(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022184717
(43)【公開日】2022-12-13
(54)【発明の名称】非接触給電システム
(51)【国際特許分類】
H02J 50/40 20160101AFI20221206BHJP
H02J 50/12 20160101ALI20221206BHJP
H02J 7/00 20060101ALI20221206BHJP
【FI】
H02J50/40
H02J50/12
H02J7/00 301D
【審査請求】未請求
【請求項の数】21
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022035987
(22)【出願日】2022-03-09
(31)【優先権主張番号】P 2021090830
(32)【優先日】2021-05-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】110000028
【氏名又は名称】弁理士法人明成国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】柴沼 満
(72)【発明者】
【氏名】高橋 英介
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 将也
(72)【発明者】
【氏名】山口 宜久
(72)【発明者】
【氏名】加藤 和行
【テーマコード(参考)】
5G503
【Fターム(参考)】
5G503AA01
5G503BA01
5G503BB01
5G503FA06
5G503GB06
5G503GB08
(57)【要約】
【課題】送電コイル同士の結合の影響を抑制する。
【解決手段】受電ユニット280を備えた移動体200に非接触で給電する非接触給電システム100は、交流電力供給部20と、移動体の移動範囲の少なくとも一部に配設された複数の送電ユニット80であって、送電コイル81を含み、交流電力供給部からの電力の供給を受けて、共振状態において前記送電コイルを介した受電ユニットへの給電を行なう複数の送電ユニットと、送電ユニットの1つである第1の送電ユニット80aの第1の送電コイル81aに生じる磁束の大きさが、予め定めた閾値以上の場合に、第1の送電ユニットの状態を共振状態に切り替え、閾値より小さい場合には、非共振状態に切り替える切替制御部と、を備え、閾値は、第1の送電コイルと第1の送電コイルに隣接する第2の送電コイル81bとの結合によって第1の送電コイルに生じる磁束を超える大きさとして設定されている。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
受電コイル(281)を有する受電ユニット(280)を備えた移動体(200)に非接触で給電する非接触給電システム(100)であって、
交流電力供給部(20)と、
前記移動体の移動範囲の少なくとも一部に配設された複数の送電ユニット(80)であって、送電コイル(81)を含み、前記交流電力供給部からの電力の供給を受けて、共振状態において前記送電コイルを介した前記受電ユニットへの給電を行なう複数の送電ユニットと、
前記送電ユニットの1つである第1の送電ユニット(80a)の第1の送電コイル(81a)に生じる磁束の大きさが、予め定めた閾値以上の場合に、前記第1の送電ユニットの状態を共振状態に切り替え、前記閾値より小さい場合には、非共振状態に切り替える切替制御部と、
を備え、
前記閾値は、前記第1の送電コイルと前記第1の送電コイルに隣接する、第2の送電ユニット(80b)の第2の送電コイル(81b)との結合によって前記第1の送電コイルに生じる磁束を超える大きさとして設定されている、非接触給電システム。
【請求項2】
請求項1に記載の非接触給電システムであって、
前記送電ユニットは、前記送電コイルに接続されるコンデンサの容量を変更する容量変更部を備え、
前記切替制御部は、前記容量変更部を駆動して、前記コンデンサの容量を、前記共振状態とする容量と、前記非共振状態とする容量との間で切り替える、非接触給電システム。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の非接触給電システムであって、
前記第1の送電コイルと、前記第2の送電コイルと、の間の結合関係は、前記受電コイルと前記第1の送電コイルの結合係数が、前記第1の送電コイルと前記第2の送電コイルの結合係数の総和以上となる結合関係である、非接触給電システム。
【請求項4】
請求項1から請求項3までのうちのいずれか一項に記載の非接触給電システムであって、
前記閾値は、前記第1の送電コイルと前記第2の送電コイルとの相対距離により設定されている、非接触給電システム。
【請求項5】
請求項4に記載の非接触給電システムであって、
