(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022184637
(43)【公開日】2022-12-13
(54)【発明の名称】需給管理システム、需給管理方法およびプログラム
(51)【国際特許分類】
H02J 3/00 20060101AFI20221206BHJP
H02J 3/38 20060101ALI20221206BHJP
H02J 13/00 20060101ALI20221206BHJP
【FI】
H02J3/00 170
H02J3/38 130
H02J3/38 160
H02J3/38 120
H02J13/00 301A
H02J13/00 311R
H02J3/00 180
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021092588
(22)【出願日】2021-06-01
(71)【出願人】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(71)【出願人】
【識別番号】317015294
【氏名又は名称】東芝エネルギーシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】志賀 慶明
(72)【発明者】
【氏名】大場 健史
(72)【発明者】
【氏名】本宮 拓也
(72)【発明者】
【氏名】丸山 ほなみ
(72)【発明者】
【氏名】下尾 高廣
(72)【発明者】
【氏名】進 博正
【テーマコード(参考)】
5G064
5G066
【Fターム(参考)】
5G064AC09
5G064CB08
5G064CB12
5G066AA03
5G066HB06
(57)【要約】 (修正有)
【課題】一部の分散電源に発電量データ取得用の遠隔計測機器などを設けなくとも、分散電源が複数存在する発電バランシンググループの全体の発電量を高精度に推定する需給管理システム、需給管理方法及びプログラムを提供する。
【解決手段】電力システムにおいて、需給管理システム11は、遠隔計測機器が備わっている分散電源21-1~21-4について、市場における取引時間帯毎の発電量を夫々推定する第1推定部51と、遠隔計測機器が備わっていない分散電源の発電量と、遠隔計測機器が備わっている分散電源の発電量との相関係数を計算する相関係数計算部52と、遠隔計測機器が備わっていない分散電源に対する相関係数に基づいて選択された遠隔計測機器が備わっている分散電源の取引時間帯毎の発電量を用いて、遠隔計測機器が備わっていない分散電源についての取引時間帯毎の発電量を推定する第2推定部53と、を備える。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の分散電源を含みインバランスを算定する対象となる発電バランシンググループに含まれる前記分散電源のうち、遠隔計測機器が備わっている前記分散電源について、市場における取引時間帯毎の発電量をそれぞれ推定する第1推定部と、
前記発電バランシンググループの全体の実発電実績のデータに基づき、前記遠隔計測機器が備わっていない前記分散電源の発電量と、前記遠隔計測機器が備わっている前記分散電源の発電量との相関係数を計算する相関係数計算部と、
前記遠隔計測機器が備わっていない前記分散電源に対する前記相関係数に基づいて選択された前記遠隔計測機器が備わっている前記分散電源の前記取引時間帯毎の発電量を用いて、前記遠隔計測機器が備わっていない前記分散電源についての前記取引時間帯毎の発電量を推定する第2推定部と、
を備える需給管理システム。
【請求項2】
前記発電バランシンググループの全体の実発電実績のデータは、一日を電力の計量単位で分割して電力取引する市場における取引時間帯の発電量である、
請求項1に記載の需給管理システム。
【請求項3】
前記第1推定部は、前記発電バランシンググループの全体の実発電実績のデータと、前記遠隔計測機器が備わっている前記分散電源から受信した発電量とに基づき、市場のゲートクローズ後の該当取引時間帯の発電量を推定する、
請求項2に記載の需給管理システム。
【請求項4】
前記相関係数計算部は、前記遠隔計測機器が備わっていない前記分散電源と、当該遠隔計測機器が備わっていない前記分散電源に対して前記相関係数の最も高い前記遠隔計測機器が備わっている前記分散電源とのペアを作成する、
請求項1に記載の需給管理システム。
【請求項5】
前記相関係数計算部は、前記遠隔計測機器が備わっていない前記分散電源に対する前記相関係数の高い順に、前記遠隔計測機器が備わっていない前記分散電源に対する前記遠隔計測機器が備わっている前記分散電源のランキングを作成する、
請求項1に記載の需給管理システム。
【請求項6】
