(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022184619
(43)【公開日】2022-12-13
(54)【発明の名称】測定装置、測定方法、及び監視システム
(51)【国際特許分類】
G05B 23/02 20060101AFI20221206BHJP
【FI】
G05B23/02 302T
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021092567
(22)【出願日】2021-06-01
(71)【出願人】
【識別番号】594185097
【氏名又は名称】伸和コントロールズ株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000214191
【氏名又は名称】長崎県
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100127465
【弁理士】
【氏名又は名称】堀田 幸裕
(74)【代理人】
【識別番号】100164688
【弁理士】
【氏名又は名称】金川 良樹
(74)【代理人】
【識別番号】100125151
【弁理士】
【氏名又は名称】新畠 弘之
(72)【発明者】
【氏名】山中 寛之
(72)【発明者】
【氏名】田口 喜祥
【テーマコード(参考)】
3C223
【Fターム(参考)】
3C223AA13
3C223AA16
3C223EB02
3C223EB03
3C223FF03
3C223FF08
3C223FF13
3C223FF26
3C223FF45
(57)【要約】
【課題】送信側のデータ数を含む測定データのデータ形式を受信側の要求に応じて変換可能である測定装置、測定方法、及び監視システムを提供する。
【解決手段】本実施形態に係る測定装置は、取得部と、変換部と、出力部と、を備える。取得部は、センサから、監視対象の測定信号を取得する。変換部は、測定信号を所定のデータ数を含むデータ形式に変換する。出力部は、所定のデータ形式に変換した測定データを出力する。変換部は、測定データにより監視対象の判定処理を行う処理部の処理に応じた、所定のサンプリング周期内における所定数のサンプリングにより測定データを生成する。
【選択図】
図1A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
センサから、監視対象の測定信号を取得する取得部と、
前記測定信号を所定のデータ数を含むデータ形式に変換する変換部と、
前記所定のデータ形式に変換した測定データを出力する出力部と、を備え、
前記変換部は、前記測定データにより前記監視対象の判定処理を行う処理部の処理に応じた、所定のサンプリング周期内における所定数のサンプリングにより前記測定データを生成する、測定装置。
【請求項2】
前記測定データは、複数のセンサから取得され、前記所定のデータ数となるように組み合わされる、請求項1に記載の測定装置。
【請求項3】
前記処理部は前記測定データをフーリエ変換処理したデータを用いており、
前記変換部は、前記フーリエ変換処理に応じた所定の時間間隔でサンプリングする、請求項1又は2に記載の測定装置。
【請求項4】
前記変換部は、前記所定のデータ数を、2048を含む2のべき乗に基づき設定可能である、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の測定装置。
【請求項5】
前記変換部は、前記所定のデータ数を、前記処理部の判定に必要となる情報量に応じて設定可能である、請求項1乃至4のいずれか一項に記載の測定装置。
【請求項6】
前記出力部が出力する前記測定データは、通信により前記処理部に送信されており、
前記測定データを含む送信データのデータ数は、512、1024、及び2048のいずれかに基づき設定可能である、請求項1乃至5のいずれか一項に記載の測定装置。
【請求項7】
前記変換部は、前記処理部の判定に必要となる情報量に応じた時間間隔でサンプリングする、請求項1乃至5のいずれか一項に記載の測定装置。
【請求項8】
前記取得部は、前記監視対象に配置され、振動の強さを数値で示す信号を出力する前記センサと異なる第2センサからの測定信号も取得しており、
前記変換部は、前記処理部に応じた時間間隔で第2センサからの測定信号もサンプリングする、請求項1乃至7のいずれか一項に記載の測定装置。
【請求項9】
前記変換部は、
前記測定信号を増幅するアンプと、
前記増幅した測定信号を前記所定の時間間隔で前記測定データに変換するAD変換部と、を有する、請求項1乃至8のいずれか一項に記載の測定装置。
【請求項10】
前記監視対象は、モータであり、
前記測定信号は、振動の強さを数値で示す信号である、請求項9に記載の測定装置。
