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特開2022-184624マウスピース、及びその生成に用いられる生成方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022184624
(43)【公開日】2022-12-13
(54)【発明の名称】マウスピース、及びその生成に用いられる生成方法
(51)【国際特許分類】
   A61M 1/00 20060101AFI20221206BHJP
【FI】
A61M1/00 160
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021092575
(22)【出願日】2021-06-01
(71)【出願人】
【識別番号】000200677
【氏名又は名称】泉工医科工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】505079785
【氏名又は名称】学校法人神奈川歯科大学
(74)【代理人】
【識別番号】100099645
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 晃司
(74)【代理人】
【識別番号】100161090
【弁理士】
【氏名又は名称】小田原 敬一
(72)【発明者】
【氏名】東泉 貴昭
(72)【発明者】
【氏名】桑名 克之
(72)【発明者】
【氏名】原 豪志
(72)【発明者】
【氏名】小林 健一郎
【テーマコード(参考)】
4C077
【Fターム(参考)】
4C077AA15
4C077DD21
4C077PP07
(57)【要約】
【課題】口腔内に留置される唾液吸引用のチューブをより適切なルートに導くことができるマウスピースを提供する。
【解決手段】マウスピース1は、対象者の口腔内に設置される。また、マウスピース1には、口腔内の唾液溜まりに導くための一定のルートを維持するように唾液吸引用のチューブ4を支持するチューブガイド部3が設けられ、そのチューブガイド部3は、唾液吸引用のチューブ4を支持するために唾液吸引用のチューブ4の外周の半分よりも長い範囲を覆う略逆C型の断面を有する形状に形成される。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象者の口腔内に設置されるマウスピースであって、
前記口腔内の唾液溜まりに導くための一定のルートを維持するように唾液吸引用のチューブを支持するチューブガイド部が設けられ、
前記チューブガイド部は、前記唾液吸引用のチューブを支持するために当該唾液吸引用のチューブの外周の半分よりも長い範囲を覆う形状に形成される、マウスピース。
【請求項2】
前記チューブガイド部は、前記口腔内の口腔前庭側に設けられている、請求項1に記載のマウスピース。
【請求項3】
前記チューブガイド部は、前記口腔内の歯肉部に対応する部分に設けられている、請求項1又は2に記載のマウスピース。
【請求項4】
前記チューブガイド部は、前記唾液吸引用のチューブが挿入されるトンネル状の孔として形成され、当該トンネル状の孔が前記口腔内の歯列に対応する方向に沿って延びるルートを前記一定のルートとして構成するように設けられる、請求項3に記載のマウスピース。
【請求項5】
前記チューブガイド部は、前記一定のルートとして前記口腔内における奥歯の後ろを回り込んで舌の位置まで前記唾液吸引用のチューブを導くルートを形成するように、設けられている、請求項4に記載のマウスピース。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか一項に記載のマウスピースを生成する生成方法であって、
前記対象者の口腔内の型としての口腔型を取得する口腔型取得工程と、
前記口腔型に基づいて当該口腔型に前記チューブガイド部の型として予め用意されたガイド型が付加されたガイド付き口腔型を生成するガイド付き型生成工程と、
前記ガイド付き口腔型に基づいて前記マウスピースを生成するマウスピース生成工程と、
を備える、生成方法。
【請求項7】
前記口腔型に基づいて当該口腔型の模型を生成する模型生成工程を更に備え、
前記ガイド付き型生成工程では、前記模型に前記ガイド型が取り付けられたガイド付き模型が前記ガイド付き口腔型として生成される、請求項6に記載の生成方法。
【請求項8】
前記ガイド付き型生成工程は、前記模型に前記ガイド型を取り付けるための溝を形成する溝形成工程を含み、
前記ガイド型には、前記唾液吸引用のチューブの外周の半分よりも長い範囲を覆う形状を形成するための型として機能する断面形状を有する本体部と、前記模型への取り付けのために前記溝に挿入される凸部として前記本体部に形成される挿入部と、が設けられる、請求項7に記載の生成方法。
【請求項9】
前記模型には、前記口腔内における歯肉部に対応する部分に前記口腔内の歯列に対応する方向に沿って延びるように前記溝が形成され、
前記本体部は、前記唾液吸引用のチューブが挿入されるトンネル状の孔を前記チューブガイド部として形成するために、略円形の断面形状を有し、かつ前記口腔内の歯列に対応する方向に沿って延びる略円柱状に形成される、請求項8に記載の生成方法。
【請求項10】
前記本体部には、前記挿入部として所定間隔毎に位置する複数の挿入部が設けられている、請求項9に記載の生成方法。
【請求項11】
前記ガイド付き型生成工程は、前記本体部、及び当該本体部に設けられる前記挿入部を前記対象者の歯列に応じて前記ガイド型から切断する切断工程を含んでいる、請求項10に記載の生成方法。
【請求項12】
前記ガイド型は、スズにより形成されている、請求項6~11のいずれか一項に記載の生成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、対象者の口腔内に設置されるマウスピース等に関する。
【背景技術】
【0002】
