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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022184684
(43)【公開日】2022-12-13
(54)【発明の名称】収納装置
(51)【国際特許分類】
   B60R 7/06 20060101AFI20221206BHJP
   F16F 9/02 20060101ALI20221206BHJP
   F16F 9/48 20060101ALI20221206BHJP
   F16F 9/54 20060101ALI20221206BHJP
【FI】
B60R7/06 G
F16F9/02
F16F9/48
F16F9/54
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021183917
(22)【出願日】2021-11-11
(31)【優先権主張番号】P 2021091188
(32)【優先日】2021-05-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000229955
【氏名又は名称】日本プラスト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100187193
【弁理士】
【氏名又は名称】林 司
(74)【代理人】
【識別番号】100181766
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 均
(72)【発明者】
【氏名】関 崇朗
【テーマコード(参考)】
3D022
3J069
【Fターム(参考)】
3D022CA08
3D022CB01
3D022CC02
3D022CD13
3J069AA10
3J069CC34
3J069EE51
(57)【要約】
【課題】収納本体部の開き速度をより大きな領域で一定にすることが可能で、また、ダンパーを変更しなくても種々の車種に対応可能な収納装置を提供する。
【解決手段】本発明の収納装置(1,2,3,4)は、収納本体部(20)が、内装部材(10)に対し、閉じ位置と開き位置との間で回動可能に支持される収納装置(1,2,3,4)であって、ピストン(32)を有するとともにピストン(32)の伸縮により収納本体部(20)の回動速度を制御するダンパー(30)と、ダンパー(30)及び収納本体部(20)間に接続されるダンパー調整部(40,60,70)とが設けられ、ダンパー調整部(40,60,70)は、収納本体部(20)の開き角度に応じてダンパー(30)の伸縮速度を変化させるとともに収納本体部(20)に加えられるダンパー(30)の抗力を変化させる構造を有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
収納本体部が、内装部材に対し、前記収納本体部が閉じられた状態の閉じ位置と、前記収納本体部が全開した状態の開き位置との間で回動可能に支持される車両用の収納装置であって、
ピストンを有するとともに前記ピストンの伸縮により前記収納本体部の回動速度を制御するダンパーと、前記ダンパー及び前記収納本体部間に接続されるとともに前記収納本体部の回動動作を受けて前記ダンパーの前記ピストンを伸縮させるダンパー調整部とが設けられ、
前記ダンパー調整部は、前記収納本体部の前記閉じ位置に対する開き角度に応じて、前記ダンパーの伸縮速度を変化させる構造を有する
ことを特徴とする収納装置。
【請求項2】
前記ダンパー調整部は、前記収納本体部の前記閉じ位置に対する開き角度に応じて、前記ダンパーから前記収納本体部に加えられる抗力を変化させる構造を有する請求項1記載の収納装置。
【請求項3】
前記ダンパー調整部は、前記内装部材に一端部が回動可能に支持されるとともに前記ダンパーの前記ピストンに他端部が接続されるスライドバーと、前記収納本体部に一体的に設けられる係合突出部とを有し、
前記スライドバーは、前記スライドバーの長さ方向に沿って形成される長孔を有し、
前記係合突出部は、前記スライドバーの前記長孔内に前記長さ方向に沿って移動可能に収容されている
請求項1又は2記載の収納装置。
【請求項4】
前記ダンパー調整部は、前記内装部材に固定されるラックと、前記ラックに噛み合うピニオンギアとを有し、
前記ピニオンギアは、前記ピニオンギアの回転中心で前記収納本体部に回転可能に支持され、且つ、前記ダンパーの前記ピストンに回転可能に接続され、
前記ピニオンギアにおける前記ピストンとの接続部は、前記ピニオンギアの前記回転中心から前記ピニオンギアの径方向に離れて配されている
請求項1又は2記載の収納装置。
【請求項5】
前記ダンパー調整部は、前記収納本体部に設けられる長孔と、前記ダンパーの前記ピストンに接続される係合突出部とを有し、
前記係合突出部は、前記収納本体部の前記長孔に、前記長孔の一端部と他端部との間を移動可能に収容されている
請求項1記載の収納装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用の収納装置(例えば、グローブボックス)に関し、具体的には、収納本体部が内装部材に対して閉じ位置と開き位置との間で回動可能に支持される車両用の収納装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車等の車両のインストルメントパネルには、一般的に、小物などを収納するための収納装置として、グローブボックスが設けられている。グローブボックスは、通常、グローブボックスのボックス本体部がインストルメントパネル内に収容されて閉じられた状態の閉じ位置と、ボックス本体部が全開して開口部が形成された状態の開き位置との間で回動可能に形成されている。
【0003】
グローブボックスでは、ボックス本体部の開閉速度を緩やかにするために、開閉するボックス本体部に対し、ボックス本体部の回転運動に抵抗する抗力を与えるエアダンパーが使用されることがある。しかし、グローブボックスは、通常、車種ごとに重量、大きさ、設置向き(姿勢)等が異なるため、各車種のグローブボックスごとに適した専用のエアダンパーが設計されて使用されていた。しかしこの場合、製造コストの増大を招くという問題があった。
