(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022184686
(43)【公開日】2022-12-13
(54)【発明の名称】可変波長の放射冷却フィルム及びこれを用いた波長変換装置と波長変換システム
(51)【国際特許分類】
A01G 9/14 20060101AFI20221206BHJP
A01G 13/02 20060101ALI20221206BHJP
A01G 9/24 20060101ALI20221206BHJP
A01G 9/22 20060101ALI20221206BHJP
A01G 7/00 20060101ALI20221206BHJP
【FI】
A01G9/14 S
A01G13/02 E
A01G9/24 A
A01G9/22
A01G7/00 601Z
【審査請求】有
【請求項の数】22
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021187789
(22)【出願日】2021-11-18
(31)【優先権主張番号】10-2021-0070534
(32)【優先日】2021-06-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(71)【出願人】
【識別番号】520445277
【氏名又は名称】シェルパ スペース インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100091683
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼川 俊雄
(74)【代理人】
【識別番号】100179316
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 寛奈
(72)【発明者】
【氏名】ユン,チャ ムン
【テーマコード(参考)】
2B022
2B024
2B029
【Fターム(参考)】
2B022DA08
2B022DA17
2B024DA04
2B024DB01
2B024DB07
2B029EB03
2B029EC12
2B029EC13
2B029EC20
2B029KB05
2B029SF04
(57)【要約】 (修正有)
【課題】施設内部の温度に応じてフィルムにける太陽光の熱遮断率を決定し、植物の成長段階に従って必要な波長が照射されるように、太陽光に露出されるフィルムの波長変換領域を可変する可変波長の放射冷却フィルム及びこれを用いた波長変換装置と波長変換システムに関する。
【解決手段】本発明に係る放射冷却フィルムは、基材層の一面は、熱遮断層が形成された第1区域及び熱遮断層が形成されていない第2区域を含み、前記第1区域及び第2区域のそれぞれには、複数に区画された波長変換領域を有する波長変換層が形成される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材層(base layer)の一面は、熱遮断層(heat barrier layer)が形成された第1区域及び熱遮断層が形成されていない第2区域を含み、
前記第1区域及び第2区域のそれぞれには、複数に区画された波長変換領域を有する波長変換層(wavelength converting layer)が形成される、可変波長の放射冷却フィルム。
【請求項2】
複数の前記波長変換領域は、前記第1区域及び第2区域に同一に繰り返し形成されることを特徴とする、請求項1に記載の可変波長の放射冷却フィルム。
【請求項3】
複数の前記波長変換領域は、前記基材層の他面に形成されることを特徴とする、請求項1に記載の可変波長の放射冷却フィルム。
【請求項4】
複数の前記波長変換領域は、前記基材層と同じ一面に形成されることを特徴とする、請求項1に記載の可変波長の放射冷却フィルム。
【請求項5】
前記第1区域は、異なる熱遮断率を有する複数の熱遮断領域を含むことを特徴とする、請求項1に記載の可変波長の放射冷却フィルム。
【請求項6】
複数の前記波長変換領域は、複数の前記熱遮断領域のそれぞれ及び第2区域に同一に繰り返し形成されることを特徴とする、請求項5に記載の可変波長の放射冷却フィルム。
【請求項7】
前記第1区域及び第2区域は、交互に繰り返し配置され、
