(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022184642
(43)【公開日】2022-12-13
(54)【発明の名称】シールド掘進機の掘削状態検出システム
(51)【国際特許分類】
E21D 9/093 20060101AFI20221206BHJP
E21D 9/06 20060101ALI20221206BHJP
【FI】
E21D9/093 F
E21D9/06 301Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021092598
(22)【出願日】2021-06-01
(71)【出願人】
【識別番号】000001373
【氏名又は名称】鹿島建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002468
【氏名又は名称】特許業務法人後藤特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】坂根 英之
(72)【発明者】
【氏名】今井 道男
(72)【発明者】
【氏名】永谷 英基
(72)【発明者】
【氏名】川野 健一
(72)【発明者】
【氏名】佐川 恭一
【テーマコード(参考)】
2D054
【Fターム(参考)】
2D054BA03
2D054GA10
2D054GA17
2D054GA64
2D054GA75
2D054GA82
2D054GA92
(57)【要約】 (修正有)
【課題】シールド掘進機において、掘削面全体の掘削状態を把握可能な掘削状態検出システムを提供する。
【解決手段】外殻11により回転自在に支持され回転駆動されることによって地盤を掘削するカッタヘッド20を備えたシールド掘進機の掘削状態検出システム60は、カッタヘッド20に配線された光ファイバセンサ61と、外殻11側に配線された伝送用光ファイバ66と、伝送用光ファイバ66と光ファイバセンサ61とを接続するロータリジョイント65と、伝送用光ファイバ66を介して伝送された光ファイバセンサ61からの反射光に基づいてカッタヘッド20による掘削状態を演算する演算部71と、を備える。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体部により回転自在に支持され回転駆動されることによって地盤を掘削するカッタヘッドを備えたシールド掘進機の掘削状態検出システムであって、
前記カッタヘッドに配線された光ファイバセンサと、
前記本体部側に配線された伝送用光ファイバと、
前記伝送用光ファイバと前記光ファイバセンサとを接続する回転継手と、
前記伝送用光ファイバを介して伝送された前記光ファイバセンサからの反射光に基づいて前記カッタヘッドによる掘削状態を演算する掘削状態演算部と、
を備えたシールド掘進機の掘削状態検出システム。
【請求項2】
請求項1に記載のシールド掘進機の掘削状態検出システムであって、
前記光ファイバセンサは、1本の光ファイバであり、前記カッタヘッドの回転中心から径方向及び周方向に所定の範囲にわたって配線される、
シールド掘進機の掘削状態検出システム。
【請求項3】
請求項2に記載のシールド掘進機の掘削状態検出システムであって、
前記光ファイバセンサには、歪み計測部と温度計測部とが連続して設けられており、同じ経路上に配線される、
シールド掘進機の掘削状態検出システム。
【請求項4】
請求項1から3の何れか1つに記載のシールド掘進機の掘削状態検出システムであって、
前記光ファイバセンサは、前記カッタヘッドに設けられたカッタビットの取付部を通るように配線される、
シールド掘進機の掘削状態検出システム。
【請求項5】
請求項1から4の何れか1つに記載のシールド掘進機の掘削状態検出システムであって、
前記光ファイバセンサは、前記カッタヘッドの背面側に画成され掘削された土砂が流入するチャンバ内に向けて前記カッタヘッドから突出して形成された突起部に沿って配線される、
