(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022184606
(43)【公開日】2022-12-13
(54)【発明の名称】和風スナック用ミックス粉
(51)【国際特許分類】
A21D 10/02 20060101AFI20221206BHJP
A23G 3/34 20060101ALI20221206BHJP
A21D 2/18 20060101ALI20221206BHJP
A21D 2/36 20060101ALI20221206BHJP
A21D 13/40 20170101ALI20221206BHJP
A23G 3/42 20060101ALI20221206BHJP
【FI】
A21D10/02
A23G3/34 102
A21D2/18
A21D2/36
A21D13/40
A23G3/42
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021092551
(22)【出願日】2021-06-01
(71)【出願人】
【識別番号】000227489
【氏名又は名称】日東富士製粉株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000800
【氏名又は名称】特許業務法人創成国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】徳永琴美
(72)【発明者】
【氏名】斉藤学志
(72)【発明者】
【氏名】清慎一郎
(72)【発明者】
【氏名】高柳雅義
(72)【発明者】
【氏名】大島秀男
【テーマコード(参考)】
4B014
4B032
【Fターム(参考)】
4B014GE03
4B014GG02
4B014GG03
4B014GG06
4B014GG07
4B014GK08
4B014GK09
4B014GL11
4B014GP15
4B014GQ08
4B032DB35
4B032DB40
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4B032DG02
4B032DG08
4B032DK03
4B032DK12
4B032DK15
4B032DK17
4B032DK32
4B032DK66
4B032DP50
(57)【要約】
【課題】焼き上げ時間を短縮できる和風スナック用ミックス粉を提供する。
【解決手段】この和風スナック用ミックス粉は、熱処理小麦粉を含む小麦粉と、米粉及び/又は澱粉と、増粘剤とを含有する。また、膨張剤を含有することが好ましい。更に、小麦粉中に熱処理小麦粉を10~50質量%含有し、小麦粉100質量部に対し、米粉及び/又は澱粉を5~20質量部、増粘剤として、アルギン酸エステル及び/又はアルギン酸塩を0.05~0.5質量部含有することが好ましい。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱処理小麦粉を含む小麦粉と、米粉及び/又は澱粉と、増粘剤とを含有する和風スナック用ミックス粉。
【請求項2】
更に、膨張剤を含有する、請求項1記載の和風スナック用ミックス粉。
【請求項3】
前記小麦粉中に前記熱処理小麦粉を10~50質量%含有し、前記小麦粉100質量部に対し、前記米粉及び/又は澱粉を5~20質量部、前記増粘剤として、アルギン酸エステル及び/又はアルギン酸塩を0.05~0.5質量部含有する、請求項1又は2記載の和風スナック用ミックス粉。
【請求項4】
型焼する和風スナック用のミックス粉である、請求項1~3のいずれか1項に記載の和風スナック用ミックス粉。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、鯛焼き、今川焼(大判焼き、回転焼きともいう)、人形焼き、もみじ饅頭等の和風スナックに適用される和風スナック用ミックス粉に関する。
【背景技術】
【0002】
鯛焼き、今川焼(大判焼き、回転焼きともいう)、人形焼き、もみじ饅頭等の和風スナックは、小麦粉に水、卵等を加えて調製した生地を焼型に流し込んで焼成することによって製造される。
【0003】