相互隣接した第1区域及び第2区域には、同じ波長の波長変換領域が配置されることを特徴とする、請求項1に記載の可変波長の放射冷却フィルム。
【請求項8】
基材層(base layer)の一面は、熱遮断層(heat base layer)が形成された第1区域及び熱遮断層が形成されていない第2区域を含み、前記第1区域及び第2区域のそれぞれには、複数に区画された波長変換領域を有する波長変換層(wavelenght converting layer)が形成される放射冷却フィルム(radiational cooling film);及び
前記放射冷却フィルムの両端を巻き取る2個のローラ(rollers)と、前記ローラのうち少なくとも一つに回転力を印加するモーター(motor)と、前記モーターの回転数及び回転方向を制御するコントローラ(controller)とを含む駆動ユニット(driving unit)を含む、可変波長の波長変換装置。
【請求項9】
複数の前記波長変換領域は、前記第1区域及び第2区域に同一に繰り返し形成されることを特徴とする、請求項8に記載の可変波長の波長変換装置。
【請求項10】
複数の前記波長変換領域は、前記基材層の他面に形成されることを特徴とする、請求項8に記載の可変波長の波長変換装置。
【請求項11】
複数の前記波長変換領域は、前記基材層と同じ一面に形成されることを特徴とする、請求項8に記載の可変波長の波長変換装置。
【請求項12】
前記第1区域は、異なる熱遮断率を有する複数の熱遮断領域を含むことを特徴とする、請求項8に記載の可変波長の波長変換装置。
【請求項13】
複数の前記波長変換領域は、複数の前記熱遮断領域のそれぞれ及び第2区域に同一に繰り返し形成されることを特徴とする、請求項12に記載の可変波長の波長変換装置。
【請求項14】
前記第1区域と第2区域は、交互に繰り返し配置され、
相互隣接した第1区域と第2区域には、同じ波長の波長変換領域が配置されることを特徴とする、請求項8に記載の可変波長の波長変換装置。
【請求項15】
基材層(base layer)の一面は、熱遮断層(heat base layer)が形成された第1区域及び熱遮断層が形成されていない第2区域を含み、前記第1区域及び第2区域のそれぞれには、複数に区画された波長変換領域を有する波長変換層(wavelenght converting layer)が形成される放射冷却フィルム(radiational cooling film)と、前記放射冷却フィルムの両端を巻き取る2個のローラ(rollers)、前記ローラのうち少なくとも一つに回転力を印加するモーター(motor)、及び前記モーターの回転数及び回転方向を制御するコントローラ(controller)を含む駆動ユニット(driving unit)とを含む波長変換装置;
施設内部に設置される温度センサー(temperature sensor);及び
前記温度センサーの測定値(measured walue)が、基準値(threshold value)よりも大きいと、太陽光が第1区域のいずれか一つの波長変換領域に照射されるように、前記波長変換装置を制御する管理サーバー(management server)
を含む、可変波長の波長変換システム。
【請求項16】
前記施設内の被生育体を撮影するカメラをさらに含み、
前記管理サーバーは、
前記カメラの映像データに基づいて被生育体の成長段階(growth stage)を判断する分析モジュール(analyzing module)と、前記温度センサーの測定値に基づいて第1区域又は第2区域のうち一つを決定し、決定された領域のうち前記判断された成長段階に必要な波長の波長変換領域に太陽光が照射されるように前記波長変換装置を制御する指示モジュール(indicating module)とを含む、請求項15に記載の可変波長の波長変換システム。
【請求項17】
複数の前記波長変換領域は、前記第1区域及び第2区域に同一に繰り返し形成されることを特徴とする、請求項15に記載の可変波長の波長変換システム。
【請求項18】
複数の前記波長変換領域は、前記基材層の他面に形成されることを特徴とする、請求項15に記載の可変波長の波長変換システム。
【請求項19】
複数の前記波長変換領域は、前記基材層と同じ一面に形成されることを特徴とする、請求項15に記載の可変波長の波長変換システム。
【請求項20】