対象者の口腔内に設置されるマウスピースが存在する。このようなマウスピースには、例えば歯列矯正のために対象者の口腔内に設置されるマウスピース等が含まれる。一方、対象者の口腔内には、このようなマウスピースの他にも各種の器具が設置され得る。例えば筋萎縮性側索硬化症(ALS)、筋ジストロフィー、パーキンソン病、アルツハイマー病、意識障害、障害児といった自力で唾液を飲み込めない対象者(患者)には、誤嚥性肺炎等を防止するために唾液を吸引するための唾液吸引チューブが口腔内に設置される場合がある。例えば、一端が渦巻き状の唾液吸引部として、他端が吸引器に接続される接続部として、それぞれ構成される唾液吸引チューブが知られている(例えば非特許文献1参照)。また、このような唾液吸引チューブの留置にマウスピースが活用される場合もある。このようなマウスピースとして、唾液吸引チューブを留置するための部分(以下、チューブガイド部と呼ぶ場合がある)が設けられたマウスピースが知られている(例えば非特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】メラ唾液持続吸引チューブ、[online]、2017年10月4日、泉工医科工業株式会社、[2021年5月17日]、インターネット、<URL:https://www.info.pmda.go.jp/downfiles/md/PDF/380082/380082_15900BZZ01123000_B_01_04.pdf>
【非特許文献2】飯田良平、パーキンソン病の口腔機能管理、VIII.症例より、[online]、2020年12巻4号、日本補綴歯科学会誌、[2021年5月17日]、インターネット、<URL:https://www.jstage.jst.go.jp/article/ajps/12/4/12_316/_pdf/-char/ja>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
非特許文献1の唾液吸引用のチューブは、チューブの内径側に針金が挿入され、対象者の口内形状に合うようにその針金が手で曲げられて使用される場合がある。しかし、この針金を曲げる対応だけでは対象者の口内形状に合わせる限界があり、改善が望まれている。また、唾液吸引用のチューブの唾液吸引部は対象者の口腔内の唾液が溜まりやすい箇所に配置されるべきであるが、そのような箇所は対象者の舌の動きや体の動きに影響を受ける。また、唾液が溜まりやすい箇所は個々において違いもある。このため、唾液吸引部を適切な箇所(唾液溜まり)に唾液吸引部を配置し続けることは容易ではない。さらに、唾液吸引用のチューブは対象者の歯に接するように配置される場合もあり、そのような場合には対象者が唾液吸引用のチューブを噛み切ってしまう可能性もある。唾液吸引用のチューブが噛み切られてしまうと、十分な吸引が実現できなくなる可能性が高い。このため、例えば対象者の就寝時には夜中でも定期的に対象者の唾液の溜まり状況を把握し、必要に応じて唾液吸引用のチューブの吸引部の位置を適切な箇所に移動させるといったケアが一般的に要求される。
【0005】
一方、非特許文献2のマウスピースは、チューブガイド部を介して唾液吸引用のチューブを口腔内に留置するための器具として利用されている。非特許文献2のマウスピースにおいてチューブガイド部の構成は明らかではないが、おそらく下顎に設置される場合には唾液吸引用のチューブを下方から入れるように下方に開口し、単に左右方向への唾液吸引用のチューブのずれを抑制する構成と考えられる。少なくともチューブガイド部は唾液吸引用のチューブを支持することにより上下方向への移動も制限する構成には見えない。結果として、唾液吸引用のチューブがチューブガイド部から外れてしまったり、唾液吸引用のチューブをより適切なルートに十分に導けなかったりする可能性がある。
【0006】
そこで、本発明は、口腔内に留置される唾液吸引用のチューブをより適切なルートに導くことができるマウスピース等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のマウスピースは、対象者の口腔内に設置されるマウスピースであって、前記口腔内の唾液溜まりに導くための一定のルートを維持するように唾液吸引用のチューブを支持するチューブガイド部が設けられ、前記チューブガイド部は、前記唾液吸引用のチューブを支持するために当該唾液吸引用のチューブの外周の半分よりも長い範囲を覆う形状に形成されるものである。
【0008】
本発明のマウスピースによれば、チューブガイド部は、唾液吸引用のチューブの外周の半分よりも長い範囲を覆う形状に形成され、一定のルートを維持するように唾液吸引用のチューブを支持する。このため、例えば、唾液吸引用のチューブの断面は円形に形成される場合が多いが、このような唾液吸引用のチューブの左右方向の移動だけでなく、上下方向、或いは斜め方向といった外周の半分よりも長い範囲において径方向に対する移動を、チューブガイド部を介して制限することができる。結果として、下方等において唾液吸引用のチューブの外周の半分よりも長い範囲にチューブガイド部が開口する場合に比べて、唾液吸引用のチューブの固定度を向上させることができる。これにより、チューブガイド部を介して口腔内に留置される唾液吸引用のチューブをより適切なルートに導くことができる。結果として、唾液吸引用のチューブによる唾液吸引の効果、及び唾液吸引用のチューブの噛み切り抑制の効果の両方の向上を図ることができる。したがって、例えば夜間等における定期的な唾液の溜まり状況の把握等の頻度を抑制することができる。また、チューブガイド部による支持を通じて、口腔内において唾液吸引用のチューブと接触する範囲を減少させることができるので、唾液吸引用のチューブとの接触により生じ得る不快感の低減を期待することもできる。
【0009】
チューブガイド部は、一定のルートの都合等に応じて口腔内の各種の場所に対応するようにマウスピースの適宜の位置に設けられていてよい。例えば、チューブガイド部は口腔内の固有口腔側(歯肉部の内側)に対応する位置に設けられていても、口腔前庭側(歯肉部の外側)に対応する位置に設けられていてもよい。あるいは、チューブガイド部はマウスピースの歯列に対応する部分に設けられていても、歯肉部に対応する部分に設けられていてもよい。具体的には、例えば、本発明のマウスピースの一態様において、前記チューブガイド部は、前記口腔内の口腔前庭側に設けられていてもよい。同様に、本発明のマウスピースの一態様において、前記チューブガイド部は、前記口腔内の歯肉部に対応する部分に設けられていてもよい。
【0010】