シールド掘進機の掘削状態検出システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シールド掘進機の掘削状態検出システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、回転駆動されることにより地盤を掘削するカッタヘッドを備えたシールド掘進機において、掘削状態の1つの指標となる掘削土砂の温度を測定するために、カッタヘッドに温度検出器を設けた構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載のシールド掘進機では、掘削面全体における温度を網羅的に把握するために、複数の温度検出器がカッタヘッドに設けられている。このように回転駆動されるカッタヘッドに複数の検出器を設けた場合、各検出器に接続された配線をカッタヘッドの回転軸を介して配策しなければならないことから、検出器の数、すなわち測定点の数を増やすことには限界があり、結果として、掘削面全体の状態を把握することが困難になるおそれがある。
【0005】
本発明は、シールド掘進機おいて、掘削面全体の掘削状態を把握可能な掘削状態検出システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、本体部により回転自在に支持され回転駆動されることによって地盤を掘削するカッタヘッドを備えたシールド掘進機の掘削状態検出システムであって、カッタヘッドに配線された光ファイバセンサと、本体部側に配線された伝送用光ファイバと、伝送用光ファイバと光ファイバセンサとを接続する回転継手と、伝送用光ファイバを介して伝送された光ファイバセンサからの反射光に基づいてカッタヘッドによる掘削状態を演算する掘削状態演算部と、を備える。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、シールド掘進機おいて、掘削面全体の掘削状態を容易に把握することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の実施形態に係る掘削状態検出システムが適用されるシールド掘進機の構成を示す断面図である。
【
図2】
図1のA-A線に沿う断面を示す断面図である。
【
図3】本発明の実施形態に係る掘削状態検出システムの構成を示す構成図である。
【
図4】
図2のB-B線に沿う断面を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。
【0010】
まず、
図1を参照して、本発明の実施形態に係る掘削状態検出システムによって掘削面における掘削状態が検出されるシールド掘進機100について説明する。シールド掘進機100は、地山(地盤)に掘削坑を掘削し、掘削坑の内壁を覆うように後述のセグメントリング112を組み立てることによってシールドトンネルTを構築するものである。
図1は、シールド掘進機100の構成を示す断面図であり、
図2は、
図1のA-A線に沿う断面を示す断面図である。なお、以下では、シールド掘進機100が進む方向である切羽側を「前方」とし、その反対の方向である坑口側を「後方」として説明する。
【0011】
図1に示すように、シールド掘進機100は、泥土圧シールド工法に用いられる泥土圧式シールド掘進機であり、円筒状の前胴部10と、円筒状の後胴部30と、前胴部10と後胴部30とを屈曲可能に連結する中折れ部40と、を備える。
【0012】
前胴部10は、円筒状の外殻11(本体部)と、外殻11の前方端部に配置され外殻11により回転自在に支持されるカッタヘッド20と、外殻11内に設けられカッタヘッド20の後方に離間して配置される隔壁12と、を有する。
【0013】
隔壁12には、ベアリング(不図示)を介してカッタヘッド20の駆動軸21を支持し、回転軸C1(回転中心)を中心としてカッタヘッド20を回転駆動させるカッタ駆動部13が設けられる。なお、回転軸C1は、外殻11の中心軸とほぼ一致している。
【0014】
カッタ駆動部13には、減速機構(不図示)を介してカッタヘッド20の駆動軸21と連結された電動モータ14が設けられる。カッタヘッド20が地山に押し付けられた状態において、電動モータ14によりカッタヘッド20が回転駆動されると、地山は回転するカッタヘッド20によって掘削される。
【0015】
