IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社キーレックスの特許一覧 ▶ 株式会社ワイテックの特許一覧 ▶ 株式会社キーレックス・ワイテック・インターナショナルの特許一覧

<>
  • 特開-ブランク材の位置合わせ装置 図1
  • 特開-ブランク材の位置合わせ装置 図2
  • 特開-ブランク材の位置合わせ装置 図3
  • 特開-ブランク材の位置合わせ装置 図4
  • 特開-ブランク材の位置合わせ装置 図5
  • 特開-ブランク材の位置合わせ装置 図6
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022184629
(43)【公開日】2022-12-13
(54)【発明の名称】ブランク材の位置合わせ装置
(51)【国際特許分類】
   B21D 43/18 20060101AFI20221206BHJP
   B21D 43/00 20060101ALI20221206BHJP
【FI】
B21D43/18 A
B21D43/00 E
B21D43/00 G
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021092580
(22)【出願日】2021-06-01
(71)【出願人】
【識別番号】590000721
【氏名又は名称】株式会社キーレックス
(71)【出願人】
【識別番号】500213915
【氏名又は名称】株式会社ワイテック
(71)【出願人】
【識別番号】520200584
【氏名又は名称】株式会社キーレックス・ワイテック・インターナショナル
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中村 光雄
(72)【発明者】
【氏名】佐伯 優
(57)【要約】
【課題】生産性への影響が小さくかつ単純な構造の、ブランク材の位置合わせ装置を提供する。
【解決手段】コンベヤ20により搬送されているブランク材Wを、コンベヤ20に載置された載置位置とコンベヤ20よりも上側の上方位置との間で移動させるリフト装置31と、上方位置に位置するブランク材Wに、外力を加えて、ブランク材Wを位置合わせするセンタリング装置35と、を備え、リフト装置31のステージ32は、ブランク材Wが載置される水平面状の載置面部32bと、ブランク材Wを磁力により該載置面部32bに引きつけるための磁気機構34とを有し、磁気機構34は、ブランク材Wに対する磁力を調整可能に構成されている。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部から受け取ったブランク材を、コンベヤにより次工程の装置に搬送する際に、該ブランク材の位置合わせを行うための、ブランク材の位置合わせ装置であって、
前記ブランク材が載置するステージ及び前記ステージを昇降させる昇降装置を有し、前記コンベヤにより搬送されている前記ブランク材を、前記コンベヤに載置された載置位置と前記コンベヤよりも上側の上方位置との間で移動させるリフト装置と、
前記上方位置に位置する前記ブランク材に、上下方向と直交しかつ前記コンベヤの搬送方向と交差する方向の外力を加えて、該ブランク材を位置合わせする位置調整装置と、を備え、
前記ステージは、前記ブランク材が載置される水平面状の載置面部と、前記ブランク材を磁力により該載置面部に引きつけるための磁気機構とを有し、
前記磁気機構は、前記ブランク材に対する磁力を調整可能に構成されていることを特徴とするブランク材の位置合わせ装置。
【請求項2】
請求項1に記載のブランク材の位置合わせ装置において、
前記磁気機構は、磁石を含み、
前記ステージは、前記磁石を収容する磁石収容部を有し、
前記磁石が前記磁石収容部に収容された状態において、前記磁石と前記ステージの上面との間には、前記ブランク材に対する磁力を調整するための磁力調整空間が形成され、
前記磁気機構は、前記磁力調整空間の大きさを調整することで、前記ブランク材に対する磁力を調整することを特徴とするブランク材の位置合わせ装置。
【請求項3】
請求項2に記載のブランク材の位置合わせ装置において、
前記磁気機構は、前記磁石を前記磁石収容部内で変位させて、前記磁力調整空間の大きさを調整するための磁石変位機構を有することを特徴とするブランク材の位置合わせ装置。
【請求項4】
請求項2又は3に記載のブランク材の位置合わせ装置において、
前記コンベヤは、磁石の磁力により前記ブランク材を保持して搬送するマグネットコンベヤであり、