前記第1区域は、異なる熱遮断率を有する複数の熱遮断領域を含むことを特徴とする、請求項15に記載の可変波長の波長変換システム。
【請求項21】
複数の前記波長変換領域は、複数の前記熱遮断領域のそれぞれ及び第2区域に同一に形成されることを特徴とする、請求項20に記載の可変波長の波長変換システム。
【請求項22】
前記第1区域と第2区域は、交互に繰り返し配置され、
相互隣接した第1区域と第2区域には、同じ波長の波長変換領域が配置されることを特徴とする、請求項15に記載の可変波長の波長変換システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、可変波長の放射冷却フィルム及びこれを用いた波長変換装置と波長変換システムに関し、より詳細には、施設内部の温度に応じてフィルムにおける太陽光の熱遮断率を決定し、植物の成長段階に従って必要な波長が照射されるように、太陽光に露出されるフィルムの波長変換領域を可変する、可変波長の放射冷却フィルム及びこれを用いた波長変換装置と波長変換システムに関する。
【0002】
[課題情報]
- 課題の固有番号:1415174708
- 課題番号:20212020800050
- 部処名:産業通商資源部
- 研究管理専門機関:韓国エネルギー技術評価院
- 研究事業名:エネルギー需要管理核心技術開発
- 研究課題名:多重分散発電基盤の屋上温室型スマートグリーンビル融複合システム開発及び実証
- 寄与率:100%
- 課題遂行機関名:シェルパ スペース インコーポレイテッド
- 研究期間:2020.5.1~2025.12.31
【背景技術】
【0003】
一般に、植物は、光を通じてエネルギーの供給を受け、光合成と呼吸作用を通じて生長する。日長(length of day)と光合成有効光量子束(photosynthetic photon flux、PPF)により、栄養生長と生殖生長が影響を受け、波長により生長が変わる。植物は、可視光線領域を含む380~760nm領域で光合成が行われ、光合成が行われる波長範囲の放射エネルギーのことを光合成有効放射(photosynthetically active radiation、PAR)という。植物は、それぞれの光の帯域(wavelenght)と光合成有効光量子束(photosynthetic photon flux、PPF)が異なる。そのため、温室や植物工場では、作物の生育に必要な光を確保することが非常に重要である。
【0004】
光源を確保しにくい場合、人工光源を設置して作物の発育生長を誘導するが、人工光源は莫大な電力を消費するため、施設の維持管理費用が負担になるという問題がある。
【0005】
したがって、太陽光を活用して作物を栽培することが最も効率的であるが、太陽光を用いる施設の場合、太陽光の照射量を人為的に決定し、又は、太陽光から照射される波長範囲を人為的に可変しなければならないという不具合がある。
【0006】
例えば、正午時間帯に太陽光の入射量が多ければ、室内温度が適正温度よりも高くなり、室内温度を冷却させるための冷房施設を稼動しなければならず、電気使用量が増加するという短所がある。
【0007】
韓国公開特許第10-2015-0113457号公報には、人工照明の光源を提供する植物工場用の植物栽培装置に関する技術が開示されている。このような技術は、植物に必要な光源を提供することは可能であるが、施設内部の温度を調節できず、冷房及び暖房費用を效率的に活用できないという短所がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】韓国公開特許第10-2015-0113457号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明が解決しようとする課題は、施設内部の温度に応じてフィルムにおける太陽光の熱遮断率を決定し、植物の成長段階に従って必要な波長が照射されるように、太陽光に露出されるフィルムの波長変換領域を可変する、可変波長の放射冷却フィルム及びこれを用いた波長変換装置と波長変換システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一実施例に係る可変波長の放射冷却フィルムは、基材層(base layer)の一面は、熱遮断層(heat barrier layer)が形成された第1区域及び熱遮断層が形成されていない第2区域を含み、前記第1区域及び第2区域のそれぞれには、複数に区画された波長変換領域を有する波長変換層(wavelength converting layer)が形成される。