カッタヘッド20は、外殻11の外径と略等しい大きさの外径を有する円盤状の構造体であり、
図2に示すように、中空円筒状に形成された駆動軸21と、駆動軸21の基端が接続されるハブ部22と、ハブ部22から放射状に延びる3本のスポーク部23と、スポーク部23の先端側が接続される円環状のリング部24と、隣り合うスポーク部23間に設けられる面板部25と、を有する。なお、
図2では、カッタヘッド20以外の構成については省略して示している。
【0016】
スポーク部23及び面板部25の掘削面(切羽)と対向する面には、掘削面に向かって突出するカッタビット26が複数配置され、スポーク部23と面板部25との間には、カッタビット26により掘削された土砂を、カッタヘッド20、隔壁12、外殻11及びカッタ駆動部13により画成されたチャンバ15内へと導くための隙間27が形成される。また、各スポーク部23には、チャンバ15内に滞留した掘削土砂を撹拌する撹拌部28(突起部)がチャンバ15内に向かって突出して設けられる。また、各面板部25のチャンバ15に臨む面には、面板部25の剛性を向上させるために図示しないリブが複数設けられる。
【0017】
シールド掘進機100は、チャンバ15内に滞留した掘削土砂をシールド掘進機100の後方へと搬出するためにスクリューコンベヤ50をさらに備える。
【0018】
スクリューコンベヤ50は、円筒状のケース51と、ケース51の内部に組み込まれるオーガ52と、を有し、図示しないモータによってオーガ52を回転させることによって、チャンバ15内の掘削土砂を隔壁12の後方へと搬出する。
【0019】
後胴部30は、円筒状の外殻31と、セグメントリング112を組み立てるエレクタ33と、シールド掘進機100を前進させる複数のシールドジャッキ34と、カッタヘッド20により掘削された掘削坑110の内周面とセグメントリング112の外周面との間にグラウト材を注入する裏込め注入装置35と、セグメントリング112の形状を保持する真円保持装置37と、後胴部30内に設けられるこれらの装置を支持する支持部32と、を有する。
【0020】
エレクタ33は、円弧形状のセグメントピース113を把持可能であるとともに、外殻31の内周面に沿って外殻31の中心軸C2方向及び周方向に移動可能に構成される。エレクタ33によって複数のセグメントピース113が外殻31の内周面に沿って組み立てられることにより、円筒状のセグメントリング112が構築される。
【0021】
外殻31の内周面には、外殻31とセグメントリング112との間の隙間をシールする環状のテールシール31aが軸方向に所定の間隔をあけて複数設けられる。テールシール31aは、外殻31とセグメントリング112との間の隙間を通じて土砂や水がシールド掘進機100内に侵入することを防止するために設けられる。
【0022】
また、外殻31の前方端部の内側には、複数のシールドジャッキ34が、周方向に所定の間隔をあけて配置される。シールドジャッキ34のシリンダから突出したロッドの先端部をセグメントリング112の側面に当接させた状態でシールドジャッキ34を伸長作動させると、セグメントリング112から得られる反力により、カッタヘッド20は地山に押し付けられることになる。このように、シールド掘進機100は、シールドジャッキ34が既設のセグメントリング112を押圧することで得られる反力を、前方へ掘進するための推進力としている。
【0023】
中折れ部40は、前胴部10の後端部に設けられ内周側に凹球面が形成された前胴接続部41と、後胴部30の前端部に設けられ外周側に前胴接続部41の凹球面に摺接する凸球面が形成された後胴接続部42と、前胴部10と後胴部30との間に設けられる複数の中折れジャッキ43と、を有する。
【0024】
中折れジャッキ43は、シリンダ43aとロッド43bとにより構成される油圧ジャッキであり、ロッド43bは、自在継手を介して後胴部30の前部に固定され、シリンダ43aは、自在継手を介して前胴部10の後部に固定される。
【0025】
このように前胴部10と後胴部30とに連結された中折れジャッキ43を適宜伸縮させることによって、後胴部30に対する前胴部10の方向、すなわち、後胴部30の中心軸C2方向に対する回転軸C1方向を任意の方向に屈曲させることができる。
