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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022184568
(43)【公開日】2022-12-13
(54)【発明の名称】文房具ケース
(51)【国際特許分類】
   A45C 11/34 20060101AFI20221206BHJP
【FI】
A45C11/34 102A
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021092506
(22)【出願日】2021-06-01
(71)【出願人】
【識別番号】593093423
【氏名又は名称】クツワ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100089026
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 高明
(72)【発明者】
【氏名】橡尾 洋介
【テーマコード(参考)】
3B045
【Fターム(参考)】
3B045BA18
3B045CE07
3B045DA42
3B045EA02
3B045EA04
3B045EB05
3B045FC04
(57)【要約】
【課題】鉛筆等の収納物が外部から視認可能であり、製造効率の点でも優れた文房具ケースを提供する。
【解決手段】
文房具ケースは、表裏一対の凹部を有するケース本体と、ケース本体の幅方向一端面部を被覆して接合され、幅方向に折り曲げられた状態で一対の凹部を開閉可能に塞ぐ蓋部材とを有する。蓋部材は、面状に形成された芯材と、凹部に対して芯材の遠位側に配置され、芯材の表面側に当接して芯材を覆う表生地と、凹部に対して芯材の近位側に配置され、芯材の裏面側に当接して芯材を覆う内生地と、ケース本体の幅方向一端面部に対向して表生地の内側に配置される背板と、背板をケース本体の幅方向一端面部の厚さ方向に横断するとともに、幅方向一端面部の厚さ方向両端部を被覆して配置される補強材とを備え、芯材、表生地、内生地、背板および補強材は、透明又は半透明に形成され、補強材は、芯材と内生地との間に配置される。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
平面方形のトレー状であって、厚さ方向両側に文房具を収納可能な一対の凹部を有するケース本体と、
前記ケース本体の幅方向一端面部を被覆して接合され、幅方向に折り曲げられた状態で前記一対の凹部を開閉可能に塞ぐ蓋部材とを有し、
前記蓋部材は、
面状に形成された芯材と、
前記凹部に対して前記芯材の遠位側に配置され、前記芯材の表面側に当接して前記芯材を覆う表生地と、
前記凹部に対して前記芯材の近位側に配置され、前記芯材の裏面側に当接して前記芯材を覆う内生地と、
前記ケース本体の前記幅方向一端面部に対向して前記表生地の内側に配置される背板と、
面状に形成され、前記背板を前記ケース本体の幅方向一端面部において前記ケース本体の厚さ方向に横断するとともに、前記厚さ方向両端部を被覆して配置される補強材とを備えた文房具ケースであって、
前記芯材、前記表生地、前記内生地、前記背板および前記補強材は、透明又は半透明に形成され、
前記補強材は、前記芯材と前記内生地との間に配置されていることを特徴とする文房具ケース。
【請求項2】
前記ケース本体は、平面長方形状に形成され、
前記蓋部材は、前記ケース本体の一対の凹部を夫々被覆する一対の蓋部と、前記一対の蓋部の間に形成され、前記ケース本体の幅方向一端面部を被覆して接合される背部とにより構成され、
前記背板は、前記背部に配置されるとともに、前記芯材は、前記一対の蓋部のそれぞれを構成する一対の長方形板材からなり、各芯材の表面部および裏面部には、複数の凸条部が設けられていることを特徴とする、請求項1に記載の文房具ケース。
【請求項3】
前記背部において、前記補強材は、前記背板と前記内生地との間に配置されていることを特徴とする、請求項2に記載の文房具ケース。
【請求項4】
前記補強材は、前記ケース本体に前記蓋部材を取付可能に開設された孔部を有することを特徴とする、請求項3に記載の文房具ケース。
【請求項5】
前記内生地および前記表生地は、ポリ塩化ビニル(PVC)樹脂製であり、