前記相対距離は、前記第1の送電コイルの中心と、前記第2の送電コイルの中心と、の中心間距離である、非接触給電システム。
【請求項6】
受電コイル(281)を有する受電ユニット(280)を備えた移動体(200)に非接触で給電する非接触給電システム(100)であって、
交流電力供給部(20)と、
前記移動体の移動範囲の少なくとも一部に配設された複数の送電ユニット(80)であって、送電コイル(81)を含み、前記交流電力供給部からの電力の供給を受けて、前記送電コイルを介した前記受電ユニットへの給電を行なう複数の送電ユニットと、
前記送電ユニットの1つである第1の送電ユニット(80a)の第1の送電コイル(81a)に生じる磁束の大きさが、予め定めた閾値以上の場合に、前記第1の送電ユニットの状態を送電状態に切り替え、前記閾値より小さい場合には、非送電状態に切り替える切替制御部と、
を備え、
前記閾値は、前記第1の送電コイルと、前記第1の送電コイルに磁気的に結合する少なくとも1つ以上の第2の送電ユニット(80b)の第2の送電コイル(81b)と、の結合によって、前記第1の送電コイルに生じる磁束を超える大きさとして設定されている、非接触給電システム。
【請求項7】
請求項6に記載の非接触給電システムであって、
前記第2の送電コイルは、前記第1の送電コイルに隣接している、非接触給電システム。
【請求項8】
請求項6または請求項7に記載の非接触給電システムであって、
前記第1の送電コイル、第2の送電コイルの結合関係は、
前記受電コイルと前記第1の送電コイルの結合係数が、前記第1の送電コイルと前記第2の送電コイルの結合係数の総和以上となる結合関係である、非接触給電システム。
【請求項9】
請求項6から請求項8までのうちのいずれか一項に記載の非接触給電システムであって、
前記閾値は、前記第1の送電コイルと前記第2の送電コイルとの相対距離により設定されている、非接触給電システム。
【請求項10】
請求項9に記載の非接触給電システムであって、
前記相対距離は、前記第1の送電コイルの中心と、前記第2の送電コイルの中心と、の中心間距離である、非接触給電システム。
【請求項11】
請求項6から請求項10までのうちのいずれか一項に記載の非接触給電システムであって、
前記切替制御部は、前記第1の送電ユニットにおける前記送電状態と、前記非送電状態との切り替えを、前記第1の送電ユニットのインピーダンスを変化させることで実現する、非接触給電システム。
【請求項12】
請求項11に記載の非接触給電システムであって、
前記切替制御部は、
前記第1の送電ユニットの状態を送電状態に切り替える場合には、前記第1の送電ユニットの状態を共振状態に切り替え、
前記第1の送電ユニットの状態を非送電状態に切り替える場合には、前記第1の送電ユニットの状態を非共振状態に切り替える、非接触給電システム。
【請求項13】
請求項12に記載の非接触給電システムであって、
前記第1の送電ユニットは、前記共振状態と前記非共振状態とを切り替えることができる可変インピーダンスデバイスを備える、非接触給電システム。
【請求項14】
請求項13に記載の非接触給電システムであって、
前記可変インピーダンスデバイスは、可変インダクタと可変容量コンデンサとのうちの少なくとも一方を含む、非接触給電システム。
【請求項15】
請求項1から請求項14までのうちのいずれか一項に記載の非接触給電システムであって、
前記第1の送電コイルと前記第2の送電コイルは、平面上に並べられている、非接触給電システム。
【請求項16】
請求項15に記載の非接触給電システムであって、
前記第1の送電コイルと前記第2の送電コイルは、格子状またはハニカム状に並べられている、非接触給電システム。
【請求項17】
請求項1から請求項14までのうちのいずれか一項に記載の非接触給電システムであって、
前記第1の送電コイルと前記第2の送電コイルは、線上に並んでいる、非接触給電システム。
【請求項18】
請求項1から請求項14までのうちのいずれか一項に記載の非接触給電システムであって、
前記切替制御部は、前記第1の送電コイルに生じる磁束の大きさを、前記第1の送電コイルの電圧もしくは電流を用いて判断する、非接触給電システム。
【請求項19】
請求項1から請求項18までのうちのいずれか一項に記載の非接触給電システムであって、
前記第1の送電コイルと前記受電コイルの相互インダクタンスとに起因するインピーダンスと前記第1の送電コイルの電流との積と、前記第1の送電コイルと、前記第2の送電コイルの間の相互インダクタンスに起因するインピーダンスと、前記第2の送電コイルに流れる電流との積の総和が、前記第1の送電コイルと前記受電コイルの相互インダクタンスとに起因するインピーダンスと、前記受電コイルに流れる電流との積よりも小さくなるように、複数の前記送電ユニットの前記送電コイルが配置されている、非接触給電システム。
【請求項20】
請求項1から請求項19までのうちのいずれか一項に記載の非接触給電システムであって、