【請求項11】
前記センサは、監視対象の機器に生じる振動を測定し、
前記処理部は、前記測定データの前記フーリエ変換処理による周波数分解後のデータを用いて異常発生の予兆を判定する、請求項2に記載の測定装置。
【請求項12】
前記処理部は、異常発生の予兆を判定するニューラルネットワークである、請求項11に記載の測定装置。
【請求項13】
センサから、監視対象の測定信号を取得する取得工程と、
前記測定信号を所定のデータ形式に変換する変換工程と、
前記所定のデータ形式に変換した測定データを送信する送信工程と、
前記測定データを受信する工程と、
前記受信した前記測定データにより前記監視対象の判定処理を行う処理工程と、
を備え、
前記変換工程は、前記処理工程の処理に応じて、所定のサンプリング周期内における所定数のサンプリングにより前記測定データを生成する、測定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、測定装置、測定方法、及び監視システムに関する。
【背景技術】
【0002】
半導体・FPD製造現場において、故障や異常発生により装置が停止すると、製造ライン全体が止まり、莫大な損失が生じる。これを回避するために、故障の予兆を早期に検知し、知らせる機能が求められている。例えば、複数のセンサの測定信号を、無線通信により判定装置に送信し、故障の予兆、異常を判定する方法が知られている
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、産業機械の複雑化ないし高度化に伴って故障につながる要因も複雑化し、センサの数や測定データが増加している。このため、測定信号を送信する場合に、判定に不要となる信号を含む冗長なデータを送信してしまったり、判定装置側の要求するデータ形式と異なってしまったりすると、送信速度が低下したり、判定装置側で冗長なデータ変換処理などが生じてしまう恐れがある。
【0005】
本発明の実施形態は、このような事情を考慮してなされたものであり、送信側のデータ数を含む測定データのデータ形式を受信側の要求に応じて変換可能である測定装置、測定方法、及び監視システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本実施形態に係る測定装置は、取得部と、変換部と、出力部と、を備える。取得部は、センサから、監視対象の測定信号を取得する。変換部は、測定信号を所定のデータ数を含むデータ形式に変換する。出力部は、所定のデータ形式に変換した測定データを出力する。変換部は、測定データにより監視対象の判定処理を行う処理部の処理に応じた、所定のサンプリング周期内における所定数のサンプリングにより測定データを生成する。
【発明の効果】
【0007】
本実施形態によれば、送信側のデータ数を含む測定データのデータ形式を受信側の状況に応じて変換可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1A】本実施形態に係る監視システムの構成を示すブロック図。
【
図1B】本実施形態に係る監視システムの別の構成を示すブロック図。
【
図2】監視対象の冷却システムの構成例とセンサ配置例とを示す図。
【
図3】電流センサにより測定される三層電流の例を示す図。
【
図4】振動センサにより測定される第1振動信号の例を示す図。
【
図5】振動センサにより測定される第2振動信号の例を示す図。
【
図7】温度データと、第1振動データをデータセットとした例を示す図。
【
図8】第2振動データと、電流データをデータセットとした例を示す図。
【
図9】第1振動データ、第2振動データと、第3振動データと、電流データとをデータセットとした一例を示す図。
【
図15】パーセプトロン型のニューラルネットワークモデルの例を模式的に示す図。
【
図16】判定装置の学習処理例を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態に係る測定装置、測定方法、及び監視システムについて、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、以下に示す実施形態は、本発明の実施形態の一例であって、本発明はこれらの実施形態に限定して解釈されるものではない。また、本実施形態で参照する図面において、同一部分又は同様な機能を有する部分には同一の符号又は類似の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する場合がある。また、図面の寸法比率は説明の都合上実際の比率とは異なる場合や、構成の一部が図面から省略される場合がある。
【0010】