前記芯材は、コポリエステル樹脂製であることを特徴とする、請求項1~4のいずれか一項に記載の文房具ケース。
【請求項6】
前記凸条部は、前記芯材の長さ方向に沿って形成されていることを特徴とする、請求項1~5のいずれか一項に記載の文房具ケース。
【請求項7】
前記補強材は、ポリウレタン製であることを特徴とする、請求項1~6のいずれか一項に記載の文房具ケース。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、開閉式の蓋部を備えた文房具ケースに関する。
【背景技術】
【0002】
鉛筆等の収納物を外部から視認可能な文房具ケースがあると便利である。しかし、従来、中皿のみが透明に作られたものや、透明な素材で文房具ケースを構成すると便利であるとの一般的な知見が存在するのみであり、収納物を外部から視認可能とするという目的の明確な認識のもとで作製された文房具ケースについては知られていなかった。特許文献1には、筆箱等の文房具部品をポリエステル共重合体により形成することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平08-034192号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1には、筆箱等の文房具部品をポリエステル共重合体により形成することの一般的な利点として、透明性に優れた文房具部品が得られるとの漠然とした記載があるのみで、文房具部品ないし筆箱の具体的な構成、つまり、筆箱のどの部分を透明にするか、そして、その透明部分をどのような構成として文房具ケースを作製するかを明確にする記載を見出すことはできない。
従って、特許文献1から得られるのは、筆箱等の文房具部品に好適に適用可能な素材に関する情報のみであり、筆箱等の具体的な構成に関する情報については何ら言及されていない。
【0005】
このような実情に鑑み、本発明は、鉛筆等の収納物が外部から視認可能であって使用者が使いやすく、外観品質に優れ、さらに製造効率の点でも優れた文房具ケースを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の発明にあっては、平面方形のトレー状であって、厚さ方向両側に文房具を収納可能な一対の凹部を有するケース本体と、ケース本体の幅方向一端面部を被覆して接合され、幅方向に折り曲げられた状態で一対の凹部を開閉可能に塞ぐ蓋部材とを有し、蓋部材は、面状に形成された芯材と、凹部に対して芯材の遠位側に配置され、芯材の表面側に当接して芯材を覆う表生地と、凹部に対して芯材の近位側に配置され、芯材の裏面側に当接して芯材を覆う内生地と、ケース本体の幅方向一端面部に対向して表生地の内側に配置される背板と、面状に形成され、背板をケース本体の幅方向一端面部においてケース本体の厚さ方向に横断するとともに、厚さ方向両端部を被覆して配置される補強材とを備えた文房具ケースであって、芯材、表生地、内生地、背板および補強材は、透明又は半透明に形成され、補強材は、芯材と内生地との間に配置されていることを特徴とする。
【0007】
請求項2に記載の発明にあっては、ケース本体は、平面長方形状に形成され、蓋部材は、ケース本体の一対の凹部を夫々被覆する一対の蓋部と、一対の蓋部の間に形成され、ケース本体の幅方向一端面部を被覆して接合される背部とにより構成され、背板は、背部に配置されるとともに、芯材は、一対の蓋部のそれぞれを構成する一対の長方形板材からなり、各芯材の表面部および裏面部には、複数の凸条部が設けられていることを特徴とする。
【0008】
請求項3に記載の発明にあっては、背部において、補強材は、背板と内生地との間に配置されていることを特徴とする。
【0009】
請求項4に記載の発明にあっては、補強材は、ケース本体に蓋部材を取付可能に開設された孔部を有することを特徴とする。
【0010】
請求項5に記載の発明にあっては、前記内生地および前記表生地は、ポリ塩化ビニル(「PVC」)樹脂製であり、前記芯材は、コポリエステル樹脂製であることを特徴とする。
【0011】
請求項6に記載の発明にあっては、前記凸条部は、前記芯材の長さ方向に沿って形成されていることを特徴とする。
【0012】
