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特開2022-184617押しボタンスイッチの誤作動防止装置
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  • 特開-押しボタンスイッチの誤作動防止装置 図1
  • 特開-押しボタンスイッチの誤作動防止装置 図2
  • 特開-押しボタンスイッチの誤作動防止装置 図3
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022184617
(43)【公開日】2022-12-13
(54)【発明の名称】押しボタンスイッチの誤作動防止装置
(51)【国際特許分類】
   H01H 9/54 20060101AFI20221206BHJP
【FI】
H01H9/54 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021092565
(22)【出願日】2021-06-01
(71)【出願人】
【識別番号】391021226
【氏名又は名称】株式会社カーメイト
(74)【代理人】
【識別番号】100091306
【弁理士】
【氏名又は名称】村上 友一
(74)【代理人】
【識別番号】100174609
【弁理士】
【氏名又は名称】関 博
(72)【発明者】
【氏名】加藤 義一
【テーマコード(参考)】
5G034
【Fターム(参考)】
5G034AB02
5G034AD05
(57)【要約】
【課題】ボタンの誤作動判定をCPUに頼らず、待機電力の省電力化を図る事のできる押しボタンスイッチの誤作動防止装置を提供する。
【解決手段】バッテリ12と稼働電源20との間に、稼働電源20から制御部30への電力の供給を促す電源起動回路14を有するスイッチ回路であって、電源起動回路14とボタンスイッチ18との間に充放電回路16を備え、電源起動回路14は、ボタンスイッチ18が押下された際、バッテリ12と電源起動回路14間の電圧と、電源起動回路14とボタンスイッチ18間との電圧との間に所定値以上の電位差が生じている場合に稼働電源20に起動電流を流す構成とし、充放電回路16は、過渡状態から定常状態へ移行する時定数の設定により、ボタンスイッチ18を押下した際に起動電流が流れる時間を定める構成としたことを特徴とする。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
バッテリと稼働電源との間に、前記稼働電源から制御部への電力の供給を促す電源起動回路を有するスイッチ回路であって、
前記電源起動回路とボタンスイッチとの間に充放電回路を備え、
前記電源起動回路は、前記ボタンスイッチが押下された際、前記バッテリと前記電源起動回路間の電圧と、前記電源起動回路と前記ボタンスイッチ間との電圧との間に所定値以上の電位差が生じている場合に前記稼働電源に起動電流を流す構成とし、
前記充放電回路は、過渡状態から定常状態へ移行する時定数の設定により、前記ボタンスイッチを押下した際に前記起動電流が流れる時間を定める構成としたことを特徴とする押しボタンスイッチの誤作動防止装置。
【請求項2】
前記充放電回路は、抵抗とコンデンサを並列に配置した回路であることを特徴とする請求項1に記載の押しボタンスイッチの誤作動防止装置。
【請求項3】
前記電源起動回路は、ベース抵抗を有するPNP型トランジスタであり、エミッタ側に前記バッテリを接続し、ベース側に前記充放電回路を接続し、
前記ベース抵抗の抵抗値は、前記充放電回路を構成する前記抵抗の抵抗値に比べて小さくなるように定めたことを特徴とする請求項2に記載の押しボタンスイッチの誤作動防止装置。
【請求項4】
前記電源起動回路は、ゲート-ソース抵抗を有するFETであり、ソース側に前記バッテリを接続し、ゲート側に前記充放電回路を接続し、