【0011】
前記複数の波長変換領域は、前記第1区域及び第2区域に同一に(twin)繰り返し形成されてもよい。
【0012】
前記複数の波長変換領域は、前記基材層の他面に形成されてもよい。
【0013】
前記複数の波長変換領域は、前記基材層と同じ一面に形成されてもよい。
【0014】
前記第1区域は、異なる熱遮断率を有する複数の熱遮断領域を含んでもよく、この場合、前記複数の波長変換領域は、前記異なる複数の熱遮断領域のそれぞれ及び第2区域に同一に繰り返し形成されてもよい。
【0015】
前記第1区域と第2区域は交互に繰り返し配置され、相互隣接した第1区域と第2区域には同じ波長の波長変換領域が配置されてもよい。
【0016】
本発明の他の実施例に係る波長変換装置は、基材層(base layer)の一面は、熱遮断層(heat barrier layer)が形成された第1区域及び遮断層が形成されていない第2区域を含み、前記第1区域及び第2区域のそれぞれには、複数に区画された波長変換領域を有する波長変換層(wavelength converting layer)が形成される放射冷却フィルム(radiational cooling film)と、前記放射冷却フィルムの両端を巻き取る2個のローラ(rollers)、前記ローラのうち少なくとも一つに回転力を印加するモーター(motor)、及び前記モーターの回転数及び回転方向を制御するコントローラ(controller)を含む駆動ユニット(driving unit)とを含む。
【0017】
本発明の他の一実施例に係る波長変換システムは、基材層(base layer)の一面は、熱遮断層(heat barrier layer)が形成された第1区域及び熱遮断層が形成されていない第2区域を含み、前記第1区域及び第2区域のそれぞれには、複数に区画された波長変換領域を有する波長変換層(wavelength converting layer)が形成される放射冷却フィルム(radiational cooling film)と、前記放射冷却フィルムの両端を巻き取る2個のローラ(rollers)、前記ローラのうち少なくとも一つに回転力を印加するモーター(motor)、及び前記モーターの回転数及び回転方向を制御するコントローラ(controller)を含む駆動ユニット(driving unit)とを含む波長変換装置;施設内部に設置される温度センサー(temperature sensor);及び、前記温度センサーの測定値(measured walue)が基準値(threshold value)よりも大きいと、太陽光が第1区域のいずれか一つの波長変換領域に照射されるように、前記波長変換装置を制御する管理サーバー(management server)を含む。
【0018】
前記波長変換システムは、前記施設内の被生育体を撮影するカメラをさらに含んでもよい。この場合、前記管理サーバーは、前記カメラの映像データに基づいて被生育体の成長段階(growth stage)を判断する分析モジュール(analyzing module)、前記温度センサーの測定値に基づいて第1区域又は第2区域のうち一つを決定し、決定された領域のうち前記判断された成長段階に必要な波長の波長変換領域に太陽光が照射されるように、前記波長変換装置を制御する指示モジュール(indicating module)を含んでもよい。
【発明の効果】
【0019】
本発明の実施例によれば、施設内部の温度に応じてフィルムにおける太陽光の熱遮断率を決定し、植物の成長段階に従って必要な波長が照射されるように、太陽光に露出されるフィルムの波長変換領域を可変することにより、施設に使用される冷房及び暖房の費用を節約することができ、植物の成長を促進することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】実施例1の放射冷却フィルムの構造図である。
【
図2】実施例2の放射冷却フィルムの構造図である。
【
図3】実施例3の放射冷却フィルムの構造図である。
【
図4】実施例4の放射冷却フィルムの構造図である。
【
図5】実施例5の放射冷却フィルムの構造図である。