請求項7に記載の発明にあっては、前記補強材は、ポリウレタン製であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
請求項1に記載の発明によれば、蓋部材を構成する部材、つまり、芯材、表生地、内生地、背板および補強材がいずれも透明または半透明であり、ケース本体の内部である凹部を、蓋部材を通じて文房具ケースの外部から視認可能であることから、鉛筆等の収納物に不足がないことを、蓋部材を開けることなく閉じたままの状態で確認することが可能となる。その結果、学童の、いわゆる「忘れ物」を未然に防止することが可能となる。
また、従来の文房具ケースとは異なり、蓋部材が透明または半透明に形成されていることから、文房具ケースそのものの外観品質に優れ、使用者は好んで使用するようになる。
【0014】
さらに、補強材がケース本体の幅方向一端面部の厚さ方向両端部を被覆することから、開閉に伴う屈曲等の変形に対する蓋部材の耐性の向上を図るとともに、補強材が芯材と内生地との間に配置されていることから、補強材を文房具ケースの外部から過度に目立たせることのないようにすることが可能である。
【0015】
請求項2に記載の発明によれば、芯材が長方形板材からなり、芯材のうち、表生地および内生地に当接する表面部、裏面部に複数の凸条部が設けられていることから、複数の凸条部が表生地および内生地を通じて外部から視認可能となり、文房具ケースが有する外観の審美性の向上を図ることが可能である。
即ち、芯材と表生地及び内生地が双方ともに平滑な接着面同士であった場合には、製造作業において双方を密着させる場合に、慎重に密着させた場合であっても、接着面相互間に少量の空気が介在する部位が発生する場合がある。
このように空気が接着面に混入した場合には、外部からは気泡が小さな水溜まりのように視認される場合があり、外観品質確保の観点からは良好ではない事態があったが、本発明にあっては複数の凸条部が形成されていることから、芯材と表生地との接合の際の、接合部への空気の混入による気泡の形成を排除でき、かつ、複数の凸条部がデザイン上のアクセントとなることから、文房具ケースの外観品質の向上を図ることが可能となる。
【0016】
また、表生地および内生地の素材にポリ塩化ビニル(以下「PVC」と略す)樹脂を採用した場合には、ポリ塩化ビニルに含まれる可塑剤はプラスチック素材に溶融を生じさせる場合があり、このような事態を回避するために従来は、シボ加工を施し表面及び裏面が梨地に形成されたPVC樹脂製の表生地、内生地を使用しており透明性が損なわれるという問題があったが、本発明にあっては、芯材に複数の凸条部が形成されており、表生地及び内生地と芯材との間の接触面積を低減できることから、芯材の溶融の事態を回避することができ、表生地及び内生地の十分な透明性を確保することが可能となる。
【0017】
請求項3に記載の発明によれば、背部において、補強材が背板と内生地との間に配置されていることから、蓋部材を閉じた状態で文房具ケースを外部からみた場合に、補強材が背板の裏側に隠れた状態となり、背面部から見た場合に補強材をより目立たなくして、外観品質をより良好なものとすることが可能である。
【0018】
請求項4に記載の発明によれば、補強材に、ケース本体に蓋部材を取付可能に開設された孔部が備わることから、補強材が背板と内生地との間、つまり、補強材が背板よりもケース本体に近い位置に配置される構成にあっても蓋部材の作製後、蓋部材をケース本体に対して容易に取り付け、文房具ケースの製造を円滑に完了することが可能である。
【0019】
請求項5に記載の発明によれば、内生地および表生地がPVC樹脂製であり、芯材がコポリエステル樹脂製であり、コポリエステル樹脂は耐薬品性が高いことから、PVC樹脂に含まれる可塑剤の影響で芯材に溶融が生じるのを抑制することができる。その結果、蓋部材全体の透明性を良好に確保することが可能となり、外観品質を良好にすることが可能になるとともに、特に芯材がコポリエステル樹脂製であることから、耐衝撃性の点でも優れた文房具ケースを提供することが可能となる。
【0020】
請求項6に記載の発明によれば、凸条部が芯材の長さ方向に沿って形成されていることから、芯材全長のほぼ全体に亘って延在する凸条部が蓋部材の表生地を通じて外部から視認可能となり、これが文房具ケースの模様を形成し、外観の審美性の向上を図ることが可能である。