チューブガイド部は、唾液吸引用のチューブの外周の半分よりも長い範囲を覆うように支持する適宜の形状に形成されてよい。チューブガイド部は、例えば上方に開口する断面U型(あるいは上向きの断面C型)の形状であっても、外側(本体部2とは反対側)に開口する断面C型の形状であってもよい。つまり、チューブガイド部は、上から唾液吸引用のチューブをはめ込む形のフックとして構成されても、外側から唾液吸引用のチューブをはめ込むC型の留め具として構成されてもよい。また、これらのフック或いは留め具として、複数のフック、或いは複数の留め具がチューブガイド部として設けられていてもよいし、一つのフック等のみがチューブガイド部として設けられていてもよい。一つのフック等は、例えば歯列方向に沿って唾液吸引用のチューブを連続的に支持するように構成されていても、唾液吸引用のチューブの一カ所のみを支持するように構成されていてもよい。このようにチューブガイド部の構成として各種の構成が適宜に採用されてよい。具体的には、例えば、口腔内の歯肉部に対応する部分にチューブガイド部が設けられる態様において、前記チューブガイド部は、前記唾液吸引用のチューブが挿入されるトンネル状の孔として形成され、当該トンネル状の孔が前記口腔内の歯列に対応する方向に沿って延びるルートを前記一定のルートとして構成するように設けられてもよい。
【0011】
チューブガイド部は、例えば唾液溜まりの位置、或いは対象者の口腔内の状況等に応じて、適宜のルートを形成するように設けられてよい。例えば、舌の上に唾液溜まりが形成され、かつ対象者の歯列に欠落がある場合、チューブガイド部は、その欠落を通じて舌の唾液溜まりまで唾液吸引用のチューブを導くルートを形成するように設けられてもよい。具体的には、例えば、対象者の前歯が欠落している場合、チューブガイド部はその欠落した前歯の位置から舌の上に唾液吸引用のチューブを導くルートを形成してもよい。また、例えば、チューブガイド部としてトンネル状の孔が設けられる態様において、前記チューブガイド部は、前記一定のルートとして前記口腔内における奥歯の後ろを回り込んで舌の位置まで前記唾液吸引用のチューブを導くルートを形成するように、設けられていてもよい。この場合、歯の欠落の有無にかかわらず歯との接触を避けて唾液吸引用のチューブを舌まで導くことができるので、舌の部分に唾液溜まりが生じる際の唾液吸引用のチューブの噛み切りを更に抑制することができる。
【0012】
一方、本発明の生成方法は、上述のマウスピースを生成する生成方法であって、前記対象者の口腔内の型としての口腔型を取得する口腔型取得工程と、前記口腔型に基づいて当該口腔型に前記チューブガイド部の型として予め用意されたガイド型が付加されたガイド付き口腔型を生成するガイド付き型生成工程と、前記ガイド付き口腔型に基づいて前記マウスピースを生成するマウスピース生成工程と、を備えるものである。本発明の生成方法によれば、本発明に係るマウスピースを生成することができる。また、このようなマウスピースを、対象者の口腔内に対応するように生成することができる。
【0013】
口腔型は適宜に取得されてよく、例えば3Dスキャン等を通じて電子的なデータとして取得されても、従来のマウスピースの生成と同様に印象材等を通じて物理的に取得されてもよい。同様に、ガイド付き口腔型も適宜に生成されてよく、例えば3Dスキャンの結果に基づいて電子的な口腔型のデータが取得される場合、その電子的な口腔型のデータに電子的なデータとして用意されるガイド型が付加されてガイド付き口腔型が直接的に生成されてもよい。あるいは、電子的な口腔型のデータに基づいて3Dプリンタ等を通じて口腔型の模型が生成されてもよく、その場合、口腔型の模型に物理的なガイド型が付加され、ガイド付き口腔型が生成されてもよい。印象材等によって物理的な口腔型が生成され、その口腔型に基づいて口腔型の模型が生成される場合も同様である。具体的には、例えば、本発明の生成方法の一態様として、前記口腔型に基づいて当該口腔型の模型を生成する模型生成工程を更に備え、前記ガイド付き型生成工程では、前記模型に前記ガイド型が取り付けられたガイド付き模型が前記ガイド付き口腔型として生成される態様が採用されてもよい。
【0014】
ガイド付き模型が生成される場合において、口腔型の模型には適宜にガイド型が取付けられてよい。例えば、ガイド型は口腔型の模型に接着剤を通じて取り付けられてもよい。あるいは、例えばガイド型に針が設けられ、その針が模型に押し込まれて取り付けられてもよい。このように模型及びガイド型の少なくともいずれか一方に、各種の取付け構造が設けられていてもよい。また、模型に取付け構造が設けられる場合、その構造は3Dプリンタ等を通じて模型生成時に設けられてもよいし、模型生成後に各種の器具を通じて形成されもよい。例えば、ガイド付き模型が生成される態様において、前記ガイド付き型生成工程は、前記模型に前記ガイド型を取り付けるための溝を形成する溝形成工程を含み、前記ガイド型には、前記唾液吸引用のチューブの外周の半分よりも長い範囲を覆う形状を形成するための型として機能する断面形状を有する本体部と、前記模型への取り付けのために前記溝に挿入される凸部として前記本体部に形成される挿入部と、が設けられていてもよい。
【0015】
ガイド型の本体部は、チューブガイド部の型としてチューブガイド部に要求される適宜の形状に形成されてよい。例えば、チューブガイド部として複数のフック等が設けられる場合には、そのフック等に対応する形状の複数の本体部が設けられ、各本体部に挿入部が設けられてもよい。あるいは、一つの本体部に、一つ、或いは複数の挿入部が設けられてもよい。同様に、模型には、挿入部の数等のガイド型の構成に応じて、適宜の数の溝等が取付け構造として形成されてよい。例えば、ガイド型に本体部及び挿入部が設けられる態様において、前記模型には、前記口腔内における歯肉部に対応する部分に前記口腔内の歯列に対応する方向に沿って延びるように前記溝が形成され、前記本体部は、前記唾液吸引用のチューブが挿入されるトンネル状の孔を前記チューブガイド部として形成するために、略円形の断面形状を有し、かつ前記口腔内の歯列に対応する方向に沿って延びる略円柱状に形成されてもよい。また、この態様において、前記本体部には、前記挿入部として所定間隔毎に位置する複数の挿入部が設けられていてもよい。
【0016】
