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特開2022-184641眼科医療データ処理プログラムおよび眼科医療データ処理装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022184641
(43)【公開日】2022-12-13
(54)【発明の名称】眼科医療データ処理プログラムおよび眼科医療データ処理装置
(51)【国際特許分類】
   G16H 10/60 20180101AFI20221206BHJP
   G16H 30/00 20180101ALI20221206BHJP
   A61B 3/14 20060101ALI20221206BHJP
   A61B 3/10 20060101ALI20221206BHJP
【FI】
G16H10/60
G16H30/00
A61B3/14
A61B3/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021092595
(22)【出願日】2021-06-01
(71)【出願人】
【識別番号】000135184
【氏名又は名称】株式会社ニデック
(74)【代理人】
【識別番号】100166785
【弁理士】
【氏名又は名称】大川 智也
(72)【発明者】
【氏名】田中 清人
(72)【発明者】
【氏名】竹内 大輔
(72)【発明者】
【氏名】宮城 友洋
(72)【発明者】
【氏名】鳥居 寿成
(72)【発明者】
【氏名】水野 雄介
(72)【発明者】
【氏名】村田 俊夫
(72)【発明者】
【氏名】日比 健二
(72)【発明者】
【氏名】吉川 裕一郎
【テーマコード(参考)】
4C316
5L099
【Fターム(参考)】
4C316AA04
4C316AA09
4C316AA13
4C316AA20
4C316AA26
4C316AB11
4C316AB12
4C316AB16
4C316FC14
4C316FC15
4C316FZ01
5L099AA23
5L099AA26
(57)【要約】
【課題】医療データを患者に適切に紐付けて記憶することが可能な眼科医療データ処理プログラムおよび眼科医療データ処理装置を提供する。
【解決手段】制御部は、医療データの取得対象の患者を事前に特定すると共に、患者を特定した日時と特定した患者を示す患者特定ログを、記憶装置に記憶させる。制御部は、患者が事前に特定されている状態で取得された医療データを、特定されている患者に紐付けて記憶装置に記憶させる。制御部は、取得された医療データのうち、患者に紐付けた記憶処理が未だ行われていない未処理データについて、データが取得された日時を示す情報を取得する。制御部は、未処理データが取得された時点において特定されていた患者を、未処理データの取得対象の患者として事後的に特定する。制御部は、未処理データを、事後的に特定した患者に紐付けて記憶装置に記憶させる。
【選択図】図5

【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者に対して実行された眼科の検査、撮影、および診察の少なくともいずれかの結果を示す医療データを処理する眼科医療データ処理装置において実行される眼科医療データ処理プログラムであって、
前記眼科医療データ処理プログラムが前記眼科医療データ処理装置の制御部によって実行されることで、
医療データの取得対象の患者を事前に特定する事前特定ステップと、
前記事前特定ステップにおいて患者が特定された日時と特定された患者を示すログである患者特定ログを、記憶装置に記憶させるログ記憶ステップと、
医療データを取得する医療データ取得ステップと、
前記事前特定ステップにおいて前記患者が事前に特定されている状態で取得された医療データを、特定されている前記患者に紐付けて前記記憶装置に記憶させる通常記憶ステップと、
前記医療データ取得ステップにおいて取得された医療データのうち、患者に紐付けた記憶処理が未だ行われていない医療データである未処理データの取得対象の患者を特定する事後特定ステップと、
前記未処理データを、前記事後特定ステップにおいて特定された前記患者に紐付けて前記記憶装置に記憶させる事後記憶ステップと、
を前記眼科医療データ処理装置に実行させ、
前記事後特定ステップでは、
前記未処理データが取得された日時を示す情報が取得され、
前記患者特定ログに基づいて、前記未処理データが取得された時点において前記事前特定ステップで特定されていた患者が、前記未処理データの取得対象の患者として特定されることを特徴とする眼科医療データ処理プログラム。
【請求項2】
請求項1に記載の眼科医療データ処理プログラムであって、
前記医療データ取得ステップでは、被検眼の検査および撮影の少なくともいずれかを実行する眼科装置から医療データを取得し、
前記事後特定ステップでは、前記未処理データが前記眼科装置において生成された日時の情報に基づいて、前記未処理データの取得対象の患者が特定されることを特徴とする眼科医療データ処理プログラム。
