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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022184639
(43)【公開日】2022-12-13
(54)【発明の名称】銅エッチング液
(51)【国際特許分類】
   C23F 1/34 20060101AFI20221206BHJP
   C23F 1/18 20060101ALI20221206BHJP
   H01L 21/306 20060101ALI20221206BHJP
   H05K 3/06 20060101ALI20221206BHJP
【FI】
C23F1/34
C23F1/18
H01L21/306 F
H05K3/06 N
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021092590
(22)【出願日】2021-06-01
(71)【出願人】
【識別番号】000189327
【氏名又は名称】上村工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】米田 拓也
(72)【発明者】
【氏名】石田 哲司
(72)【発明者】
【氏名】山本 久光
(72)【発明者】
【氏名】嘉藤 一成
(72)【発明者】
【氏名】清水 良祐
【テーマコード(参考)】
4K057
5E339
5F043
【Fターム(参考)】
4K057WA13
4K057WB04
4K057WE11
4K057WG01
4K057WG02
4K057WG03
4K057WG06
4K057WN01
5E339BC02
5E339BE13
5E339BE17
5E339EE10
5F043AA26
5F043BB15
5F043DD10
5F043GG02
5F043GG04
(57)【要約】
【課題】エッチング対象が異種金属と接触した状態においても、過剰な銅のエッチングが生じない銅エッチング液を実現する。
【解決手段】銅エッチング液は、酸化剤とアミン化合物とを含有する。酸化剤は、過塩素酸塩、塩素酸塩、亜塩素酸塩、次亜塩素酸塩、過酸化水素、及び過ホウ酸塩からなる群から選択される1種以上であり、アミン化合物は、1級アミノ基又は2級アミノ基を1個以上有する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
過塩素酸塩、塩素酸塩、亜塩素酸塩、次亜塩素酸塩、過酸化水素、及び過ホウ酸塩からなる群から選択される1種以上の酸化剤と、
1級アミノ基又は2級アミノ基を1個以上有するアミン化合物とを含有する、銅エッチング液。
【請求項2】
前記アミン化合物は、メチルアミン、エチルアミン、エチレンジアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ジエチレントリアミン、モノエタノールアミン、アニリン、ベンジルアミン、フェネチルアミン、アニシジン、グリシン、アラニン、アルギニン、アスパラギン、グルタミン、ヒスチジン、リシン、フェニルアラニン、及びセリンから選択される1種以上の化合物である、請求項1に記載の銅エッチング液。
【請求項3】
前記アミン化合物は、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジエタノールアミン、メチルアニリン、及びプロリンから選択される1種以上の化合物である、請求項1に記載の銅エッチング液。
【請求項4】
pHが6以上である、請求項1~3のいずれか1項に記載の銅エッチング液。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項に記載の銅エッチング液を用いて、異種金属と接続された基板上の銅部分をエッチングする、基板処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、銅エッチング液及びこれを用いた基板処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