ガイド型は、対象者の口腔内の形状にかかわらず一律に用意されてもよいし、対象者の口腔内に合わせて用意されてもよい。また、対象者の口腔内に合わせたガイド型は、予め用意されていても、口腔型の模型に基づいて用意されてもよい。例えば、チューブガイド部として複数のフック等が設けられる場合、唾液吸引用のチューブが一定のルートを維持するために必要な数のガイド型(本体部)が対象者の口腔内に合わせて適宜の間隔で口腔型の模型に取り付けられてもよい。あるいは、一律のガイド型が口腔型の模型に基づいてその模型への取付け前後の適宜の時期に口腔内の形態に合わせた長さで切断されてもよい。つまり、切断等の各種の加工を通じて対象者の口腔内に合ったガイド型が用意されてもよい。例えば、前記ガイド付き型生成工程は、前記本体部、及び当該本体部に設けられる前記挿入部を前記対象者の歯列に応じて前記ガイド型から切断する切断工程を含んでいてもよい。
【0017】
ガイド型は適宜の素材によって構成されてよい。例えば、ガイド型はポリプロピレン(PP)、或いはポリエチレン(PE)といった比較的柔軟な各種の樹脂によって構成されてもよいし、真鍮、アルミニウム、或いは銅といった各種の金属によって構成されてもよい。例えば、本発明の生成方法において、前記ガイド型は、スズにより形成されていてもよい。この場合、ガイド型に必要な剛性を確保しつつ、下顎(歯肉部、或いは歯列)の湾曲等の形状に応じて適宜にガイド型を湾曲させることができる。さらに、口腔内の状況に応じて適宜の長さにおいて比較的容易にガイド型を切断することもできる。
【0018】
なお、以上の説明では本発明の理解を容易にするために添付図面の参照符号を括弧書きにて付記したが、それにより本発明が図示の形態に限定されるものではない。
【発明の効果】
【0019】
以上に説明したように、本発明によれば、口腔内に留置される唾液吸引用のチューブをより適切なルートに導くことができるマウスピース等を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の一形態に係るマウスピースを示す図。
図2図1の例のマウスピースに唾液吸引用のチューブが取り付けられた状態を示す図。
図3】本発明の一形態に係るマウスピースの生成方法の流れを説明するための説明図。
図4】模型生成工程で生成される口腔内の模型の一例を示す図。
図5】取付け部形成工程にて用いられるガイド型の一例を模式的に示す図。
図6】取付け部形成工程にて口腔内の模型に形成される溝を説明するための説明図。
図7】取付け工程にて生成されるガイド付き模型の一例を示す図。
図8】ガイド型の口腔内の模型への取付けを説明するための説明図。
図9】マウスピース生成工程にて実行されるマウスピースの原型の生成を説明するための説明図。
図10】マウスピース生成工程において吸引後にガイド付き模型が取り除かれた状態のフィルムの一例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
[マウスピース]
以下、まず本発明のマウスピースの一形態について説明する。本発明に係るマウスピースは対象者の口腔内に設置される器具の一種である。一般的なマウスピースは歯列の矯正等に用いられる場合が多いが、本発明のマウスピースは唾液溜まりから唾液を吸引する唾液吸引用のチューブを口腔内に一定のルートで留置するために使用される。このため、本発明のマウスピースには、唾液吸引用のチューブを口腔内の唾液溜まりに導くためのガイドが設けられている。図1は、本発明の一形態に係るマウスピース(以下、ガイド付きマウスピースと呼ぶ場合がある)を示す図である。ガイド付きマウスピース1は下顎側、上顎側のいずれに設置されてもよいが、図1の例は下顎側に設置される場合のガイド付きマウスピース1の一例を示している。図1に示すように、ガイド付きマウスピース1には、本体部2、及びチューブガイド部3が設けられる。
【0022】
本体部2は、マウスピースとして対象者の口腔内において下顎の歯、又は歯茎(歯肉部)に設置される(被せられる)部分である。本体部2は、対象者の口腔内の型(形状)にかかわらず一律に成形されても、大きめ、或いは小さめといった口腔内の大きさ等の特徴に基づく適宜の分類に応じて成形されてもよいが、一例として対象者の口腔内の形状に一致する(適宜に遊び範囲のずれが生じてもよい)ようにその形状に合わせて対象者毎に成形される。このため、本体部2は、対象者の口腔内の形状に対応する歯列対応部2A、及び歯肉対応部2Bを含んでいる。歯肉対応部2Bは対象者の歯茎(歯肉部)に対応し、歯茎に被せるように設置される部分である。このため、歯肉対応部2Bには対象者の歯茎の形状が反映される。歯列対応部2Aは対象者の歯列(歯)に対応し、歯列に被せるように設置される部分である。このため、歯列対応部2Aには歯の欠落等、対象者の歯列の状況が反映される。歯列対応部2Aは、全ての歯が欠落している場合等、成形されない(省略される)場合もあるが、図1の例では欠落のない歯列に対応するように成形されている。
【0023】
チューブガイド部3は、口腔内の唾液溜まりに導くための一定のルートを維持するように唾液吸引用のチューブが設置される部分である。一定のルートは適宜に形成されてよいが、一例として口腔内において歯肉部に沿って歯列に対応する方向に延びるように口腔底(口腔内の底部)から離れた位置に形成される。そして、チューブガイド部3は、その一定のルートに沿って唾液吸引用のチューブを支持するように形成される。
【0024】
具体的には、チューブガイド部3は、唾液吸引用のチューブを適宜に支持してよく、例えばチューブガイド部3は唾液吸引用のチューブを断続的に(複数箇所において)支持するように形成されてもよいが、図1の例では連続的に支持するように形成されている。チューブガイド部3が唾液吸引用のチューブを連続的に支持する範囲の長さは適宜でよく、例えば一カ所で支持するようにごく短く形成されてもよい。同様に、チューブガイド部3は、対象者の姿勢等に応じて各種の場所に形成される唾液溜まりの位置に唾液吸引用のチューブを導くように適宜の場所に形成されてよく、例えば前歯に欠損が見られる場合にはその欠損した前歯の位置から舌の上に生じる唾液溜まりに唾液吸引用のチューブを導くようにその欠損した前歯付近に設けられてもよい。このようにチューブガイド部3(換言すれば一定のルート)は、歯の欠落等の口腔内の型、或いは唾液溜まりの位置等に応じて適宜の長さ、及び位置に形成されてよいが、図1の例では右側(対象者から見た場合の左側)の4番の歯(第1小臼歯)から8番の奥歯(第3大臼歯)に至る範囲まで歯列対応部2A(換言すれば対象者の歯肉部)に沿って連続的に延びるように形成されている。同様に、チューブガイド部3は口腔内の固有口腔側(歯肉部の内側)に設けられても、歯列対応部2Aに設けられてもよいが、図1の例では歯肉対応部2Bの口腔前庭側(歯肉部の外側)に設けられている。