【請求項3】
請求項1または2に記載の眼科医療データ処理プログラムであって、
前記事後記憶ステップは、
前記事後特定ステップにおいて前記未処理データの取得対象の患者が特定された結果をユーザに報知する特定結果報知ステップを含み、
報知された結果を確認したことを示す信号がユーザによって入力された場合に、前記未処理データが、特定された前記患者に紐付けて記憶されることを特徴とする眼科医療データ処理プログラム。
【請求項4】
請求項1から3のいずれかに記載の眼科医療データ処理プログラムであって、
前記未処理データが画像データであり、且つ、前記患者特定ログに基づいて特定された前記患者に過去に紐付けられて記憶された画像データが存在する場合に、前記未処理データと、前記患者特定ログに基づいて特定された前記患者の過去の前記画像データの比較結果に基づいて、前記患者特定ログに基づく前記患者の特定結果を確認する確認ステップがさらに実行されることを特徴とする眼科医療データ処理プログラム。
【請求項5】
患者に対して実行された眼科の検査、撮影、および診察の少なくともいずれかの結果を示す医療データを処理する眼科医療データ処理装置であって、
前記眼科医療データ処理装置の制御部は、
医療データの取得対象の患者を事前に特定する事前特定ステップと、
前記事前特定ステップにおいて患者が特定された日時と特定された患者を示すログである患者特定ログを、記憶装置に記憶させるログ記憶ステップと、
医療データを取得する医療データ取得ステップと、
前記事前特定ステップにおいて前記患者が事前に特定されている状態で取得された医療データを、特定されている前記患者に紐付けて前記記憶装置に記憶させる通常記憶ステップと、
前記医療データ取得ステップにおいて取得された医療データのうち、患者に紐付けた記憶処理が未だ行われていない医療データである未処理データの取得対象の患者を特定する事後特定ステップと、
前記未処理データを、前記事後特定ステップにおいて特定された前記患者に紐付けて前記記憶装置に記憶させる事後記憶ステップと、
を実行し、
前記事後特定ステップでは、
前記未処理データが取得された日時を示す情報を取得し、
前記患者特定ログに基づいて、前記未処理データが取得された時点において前記事前特定ステップで特定されていた患者を、前記未処理データの取得対象の患者として特定することを特徴とする眼科医療データ処理装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、眼科の医療データを処理するための眼科医療データ処理プログラムおよび眼科医療データ処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
診療に有用なデータをユーザ(例えば、医師または補助者等)に提示するための種々の技術が提案されている。例えば、特許文献1に記載の装置は、撮影装置によって得られたOCTデータを、データの取得対象となった患者に紐付けて記憶する。ユーザは、患者に紐付けて記憶された複数のOCTデータの変化から、病変部の経過を観察する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2017-104535号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
取得された医療データを、医療データの取得対象の患者に紐付けて記憶するための方法について検討する。例えば、医療データの取得対象の患者が事前に特定された状態で、特定されている患者の医療データが生成された場合には、通常であれば、生成された医療データは適切に患者に紐付けられると考えられる。しかしながら、眼科医療データ処理装置、または、装置の動作環境等に異常が発生すると、患者が事前に特定されていても、生成された医療データが患者に紐付けられない場合がある。この場合、ユーザは、医療データが取得された患者を自ら判別して、医療データに紐付ける必要がある。また、患者を判別するための情報が存在しなければ、患者が不明のまま医療データを破棄せざるを得ない場合もある。従って、何らかの異常が発生した場合であっても、医療データを患者に適切に紐付けて記憶する技術が望まれる。
【0005】
本開示の典型的な目的は、医療データを患者に適切に紐付けて記憶することが可能な眼科医療データ処理プログラムおよび眼科医療データ処理装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示における典型的な実施形態が提供する眼科医療データ処理プログラムは、患者に対して実行された眼科の検査、撮影、および診察の少なくともいずれかの結果を示す医療データを処理する眼科医療データ処理装置において実行される眼科医療データ処理プログラムであって、前記眼科医療データ処理プログラムが前記眼科医療データ処理装置の制御部によって実行されることで、医療データの取得対象の患者を事前に特定する事前特定ステップと、前記事前特定ステップにおいて患