プリント基板の配線は、サブトラクティブ法やセミアディティブ法によって形成することができるが、配線を微細化する観点からセミアディティブ法が好ましい。セミアディティブ法による配線形成工程においては、絶縁層上に0.5μm~2μm程度の無電解銅めっき層からなるシード層を形成する。その後、シード層表面にめっきレジストを形成し、露光、現像によりレジストパターンを形成する。次に、電気銅めっき、レジスト剥離を行い、最後にシード層のエッチングを行うことにより配線を形成する。
【0003】
無電解銅めっき層からなるシード層を形成する際には、前処理工程として、絶縁樹脂に濡れ性を付与するクリーナー工程、ビアホール底の内層銅をエッチングする工程、無電解銅めっきを行なうためにパラジウム等の触媒を付与する工程が行われる。
【0004】
内層銅は、内層銅の酸化物および有機物を除去して、無電解銅めっき層との接続信頼性を向上させるために、0.1μm~2μmエッチングされる。一般的な銅のエッチング液は、酸化剤と無機酸との混合物からなり、酸化剤としては過硫酸ナトリウム、過酸化水素等が用いられ、無機酸としては硫酸、塩酸、硝酸等が用いられる。
【0005】
プリント基板の端部には内層銅と接続された銅層が露出していることがある。プリント基板を生産する際には、複数枚のプリント基板がステンレス製の治具に固定されることが一般的である。このため、内層銅と接触したプリント基板の端部に露出した銅層が、ステンレス製の治具と接触し、内層銅と治具とが導通した状態になる場合がある。
【0006】
このような状態で内層銅のエッチングを行うと、内層銅が大過剰にエッチングされる(ガルバニック腐食)。その結果、ビアホールやスルホール内における無電解銅めっきの析出不良や、電気銅めっき工程における電気銅めっきの析出性不良(ボイド形成やビアフィリング不足)を引き起こすという問題がある。
【0007】
銅のガルバニック腐食はステンレス製の治具と接触した状態において引き起こされるだけでなく、金や銀等の銅よりも貴な金属(イオン化傾向の小さい金属)とが接触した状態において引き起こされる。特許文献1および2においては、このような問題を解決するための銅エッチング液が検討されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特許第5715088号公報
【特許文献2】国際公開第2019/013160号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献1に記載された銅エッチング液は、ガルバニック腐食の抑制効果が十分ではない。また、塩素濃度を1ppm~20ppmの範囲に維持する必要があり、取り扱いの点でも問題がある。
【0010】
特許文献2に記載された銅エッチング液は、アンモニア水を多量に用いるため、作業環境の悪化が懸念される。また、銅濃度の変化によりエッチング速度が大きく変化してしまうという問題がある。
【0011】
本開示の課題は、エッチング対象が異種金属と接触した状態においても、過剰な銅のエッチングが生じない銅エッチング液を実現することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本開示の銅エッチング液の一態様は、過塩素酸塩、塩素酸塩、亜塩素酸塩、次亜塩素酸塩、過酸化水素、及び過ホウ酸塩からなる群から選択される1種以上の酸化剤と、1級アミノ基又は2級アミノ基を1個以上有するアミン化合物とを含有する。特定の酸化剤と、1級アミノ基又は2級アミノ基を1個以上有するアミン化合物とを含有する銅エッチング液を用いることにより、エッチング対象である銅が異種金属と接触した状態においても、過剰なエッチングの発生を抑えることができる。
【0013】
銅エッチング液の一態様において、アミン化合物は、メチルアミン、エチルアミン、エチレンジアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ジエチレントリアミン、モノエタノールアミン、アニリン、ベンジルアミン、フェネチルアミン、アニシジン、グリシン、アラニン、アルギニン、アスパラギン、グルタミン、ヒスチジン、リシン、フェニルアラニン、及びセリンから選択される1種以上の化合物とすることができる。