【0025】
チューブガイド部3は、ルートの維持に必要な保持力(固定力)を向上させるために唾液吸引用のチューブの外周の半分よりも長い範囲を覆う形状に形成される。チューブガイド部3は、唾液吸引用のチューブの外周の半分よりも長い範囲を覆う形状であれば適宜の形状であってよく、例えば上方に開口する断面U型(あるいは上向きの断面C型)の形状であっても、外側(本体部2とは反対側)に開口する断面C型の形状であってもよい。つまり、チューブガイド部3は、上から唾液吸引用のチューブをはめ込む形のフックとして構成されても、外側から唾液吸引用のチューブをはめ込むC型の留め具として構成されてもよい。これらのいずれの場合も連続的に限らず、断続的に構成されてよく、例えばチューブガイド部3は一つ或いは複数のフック等として構成されてよい。このようにチューブガイド部3は唾液吸引用のチューブの外周の半分よりも長い範囲を覆う形状であれば適宜の形状であってよいが、図1の例では唾液吸引用のチューブが一端から他端まで挿入されるトンネル状の孔として形成されている。
【0026】
図2は、図1の例のガイド付きマウスピース1に唾液吸引用のチューブが取り付けられた状態を示す図である。図2の例は、口腔内の舌の上に生じる唾液溜まりまで導かれるように唾液吸引用のチューブがガイド付きマウスピース1に取り付けられる場合を示している。また、ガイド付きマウスピース1には各種の唾液吸引用のチューブが適宜に取り付けられてよいが、唾液吸引用のチューブの一端側に渦巻き状、或いは略楕円形状の吸引部が形成され、他端側に吸引器(唾液を吸引するための周知の器具)に接続される接続部が形成される場合が多く、図2の例もこのような唾液吸引用のチューブが使用される場合を示している。この場合、図2に示すように、チューブガイド部3には唾液吸引用のチューブ4の接続部4Aが他端(奥歯側)から一端(前歯側)に向かって挿入される。そして、唾液吸引用のチューブ4は、吸引部4Bが奥歯(あるいは本体部2の奥歯に対応する部分)の後ろを回り込んで舌の唾液溜まりに位置するようにチューブガイド部3を介して口腔内に留置される。一例として、このようなルートを形成するようにチューブガイド部3は本体部2に設けられる。
【0027】
また、チューブガイド部3への唾液吸引用のチューブ4の取付け(挿入)、或いは唾液吸引用のチューブ4のルートの維持等は、補助器具なく実現されてもよいが、図2の例では補助器具として針金5が利用されている。具体的には、唾液吸引用のチューブ4に沿って延びるとともに、適宜に湾曲可能な針金5が唾液吸引用のチューブ4に挿入され、針金5が挿入された状態で唾液吸引用のチューブ4はチューブガイド部3に取り付けられている。このようにチューブガイド部3への唾液吸引用のチューブ4の取付け(挿入)を補助するため、或いは奥歯の後ろを回り込み唾液溜まりに吸引部4Bを位置させるためのルートを維持するために、適宜に針金5が用いられてもよい。
【0028】
以上に説明したように、この形態のガイド付きマウスピース1によれば、チューブガイド部3は、唾液吸引用のチューブ4の外周の半分よりも長い範囲を覆う形状に形成され、一定のルートを維持するように唾液吸引用のチューブ4を支持する。より具体的には、チューブガイド部3は、唾液吸引用のチューブ4の外周の半分よりも長い範囲を覆うトンネル状の孔として歯肉対応部2Bに歯列に対応する方向に沿って形成され、奥歯の後ろを回り込んで舌の唾液溜まりに吸引部4Bを導くルートを唾液吸引用のチューブ4が維持するように支持する。このため、唾液吸引用のチューブ4の左右方向の移動だけでなく、上下方向、或いは斜め方向といった外周の半分よりも長い範囲において径方向に対する移動を、チューブガイド部3を介して制限することができる。結果として、唾液吸引用のチューブ4の固定度を向上させることができる。これにより、チューブガイド部3を介して口腔内に留置される唾液吸引用のチューブ4をより適切な一定のルートに導くことができる。結果として、唾液吸引用のチューブ4による唾液吸引の効果、及び唾液吸引用のチューブ4の噛み切り抑制の効果の両方の向上を図ることができ、ひいては例えば夜間等における定期的な唾液の溜まり状況の把握等の頻度を抑制することができる。
【0029】
また、チューブガイド部3が一定のルートとして奥歯の後ろを回り込んで舌の唾液溜まりに吸引部4Bを導くルートを形成することにより、歯の欠落の有無にかかわらず対象者の歯との接触を避けて唾液吸引用のチューブ4を舌の上に生じる唾液溜まりに導くことができるので、唾液吸引用のチューブ4の噛み切りを更に抑制することができる。さらに、チューブガイド部3による支持を通じて、口腔内において唾液吸引用のチューブ4と接触する範囲を減少させることができるので、唾液吸引用のチューブ4との接触により生じ得る不快感の低減を期待することもできる。
【0030】
[マウスピースの生成方法]
次に、ガイド付きマウスピース1の生成方法の一形態について説明する。ガイド付きマウスピース1は適宜に生成されてよく、例えば3Dスキャナによる対象者の口腔内のスキャン及びそのスキャンのデータに基づく3Dプリンタによる複製によって直接的に生成されてもよいが、以下では一例として対象者の口腔内に対応する模型を介して生成される場合について説明する。図3は、本発明の一形態に係るマウスピースの生成方法の流れを説明するための説明図である。より具体的には、図3は、対象者の口腔内に対応する模型を介してガイド付きマウスピース1が生成される場合の流れの一例を示している。図3に示すように、ガイド付きマウスピース1の生成方法は、口腔型取得工程(S1)、模型生成工程(S2)、取付け部形成工程(S3)、取付け工程(S4)、及びマウスピース生成工程(S5)の五つの工程を順に含んでいる。
【0031】
口腔型取得工程(S1)は、対象者の口腔内の型を取得する工程である。口腔型取得工程は適宜に実現されてよく、例えば対象者の口腔内のスキャン(解析、或いは読み取り)により実現されてもよいが、一例として通常のマウスピース(例えば歯列の矯正等を目的とするもの等)の生成時に一般的に実行される歯形(印象)の取得と同様に印象材を用いて実現される。この例において印象材によって取得される口腔内の型(不図示)が本発明の口腔型として機能する。