者が特定された日時と特定された患者を示すログである患者特定ログを、記憶装置に記憶させるログ記憶ステップと、医療データを取得する医療データ取得ステップと、前記事前特定ステップにおいて前記患者が事前に特定されている状態で取得された医療データを、特定されている前記患者に紐付けて前記記憶装置に記憶させる通常記憶ステップと、前記医療データ取得ステップにおいて取得された医療データのうち、患者に紐付けた記憶処理が未だ行われていない医療データである未処理データの取得対象の患者を特定する事後特定ステップと、前記未処理データを、前記事後特定ステップにおいて特定された前記患者に紐付けて前記記憶装置に記憶させる事後記憶ステップと、を前記眼科医療データ処理装置に実行させ、前記事後特定ステップでは、前記未処理データが取得された日時を示す情報が取得され、前記患者特定ログに基づいて、前記未処理データが取得された時点において前記事前特定ステップで特定されていた患者が、前記未処理データの取得対象の患者として特定される。
【0007】
本開示における典型的な実施形態が提供する眼科医療データ処理装置は、患者に対して実行された眼科の検査、撮影、および診察の少なくともいずれかの結果を示す医療データを処理する眼科医療データ処理装置であって、前記眼科医療データ処理装置の制御部は、医療データの取得対象の患者を事前に特定する事前特定ステップと、前記事前特定ステップにおいて患者が特定された日時と特定された患者を示すログである患者特定ログを、記憶装置に記憶させるログ記憶ステップと、医療データを取得する医療データ取得ステップと、前記事前特定ステップにおいて前記患者が事前に特定されている状態で取得された医療データを、特定されている前記患者に紐付けて前記記憶装置に記憶させる通常記憶ステップと、前記医療データ取得ステップにおいて取得された医療データのうち、患者に紐付けた記憶処理が未だ行われていない医療データである未処理データの取得対象の患者を特定する事後特定ステップと、前記未処理データを、前記事後特定ステップにおいて特定された前記患者に紐付けて前記記憶装置に記憶させる事後記憶ステップと、を実行し、前記事後特定ステップでは、前記未処理データが取得された日時を示す情報を取得し、前記患者特定ログに基づいて、前記未処理データが取得された時点において前記事前特定ステップで特定されていた患者を、前記未処理データの取得対象の患者として特定する。
【0008】
本開示に係る眼科医療データ処理プログラムおよび眼科医療データ処理装置によると、医療データが患者に適切に紐付けられて記憶される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】眼科医療データ処理システム1の概略構成を示すブロック図である。
図2】眼科医療データ処理装置10が実行する通常記憶処理のフローチャートである。
図3】患者情報表示画面30の一例を示す図である。
図4】患者特定ログのデータ構成を模式的に示す図である。
図5】眼科医療データ処理装置10が実行する事後記憶処理のフローチャートである。
図6】特定結果確認画面40の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
<概要>
本開示で例示する眼科医療データ処理装置は、患者に対して実行された眼科の検査、撮影、および診察の少なくともいずれかの結果を示す医療データを処理する。眼科医療データ処理装置の制御部は、事前特定ステップ、ログ記憶ステップ、医療データ取得ステップ、通常記憶ステップ、事後特定ステップ、および事後記憶ステップを実行する。
【0011】
事前特定ステップでは、制御部は、医療データの取得対象の患者を事前に特定する。ログ記憶ステップでは、制御部は、事前特定ステップにおいて患者が特定された日時と特定された患者を示すログである患者特定ログを、記憶装置に記憶させる。医療データ取得ステップでは、制御部は医療データを取得する。通常記憶ステップでは、制御部は、事前特定ステップにおいて患者が事前に特定されている状態で取得された医療データを、特定されている患者に紐付けて記憶装置に記憶させる。事後特定ステップでは、制御部は、医療データ取得ステップにおいて取得された医療データのうち、患者に紐付けた記憶処理が未だ行われていない未処理データについて、データが取得された日時を示す情報を取得する。制御部は、未処理データが取得された時点において事前特定ステップで特定されていた患者を、未処理データの取得対象の患者として事後的に特定する。事後記憶ステップでは、制御部は、未処理データを、事後特定ステップにおいて特定された患者に紐付けて記憶装置に記憶させる。
【0012】
本開示に係る技術によると、何らかの異常によって医療データが患者に紐付けられなかった場合でも、患者特定ログが示す日時の情報と、医療データが取得された日時を示す情報によって、医療データが取得された時点において特定されていた患者が事後的に特定される。よって、医療データが適切に患者に紐付けられて記憶される。
【0013】