前記第2推定部は、前記遠隔計測機器が備わっていない前記分散電源に対する前記相関係数が最も高い前記遠隔計測機器が備わっている前記分散電源の前記第1推定部において推定した市場のゲートクローズ後の該当取引時間帯の発電量を参照する、
請求項2に記載の需給管理システム。
【請求項7】
前記第1推定部または前記第2推定部で推定された前記分散電源の前記取引時間帯毎の推定発電量を合計して、前記発電バランシンググループの全体の前記取引時間帯毎の発電量を推定する発電量推定部、をさらに備える、
請求項1ないし6のいずれか一項に記載の需給管理システム。
【請求項8】
前記発電バランシンググループの全体の前記取引時間帯毎の計画値と、前記発電量推定部で推定した前記発電バランシンググループの全体の前記取引時間帯毎の発電量との差分から、前記発電バランシンググループの全体の発電量を計画値と同時同量とする目標制御量を計算する制御量計算部、をさらに備える、
請求項7に記載の需給管理システム。
【請求項9】
前記分散電源は、再生可能エネルギー電源である、
請求項1ないし8のいずれか一項に記載の需給管理システム。
【請求項10】
需給管理システムで実行される需給管理方法であって、
複数の分散電源を含みインバランスを算定する対象となる発電バランシンググループに含まれる前記分散電源のうち、遠隔計測機器が備わっている前記分散電源について、市場における取引時間帯毎の発電量をそれぞれ推定する第1推定工程と、
前記発電バランシンググループの全体の実発電実績のデータに基づき、前記遠隔計測機器が備わっていない前記分散電源の発電量と、前記遠隔計測機器が備わっている前記分散電源の発電量との相関係数を計算する相関係数計算工程と、
前記遠隔計測機器が備わっていない前記分散電源に対する前記相関係数に基づいて選択された前記遠隔計測機器が備わっている前記分散電源の前記取引時間帯毎の発電量を用いて、前記遠隔計測機器が備わっていない前記分散電源についての前記取引時間帯毎の発電量を推定する第2推定工程と、
を含む需給管理方法。
【請求項11】
コンピュータを、
複数の分散電源を含みインバランスを算定する対象となる発電バランシンググループに含まれる前記分散電源のうち、遠隔計測機器が備わっている前記分散電源について、市場における取引時間帯毎の発電量をそれぞれ推定する第1推定手段と、
前記発電バランシンググループの全体の実発電実績のデータに基づき、前記遠隔計測機器が備わっていない前記分散電源の発電量と、前記遠隔計測機器が備わっている前記分散電源の発電量との相関係数を計算する相関係数計算手段と、
前記遠隔計測機器が備わっていない前記分散電源に対する前記相関係数に基づいて選択された前記遠隔計測機器が備わっている前記分散電源の前記取引時間帯毎の発電量を用いて、前記遠隔計測機器が備わっていない前記分散電源についての前記取引時間帯毎の発電量を推定する第2推定手段と、
として機能させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、需給管理システム、需給管理方法およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電力システムにおいて、自然変動性の再生可能エネルギー(VRE:Variable Renewable Energy)電源に代表される電源の多様化及び分散化が進んでいる。例えば、仮想発電所(VPP:Virtual Power Plant)等において、各地に分散した複数の分散電源が存在するインバランスを算定する対象となる発電バランシンググループの全体を総合的に制御して、再生可能エネルギーの出力変動や気温変動によって生じる電力の需要と供給(発電)との差(インバランス)を軽減するための技術が開発されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述のようなインバランスを軽減するための技術によれば、発電量の小さな分散電源を含む全ての分散電源に発電量データ取得用のテレメータ(遠隔計測機器)などを設置する必要がある。そのため、上述のようなインバランスを軽減するための技術によれば、コスト高になり、経済合理性の低下が懸念される。
【0005】
