正値Bを設定する。
治具300は、治具300に空けられた穴が通帳カセット131の位置決め用ピン134とその上に配置される通帳カセット131の位置決めピン135に挿さることで位置が決まる。作業者は、治具300に設けられた傾斜部301に繰出しローラ4が当たりだす位置を目視確認して補正値Bを設定していた。
この作業中に入力ミスによって補正値Bに大きな値を設定してしまうと、治具300に対して繰出しローラ4が大きくめり込むことになり、繰出しローラ4の破損、繰出しローラ4の駆動機構の破損が発生することが問題となる。
【0036】
以上、本発明の各実施形態について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、特許請求の範囲の趣旨を変えない範囲で実施することができる。
例えば、実施形態では、通帳を扱う装置として説明したが、装置内に紙葉類などの媒体の収納部を複数有する装置であり、分離ユニットが収納部から独立している装置であれば、どんな媒体を扱う装置にも適用可能である。
また、実施形態に記載の各構成要素の一部を組合せ/省略しても良い。
【符号の説明】
【0037】
2 軸(移動手段)
3 アーム(移動手段)
4 繰出しローラ
5 ピン
6 ディテクタ
7 フォトインタラプタ
100 媒体繰出装置
121 媒体繰出しユニット
122 インサータユニット
123 印字ユニット
124 キャリア
126 証書分離ユニット
127 タッチディスプレイ(表示部、操作部)
128 制御部
131A~131J,131 通帳カセット(収納部)
132 プレスプレート
133 傾斜部
151 ブラケット
T 通帳(媒体)
200 確認画面