前記ゲート-ソース抵抗の抵抗値は、前記充放電回路を構成する前記抵抗の抵抗値に比べて小さくなるように定めたことを特徴とする請求項2に記載の押しボタンスイッチの誤作動防止装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、誤作動防止装置に係り、特に、押しボタンスイッチが誤って押され続けた場合に作動信号が出力され続けることを防ぐのに好適な誤作動防止装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子機器等における操作ボタンの誤作動を防止する手段としては、例えば特許文献1に開示されているようなものが知られている。特許文献1に開示されている誤作動防止装置は、キー操作をロックする特定キーの操作信号をCPUへ入力し、このCPUへ操作信号が入力されている時間(操作されている時間)をタイマーでカウントすることで、特定キーの操作が人の操作によるものであるか、人の操作以外の要因によるもの(誤作動)なのかを判定し、キーのロックやロック解除などを行うというものである。
【0003】
このような構成の誤作動防止装置によれば、誤作動によりキーのロックが解除され、通常の操作キーが押下されてしまい、電子機器が作動すること、及びそれに伴う電力消費を避ける事ができると考えられる。しかし、特許文献1に開示されている誤作動防止装置は、CPUとタイマーによりキーの作動状態の判定を行っている。このため、キーが操作されていない状態でも、CPUが電力を消費しつづけることとなる。なお、特許文献1には、CPUの動作を休止させるスリープモードについての記載もあるが、スリープモードを解除する際にタイマーによる特定キーの操作時間のカウントが行われていることから、CPUの休止状態がどのような状態であるのかが不明である。
【0004】
こうした誤作動防止装置は、1日から数日といった短い期間でバッテリが充電される事が想定される機器には有効であると考えられる。しかし、ボタン電池のような小容量のバッテリにより数カ月単位での作動が期待される小型リモコンなどにおいては、特許文献1に開示されている誤作動防止装置のようなCPUの稼働電力自体が、電力消費の大きな割合となってしまうこととなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004-273077号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで本発明では、ボタンが誤って押下されている場合にボタンの押下に伴う電力の供給を停止すると共に、ボタンの誤作動判定をCPUに頼らず、待機電力の省電力化を図る事のできる押しボタンスイッチの誤作動防止装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するための本発明に係る押しボタンスイッチの誤作動防止装置は、バッテリと稼働電源との間に、前記稼働電源から制御部への電力の供給を促す電源起動回路を有するスイッチ回路であって、前記電源起動回路とボタンスイッチとの間に充放電回路を備え、前記電源起動回路は、前記ボタンスイッチが押下された際、前記バッテリと前記電源起動回路間の電圧と、前記電源起動回路と前記押しボタンスイッチ間との電圧との間に所定値以上の電位差が生じている場合に前記稼働電源に起動電流を流す構成とし、前記充放電回路は、過渡状態から定常状態へ移行する時定数の設定により、前記押しボタンスイッチを押下した際に前記起動電流が流れる時間を定める構成としたことを特徴とする。
【0008】
また、上記のような特徴を有する押しボタンスイッチの誤作動防止装置において前記充放電回路は、抵抗とコンデンサを並列に配置した回路とすることができる。このような特徴を有する事によれば、抵抗値とコンデンサの容量の設定により、時定数を任意に定める事が可能となる。
【0009】
また、上記のような特徴を有する押しボタンスイッチの誤作動防止装置における前記電源起動回路は、ベース抵抗を有するPNP型トランジスタであり、エミッタ側に前記バッテリを接続し、ベース側に前記充放電回路を接続し、前記ベース抵抗の抵抗値は、前記充放電回路を構成する前記抵抗の抵抗値に比べて小さくなるように定めることが望ましい。
【0010】
さらに、上記のような特徴を有する押しボタンスイッチの誤作動防止装置における前記電源起動回路は、ゲート-ソース抵抗を有するFETであり、ソース側に前記バッテリを接続し、ゲート側に前記充放電回路を接続し、前記ゲート-ソース抵抗の抵抗値は、前記充放電回路を構成する前記抵抗の抵抗値に比べて小さくなるように定めることもできる。
【発明の効果】
【0011】
上記のような特徴を有する押しボタンスイッチの誤作動防止装置によれば、ボタンの押下があった場合でも、所定時間経過する事により電力の供給を停止することができる。また、ボタンの誤作動判定をCPUに頼ることがない。このため、従来に比べて待機電力の省電力化を図る事が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】実施形態に係る押しボタンスイッチの誤作動防止装置を適用する小型リモコンの概略構成を示す図である。