本発明の実施形態は、上記に鑑みてなされたものであって、一部の分散電源に発電量データ取得用の遠隔計測機器などを設けなくとも、分散電源が複数存在する発電バランシンググループの全体の発電量を高精度に推定することができる需給管理システム、需給管理方法およびプログラムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態の需給管理システムは、第1推定部と、相関係数計算部と、第2推定部と、を備える。第1推定部は、複数の分散電源を含みインバランスを算定する対象となる発電バランシンググループに含まれる前記分散電源のうち、遠隔計測機器が備わっている前記分散電源について、市場における取引時間帯毎の発電量をそれぞれ推定する。相関係数計算部は、前記発電バランシンググループの全体の実発電実績のデータに基づき、前記遠隔計測機器が備わっていない前記分散電源の発電量と、前記遠隔計測機器が備わっている前記分散電源の発電量との相関係数を計算する。第2推定部は、前記遠隔計測機器が備わっていない前記分散電源に対する前記相関係数に基づいて選択された前記遠隔計測機器が備わっている前記分散電源の前記取引時間帯毎の発電量を用いて、前記遠隔計測機器が備わっていない前記分散電源についての前記取引時間帯毎の発電量を推定する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】
図1は、実施形態に係る電力システムの構成の一例を示す図である。
【
図2】
図2は、実施形態に係る需給管理システムのハードウェア構成の一例を示すブロック図である。
【
図3】
図3は、実施形態に係る需給管理システムの機能構成の一例を示すブロック図である。
【
図4】
図4は、実施形態に係る需給管理システムにおける処理の流れを概略的に示すフローチャートである。
【
図5】
図5は、実施形態に係る発電バランシンググループの全体の発電量の経時変化を例示的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、添付の図面を用いて、実施形態に係る需給管理システム、需給管理方法およびプログラムについて説明する。
【0009】
<システム構成>
図1は、実施形態に係る電力システム1の構成の一例を示す図である。電力システム1は、需給管理システム11、分散電源制御システム12、複数の分散電源21を含みインバランスを算定する対象となる発電バランシンググループ20、通信ネットワーク25、及び送配電ネットワーク26を含む。
図1に示すように、発電バランシンググループ20は、所定のエリア内に分散した分散電源21を複数備える。
【0010】
分散電源21は、それぞれ独立して発電(電力の出力)を行うことができる複数の分散電源21-1~21-4を含む。各分散電源21-1~21-4は、それぞれ発電特性が異なるものであってもよく、設置位置や電力系統への連系点は地理的に離れていてもよく、制御情報や計測情報を伝送するための通信手段はそれぞれ異なってもよい。
図1においては、4個の分散電源21-1,21-2,21-3,21-4が存在する例が示されている。以下、複数の分散電源21-1~21-4を総称して分散電源21と記載する場合がある。
【0011】
分散電源21の種類は特に限定されるべきものではないが、本実施形態の分散電源21は、例えば、太陽光、風力等の再生可能エネルギー(VRE:Variable Renewable Energy)を利用して発電する再生可能エネルギー電源である。
【0012】
図1に示すように、実施形態に係る電力システム1においては、テレメータ(遠隔計測機器)30により、リアルタイムで発電量実績や気象データを送信できる機能が備わっている分散電源21(21-1、21-4)と、テレメータ30が備わっていない分散電源21(21-2、21-3)が混在している。
【0013】
需給管理システム11は、電力システム1の需給を管理するための処理を行うシステムである。本実施形態に係る需給管理システム11は、電力の需要に基づき、発生させるべき電力の目標値、すなわち複数の分散電源21の各出力を合計したシステム出力値の目標値であるシステム目標値の演算、分散電源制御システム12に対する制御指令の出力等を行う。
【0014】
なお、本実施形態においては、多種の分散電源21-1~21-4で構成する発電バランシンググループ20全体の当日市場(1時間前市場)の取引時間帯毎の計画値を、電気事業の広域的運営を推進することを目的として設立されたOCCTO(Organization for Cross-regional Coordination of Transmission Operators:電力広域的運営推進機関)などの外部機関に予め提出するものとする。このような外部機関に予め提出した発電バランシンググループ20の全体の取引時間帯毎の計画値は、当日市場(1時間前市場)のゲートクローズ(GC)前の外部機関への提出計画値として需給管理システム11に記憶しておく(
図3参照)。当日市場(1時間前市場)については、後述する。
【0015】
分散電源制御システム12は、分散電源21を制御するための処理を行うシステムである。本実施形態に係る分散電源制御システム12は、需給管理システム11から出力された制御指令等に応じて、分散電源21-1~21-4毎の出力の目標値である分散電源目標値の演算、各分散電源21-1~21-4に対する制御指令の出力等を行う。