【
図6】実施例6の放射冷却フィルムの構造図である。
【
図7】実施例7の放射冷却フィルムの構造図である。
【
図8】実施例8の波長変換装置のブロック図である。
【
図9】実施例9の波長変換システムの構成図である。
【
図10】実施例9の波長変換システムを構成する管理サーバーのブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明のいくつかの実施例を図面に基づいて詳細に説明する。ただし、これは、本発明をある特定の実施例に対して限定しようとするものではなく、本発明の技術的思想を含むあらゆる変形(transformations)、均等物(equivalents)及び代替物(substitutions)は、本発明の範囲に含まれるものと理解されるべきである。
【0022】
本明細書において、単数の表現は、文脈において明白に言及しない限り、複数の表現を含む。
【0023】
本明細書において、ある一つの構成が、あるサブ構成を“備える(have)”又は“含む(comprise)”と記載した場合、特に断りのない限り、他の(other)構成を除外するものではなく、他の構成をさらに含み得るということを意味する。
【0024】
本明細書において、“…ユニット(Unit)”、“…モジュール(Module)”及び“コンポーネント(Component)”の用語は、少なくとも一つの機能や動作を処理する単位のことを意味し、これは、ハードウェア、ソフトウェア又はハードウェア及びソフトウェアの結合によって具現されてもよい。
【0025】
図1は、実施例1の放射冷却フィルムの構造図である。
【0026】
実施例1の可変波長を提供する放射冷却フィルム(radiational cooling film)は、基材層(base layer)BL、熱遮断層(heat barrier layer)HBL、波長変換層(wavelength converting layer)WCLを含む。
【0027】
基材層(base layer)BLは、一面に熱遮断層HBLがコーティングされ、熱遮断層を支持し保護する。
【0028】
基材層の素材として、ポリエチレンテレフタレート(PET,polyethyleneterephthalate)、ポリカーボネート(polycarbonate)、ナイロン(nylon)、ポリプロピレン(PP、polypropylene)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリアミド(polyamide)のいずれか一つが使用されてよい。
【0029】
基材層は、熱遮断層が形成された第1区域region1及び熱遮断層が形成されていない第2区域region2を含む。第1区域及び第2区域は、同じ面積を有してもよい。
【0030】
熱遮断層HBLは、基材層の一面にコーティングされ、放射熱が流入又は放出されることを防止する。熱遮断層は、赤外線の反射のために、ポリジメチルシロキサン(PDMS)、二酸化ケイ素(SiO2)、銀(Ag)のうち少なくとも一つの組成物を含むことができる。ただし、これらの組成物に限定される必要はなく、熱線帯域を反射する効果を有する組成物であればいずれも適用可能である。
【0031】
波長変換層WCLは、被生育体の成長段階に必要な波長の太陽光が照射されるように、太陽光の波長を変換させて出力する。被生育体は、植物又は藻類(alga)のいずれかであってよい。
【0032】
波長変換層は、基材層の他面に形成され、基材層の第1区域及び第2区域に形成される。
【0033】
波長変換層は、複数に区画された波長変換領域を有する。
【0034】
第1区域及び第2区域の各波長変換領域は、異なる波長遷移(shipt)の特性を有する。波長遷移のために、量子ドット(quantum dot)、ペロブスカイト(perovskite)、蛍光体(phosphor)、セロハン(cellophane)のいずれかの波長変換物質が使用されてよい。
【0035】
例えば、各波長変換領域は、赤色を発する量子ドットが含まれたA領域、太陽光をそのまま出力させるB領域、太陽光を全て遮断するC領域、青色を発する量子ドットが含まれたD領域、緑色を発する量子ドットが含まれたE領域を含んでもよい。波長変換領域において、波長構成及び配列順序は、前記の例示に限定されず、設計者によって変わってもよく、被生育体の種類によって変わってもよい。また、5個に区画された波長変換領域を例示しているが、5個未満であってもよく、5個を超えてもよい。