図1Aは、本実施形態に係る監視システム1の構成を示すブロック図である。
図1Aに示すように、監視システム1は、送信側のデータ数を含むデータ形式を受信側の要求に応じて変換可能なシステムであり検知装置5と、測定装置10と、判定装置20と、表示装置30とを、備える。
図1Aでは、更に監視対象40が図示されている。監視対象40は、例えばポンプのモータであるが、これに限定されない。監視対象40は、例えば、モータ、エンジンなどの駆動部を有する産業機械、自動車、鉄道、及び電気製品などのいずれでもよい。
【0011】
検知装置5は、監視対象40の測定信号を生成する複数のセンサ50a~50hにより構成される。センサ50a~50hの応答周波数はそれぞれ異ならせてもよい。例えば圧力センサ50a、50bの応答周波数は40kHzであり、サンプリング周波数は例えば100kHzである。温度センサ50c、50dの応答周波数は1/60Hzである。すなわち、温度センサ50c、50dは1分に一回測定される。また、振動センサ50e、50f、50gの応答周波数は20kHzであり、サンプリング周波数は例えば100kHzである。電流センサ(電流計)50hの応答周波数は40kHzであり、サンプリング周波数は例えば100kHzである。なお、本実施形態に係る応答周波数とは、センサが感知できる周波数を意味する。また、監視対象40及びセンサ50a~50hの詳細は、
図2を用いて後述する。
【0012】
また、センサの種類、数、及び応答周波数は、監視対象に応じて設定することが可能であり、センサ50a~50hに限定されない。例えばセンサは、力センサ、トルクセンサ、振動センサ、集音センサ、撮像センサ、距離センサ、温度センサ、湿度センサ、流量センサ、光量センサ、pHセンサ、圧力センサ、粘度センサ及び臭気センサの少なくともいずれか1つを含んでいてもよい。センサ50a~50hから出力される測定信号は、測定装置10の取得部102に供給される。
【0013】
測定装置10は、検知装置5の測定した測定信号を所定のデータ数を含むデータ形式に変換し、所定の間隔で判定装置20に送信する。すなわち、この測定装置10は、取得部102と、変換部103と、出力部110と、通信部112とを有する。更に変換部103は、増幅器104と、AD変換器106と、変換処理部108とを有する。なお、測定装置10の詳細は後述する。また、測定装置10の各処理部を電子回路により構成してもよい
【0014】
判定装置20は、測定装置10から所定の周期で送信される測定データを用いて、監視対象40の故障の予兆を判定する。なお、判定装置20の詳細は、
図11を用いて後述する。なお、本実施形態に係る所定の周期が所定のサンプリング周期に対応する。
【0015】
表示装置は、例えばモニタである。この表示装置は、判定装置20が生成する監視対象40の故障の予兆を含む状態に関する情報を画像として表示する。
【0016】
ここで、測定装置10の詳細を説明する。
取得部102は、センサ50a~50hから、監視対象40の測定信号を取得する。変換部103は、測定信号を所定のデータ数を含むデータ形式に変換する。
【0017】
出力部110は、所定のデータ形式に変換した測定データを出力する。この出力部110は、処理側に応じてデータ変換可能であり、且つ送信形式にも併せてデータ変換可能である。例えば、出力部110は、所定の時間内に2048バイトのパケットを任意の数、例えば100個送信することが可能である。この場合、パケットは、各バースト間に数十マイクロ秒の遅延時間を入れて送信してもよい。この遅延時間は、例えば記憶部116(
図6参照)、及び記憶部222(
図11参照)に構成される共用メモリのバッファー容量に応じて設定することが可能である。遅延時間を設定することにより、データの送受信量がバッファー容量を越えることが抑制され、データ処理をより高精度に行うことが可能となる。
【0018】
通信部112は、例えば無線通信装置であり、測定データを無線により判定装置20に送信する。なお、通信部112は、無線通信であるがこれに限定されない。例えば有線通信でもよい。
【0019】
変換部103の増幅器104は、検知装置5の測定した測定信号に対して所定の増幅を行い、AD変換器106に供給する。AD変換器106は、センサ50a~50hに対するサンプリング周期内における所定数のサンプリングにより測定信号をデジタルの測定データに変換する。
【0020】
変換処理部108は、判定装置20側の処理要求に応じて、AD変換器106におけるサンプリング周期及びサンプリング数を設定可能である。また、変換処理部108は、測定データを所定のデータ数を含むデータ形式に変換し、所定の間隔で出力部110に出力する。なお、変換処理部108の詳細は、
図6を用いて後述する。
【0021】