【0032】
模型生成工程(S2)は、対象者の口腔内の模型を生成する工程である。模型生成工程では、口腔型取得工程における口腔内の型の取得手法に応じて適宜に口腔内の模型が生成されてよいが、一例として印象材を利用して型が取得される場合、通常のマウスピースにおいて歯形の模型の生成時に実行される手法と同様に実現される。具体的には、印象材によって成形される型に石膏を流し込み、その石膏を乾燥させることにより口腔内の模型が生成される。
【0033】
取付け部形成工程(S3)は、口腔内の模型にチューブガイド部3の型となるガイド型を取り付けるための取付け部を成形する工程である。ガイド型は適宜の手法で口腔内の模型に取り付けられてよく、例えばガイド型が接着剤により口腔内の模型に取り付けられる場合には取付け部(換言すれば取付け部形成工程)は省略されてもよい。このように口腔内の模型には取付け手法等に応じた各種の取付け部が適宜に設けられ得るが、一例としてガイド型には模型への取付け用に凸部が設けられる。この場合、取付け部形成工程では、ガイド型の凸部がはめ込まれる(挿入される)溝が取付け部として口腔内の模型に成形される。また、ガイド部には適宜の数及び大きさの凸部が設けられてよく、口腔内の模型にはそのような凸部の数及び大きさに応じた溝が成形される。このような溝は各種の手法により適宜に口腔内の模型に成形されてよいが、一例として所定の器具を介して成形される。また、このような器具として適宜の器具が利用されてよいが、一例として歯や模型等を削るためのルータが利用される。つまり、取付け部形成工程では、ルータを通じて口腔内の模型にガイド部の凸部に応じた溝が成形される。
【0034】
取付け工程(S4)は、取付け部形成工程にて口腔内の模型に成形された取付け部にガイド型を取り付けるための工程である。このため、取付け工程では、ガイド型が取付けられた状態の口腔内の模型としてガイド付き模型が生成される。例えばガイド型に取付け用の凸部が形成される場合、取付け工程では、その凸部が口腔内の模型の溝に挿入され、取り付けられる。また、ガイド付きマウスピース1に設けられるチューブガイド部3の長さ(ルートに沿って延びる方向の幅)は上述のように適宜でよく、例えば口腔内の形状等に応じて適宜に調整され得るが、一例としてその調整は取付け工程において実現される。
【0035】
具体的には、取付け工程では、例えば所望の長さに亘って複数のフック型のチューブガイド部3が形成されるように複数のガイド型が取り付けられてもよいが、一例として口腔内の模型にはトンネル状の孔に対応する一つのガイド型が取り付けられ、そのガイド型は長さの調整が可能に構成される。ガイド型の長さの調整は適宜に実現されてよいが、一例として切断可能な素材によりガイド型が構成される。つまり、ガイド型は切断により長さが調整される。この場合、取付け工程は、ガイド型を所望の長さ(トンネル状の孔として形成されるべきチューブガイド部3の長さ)で切断する切断工程を含んでいる。このような切断は模型への取付け前に実行されてもよいが、一例として取付け後に実行される。つまり、取付け工程では、口腔内の模型に成形された溝に凸部を介してガイド型が取り付けられ、そのガイド型は取付け後に適度な長さ(例えば4番の歯から8番の奥歯に至る範囲までの長さ)に切断される。取付け工程では、一例としてこのようにガイド型の取付け、及び調整(切断)を経てガイド付き模型が生成される。この例において、取付け部形成工程及び取付け工程の組合せが本発明のガイド付き型生成工程として機能する。また、それらの工程のうち、取付け部形成工程が本発明の溝形成工程として機能する。
【0036】
マウスピース生成工程(S5)は、ガイド型が取り付けられた口腔内の模型に対応するガイド付き模型に基づいてガイド付きマウスピース1を生成するための工程である。マウスピース生成工程は、口腔内の模型に基づいて通常のマウスピースが生成される場合と同様に実現されてよいが、一例として次のように実行される。具体的には、マウスピース生成工程では、まず所定の装置によりガイド付きマウスピース1のもととなるフィルムが加熱される。フィルムは熱成形可能な周知の適宜の素材によって構成されてよい。続いてガイド付き模型に加熱されたフィルムが被せられ、フィルムがガイド付き模型の形状に成形されるように吸引される。その後、ガイド付き模型が取り除かれると、ガイド付きマウスピース1の原型となるフィルムが残る。そのフィルムには不要な部分が残っている可能性があるため、それらの不要な部分が原型のフィルムから切り落とされる。そして、その原型フィルムの残った部分(不要部分が切り落とされた後の部分)がガイド付きマウスピース1として生成される。
【0037】
図4図10を参照して、模型生成工程、取付け部形成工程、取付け工程、及びマウスピース生成工程について更に説明する。図4は、模型生成工程で生成される口腔内の模型の一例を示す図である。図4に示すように、口腔内の模型21は、対象者の下顎に対応するように成形される。口腔内の模型21は歯肉部の適宜の範囲に対応するように成形されてよいが、図4の例では口腔底(口腔前庭側の底部)に至る範囲まで対応するように成形されている。具体的には、口腔内の模型21は、歯列模型部22、歯肉模型部23、及び口腔底模型部24を含んでいる。歯列模型部22は、下顎の歯列に対応する部分である。歯肉模型部23は下顎の歯肉部に対応する部分である。口腔底模型部24は下顎の口腔底(口腔前庭側の底部)に対応する部分である。
【0038】
図5は、取付け部形成工程にて用いられるガイド型の一例を模式的に示す図である。図5の例において(上面)、(正面)及び(側面)は、ガイド型を上から見た上面図、正面から見た正面図、及び側面から見た側面図をそれぞれ示している。図5に示すように、ガイド型31には、本体部32、及び挿入部33が設けられる。本体部32は、ガイド付きマウスピース1においてチューブガイド部3の型として機能する部分である。より具体的には、本体部32は、チューブガイド部3としてトンネル状の孔を形成するための型として機能する部分である。このため、図5の(側面)に示すように、本体部32は、トンネル状の孔の型として機能するように、略円形の断面形状を有している。断面形状の径32Rは、チューブガイド部3として形成されるべきトンネル状の孔の大きさ応じて適宜の大きさに設定されてよいが、一例として約直径3mmに設定される。ガイド型31はチューブガイド部3の孔として求められる適宜の径を有していてよいが、唾液吸引用のチューブ4は3mm、或いは4mmの径を有する場合が多い。ガイド付きマウスピース1の素材として利用されるフィルムの伸縮性により、チューブガイド部3の孔の直径が3mmであれば、3mm、及び4mmのいずれの唾液吸引用のチューブ4も装着可能であり、かつ安定する可能性が高い。