【0014】
銅エッチング液の一態様において、アミン化合物は、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジエタノールアミン、メチルアニリン、及びプロリンから選択される1種以上の化合物とすることができる。
【0015】
銅エッチング液の一態様において、エッチング液のpHは6以上とすることができる。
【0016】
本開示の基板処理方法は、本開示の銅エッチング液を用いて、異種金属と接続された基板上の銅部分をエッチングする。
【発明の効果】
【0017】
本開示の銅エッチング液によれば、エッチング対象である銅が異種金属と接触した状態においても、過剰な銅のエッチングが生じないようにすることができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本開示の銅エッチング液は、酸化剤と1級アミノ基又は2級アミノ基を有するアミン化合物とを含有しており、エッチング対象である銅が異種金属と接触した状態においても、ガルバニック腐食による過剰なエッチングを生じにくくすることができる。
【0019】
酸化剤は、過塩素酸塩、塩素酸塩、亜塩素酸塩、次亜塩素酸塩、過酸化水素、及び過ホウ酸塩のいずれかである。これらは、単独でもよく2種類以上を組み合わせてもよい。具体例として、次亜塩素酸ナトリウム、亜塩素酸ナトリウム、塩素酸ナトリウム、過塩素酸ナトリウム、次亜塩素酸カリウム、亜塩素酸カリウム、塩素酸カリウム、過塩素酸カリウム、過酸化水素、過ホウ酸ナトリウム、及び過ホウ酸カリウム等が挙げられる。酸化剤濃度は適宜条件を決定すればよく、特に限定されないが、好ましくは1g/L以上、より好ましくは2g/L以上、好ましくは300g/L以下、より好ましくは100g/L以下、さらに好ましくは30g/L以下である。酸化剤の濃度を1g/L以上とすることにより十分に銅をエッチングすることができ、300g/L以下とすることによりガルバニック腐食を十分に抑制できる。
【0020】
アミン化合物は、1級アミノ基を1個以上有する化合物又は2級アミノ基を1個以上有する化合物である。1級アミノ基及び2級アミノ基の両方を有する化合物を用いることもできる。
【0021】
1級アミノ基を1個以上有するアミン化合物の具体例としては、メチルアミン、エチルアミン、エチレンジアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ジエチレントリアミン、及びモノエタノールアミン等の脂肪族アミン、アニリン、ベンジルアミン、フェネチルアミン、及びアニシジン等の芳香族アミン、並びにグリシン、アラニン、アルギニン、アスパラギン、グルタミン、ヒスチジン、リシン、フェニルアラニン、セリン等のアミノ酸等が挙げられる。
【0022】
2級アミノ基を1個以上有するアミン化合物の具体例としては、ジメチルアミン、ジエチルアミン、及びジエタノールアミン等の脂肪族アミン、メチルアニリン等の芳香族アミン、並びにプロリン等のアミノ酸が挙げられる。
【0023】
これらのアミン化合物は、単独で用いることも、2種類以上を組み合わせて用いることもできる。
【0024】
1級アミノ基又は2級アミノ基を1個以上有するアミン化合物の濃度は、特に限定されないが、好ましくは0.1g/L以上、より好ましくは1g/L以上、さらに好ましくは5g/L以上、好ましくは300g/L以下、より好ましくは150g/L以下、さらに好ましくは80g/L以下である。1級アミノ基又は2級アミノ基を1個以上有するアミン化合物の濃度を0.1g/L以上とすることにより、ガルバニック腐食を抑制でき、300g/L以下とすることにより、コストの増加を抑えることができる。
【0025】
銅エッチング液のpHは6以上とすることが好ましい。pHを6以上とすることによりニッケル等の腐食も十分に抑制できる。水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニア、炭酸ナトリウム、塩酸、硝酸、硫酸、及びリン酸等のpH調整剤を添加して、pHの調整をすることができる。
【0026】