【0026】
上記構成のシールド掘進機100は、カッタヘッド20を回転し、スクリューコンベヤ50により土砂を搬出し、シールドジャッキ34を伸長させて地山を掘進する。地山には掘削坑110が掘削されるとともに、掘削坑110の内周面に沿ってセグメントリング112が順次組み立てられることによってシールドトンネルTが構築される。更に、掘削坑110の内周面とセグメントリング112の外周面との間に生じる間隙には、裏込め注入装置35によりグラウト材が注入され、セグメントリング112はグラウト材を介して地山に強固に結合された状態となる。
【0027】
また、上記構成のシールド掘進機100の後方には、シールド掘進機100の掘進に追従して移動する図示しない複数の後続台車が配置される。後続台車は、シールド掘進機100の作動を制御する制御装置やシールド掘進機100に電力を供給する電源装置、シールドトンネルTを構築するための部材を運搬するために設けられる。
【0028】
次に
図3を参照し、シールド掘進機100により掘削される地山の掘削面(切羽)における掘削状態を検出する掘削状態検出システム60について説明する。
【0029】
掘削状態検出システム60は、光ファイバ内に生じる反射光(散乱光)を計測することにより光ファイバが配線された箇所における歪み及び温度を演算するシステムであり、
図3に示すように、カッタヘッド20に配線される光ファイバセンサ61と、全反射終端を有する参照用光ファイバ67と、光ファイバセンサ61及び参照用光ファイバ67に入射される入射光の波長を連続的に変化させることが可能な光源部74と、光ファイバセンサ61及び参照用光ファイバ67で反射された反射光に基づいて光ファイバセンサ61が取り付けられた部位の歪み及び温度を演算する演算部71(掘削状態演算部)と、光源部74から射出された光を光ファイバセンサ61と参照用光ファイバ67とに分岐する一方、光ファイバセンサ61と参照用光ファイバ67とで反射された反射光を合波し演算部71へ出力する光カプラ68と、光カプラ68と光ファイバセンサ61とを光学的に接続し入射光及び反射光を伝送する伝送用光ファイバ66と、を備える。
【0030】
光ファイバセンサ61は回転駆動されるカッタヘッド20に配線される一方、光源部74及び演算部71は、カッタヘッド20を回転自在に支持する外殻11(本体部)側に設けられた構造体、例えば、後続台車に設置される。このように、光ファイバセンサ61は、光源部74及び演算部71に対して相対的に回転する部材に取り付けられることから、掘削状態検出システム60は、光ファイバセンサ61と外殻11(本体部)側に配線された伝送用光ファイバ66とを光学的に接続する光ファイバ用のロータリジョイント65(回転継手)をさらに備える。
【0031】
光ファイバセンサ61は、複数の回折格子(FBG:Fiber Bragg Grating)が設けられた光ファイバで構成される歪み計測部62と、一般的な光ファイバで構成される温度計測部63と、が接続された1本の光ファイバであり、歪み計測部62と温度計測部63との接続部を折返し部61aとして、歪み計測部62と温度計測部63とが同じ経路に沿って配策されるようにカッタヘッド20に取り付けられる。カッタヘッド20に対する光ファイバセンサ61の具体的な配線例については後述する。
【0032】
ロータリジョイント65は、光ファイバセンサ61の一方の端部である歪み計測部62の始端62aが接続される回転部65aと、外殻11(本体部)側に配線された伝送用光ファイバ66の一端が接続される非回転部65bと、を有する。
図1に示すように、回転部65aは、カッタヘッド20の駆動軸21の端部に取り付けられ、非回転部65bは、隔壁12に設けられたカッタ駆動部13にブラケット65cを介して取り付けられる。なお、光ファイバセンサ61の他方の端部である温度計測部63の終端63eは、光ファイバセンサ61が断線した場合に備えて、回転部65aに接続される歪み計測部62の始端62aの周辺、例えば、ロータリジョイント65の回転部65aの周辺に留め置かれる。
【0033】