上記のような和風スナック用のミックス粉として、下記特許文献1には、米粒又は米粉に、圧縮力、衝撃力、摩擦力及び剪断力から選ばれる少なくとも1種を加えることによって製造され、膨潤度が4.5以上で、アミログラフ糊化最高粘度が500BU以下とされた改質米粉を含有することを特徴とする焼き饅類用ミックス粉が開示されている。
【0004】
また、下記特許文献2には、タピオカ澱粉、馬鈴薯澱粉、小麦粉澱粉のうちから任意に選択された一種類または二種類以上を材料とし、エーテル化、エステル化、アセチル化、架橋、酸化またはこれら加工処理を組み合わせた加工処理、あるいは、さらにα化処理を組み合わせた加工処理を施してなる加工澱粉および/または馬鈴薯澱粉を、原料全体のうち50~99重量%を含み、かつその内、エーテル化タピオカ澱粉および/またはアセチル化タピオカ澱粉が30重量%以上であり、油脂類を原料全体のうち1~10重量%、糖類を原料全体のうち10重量%以下配合した原料に水を加えて混合し液状生地を作製後、焼成することを特徴とする、焼型に入れて焼成する焼き菓子の製造方法が開示されている。
【0005】
更に、下記特許文献3には、鯛焼き、大判焼き、タコ焼き、及びお好み焼きより選ばれた1種である和風スナックに用いられる生地組成物であって、小麦粉と、10~80メッシュの難溶性粒状粉体と、HLB7~11である乳化剤と、タピオカ澱粉、馬鈴薯澱粉、米粉及びそれらの化工品からなる群より選ばれた1種以上を含有することを特徴とする和風スナック用生地組成物が開示されている。
【0006】
更に、下記特許文献4には、澱粉、米粉と小麦粉をそれぞれの比率が澱粉30~80質量部、米粉10~60質量部、小麦粉10~60質量部となるように混合し、該混合物を焙煎することを特徴とする焼き物用穀粉組成物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2010-104245号公報
【特許文献2】特許第3634857号公報
【特許文献3】特許第4165988号公報
【特許文献4】特許第5366218号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
生地を焼型に流し込んで焼成する和風スナック用ミックス粉においては、焼き上げ時間が生産性に影響し、焼き上げ時間が短いものが求められている。
【0009】
しかしながら、従来の和風スナック用ミックス粉では、焼き上げ時間が長い傾向があり、短時間で焼き上げようとすると、生焼けとなって、食感や風味が低下しやすいという問題があった。
【0010】
したがって、本発明の目的は、焼き上げ時間を短縮できる和風スナック用ミックス粉を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、上記目的を達成するため鋭意研究した結果、熱処理粉を含む小麦粉と、米粉及び/又は澱粉と、増粘剤とを含有するミックス粉を用いることにより、焼き上げ時間を短縮しても、生焼けになりにくいことを見出し、本発明を完成するに至った。
【0012】
すなわち、本発明の和風スナック用ミックス粉は、熱処理粉を含む小麦粉と、米粉及び/又は澱粉と、増粘剤とを含有することを特徴とする。
【0013】
本発明においては、更に、膨張剤を含有することが好ましい。
【0014】
また、前記小麦粉中に前記熱処理小麦粉を10~50質量%含有し、前記小麦粉100質量部に対し、前記米粉及び/又は澱粉を5~20質量部、前記増粘剤として、アルギン酸エステル及び/又はアルギン酸塩を0.05~0.5質量部含有することが好ましい。
【0015】
更に、型焼する和風スナック用のミックス粉であることが好ましい。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、焼き上げ時間が短く、生焼けになりにくい和風スナック用ミックス粉を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の和風スナック用ミックス粉は、熱処理小麦粉を含む小麦粉と、米粉及び/又は澱粉と、増粘剤とを含有する。以下、それぞれの原料について、詳しく説明する。
【0018】
小麦粉としては、薄力粉、中力粉、強力粉など、一般的な小麦粉を用いることができるが、特に薄力粉が好ましい。
【0019】