【0021】
請求項7に記載の発明によれば、補強材がポリウレタン製であることから、補強材に必要な透明性を確保しながら、蓋部材の折曲部またはヒンジ部分、具体的には、蓋部材の蓋部と背部との接合部の強度を確保し、比較的長期の使用にも耐え得る文房具ケースを提供することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1図1は、本発明の一実施形態に係る文房具ケースの平面図であり、文房具ケースの表側の外観を示す。
図2図2は、同上実施形態に係る文房具ケースの平面図であり、文房具ケースの表側に設けられた表側蓋部(蓋部材の蓋部)を開いた状態を示す。
図3図3は、同上実施形態に係る文房具ケースの底面図であり、文房具ケースの裏側に設けられた裏側蓋部(蓋部材の蓋部)を開いた状態で示す。
図4図4は、同上実施形態に係る文房具ケースに用いられる蓋部材の構成を示す分解斜視図である。
図5図5は、図4に示すA-A線に沿った断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下に図面を参照して、本発明の実施の形態について説明する。
【0024】
図1は、本発明の一実施形態に係る文房具ケース1の全体的な構成を示す平面図である。図2は、文房具ケース1を上方ないし表側から見た図であり、図3は、文房具ケース1を下方ないし裏側から見た図である。図2は、文房具ケース1を、表側蓋部31を開いた状態で示し、図3は、文房具ケース1を、裏側蓋部32を開いた状態で示す。
【0025】
図2および3を参照しながら、本実施形態に係る文房具ケース1について、図1により説明する。ここで、図1は、ケース本体2の凹部21およびこれに収まる収納物を二点鎖線により示し、文房具ケース1の蓋部材3全体、特に表側蓋部31、裏側蓋部32が透明または半透明であることから、凹部21、つまり、文房具ケース1の内部が蓋部材3を通じて外部から視認可能であることを示す。
【0026】
本実施形態では、文房具ケース1を、子どもが学校または家庭等で教材として使用する鉛筆またはペン、消しゴムおよび定規等の文房具セットを収納する収納具として構成される場合について説明する。しかし、文房具ケース1は、これに限らず、大人等、子ども以外の年齢層を対象とした収納具として構成することが可能であり、さらに、文房具セットではなく、鉛筆またはペンのみを収納する収納具や、定規のみを収納する収納具等、特定の文房具の収納を目的とした収納具として具現することも可能である。
【0027】
文房具ケース1は、ケース本体2と、ケース本体2に取り付けられ、ケース本体2の表側および裏側のそれぞれに設けられた一対の凹部21を塞ぐ蓋部材3とを備える。
【0028】
ケース本体2は、平面方形のトレー状をなし、その厚さ方向両側、つまり、表側および裏側のそれぞれに文房具を収納可能な凹部21を備える。凹部21は、大まかには、平板状の底面部211と、底面部211の全周縁部に設けられた側面部212とにより形成され、側面部212によりその端縁に形成される開口部を介して凹部21に文房具を収納することが可能である。
【0029】
本実施形態において、ケース本体2は、薄型直方体状をなし、凹部21として、ケース本体2の表側に形成された表側凹部21aと、裏側に形成された裏側凹部21bとを有する。
具体的には、表側凹部21aは、図2に示すように、底面部211と、側面部212のうち、底面部211の外周縁部にその全体に亘って上向きに延設された部分とにより形成され、側面部212の上端により長方形状の開口部が形成される。他方で、裏側凹部21bは、図3に示すように、底面部211と、側面部212のうち、底面部211の外周縁部にその全体に亘って下向きに延設された部分とにより形成され、側面部212の下端により同じく長方形状の開口部が形成される。
【0030】
本実施形態において、表側凹部21aは、複数の空間に分割して形成されており、異なる文房具の収納に対応可能である。具体的には、表側凹部21aは、鉛筆の収納を主な目的とする第1空間S1と、消しゴムの収納を主な目的とする第2空間S2と、その他の文房具の収納を目的とする第3空間S3とに分割されている。