なお、本開示における日時の情報は、日時の前後を特定できる情報であればよいので、日付および時間を示す情報に限定されるものではない。例えば、特定のタイミングからの経過時間を示す情報が、日時の情報として用いられてもよい。
【0014】
医療データの取得対象の患者を事前に特定するための具体的な方法は、適宜選択できる。例えば、制御部は、事前特定ステップにおいて、患者を特定するためのユーザからの指示を、操作部等を介して入力し、入力された指示に応じて患者を事前に特定してもよい。また、制御部は、患者を特定するための識別子(バーコード等)を読み取ることで、患者を事前に特定してもよい。
【0015】
医療データを患者に紐付けて記憶させるための具体的な方法も、適宜選択できる。例えば、制御部は、医療データを記憶させる際のデータ名に、患者を識別するための情報(例えば患者ID等)を含めることで、医療データを患者に紐付けてもよい。また、制御部は、患者毎に設けられた複数のフォルダのうち、特定された患者のフォルダに医療データを保存することで、医療データを患者に紐付けてもよい。
【0016】
医療データ取得ステップでは、制御部は、被検眼の検査および撮影の少なくともいずれかを実行する眼科装置から医療データを取得してもよい。事後特定ステップでは、制御部は、未処理データが眼科装置において生成された日時の情報に基づいて、未処理データの取得対象の患者が特定されてもよい。例えば、眼科医療データ処理装置が眼科装置から未処理データを取得した日時に基づいて、未処理データの取得対象の患者を特定することも考えられる。しかし、ネットワークの不具合等に起因して、眼科装置が未処理データを生成した日時と、眼科医療データ処理装置が眼科装置から未処理データを取得した日時にずれが生じた場合には、未処理データの取得対象の患者を正確に特定できないこともあり得る。これに対し、眼科装置が未処理データを生成した日時の情報が参照されることで、未処理データの取得対象の患者がより正確に特定される。
【0017】
ただし、事後特定ステップでは、眼科医療データ処理装置が眼科装置から未処理データを取得した日時の情報に基づいて、未処理データの取得対象の患者が特定されてもよい。この場合、眼科装置によって医療データが予め生成された後に、医療データの取得対象の患者が特定される手順が採用されても、取得対象の患者を事後的に特定することが可能である。また、医療データは、眼科装置によって生成される検査データまたは画像データに限定されない。例えば、医療データは、ユーザが入力する指示に応じて作成された、患者のカルテデータ等であってもよい。
【0018】
制御部は、事後特定ステップにおいて未処理データの取得対象の患者が特定した結果をユーザに報知する特定結果報知ステップを実行してもよい。事後記憶ステップでは、報知された結果を確認したことを示す信号がユーザによって入力された場合に、未処理データが、特定された患者に紐付けて記憶されてもよい。この場合、未処理データが誤った患者に紐付けられる可能性が、適切に抑制される。
【0019】
制御部は、未処理データが複数存在する場合に、複数の未処理データの各々に対して事後特定ステップで患者が特定された結果を、纏めてユーザに報知してもよい。この場合、ユーザは、複数の未処理データに対する患者の特定結果を、効率よく確認することができる。
【0020】
制御部は、確認ステップをさらに実行してもよい。確認ステップでは、制御部は、未処理データが画像データであり、且つ、患者特定ログに基づいて特定された患者に過去に紐付けられて記憶された画像データが存在する場合に、未処理データと、患者特定ログに基づいて特定された患者の過去の画像データの比較結果に基づいて、患者特定ログに基づく患者の特定結果を確認する。この場合、患者特定ログに基づいて行われた患者の特定結果の正確性が、過去に記憶された画像データとの比較結果に基づいて適切に確認される。よって、未処理データの取得対象の患者がより正確に特定される。
【0021】
なお、確認ステップの具体的な方法も適宜選択できる。例えば、制御部は、公知の画像処理、または、機械学習アルゴリズムに従って訓練された数学モデル等によって、未処理データと過去の画像データの類似度を取得してもよい。制御部は、取得した類似度が閾値以上であるか否かによって、患者特定ログに基づく患者の特定結果が正確であるか否かを確認してもよい。また、制御部は、未処理データと過去の画像データの両方を表示部に表示させてもよい。制御部は、未処理データと過去の画像データの撮影対象が同一であることを示す指示がユーザによって入力されたか否かに応じて、患者特定ログに基づく患者の特定結果が正確であるか否かを確認してもよい。
【0022】
事前特定ステップでは、制御部は、医療データの取得対象の患者と共に、医療データの取得対象の眼が左右の眼のいずれであるかを、事前に特定してもよい。事後特定ステップでは、制御部は、未処理データが左右の眼のいずれのデータであるかを示す情報を取得してもよい。制御部は、複数の患者のうち、事前特定ステップで特定されていた左右の情報と、未処理データについての左右の情報が一致する患者の中から、未処理データの取得対象の患者を特定してもよい。この場合、左右の眼の情報が参照されることで、患者の特定精度がさらに向上する。