演算部71(掘削状態演算部)は、光ファイバセンサ61及び参照用光ファイバ67で反射された反射光の合波(干渉光)を受光する受光器72と、受光器72で検出された反射光の波長に基づいて歪みの大きさ及び温度を演算するとともに、光ファイバセンサ61及び参照用光ファイバ67に入射光が入射されてから反射光が戻るまでの時間に基づいて、演算された歪み及び温度が生じている位置を演算する演算装置73と、を有する。
【0034】
演算装置73は、具体的には、CPU(中央演算処理装置)、ROM(リードオンリメモリ)、RAM(ランダムアクセスメモリ)、及びI/Oインターフェース(入出力インターフェース)を備えたマイクロコンピュータで構成される。RAMはCPUの処理におけるデータを記憶し、ROMはCPUの制御プログラム等を予め記憶し、I/Oインターフェースは演算装置73に接続された光源部74及び受光器72との情報の入出力に使用される。演算装置73は、複数のマイクロコンピュータで構成されていてもよい。なお、動作回路としては、CPUに代えてまたはCPUとともに、MPU(Micro Processing Unit)、DSP(Digital Signal Processor)、ASIC(application specific integrated circuit)、FPGA(Field Programmable Gate Array)などを用いることができる。
【0035】
次に、上記構成の掘削状態検出システム60で行われる歪み及び温度の計測方式について説明する。
【0036】
歪みの計測は、光ファイバセンサ61の歪み計測部62で反射された反射光と、参照用光ファイバ67で反射された反射光と、に基づいて公知のOFDR(Optical Frequency Domain Reflectometry)方式により行われる。具体的には、演算装置73によって、波長の変化から歪みの大きさが演算され、複数の回折格子が設けられた光ファイバで構成される歪み計測部62で反射された反射光と参照用光ファイバ67で反射された反射光との時間差から、歪み計測部62内の何れの回折格子において波長の変化が生じたかが特定される。これにより、回折格子が設けられる部分における歪みをそれぞれ測定することが可能となり、歪み計測部62に沿ってほぼ連続的に歪みの大きさを測定することができる。
【0037】
温度の計測は、光ファイバセンサ61の温度計測部63で反射された反射光に基づいてラマン散乱を利用した公知のROTDR(Raman Optical Time Domain Reflectometry)方式により行われる。具体的には、演算装置73によって、温度計測部63で反射されたラマン後方散乱光の強度から温度が演算され、光ファイバセンサ61に入射光が入射されてから入射光がラマン後方散乱光として入射端に戻るまでの時間から、温度計測部63内の何れの位置において反射されたラマン後方散乱光であるかが特定される。これにより、温度計測部63に沿って連続的に温度を測定することができる。
【0038】
なお、歪み及び温度の計測は、上記方式に限定されず、光ファイバセンサ61の後方散乱光に基づいて計測することができれば他の方式により行われてもよく、例えば、ブリルアン散乱を利用した公知のBOTDR(Brillouin Optical Time Domain Reflectometry)方式で行われてもよいし、上述の方式とBOTDR方式とを組み合わせて行われてもよい。
図3に示されるシステム構成は、歪み及び温度を計測する方式に応じて、適宜変更される。
【0039】
また、OFDR方式により計測される歪みは、温度変化の影響を受けることから、OFDR方式によって歪みを計測する場合には、温度依存性が高く歪みの影響を受けないラマン散乱を利用したROTDR方式により計測された温度によって、温度の影響を補償することが好ましい。
【0040】
続いて、
図2及び
図4を参照し、カッタヘッド20への光ファイバセンサ61の配線例について説明する。
図4は、
図2のB-B線に沿う撹拌部28における断面を示す断面図である。
【0041】
図2に示すように、光ファイバセンサ61は、カッタヘッド20の掘削面に対向する面とは反対側の面、すなわち、チャンバ15に臨む面に、回転軸C1を中心として、回転軸C1から径方向及び周方向に所定の範囲にわたって配線される。