前記磁気機構に用いられる前記磁石は、前記コンベヤに用いられる磁石と同じ種類の磁石であることを特徴とするブランク材の位置合わせ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
ここに開示された技術は、ブランク材の位置合わせ装置に関する技術分野に属する。
【背景技術】
【0002】
一般に自動車の車体に用いられる部品の材料となるブランク材は、コンベヤを用いてプレス装置の近くにまで搬送される。プレス装置の近くに搬送されたブランク材は、トランスファー装置によりプレス装置に供給される。このとき、ブランク材が適切な位置に位置していなければ、トランスファー装置による供給が適切に進まず、エラーが生じてしまったり、プレス装置による形状加工が適切に行えなかったりする。このため、コンベヤに対するブランク材の位置合わせを行うことが検討されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、トランスファー装置によりブランク材を移動させる前に、ブランク材の姿勢を調整する姿勢調整装置が開示されている。この姿勢調整装置は、モータによりスクリューを回転させることでブランク材をX方向に移動させるX外力負荷手段と、モータにより、ステージを移動させることでブランク材をY方向に移動させるY外力負荷手段と、リフトシリンダによりブランク材をZ方向に移動させるZ外力負荷手段とを有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平1-241338号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載のような姿勢調整装置は、部品点数が多く装置の大型化が避けられない。また、特許文献1に記載のような姿勢調整装置は、モータやシリンダの制御が複雑であって、位置合わせに時間を要する。さらに、特許文献1に記載のような姿勢調整装置は、各部品の保全管理に多くの工数を必要とするため、生産性の悪化が懸念される。
【0006】
ここに開示された技術は斯かる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、生産性への影響が小さくかつ単純な構造の、ブランク材の位置合わせ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するために、ここに開示された技術の第1の態様は、外部から受け取ったブランク材を、コンベヤにより次工程の装置に搬送する際に、該ブランク材の位置合わせを行うための、ブランク材の位置合わせ装置を対象として、前記ブランク材が載置するステージ及び前記ステージを昇降させる昇降装置を有し、前記コンベヤにより搬送されている前記ブランク材を、前記コンベヤに載置された載置位置と前記コンベヤよりも上側の上方位置との間で移動させるリフト装置と、前記上方位置に位置する前記ブランク材に、上下方向と直交しかつ前記コンベヤの搬送方向と交差する方向の外力を加えて、該ブランク材を位置合わせする位置調整装置と、を備え、前記ステージは、前記ブランク材が載置される水平面状の載置面部と、前記ブランク材を磁力により該載置面部に引きつけるための磁気機構とを有し、前記磁気機構は、前記ブランク材に対する磁力を調整可能に構成されている、ことを特徴とする。
【0008】
ここに開示された技術の第2の態様は、第1の態様において、前記磁気機構は、磁石を含み、前記ステージは、前記磁石を収容する磁石収容部を有し、前記磁石が前記磁石収容部に収容された状態において、前記磁石と前記ステージの上面との間には、前記ブランク材に対する磁力を調整するための磁力調整空間が形成され、前記磁気機構は、前記磁力調整空間の大きさを調整することで、前記ブランク材に対する磁力を調整する、ことを特徴とする。
【0009】
ここに開示された技術の第3の態様は、第2の態様において、前記磁石を前記磁石収容部内で変位させて、前記磁力調整空間の大きさを調整するための磁石変位機構を有する、ことを特徴とする。
【0010】
ここに開示された技術の第4の態様は、第2又は第3の態様において、前記コンベヤは、磁石の磁力により前記ブランク材を保持して搬送するマグネットコンベヤであり、前記磁気機構に用いられる磁石は、前記コンベヤに用いられる磁石と同じ種類の磁石である、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