図1Bは、本実施形態に係る監視システム1の別の構成を示すブロック図である。
図1Bに示すように、検知装置5は、増幅器104と、AD変換器106とを有する。このように、検知装置5が増幅器104と、AD変換器106とを有する場合には、変換部103は、増幅器104と、AD変換器106とを有さない構成にしてもよい。
【0022】
図2は、監視対象40の冷却システムの構成例とセンサ配置例とを示す図である。
図2に示すように、監視対象40は、例えば半導体・FPD製造現場において用いられるポンプである。配管L10を循環する水は、冷却器402により冷却される。配管L12を循環する水は、熱交換器404を介して配管L10を循環する水と熱交換し冷却される。配管L20を循環する水量は弁406により調整される。そして、配管L20を循環する水は、監視対象40であるポンプを冷却する。
【0023】
図3は、電流センサ(電流計)50hにより測定される三層電流の例を示す図である。横軸は時間を示し、縦軸が電流値を示す。
図3に示すように、冷却システムにより冷却される監視対象(モータ)40へ供給される三層電流は、電流センサ(電流計)50h(
図2参照)により測定される。
【0024】
図4は、振動センサ50eにより測定される第1振動信号の例を示す図である。
図5は、振動センサ50fにより測定される第2振動信号の例を示す図である。横軸は時間を示し、縦軸が振動値を示す。
図4、5に示すように、ポンプの異なる3箇所に振動センサ50e、50f、50g(
図2参照)が配置され振動が測定される。
【0025】
再び
図2に示すように、圧力センサ50a、温度センサ50cは、配管L20を循環する水の監視対象40の出口側の圧力と温度を測定する。一方で、圧力センサ50b、温度センサ50dは、配管L20を循環する水の監視対象40の入口側の圧力と温度を測定する。なお、振動センサ50g、力センサ50a、温度センサ50c、圧力センサ50b、及び温度センサ50dの測定値の図示は省略する。
【0026】
図6は、変換処理部108の詳細な構成例を示すブロックである。
図6に示すように、変換処理部108は、入力インターフェース114と、記憶部116と、設定部118と、データ変換部120と、通信制御部122と、操作部124とを有する。変換処理部108は、例えばCPUを含んで構成され、記憶部116に記憶されるプログラム、及び設定情報にしたがい各処理部を構成する。
【0027】
入力インターフェース114は、操作部124を着脱可能に接続する。また、操作部124、及び入力インターフェース114を介した設定情報が操作者により設定部118に設定される。
【0028】
記憶部116は、例えばROM、RAM、不揮発性メモリなどで構成される。この記憶部116は、プログラム、及び設定情報を記憶する。また、記憶部116は、AD変換器106から供給される測定データを記憶する。さらにまた、記憶部116は、例えば所定のバッファー容量を有する共用メモリを構成することが可能である。
【0029】
設定部118は、AD変換器106に供給される各測定信号のサンプリング周期及びサンプリング周期内におけるサンプリング数を設定する。設定部118は、操作部124を介した設定情報に従い各測定信号のサンプリング周期及びサンプリング周期内におけるサンプリング数を設定する。また、設定部118は、判定装置20側から供給される設定情報に従い各測定信号のサンプリング周期及びサンプリング周期内におけるサンプリング数をAD変換器106に対して設定することも可能である。さらにまた、設定部118は、判定装置20側から供給される設定情報に従い変換処理部108に対してデータ変換形式を設定することも可能である。
【0030】
例えば、学習が収束するまでの初期運用期間は判定装置20側から供給される設定情報に従い各測定信号のサンプリング周期及びサンプリング周期内におけるサンプリング数を自動的に設定する。一方で、監視対象40の運用が安定化し、学習結果を他の同等の監視対象40に提供する場合などには、操作部124を介した設定情報に従い各測定信号のサンプリング周期及びサンプリング周期内におけるサンプリング数を設定する。
【0031】
データ変換部120は、設定部118により設定されたサンプリング周期及びサンプリング周期内におけるサンプリング数によりサンプリングされ、記憶部116に記憶された各測定データを所定のデータセットに変換する。データ変換部120は、判定装置20の処理形式に応じたデータセットに変換する。なお、データ変換の詳細は、
図7乃至
図9を参照して後述する。
【0032】
通信制御部122は、データ変換部120が生成したデータセットにヘッダ情報などを付与して、出力部110を介して通信部112に供給する。操作部124は、上述のように、入力インターフェース114に着脱可能であり、例えばキーボード、マウスなどにより構成される。