【0042】
具体的には、ロータリジョイント65に接続された歪み計測部62の始端62aから延びる歪み計測部62の第1部分62bは、回転軸C1を中心としてハブ部22に渦巻き状に配線される。
【0043】
そして、第1部分62bに連続する歪み計測部62の第2部分62cは、ハブ部22に隣接する何れかの面板部25に配線される。
図2に示す例では、ハブ部22の左側に位置する面板部25に配線される。
【0044】
面板部25では、面板部25に設けられた複数のカッタビット26の取付部またはその周辺を通るとともに、面板部25を周方向に沿って横断するように配線される。
図2に示す例では、面板部25の形状が略扇状であることから、歪み計測部62の第2部分62cもこれに合わせて略扇状に配線されている。
【0045】
第2部分62cに連続する歪み計測部62の第3部分62dは、面板部25に隣接するスポーク部23に設けられた撹拌部28に沿って配線される。具体的には、
図4に示すように、撹拌部28の基端部28aから先端部28bに向かい、先端部28bにおいてカッタヘッド20の回転方向に沿って所定の長さ配線された後、撹拌部28の先端部28bから基端部28aに向かって配線される。つまり、第3部分62dは、カッタヘッド20の回転方向に所定の間隔をあけた状態で基端部28aと先端部28bとの間を往復するように撹拌部28に配線される。
【0046】
第3部分62dに連続する歪み計測部62の第4部分62eは、第3部分62dが配線されたスポーク部23を挟んで第2部分62cが配線された面板部25とは反対側に設けられた面板部25に、第2部分62cと同様にして配線される。
【0047】
第4部分62eは歪み計測部62の終端部分であるため、第4部分62eには、温度計測部63の先端部分である第1部分63aが接続されている。つまり、歪み計測部62の終端部分である第4部分62eが配線される面板部25には、
図2に示すように、光ファイバセンサ61の折返し部61aが配置されることになる。
【0048】
折返し部61aで折り返された温度計測部63の第1部分63aは、先に配線された歪み計測部62の第4部分62eに沿って面板部25に配線される。
【0049】
そして、第1部分63aに連続する温度計測部63の第2部分63bは、
図4に示すように、先に配線された歪み計測部62の第3部分62dに沿って撹拌部28に配線され、第2部分63bに連続する温度計測部63の第3部分63cは、先に配線された歪み計測部62の第2部分62cに沿っての面板部25に配線される。
【0050】
さらに、第3部分63cに連続する温度計測部63の第4部分63dは、先に配線された歪み計測部62の第1部分62bに沿ってハブ部22に渦巻き状に配線される。
【0051】
そして、温度計測部63の終端63eは、上述のように、光ファイバセンサ61が断線したときの場合に備え、ロータリジョイント65の回転部65aに接続される歪み計測部62の始端62aの周辺に留め置かれる。
【0052】
このように1本の光ファイバで構成される光ファイバセンサ61は、カッタヘッド20に対して、いわゆる一筆書きで配線される。
【0053】
なお、実際に光ファイバセンサ61をカッタヘッド20に配線する場合には、歪み計測部62と温度計測部63とを束ねて、折返し部61aを先端とした状態で配策した方が効率的である。
【0054】
また、上述の光ファイバセンサ61の配線は、一例に過ぎず、これに限定されるものではない。例えば、光ファイバセンサ61は、面板部25と撹拌部28とのうち、どちらに先に配線されてもよいし、面板部25のみに配線されてもよい。また、光ファイバセンサ61は、一部の面板部25だけではなく、すべての面板部25に配線されてもよい。また、歪み及び温度の何れかの測定が不要な部分に対しては、歪み計測部62と温度計測部63とのうち、何れか一方のみを配線するようにしてもよい。
【0055】
カッタヘッド20への光ファイバセンサ61の取付けは、接着剤を介してカッタヘッド20の表面に光ファイバセンサ61を接着することによって行われる。なお、駆動軸21やスポーク部23、面板部25に設けられた図示しないリブには、必要に応じて光ファイバセンサ61を通すための貫通孔が設けられる。