本発明のエッチング液には、必要に応じて前記の成分以外の成分を添加してもよい。例えば、エッチング液の浸透性を向上させるために非イオン系界面活性剤や水溶性溶剤を添加することができる。また、銅のキレートを補助するためにエチレンジアミン四酢酸、クエン酸、リンゴ酸、酒石酸、グルコン酸などの有機酸を添加してもよい。
【0027】
エッチング液を使用する際の温度は、特に限定されないが、エッチング速度、エッチングむら、コスト等の観点から10℃~70℃とすることが好ましい。
【0028】
エッチング対象とエッチング液との接触時間は、必要な銅のエッチング量に合わせて適宜選択することができる。
【0029】
エッチング対象である銅とエッチング液との接触方法は、浸漬、噴霧等の手段を適宜選択することができる。
【0030】
本開示の銅エッチング液は、ステンレス、銀及び金等の異種金属が接触した状態においても、ガルバニック腐食による銅の過剰なエッチングがほとんど生じない。このため、プリント配線基板を治具等に固定する際に、エッチング対象である銅部分と治具等の導通が生じていないことを確認する必要がなく、生産効率を大きく向上でき、不良の発生を抑えることもできる。また、エッチング対象である銅部分と導通した箇所に銀や金等の異種金属が接触している状態であっても、過剰なエッチングが生じないため、プリント配線基板の製造工程の自由度を大きく向上させることができる。さらに、pHを6.0以上とすれば、ニッケルの腐食も低減することができるので、ニッケルの腐食が問題となる用途に用いることが可能となる。
【実施例0031】
以下に実施例に基づき本発明を具体的に説明する。以下の実施例は、例示であり本発明を限定することを意図しない。
【0032】
<ガルバニック腐食の評価>
銅試料片及び銅試料片と異種金属片とを接触させた異種金属接触試料片についてそれぞれエッチングを行い、両者のエッチング量変動を求めた。エッチング量変動が10%以下の場合を良好(○)、エッチング量変動が10%を越え20%以下の場合を許容範囲(△)、エッチング量変動が20%を越える場合を不良(×)とした。
【0033】
50mm×50mmのサイズに裁断した銅箔厚18μmの銅張積層板(MCL-E-67、昭和電工マテリアルズ製)を銅試料片とした。銅試料片に表1に示す工程により、置換金めっきを行ったものを異種金属片とした。銅試料片と異種金属試料片とをステンレス製治具により接続し、銅と金とが導通するようにしたものを異種金属接触試料片とした。銅試料片及び異種金属接触試料片のそれぞれについて、表2に示すエッチング工程を行い、工程前後における質量の差から銅のエッチング量を以下の式(1)により求めた。また、エッチング変動量は以下の式(2)により求めた。
エッチング量(μm)=(工程前の試料片の重量(g)-工程後の試料片の重量(g))×22.4・・・(1)
エッチング変動量(%)=|(異種金属接触試料片のエッチング量(μm)-銅試料片のエッチング量(μm))/銅試料片のエッチング量(μm)|×100・・・(2)
【0034】
<ニッケル腐食の評価>
銅試料片に表1に示す無電解ニッケルめっきまでの工程を行ったものをニッケル試料片とした。ニッケル試料片について、表2に示すエッチング工程を行い、エッチング処理前後のニッケル試料片のニッケルめっき面をSEMにより表面形態の変化の有無を観察し、ニッケル腐食を評価した。エッチング処理前後でニッケルめっき面の表面形態に変化が認められない場合を不発生(○)、表面形態に変化が認められた場合を発生(×)とした。
【0035】
【表1】
【0036】
【表2】
【0037】
(実施例1)
酸化剤として亜塩素酸ナトリウム、アミン化合物としてトリエチレンテトラミンを用いた。エッチング液中の亜塩素酸ナトリウムの濃度は24g/L、トリエチレンテトラミンの濃度は11g/Lとした。pH調整剤として水酸化ナトリウムを2g/Lとなるように加えpHを12.5とした。エッチング処理温度は、25℃、浸漬時間は3分とした。
【0038】
銅試験片のエッチング量は0.327μm、異種金属接触試験片のエッチング量は0.309μmであり、エッチング変動量は5.5%であり、ガルバニック腐食は良好であった。また、ニッケル表面の形態の変化も認められなかった。
【0039】