これらの空間S1からS3は、収納対象物である文房具の大きさに合わせてその広さおよび深さが適宜に設定されている。他方で、裏側凹部21bは、分割されておらず、定規の収納を主な目的とする単一の空間S4として形成されている。表側凹部21aだけでなく、表側凹部21aと裏側凹部21bとの双方を複数の空間に分割することも可能であるし、表側凹部21aに代えて裏側凹部21bを分割することも可能である。
【0031】
蓋部材3は、ケース本体2とは別体に作製され、作製後、ケース本体2の幅方向一端面部22に取り付けられることにより、幅方向に折り曲げられた状態でケース本体2の表側凹部21aおよび裏側凹部21bを覆い、これらの凹部21a、21bを夫々開閉可能に塞ぐ。
【0032】
具体的には、蓋部材3は、ケース本体2全体に亘って平面方向に延在し、表側凹部21aを塞ぐ表側蓋部31と、ケース本体2全体に亘って平面方向に延在し、裏側凹部21bを塞ぐ裏側蓋部32と、表側蓋部31および裏側蓋部32の間に介在し、表側蓋部31と裏側蓋部32とを連接するとともに、ケース本体2に対し、その幅方向一端面部22を被覆して接合される背部33とを有する。
蓋部材3は、ケース本体2の幅方向一端面部22に対し、背部33を介して接合される。この状態で、表側蓋部31および裏側蓋部32は、いずれも背部33との接合部を中心として回動または屈曲可能な状態にある。
【0033】
図4は、本実施形態に係る文房具ケース1に用いられる蓋部材3の構成部材を示す分解斜視図であり、図5は、図4に示すA-A線に沿った蓋部材3の芯材301(第1芯材301a)の断面図である。
【0034】
本実施形態において、蓋部材3は、芯材301と、表生地302と、内生地303と、背板304と、補強材305とにより構成され、これらの部材301~305を図4に示す順序で重ね合わせ、適宜箇所に熱溶着を施すことにより互いに接合する。熱溶着を施す箇所は、例えば、表生地302および内生地303の外周縁部であり、さらに、表側蓋部31の芯材(第1芯材)301aと背板304との間の接合領域、裏側蓋部32の芯材(第2芯材)301bと背板304との間の接合領域である。
【0035】
芯材301は、平面長方形状の単一の板状部材として形成され、芯材301として、表側蓋部31および裏側蓋部32を構成する一対の芯材、つまり、第1芯材301aおよび第2芯材301bにより構成される。
第1芯材301aは、表側蓋部31全体に亘って平面方向に延在し、表生地302および内生地303の対応部分とともに表側蓋部31を構成する。第2芯材301bは、裏側蓋部32全体に亘って平面方向に延在し、表生地302および内生地303の対応部分とともに裏側蓋部32を構成する。本実施形態において、第1および第2芯材301a、301bは、いずれも再生コポリエステル(商標名:「ペプロレン」)樹脂製であり、互いに同一の平面および断面形状を有する。
【0036】
表生地302は、蓋部材3の平面方向全体に及ぶ面積を有するシート状をなし、ケース本体2の凹部21に対して芯材301の遠位側に配置され、芯材301の表面側に当接して芯材301全体を表側から被覆する。本実施形態において、表生地302は、PVC樹脂製であり、蓋部材3の最外層を形成する。
【0037】
内生地303は、表生地302と同様に蓋部材3の平面方向全体に及ぶ面積を有するシート状をなし、ケース本体2の凹部21に対して芯材301の近位側に配置され、芯材301の裏面側に当接して芯材301全体を裏側から被覆する。本実施形態において、内生地303は、PVC樹脂製であり、蓋部材3の最内層を形成する。
【0038】
ここで、芯材301a、301bは、表生地302の裏面ないし下面の方向に向く表面部s1と、内生地303の裏面ないし上面の方向に向く裏面部s2とを有し、表面部s1および裏面部s2のそれぞれに、芯材301a、301bから離れる方向に凸となる複数の凸条部p1を有する。芯材301a、301bは、これら複数の凸条部p1を介して表生地302、内生地303に当接する。
換言すれば、本実施形態において、芯材301a、301bは、凸条部p1を除く他の部分では、表生地302および内生地303に対して非接触の状態にある。
【0039】
図5は、本実施形態に係る凸条部p1の構成を、第1芯材301aに設けられる凸条部p1を例に、図4に示すA-A線に沿った断面により示す。先に述べたように、第1芯材301aと第2芯材301bとは、互いに同一の断面形状を有することから、各芯材301a、301bの幅方向における凸条部p1の位置は、第1芯材301aと第2芯材301bとで同一である。