【0016】
図1に示す例では、需給管理システム11、分散電源制御システム12、及び各分散電源21が通信ネットワーク25を介して通信可能に接続されている。通信ネットワーク25は、所定の通信プロトコルを用いて複数のコンピュータ間で情報の送受信を可能にするネットワークである。通信ネットワーク25は、例えばインターネット、LAN(Local Area Network)、WAN(Wide Area Network)等を含んで構成される。各分散電源21は、送配電ネットワーク26に接続されている。送配電ネットワーク26は、電力の送配電を可能にする設備を含むネットワークである。送配電ネットワーク26は、分散電源21からの電力を所定の需要家に向けて供給可能にする。
【0017】
なお、
図1に示した構成は一例であり、電力システム1の構成は上記に限定されるものではない。
【0018】
<需給管理システム11のハードウェア構成>
図2は、実施形態に係る需給管理システム11のハードウェア構成の一例を示すブロック図である。本実施形態に係る需給管理システム11は、CPU(Central Processing Unit)31、RAM(Random Access Memory)32、ROM(Read Only Memory)33、補助記憶装置34、通信I/F(Interface)35、ユーザI/F36、及びバス37を有する。
【0019】
CPU31は、需給管理システム11全体の制御を司るユニットであり、ROM33や補助記憶装置34に記憶されたプログラム(ファームウェア、ドライバ等を含む)に基づきRAM32を作業領域として各種の演算処理及び制御処理を行う。通信I/F35は、外部装置との間で情報の送受を可能にするデバイスであり、
図1に示すシステム構成例においては、通信ネットワーク25を介して分散電源制御システム12及び各分散電源21との間で各種情報の送受を行う。ユーザI/F36は、ユーザ(需給管理システム11の管理者等)による入力操作の受付、ユーザに対する情報の出力等を可能にするデバイスである。ユーザI/F36は、例えば、キーボード、ポインティングデバイス、タッチパネル機構、ディスプレイ、スピーカ、マイク等であり得る。CPU31、RAM32、ROM33、補助記憶装置34、通信I/F35、及びユーザI/F36は、バス37を介して接続されており、互いに情報の送受が可能となっている。
【0020】
なお、
図2に示した構成は一例であり、需給管理システム11のハードウェア構成は上記に限定されるものではない。
【0021】
<需給管理システム11の機能構成>
図3は、実施形態に係る需給管理システム11の機能構成の一例を示すブロック図である。本実施形態に係る需給管理システム11は、第1推定部51と、相関係数計算部52と、第2推定部53と、発電量推定部54と、制御量計算部55と、を有する。これらの機能部51~55は、
図2に示すような需給管理システム11のハードウェア構成要素31~37、ROM33や補助記憶装置34に記憶されたプログラム等の協働により実現される。
【0022】
図3に示すように、需給管理システム11は、外部データを取得する。外部データとしては、OCCTOなどの外部機関と連携して得られる発電バランシンググループ20の全体の実発電実績のデータ(30分コマの発電量)と、テレメータ30が備わっている分散電源21(21-1、21-4)から得られるテレメータ情報とがある。
【0023】
ここで、外部機関と連携して得られる発電バランシンググループ20の全体の実発電実績のデータ(30分コマの発電量)について説明する。
【0024】
まず、現在の電力取引市場において行われている主な電力取引の種類について説明する。発電事業者における発電量の計画と、小売事業者における需要量の計画とが均衡(バランス)することが電力の安定供給のためには必要である。この場合において、発電事業者は、発電量を計画するとともに、既に契約がなされている発電量(売り先[小売事業者等]が決まっている発電量)を確認し、当該発電事業者における発電コストよりも安い電力が売っていれば電力取引市場において買い取りを行おうとし、当該発電事業者の発電コストよりも高く電力が売れるのであれば、電力取引市場において売却を行おうとすることとなる。
【0025】
一方、小売事業者は、需要家等の顧客の需要を予測して調達量を設定することとなるが、既に契約がなされている調達量(買い取り先[発電事業者等]が決まっている調達量)を確認し、調達量に不足があれば電力取引市場に対して買い取り(買電)を行おうとし、調達量に余剰があれば電力取引市場に対して売却(売電)を行おうとすることとなる。
【0026】