本発明では、熱処理小麦粉を含有させる。熱処理小麦粉は、焼き上げ時間を短縮させる効果を有している。熱処理小麦粉は、公知の方法により製造することができる。具体的には乾熱加熱、湿熱加熱が挙げられる。例えば、乾熱加熱では、原料に加水を行わずに加熱を行う。乾熱加熱に用いられる装置としては、回転釜、焙煎釜、パドルドライヤー、熱風乾燥機、棚式乾燥機等を用いることができる。また、湿熱加熱では、原料の水分含量が13~16質量部程度となるように適宜加水し水分を調整した後、熱した密閉容器内で加熱を行う。あるいは加熱蒸気が含まれる容器中で加熱を行う。湿熱加熱に用いられる装置としては、密閉式加熱装置、ボックス式蒸し器等を用いることができる。その加熱条件に特に制限はないが、例えば、回転釜等の加熱容器に入れて、撹拌しながら、最終品温が100~120℃になるように、加熱時間がトータルで好ましくは30~60分間になるように加熱する等によってなされる。また、回転釜等の加熱容器を用いる態様に限らず、例えば、回転ドラムに原料を入れて、熱風を吹込みながら加熱する方法等、各種の態様を採用することができる。熱処理は、ウェットグルテンが採取できない状態まで熱処理するのが好ましい。本発明で用いる熱処理小麦粉は、小麦粉を上記のような方法で熱処理したものでもよく、原料小麦を上記のような方法で熱処理し、該小麦を粉砕して小麦粉としたものでもよい。
【0020】
また、熱処理小麦粉としては、下記方法により測定されるグルテンバイタリティが10~50%であるものが好ましく、10~40%であるものがより好ましい。
【0021】
ここで、グルテンバイタリティは、例えば特開2002-291448号公報の段落番号[0008]~[0013]記載の方法に準じて、求めることができる。具体的には、下記の通りである。
【0022】
(1)小麦粉の可溶性粗蛋白質含量の測定:
(a)100mL容のビーカーに試料(小麦粉)を2g精秤して入れる。
(b)上記のビーカーに0.05規定酢酸40mLを加えて、室温で60分間撹拌して懸濁液を調製する。
(c)上記(b)で得た懸濁液を遠沈管に移して、5000rpmで5分間遠心分離を行った後、濾紙を用いて濾過し、濾液を回収する。
(d)上記で用いたビーカーを0.05規定酢酸40mLで洗って洗液を遠沈管に移して、5000rpmで5分間遠心分離を行った後、濾紙を用いて濾過し、濾液を回収する。
(e)上記(c)および(d)で回収した濾液を一緒にして100mLにメスアップする。
(f)フォス・ジャパン社の「ケルテックオートシステム」(商品名)のケルダールチューブに上記(e)で得られた液体の25mLをホールピペットで入れて、分解促進剤(日本ゼネラル株式会社製「ケルタブC」;硫酸カリウム:硫酸銅=9:1(重量比))1錠および濃硫酸15mLを加える。
(g)アクタック社の分解炉(型番:DK20)を用いて、200℃で1時間分解処理を行い、さらに420℃で1時間分解処理を自動的に行った後、この分解処理に続いて連続的にかつ自動的に、同じケルテックスオートシステムに組み込まれているケルテック蒸留滴定システム(型番:ケルティック8400)を用いて、その分解処理を行った液体を蒸留および滴定して(滴定には0.05M硫酸を使用)、下記の数式により、試料(小麦粉)の可溶性粗蛋白質含量を求める。
【0023】
(式)可溶性粗蛋白質含量(%)=0.14×(T-B)×F×N×(100/S)×(1/25)
式中、T=滴定に要した0.05M硫酸の量(mL)
B=ブランクの滴定に要した0.05M硫酸の量(mL)
F=滴定に用いた0.05M硫酸の力価(用時に測定するかまたは力価の表示のある市販品を用いる)
N=窒素蛋白質換算係数(5.70)
S=試料の秤取量(g)
【0024】
(2)小麦粉の全粗蛋白質含量の測定:
(a)上記(1)で用いたのと同じフォス・ジャパン社の「ケルテックオートシステム」のケルダールチューブに、試料(小麦粉)を0.3g精秤して入れ、これに上記(1)の(f)で用いたのと同じ分解促進剤1錠および濃硫酸10mLを加える。
(b)上記(1)で用いたのと同じアクタック社の分解炉を用いて、420℃で1時間30分分解処理を行った後、この分解処理に続いて連続的にかつ自動的に、同じケルテックオートシステムに組み込まれている上記(1)で用いたのと同じケルテック蒸留滴定システムを用いて、前記で分解処理を行った液体を蒸留および滴定して(滴定には0.05M硫酸を使用)、下記の数式により、試料(小麦粉)の全粗蛋白質含量を求める。