【0040】
本実施形態において、凸条部p1は、互いに平行に延設された複数のリブ部として形成され、図4に示すように、平面長方形状の第1芯材301aの長さ方向全体に亘って延在する。凸条部p1は、芯材301aの表面部s1および裏面部s2の双方に形成され、表面部s1の凸条部p1と裏面部s2の凸条部p1とは、互いに同一の幅方向位置にあり、第1芯材301aの平面に対して垂直な方向において、互いに重なり合う位置にある。これに限らず、表面部s1の凸条部p1と裏面部s2の凸条部p1とは、互いに対して幅方向にずれた位置にあってもよい。
【0041】
図4に示すように、背板304は、細長長方形状の薄型板材として形成され、表生地302の内側において、表生地302の幅方向中央の位置で、第1芯材301aと第2芯材301bとに挟まれた状態で配置され、本実施形態では、表生地302の裏面に当接した状態で配置される。
これにより、文房具ケース1において、背板304は、ケース本体2の幅方向一端面部22に対向して配置される。ここで、図4は、表生地302を内生地303の下方に示しており、よって、図4の上側が蓋部材3の裏側、つまり、ケース本体2に対する近位側となる。本実施形態において背板304はポリプロピレン(PP)製である。
【0042】
さらに、背板304は、長さ方向の所定位置に、ケース本体2に対する取り付けのための孔部を有する。
【0043】
補強材305は、背板304よりも幅が広く、面状に、具体的には、背板304とほぼ同じ長さの長形シート状に形成され、蓋部材3の背部33において、背板304と内生地303との間に配置される。本実施形態では、第1芯材301a、第2芯材301bおよび背板304が横並びに配置されることから、補強材305の位置は、芯材301a、301bと内生地303との間である。
補強材305は、背板304をその幅方向、換言すれば、ケース本体2の幅方向一端面部22においてケース本体2の厚さ方向に横断するのに充分な幅を有し、文房具ケース1の作製後、ケース本体2の幅方向一端面部22の厚さ方向両端部22a、22b(図2、3)のそれぞれを被覆する。これにより、表側蓋部31および裏側蓋部32の開閉に伴う蓋部材3の屈曲に対する耐性が高められる。本実施形態において、補強材305は、ポリウレタン製である。
【0044】
さらに、補強材305は、ケース本体2に対する取り付けのため、背板304に形成された孔部と同じ長さ方向の位置に複数の孔部h1を有する。補強材305の孔部h1は、背板304の孔部および内生地303の孔部とともに、ケース本体2の幅方向一端面部22に対する取付孔部を形成する。ケース本体2の幅方向一端面部22に形成された鉤部(図示せず)がこの取付孔部に係合することから、ケース本体2に孔部h1が開設された背板304が固定され、これによりケース本体2と蓋部材3とが接合される。
【0045】
第1芯材301a、第2芯材301b、背板304および補強材305が表生地302、内生地303により上下から挟み込まれ、適宜箇所における熱溶着により接合されることから、蓋部材3が形成される。本実施形態では、第1芯材301a、第2芯材301b、表生地302、内生地303、背板304および補強材305がいずれも透明または半透明であることから、蓋部材3は、その全体が透明または半透明に形成され、厚さ方向に視覚的な透過性を有する。その結果、文房具ケース1は、凹部21、即ち、その内部が蓋部材3を通じて外部から視認可能となっている。
【0046】
図1図2および3に示すように、ケース本体2は、側面部212のうち、幅方向一端面部22である長辺部とは反対側の長辺部に、磁石部2aが設けられている。磁石部2aの構成は、磁石吸着式の従来の文房具ケースないし筆箱に採用されるものと同様であり、その詳細な説明を省略する。
【0047】