(実施例2)
酸化剤として過酸化水素、アミン化合物としてトリエチレンテトラミンを用いた。エッチング液中の過酸化水素の濃度は14g/L、トリエチレンテトラミンの濃度は11g/Lとした。エッチング液のpHは、10.2であった。エッチング処理温度は、25℃、浸漬時間は3分とした。
【0040】
銅試験片のエッチング量は0.372μm、異種金属接触試験片のエッチング量は0.347μmであり、エッチング変動量は6.7%であり、ガルバニック腐食は良好であった。ニッケル表面の形態の変化は認められなかった。
【0041】
(実施例3)
酸化剤として過酸化水素、アミン化合物としてエチレンジアミンを用いた。エッチング液中の過酸化水素の濃度は19g/L、エチレンジアミンの濃度は20g/Lとした。エッチング液のpHは、6.0であった。エッチング処理温度は、30℃、浸漬時間は3分とした。
【0042】
銅試験片のエッチング量は2.00μm、異種金属接触試験片のエッチング量は1.98μmであり、エッチング変動量は2.0%であり、ガルバニック腐食は良好であった。ニッケル表面の形態の変化は認められなかった。
【0043】
(実施例4)
酸化剤として過ホウ酸ナトリウム、アミン化合物としてトリエチレンテトラミンを用いた。エッチング液中の過ホウ酸ナトリウムの濃度は10g/L、トリエチレンテトラミンの濃度は11g/Lとした。エッチング液のpHは、10.9であった。エッチング処理温度は、25℃、浸漬時間は3分とした。
【0044】
銅試験片のエッチング量は0.309μm、異種金属接触試験片のエッチング量は0.338μmであり、エッチング変動量は9.4%であり、ガルバニック腐食は良好であった。ニッケル表面の形態の変化は認められなかった。
【0045】
(実施例5)
酸化剤として亜塩素酸ナトリウム、アミン化合物としてエチレンジアミンを用いた。エッチング液中の亜塩素酸ナトリウムの濃度は2.4g/L、エチレンジアミンの濃度は8g/Lとした。エッチング液のpHは、11.6であった。エッチング処理温度は、25℃、浸漬時間は3分とした。
【0046】
銅試験片のエッチング量は0.365μm、異種金属接触試験片のエッチング量は0.329μmであり、エッチング変動量は9.9%であり、ガルバニック腐食は良好であった。ニッケル表面の形態の変化は認められなかった。
【0047】
(実施例6)
酸化剤として亜塩素酸ナトリウム、アミン化合物としてジエチレントリアミンを用いた。エッチング液中の亜塩素酸ナトリウムの濃度は2.4g/L、ジエチレントリアミンの濃度は8g/Lとした。エッチング液のpHは、11.4であった。エッチング処理温度は、25℃、浸漬時間は3分とした。
【0048】
銅試験片のエッチング量は0.450μm、異種金属接触試験片のエッチング量は0.421μmであり、エッチング変動量は6.4%であり、ガルバニック腐食は良好であった。ニッケル表面の形態の変化は認められなかった。
【0049】
(実施例7)
酸化剤として亜塩素酸ナトリウム、アミン化合物としてモノエタノールアミンを用いた。エッチング液中の亜塩素酸ナトリウムの濃度は24g/L、モノエタノールアミンの濃度は30g/Lとした。pH調整剤として水酸化ナトリウムを105g/Lとなるように添加し、エッチング液のpHが13を越えるようにした。エッチング処理温度は、40℃、浸漬時間は10分とした。
【0050】
銅試験片のエッチング量は0.293μm、異種金属接触試験片のエッチング量は0.332μmであり、エッチング変動量は13.3%であり、ガルバニック腐食は許容範囲であった。ニッケル表面の形態の変化は認められなかった。
【0051】
(実施例8)
酸化剤として亜塩素酸ナトリウム、アミン化合物としてテトラエチレンペンタミンを用いた。エッチング液中の亜塩素酸ナトリウムの濃度は24g/L、テトラエチレンペンタミンの濃度は14g/Lとした。エッチング液のpHは、11.5であった。エッチング処理温度は、25℃、浸漬時間は10分とした。
【0052】
銅試験片のエッチング量は0.208μm、異種金属接触試験片のエッチング量は0.193μmであり、エッチング変動量は7.2%であり、ガルバニック腐食は良好であった。ニッケル表面の形態の変化は認められなかった。