【0004】
これに対し、例えば国際公開第2018/174024号(特許文献1)には、ボックス本体部に加える抗力(制動力)を容易に調整できるエアダンパーが記載されている。この特許文献1のエアダンパーでは、エアダンパーのピストンに付加される荷重の大きさに応じて、エアダンパー内の第2室から第1室への空気の流量を変化させることによって、エアダンパーで発生させる抗力を調整することができる。特許文献1には、このようなエアダンパーをグローブボックスに取り付けた場合、ボックス本体部が開くときの回動速度を、ほぼ一定となるように調整しやすくすることができると説明されている。この特許文献1に記載されている技術を利用することによって、1種類のエアダンパーを種々の車種のグローブボックスに使用できるため、製造コストの削減を図ることが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第2018/174024号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1のようなエアダンパーでは、エアダンパーに加えられる荷重が特定の範囲内である場合に、エアダンパーにおけるピストンの伸縮速度を一定の大きさにすることができる。しかし、例えば車種が異なることによりエアダンパーへの荷重がその特定の範囲に含まれない大きさとなる場合、エアダンパーが抗力を調整しきれないことにより、ピストンを定速で伸縮させることができなかった。このため、グローブボックスが開くときに、グローブボックスの回動速度を一定にできない領域(角度範囲)が形成されることがあった。
【0007】
本発明は上記従来の課題に鑑みてなされたものであって、その目的は、グローブボックス等の収納装置における収納本体部が開くときの回動速度(開き速度)をより大きな領域で一定にして、収納本体部の動作を安定させることが可能な収納装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明により提供される収納装置は、収納本体部が、内装部材に対し、前記収納本体部が閉じられた状態の閉じ位置と、前記収納本体部が全開した状態の開き位置との間で回動可能に支持される車両用の収納装置であって、ピストンを有するとともに前記ピストンの伸縮により前記収納本体部の回動速度を制御するダンパーと、前記ダンパー及び前記収納本体部間に接続されるとともに前記収納本体部の回動動作を受けて前記ダンパーの前記ピストンを伸縮させるダンパー調整部とが設けられ、前記ダンパー調整部は、前記収納本体部の前記閉じ位置に対する開き角度に応じて、前記ダンパーの伸縮速度を変化させる構造を有することを特徴とする。
【0009】
本発明の収納装置において、前記ダンパー調整部は、前記収納本体部の前記閉じ位置に対する開き角度に応じて、前記ダンパーから前記収納本体部に加えられる抗力を変化させる構造を有することが好ましい。
【0010】
また本発明の収納装置において、前記ダンパー調整部は、前記内装部材に一端部が回動可能に支持されるとともに前記ダンパーの前記ピストンに他端部が接続されるスライドバーと、前記収納本体部に一体的に設けられる係合突出部とを有し、前記スライドバーは、前記スライドバーの長さ方向に沿って形成される長孔を有し、前記係合突出部は、前記スライドバーの前記長孔内に前記長さ方向に沿って移動可能に収容されていることが好ましい。
【0011】
本発明の収納装置において、前記ダンパー調整部は、前記内装部材に固定されるラックと、前記ラックに噛み合うピニオンギアとを有し、前記ピニオンギアは、前記ピニオンギアの回転中心で前記収納本体部に回転可能に支持され、且つ、前記ダンパーの前記ピストンに回転可能に接続され、前記ピニオンギアにおける前記ピストンとの接続部は、前記ピニオンギアの前記回転中心から前記ピニオンギアの径方向に離れて配されていてもよい。
【0012】
更に本発明において、前記ダンパー調整部は、前記収納本体部に設けられる長孔と、前記ダンパーの前記ピストンに接続される係合突出部とを有し、前記係合突出部は、前記収納本体部の前記長孔に、前記長孔の一端部と他端部との間を移動可能に収容されていてもよい。
【発明の効果】
【0013】
本発明の収納装置によれば、収納本体部が開くときの回動速度をより大きな領域(角度範囲)で一定にして、収納本体部の動作を安定させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の実施例1に係るグローブボックス(収納装置)の組み付けを模式的に説明する斜視図である。
図2図1に示したII-II線における断面を示す断面図である。
図3図1に示したIII-III線における断面を示す断面図である。
図4】実施例1に係るグローブボックスにおいて、グローブボックスのボックス本体部が閉じ位置から開き位置に回動するときの動作を模式的に説明する説明図である。
図5】実施例1において、ボックス本体部が閉じ位置にあるときのスライドバーと係合突出部の回動軌跡との関係を模式的に説明する説明図である。
図6】本発明の実施例2に係るグローブボックスにおいて、グローブボックスのボックス本体部が閉じ位置から開き位置に回動するときの動作を模式的に説明する説明図である。
図7】実施例2において、ボックス本体部が閉じ位置にあるときのスライドバーと係合突出部の回動軌跡との関係を模式的に説明する説明図である。
図8】本発明の実施例3に係るグローブボックスを模式的に説明する説明図である。
図9】本発明の実施例9に係るグローブボックスを模式的に説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の好適な実施の形態について、実施例を挙げて図面を参照しながら説明する。
【実施例0016】
図1は、本実施例1に係るグローブボックスの組み付けを模式的に説明する斜視図である。図2及び図3は、それぞれ、図1に示したII-II線及びIII-III線における断面図である。図4は、本実施例1に係るグローブボックスにおいて、グローブボックスのボックス本体部が閉じ位置から開き位置に回動するときの動作を模式的に説明する説明図である。
【0017】
本実施例1では、車両用の収納装置の一例として、グローブボックスが、セダン型の車種に使用される場合について説明する。