【0056】
また、光ファイバセンサ61が取り付けられる面は、チャンバ15に臨んでおり、掘削された土砂に接した状態となっていることから、光ファイバセンサ61の断線を防止するために、光ファイバセンサ61を覆う図示しない防護カバーが光ファイバセンサ61に沿って設けられる。なお、防護カバーを設けることに代えて、カッタヘッド20の表面に形成された図示しない溝に光ファイバセンサ61を埋め込み、光ファイバセンサ61が配線された溝を蓋で覆うようにしてもよい。
【0057】
このように光ファイバセンサ61をカッタヘッド20に対して配線することにより、地山を掘削する際に回転駆動されるカッタヘッド20における歪み及び温度を光ファイバセンサ61によって容易に計測することができる。したがって、複数の圧力センサや温度センサをカッタヘッド20に配置した場合と比較し、簡素な構成によってカッタヘッド20により掘削される掘削面全体の掘削状態を網羅的に把握することが可能となる。
【0058】
具体的には、例えば、カッタヘッド20の中心部であるハブ部22に配線された光ファイバセンサ61により計測された歪みが大きい場合や温度が比較的高い場合には、カッタヘッド20の中央付近に掘削土砂が滞留している、つまり、掘削土砂の流動性が低下していることが把握される。
【0059】
また、面板部25は、外部からの荷重や圧力に応じて変形し易い平板状であることから、カッタヘッド20の回転に伴い位置が変わる面板部25に配線された光ファイバセンサ61により計測された歪み及び温度が、掘削面の特定の位置に面板部25が差し掛かったときに上昇する場合には、その位置における地盤が固いことが把握される。
【0060】
特に、カッタビット26の取付部における歪みの変化が大きい場合、掘削面内の地盤に比較的固い部分があることが推定され、別の位置に設けられたカッタビット26の取付部における歪みも参照することによって、掘削面全体の硬さ分布を把握することが可能である。
【0061】
また、撹拌部28に配線された光ファイバセンサ61により計測された歪みが大きい場合、チャンバ15内の撹拌抵抗が大きくなっている、すなわち、チャンバ15内の掘削土砂の流動性が低下していることが把握される。
【0062】
このようにして把握された掘削面全体の掘削状態に基づいて、カッタヘッド20の回転速度やスクリューコンベヤ50によるチャンバ15内の掘削土砂の排出速度、シールド掘進機100の進行速度、掘削面に向けて添加される添加剤の量、チャンバ15内に添加される添加剤の量を適宜制御することによって、シールド掘進機100による掘削を最適化することができる。
【0063】
上述した実施形態によれば、次の作用効果を奏する。
【0064】
本実施形態では、カッタヘッド20に配線された光ファイバセンサ61と、外殻11側に配線された伝送用光ファイバ66と、がロータリジョイント65により接続され、伝送用光ファイバ66を介して伝送された光ファイバセンサ61からの反射光に基づいてカッタヘッド20による掘削状態が演算部71によって演算される。このように地山を掘削する際に回転駆動されるカッタヘッド20における歪み及び温度を光ファイバセンサ61によって計測することが可能になることで、複数の圧力センサや温度センサをカッタヘッド20に配置した場合と比べて、簡素な構成によって掘削面全体の掘削状態を容易に網羅的に把握することができる。
【0065】
また、本実施形態では、カッタヘッド20に配線される光ファイバセンサ61は1本だけであることから、複数の圧力センサや温度センサをカッタヘッド20に配置した場合と比べて配線が大幅に減って計測システムが簡素化されメンテナンスも容易になる。このため、シールド掘進機100に光ファイバセンサ61を用いた上記構成の掘削状態検出システム60を適用した場合の設置コストや運用コストを低減させることができる。
【0066】
また、本実施形態では、歪み計測部62と温度計測部63とが同じ経路に配線されているため、歪み計測部62で計測された歪みを温度計測部63で測定された温度によって補償することができる。このため、カッタヘッド20に生じる歪みの検出精度が向上し、結果として、掘削面全体の掘削状態を精度よく把握することが可能となる。