このため、発電事業者及び小売事業者は、必要に応じて電力取引市場において入札を行うこととなるので、発電事業者と小売事業者の入札を1日単位で全てまとめて突き合わせを行い、需要供給の関係で価格と量を均衡させる一日前市場(スポット市場)が設けられている。
【0027】
ところで、実際の需要供給の関係は、固定的なものではなく、発電設備の故障等による電力供給の変動や、気温の変動などによる電力需要の変動などが生じる。そこで、この需要供給関係の変動を吸収し、調整するための場として、一日を電力の計量単位(毎時0分~30分、30分~60分)で分割した48個の取引時間帯(30分コマ)でそれぞれ個別に需要供給の関係で価格と量を均衡させるザラ場取引を行う当日市場(1時間前市場)が設けられている。なお、市場のゲートクローズ(GC)は30分コマ開始の一定時間前になる。例えば、12:00-12:30の実需給30分コマに対して、1時間前市場のゲートクローズは11:00になる。
【0028】
従来より、発電計画段階でも発電バランシンググループ20の全体の発電量を推定してインバランスが小さくなるよう計画をしているが、実需給に近い時間の分散電源21の実発電データに基づいて推定するほうが当然のことながら推定精度が高くなる。
【0029】
そこで、本実施形態においては、発電バランシンググループ20の全体の発電量を計画値と同時同量とする目標制御量を策定するため、発電バランシンググループ20を構成する分散電源21毎の実発電実績のデータ(30分コマの発電量)をOCCTOなどの外部機関から取得して、発電バランシンググループ20全体の30分コマの発電量を推定するようにしたものである。ただし、このような分散電源21毎の30分コマの発電量は、当日市場(1時間前市場)のゲートクローズ(GC)後にディレイして取得することになるため、粒度が粗いものとなっている。このような外部機関から取得する実発電実績のデータ(30分コマの発電量)は、分散電源21に設けられるテレメータ30で得られるデータよりも時間的な粒度や精度は粗いが、テレメータ30が設けられていない分散電源21の実発電実績のデータも含まれる。
【0030】
そこで、本実施形態の需給管理システム11においては、OCCTOなどの外部機関から提供される発電バランシンググループ20を構成する分散電源21毎の実発電実績のデータ(30分コマの発電量)と、テレメータ30が備わっている分散電源21(21-1、21-4)のデータとを用いて、テレメータ30が備わっていない分散電源21(21-2、21-3)の発電量を推定するようにしたものである。以下において、詳述する。
【0031】
第1推定部51は、テレメータ30が備わっている分散電源21(21-1、21-4)毎に備えられる。第1推定部51は、テレメータ30が備わっている各分散電源21(21-1、21-4)の発電量をそれぞれ推定する。より詳細には、第1推定部51は、外部機関と連携して得られる発電バランシンググループ20の全体の実発電実績の受電データ(30分コマの発電量)と、テレメータ30が備わっている分散電源21(21-1、21-4)から受信したテレメータ情報(発電量実績など)とに基づき、テレメータ30が備わっている分散電源21(21-1、21-4)についての当日市場(1時間前市場)のゲートクローズ(GC)後の30分コマの発電量(Yi)を推定する推定処理を実行する。
Yi=f(外部機関の受電データ、テレメータ情報) ・・・(1)
ここで、iは、テレメータ30が備わっている各分散電源21(21-1、21-4)を示す。
【0032】
なお、第1推定部51は、機械学習手法としての重回帰分析や自己回帰分析等により発電量推定モデルを構築して、テレメータ30が備わっている分散電源21(21-1、21-4)についての当日市場(1時間前市場)のゲートクローズ(GC)後の30分コマの発電量(Yi)を推定するものであってもよい。
【0033】
なお、第1推定部51は、当該推定処理を、当日市場(1時間前市場)の30分コマの最初の数分程度以内に完了させることが望ましい。
【0034】
そして、それぞれの第1推定部51は、テレメータ30が備わっている分散電源21(i)の当日市場(1時間前市場)のゲートクローズ(GC)後に推定した発電量である発電量推定データを、「GC後の発電量推定データ(テレメータあり)」としてRAM32または補助記憶装置34に記憶する。
【0035】
相関係数計算部52は、外部機関と連携して得られる発電バランシンググループ20の全体の実発電実績の受電データ(30分コマの発電量)に基づき、テレメータ30が備わっていない分散電源21(21-2、21-3)の発電量と、テレメータ30が備わっている分散電源21(21-1、21-4)の発電量との相関係数を計算する。例えば、相関係数計算部52は、テレメータ30が備わっていない分散電源21に対し、最も近い位置に設置されているテレメータ30が備わっている分散電源21の相関係数を最も高くする。また、例えば、相関係数計算部52は、テレメータ30が備わっていない分散電源21に対し、発電特性が類似していてテレメータ30が備わっている分散電源21の相関係数を最も高くする。