なお、以下の説明において、上下方向及び左右方向とは、グローブボックスを自動車のインストルメントパネルに取り付けたときの車高方向及び車幅方向を言い、特に、左方向及び右方向とは、助手席側からグローブボックスを見たときの左側の方向及び右側の方向を言う。また、前後方向とは、車長方向を言い、特に、前方は、助手席からグローブボックスに向く方向を言い、後方は、その反対側の方向を言う。
【0018】
本実施例1のグローブボックス1は、セダン型自動車の車室に装着されるインストルメントパネル(内装部材)10に取り付けられる。このグローブボックス1は、図1に示すように、インストルメントパネル10に回動可能に取り付けられるボックス本体部20と、ボックス本体部20の回動速度を制御するエアダンパー30と、ボックス本体部20及びエアダンパー30間に接続されるリンク部材40とを有する。リンク部材40は、ボックス本体部20の開き角度に応じてエアダンパー30のピストン32の伸縮速度を変化させるダンパー調整部として設けられている。
【0019】
車体側のインストルメントパネル10には、ボックス本体部20を閉じたときにボックス本体部20を収容するボックス収容部11が設けられている。また、インストルメントパネル10とボックス本体部20とには、ボックス収容部11に収容されたボックス本体部20を係止する図示しない係止機構が設けられている。
【0020】
車体側のインストルメントパネル10には、エアダンパー30を係合させて保持するための第1係合ピン12と(図1及び図2を参照)、リンク部材(ダンパー調整部)40を形成するスライドバー42を係合させて保持するための第2係合ピン13と(図1及び図3を参照)、ボックス本体部20の回動軸となる軸部材15を挿通させて保持する左右の保持孔14とが設けられている。
【0021】
第1係合ピン12は、図2に示すように、第1係合ピン12の先端部に配されるとともに弾性変形可能な係合頭部12aを有する。この第1係合ピン12は、係合頭部12aを弾性変形させて、エアダンパー30の後述する第1ダンパー係合部33の孔部33aに挿入し、更に、係合頭部12aがその孔部33aを通過して弾性復帰することによって、第1ダンパー係合部33に係合する。また、第2係合ピン13の先端部、及び後述する第3係合ピン46の先端部にも、それぞれ、第1係合ピン12と同様の係合頭部13a,46aが設けられている。
【0022】
グローブボックス1は、例えば自動車における助手席の向かい側(前側)に配置される。グローブボックス1のボックス本体部20は、インストルメントパネル10のボックス収容部11に収容されて係止されることにより閉じられた状態となる閉じ位置と、インストルメントパネル10から車室側に引き出されて全開した状態となる開き位置との間で回動可能に設けられている。
【0023】
ボックス本体部20は、収容部21と、収容部21の車室側に一体的に設けられるリッド22とを有する。ボックス本体部20には、内部に小物などを収容可能な収容空間部23が、収容部21及びリッド22に囲まれて設けられている。この収容空間部23は、ボックス本体部20が開き位置に保持されたときに、車室側に開口するように形成されている。
【0024】
ボックス本体部20の収容部21は、左右の側板部21aと、左右の側板部21aの後端部間を接続する後板部21bと、リッド22の下端部から後板部21bに向けて上り傾斜するように配される底板部21cとを有する。収容部21における左右の側板部21aの一方(本実施例1の場合は、左側の側板部21a)には、リンク部材40を形成する係合突出部41が設けられている。この係合突出部41は、収容部21の側板部21aと一体的に形成されているとともに、側板部21aからグローブボックス1の幅方向(左右方向)に沿って円柱状に突出している。
【0025】
リッド22は、ボックス本体部20が閉じ位置で係止されているときに車室内側に配される蓋体として設けられている。このリッド22の下端部(又は前端部)には、軸部材15を挿通させる軸受け孔24が設けられている。ボックス本体部20は、リッド22の軸受け孔24とインストルメントパネル10の保持孔14とに挿通される左右の軸部材15を回転軸にして回動する。
【0026】
本実施例1のボックス本体部20は、図4に示すように、ボックス本体部20が閉じ位置にあるときに(図4の実線部分を参照)、リッド22の車室側に配される後端部から軸受け孔24が設けられる前端部に向けてリッド22が下り傾斜する向きで保持される。一方、ボックス本体部20が開き位置にあるときに(図4の仮想線部分を参照)、リッド22の前端部と後端部がほぼ同じ高さ位置に配されるようにリッド22が倒れた向きで保持される。
【0027】
本実施例1のエアダンパー30は、例えば前述した特許文献1に記載されているような従来から使用されるエアダンパーと実質的に同様の構造を有して形成されている。例えば、本実施例1のエアダンパー30は、エアダンパー本体部31と、エアダンパー本体部31に対して伸縮可能なピストン32とを有する。このエアダンパー30は、ピストン32を伸縮させるときにエアダンパー本体部31内の空気圧力の変化を利用して、ボックス本体部20の回転運動に抵抗する抗力(制動力)を発生させる。また、エアダンパー30は、抗力の大きさを適切に調整できる(例えば抗力を一定の大きさに調整できる)。このようにエアダンパー30で調整された抗力は、リンク部材40を介して、回動するボックス本体部20に伝えられることによって、ボックス本体部20の回動速度を制御することができる。
【0028】
更に、本実施例1のエアダンパー30は、ピストン32に特定の範囲内の大きさの荷重が加えられた場合に、ピストン32を一定の伸縮速度で伸縮させることができる。なお、本実施例1のエアダンパー本体部31及びピストン32は、特許文献1に記載されているエアダンパーと実質的に同様に形成されているため、これらの詳細な説明は省略するものとする。
【0029】
本実施例1のエアダンパー30には、インストルメントパネル10に設けた第1係合ピン12に係合する第1ダンパー係合部33と、リンク部材40のスライドバー42に設けた後述する第3係合ピン46に係合する第2ダンパー係合部34とが設けられている。
【0030】