【0036】
複数の波長変換領域は、基材層の第1区域及び第2区域に同一に(twin)繰り返し形成される。すなわち、複数の波長変換領域は、第1区域及び第2区域に同一の波長構成と配列順序で配置される。
【0037】
複数の波長変換領域は、基材層の第1区域及び第2区域に異なるように形成されてもよい。例えば、熱遮断層を含む第1領域には、通常の天候や涼しい天候でよく育つ作物のためのAタイプの波長変換領域を適用し、熱遮断層のない第2領域には、暑い天候でよく育つ作物のためのBタイプの波長変換領域を適用することができる。
【0038】
図2は、実施例2の放射冷却フィルムの構造図である。
【0039】
実施例2の放射冷却フィルムに形成された複数の波長変換層は、基材層において熱遮断層と同じ一面に形成される。
【0040】
熱遮断層が形成された第1区域は、基材層、熱遮断層、波長変換層の順序で積層され、熱遮断層が形成されていない第2区域は、基材層、波長変換層の順序で積層される。
【0041】
複数の波長変換領域は第1区域及び第2区域に同一に(twin)形成されてもよく、第1区域及び第2区域のそれぞれに異なる波長変換領域が形成されてもよい。
【0042】
図3は、実施例3の放射冷却フィルムの構造図である。
【0043】
実施例3の放射冷却フィルムに形成された複数の波長変換層は、基材層と同じ一面に形成される。
【0044】
熱遮断層が形成された第1区域は、基材層、波長変換層、熱遮断層の順序で積層され、熱遮断層が形成されていない第2区域は、基材層、波長変換層の順序で積層される。
【0045】
複数の波長変換領域は第1区域及び第2区域に同一に(twin)形成されてもよく、第1区域及び第2区域のそれぞれに異なる配列の波長変換領域が形成されてもよい。
【0046】
図4は、実施例4の放射冷却フィルムの構造図である。
【0047】
実施例4の放射冷却フィルムに形成された熱遮断層は、基材層の一面において第1区域に、異なる熱遮断率の複数の熱遮断領域が形成されている。
【0048】
複数の熱遮断領域は、2つ以上に形成されてもよく、実施例4では、複数の熱遮断領域が2つ(すなわち、第1熱遮断領域及び第2熱遮断領域)に形成された場合を説明する。熱遮断率Aの熱遮断領域は、第1-1区域に形成され、熱遮断率Bの熱遮断領域は、第1-2区域に形成される。
【0049】
例えば、第1-1区域の熱遮断領域は、熱遮断率が70%となるように構成され、第1-2区域の熱遮断領域は、熱遮断率が40%となるように構成されてもよい。
【0050】
また、例えば、第1-1区域の熱遮断領域は夏に使用され、第1-2区域の熱遮断領域は春と秋に使用され、第2区域は冬に使用されてもよい。
【0051】
なお、例えば、第1-1区域の熱遮断領域は正午の時間帯に使用され、第1-2区域の熱遮断領域は正午前後の時間帯に使用され、第2区域は日の出の頃及び日の入りの頃に使用されてもよい。
【0052】
波長変換層は、熱遮断層と反対側の基材層の他面に形成される。
【0053】
前記複数の波長変換領域は、前記複数の熱遮断領域のそれぞれ及び第2区域に同一に繰り返し形成されてもよい。第1-1区域、第1-2区域、第2区域は、同じ面積を有してもよく、そうでなくてもよい。
【0054】
図5は、実施例5の放射冷却フィルムの構造図である。
【0055】
実施例5の放射冷却フィルムは、第1-1区域region1-1及び第1-2区域region1-2の基材層上に、熱遮断層と波長変換層が順次に積層され、第1-1区域及び第1-2区域の熱遮断層には、異なる熱遮断率を有する熱遮断領域が形成される。基材層の第2区域region2には、波長変換層が積層される。
【0056】
複数の波長変換領域は、第1-1区域、第1-2区域及び第2区域で同一に繰り返し形成されてもよく、第1-1区域、第1-2区域及び第2区域のうち少なくとも一つは、異なる波長変換領域が形成されてもよい。
【0057】
図6は、実施例6の放射冷却フィルムの構造図である。
【0058】
実施例6の放射冷却フィルムは、第1-1区域region1-1、第1-2区域region1-2及び第2区域region2の基材層上に、波長変換層が積層され、第1-1区域及び第1-2区域の波長変換層上には、それぞれ熱遮断層が積層される。そして、第1-1区域及び第1-2区域の熱遮断層には、異なる熱遮断率を有する熱遮断領域が形成される。