【0023】
<実施形態>
以下、本開示における典型的な実施形態の1つについて、図面を参照して説明する。まず、図1を参照して、本実施形態における眼科医療データ処理システム1のシステム構成の一例について概略的に説明する。本実施形態の眼科医療データ処理システム1は、眼科医療データ処理装置10および眼科装置20を備える。
【0024】
眼科医療データ処理装置10は、各種医療データを処理する。本実施形態では、眼科医療データ処理装置10として、医療機関に設置されたパーソナルコンピュータ(以下、「PC」という)が用いられている。しかし、眼科医療データ処理装置10はPCに限定されない。例えば、スマートフォンまたはタブレット端末等が眼科医療データ処理装置10として用いられてもよい。PCとは別に、またはPCと共に、サーバが眼科医療データ処理装置10として用いられてもよい。この場合、サーバは、例えば、クラウドサービスを提供するメーカーのサーバ(所謂クラウドサーバ)であってもよいし、クラウドサーバ以外のサーバ(例えば、眼科医療データ処理プログラムを提供するメーカーのサーバ等)であってもよい。複数の端末が協働して眼科医療データ処理装置10として機能してもよい。例えば、画像を取り込むスキャナと、スキャナに接続されたPCが、協働して眼科医療データ処理装置10として機能してもよい。
【0025】
眼科医療データ処理装置10は、各種制御処理を行う制御ユニット11と、通信I/F14を備える。制御ユニット11は、制御を司るコントローラであるCPU12と、プログラムおよびデータ等を記憶することが可能な記憶装置13を備える。通信I/F14は、ネットワーク5を介して、眼科医療データ処理装置10を外部機器(例えば眼科装置20等)と接続する。また、眼科医療データ処理装置10は、操作部16および表示部17に接続されている。
【0026】
記憶装置13には、後述する眼科医療データ処理(図2および図5参照)の少なくとも一部を実行するための眼科医療データ処理プログラムが記憶されている。また、記憶装置13には、医療データが患者に紐付けて記憶される。本実施形態における医療データとは、患者に対して実行された眼科の検査、撮影、および診察の少なくともいずれかを示すデータである。一例として、本実施形態では、眼科装置(眼科撮影装置)20によって撮影された被検眼の画像データ(例えば、OCT画像、SLO画像、眼底カメラ画像、角膜内皮細胞撮影画像等の少なくともいずれかの画像データ)、眼科装置(眼科検査装置)20によって実行された被検眼の検査結果を示す検査データ(例えば、眼軸長、眼屈折力、眼圧等の少なくともいずれかの検査データ)、眼科医療データ処理装置10に接続されたスキャナを介して取り込まれた画像データ、および、操作部16がユーザによって操作されることで作成された患者のカルテデータ等が、医療データとして処理される。
【0027】
なお、本実施形態では、眼科医療データ処理装置10に内蔵された記憶装置13に医療データが記憶される場合を例示する。しかし、医療データが記憶される記憶装置は、眼科医療データ処理装置10の外部に設けられていてもよい。例えば、医療データは、サーバ(クラウドサーバを含む)、または、外付けのハードディスク等に記憶されてもよい。この場合、眼科医療データ処理装置10と記憶装置は、無線通信(インターネット等のネットワークを含む)、または有線通信によって接続されていてもよい。
【0028】
眼科装置20は、被検眼の撮影および検査の少なくともいずれかを実行する。眼科装置20には、例えば、OCT装置、走査型レーザ検眼鏡(SLO)、眼底カメラ、角膜内皮細胞撮影装置、眼軸長測定装置、眼屈折力測定装置、眼圧測定装置等の少なくともいずれかを採用できる。眼科装置20は、各種制御処理を行う制御ユニット21と、通信I/F24を備える。制御ユニット21は、制御を司るコントローラであるCPU22と、プログラム及びデータ等を記憶することが可能な記憶装置23を備える。また、眼科装置20は、操作部26、表示部27、および駆動部28を備える。駆動部28は、眼科装置20が患者の撮影および検査の少なくともいずれかを実行するために必要な各種構成を備える。
【0029】
図2図6を参照して、本実施形態の眼科医療データ処理装置10が実行する眼科医療データ処理の一例について説明する。本実施形態の眼科医療データ処理装置10は、通常記憶処理(図2参照)と、事後記憶処理(図5参照)を実行することができる。通常記憶処理では、医療データの取得対象の患者が事前に特定された状態で、特定された患者の医療データが取得される。取得された医療データは、事前に特定されていた患者に紐付けて記憶される。ここで、通常記憶処理が実行されている間に、眼科医療データ処理装置10、または、装置の動作環境等(例えば、ネットワーク5等)に異常が発生すると、取得された医療データが患者に紐付けられないまま、未処理データとして残存してしまう場合がある。事後記憶処理では、患者に紐付けた記憶処理が未だ行われていない未処理データが、適切に患者に紐付けられて記憶される。