複数の前記送電ユニットのうち少なくとも1つの前記送電ユニットの前記送電コイルと、前記受電コイルとの結合係数がゼロ以上であるように、複数の前記送電ユニットの前記送電コイルが配置されている、非接触給電システム。
【請求項21】
請求項1から請求項19までのうちのいずれか一項に記載の非接触給電システムであって、
前記切替制御部が前記送電ユニットの共振の状態を切り替える位置は、前記送電ユニットの前記送電コイルと前記受電コイルの結合係数が正である位置である、非接触給電システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、非接触給電システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、移動体用ワイヤレス給電システムが開示されている。この移動体用ワイヤレス給電システムは、高周波電源と、高周波電源に並列に接続された複数の送電コイルと、移動体に搭載された受電コイルとを備える。高周波電源と送電コイルとの間に、高周波電源から送電コイルに流れる電流が閾値未満のとき、高周波電源から送電コイルに流れる電流を抑制するためにインピーダンスを上昇させ、高周波電源から送電コイルに流れる電流が閾値以上のとき、高周波電源から送電コイルに流れる電流を抑制しないようにインピーダンスを低下させる電流制御素子が配置されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1では、複数の送電コイル間の結合について考慮されていなかった。受電コイルに対し、複数の送電コイルを順に切り替えて給電する場合には、複数の送電コイルは、互いに近接した位置に配置される。複数の送電コイルが互いに近接した位置に配置されると、隣接する送電コイル同士が結合する。送電コイル間に結合が生じると、結合によって高周波電源から送電コイルに流れる電流が変化する。そのため、インピーダンスを変化させる閾値を設定することが難しいという課題があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一形態によれば、受電コイル(281)を有する受電ユニット(280)を備えた移動体(200)に非接触で給電する非接触給電システムが提供される。この非接触給電システムは、交流電力供給部(20)と、前記移動体の移動範囲の少なくとも一部に配設された複数の送電ユニット(80)であって、送電コイル(81)を含み、前記交流電力供給部からの電力の供給を受けて、共振状態において前記送電コイルを介した前記受電ユニットへの給電を行なう複数の送電ユニットと、前記送電ユニットの1つである第1の送電ユニット(80a)の第1の送電コイル(81a)に生じる磁束の大きさが、予め定めた閾値以上の場合に、前記第1の送電ユニットの状態を共振状態に切り替え、前記閾値より小さい場合には、非共振状態に切り替える切替制御部と、を備え、前記閾値は、前記第1の送電コイルと前記第1の送電コイルに隣接する第2の送電コイル(81b)との結合によって前記第1の送電コイルに生じる磁束を超える大きさとして設定されている。この形態によれば、切替制御部は、閾値を適正に設定し、第1の送電コイルを通る磁束の大きさにしたがって第1の送電ユニットの状態を共振状態、あるいは非共振状態とすることで、複数の送電ユニットの共振状態を順に切り替えて受電ユニットに給電することができる。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】移動体である小型モビリティ向けの送電装置を示す説明図である。
【
図2】移動体である小型モビリティを示す説明図である。
【
図3】送電装置の送電ユニットと小型モビリティの受電ユニットの概略回路図である。
【
図4A】コンデンサの容量を変更する構成の一例を示す説明図である。
【
図4B】コンデンサの容量を変更する構成の他の例を示す説明図である。
【
図4C】コンデンサの容量を変更する構成の他の例を示す説明図である。
【
図5】複数の送電ユニットを有する送電装置と小型モビリティの概略構成を示す説明図である。
【
図6】移動体が右方に移動するときの送電コイルと受電コイルの中心の位置と、送電コイルの電圧との関係を示す説明図である。
【
図7】受電コイルの位置と、送電コイルと受電コイルとの間の結合係数の関係を示す説明図である。
【
図8】受電コイルの位置と、2つの送電コイルの間の結合係数の関係を示す説明図である。
【
図9】2つの送電コイルと受電コイルを示す側面図である。
【
図10】2つの送電コイルと受電コイルを示す平面図である。
【
図11】2つの送電コイルの間隔Δxと2つの送電コイルの結合係数との関係を示すグラフである。
【
図12】送電コイルと受電コイル281の間隔と送電コイルと受電コイルの間の結合係数との関係を示すグラフである。
【
図13】1個の送電コイルを用いて給電する場合を示す説明図である。
【