【0059】
複数の波長変換領域は、第1-1区域、第1-2区域及び第2区域で同一に繰り返し形成されてもよく、第1-1区域域、第1-2区域及び第2区域のうち少なくとも一つは、異なる波長変換領域が形成されてもよい。
【0060】
図7は、実施例7の放射冷却フィルムの構造図である。
【0061】
実施例7の放射冷却フィルムにおいて、第1区域1st HBLと第2区域2nd HBLは、交互に繰り返し配置され、相互隣接した第1区域と第2区域には、同じ波長の波長変換領域が配置される。
【0062】
言い換えると、実施例7の放射冷却フィルムは、波長変換層の各波長変換区域section 1~section 2に対して、異なる熱遮断率の熱遮断領域が複数個形成される。
【0063】
一例として、同じ波長のいずれか一つの波長変換領域に対して、熱遮断領域と熱透過領域とに区分される熱遮断層が形成されてもよい。他の例として、同じ波長のいずれか一つの波長変換領域に対して、熱遮断率Aの熱遮断領域と熱遮断率Bの熱遮断領域と熱透過領域とに区分される熱遮断層が形成されてもよい。
【0064】
図7は、基材層の一面に波長変換層が形成され、基材層の他面に熱遮断層が形成される実施例が示されている。添付の図面に示されていないが、基材層のいずれか一面に波長変換層及び熱遮断層が順次に積層されてもよく、熱遮断層及び波長変換層が順次に積層されてもよい。
【0065】
また、
図7の例において、波長変換領域は、5個の区域section1~section5に区画されているが、必ずしもこれに限定されるものではなく、5個未満に区画されてもよく、5個を超えて区画されてもよい。
【0066】
砂漠のように昼夜の温度差が大きい地域の場合、一日に数回も相異なる熱遮断率の熱遮断領域にフィルムの位置を変更させなければならないこともある。また、被生育体の成長段階が、一日又は二日で変更されるものではないため、敢えて波長変換領域を変更する必要はない。したがって、実施例7のように、同じ波長の波長変換領域内において、異なる熱遮断率の熱遮断領域が隣接して配置されると、実施例1~実施例6に比べて熱遮断フィルムの移動距離が短くなるため、フィルムの再配置がより迅速になり、フィルムの移動による電気エネルギーの消耗を最小化することができる。
【0067】
図8は、実施例8の波長変換装置のブロック図である。
【0068】
実施例8の波長変換装置100は、放射冷却フィルム10(radiational cooling film)及び駆動ユニット20(driving unit)を含む。
【0069】
放射冷却フィルム10は、実施例1~実施例7で説明したフィルム10のいずれか一つが同一に採択されてよい。したがって、フィルム10に関する重複説明は省略する。
【0070】
駆動ユニット(driving unit)20は、放射冷却フィルム10の両端を2個のローラに巻き取り、少なくとも一つのローラを回転させることにより、放射冷却フィルム10において太陽光が入射する領域を変更する。
【0071】
駆動ユニット20は、2個のローラ(rollers)21、モーター(motor)22及びコントローラ(controller)23を含む。
【0072】
波長変換装置100は、施設の屋根又は側壁に設けられた窓に設置されてもよい。
【0073】
一つのローラは、放射冷却フィルム10のいずれか一端を巻き取る。2個のローラは、同じ方向に回転し、正方向又は逆方向に回転しながら、放射冷却フィルム10における太陽光照射領域を可変させる。
【0074】
モーター22は、2個のローラのうち少なくとも一つと連結され、連結されたローラに回転力を印加する。モーター22は、ACモーター、BLDCモーター、DCモーターのいずれか一つが採択されてもよい。
【0075】
コントローラ23は、モーター22の回転数及び回転方向を制御する。コントローラ23は、管理サーバーから送信された制御信号に応じて、放射冷却フィルム10における太陽光の照射領域を可変させる。
【0076】
図9は、実施例9の波長変換システムの構成図である。
【0077】
実施例9の波長変換システムは、波長変換装置100、温度センサー200、管理サーバー300を含み、カメラ400をさらに含むことができる。