図2】第1実施形態に係る押しボタンスイッチの誤作動防止装置の構成を説明するための図である。
図3】第2実施形態に係る押しボタンスイッチの誤作動防止装置の構成を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の押しボタンスイッチの誤作動防止装置に係る実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
[構成]
本実施形態に係る押しボタンスイッチの誤作動防止装置(以下、単に誤作動防止装置10と称す)は、携帯用の小型リモコンなどに適用するものであり、押しボタンスイッチとは、例えば車両のキーをロック/オープンするためのボタンや、ドアを開閉するためのボタン、あるいはエンジンを始動するためのボタンなどの操作ボタンであれば良い。図1は、実施形態に係る誤作動防止装置10を適用した小型リモコン50の構成を示す概略図である。小型リモコン50は、図1に示すように少なくとも、バッテリ12と稼働電源20、電源起動回路14、ボタンスイッチ18、充放電回路16、制御部30、及び電源保持回路40を有する。
【0014】
バッテリ12は、ボタン電池などの一次電池や充電可能な二次電池などであれば良く、詳細を後述するボタンスイッチ18が押下された際、電源起動回路14を介して制御部30や稼働電源20等へボタン操作に起因した電力を供給するための要素である。
【0015】
稼働電源20は、詳細を後述する制御部30等へ、各種操作のための操作信号の出力に必要な電力を供給するための要素であり、バッテリ12からの供給電力に基づいて出力が成される。
【0016】
電源起動回路14は、稼働電源20から制御部30への電力供給を促すための起動回路である。バッテリ12からの電流がボタンスイッチ18側の経路に流れる事で稼働電源20側への電力供給が促され、稼働電源20が起動することとなる。
【0017】
ボタンスイッチ18は、小型リモコン50を用いて各種機能を実行するためのボタンである。なお、図1に示す例ではボタンスイッチ18について単一であるように示しているが、ボタンスイッチ18は複数設けられていても良い。なお、ボタンスイッチ18を複数設ける場合には、詳細を後述する充放電回路16の二次側に、並列接続するように設けることが望ましい。このような構成とすることで、充放電回路16を単一としつつ、充放電回路16による機能を確保することができるからである。
【0018】
充放電回路16は、電源起動回路14を介してボタンスイッチ18側経路に供給される電流を制御するための要素である。充放電回路16が充電状態(過渡状態)にある場合は、バッテリ12-電源起動回路14の経路と、充放電回路16-電源起動回路14の経路との間に電位差が生じるため、充放電回路16側、すなわちボタンスイッチ18側の経路に電力の供給が成される。一方、充放電回路16が充電完了状態(定常状態)となった場合、上記2つの経路間には電位差が殆どなくなり、ボタンスイッチ18側経路への電力供給が停止されることとなる(極めて小さくなる)。このため、ボタンスイッチ18が押下され続けても、ボタンスイッチ18側経路への電力供給が停止され、消費電力の削減を図ることが可能となる。
【0019】
制御部30は、マイコン等、各種機能を実行するための判定処理、及び制御信号の出力等を行うための要素である。制御部30には、ボタンスイッチ18側経路からや、稼働電源20からの電力の供給があり、これを入力信号として、要求される制御の判定、及び制御信号等の出力が行われる。
【0020】
電源保持回路40は、制御部30が稼働している状態において、充放電回路16の作用により、稼働電源20への電力供給が停止されることを防ぐための要素である。電源保持回路40は、制御部30からの制御信号に基づいて、電源起動回路14における充放電回路16側経路の電位を低下させ、疑似的に充放電回路16側経路への電力供給と等価の作用を担う。これにより、電源起動回路14を介した稼働電源20への電力供給がなされることとなる。
【0021】
このような基本構成を有する小型リモコン50において、本発明に係る誤作動防止装置10は、バッテリ12、電源起動回路14、充放電回路16、及びボタンスイッチ18により構成されている。以下、これらの要素によって構成される誤作動防止装置10についての具体的な形態について説明する。