【0030】
前述したように、本実施形態の眼科医療データ処理装置10は、眼科装置(眼科撮影装置)20によって撮影された被検眼の画像データ、眼科装置(眼科検査装置)20によって実行された被検眼の検査結果を示す検査データ、および、患者のカルテデータ等を、医療データとして処理することができる。以下の説明では、医療データとして、眼科装置20によって撮影された被検眼の眼底の画像データを処理する場合を例示する。通常記憶処理および事後記憶処理は、記憶装置13に記憶された眼科医療データ処理プログラムに従って、眼科医療データ処理装置10のCPU12によって実行される。
【0031】
図2図4を参照して、通常記憶処理について説明する。通常記憶処理は、眼科医療データ処理装置10が稼働している間に実行される。まず、CPU12は、医療データの取得対象の患者を特定する指示が入力されたか否かを判断する(S1)。本実施形態では、ユーザは、操作部16を操作することで、患者を特定するための指示を眼科医療データ処理装置10に入力することができる。この場合、ユーザは、例えば、複数の患者が列挙された患者リストの中から、医療データの取得対象とする患者を選択することで、患者を特定する指示を入力してもよい。ユーザは、患者のIDまたは氏名等を入力してもよい。また、患者を識別するための識別子(例えばバーコード等)が、各患者に付与されていてもよい。この場合、CPU12は、識別子リーダによって読み取られた識別子を入力することで、患者を特定するための指示を入力してもよい。なお、本実施形態では、患者を特定する指示と共に、診療(検査、撮影、診断、および治療等)の対象となる眼が左眼、右眼、および両眼のいずれであるかを指定する指示も入力される。ただし、対象眼を示す情報は、特定された患者に関する過去の情報に基づいて特定されてもよい。患者を特定する指示が入力されていなければ(S1:NO)、S1の処理が繰り返されて待機状態となる。
【0032】
患者を特定する指示が入力されると(S1:YES)、CPU12は、入力された指示に応じて、医療データの取得対象の患者、および対象眼を事前に特定する。CPU12は、特定した患者に関する情報を含む患者情報表示画面30(図3参照)を、表示部17に表示させる(S2)。
【0033】
図3に例示する患者情報表示画面30では、特定した患者の患者名、性別、対象眼、前回検査日時の情報が表示される。前述したように、対象眼の情報は、患者の左右の眼のうち、診療の対象となる眼がいずれであるかを示す。前回検査日時の情報は、患者が前回検査を受けた日時を示す。また、本実施形態の患者情報表示画面30には、前回撮影画像表示欄31、画像データ取り込みボタン32、および終了ボタン33が設けられている。S2で特定された患者について過去に撮影された画像データが存在する場合には、前回撮影画像表示欄31に過去の画像が表示される。画像データ取り込みボタン32は、眼科装置20によって患者の被検眼の画像を新たに撮影して保存する場合に、ユーザによって操作される。終了ボタン33は、その時点で特定されている患者についての処置を終了する場合(例えば、患者を変更する場合等)に、ユーザによって操作される。
【0034】
次いで、CPU12は、S2で実行された患者特定処理についてのログである患者特定ログを、記憶装置13に記憶させる(S3)。図4に、患者特定ログのデータ構成の一例を示す。図4に示す例では、患者特定ログとして、特定日時の情報、特定患者の情報、および対象眼の情報が、事前特定処理(S2)が実行される毎に記憶される。特定日時の情報は、事前特定処理において患者が特定された日時を示す。特定患者の情報は、事前特定処理において特定された患者を示す。対象眼の情報は、特定された患者の左右眼のうち、診療の対象となる眼が左眼、右眼、および両眼のいずれであるかを示す。
【0035】
次いで、CPU12は、医療データを取得したか否かを判断する(S5)。本実施形態では、眼科装置20は、被検眼を撮影することで、医療データの一種である画像データを生成する。眼科装置20は、生成した画像データを、ネットワーク5を介して眼科医療データ処理装置10に送信する。本実施形態では、画像データ取り込みボタン32(図3参照)がユーザによって操作されることで、画像データが眼科装置20から取り込まれる。ここで、本実施形態では、画像データが眼科装置20によって生成(撮影)された日時を示す情報が、画像データに付加されている。なお、眼科医療データ処理装置10が医療データを取得する方法を変更することも可能である。例えば、眼科医療データ処理装置10は、装置に着脱可能な記憶媒体(USBメモリ等)を介して医療データを取得してもよい。医療データは、有線通信等を介して送受信されてもよい。
【0036】