図14】4個の送電コイルを用いて給電する場合を示す説明図である。
【
図15】1個給電と4個給電の場合の第1の送電コイルの電圧を比較する説明図である。
【
図16】第3実施形態における複数の送電ユニットを有する送電装置と小型モビリティの概略構成を示す説明図である。
【
図17】第4実施形態における送電装置の送電ユニットと小型モビリティの受電ユニットの概略回路図である。
【
図18】第5実施形態における小型モビリティ向けの送電装置を示す説明図である。
【
図19】第5実施形態において、1個の送電コイルから2台の小型モビリティに給電する場合の説明図である。
【
図20】第5実施形態において、4個の送電コイルから2台の小型モビリティに給電する場合の説明図である。
【
図21】送電コイルがx方向に一直線に並んでいる場合を示す説明図である。
【
図22】送電コイルの他の配置を示す説明図である。
【
図23】送電コイルの他の配置を示す説明図である。
【
図24】送電コイルが配置される深さを変更した例である。
【
図25】送電コイルの配置場所により、送電コイルの大きさ、ターン数、送電コイルの形状を変えた例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
・第1実施形態:
図1は、移動体である小型モビリティ200向けの送電装置100を示す説明図である。送電装置100は、交流電源10と、交流電力供給部20と、送電コイル81とを備える。本実施形態では、送電コイル81は、小型モビリティ200の移動範囲の少なくとも一部に配設されている。
図1に示す例では、送電コイル81は、平面上に、4×5の格子状に配置されており、コイルユニット88を構成している。交流電力供給部20と送電コイル81とは、伝送線路70により接続されている。小型モビリティ200は、例えば、工場において、部品等を運搬する運搬装置である。小型モビリティ200は、受電コイル281を有しており、受電コイル281を用いて送電コイル81から非接触で電力を受電し、工場内を移動する。
【0008】
図2は、移動体である小型モビリティ200を示す説明図である。小型モビリティ200は、バッテリ210と、交流電力供給部220と、受電コイル281と、を搭載している。受電コイル281は、送電コイル81と電磁的に結合し、送電コイル81から交流電力を受電する。交流電力供給部220は、受電コイル281が受電した交流電力を、直流に変換する。交流電力供給部220は、例えば、ブリッジ整流回路と平滑コンデンサ(図示せず)を備えている。バッテリ210は、交流電力供給部220により直流に変換された電力を蓄電する。バッテリ210に蓄電された電力は、小型モビリティ200を動作させる電力として用いられる。
【0009】
図3は、送電装置100の送電ユニット80と小型モビリティ200の受電ユニット280の概略回路図である。送電ユニット80は、交流電力供給部20と直列に接続された送電コイル81と、コンデンサ82を有している。
図3の回路図中の抵抗81rは、送電コイル81の寄生抵抗である。受電ユニット280は、直列に接続された受電コイル281と、コンデンサ282と、負荷221とを有している。負荷221は、小型モビリティ200の負荷であり、交流電力供給部220やバッテリ210の負荷を含んでいる。
【0010】
送電ユニット80の送電コイル81のインダクタンスをLg1、寄生抵抗をr1、コンデンサ82の容量をCg1、交流電力供給部20の電圧実効値をV1、発信周波数をf、角周波数をωとする。各周波数ωは、2πfである。また、受電ユニット280の受電コイル281のインダクタンスをLv、コンデンサ282の容量をCv、負荷221の電気抵抗をRLとする。
【0011】
送電ユニット80、受電ユニット280のそれぞれが単独で共振する場合を考える。送電コイル81とコンデンサ82とが直列に接続されている場合、共振とは、電圧、電流の振幅で考えれば、交流電力供給部20から出力される電圧、電流よりも送電コイル81もしくは受電コイル281で発生する電圧、電流が大きくなる状態を意味する。もしくは交流電力供給部20の出力における皮相電力よりも、送電コイル81、受電コイル281で発生する皮相電力の方が大きくなる状態を意味する。また、共振をインピーダンスで考えれば、共振とは、送電ユニット80のインピーダンスの虚数成分が低下する状態を意味する。なお、送電ユニット80のインピーダンスの虚数成分は、ゼロとなってもよい。
【0012】
送電ユニット80のインピーダンスZ1は、以下の式で表される。
Z1={r1+jωLg1+1/(jωCg1)}
共振状態では、インピーダンスZ1の虚数成分が低下する。インピーダンスZ1の虚数成分がゼロとなれば、インピーダンスZ1が極小となる。すなわち、
jωLg1+1/(jωCg1)=0
あるいは、上式の左辺をjで括って、
j{ωLg1-1/(ωCg1)}=0