ここに開示された技術の第1の態様によると、リフト装置によりブランク材を上方位置に移動させることにより、ブランク材がコンベヤから離れるため、ブランク材にはコンベヤからの搬送方向の力が入力されなくなる。また、ステージは、水平面状の載置面部とブランク材を載置面部に引きつける磁気機構を有するため、ブランク材を水平にしたまま上方位置に位置させることができる。特に、磁気機構は磁力を調整可能であるため、ブランク材の種類に応じて、水平姿勢を保持しつつ外力により変位させることができる程度の適切な保持力をブランク材に付与することができる。そして、ステージ上に保持されたブランク材に位置調整装置で外力を加えることで、ブランク材の位置を、コンベヤの幅方向の中央とブランク材の幅方向の中央とが一致する位置など、適切な位置に合わせることができる。
【0012】
このように、従来のような複雑な構造が不要であるとともに、装置同士の連携制御も単純化できる。また、構造や制御が単純になることで、各装置の保全管理に要する工数が削減される。したがって、生産性への影響を小さくしつつ、構造を単純化することができる。
【0013】
ここに開示された技術の第2の態様によると、磁力調整空間の大きさを調整することで、ブランク材に付与する磁力を容易に調整することができる。これにより、ブランク材の種類に応じて、該ブランク材を適切な保持力でもって保持することができる。これにより、生産性への影響をより小さくすることができる。
【0014】
ここに開示された技術の第3の態様によると、磁石変位機構により、磁力調整空間の大きさが調整されるため、ブランク材に付与する磁力を容易に調整することができる。これにより、生産性への影響をより小さくすることができる。
【0015】
ここに開示された技術の第4の態様によると、コンベヤがマグネットコンベヤであることにより、搬送中にブランク材の位置がずれることを出来る限り抑制することができる。また、磁力調整空間により、磁石をマグネットコンベヤの磁石と同じにしつつ、ブランク材に付与する磁力を、マグネットコンベヤがブランク材に付与する磁力よりも小さくすることができる。これにより、ブランク材が上方位置に位置するときには、ブランク材の位置調整を容易にするとともに、ブランク材が載置位置に位置するときにはブランク材の位置が容易には変化しないようにすることができる。また、磁石を共通化することにより、保全管理を容易にするとともに、コストを出来る限り抑制することができる。したがって、生産性への影響をより小さくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1図1は、例示的な実施形態1に係る位置合わせ装置が適用された生産ラインのレイアウト図である。
図2図2は、生産ラインを上側から見た平面図である。
図3図3は、位置合わせ装置の正面図である。
図4図4は、ステージ本体を、磁石収容部を通る平面で切断した断面図である。
図5図5は、位置合わせ装置の変形例における図4相当図である。
図6図6は、実施形態2に係る位置合わせ装置における図4相当図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、例示的な実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0018】
(実施形態1)
〈生産ライン〉
図1及び図2は、本実施形態1に係る位置合わせ装置(後述のセンタリング機構30)が設けられた生産ライン1を示す。この生産ライン1は、ワークとしてのブランク材Wを加工して、車体フレームを生産するラインである。ブランク材Wは、磁力によって引きつけられる材質のものであり、例えば鋼板である。
【0019】
生産ライン1は、いわゆるトラスファープレス装置の構成となっている。生産ライン1は、上流側から順に、ブランク材Wをコンベヤ20に供給するディスタックフィーダ10と、ブランク材Wを搬送するコンベヤ20と、ブランク材Wのコンベヤ20に対する位置合わせを行うセンタリング機構30と、センタリングの後にブランク材Wをプレス装置50に搬送するトランスファー装置40と、ブランク材Wをプレス加工するプレス装置50と、を有する。尚、図1及び図2では、トランスファー装置40及びプレス装置50は、それぞれ1つだけ図示しているが、プレス工程の数に応じて複数設けられていてもよい。
【0020】
ディスタックフィーダ10は、基台11に重ねて載置されたブランク材Wのうち最も上側に位置するブランク材Wをコンベヤ20に供給する。ディスタックフィーダ10は、真空吸着器12を有する。ディスタックフィーダ10は、ブランク材Wを真空吸着して、コンベヤ20の上に移動した後、吸着を解除して、ブランク材Wをコンベヤ20に載置させる。これにより、ブランク材Wがコンベヤ20に供給される。