これに対し、表側蓋部31および裏側蓋部32は、これらの蓋部31、32を閉じた際に磁石部2aに当接する部位に、磁石部2aに磁気吸着可能な磁着体31a、32aが設けられている。磁着体31a、32aは、金属等の磁性材から作製することが可能であり、表側蓋部31、裏側蓋部32は、磁着体31a、32aがケース本体2の磁石部2aに磁気吸着することから、凹部21a、21bを塞いだ状態でケース本体2に固定される。他方で、磁着体31a、32aを磁石部2aから離すことにより磁着体31a、32aの磁石部2aへの磁気吸着を解消した場合には、表側蓋部31、裏側蓋部32の当接部位がケース本体2から離間し、表側蓋部31又は裏側蓋部32が開き、凹部21a、21bが開放される。
【0048】
以上に加え、本実施形態では、表側蓋部31の裏面に、透明または半透明な素材からなるポケット部311をさらに備えることから、透明または半透明であることに基づく外観の優位性を保ちながら、ポケット部311に定規または時間割を入れたり、メモを入れたり、シール等を挟み、外方から視認して装飾的効果を楽しんだりすることが可能となる。
ポケット部311は、表側蓋部31に代えて裏側蓋部32の裏面に設けたり、表側蓋部31と裏側蓋部32との双方の裏面に設けたりすることも可能である。ポケット部311に適用可能な素材として、PVC樹脂を例示することができる。
【0049】
本実施形態に係る文房具ケース1は、以上のように構成され、本実施形態により得られる作用及び効果について以下に説明する。
【0050】
第1に、蓋部材3を構成する部材、つまり、芯材301(301a、301b)、表生地302、内生地303、背板304および補強材305がいずれも透明または半透明であることから、ケース本体2の内部である凹部21(21a、21b)を、蓋部材3を通じて文房具ケース1の外部から透視可能である。
これにより、鉛筆等の収納物に忘れ物がないか否かを、蓋部材3を開けることなく、閉じたままの状態で確認することが可能となる。そして、凹部21が透視可能であり、収納物が視認可能であることから、表側蓋部31又は裏側蓋部32のいずれを開けて収容物を取り出すか又は収納するか、の判断が容易にできる。
【0051】
さらに、強度の高いポリウレタン製の補強材305がケース本体2の幅方向一端面部22の厚さ方向両端部22a、22bを被覆することから、開閉に伴う屈曲等の変形に対する蓋部材3の耐性の向上を図るとともに、補強材305が芯材301と内生地303との間に配置されていることから、補強材305を文房具ケース1の外部に目立たせることがない。
【0052】
また、従来製品とは異なり、芯材301が単一の部材からなることから、加工および組み立てが容易であり、製造効率の点でも有利な文房具ケース1を提供することができる。
【0053】
第2に、芯材301が長方形板材からなり、芯材301のうち、表生地302および内生地303に当接する表面部s1、裏面部s2に凸条部p1が設けられていることから、凸条部p1が表生地302および内生地303を通じて外部から視認可能となり、文房具ケース1が有する外観の審美性の向上、外観品質の向上を図り、需要を喚起することが可能である。
【0054】
また、芯材301の表面部s1および裏面部s2に設けられた複数の凸条部p1により、表生地302および内生地303に対する芯材301の接触面積の減少を図り、接着時における接着面間への空気の介入による気泡の発生を排除して外観品質の向上を図っている。
即ち、芯材301と表生地302及び内生地303が双方ともに平滑な接着面同士であった場合には、製造作業において、芯材301と表生地302及び内生地303を密着させる場合に、慎重に密着させた場合であっても、接着面相互間に少量の空気が介在する部位が発生する場合がある。
このように空気が接着面に混入した場合には、文房具ケース1の外部からは、表生地302及び内生地303を通して、気泡が小さな水溜まりのように視認される場合があり、外観品質向上の観点からは良好ではない事態があったが、本実施の形態にあっては芯材301a、301bに複数の凸条部p1が形成され、凸条部p1により内生地303及び表生地302とに接着するように構成されており、芯材301と表生地302及び内生地303との接合の際の、接合部への空気の混入による気泡の形成を排除できるため文房具ケースの外観品質の向上を図ることが可能となる。
【0055】
さらに、表生地302および内生地303の素材にPVC樹脂を採用した場合には、ポリ塩化ビニルに含まれる可塑剤は、空気が少ない環境下で他のプラスチック素材と触れ続けると、そのプラスチック素材に溶融を生じさせる場合がある。