【0033】
図7は、温度データと、第1振動データをデータセットとした一例を示す図である。例えば、判定装置20から供給される設定情報に基づき、温度データ3個と、第1振動データ2000個とが予兆の予測に対する有効情報となる例を示す。この例では、例えば判定装置20の入力処理形式(例えばFFT変換処理の入力部)が2048を含む2のべき乗に基づき設定されており、そのデータ形式に変換する場合を示している。例えば、データ数を2048にするため、振動データ2000個と、温度データ3個と、NULLを45個とした例である。このように、判定装置20の処理形式に合わせてデータを変換するので、送信効率を上げることが可能となる。なお、一般的な測定装置ではAD変換後のデータを順に送信する。このため、温度データ3個とNULL2045個を送信し、更に振動データ2000個とNULL48個を送信するので、送信容量が倍となる。さらに、判定装置20で必要とされないデータに関してはNULLを入れることで、判定装置20はNULLデータに対する処理を行わないように構成可能となり、判定装置20側の冗長処理を抑制できる。
【0034】
図8は、第2振動データと、電流データとをデータセットとした一例を示す図である。例えば、
図7で示した測定データに加えて、第2振動データと、電流データをそれぞれ1024点ずつ送信する場合である。このように、判定装置20の処理形式に合わせてデータを組み合わせることで、送信効率を上げることが可能となる。なお、一般的な測定装置では、温度データ1024個とNULL1024個とを送信し、更に振動データ1024個とNULL1024個とを送信するので、送信容量が倍となる。
【0035】
図9は、第1振動データ、第2振動データと、第3振動データと、電流データをデータセットとした一例を示す図である。判定装置20の入力処理形式が512に基づき設定されており、そのデータ形式に変換する場合を示している。なお、一般的な測定装置では、第1振動データ128個とNULL384個とを送信し、第2振動データ128個とNULL384個とを送信し、第3振動データ128個とNULL384個とを送信し、電流データ128個とNULL384個とを送信するので、送信容量が4倍となる。このように、送信側で判定装置20の処理形式に合わせてデータを組み合わせることで、送信効率を上げることが可能となる。
【0036】
図10は、測定装置10の処理例を示すフローチャートである。
図10に示すように、まず、操作者は、操作部124を介して、設定部118に各測定信号のサンプリング周期及びサンプリング周期内におけるサンプリング数を設定する。また、判定装置20の処理形式に合わせたデータの組み合わせを設定する(ステップS100)。
【0037】
次に、AD変換器106は、設定部118の設定に従い、各測定信号を設定されたたサンプリング周期及びサンプリング周期内におけるサンプリング数でサンプリングし、測定データを記憶部116に記憶させる(ステップS102)。
【0038】
次に、データ変換部120は、AD変換器106が所定の測定データを生成したか否かを判定する(ステップS104)。データ変換部120が生成していないと判定する場合(ステップS104のNO)、ステップS102からの処理を繰り返す。
【0039】
一方で、データ変換部120が生成したと判定する場合(ステップS104のYES)、記憶部116に記憶させるデータを所定のデータ形式に変換し、通信制御部122は、データ変換部120が生成したデータセットにヘッダ情報などを付与して、出力部110を介して通信部112に供給する(ステップS106)。
【0040】
次に、データ変換部120は、測定処理を終了するか否かを判定する(ステップS108)。データ変換部120が終了しないと判定する場合(ステップS108のNO)、ステップS102からの処理を繰り返す。一方で、データ変換部120が終了すると判定する場合(ステップS104のNO)、全体処理を終了する。
【0041】
図11に基づき、判定装置20の詳細を説明する。
図11は、判定装置20の構成例を示すブロック図である。
図11に示すように、判定装置20は、測定装置10に対して測定データのデータ形式の設定情報を送信可能な装置であり、通信部200と、記憶部202と、データ処理部204と、学習部206と、判定処理部208と、表示制御部210とを、有する。判定装置20は、例えばCPUを含んで構成され、記憶部202に記憶されるプログラムにしたがい各処理部を構成する。なお、本実施形態に係る判定装置20が処理部に対応する。また、各処理部を電子回路により構成してもよい。
【0042】