【0078】
波長変換装置100は、実施例8の波長変換装置100と同一であり、重複説明は省略する。
【0079】
温度センサー(temperature sensor)200は、施設内部に設置され、施設内部の温度を周期的又はリアルタイムで測定する。
【0080】
管理サーバー(management server)300は、温度センサー200の測定値(measured value)を基準値(threshold value)と比較し、比較した値に基づき、フィルムの熱遮断領域のいずれか一つを決定する。そして、決定された熱遮断領域に配置された複数の波長変換領域のうち、被生育体の成長段階にマッチングする波長の波長変換領域に太陽光が照射されるようにフィルムを移動させるようとの制御信号を波長変換装置100に送信する。
【0081】
カメラ400は、施設の内部に設置される。カメラ400は、施設で栽培中の被生育体を撮影して管理サーバー300に伝送する。
【0082】
温度センサー200及びカメラ400は、通信モジュール(図示せず)が具備されており、サーバー300と直接通信するか、又は、連結されたセットトップボックス(図示せず)のような通信端末を通じて管理サーバー300と通信することもできる。また、温度センサー200及びカメラ400は、管理サーバー300又はセットトップボックスと有線又は無線で通信することができる。
【0083】
図10は、実施例9の波長変換システムを構成する管理サーバー300のブロック図である。
【0084】
実施例9の管理サーバー300は、分析モジュール(analyzing module)310、生育データベース(growth DB)311、指示モジュール(indicating module)320、レシピデータベース(recipe DB)321を含む。
【0085】
分析モジュール310は、温度センサー200から送られた測定値(measured value)を基準値(threshold value)と比較し、比較した値に基づき、フィルムの熱遮断領域のいずれか一つを決定する。例えば、フィルムが熱遮断領域と熱透過領域とに区画された場合、管理サーバー300は、測定された室内温度が基準値よりも高いと、室内温度を下げるために、一応太陽光の照射領域を熱遮断領域として決定する。
【0086】
また、分析モジュール310は、カメラ400から送られた映像データを分析し、被生育体の成長段階(growth stage)を判断し、判断した成長段階にマッチングする波長変換領域を決定する。
【0087】
例えば、分析モジュール310は、生育データベース311に格納された植物の成長データと撮影された映像データとを比較し、植物の高さ、葉の大きさ、葉の色、葉の数、実の有無のうち少なくとも一つに基づいて植物の成長段階を判断することもできる。
【0088】
生育データベース311には、被生育体の成長段階を示すデータが格納される。例えば、生育データベース311には、時間が経つにつれて非可逆的にその大きさが変わる現象に対するイメージが格納されてもよい。植物の例において、植物の発芽段階、初期成長段階、開化段階、果実段階などに応じた植物の高さ、葉の大きさ、葉の色、葉の数、実の有無に関する情報が格納されてもよい。
【0089】
指示モジュール320は、分析モジュール310から前記決定された熱遮断領域及び波長変換領域の識別情報を受信する。そして、受信された識別情報の熱遮断領域及び波長変換領域に太陽光が照射されるようにフィルムを移動させるようとの制御信号を波長変換装置100に送信する。
【0090】
レシピデータベース321には、植物の成長段階に従って必要な波長情報が予め格納される。例えば、レシピデータベース321には、植物の発芽段階、初期成長段階、開化段階、果実段階などに応じて必要な波長情報が予め格納される。
【0091】
以上、本発明に係るいくつかの実施例を参照して説明したが、当該技術分野における通常の知識を有する者であれば、添付する特許請求の範囲に記載された本発明の思想及び領域から逸脱しない範囲内で、本発明を様々に修正及び変更可能であることが理解できよう。
【符号の説明】
【0092】
10 放射冷却フィルム
20 駆動ユニット
22 モーター
23 コントローラ
100 波長変換装置
200 温度センサー
300 管理サーバー
400 カメラ