第1ダンパー係合部33は、エアダンパー本体部31に一体的に形成されている。第1ダンパー係合部33には、第1係合ピン12を挿通させる孔部33aがグローブボックス1の幅方向に沿って設けられている。この第1ダンパー係合部33に、インストルメントパネル10に設けた第1係合ピン12を挿通させて係合させることにより、エアダンパー30がインストルメントパネル10に対して第1係合ピン12を回動軸として回動可能に保持される。
【0031】
第2ダンパー係合部34は、ピストン32に一体的に形成されている。第2ダンパー係合部34には、第3係合ピン46を挿通させる孔部34aがグローブボックス1の幅方向に沿って設けられている。この第2ダンパー係合部34に、スライドバー42の第3係合ピン46を挿通させて係合させることにより、エアダンパー30とスライドバー42とが、第3係合ピン46を回動軸として相対的に回動可能に連結される。
【0032】
本実施例1のリンク部材(ダンパー調整部)40は、スライドバー42と、ボックス本体部20の収容部21に一体的に形成されている係合突出部41とにより形成されている。スライドバー42は、細長く形成されたバー本体部43と、バー本体部43にバー本体部43の長さ方向に沿って設けられる長孔44と、バー本体部43の長さ方向の一端部(第1端部)に設けられるバー係合孔45と、バー本体部43の長さ方向の他端部(第2端部)に設けられる第3係合ピン46とを有する。
【0033】
バー本体部43は、薄板状に形成されているとともに、上記第1端部から上記第2端部までまっすぐに延びている。長孔44は、バー本体部43を、バー本体部43のボックス本体部20に対向する第1面から、第1面の反対側に配される第2面までグローブボックス1の幅方向に貫通している。また、長孔44は、第3係合ピン46に隣接する位置からバー本体部43の上記第1端部に向けて、バー本体部43の長さ方向に沿ってまっすぐに延びている。
【0034】
スライドバー42の長孔44には、ボックス本体部20に一体的に設けた係合突出部41が挿入される。この長孔44は、長孔44内に挿入された係合突出部41が、長孔44内でバー本体部43の長さ方向に沿ってスライド可能に形成されている。
【0035】
本実施例1のリンク部材40において、係合突出部41は、ボックス本体部20が閉じ位置にあるとき、スライドバー42の長孔44内の第3係合ピン46に近い側の端部に配置される。また、係合突出部41は、ボックス本体部20が閉じ位置から開き位置に向けて回動することによって、スライドバー42の長孔44内を第3係合ピン46から離れる方向に移動する。この場合、スライドバー42に対する係合突出部41の位置は、スライドバー42における作用点の位置となる。
【0036】
本実施例1のスライドバー42は、スライドバー42に設けたバー係合孔45にインストルメントパネル10の第2係合ピン13を挿通させて係合させることにより、インストルメントパネル10に対して第2係合ピン13を回動軸として回動可能に保持される。この場合、スライドバー42に対する第2係合ピン13の位置は、スライドバー42における支点の位置となる。また、スライドバー42は、エアダンパー30に対して、第3係合ピン46を回動軸として回動可能に連結される。この場合、スライドバー42に対する第3係合ピン46の位置は、スライドバー42における力点の位置となる。
【0037】
本実施例1のリンク部材40が、ボックス本体部20とエアダンパー30との間に設けられることにより、ボックス本体部20及びエアダンパー30間の動力伝達を行うことができ、それによって、ボックス本体部20を回動させたときにエアダンパー30のピストン32を伸縮させることができ、また、エアダンパー30で発生させる抗力(制動力)をボックス本体部20に与えることができる。
【0038】
次に、本実施例1のグローブボックス1において、ボックス本体部20を閉じ位置から全開となる開き位置まで回動させる場合の動作について、図4及び図5を参照しながら説明する。
【0039】
先ず、ボックス本体部20が閉じ位置に保持されている場合に、グローブボックス1を幅方向側から見たときのボックス本体部20、エアダンパー30、及びリンク部材40の位置関係を図4に実線で示す。この場合、エアダンパー30は、ピストン32がエアダンパー本体部31に対して縮められた状態でスライドバー42に連結されている。また、リンク部材40の係合突出部41は、スライドバー42の長孔44内の第3係合ピン46に近い側の端部に配置されている。なお、ボックス本体部20が回動して開き位置に移動した場合のボックス本体部20、エアダンパー30、及びリンク部材40の位置関係は、図4に仮想線で示されている。
【0040】
ボックス本体部20が閉じ位置に保持されている場合、スライドバー42の中心線(長孔44の中心線)51の位置と、ボックス本体部20が回動するときに係合突出部41が移動する回動軌跡52と、係合突出部41の位置における回動軌跡52の接線53の位置との関係を図5に示す。
【0041】
図5に示したように、スライドバー42は、スライドバー42の中心線51が、スライドバー42の第1端部(バー係合孔45が設けられる側の端部)が回動軌跡52の接線53よりも上側に位置するように、回動軌跡52の接線53に対して係合突出部41から傾斜して配置される。このとき、スライドバー42の中心線51と回動軌跡52の接線53との間の角度をスライドバー傾斜角度θと規定する。
【0042】
本実施例1のグローブボックス1では、ボックス本体部20とエアダンパー30との間に、係合突出部41がスライドバー42の長孔44内を移動可能なリンク部材40を介在させている。このリンク部材40の介在により、ボックス本体部20が閉じ位置から開き方向に向けて回動したときに、ボックス本体部20の閉じ位置に対する開き角度に応じて、エアダンパー30の伸縮速度を変化させることができ、また、エアダンパー30からボックス本体部20に加えられる抗力の大きさを変化させることができる。
【0043】
より具体的に説明すると、ボックス本体部20が閉じ位置に保持されている場合、リンク部材40の係合突出部41は、スライドバー42の長孔44内の第3係合ピン46に近い側の端部に配されている。この状態から、ボックス本体部20が開き位置に向けて回動すると、ボックス本体部20の回動に応じて、ボックス本体部20に一体的に設けた係合突出部41も、図4に示した回動軌跡52に沿って移動する。このとき、係合突出部41は、スライドバー42の長孔44内を第3係合ピン46から離れる方向に移動するとともに、スライドバー42を、第2係合ピン13を回動軸として、図4において反時計回り方向に回動させる。