通信部200は、測定装置10と無線通信する。この通信部200は、測定装置10から送信された測定データを記憶部202に記憶する。
【0043】
記憶部202は、例えばROM、RAM、不揮発性メモリなどで構成される。この記憶部202は、プログラム、及び測定データを記憶する。また、記憶部202は、例えば所定のバッファー容量を有する共用メモリを構成することが可能である。
【0044】
データ処理部204は、フーリエ変換処理、高速フーリエ変換処理、ノイズ低減処理、各種の信号処理を行うことが可能であり、学習用データの生成時には処理結果を記憶部202に記憶させる。また、データ処理部204は、監視対象40判定処理中には、処理後データを判定処理部208に供給する。なお、判定処理部208への入力データ形式は、学習部206の学習結果に応じて変更可能に構成される。このため、データ処理部204も、判定処理部208への出力データ形式に応じて、入力データ数を含むデータ形式を変更可能に構成される。
【0045】
データ処理部204は、データ処理部204への入力データ数を含むデータ形式を設定情報として、通信部200を介して測定装置10に通知する。
【0046】
また、本実施形態の学習では、サンプリング周期、サンプリング間隔、測定データの組み合わせ等変えた学習用データセット及び評価用データセットを複数用意する。例えば、実機ポンプ及び異常再現用ポンプそれぞれの試験を
図2で示した冷却システムを用いて、例えば2ヶ月分のデータである約57000組のデータを学習用データセット及び評価用データセットとして取得する。
【0047】
例えば、異常再現用ポンプでは、故意に故障するように冷却性能を低減したり、モータの回転部に負荷をかけたりする。異常再現用ポンプで取得された測定データには、故意に起こさせた故障のレベルに応じて「正常」、「注意」、「異常」のラベルを付与する。例えば、故障発生前の期間に対応する学習用データ及び評価用データには教師ラベルとして「正常」を関連付ける。故障が明示的に現れない故障発生時前の所定期間に対応する学習用データ及び評価用データには教師ラベルとして「注意」を関連付ける。また、故障の発生後に対応する学習用データ及び評価用データには教師ラベルとして「異常」を関連付ける。
【0048】
さらにまた、データ処理部204は、サンプリング周期、サンプリング間隔、測定データの組み合わせ等に対応する入力データ形式を、通信部200を介して測定装置10に設定情報として通知する。これにより、測定装置10は、サンプリング周期、サンプリング間隔、測定データの組み合わせ等を変更して学習用データ、及び評価用データを生成する。この場合、測定装置10の変換部103は通信に適したデータセットにデータ形式を変更可能となり、通信容量を低下させることが可能となる。なお、測定装置10は、上述(
図10参照)のように操作者により、設定情報を設定してもよい。これにより、データ処理部204により所定の処理を行った学習用データ、及び評価用データを予め用意することが可能となる。
【0049】
学習部206は、監視対象40における故障の予兆を学習する。学習用データは、例えば測定装置10から供給される。上述のように、本実施形態の学習では、サンプリング周期、サンプリング間隔、測定データの組み合わせ等を変えた学習用データセット及び評価用データセットを複数用意する。この場合、統計処理などにより冗長なデータを予め削減後に、サンプリング周期、サンプリング間隔、測定データの組み合わせ等変えたデータセットを複数用意してもよい。評価用データには、上述のように、故意に起こさせた故障のレベルに応じて「正常」、「注意」、「異常」のラベルが付与されている。
【0050】
学習部206は、VAE(VariationalAutoEncoder)、MT法(Mahalanobis-TaguchiSystem)等の教師なし学習によりニューラルネットワークモデルを学習させる。なお、本実施形態では、教師なし学習の例で説明するが、これに限定されず、後述するように教師あり学習によりニューラルネットワークモデルを学習させてもよい。
【0051】
学習部206は、例えばVAEにより、センサが出力する学習用データに基づいて潜在変数モデルと同時確率モデルとを学習する。そして、判定処理部208では、潜在変数モデルと同時確率モデルを用いて評価用データの尤度に相関する異常度を出力する。
【0052】