しかしながら、本実施の形態にあっては、芯材301a、301bは再生コポリエステル(商標名:「ペプロレン」)樹脂製であり、再生コポリエステル(商標名:「ペプロレン」)樹脂は高い耐薬品性を有し、かつ、本実施の形態にあっては、芯材301a、301bに複数の凸条部p1が形成されており、表生地302及び内生地303と芯材p1との間の接触面積を低減できることから、芯材p1の溶融の事態を回避することができ、表生地302及び内生地303の十分な透明性を確保することが可能となる。
また、再生コポリエステル(商標名:「ペプロレン」)樹脂は耐衝撃性に富むことから、タフな使用に耐え、より耐久性を有する文房具ケース1を提供することが可能となる。
また、従来の製品では、シボ加工を施し表面及び裏面が梨地に形成されたPVC樹脂製の表生地302、内生地303を使用していたが透明性が損なわれるという問題があった。
しかしながら、本実施の形態にあっては、芯材301a、301bに複数の凸条部p1が形成されていることから、十分な透明性を確保することが可能となる。
さらに、凸条部p1の形成により、製造の過程で付いたりまたは入り込んだりすることのあるキズやほこりを目立たなくすることも可能となる。
【0056】
第3に、背部33において、補強材305が背板304と内生地303との間に配置されていることから、蓋部材3を閉じた状態で文房具ケース1をその外部から視認した場合に、補強材305が背板304の裏側に隠れた状態となることから、外観品質をより良好なものとすることが可能となっている。
この点、従来は、補強材305としてターポリン(繊維入りの塩化ビニルシート)製のメッシュ状の部材を用い、これを表生地302と芯材301、背板304との間に挟み込んだ構成としていたが、このようなメッシュ状の素材からなる部材は本件のような透明性を有する蓋部材には美観の観点から適切ではなく、本実施の形態の構成により外観品質の良好な製品構成とすることが可能となる。
【0057】
第4に、補強材305に、ケース本体2に蓋部材3を取付可能に開設された孔部h1が備わることから、補強材305が背板304と内生地303との間、即ち、補強材305が背板304よりもケース本体2に近い位置に配置された状態で蓋部材3の作製後、蓋部材3をケース本体2に対して容易に取り付け、文房具ケース1の製造を円滑に完了することが可能である。
【0058】
第5に、表生地302および内生地303がPVC樹脂製であり、芯材301が再生コポリエステル(商標名:「ペプロレン」)樹脂製であることから耐衝撃性、耐薬品性及び透明性に優れ、PVC樹脂に含まれる可塑剤の影響で芯材301に溶融が生じるのを抑制する効果と相まって、蓋部材3全体の透明性を良好に確保することが可能となる。
【0059】
第6に、凸条部p1が芯材301の長さ方向に沿って形成されていることから、芯材301全長のほぼ全体に亘って延在する凸条部p1が蓋部材3の表生地302を通じて外部から視認可能となり、これが文房具ケース1の模様を形成し、外観の審美性の向上を図ることが可能である。
【0060】
第7に、補強材305がポリウレタン製であることから、透明性を確保しながら、蓋部材3の折曲部またはヒンジ部分、具体的には、蓋部材3のうち、表側蓋部31と背部33との接合部および裏側蓋部32と背部33との接合部に必要な強度を確保し、比較的長期の使用にも耐え得る文房具ケース1を提供することが可能である。
【0061】
以上の説明では、図5(a)に示すように、芯材301の凸条部p1としてリブ部を採用した。凸条部p1は、これに限定されるものではなく、他の形態または断面形状のものとすることが可能である。リブ部に代替可能な凸条部p1として、図5(b)に示すように、断面三角形状の凹凸部を例示することができる。このように、凸条部p1の形態または断面形状は、文房具ケース1の外観に関して凸条部p1が使用者に及ぼす印象を考慮して、適宜のものに変更可能である。
【符号の説明】
【0062】
1…文房具ケース
2…ケース本体
2a…磁石部
3…蓋部材
21…凹部
22…幅方向一端面部
22a、22b…厚さ方向端部
311…ポケット部
21a…表側凹部
21b…裏側凹部
31…表側蓋部
32…裏側蓋部
33…背部
31a…磁着体
32a…磁着体
図1
図2
図3
図4
図5