【0044】
このようにボックス本体部20の回動に伴ってスライドバー42が回動することによって、エアダンパー30のピストン32を伸ばすことができ、それによって、エアダンパー30で抗力を発生させることができる。また、スライドバー42の回動に伴って係合突出部41がスライドバー42の長孔44内を移動することにより、リンク部材40において、回動軸となる第2係合ピン13からエアダンパー30が連結される第3係合ピン46までの第1距離と、第2係合ピン13から係合突出部41までの第2距離との割合を変化させることができる。
【0045】
このように上述した第1距離と第2距離の割合が、ボックス本体部20の閉じ位置に対する開き角度に対応して変化することにより、ボックス本体部20の開き速度に対し、エアダンパー30の伸縮速度をボックス本体部20の開き角度に応じて変化させることができる。また、エアダンパー30からボックス本体部20が受ける抗力の大きさを、ボックス本体部20の開き角度に応じて変化させることができる。
【0046】
ここで、例えば本実施例1のようなリンク部材40が設けられない場合を想定したときのボックス本体部20の荷重とエアダンパー30の抗力との関係について説明する。
例えばボックス本体部20が閉じ位置から開き位置に向けて回動する場合、図4に示すように、ボックス本体部20の荷重(自重)における開き方向の成分F1は、ボックス本体部20の閉じ位置からの開き角度が大きくなるほど増大する。これに対して、エアダンパー30の抗力は、エアダンパー30内で調整されることによって一定の大きさとなる。
【0047】
このため、例えばエアダンパー30でピストン32の伸縮速度を一定に維持できない荷重範囲では、ボックス本体部20の開き角度の増加に伴い、ボックス本体部20の荷重における開き方向の成分F1とエアダンパー30の抗力とのバランスが変化し、その結果、開き角度が大きくなるほど、ボックス本体部20の開き速度が加速される。すなわち、ピストン32の伸縮速度を一定に維持できない荷重範囲では、その伸縮速度の変化が、ボックス本体部20の開き速度に影響を与える。その結果、ボックス本体部20が開くときの挙動が安定しないという不具合があった。
【0048】
これに対して、本実施例1のグローブボックス1では、リンク部材40で上述した第1距離と第2距離の割合をボックス本体部20の開き角度に対応して変化させるため、ボックス本体部20の回動に対するエアダンパー30の伸縮速度をボックス本体部20の開き角度に応じて変化させることができる。また、エアダンパー30で調整される抗力をボックス本体部20に与えるときに、リンク部材40で上述した第1距離と第2距離の割合をボックス本体部20の開き角度に対応して変化させることによって、ボックス本体部20がエアダンパー30から受ける抗力の大きさを変化させることができる。
【0049】
それによって、ボックス本体部20の荷重における開き方向の成分F1がボックス本体部20の開き角度に応じて変化しても(大きくなっても)、ボックス本体部20の荷重における開き方向の成分F1とボックス本体部20が受ける抗力の大きさとのバランスを保つことが可能となる。その結果、ボックス本体部20の開き速度を一定に維持すること、又は維持し易くすることができ、またそれによって、ボックス本体部20が開くときの挙動を安定させることができる。
【0050】
すなわち、本実施例1のグローブボックス1によれば、エアダンパー30のみでは制御が難しい範囲(領域)のボックス本体部20の開き速度を一定の大きさに維持することが可能となり、その結果、ボックス本体部20を開くときに、ボックス本体部20を、より広い角度範囲において、好ましくは、閉じ位置から開き位置までの全角度範囲において、定速で回動させることができる。
【実施例0051】
図6は、本実施例2に係るグローブボックスにおいて、ボックス本体部が閉じ位置から開き位置に回動するときの動作を模式的に説明する説明図である。
本実施例2として、収納装置であるグローブボックス2が、SUV型の車種に使用される場合について説明する。
【0052】
本実施例2のグローブボックス2は、インストルメントパネル10に対するボックス本体部20の設置角度と、ボックス本体部20に対するリンク部材40の配置(設置位置及び設置角度等)が前述した実施例1のグローブボックス1と異なるものの、それ以外については、前述した実施例1の場合と同様に形成されている。従って、本実施例2では、実施例1と同じ部材及び部位について、前述した実施例1で使用した符号と同じ符号を用いて表すことによって、それらの詳しい説明を省略する。
【0053】
本実施例2のグローブボックス2は、インストルメントパネル10に閉じ位置と開き位置との間で回動可能に支持されるボックス本体部20と、ボックス本体部20の回動速度を制御するエアダンパー30と、ボックス本体部20及びエアダンパー30間に接続されるリンク部材(ダンパー調整部)40とを有する。
【0054】
本実施例2のボックス本体部20は、図6に示すように、ボックス本体部20が閉じ位置にあるときに(図6の実線部分を参照)、リッド22が上下方向に対する角度を小さくするように立った姿勢(起立した姿勢)に近い向きで保持される。また、ボックス本体部20が開き位置にあるときに(図6の仮想線部分を参照)、リッド22の車室側に配される後端部から軸受け孔24が設けられる前端部に向けてリッド22が緩やかに下り傾斜する向きで保持される。
【0055】
すなわち、SUV型の車種に設置される本実施例2のボックス本体部20(図6)は、セダン型の車種に設置される前述した実施例1のボックス本体部20(図4)に比べて、リッド22が起き上がった姿勢となるレイアウトでインストルメントパネル10に設置されている。
【0056】
この場合、ボックス本体部20が閉じ位置から開き位置に向けて回動するときに、ボックス本体部20の荷重における開き方向の成分F1は、例えば図6に示すように、図4に示した実施例1のセダン型の車種に設置されるボックス本体部20よりも小さくなる。