【0053】
(実施例9)
酸化剤として亜塩素酸ナトリウム、アミン化合物としてグリシンを用いた。エッチング液中の亜塩素酸ナトリウムの濃度は2.4g/L、グリシンの濃度は8g/Lとした。エッチング液のpHは、7.2であった。エッチング処理温度は、25℃、浸漬時間は3分とした。
【0054】
銅試験片のエッチング量は0.316μm、異種金属接触試験片のエッチング量は0.338μmであり、エッチング変動量は7.0%であり、ガルバニック腐食は良好であった。ニッケル表面の形態の変化は認められなかった。
【0055】
(実施例10)
酸化剤として亜塩素酸ナトリウム、アミン化合物としてジエタノールアミンを用いた。エッチング液中の亜塩素酸ナトリウムの濃度は24g/L、エチレンジアミンの濃度は60g/Lとした。pH調整剤として水酸化ナトリウムを105g/Lとなるように添加し、エッチング液のpHが13を越えるようにした。エッチング処理温度は、40℃、浸漬時間は10分とした。
【0056】
銅試験片のエッチング量は0.309μm、異種金属接触試験片のエッチング量は0.340μmgであり、エッチング変動量は10.0%であり、ガルバニック腐食は良好であった。ニッケル表面の形態の変化は認められなかった。
【0057】
(実施例11)
酸化剤として過酸化水素水、アミン化合物としてエチレンジアミンを用いた。エッチング液中の過酸化水素水の濃度は19g/L、エチレンジアミンの濃度は20g/Lとした。エッチング液のpHは、5.5であった。エッチング処理温度は、30℃、浸漬時間は3分とした。
【0058】
銅試験片のエッチング量は0.230μm、異種金属接触試験片のエッチング量は0.213μmであり、エッチング変動量は7.4%であり、ガルバニック腐食は良好であった。ニッケル表面に形態の変化が認められた。
【0059】
(比較例1)
酸化剤として亜塩素酸ナトリウムを用い、アミン化合物は添加しなかった。エッチング液中の亜塩素酸ナトリウムの濃度は24g/Lとした。pH調整剤として水酸化ナトリウムを105g/Lとなるように添加し、エッチング液のpHが13を越えるようにした。エッチング処理温度は、25℃、浸漬時間は3分とした。
【0060】
銅試験片のエッチング量は0.027μm、異種金属接触試験片のエッチング量は0.152μmであり、エッチング変動量は463%であり、ガルバニック腐食は不良であった。ニッケル表面の形態の変化は認められなかった。
【0061】
(比較例2)
酸化剤として過硫酸アンモニウム、アミン化合物としてトリエチレンテトラミンを用いた。エッチング液中の過硫酸アンモニウムの濃度は30g/L、トリエチレンテトラミンの濃度は11g/Lとした。エッチング液のpHは、8.0であった。エッチング処理温度は、25℃、浸漬時間は3分とした。
【0062】
銅試験片のエッチング量は0.184μm、異種金属接触試験片のエッチング量は0.258μmであり、エッチング変動量は40.2%であり、ガルバニック腐食は不良であった。ニッケル表面の形態の変化は認められなかった。
【0063】
(比較例3)
酸化剤として亜塩素酸ナトリウム、アミン化合物として1級アミノ基及び2級アミノ基を有しないトリエタノールアミンを用いた。エッチング液中の亜塩素酸ナトリウムの濃度は24g/Lとし、トリエタノールアミンの濃度は5.5g/Lとした。pH調整剤として水酸化ナトリウムを105g/Lとなるように添加し、エッチング液のpHが13を越えるようにした。エッチング処理温度は、40℃、浸漬時間は10分とした。
【0064】
銅試験片のエッチング量は0.146μm、異種金属接触試験片のエッチング量は0.515μmであり、エッチング変動量は253%であり、ガルバニック腐食は不良であった。ニッケル表面の形態の変化は認められなかった。
【0065】
表3~表5に各実施例及び比較例の条件及び結果をまとめて示す。
【0066】
【表3】
【0067】
【表4】
【0068】
【表5】
【産業上の利用可能性】
【0069】
本開示の銅エッチング液は、異種金属と接触した状態においても過剰な銅のエッチングが生じないようにでき、プリント基板の配線形成等において有用である。