【0039】
また、本体部32は、図5の(正面)に示すように、正面側から見た場合、口腔内の模型21において歯列方向に沿って延びるように横方向に所定の長さ32Wを有する。本体部32の長さ32Wは適宜であってよいが、一例として約100mmに形成される。つまり、本体部32は横方向に所定の長さ32Wを有する略円柱状に形成される。
【0040】
挿入部33は、本体部32に設けられ、口腔内の模型21に形成される溝に取り付けられる(挿入される)凸部として機能する部分である。このため、図5の例の(側面)に示すように、挿入部33は、略円柱状の断面において本体部32から突出するように形成される。挿入部33の大きさは適宜に設定されてよく、例えば厚さ33Dは口腔内の模型21に形成される溝への取付けの要請等に応じて適宜に設定されてよく、凸部としての高さ33Hも同様に溝への取付けや安定等の観点から適宜に設定されてよい。このように挿入部33には各種の観点から適宜の大きさが設定され得るが、一例として厚さ33Dが約1mmに、高さ33Hが約6.5mm(本体部32に底部から測定した場合の大きさ。本体部32の上部から測定した場合の大きさ、つまり凸部として本体部32から突出している部分の大きさは約3.5mm)に、それぞれ設定される。チューブガイド部3としてのトンネル状の孔と歯肉対応部2Bとの間には、ある程度の距離が設けられる方が多くの場合において唾液吸引のチューブ4の外周の半分を超えて包み易く、離脱の抑制につながる。このため、挿入部33にはこのような高さHが形成される。
【0041】
また、本体部32には適宜の数の挿入部33が設けられてよく、例えば本体部32の一端から他端まで連続的に延びる一つの挿入部33が設けられていてもよいが、一例として図5の(正面)及び(上面)に示すように、本体部32の長さ方向に沿って所定間隔32D毎に位置する複数の挿入部33が設けられる。所定間隔32Dとして適宜の間隔が採用されてよいが、一例として約15mmの間隔が採用される。また、本体部32の左右の端部から最初の挿入部33までの間隔も他の間隔と一致していてもよいが、一例として両端部の間隔32Eは約7.5mmと少し短めに形成される(図5の例では左端のみ符号が付されているが、右端も同様)。同様に、各挿入部33は、本体部32の長さ方向に沿って横幅33Wを有するように形成される。各挿入部33の横幅33Wは適宜の大きさであってよいが、一例として約5mmに設定される。結果として、本体部32には、鋸の歯のごとく所定間隔32D毎に本体部32から突出するように5つの挿入部33が設けられる。
【0042】
ガイド型31の素材は、チューブガイド部3の型として機能し得る適宜の素材であってよいが、下顎の湾曲に合わせて口腔内の模型21の歯肉模型部23には一般的に湾曲が形成されるため、この湾曲に合わせて湾曲するように比較的柔軟な素材であることが好ましい。例えば、このような素材としてPP(ポリプロピレン)、或いはPE(ポリエチレン)といった樹脂が採用されてもよいが、図5の例ではスズ(錫)が採用されている。スズは比較的柔軟なため、湾曲可能であり、かつ所望の長さにおいて適宜に切断も可能である。
【0043】
図6は、取付け部形成工程にて口腔内の模型21に形成される溝を説明するための説明図である。図6は、溝が形成された後の口腔内の模型21の一部を横(側方)から見た状態を模式的に示している。図6に示すように、口腔内の模型21には、取付け部形成工程において歯肉模型部23の口腔前庭側に歯列方向に沿って延びるように溝25が設けられる。より具体的には、取付け部形成工程では、例えばルータ等の所定の器具を通じて一定のルート(あるいはチューブガイド部3)の長さに応じた適宜の長さ(例えば4番の歯から8番の奥歯に至る範囲までの長さ)で溝25が形成される。溝25の高さ25Hは、ガイド型の凸部の大きさ(厚さ33D)に応じた適宜の高さであってよいが、一例として挿入部33の厚さ33Dに対応する約1mmに形成される。また、溝25が設けられる位置は、口腔底模型部24(換言すれば口腔底)から離れた適宜の位置であってよい。
【0044】
図7は、取付け工程にて生成されるガイド付き模型の一例を示す図である。図7に示すように、ガイド付き模型41は口腔内の模型21及びガイド型31を含んでいる。具体的には、取付け工程では、口腔内の模型21の内側(固有口腔側)、或いは外側(口腔前庭側)といったチューブガイド部3が形成されるべき側にガイド型31が取り付けられるが、図7の例ではガイド型31が口腔前庭側に位置するように口腔内の模型21に取り付けられている。また、歯肉模型部23は下顎の湾曲に合わせて湾曲しているため、ガイド型31も歯肉模型部23の湾曲に合わせて湾曲するように取り付けられている。さらに、スズによって構成されるガイド型31は切断も容易であるため、取付け工程において取付けの前後の適宜の時期に適切な長さに切断されるが、図7の例では図1のガイド付きマウスピース1に対応するように右側の4番の歯から8番の奥歯に至る範囲までの長さにおいて切断されている。この例においてガイド付き模型41が本発明のガイド付き口腔型として機能する。
【0045】
図8は、ガイド型31の口腔内の模型21への取付けを説明するための説明図である。図8の例は、図7のガイド付き模型41の一部を上から見た場合を模式的に示している。より具体的には、図8の例は、図7のガイド付き模型41においてガイド型31が取り付けられている部分が拡大された平面図を模式的に示している。また、ガイド付き模型41を上から見た場合、溝25は実際には見えないが、図8の例では説明の便宜のため溝25が見えない部分として破線によって示されている。図8に示すように、口腔内の模型21に溝25に挿入部33が挿入され、口腔内の模型21にガイド型31は取り付けられる。挿入部33の溝25に挿入されている部分も溝25と同様に実際には見えないが、図8の例では破線で示されている。挿入部33の溝25への挿入の程度は適宜であってよい。例えば、歯肉模型部23と本体部32との間にある程度の距離が形成され、かつガイド型31が口腔内の模型21に安定的に取り付けられる程度が好ましい。