【0036】
そして、相関係数計算部52は、上述のように相関係数の最も高いものについて、テレメータ30が備わっていない分散電源21と、テレメータ30が備わっている分散電源21とのペアを作成する。
argmaxiCC(テレメータあり分散電源21の発電量、テレメータなし分散電源21の発電量)
ここで、CCは相関係数関数である。なお、相関係数計算部52は、相関係数の高い順に、テレメータ30なし分散電源21に対するテレメータ30あり分散電源21のランキングを作成するものであってもよい。また、相関係数計算部52は、テレメータ30あり分散電源21とテレメータ30なし分散電源21の何れかまたは両方について複数を選択して相関係数を算出するものであってもよい。例えば、相関係数計算部52は、任意の3つのテレメータ30あり分散電源21と、任意の1つのテレメータ30なし分散電源21との相関係数を算出する。
【0037】
第2推定部53は、第1推定部51が記憶した「GC後の発電量推定データ(テレメータあり)」を参照し、テレメータ30が備わっていない分散電源21(21-2、21-3)の発電量を推定する。より詳細には、第2推定部53は、上述の相関係数が最も高く、テレメータ30が備わっている分散電源21(21-1、21-4)の発電量を用いて、テレメータ30が備わっていない分散電源21(21-2、21-3)についての当日市場(1時間前市場)のゲートクローズ(GC)後の30分コマの発電量(Yj)を推定する。
Yj=f(外部機関の受電データ、テレメータ情報) ・・・(2)
ここで、jは、テレメータ30が備わっていない各分散電源21(21-2、21-3)を示す。
【0038】
なお、第2推定部53は、テレメータ30が備わっている複数の分散電源21(21-1、21-4)の発電量から、下記式(3)に示すようにテレメータ30が備わっていない分散電源21(21-2、21-3)の発電量を直接的に求めてもよい。
【数1】
ここで、第2推定部53は、係数αや関数f(線形)について、機械学習手法としての重回帰分析やスパースモデリングなどにより学習する。また、第2推定部53は、関数f(非線形)について、一般化加法モデル(Generalized Additive Model:GAM)などにより学習する。
【0039】
そして、第2推定部53は、テレメータ30が備わっていない分散電源21(j)の当日市場(1時間前市場)のゲートクローズ(GC)後に推定した発電量である発電量推定データを、「GC後の発電量推定データ」としてRAM32または補助記憶装置34に、第1推定部51が記憶した「GC後の発電量推定データ(テレメータあり)」とともに記憶する。
【0040】
発電量推定部54は、当日市場(1時間前市場)のゲートクローズ(GC)後の30分コマの発電バランシンググループ20全体の発電量を推定する。より詳細には、発電量推定部54は、下記式(4)に示すように、「GC後の発電量推定データ」として記憶した当日市場(1時間前市場)のゲートクローズ(GC)後の30分コマの各分散電源21の推定発電量を合計して、当日市場(1時間前市場)のゲートクローズ(GC)後の30分コマの発電バランシンググループ20全体の発電量(Y)を推定する。
【数2】
【0041】
制御量計算部55は、下記式(5)に示すように、外部機関に提出した発電バランシンググループ20全体の計画値(P)と発電バランシンググループ20全体の推定発電量(Y)の差分から、発電バランシンググループ20全体の発電量を計画値と同時同量とする目標制御量(T)を計算する。
T=P-Y ・・・(5)
【0042】
ここで、
図4は実施形態に係る需給管理システム11における処理の流れを概略的に示すフローチャート、
図5は実施形態に係る発電バランシンググループ20全体の発電量の経時変化を例示的に示す図である。
図5に示す図は、発電バランシンググループ20全体の30分コマの発電量の推移を示すグラフである。
図5に示す発電量は、30分コマの中の発電量累積を示している。市場のゲートクローズ(GC)は、30分コマ開始の一定時間前になる。例えば、12:00-12:30の実需給30分コマに対して、1時間前市場のゲートクローズは11:00になる。
【0043】
図4に示すように、まず、第1推定部51が、外部機関と連携して得られる発電バランシンググループ20の全体の実発電実績の受電データ(30分コマの発電量)とテレメータ30が備わっている分散電源21からの発電量実績とに基づき、当日市場(1時間前市場)のゲートクローズ(GC)後、テレメータ30が備わっている各分散電源21の30分コマの発電量をそれぞれ推定する(S1)。