【0057】
本実施例2のリンク部材40は、スライドバー42と、ボックス本体部20の収容部21に一体的に形成されている係合突出部41とにより形成されている。スライドバー42は、細長いバー本体部43と、バー本体部43に設けられる長孔44と、バー本体部43の長さ方向の一端部(第1端部)に設けられるバー係合孔45と、バー本体部43の長さ方向の他端部(第2端部)に設けられる第3係合ピン46とを有する。
【0058】
スライドバー42は、インストルメントパネル10の第2係合ピン13をバー係合孔45に挿通させて係合させることにより、インストルメントパネル10に対して第2係合ピン13を回動軸として回動可能に保持される。また、スライドバー42は、エアダンパー30に対して、第3係合ピン46により回動可能に連結される。スライドバー42の長孔44には、ボックス本体部20に一体的に設けた係合突出部41が挿入される。
【0059】
本実施例2のリンク部材40において、ボックス本体部20が閉じ位置にあるとき、係合突出部41は、スライドバー42の長孔44内の第3係合ピン46に近い側の端部に配置される。また、係合突出部41は、ボックス本体部20が閉じ位置から開き位置に向けて回動することによって、スライドバー42の長孔44内を第3係合ピン46から離れる方向に移動する。
【0060】
ここで、本実施例2のグローブボックス2について、ボックス本体部20が閉じ位置に保持されている場合のボックス本体部20、エアダンパー30、及びリンク部材40の位置関係を図6に実線で示す。また、ボックス本体部20が回動して開き位置に移動した場合のボックス本体部20、エアダンパー30、及びリンク部材40の位置関係を図6に仮想線で示す。更に、ボックス本体部20が閉じ位置に保持されている場合に、スライドバー42の中心線(長孔44の中心線)51の位置と、ボックス本体部20が回動するときに係合突出部41が移動する回動軌跡52と、係合突出部41の位置における回動軌跡52の接線53の位置との幅方向側から見たときの関係を図7に示す。また図7には、スライドバー42の中心線51と回動軌跡52の接線53とにより形成されるスライドバー傾斜角度θが示されている。
【0061】
本実施例2のグローブボックス2では、ボックス本体部20が閉じ位置から開き位置に向けて回動を開始するときに、上述したように、ボックス本体部20の荷重における開き方向の成分F1が、前述の実施例1のセダン型のボックス本体部20(図4を参照)に比べて小さくなる。このため、本実施例2において、スライドバー42及び係合突出部41を、前述の実施例1の場合と同じように配置した場合、ボックス本体部20の荷重における開き方向の成分F1に対して、エアダンパー30からボックス本体部20が受ける抗力の大きさが大きくなり、その結果、ボックス本体部20の回動開始時の開き速度を遅くさせる。
【0062】
これに対して、本実施例2では、スライドバー42を回動可能に保持する第2係合ピン13の位置(支点の位置)と、スライドバー42の長孔44に挿入した係合突出部41の位置(作用点の位置)とを調整し、リンク部材40が、図7に示すように、スライドバー42の中心線51が回動軌跡52の接線53に対して斜め上方に傾斜するとともに、上述したスライドバー傾斜角度θの大きさが前述の実施例1の場合よりも小さくなるように配置されている。
【0063】
このようにリンク部材40(すなわち、スライドバー42及び係合突出部41)が配置されることによって、ボックス本体部20の回動開始時に、エアダンパー30からボックス本体部20が受ける抗力の大きさを前述の実施例1の場合よりも小さくできる。その結果、ボックス本体部20を、回動開始時から適切な開き速度で回動させることが可能となり、ボックス本体部20を円滑に開くことができる。
【0064】
また、本実施例2のグローブボックス2では、前述の実施例1のグローブボックス1と同様に、ボックス本体部20の開き角度に対応してエアダンパー30の伸縮速度を変化させることができ、また、エアダンパー30からボックス本体部20が受ける抗力の大きさを変化させることができる。このため、ボックス本体部20の荷重における開き方向の成分F1とボックス本体部20がエアダンパー30から受ける抗力の大きさとのバランスを保つことが可能となる。その結果、ボックス本体部20の開き速度を一定に維持すること、又は維持し易くすることができ、それによって、ボックス本体部20が開くときの挙動を安定させることができる。
【0065】
更に、実施例1及び実施例2で説明したように、グローブボックスで上述したリンク部材40が用いられる場合、ボックス本体部20に対するリンク部材40の配置を変更することによって、1種類のエアダンパー30を、セダン型の車種、SUV型の車種、及びその他の車種等の様々な車種にそのまま利用することが可能となる。このため、エアダンパー30の設計及び設定を、車種毎に応じて変える必要がなくなり、製造コストの削減を図ることができる。また、リンク部材(ダンパー調整部)40を用いてグローブボックスを形成することにより、従来よりもボックス本体部20を円滑に且つ安定して回動させることが可能となる。
【0066】
更にまた、リンク部材(ダンパー調整部)40を用いて形成されるグローブボックスにおいては、グローブボックスのレイアウトや、ボックス本体部20に求められる開き挙動に応じて、スライドバー42の長さ及び形状、スライドバー42に設ける長孔44の長さ及び形状、スライドバー42を回動可能に保持する第2係合ピン13の位置、並びにスライドバー42の長孔44に挿入する係合突出部41の位置等(すなわち、リンク部材における支点、力点、作用点の位置関係)を適宜変更することによって、従来のエアダンパーのみでは実現できなかったボックス本体部の開き速度の制御を行って、ボックス本体部の回動挙動を安定させることが可能となる。
【実施例0067】
図8は、本実施例3に係るグローブボックスを模式的に説明する説明図である。
本実施例3として、収納装置であるグローブボックス3が、SUV型の車種に使用される場合について説明する。
【0068】
本実施例3のグローブボックス3は、インストルメントパネル10に回動可能に取り付けられるボックス本体部20と、ボックス本体部20の回動速度を制御するエアダンパー30と、ボックス本体部20及びエアダンパー30間に接続されるダンパー調整部60とを有する。