【0021】
コンベヤ20は、所謂マグネットコンベヤである。コンベヤ20は、搬送方向と直交する方向に離間して配置された2つのコンベヤ本体21を有する。各コンベヤ本体21は、不図示のローラに掛け回された無端状のベルト22と、該ベルト22に設けられた複数のコンベヤ用磁石23と、をそれぞれ有する。コンベヤ20は、コンベヤ用磁石23の磁力により、ベルト22に載置されたブランク材Wの位置ずれが起こらないように保持する。コンベヤ20は、各コンベヤ本体21の前記各ローラを同期して回転させて、各ベルト22をコンベヤ用磁石23と共に移動させることで、ブランク材Wを搬送する。
【0022】
位置合わせ装置としてのセンタリング機構30は、ブランク材Wを、コンベヤ20により次工程の装置(ここではトランスファー装置40)に搬送する際に、該ブランク材Wの位置合わせを行う。ここでは、センタリング機構30は、プレス装置50のセンターラインC上にブランク材Wの幅方向の中央が位置するように、ブランク材Wを位置合わせする。図2に示すように、ディスタックフィーダ10がブランク材Wをコンベヤ20に載置させるときには、ブランク材Wの幅方向の中央は、センターラインCに対して若干ずれてしまう。このため、センタリング機構30を用いて、ブランク材Wを適切な位置に位置合わせする。センタリング機構30は、ブランク材Wに、上下方向と直交しかつコンベヤ20の搬送方向X1と交差する方向、より詳しくは、上下方向及び搬送方向X1の両方に直交する所定方向X2方向の外力を加えて、ブランク材Wを位置合わせする。センタリング機構30の詳細については後述する。
【0023】
トランスファー装置40は、図2に示すように、コンベヤ20により搬送されたブランク材Wの幅方向の両側端部をそれぞれ挟持して、プレス装置50に供給する。トランスファー装置40は、ブランク材Wを挟持する2つの搬送フィンガー41と、各搬送フィンガー41をそれぞれ移動させるための2つのガイドレール42とを有する。搬送フィンガー41が、ブランク材Wの幅方向の両側端部をそれぞれ挟持した状態でガイドレールに42に沿って移動することで、ブランク材Wがプレス装置50に供給される。
【0024】
プレス装置50は、例えば、メカプレスである。プレス装置50は、ブランク材Wが下型51にセットされた状態で、上型52を下型51に向かって下降させることにより、ブランク材Wを、上型52の上側加圧面及び下型51の下側加圧面に沿った形状に加圧成型する。成型後のブランク材Wは、トランスファー装置40により次工程に搬送される。
【0025】
図示は省略するが、生産ライン1には、ディスタックフィーダ10、コンベヤ20、センタリング機構30、トランスファー装置40、及びプレス装置50とそれぞれ電気的に接続され、かつ各装置をそれぞれ制御する制御装置が設けられている。制御装置は、CPUを有するプロセッサ、複数のモジュールが格納されたメモリ等を有する。制御装置の制御機能は、メモリのモジュールにソフトウェアとして格納されている。制御装置は、ディスタックフィーダ10、コンベヤ20、センタリング機構30、トランスファー装置40、及びプレス装置50を、それぞれ同時進行で作動させるように制御する。
【0026】
〈センタリング機構の構成〉
次にセンタリング機構30の構成について、図3及び図4を参照しながら詳細に説明する。センタリング機構30は、コンベヤ20により搬送されているブランク材Wを、コンベヤ20に載置された載置位置(図3に破線で示す)と、コンベヤ20よりも上側の上方位置との間で移動させるリフト装置31と、上方位置に位置するブランク材Wに、所定方向X2の外力を加えて、ブランク材Wを位置合わせする一対のセンタリング装置35と、を有する。
【0027】
リフト装置31は、図2及び図3に示すように、2つのコンベヤ本体21の間に配置されている。リフト装置31は、ブランク材Wが載置するステージ32と、ステージ32を昇降させる昇降装置33とを有する。昇降装置33は、エアシリンダで構成されていて、空気の力により上下動するシリンダロッド33aを有する。シリンダロッド33aの上端部にステージ32が設けられている。昇降装置33は、コンベヤ用磁石23がブランク材Wに付与する磁力に打ち勝って、ステージ32と共にブランク材Wを上方位置に移動させることができる程度の力を生成可能に構成されている。
【0028】
ステージ32は、側面視で台形状をなす2つのステージ本体32aを有する。各ステージ本体32aは、それぞれ樹脂製である。より具体的には、各ステージ本体32aは、ブランク材Wよりも柔らかい材質の樹脂で構成されている。