【0022】
[第1実施形態]
本実施形態では、図2に示すように、電源起動回路14にPNP型のトランジスタを採用し、充放電回路16を抵抗16aとコンデンサ16bを並列接続することで構成している。また、トランジスタにより構成される電源起動回路14には、ベース抵抗14aと、ベース-エミッタ14b抵抗を備えるようにしている。
【0023】
ここで、ベース抵抗14aの抵抗値は、充放電回路16を構成する抵抗16aの抵抗値に比べ、十分小さな値となるように構成している(以下に示す例では約1/10)。このような構成とすることで、充放電回路16における充放電のバランスをとることができ、充放電回路16が過渡状態から定常状態へ移行するまでの時定数を小さくすることが可能となる。また、充放電回路16を構成するコンデンサ16bの容量については、トランジスタに付帯される抵抗(ベース抵抗14a)の抵抗値と、充放電回路16を構成する抵抗16aの抵抗値を考慮の上、所望する時定数を得られるように定めれば良い。
【0024】
一例として、ベース抵抗14aの抵抗値を100kΩ、充放電回路16を構成する抵抗16aの抵抗値を1MΩとした場合、コンデンサ16bの容量を1μFとすることで、充電時定数は0.1秒、放電時定数は1秒となる(時定数T=CR:C=コンデンサ容量、R=抵抗値)。
【0025】
[作用]
誤作動防止装置10をこのような構成とした場合、ボタンスイッチ18の押下により次のような作用が得られる。まず、ボタンスイッチ18が押下されると、電源起動回路14を構成するトランジスタのエミッタ側からベース側へ電流が流れ、充放電回路16へ電流が供給される。この時、バッテリ12からの電流は、コレクタ側に位置する稼働電源20にも流れる。
【0026】
ボタンスイッチ18を押下し続けた場合において、充放電回路16を構成するコンデンサ16bが充電されると、エミッタ側の回路とベース側の回路との電位差が無くなり(小さくなり)、エミッタ側からベース側への電流の流れが停止する。このためコレクタ側からの電力の供給も停止される。
【0027】
[効果]
これにより、ボタンスイッチ18を押下し続けた場合であっても、制御部30等の被供給側回路へ流れる電流がカットされることとなり、消費電力の低減を図ることができるようになる。また、制御部30等の被供給側回路への電流のカットは、充放電回路16と電源起動回路14との間の電位変化に基づくものであり、CPU等による制御を介さないため、CPU等によって消費される電力を削減することができる。
【0028】
[第2実施形態]
次に、図3を参照して電源起動回路14にFETを採用した場合の形態について説明する。電源起動回路14をFETにより構成した場合、ソース側にバッテリ12、ゲート側にボタンスイッチ18、そしてドレン側に稼働電源20を接続することとなる。また、図2に示す例では、ゲート-ソース抵抗14cを付帯させている。
【0029】
なお、充放電回路16の構成は、電源起動回路14にトランジスタを用いる場合(図2に示す形態)と同様に、抵抗16aとコンデンサ16bとによって構成されていれば良い。ここで、抵抗16aは、電源起動回路14を構成するFETにおいてゲート-ソース抵抗14cの抵抗値に比べて十分な大きな抵抗値を持つように定める(例えば10倍)。
【0030】
[作用・効果]
誤作動防止装置10の構成をこのようなものとした場合であっても、上記実施形態に係る誤作動防止装置と同様に、ボタンスイッチ18が押下され続けた場合であっても、制御部30へ流れる電流がカットされ、消費電力の低下を図ることができるようになる。
【産業上の利用可能性】
【0031】
上記実施形態では、誤作動防止装置10を適用する小型リモコン50として、車両用の操作リモコンを例に挙げて説明したが、本実施形態に係る押しボタンスイッチの誤作動防止装置10は、他の用途に用いるリモコンに対しても適用することもできる。
【符号の説明】
【0032】
10………誤作動防止装置、12………バッテリ、14………電源起動回路、14a………ベース抵抗、14c………ゲート-ソース抵抗、16………充放電回路、16a………抵抗、16b………コンデンサ、18………ボタンスイッチ、20………稼働電源、30………制御部、40………電源保持回路、50………小型リモコン。
図1
図2
図3