【0069】
なお本実施例3のグローブボックス3において、ダンパー調整部60は、前述の実施例1及び実施例2のリンク部材40で形成されるダンパー調整部と異なるものの、ボックス本体部20及びエアダンパー30は、前述の実施例1及び実施例2の場合と同様のものが使用されている。従って、本実施例3では、ボックス本体部20及びエアダンパー30を、実施例1及び実施例2と同じ符号を用いて表すことによって、その説明を省略することとする。
【0070】
本実施例3のダンパー調整部60は、インストルメントパネル10に固定されるラック61と、ラック61に噛み合うピニオンギア62とを有する。ラック61は、グローブボックス3を幅方向側から見た側面視において、曲線状又は円弧状に曲がった形状を呈するようにインストルメントパネル10に固定される。
【0071】
ピニオンギア62は、平歯車により形成されている。このピニオンギア62は、ピニオンギア62の回転中心部で、リッド22を有するボックス本体部20に回転可能に支持されている。この場合、ピニオンギア62の回転軸は、ボックス本体部20の所定の位置に、又はボックス本体部20に対して変位可能にボックス本体部20に支持されている。
【0072】
また、ピニオンギア62は、エアダンパー30のピストン32に一体的に形成された第2ダンパー係合部34に、回転可能に接続されている。この場合、エアダンパー30の第2ダンパー係合部34とピニオンギア62との接続部は、ピニオンギア62の回転中心からピニオンギア62の径方向に離れた位置に設けられている。
【0073】
このようなダンパー調整部60を備えた本実施例3のグローブボックス3によれば、ボックス本体部20の開き角度に応じてエアダンパー30の伸縮速度を変化させることができ、また、ボックス本体部20がエアダンパー30から受ける抗力の大きさを変化させることができる。それによって、ボックス本体部20が閉じ位置から開く方向に回動するときに、ボックス本体部20の荷重における開き方向の成分とグローブボックスが受ける抗力の大きさとのバランスを保つことが可能となり、その結果、ボックス本体部20の開き速度を一定に維持すること、又は維持し易くすることができる。またそれによって、ボックス本体部20が開くときの挙動を安定させることができる。
【0074】
すなわち、本実施例3のグローブボックス3においても、前述の実施例1及び2のグローブボックス1,2と同様に、ボックス本体部20の開き速度を、より広い角度範囲(領域)において、好ましくは、閉じ位置から開き位置までの全角度範囲において、一定の大きさに維持することが可能となる。
【0075】
なお、本実施例3のグローブボックス3では、閉じ位置から開き位置までの全角度範囲において、ダンパー調整部60を利用してボックス本体部20の開き速度を一定に又は略一定に維持している。しかし、本実施例3において、エアダンパー30でピストン32を一定の速度で伸縮可能な範囲では、例えばピニオンギア62の回転を停止させることにより、ダンパー調整部60を機能させないようにしてもよい。この場合でも、ダンパー調整部60が機能しない範囲ではエアダンパー30がボックス本体部20の開き速度を一定に制御できるため、閉じ位置から開き位置までの略全体の角度範囲で、ボックス本体部20の開き速度を一定に維持可能である。
【実施例0076】
図9は、本実施例4に係るグローブボックスを模式的に説明する説明図である。
本実施例4として、収納装置であるグローブボックス4が、前述の実施例2の場合と同様に、リッド22が起き上がった姿勢となるSUV型の車種に使用される場合について説明する。
【0077】
本実施例4のグローブボックス4は、インストルメントパネル10に回動可能に取り付けられるボックス本体部20と、ボックス本体部20の回動速度を制御するエアダンパー30と、ボックス本体部20及びエアダンパー30間に接続されるダンパー調整部70とを有する。
【0078】
なお本実施例4では、ダンパー調整部70が、前述の実施例1及び実施例2のリンク部材40で形成されるダンパー調整部と異なるものの、ボックス本体部20及びエアダンパー30は、前述の実施例1及び実施例2の場合と同様のものが使用されている。
【0079】
本実施例4のダンパー調整部70は、ボックス本体部20に設けられる長孔71と、長孔71に移動可能に収容されるとともにエアダンパー30のピストン32に設けられる係合突出部72とを有する。
【0080】
ダンパー調整部70の長孔71は、ボックス本体部20の左側側板部21aに、左側側板部21aを幅方向に貫通して設けられている。長孔71は、ボックス本体部20の側面視において、後方側の一端部71aから前方側の他端部71bに向けてカーブする湾曲した形状に形成されており、また、係合突出部72を長孔71内でスライド可能に形成されている。
【0081】
ダンパー調整部70の係合突出部72は、エアダンパー30のピストン32の先端部に接続されており、ピストン32と一体的に形成されている。また、係合突出部72は、ピストン32の先端部から、グローブボックス4の幅方向に沿って直線的に突出しており、また、ボックス本体部20に設けた長孔71内に挿入されている。
【0082】
本実施例4において、ダンパー調整部70の係合突出部72は、ボックス本体部20が閉じ位置に保持されているときには、長孔71における後方側の一端部71aに配置され、また、ボックス本体部20が閉じ位置から回動して開くことにより、係合突出部72が、長孔71内を一端部71aの位置から前方側の他端部71bに向けて移動する。
【0083】
更に、本実施例4のダンパー調整部70では、ボックス本体部20が開き位置まで移動する途中で、係合突出部72が長孔71の他端部71bに到達する。また、係合突出部72が長孔71の他端部71bに到達した後は、ボックス本体部20が開き位置に向けて更に回動しても、係合突出部72が長孔71の他端部71bの位置で保持される。例えば本実施例4の場合、ダンパー調整部70は、ボックス本体部20が閉じ位置から開き方向に向けて20°まで回動した位置(すなわち、開き角度が20°の位置)において、係合突出部72が長孔71の他端部71bに到達するように形成されている。