【0025】
(式)全粗蛋白質含量(%)=(0.14×T×F×N)/S)
式中、T=滴定に要した0.05M硫酸の量(mL)
F=滴定に用いた0.05M硫酸の力価(用時に測定)
N=窒素蛋白質換算係数(5.70)
S=試料の秤取量(g)
【0026】
(3)グルテンバイタリティの算出:
上記(1)で求めた試料(小麦粉)の可溶性粗蛋白質含量および上記(2)で求めた試料(小麦粉)の全粗蛋白質含量から、下記の数式により試料(小麦粉)のグルテンバイタリティを求める。
【0027】
(式)グルテンバイタリティ(%)=(可溶性粗蛋白質含量/全粗蛋白質含量)×100
【0028】
また、小麦粉及び熱処理小麦粉の平均粒径は、5~120μmが好ましく、10~100μmがより好ましく、20~70μmが最も好ましい。なお、本発明における小麦粉等の平均粒径は、例えば、レーザー回折・散乱式粒子径分布測定装置を用いて乾式で測定された体積平均値(Mean V)として求めることができる。レーザー回折・散乱式粒子径分布測定装置としては、例えばマイクロトラック粒度分布測定装置(マイクロトラック・ベル株式会社)等を用いることができる。
【0029】
小麦粉原料中の熱処理小麦粉の含有量は、10~50質量%が好ましく、25~50質量%がより好ましい。熱処理小麦粉の含有量が少ないと、生焼けになりやすくなる。また、熱処理小麦粉の含有量が多すぎると、食感がパサつく傾向がある。
【0030】
米粉及び/又は澱粉は、焼き上げ時間を短縮させる効果を有している。米粉は、粳米、餅米のいずれの米を用いてもよい。米粉の粉砕方法は特に限定されないが、好ましくは平均粒径100μm以下、より好ましくは平均粒径70μm以下の粳米粉を含むことが望ましい。
【0031】
澱粉としては、特に限定されないが、例えば、タピオカ澱粉、馬鈴薯澱粉、とうもろこし澱粉、小麦澱粉、甘薯澱粉、米澱粉などが挙げられ、これらの澱粉を、エーテル化、エステル化、架橋、酸化、酸分解、あるいはそれらを組合せた方法で加工した加工澱粉であってもよい。これらの澱粉のうち、特に馬鈴薯澱粉、米澱粉が好ましく用いられる。
【0032】
米粉及び/又は澱粉の含有量(米粉と澱粉とを両方含む場合は両者を合せた含有量)は、小麦粉100質量部に対し、5~20質量部が好ましく、5~10質量部がより好ましい。米粉及び/又は澱粉の含有量が少ないと、生焼けになりやすくなる傾向がある。また、米粉及び/又は澱粉の含有量が多すぎると、食感がねとつく傾向がある。
【0033】
増粘剤は、焼き上げ時間を短縮させる効果を有すると共に、生地の物性を調整して、焼型に流し込みやすくする効果を有している。増粘剤としては、特に限定されないが、例えば、アルギン酸エステル、アルギン酸塩、グアガム、キサンタンガム、タマリンドシードガム、ローカストビーンガム、ジェランガム、カラギーナン、カードラン、プルラン、アラビアガム、カラヤガムから選ばれた1種又は2種以上が好ましく用いられる。この中でも、アルギン酸エステル及び/又はアルギン酸塩がより好ましく、アルギン酸エステル及び/又はアルギン酸塩と、グアガム及び/又はキサンタンガムとの併用が最も好ましい。
【0034】
増粘剤の含有量は、特に限定されないが、増粘剤の合計量として、小麦粉100質量部に対し、0.1~1.5質量部が好ましく、0.1~1.0質量部がより好ましい。また、増粘剤として、アルギン酸エステル及び/又はアルギン酸塩を用いる場合、アルギン酸エステル及び/又はアルギン酸塩の含有量(アルギン酸エステルとアルギン酸塩とを両方含む場合は両者を合せた含有量)は、小麦粉100質量部に対し、0.05~0.5質量部が好ましく、0.05~0.25質量部がより好ましい。増粘剤の含有量が少ないと、生焼けになりやすくなると共に、生地物性が焼型に流し込みにくくなる傾向があり、増粘剤の含有量が多すぎると、食感がぱさつく傾向がある。
【0035】