【0046】
図9は、マウスピース生成工程にて実行されるガイド付きマウスピース1の原型の生成を説明するための説明図である。具体的には、図9の例は、図8の例のガイド付き模型41にフィルムが吸引された場合のIX-IX線における断面図を模式的に示している。図9に示すように、ガイド付き模型41にフィルム51が吸引されると、ガイド型31の形状に合わせた形状にフィルム51が成形される。このため、吸引後にガイド付き模型41が取り除かれると、口腔内の模型21の部分だけでなく、ガイド型31の部分にも空間(空洞)が形成される。ガイド型31の本体部32は略円形の断面形状を有している。このため、ガイド型31の本体部32に対応する部分の空間も、同様の略円形の断面形状を有するトンネル状の孔として形成される。より具体的には、フィルム51には、挿入部33の厚さ33Dに対応する部分が模型21側に開口し、それ以外の部分において唾液吸引用のチューブ4の外周を覆う略逆C型の断面形状を有する孔としてチューブガイド部3が形成される。
【0047】
図10は、マウスピース生成工程において吸引後にガイド付き模型41が取り除かれた状態のフィルム51の一例を示す図である。図10に示すように、ガイド付き模型41が取り除かれた状態のフィルム51は、ガイド付きマウスピース1の原型を有している。具体的には、吸引後にガイド付き模型41が取り除かれた状態のフィルム51(以下、原型51と呼ぶ場合がある)は、ガイド付きマウスピース1に対応する部分を含んでいるが、その他にも不要な部分が含まれる場合が多い。例えば、図10の例ではガイド付きマウスピース1に対応する本体部2において歯肉対応部2Bの延長上に口腔底(口腔前庭側の底部)に対応する口腔底対応部2Cが更に形成されているが、この部分はガイド付きマウスピース1には不要である。原型51には、このような口腔底対応部2Cに限らず、ガイド付きマウスピース1に不要な各種の部分が含まれている場合が多い。このため、マウスピース生成工程では、このような口腔底対応部2C等の不要部分が原型51から切り落とされる。また、図10の例では、チューブガイド部3の両端は既に開口しており、唾液吸引用のチューブ4が挿入可能になっているが、吸引直後にはフィルム51にて塞がれている場合が多い。この場合、唾液吸引用のチューブ4の挿入を妨げる開口部分のフィルム51は不要部分に含まれ、不要部分の切り落としにはチューブガイド部3の両端を開口させる(開通させる)ための処理(加工)が含まれる。そして、原型51から口腔底対応部2C等の不要部分が切り落とされると、ガイド付きマウスピース1が得られる。つまり、マウスピース生成工程では、吸引後に不要部分の切り落としを経て、ガイド付きマウスピース1が生成される。
【0048】
以上に説明したように、この形態の生成方法によれば、本発明に係るガイド付きマウスピース1を生成することができる。特に、対象者の口腔内の模型21に基づいてガイド付きマウスピース1が生成される。このため、各対象者の口腔内に対応するように各対象者の特徴を反映したガイド付きマウスピース1を生成することができる。また、ガイド型31の素材としてスズが利用される場合、チューブガイド部3の型として必要な剛性を確保しつつ、下顎の湾曲等の形状に応じて適宜にガイド型31を湾曲させることができる。さらに、下顎の大きさ等、口腔内の状況に応じて適宜の長さにおいて比較的容易にガイド型31を切断することができる。これらにより、対象者の口腔内の状況により適したチューブガイド部3を成形することができる。
【0049】
本発明は上述した各形態に限定されることなく、各種の変形又は変更が施された形態にて実施されてよい。例えば、上述の生成方法の形態では、口腔内の模型21を介してガイド付きマウスピース1が生成されている。しかし、本発明の生成方法は、このような方法に限定されない。例えば、ガイド付きマウスピース1は、上述のように口腔内のスキャン、及びそのスキャンのデータに基づく複製(例えば3Dプリンタ)によって生成されてよく、その場合、ガイド付き模型41の生成が省略されてもよい。つまり、ガイド付き模型41の生成が省略され、直接的にガイド付きマウスピース1が生成されてもよい。
【0050】
具体的には、口腔内のスキャンの結果に基づいてデータとして電子的に口腔内の模型が生成され、そこに予め用意されたガイド型に対応するデータが付加されてよい。そして、それらの電子的な口腔内の模型及びガイド型のデータに基づいて電子的なガイド付き模型が生成され、その電子的なガイド付き模型に基づいてガイド付きマウスピース1が生成されてよい。あるいは、電子的なガイド付き模型に基づいて物理的なガイド付き模型41が生成され、そのガイド付き模型41に基づいてガイド付きマウスピース1が生成されてもよい。一方で、口腔内のスキャン等がガイド付きマウスピース1の生成に利用される場合でも、スキャン結果に基づいて口腔内の模型21が生成されてもよい。そして、その口腔内の模型21及びガイド型31に基づいて上述のようにガイド付き模型41が生成され、そのガイド付き模型41に基づいてガイド付きマウスピース1が生成されてもよい。
【0051】
また、図7の生成方法の各工程等、ガイド付きマウスピース1を生成するための各工程は適宜にコンピュータ制御により実現されてよい。例えば、ルータ等の各工程において使用される機器はコンピュータによって制御されてよい。また、3Dスキャン及び3Dプリンタによってガイド付きマウスピース1が生成される場合、3Dスキャン等は適宜にコンピュータ制御により実現されてよい。これらの場合、本発明の生成方法は、3Dスキャナ等の動作を制御するためのコンピュータプログラム(あるいはコンピュータの制御方法)として実現されてもよい。
【符号の説明】
【0052】
1 ガイド付きマウスピース(マウスピース)
3 チューブガイド部
4 唾液吸引用のチューブ
21 口腔型の模型
25 溝
31 ガイド型
32 本体部
33 挿入部
41 ガイド付き模型(ガイド付き口腔型)
32D 所定間隔
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10