【0029】
図3に示すように、各ステージ本体32aは、シリンダロッド33aの上端部に固定されたプレート32cにそれぞれ固定されている。各ステージ本体32aは、ブランク材Wが載置される水平面状の載置面部32bをそれぞれ有する。各載置面部32bは、高さが揃っていて、同一の水平面内に位置する。各ステージ本体32aの各載置面部32bは、昇降装置33が下降状態であるときには、コンベヤ20のベルト22の上面と略同じ高さに位置し、昇降装置33が上昇状態であるときには、コンベヤ20よりも上側に位置するようになっている。これにより、ブランク材Wを載置位置と上方位置との間で迅速に移動させることができる。尚、「略同じ高さ」とは、各載置面部32bとベルト22の上面とが完全に面一になる状態や、各載置面部32bがベルト22の上面よりも僅かに低い状態を含む。
【0030】
図4に示すように、ステージ本体32aは、載置面部32bに載置されたブランク材Wを水平状態に保持するための磁気機構34を有する。磁気機構34は、磁力によりブランク材Wを載置面部32bに引きつけて、ブランク材Wを水平状態に保持する。
【0031】
磁気機構34は、ステージ本体32aに設けられた複数(ここでは、各ステージ本体32aに2つずつ、合計4つ)の磁石収容部32dにそれぞれ収容されたステージ用磁石34aと、各ステージ用磁石34aと各磁石収容部32dの底部との間にそれぞれ配置されたスペーサ34bとを有する。ステージ用磁石34aは、コンベヤ用磁石23と同じ種類の磁石で構成されている。スペーサ34bは、その横断面形状が磁石収容部32dの横断面形状と同じ形状を有する樹脂製の板材で構成されている。
【0032】
各磁石収容部32dは、その深さが、各ステージ用磁石34aの高さ方向の大きさよりも大きくなるように、それぞれ構成されている。このため、各磁石収容部32dにおいて、ステージ用磁石34aと磁石収容部32dの上端との間には、空間が形成されるようになっている。この空間は、ブランク材Wに対する磁力を調整するための磁力調整空間34cとなっている。つまり、磁気機構34は、この磁力調整空間34cの大きさ、特に磁力調整空間34cの深さを調整することで、ブランク材Wに対する磁力を調整できるようになっている。具体的には、磁力調整空間34cの深さを大きくすれば、ステージ用磁石34aとブランク材Wとの間の距離が長くなるため、ブランク材Wに対する磁力を弱くすることができる。一方で、磁力調整空間34cの深さを小さくすれば、ステージ用磁石34aとブランク材Wとの間の距離が短くなるため、ブランク材Wに対する磁力を強くすることができる。磁力調整空間34cの大きさは、スペーサ34bの高さを調整することにより調整することが可能である。このことから、スペーサ34bは、ステージ用磁石34aを磁石収容部32d内で変位させて、磁力調整空間34cの大きさを調整する磁石変位機構に相当する。
【0033】
リフト装置31は、ブランク材Wがステージ32の上に搬送されたことを検出するためのセンサ(図示省略)を有する。リフト装置31は、該センサによりブランク材Wがステージ32の上に搬送されたことを検出したときに、昇降装置33を上昇状態にして、ステージ32を上昇させることで、ブランク材Wを載置位置から上方位置に移動させる。
【0034】
一対のセンタリング装置35は、図3に示すように、リフト装置31の所定方向X2の両側にそれぞれ設けられている。各センタリング装置35は、所定方向X2におけるコンベヤ20よりも外側の位置にそれぞれ配置されている。各センタリング装置35は、エアシリンダでそれぞれ構成されている。各センタリング装置35は、シリンダロッドの先端にブランク材Wに当接する当接部36を有する。各当接部36は、上下方向及び搬送方向に沿って広がる当接面36aをそれぞれ有する。各センタリング装置35は、互いに同期して同じ量だけ、各当接部36が互いに近づくように、各当接部36を所定方向X2にそれぞれ移動させる。各センタリング装置35は、リフト装置31の作用によりブランク材Wが上方位置に移動したときに、当接部36をそれぞれブランク材Wに向かって移動させて、ブランク材Wを所定方向X2に挟持する。これにより、一対のセンタリング装置35は、ブランク材Wを、その幅方向の中央が、プレス装置50のセンターラインC(図2参照)と一致するように位置合わせする。
【0035】