【0084】
ここで、本実施例4のグローブボックス4について、ボックス本体部20が閉じ位置に保持されている場合(すなわち、ダンパー調整部70の係合突出部72が長孔71の後方側の一端部71aに保持されている場合)のボックス本体部20、エアダンパー30、及びダンパー調整部70の位置関係を図9に実線で示す。また図9に、ボックス本体部20が20°の開き角度まで回転した場合のボックス本体部20、エアダンパー30、及びダンパー調整部70の位置関係と、ボックス本体部20が開き位置まで回転した場合のボックス本体部20、エアダンパー30、及びダンパー調整部70の位置関係とをそれぞれ仮想線で示す。
【0085】
本実施例4のグローブボックス4によれば、ボックス本体部20が閉じ位置から、開き角度が20°となる位置までの範囲(すなわち、ダンパー調整部70の係合突出部72が長孔71の一端部71aから他端部71bに移動するまでの範囲)では、エアダンパー30の伸縮速度を、ボックス本体部20の開き角度に応じて変化させることができる。
【0086】
例えば、本実施例4のようなSUV型の車種に使用されるグローブボックスにおいて、本実施例4のダンパー調整部70が設けられていない場合、ボックス本体部20が閉じ位置から開き方向に向けて回動を開始すると、そのボックス本体部20の回動を受けてエアダンパー30のピストン32が伸びるため、エアダンパー30からボックス本体部20に抗力が加えられる。しかしこの場合、ボックス本体部20の荷重における開き方向の成分F1が小さく、且つ、エアダンパー30では、ピストン32の伸縮速度を一定の大きさにすることができない荷重の範囲であるため、ボックス本体部20が閉じ位置から回動するときの回動速度が著しく遅くなる傾向にあった。
【0087】
これに対して、本実施例4のダンパー調整部70が設置される場合、ボックス本体部20の閉じ位置から開き角度が20°の位置までの角度範囲では、エアダンパー30のピストン32が伸びることにより抗力が発生するものの、ボックス本体部20の回動中に係合突出部72が長孔71内を他端部71bに向けて移動することにより、エアダンパー30のピストン32が伸びる速度を低減でき、それによって、エアダンパー30で発生させる抗力の大きさを小さくできる。特に本実施例4では、ダンパー調整部70の長孔71が湾曲形状に形成されていることにより、ボックス本体部20の開き速度に対するエアダンパー30の伸縮速度の増加をより抑制できるため、エアダンパー30の抗力をより低減できる。その結果、ボックス本体部20は、閉じ位置から開き角度が20°となる位置までの角度範囲では、ボックス本体部20の荷重における開き方向の成分F1が小さくても、ボックス本体部20を速く回動させることができ、且つ、エアダンパー30からボックス本体部20に加えられる抗力によって、ボックス本体部20の回動速度を一定に維持すること、又は維持し易くすることができる。
【0088】
また、ボックス本体部20の開き角度が20°となる位置から開き位置までの角度範囲では、係合突出部72が長孔71内で移動することなく、長孔71の他端部71bの位置で保持されるため、ダンパー調整部70は機能しないものの、エアダンパー30の機能を発揮させて、エアダンパー30のピストン32が伸びる速度を一定の大きさに制御できる。
【0089】
以上のように、本実施例4のグローブボックス4では、ボックス本体部20の閉じ位置から開き角度が20°となる位置までの角度範囲では、ダンパー調整部70でエアダンパー30が伸びる速度を変化させることにより、ボックス本体部20の回動速度を一定に維持すること、又は維持し易くすることができる。また、ボックス本体部20の開き角度が20°となる位置から開き位置までの角度範囲では、エアダンパー30自体の機能により、ボックス本体部20の開き速度を一定に維持できる。それによって、ボックス本体部20が閉じ位置から開き位置まで回動する範囲において、ボックス本体部20が開くときの挙動を安定させることができる。
【0090】
また本実施例4では、グローブボックスのレイアウトや、ボックス本体部に求められる開き挙動に応じて、長孔の位置、形状、長さ(距離)等を適宜変更することによって、従来のエアダンパーのみでは実現できなかったボックス本体部の開き速度の制御を行って、ボックス本体部の回動挙動を安定させることが可能となる。
【0091】
なお、本発明は、上述した実施例1~実施例4に限定されるものではなく、本発明と実質的に同一な構成を有し、かつ、同様な作用効果を奏しさえすれば、多様な変更が可能である。
例えばグローブボックスにおいて、エアダンパーとボックス本体部との間に接続されるダンパー調整部の大きさ、設置位置、及び設置角度等は特に限定されず、例えばグローブボックスの形状や大きさ等に応じて変更することが可能である。
【0092】
また、上述した実施例1~実施例4では、収納装置がグローブボックスである場合について説明したが、本発明の収納装置は、車両用のグローブボックスに限定されず、本発明は、自動車に設置されるグローブボックス以外の各種の収納装置に対しても同様に適用可能である。
【符号の説明】
【0093】
1,2,3,4 グローブボックス
10 インストルメントパネル(内装部材)
11 ボックス収容部
12 第1係合ピン
12a 係合頭部
13 第2係合ピン
13a 係合頭部
14 保持孔
15 軸部材
20 ボックス本体部
21 収容部
21a 側板部
21b 後板部
21c 底板部
22 リッド
23 収容空間部
24 軸受け孔
30 エアダンパー
31 エアダンパー本体部
32 ピストン
33 第1ダンパー係合部
33a 孔部
34 第2ダンパー係合部
34a 孔部
40 リンク部材(ダンパー調整部)
41 係合突出部
42 スライドバー
43 バー本体部
44 長孔
45 バー係合孔
46 第3係合ピン
46a 係合頭部
51 スライドバーの中心線(長孔の中心線)
52 回動軌跡
53 回動軌跡の接線
60 ダンパー調整部
61 ラック
62 ピニオンギア
70 ダンパー調整部
71 長孔
71a 一端部
71b 他端部
72 係合突出部
F1 開き方向の成分
θ スライドバー傾斜角度
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9