本実施形態では、学習部206は、学習時の評価として、例えば学習用データ毎に潜在変数モデルと同時確率モデルを学習する。そして、学習部206は、潜在変数モデルと同時確率モデルを用いて評価用データの尤度に相関する異常度を出力させる。この場合、正常時の学習用データの異常度、評価用データの異常度の値の解離性を統計評価値とする。例えば計評価値にはカイ二乗分布の値を用いる。この場合、学習部206は、解離性を示す統計評価が所定値以上で有り、測定データ数がより少なくなる学習用データセットを選択する。このように、学習部206は、所定のサンプリング周期内のデータ数及び組合せを、判定処理部208の判定に必要となる情報量に応じて設定する。これにより、学習部206は、所定のサンプリング周期内のデータ数及び組合せを、解離性を示す統計評価が所定値以上となる学習用データセットに基づき、設定する。すなわち、この選択された学習用データセットのサンプリング周期、サンプリング間隔、測定データの組み合わせを設定情報とする。
【0053】
図12は、学習部206が設定する閾値の例を示す図である。横軸は時間を示し、点線が閾値th1、th2を示す。
図12に示すように、学習部206は、評価用データに対して、尤度に相関する異常度を出力し、判定用の閾値を決定する。例えば評価用データに対する異常度の平均値から標準偏差の2倍を「注意」に対応する閾値th1とし、準偏差の3倍を「異常」に対応する閾値th2として設定する。なお、本実施形態に係る「注意」、及び「異常」が異常発生の予兆の程度に対応する。
【0054】
判定処理部208は、学習部206の学習結果に基づき、例えば入力データに対する異常度と、評価値を出力する。判定処理部208は、異常度が「注意」に対応する閾値th1未満であれば「正常」に対応する値として、例えば1を評価値として出力する。同様に、判定処理部208は、異常度が「注意」に対応する閾値th1以上であり且つ「異常」に対応する閾値th2未満であれば、「注意」に対応する値として、例えば2を評価値として出力する。同様に、判定処理部208は、異常度が「異常」に対応する閾値th2以上であれば、「異常」に対応する値として、例えば3を評価値として出力する。
【0055】
上述のように、判定処理部208への入力データ形式は、学習部206の学習結果(データセットの選択結果)に応じて変更可能に構成されている。このため、データ処理部204も、判定処理部208への出力データ形式に応じて、入力データ数を含むデータ形式を変更される。このため、データ処理部204は、データ処理部204への入力データ数を含むデータ形式を設定情報として、通信部200を介して測定装置10に通知する。
【0056】
図13は、判定処理部208の判定結果が「正常」であり、正常を示す情報を含む画面例を示す図である。
図13では、入力データと判定結果を画像とする例である。
【0057】
図14は、判定処理部208の判定結果が「注意」であり、注意を示す情報を含む画面例を示す図である。
図14では、入力データと判定結果を画像とする例である。
【0058】
表示制御部210は、
図13、14に示すように、判定処理部208の判定結果の情報を含む画像を生成し、表示装置30に表示させる。例えば、表示制御部210は、測定データ、データ処理部204による測定データの処理後のデータ、判定処理部208の出力する異常度、及び測定データに対する「正常」、「注意」、「異常」などの文字を含む情報を画像として、表示装置30に表示させる。
【0059】
ここで、学習部206が所謂教師あり学習を行う場合の処理例を説明する。
図15は、入力層・中間層(隠れ層)・出力層の3層から成るパーセプトロン型のニューラルネットワークモデルの例を模式的に示す図である。
図15では説明を簡単化するため、3層から成るパーセプトロン型を説明しているが、これに限定されない。例えば、中間層は8層などでもよい。或いは、中間層で回帰処理を行う再帰型ニューラルネットワーク(RNN)を用いてもよい。
【0060】
図15に示すように、データ処理部204が処理したデータセットは入力層から読み込まれ、中間層で特徴点抽出のための処理を実行する。本実施形態では、正常・注意・異常の3値分類問題とし、出力層で確率(合計が1)として出力するように学習される。学習アルゴリズはいずれを用いてもよいが、例えば逆誤差伝搬法が用いられる。上述のように、学習用の教師データには、例えば故障の初期状態期間に対して「注意」のカテゴリが関連付けられ、故障の発生時以後に「異常」のカテゴリが関連付けられる。それ以外は、「正常」のカテゴリが関連付けられる。
【0061】
これにより、学習後のニューラルネットワークモデルの出力層の3セルのそれぞれから合計が1となる出力値が出力される。ここで、最も高い数値を出したセルに対応するカテゴリが判別結果となる。例えば、「正常」に対応するセルが最も高い出力値を示せば、判別結果は「正常」となり、「注意」に対応するセルが最も高い出力値を示せば、判別結果は「注意」となり、「異常」に対応するセルが最も高い出力値を示せば、判別結果は「異常」となる。また、例えば、最も高い数値が、所定値以下であれば、判定不能としてもよい。
【0062】