本発明の和風スナック用ミックス粉は、上記原料の他に、本発明の効果が損なわれない範囲で、他の原料を含有することができる。他の原料としては、例えば、小麦粉・米粉以外の穀粉(例えば、ライ麦粉、大麦粉、あわ粉、ひえ粉、はとむぎ粉、とうもろこし粉等)、調味料(砂糖、食塩、こしょう、醤油、味噌、みりん、酒、グルタミン酸ナトリウム等)、膨張剤、卵製品(例えば卵黄粉末、全卵粉末)、大豆蛋白質、えんどう蛋白質、小麦グルテン、乳製品(牛乳、脱脂粉乳、ホエー蛋白、カゼイン等)、ゼラチン、食物繊維、乳化剤(ショ糖脂肪酸エステル、グリセリン酸脂肪酸エステル等)、ぶどう糖、トレハロース等の糖類、デキストリン、油脂、甘味料、香辛料、ビタミン類、ミネラル類等が挙げられる。
【0036】
このような本発明の和風スナック用ミックス粉は、例えば、鯛焼き、今川焼(大判焼き、回転焼きともいう)、人形焼、もみじ饅頭、タコ焼きなどの焼型を用いて焼成される和風スナックの製造に好適に用いられる。ただし、お好み焼き等のその他の和風スナックの製造にも用いることができる。
【0037】
上記和風スナックは、和風スナック用ミックス粉と他の原料と水とを混合して生地とし、公知の製造方法により得ることができる。例えば、和風スナック用ミックス粉と他の原料と水とを混合して生地を調製する調製工程と、調製した生地を焼型に流し込み、必要に応じて餡や具材を添加して、焼成する焼成工程等を含む工程により製造することができる。上記和風スナックの製造方法としては、焼成工程の後、更に和風スナックを冷蔵又は冷凍する冷蔵/冷凍工程を含んでもよい。
【0038】
本発明の和風スナック用ミックス粉を用いることにより、焼き上げが促進され、焼き上げ時間を短縮しても生焼けになりにくく、生地の焼型等への流し込みもしやすくなるので、生産性を高めることができる。また、焼き上げられた和風スナックの食感を良好にすることができる。
【実施例0039】
<試験例1>(熱処理小麦粉の含有量を変えた試験)
小麦粒を熱処理し、その後粉砕することにより調整することでグルテンバイタリティ12.9%の熱処理小麦粉Aを得た。下記表1の配合により上記熱処理小麦粉Aの含有量を変えたミックス粉を調製した。これらのミックス粉100質量部に水130質量部を加え攪拌して生地を調整した。得られた生地35gを、予め加熱した鯛焼きの焼型(アルミ鋳物製)の型側に入れ、市販の餡子を50g入れ、5分間焼成した。次に、焼型の反対側に前記生地30gを入れ、1分間焼成した。最後に、二つの焼き型をお互いに合わせ、5分間焼成し、鯛焼きを製造した。
【0040】
それぞれのミックス粉を用いて製造した鯛焼きの焼成状態(十分に焼成出来ており、生焼けになっていないこと)を下記評価基準によって評価した。
〇…十分に焼成できている、△…やや生焼けに感じられる、×…生焼け
【0041】
また、それぞれのミックス粉を用いて製造した製品の食感(ボリュームがあり、ねたつき・ぱさつきがないこと)を、下記評価基準によって、7名のパネラーによって評価し、パネラー7名の平均値で表した。なお、生焼けのものは評価を行わなかった。
極めて良い…5点、やや良い…4点、普通…3点、やや悪い…2点、極めて悪い…1点
この結果を下記表1に示す。
【0042】
【0043】
表1の結果から、熱処理小麦粉Aを含まない比較例1は、生焼けであったが、熱処理小麦粉Aを含む実施例1~4は、いずれも十分に焼成できていた。また、小麦粉中の熱処理小麦粉Aの含有量が10質量%(実施例1)~50質量%(実施例3)においては、食感も良好であった。なお、熱処理小麦粉Aの含有量が75質量%(実施例4)になると、食感がややパサつく傾向がみられた。
【0044】
<試験例2>(米粉の含有量を変えた試験)
米粉の含有量を変えた下記表2の配合によりミックス粉を調製し、試験例1と同様な方法で鯛焼きを製造した。
【0045】
それぞれのミックス粉を用いて製造した鯛焼きについて、焼成状態及び食感を、試験例1と同様にして評価した。この結果を表2に示す。
【0046】
【0047】
表2の結果から、米粉を含まない比較例2は、生焼けであったが、米粉を含む実施例5~8は、いずれも十分に焼成できていた。また、米粉の含有量が、小麦粉100質量部に対し、5質量部(実施例5)~20質量部(実施例7)においては、食感も良好であった。なお、米粉の含有量が30質量部(実施例8)になると、食感がややねとつく傾向がみられた。
【0048】
<試験例3>(アルギン酸エステルの含有量を変えた試験)
アルギン酸エステルの含有量を変えた下記表3の配合によりミックス粉を調製し、試験例1と同様な方法で鯛焼きを製造した。
【0049】