ここで、一対のセンタリング機構30によりブランク材Wを適切に位置合わせするためには、ブランク材Wに対する、ステージ32の磁気機構34の磁力を適切に調整する必要がある。すなわち、ブランク材Wが所定方向X2にずれていると、ブランク材Wの幅方向の重心が所定方向X2にずれる。このため、磁気機構34の磁力が弱すぎると、ブランク材Wを上方位置に移動させたときに、ブランク材Wを保持できずに、ブランク材Wが上下方向に斜めに傾いてしまう。これにより、ブランク材Wの位置合わせができなくなってしまう。幅方向の重量が均一でないブランク材Wである場合は、特にブランク材Wが上下方向に斜めに傾きやすく、位置合わせが困難である。一方で、磁気機構34の磁力が強すぎると、保持力が強すぎて、センタリング装置35の外力ではブランク材Wを変位させることができないため、ブランク材Wの位置合わせができなくなってしまう。センタリング装置35の外力を該磁力に打ち勝つ程度にすることも考えられるが、この場合、該外力によりブランク材Wが変形してしまうおそれがある。
【0036】
これに対して、本実施形態1では、磁気機構34は、磁力調整空間34cにより、ブランク材Wに対する磁力を調整することができる。これにより、ブランク材Wの板厚や形状に応じて、水平姿勢を保持しつつ外力により変位させることができる程度の適切な保持力をブランク材Wに付与することができる。例えば、幅方向の重量が均一なブランク材Wについては、4つの磁石収容部32dにそれぞれ形成される磁力調整空間34cの大きさを揃えて、それぞれのステージ用磁石34aがブランク材Wに付与する磁力が均一になるようにする。一方で、外形が台形状であるブランク材Wなど、幅方向の重量が不均一なブランク材Wについては、相対的に重量が大きい側の磁力調整空間34cを小さくして、重量が大きい側のステージ用磁石34aがブランク材Wに付与する磁力が、重量が小さい側のステージ用磁石34aがブランク材Wに付与する磁力よりも大きくなるようにする。これにより、ブランク材Wをステージ32の載置面部32b上に適切に保持することができる。
【0037】
したがって、本実施形態1では、ブランク材Wが載置するステージ32及びステージ32を昇降させる昇降装置33を有し、コンベヤ20により搬送されているブランク材Wを、コンベヤ20に載置された載置位置とコンベヤ20よりも上側の上方位置との間で移動させるリフト装置31と、上方位置に位置するブランク材Wに、上下方向と直交しかつコンベヤ20の搬送方向と交差する方向の外力を加えて、ブランク材Wを位置合わせするセンタリング装置35と、を備え、ステージ32は、ブランク材が載置される水平面状の載置面部32bと、ブランク材Wを磁力により該載置面部32bに引きつけるための磁気機構34と、を有し、磁気機構34は、ブランク材Wに対する磁力を調整可能に構成されている。これにより、本実施形態1では、適切な値に調整された磁気機構34の磁力でもってブランク材Wを保持することができるため、センタリング装置35の外力で容易に位置合わせを行うことができる。このように、複雑な構造が不要であるとともに、装置同士の連携制御も単純化できる。また、構造や制御が単純になることで、各装置の保全管理に要する工数が削減される。よって、生産性への影響を小さくしつつ、単純な構造とすることができる。
【0038】
特に、本実施形態1では、昇降装置33及びセンタリング装置35はエアシリンダで構成されているため、構成をより単純にすることができるとともに、装置同士の連携もより単純にすることができる。また、昇降装置33及びセンタリング装置35の応答性が高くなるため、従来(特に、特開平1-241338号公報)のようにモータで構成する場合と比較して、生産性を向上させることができる。
【0039】
また、本実施形態1では、磁気機構34は、ステージ用磁石34aを含み、ステージ32は、ステージ用磁石34aを収容する磁石収容部32dを有し、ステージ用磁石34aが磁石収容部32dに収容された状態において、ステージ用磁石34aとステージ32の上面との間には、ブランク材Wに対する磁力を調整するための磁力調整空間34cが形成され、磁気機構34は、磁力調整空間34cの大きさを調整することで、ブランク材Wに対する磁力を調整する。これにより、ブランク材Wに付与する磁力を容易に調整することができる。これにより、ブランク材Wの板厚や形状に応じて、該ブランク材Wを適切な保持力でもって保持することができる。これにより、生産性への影響をより小さくすることができる。
【0040】
また、本実施形態1では、磁気機構34に用いられるステージ用磁石34aは、コンベヤ20に用いられるコンベヤ用磁石23と同じ種類の磁石である。このように、磁石を共通化することにより、保全管理を容易にするとともに、コストを出来る限り抑制することができる。したがって、生産性への影響をより小さくすることができる。