医療データが取得されていなければ(S5:NO)、処理はそのままS7へ移行する。医療データが取得されると(S5:YES)、CPU12は、取得した医療データを、S2で特定している患者に紐付けて記憶装置13に記憶させる(S6)。例えば、CPU12は、医療データを記憶させる際のデータ名に、患者を識別するための情報(例えば患者ID等)を含めることで、医療データを患者に紐付けてもよい。また、CPU12は、患者毎に設けられた複数のフォルダのうち、特定された患者のフォルダに医療データを保存することで、医療データを患者に紐付けてもよい。
【0037】
次いで、CPU12は、特定している患者に対する処置を終了するか否かを判断する(S7)。終了ボタン33(図3参照)が操作されておらず、処置を終了しない場合には、処理はS5へ戻り、S5~S7の処理が繰り返される。終了ボタン33が操作されると(S7:NO)、処理はS1へ戻る。その後、患者を特定する指示が新たに入力されると(S1:YES)、次の患者に対する処置が行われる。
【0038】
図5および図6を参照して、事後記憶処理について説明する。前述したように、事後記憶処理では、患者に紐付けた記憶処理が未だ行われていない未処理データが存在する場合に、患者に事後的に紐付けられて記憶される。事後記憶処理を実行するタイミングは適宜選択できる。例えば、事後記憶処理は、眼科医療データ処理装置10の電源がオンとされた場合、または、装置の異常が解消された場合等に実行されてもよい。また、事故記憶処理は、一定時間毎に繰り返し実行されてもよい。
【0039】
まず、CPU12は、未処理データが存在するか否かを判断する(S11)。本実施形態における未処理データとは、通常記憶処理(図2参照)のS5で取得された医療データのうち、患者に紐付けた記憶処理が未だ行われていない医療データである。前述したように、未処理データは、何らかの異常が発生した場合等に発生する場合がある。未処理データが存在しなければ(S11:NO)、処理はそのまま終了する。
【0040】
未処理データが存在する場合(S11:YES)、CPU12は、未処理データが取得された日時を示す日時情報を取得する(S12)。詳細には、未処理データが眼科装置20から取得されている場合、CPU12は、未処理データが眼科装置20において生成された日時の情報を取得する。この場合、ネットワーク5の不具合等に起因して、眼科装置20が未処理データを生成した日時と、眼科医療データ処理装置10が未処理データを眼科装置20から取得した日時がずれている場合でも、後述するS13の処理において、医療データの取得対象の患者が正確に特定され易くなる。
【0041】
次いで、CPU12は、記憶装置13に記憶されている患者特定ログ(図4参照)と、S12で取得された日時情報に基づいて、未処理データが取得(または生成)された時点においてS2で特定されていた患者が、未処理データの取得対象の患者として事後的に特定される(S13)。図4に示すように、ある患者Aが特定された日時から、次の患者Bが特定された日時までの間は、医療データの取得対象の患者として患者Aが特定されている。図4に示す例では、「鈴木太郎」が特定された9時1分から、「山田花子」が特定された9時18分までの間は、医療データの取得対象の患者として「鈴木太郎」が特定されていたことが分かる。また、「山田花子」が特定された9時18分から、「佐藤次郎」が特定された9時29分までの間は、医療データの取得対象の患者として「山田花子」が特定されていたことが分かる。従って、患者特定ログと、未処理データの日時情報が比較されることで、未処理データが取得された時点で特定されていた患者が適切に判別される。例えば、未処理データが取得(生成)された日時が9時24分である場合、未処理データの取得対象の患者が「山田花子」である旨が、S13において事後的に特定される。
【0042】
なお、本実施形態の未処理データには、左眼および右眼のいずれのデータであるかを示す情報が含まれている。また、前述したように、本実施形態の患者特定ログ(図4参照)には、対象眼の情報(左眼、右眼、および両眼のいずれかを指す情報)も含まれている。CPU12は、複数の患者のうち、患者特定ログが示す対象眼の情報と、未処理データについての左右の情報が一致する患者の中から、未処理データの取得対象の患者を特定する。従って、患者の特定精度がさらに向上する。
【0043】
次いで、CPU12は、特定結果確認画面40(図6参照)を表示部17に表示させる(S14)。特定結果確認画面40とは、事後特定処理(S13)において未処理データの取得対象の患者が特定された結果を、ユーザに報知して確認させるための画面である。図6に示す例では、未処理データが取得(生成)された日時と、S13で特定された患者に関する情報が、特定結果確認画面40に表示されている。よって、ユーザは、表示された情報を把握することで、事後特定処理(S13)の結果が正確であるか否かを適切に確認することができる。
【0044】