それぞれのミックス粉を用いて製造した鯛焼きについて、焼成状態及び食感を、試験例1と同様にして評価した。この結果を表3に示す。
【0050】
【0051】
表3の結果から、アルギン酸エステルを含まない実施例12は、製品として許容される範囲ではあるものの、やや生焼けとなる傾向があったが、アルギン酸エステルを含む実施例9~11、13は、いずれも十分に焼成できていた。また、アルギン酸エステルの含有量が、小麦粉100質量部に対し、0.05質量部(実施例9)~0.5質量部(実施例11)においては、食感も良好であった。なお、アルギン酸エステルの含有量が1質量部(実施例13)になると、食感がややパサつく傾向がみられた。
【0052】
<試験例4>(米粉の代わりに澱粉を添加した試験)
米粉の代わりに澱粉を添加した下記表4の配合によりミックス粉を調製し、試験例1と同様な方法で鯛焼きを製造した。なお、澱粉としては、馬鈴薯澱粉を用いた。
【0053】
それぞれのミックス粉を用いて製造した鯛焼きについて、焼成状態及び食感を、試験例1と同様にして評価した。この結果を表4に示す。なお、試験例2の比較例2の結果も併せて示す。
【0054】
【0055】
表4の結果から、米粉の代わりに澱粉を用いた実施例14~16は、いずれも十分に焼成できていた。また、食感の評価も良好であった。澱粉を含まない比較例2は、生焼けであった。
【0056】
<試験例5>(タコ焼き・お好み焼きに適用した試験)
下記表5の配合によりミックス粉を調製し、これらのミックス粉100質量部に水275質量部、全卵10質量部を加え攪拌して生地を調整した。この生地に具材としてキャベツ25質量部、天かす15質量部、紅しょうが2質量部を添加し、得られた生地と具材の混合物を、予め加熱したタコ焼きの焼型に充填し、ぶつ切りの蛸を入れて190℃6分間焼成し、タコ焼きを製造した。
【0057】
また、下記表5の配合により調合したミックス粉100質量部に水120質量部、全卵50質量部を加え攪拌して生地を調整した。得られた生地100質量部に対し、具材として刻んだキャベツ150質量部、天かす15質量部、紅しょうが5質量部を添加し、得られた生地と具材の混合物を、予め加熱したグリドルで180℃8分間両面を焼成し、お好み焼きを製造した。
【0058】
得られたタコ焼き・お好み焼きについて、焼成状態及び食感を、試験例1と同様にして評価した。この結果を表5に示す。
【0059】
【0060】
表5の結果から、熱処理小麦粉Aを含む小麦粉と、米粉及び/又は澱粉と、増粘剤とを含有する実施例17のミックス粉は、タコ焼き・お好み焼きに適用した場合でも、焼成が良好になされ、食感の評価も良好であった。熱処理小麦粉Aを含まない比較例3のミックス粉では、タコ焼きではやや生焼けに感じられ水っぽい食感であり、お好み焼きでは生焼けであった。
【0061】
<試験例6>(熱処理小麦粉の種類を変えた試験)
一般小麦粉を熱処理して調整し、グルテンバイタリティが41.3%の熱処理小麦粉Bと、小麦粒を熱処理し、その後粉砕することにより調整した、グルテンバイタリティが59.3%の熱処理小麦粉Cを製造した。
【0062】
試験例1で得た熱処理小麦粉Aの代わりに上記熱処理小麦粉Bおよび熱処理小麦粉Cを用いた下記表6の配合によりミックス粉を調製し、試験例1と同様な方法で鯛焼きを製造した。
【0063】
それぞれのミックス粉を用いて製造した鯛焼きについて、焼成状態及び食感を、試験例1と同様にして評価した。この結果を表6に示す。なお、試験例1の実施例1~3の結果も併せて示す。
【0064】
【0065】
表6の結果から、一般小麦粉を熱処理して調整し、グルテンバイタリティが41.3%の熱処理小麦粉Bと、小麦粒を熱処理し、その後粉砕することにより調整した、グルテンバイタリティが59.3%の熱処理小麦粉Cを用いた実施例18~23においても、いずれも十分に焼成できていた。また、食感の評価も良好であった。
【0066】
なお、グルテンバイタリティが59.3%の熱処理小麦粉Cを用いた実施例21~23よりも、グルテンバイタリティ12.9%の熱処理小麦粉A及びグルテンバイタリティが41.3%の熱処理小麦粉Bを用いた実施例1~3及び実施例18~20の方が食感の評価がよいことから、グルテンバイタリティは、10~50%が好ましいと考えられる。