【0044】
加えて、相関係数計算部52は、外部機関と連携して得られる発電バランシンググループ20の全体の実発電実績の受電データ(30分コマの発電量)に基づき、テレメータ30が備わっていない分散電源21の発電量と、テレメータ30が備わっている分散電源21の発電量との相関係数を計算する(S2)。
【0045】
次いで、第2推定部53は、相関係数が最も高く、テレメータ30が備わっている分散電源21の発電量推定データ(テレメータあり)を参照し、テレメータ30が備わっていない分散電源21の30分コマの発電量を推定する(S3)。
【0046】
図4および
図5に示すように、発電量推定部54は、当日市場(1時間前市場)のゲートクローズ(GC)後に、当日市場(1時間前市場)のゲートクローズ(GC)後の発電バランシンググループ20全体の30分コマの発電量(Y)を推定する(S4)。
図5に示すように、発電量推定部54は、当日市場(1時間前市場)の30分コマの最初の数分程度以内に推定処理を完了させる。例えば、11:00にゲートクローズ(GC)し、12:00に実需給開始した場合、発電量推定部54は、12:00から数分後のデータで、12:00-12:30コマの発電量を推定することになる。
【0047】
図4および
図5に示すように、制御量計算部55は、外部機関に提出した発電バランシンググループの全体の計画値(P)を取得し(S5)、発電バランシンググループの全体の計画値(P)と発電バランシンググループ20全体の当日市場(1時間前市場)のゲートクローズ(GC)後の推定発電量(Y)の差分から、目標制御量(T)を計算する(S6)。
【0048】
そして、制御量計算部55は、目標制御量(T)を分散電源制御システム12に出力して、発電バランシンググループ20全体の発電量(Y)が計画値と同時同量となるように制御させる。
【0049】
このように本実施形態では、発電バランシンググループ20に含まれていてテレメータ30が備わっている分散電源21についての市場における発電量(30分コマの発電量)を第1推定部51で取得し、当該テレメータ30が備わっている分散電源21の発電量とテレメータ30が備わっていない分散電源21の発電量との相関係数を相関係数計算部52で取得し、第1推定部51で取得したテレメータ30が備わっている分散電源21についての発電量(30分コマの発電量)と相関係数計算部52で得た相関係数とに基づいてテレメータ30が備わっていない分散電源21の発電量(30分コマの発電量)を第2推定部53で推定する。すなわち、本実施形態では、テレメータ30が備わっていない分散電源21に対して相関係数が最も高いテレメータ30が備わっている分散電源21の発電量(30分コマの発電量)から、テレメータ30が備わっていない分散電源21の発電量(30分コマの発電量)を推定しているので、従来のシステムとは異なり、発電バランシンググループ20のすべての分散電源21にテレメータ30を設ける必要がなくなる。このため、本実施形態によれば、発電バランシンググループ20の一部の分散電源21にテレメータ30を設けていれば、他の分散電源21にテレメータ30を設けなくとも、複数の分散電源21を含む発電バランシンググループ20全体の発電量を高精度に推定して、インバランス量(計画値と実績値の乖離)を最小化することができる。
【0050】
特に、本実施形態によれば、外部機関と連携して得られる発電バランシンググループ20の全体の実発電実績のデータ(30分コマの発電量)に基づき、テレメータ30が備わっていない特定の分散電源21の発電量(30分コマの発電量)と、当該分散電源21の周囲のテレメータ30が備わっている分散電源21の発電量(30分コマの発電量)との相関から、複数の分散電源21を含む発電バランシンググループ20全体の発電量を高精度に推定することができる。
【0051】
上記実施形態における各種機能を実現するための処理をコンピュータに実行させるプログラムは、インストール可能な形式又は実行可能な形式のファイルでCD(Compact Disc)-ROM、フレキシブルディスク(FD)、CD-R(Recordable)、DVD(Digital Versatile Disc)等のコンピュータで読み取り可能な記録媒体に記録して提供することが可能なものである。また、当該プログラムは、インターネット等のネットワーク経由で提供又は配布され得るものである。
【0052】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0053】
11 需給管理システム
20 発電バランシンググループ
21 分散電源
30 遠隔計測機器
51 第1推定部
52 相関係数計算部
53 第2推定部
54 発電量推定部
55 制御量計算部