【0041】
〈変形例〉
図5は、センタリング機構30の変形例を示す。このセンタリング機構30は、リフト装置31のステージ32の構成が異なる。具体的には、図5に示すように、このステージ32は、前述の実施形態1よりも多くの磁石収容部232を有する。そして、このステージ32では、ステージ用磁石34aの数により、ブランク材Wに与える磁力を調整するようになっている。つまり、磁力を小さくするときには、中央の磁石収容部232のように、磁石収容部232からステージ用磁石34aを取り除く。このように、この変形例ではブランク材Wに付与する磁力をより簡単に調整することができる。
【0042】
(実施形態2)
以下、実施形態2について詳細に説明する。以下の説明において実施形態1と共通の部分については、同じ符号を付して、その詳細な説明を省略する。
【0043】
本実施形態2では、磁気機構34の構成が実施形態1とは異なる。具体的には、図6に示すように、磁気機構34は、磁石収容部32dに収容されたステージ用磁石34aを、磁石収容部32d内で昇降させる磁石用昇降装置234を有する。この磁石用昇降装置234は、ステージ用磁石34aを磁石収容部32d内で変位させて、磁力調整空間34cの大きさを調整する。磁石用昇降装置234は、磁石収容部32dのそれぞれに配置されている。磁石用昇降装置234は、エアシリンダで構成されていて、シリンダロッドが上下動することで、ステージ用磁石34aを昇降させる。
【0044】
この実施形態2の構成でも、適切な値に調整された磁気機構34の磁力でもってブランク材Wを保持することができるため、センタリング装置35の外力で容易に位置合わせを行うことができる。
【0045】
特に、本実施形態2では、磁石用昇降装置234により、磁力調整空間34cの大きさが調整されるため、ブランク材Wの板厚や形状に応じて付与する磁力を容易に調整することができる。これにより、ブランク材Wをより適切にステージ32上に保持することができ、生産性への影響をより小さくすることができる。
【0046】
(その他の実施形態)
ここに開示された技術は、前述の実施形態に限られるものではなく、請求の範囲の主旨を逸脱しない範囲で代用が可能である。
【0047】
例えば、前述の実施形態1及び2では、磁力調整空間34cの大きさやステージ用磁石34aの数によりブランク材Wに付与する磁力を調整していた。これに限らず、例えば、ステージ用磁石34aを電磁石で構成して、電磁石に流す電流の大きさを調整することでブランク材Wに付与する磁力を調整してもよい。
【0048】
また、前述の実施形態1では、スペーサ34b自体の高さを調整することで、磁力調整空間34cの大きさを調節していた。これに限らず、例えば、スペーサ34bの下部に雄ネジを固定し、かつ磁石収容部32dの底部にネジ孔を形成して、該雄ネジを回転させてスペーサ34bの位置を調整することで、磁力調整空間34cの大きさを調節する構成としてもよい。他にも、磁石収容部32dの内周面に雌ネジを切りかつスペーサ34bの側面に雄ネジを切って、スペーサ34bを回転させて該スペーサ34bの位置を調整することで、磁力調整空間34cの大きさを調節する構成としてもよい。
【0049】
また、前述の実施形態2では、磁石用昇降装置234は、シリンダロッドが上下動することで、ステージ用磁石34aを昇降させる構成となっていた。これに限らず、例えば、傾斜面を有するブロック体の傾斜面上にステージ用磁石34aを載置させ、該ブロック体を横方向にスライドさせることでステージ用磁石34aを昇降させる構成としてもよい。
【0050】
前述の実施形態は単なる例示に過ぎず、本開示の範囲を限定的に解釈してはならない。本開示の範囲は請求の範囲によって定義され、請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、全て本開示の範囲内のものである。
【産業上の利用可能性】
【0051】
ここに開示された技術は、外部から受け取ったブランク材を、コンベヤにより次工程の装置に搬送する際に、ブランク材の位置合わせを行うための、ブランク材の位置合わせ装置として有用である。
【符号の説明】
【0052】
20 コンベヤ
23 コンベヤ用磁石
31 リフト装置
32 ステージ
32b 載置面部
33 昇降装置
34 磁気機構
34a ステージ用磁石
34b スペーサ(磁石変位機構)
34c 磁力調整空間
35 センタリング装置(位置調整装置)
234 磁石用昇降装置(磁石変位機構)
W ブランク材
図1
図2
図3
図4
図5
図6