また、本実施形態における特定結果確認画面40には、承認ボタン41、手動保存ボタン42、およびデータ破棄ボタン43が表示される。承認ボタン41は、S13で事後的に特定された患者が正確である場合に、ユーザによって操作される。手動保存ボタン42は、ユーザが手動で(つまり、操作部16を操作して)患者を再度特定して未処理データを保存する場合に、ユーザによって操作される。データ破棄ボタン43は、未処理データを破棄させる場合に、ユーザによって操作される。
【0045】
また、事後特定処理(S13)で特定された患者に対して、過去に紐付けられて記憶された画像データ(以下、「過去画像データ」という)が存在する場合には(S15:YES)、画像比較画面50(図6参照)が表示部17に表示される(S16)。画像比較画面50とは、未処理データと過去画像データをユーザに比較させるための画面である。図6に示すように、本実施形態の画像比較画面50は、特定結果確認画面40と共に表示部17に表示される。画像比較画面50では、未処理データ51と過去画像データ52が並べて表示されている。従って、ユーザは、未処理データ51と過去画像データ52を比較することで、患者特定ログに基づいて行われた患者の特定結果の正確性をより適切に確認することができる。
【0046】
CPU12は、承認ボタン41が操作されたか否かを判断する(S18)。換言すると、S18では、事後特定処理(S13)の結果を確認したことを示す信号が、ユーザによって入力されたか否かが判断される。承認ボタン41が操作された場合(S18:YES)、CPU12は、事後特定処理(S13)で特定された患者に紐付けて、未処理データを記憶装置13に記憶させる(S19)。
【0047】
承認ボタン41が操作されていなければ(S18:NO)、手動保存ボタン42が操作されたか否かが判断される(S21)。手動保存ボタンが操作された場合(S21:YES)、CPU12は、操作部16を介してユーザによって入力される指示に従って、未処理データを所定の患者に紐付けて記憶装置13に記憶させる(S22)。
【0048】
手動保存ボタン42が操作されていなければ(S21:NO)、データ破棄ボタン43が操作されたか否かが判断される(S24)。データ破棄ボタン43が操作されていなければ(S24:NO)、処理はS18へ戻り、S18~S24の処理が繰り返される。データ破棄ボタン43が操作されると(S24:YES)、未処理データが破棄されて(S25)、処理は終了する。
【0049】
上記実施形態で開示された技術は一例に過ぎない。従って、上記実施形態で例示された技術を変更することも可能である。例えば、上記実施形態で例示された技術の一部のみを実行することも可能である。具体的には、上記実施形態では、患者特定ログに含まれる対象眼の情報が、特定日時の情報と共に参照されたうえで、事後特定処理(S13)が実行される。しかし、対象眼の情報を参照しない場合でも、未処理データの取得対象の患者を事後的に特定することは可能である。
【0050】
また、上記実施形態では、未処理データと過去画像データの両方を表示部17に表示させた状態で、ユーザから入力される指示を受け付けることで、事後特定処理(S13)の結果が正確であるか否か確認される。しかし、画像データの比較結果に基づいて事後特定処理の結果を確認するための方法も、変更することができる。例えば、CPU12は、公知の画像処理、または、機械学習アルゴリズムに従って訓練された数学モデル等を利用して、未処理データと過去画像データの類似度を取得してもよい。CPU12は、取得した類似度が閾値以上であるか否かによって、事後特定処理(S13)の結果が正確であるか否かを確認してもよい。
【0051】
また、図6に例示する特定結果確認画面40では、1つの未処理データに対する事後特定処理の結果が表示されている。しかし、CPU12は、未処理データが複数存在する場合に、複数の未処理データの各々に対して実行された事後特定処理の結果を、纏めて表示部17に表示させてもよい。この場合、ユーザは、複数の未処理データに対する事後特定処理の結果を、効率良く確認することができる。
【0052】
なお、図2のS2で患者を特定する処理は、「事前特定ステップ」の一例である。図2のS3で患者特定ログを記憶する処理は、「ログ記憶ステップ」の一例である。図2のS5で医療データを取得する処理は、「医療データ取得ステップ」の一例である。図2のS6で医療データを患者に紐付けて記憶する処理は、「通常記憶ステップ」の一例である。図5のS13で患者を特定する処理は、「事後特定ステップ」の一例である。図5のS14~S19で未処理データを患者に紐付けて記憶する処理は、「事後記憶ステップ」の一例である。図5のS14で事後特定処理の結果をユーザに報知する処理は、「特定結果報知ステップ」の一例である。図5のS16,S18で事後特定処理の結果を確認する処理は、「確認ステップ」の一例である。
【符号の説明】
【0053】
1 眼科医療データ処理システム
5 ネットワーク
10 眼科医療データ処理装置
12 CPU
20 眼科装置
40 特定結果確認画面
50 画像比較画面

図1
図2
図3
図4
図5
図6