【0067】
また、本実施形態では、ロータリジョイント65に接続される光ファイバセンサ61の一方の端部である歪み計測部62の始端62aの周辺に、光ファイバセンサ61の他方の端部である温度計測部63の終端63eが留め置かれている。このため、例えば、光ファイバセンサ61が終端63eよりも始端62aに近い箇所において断線した場合には、ロータリジョイント65に接続される光ファイバセンサ61の端部を始端62aから終端63eに変更することによって、比較的長い範囲において歪み及び温度の計測を継続させることができる。
【0068】
次に、本実施形態の変形例について説明する。なお、以下のような変形例も本発明の範囲内であり、変形例に示す構成と上述の実施形態で説明した構成を組み合わせたり、以下の異なる変形例で説明する構成同士を組み合わせたりすることも可能である。
【0069】
上記実施形態では、温度計測部63は、一般的な光ファイバで構成されている。これに代えて、温度計測部63も歪み計測部62と同様に、複数の回折格子(FBG)が設けられた光ファイバによって構成されてもよい。
【0070】
また、上記実施形態では、光ファイバセンサ61は、チャンバ15内の掘削土砂の流動性を把握するために、撹拌部28に配線されている。光ファイバセンサ61が配線される部材は、撹拌部28に限定されず、チャンバ15内の撹拌抵抗を把握することができれば、どのような部材に配線されていてもよく、例えば、チャンバ15内に向かって突出して形成された何らかの突起部に配線されていてもよい。
【0071】
また、上記実施形態では、カッタヘッド20は、3本のスポーク部23と、スポーク部23の間に設けられる3つの面板部25と、を有している。カッタヘッド20の構成は、これに限定されず、複数のカッタビット26を有するとともに、カッタビット26により掘削された土砂をチャンバ15内へと導くための隙間27が設けられていればどのような構成であってもよい。光ファイバセンサ61は、カッタヘッド20の構成に合わせて、カッタビット26の取付部やその周辺を通るように、また、外部からの荷重や圧力に応じて変形し易い平面部を通るように適宜配線される。
【0072】
また、上記実施形態では、光ファイバセンサ61は、カッタヘッド20のチャンバ15に臨む面に配線されている。これに代えて、光ファイバセンサ61は、カッタヘッド20の掘削面に臨む面に配線されてもよい。なお、光ファイバセンサ61の断線を防止する観点からは、チャンバ15に臨む面に配線することが好ましい。
【0073】
また、上記実施形態では、ロータリジョイント65を介して光学的に接続される光ファイバセンサ61と伝送用光ファイバ66とは、それぞれ1本である。これに代えて、ロータリジョイント65が2本以上の複数本の光ファイバを接続可能な構成を備えている場合、光ファイバセンサ61と伝送用光ファイバ66とは、それぞれ複数本であってもよい。
【0074】
また、上記実施形態では、シールド掘進機100は、いわゆる泥土圧式シールド掘進機である。これに代えて、シールド掘進機100は、チャンバ15内に対して泥水を給排することによりチャンバ15内に滞留した掘削土砂をシールド掘進機100の後方へと搬出する泥水給排装置を備えた、いわゆる泥水圧式シールド掘進機であってもよい。
【0075】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は本発明の適用例の一部を示したに過ぎず、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。
【符号の説明】
【0076】
100・・・シールド掘進機
11・・・外殻(本体部)
15・・・チャンバ
20・・・カッタヘッド
26・・・カッタビット
28・・・撹拌部(突起部)
60・・・掘削状態検出システム
61・・・光ファイバセンサ
61a・・・折返し部
62・・・歪み計測部
63・・・温度計測部
65・・・ロータリジョイント(回転継手)
66・・・伝送用光ファイバ
67・・・参照用光ファイバ
71・・・演算部(掘削状態演算部)
74・・・光源部