ニューラルネットワークモデルの学習では、所謂過学習が生じてしまう。このため、本実施形態に係る学習部206では、サンプリング周期、サンプリング間隔、測定データの組み合わせ等変えたデータセットを複数用意する。この場合、統計処理などにより冗長なデータを予め削減後に、サンプリング周期、サンプリング間隔、測定データの組み合わせ等変えたデータセットを複数用意してもよい。例えば、学習後のニューラルネットワークモデルを未学習の評価用のデータ、及び学習用のデータに対する判別率を評価する。例えば、学習用のデータに対する判別率が評価用のデータ対する判別率よりも高い場合には、過学習の傾向を示すと考えられる。このため、本実施形態では、学習用のデータに対する判別率と評価用のデータ対する判別率とが同等程度の数値を示す学習用データセットを選択する。そして、この選択された学習用データセットのサンプリング周期、サンプリング間隔、測定データの組み合わせを設定情報とする。
【0063】
判定処理部208は、学習後のニューラルネットワークモデルを用いて判別処理を行う。この場合にも、上述のように、判定処理部208への入力データ形式は、学習部206の学習結果(データセットの選択結果)に応じて変更可能に構成されている。このため、データ処理部204も、判定処理部208への出力データ形式に応じて、入力データ数を含むデータ形式を変更される。これにより、データ処理部204は、データ処理部204への入力データ数を含むデータ形式を設定情報として、通信部200を介して測定装置10に通知する。
【0064】
図16は、判定装置20の学習処理例を示すフローチャートである。ここでは、学習後の設定情報の通知までを説明する。
【0065】
まず、通信部200を介して学習用の測定データ及び評価用の測定データを順次に取得し(ステップS200)、記憶部202に記憶する(ステップS202)。
【0066】
次に、学習部206は、所定数の学習用の測定データ及び評価用の測定データが記憶部202に蓄積されたか否かを判定する(ステップS204)。蓄積されていないと判定する場合(ステップS204のNO)、ステップS200からの処理を繰り返す。一方で、蓄積されたと判定する場合(ステップS204のYES)、学習部206は、データ処理部204にサンプリング周期、サンプリングタイミング、及びデータ種別の組み合わせを変更させ、前処理を行った学習用データセットを生成させ、学習用データセット毎に学習を行う(ステップS206)。
【0067】
次に、学習部206は、学習した潜在変数モデルと同時確率モデルを用いて評価用データの尤度に相関する異常度を学習セット毎に出力し、評価する(ステップS208)。続けて、学習部206は、評価に基づき、判定に用いる潜在変数モデルと同時確率モデルを選択し、判定処理部208の閾値の条件設定を行う(ステップS210)。
【0068】
そして、判定処理部208への入力データ形式は、学習部206の学習結果(データセットの選択結果)に応じて変更され、データ処理部204の出力データ形式、及び入力データ数を含むデータ形式が変更される。これにより、データ処理部204は、データ処理部204への入力データ数を含むデータ形式を学習後の設定情報として、通信部200を介して測定装置10に通知し(ステップS212)、処理を終了する。測定装置10は、
図10と同様の処理を通知された設定情報に従い行う。
【0069】
以上説明したように、本実施形態に係る監視システム1は、取得部102が所定の応答周波数を有するセンサ50a~50hから、監視対象40の測定信号を取得し、変換部103が測定信号を所定のデータ数を含むデータ形式に変換する。この場合、変換部103は、測定データにより監視対象40の判定処理を行う判定処理部208の処理に応じた、所定のサンプリング周期内における所定数のサンプリングにより測定データを生成することとした。これにより、変換部103が判定に不要な冗長なデータを生成することが抑制され、判定処理部208の処理効率が上がると共に、通信容量も低減可能となる。
【0070】
以上、いくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例としてのみ提示したものであり、発明の範囲を限定することを意図したものではない。本明細書で説明した新規な部、方法及びプログラムは、その他の様々な形態で実施することができる。また、本明細書で説明した部、方法及びプログラムの形態に対し、発明の要旨を逸脱しない範囲内で、種々の省略、置換、変更を行うことができる。
【符号の説明】
【0071】
1:監視システム、5:検知装置、50a~50h:センサ、10:測定装置、20:判定装置、40:監視対象、102:取得部、103:変換部、110:出力部、112:通信部、208:判定処理部。