となる。jで括った式からわかるように、送電コイル81のインピーダンスの虚数成分と、コンデンサ82のインピーダンスの虚数成分は、逆向きである。すなわち、送電コイル81のインピーダンスの虚数成分はプラスである。一方、コンデンサ82のインピーダンスの虚数成分はマイナスである。共振状態では、コイル81のプラスのインピーダンスの虚数成分とコンデンサ82のマイナスのインピーダンスの虚数成分とが相殺する結果、送電ユニット80のインピーダンスの虚数成分は小さくなる。そして、特定の角周波数ωで、電源側から見たときの送電ユニット80のインピーダンスの虚数成分がゼロとなる。送電ユニット80が単独で共振状態となり、インピーダンスの虚数成分がゼロとなるためのコンデンサ82の容量Cg1は、
Cg1=1/(ω2Lg1)
となる。
このときの送電ユニット80に流れる電流I1は、極大となり、
I1=V1/r1
となる。
同様に、受電ユニット280においても、受電ユニット280が共振状態となり、インピーダンスの虚数成分がゼロとなるためのコンデンサ282の容量Cvは、
Cv=1/(ω2Lv)
となる。
【0013】
小型モビリティ200が移動し、受電ユニット280の受電コイル281が送電コイル81に近づくと、送電コイル81と受電コイル281とが結合し、送電コイル81のインダクタンスが変化する。結合時の相互インダクタンスをL
mとすると、送電ユニット80のインピーダンスZ
1は
Z
1={r
1+jωL
m+1/(jωC
g1)}
となる。jωL
m+1/(jωC
g1)がゼロに近づくようにコンデンサ82の容量C
g1を設定すれば、共振を維持できる。なお、
図3に示すkは、結合係数である。結合係数kと相互インダクタンスLmとの間には、以下の関係がある。
L
m=k・{(L
g1・L
v)
1/2}
結合係数kは、送電コイル81と受電コイル281と相対的な位置により定まり、送電コイル81と受電コイル281の重なる面積が大きいほど結合係数kは、大きくなる。すなわち、送電コイル81と受電コイル281の重なる面積が大きくなると、結合係数kも大きくなり、相互インダクタンスL
mの大きさも大きくなる。
【0014】
送電コイル81と受電コイル281とが結合して共振状態となった場合、交流電力供給部20の出力電圧をV1とすると、送電ユニット80の電流I1は以下の式により示される。
I1=RLV1/[(ωLm)2]
【0015】
図4A、
図4B、
図4Cは、コンデンサ82の容量を変更する構成の一例を示す説明図である。
図4Aに示す例では、コンデンサ82は、並列に接続された2つのコンデンサ82a、82bを備え、コンデンサ82bには、直列に、容量変更部であるスイッチ83が接続されている。切替制御部85は、電圧センサ84を用いて送電コイル81の両端の電圧V
81を取得し、電圧V
81の値により、スイッチ83を駆動し、スイッチ83のオン・オフを切り替える。スイッチ83がオンの場合には、2つのコンデンサ82a、82bが並列に接続されるため、コンデンサ82の容量は大きくなる。一方、スイッチ83がオフの場合には、コンデンサ82aのみしか接続されないので、コンデンサ82の容量は、コンデンサ82aのみの容量であり、スイッチ83がオンの場合に比べて小さい。スイッチ83のオン時とオフ時のコンデンサ82の容量比は、例えば、約10倍以上であり、より好ましくは、約100倍である。容量比を約10倍、あるいは、約100倍とするためには、例えば、コンデンサ82bの容量を、コンデンサ82aの容量の約9倍以上、より好ましくは、約99倍以上とすればよい。なお、スイッチ83がオンの場合に、送電ユニット80が共振するように、2つのコンデンサ82a、82bの容量を設定してもよく、スイッチ83がオフの場合に、送電ユニット80が共振するように、2つのコンデンサ82a、82bの容量を設定してもよい。また、
図4Bに示すように、2つのコンデンサ82a、82bのどちらを接続するかを、スイッチ83aにより切り替える構成にしてもよい。また、
図4Cに示すように、2つのコンデンサ82a、82bを直列に接続し、コンデンサ82bをパスする配線を設け、コンデンサ82bをパスする配線上にスイッチ83cを設けてもよい。この場合、スイッチ83cがオンの場合には、コンデンサ82aのみが接続される。一方、スイッチ83cがオフの場合には、コンデンサ82aとコンデンサ82bが直列に接続され、スイッチ83cがオンの場合に比べコンデンサ82の容量が小さくなる。
【0016】
次に、
図3において、相互共振する場合について考える。相互共振とは、受電ユニット280の受電コイル281が送電コイル81に近づいて送電コイル81と受電コイル281とが結合したときに共振状態となることを意味する。単独共振とするか、相互共振とするかは、送電コイル81のインダクタンス、コンデンサ82の容量により決まる。
【0017】
相互共振では、送電コイル81と受電コイル281との相互インダクタンスLmの影響が加わるため、送電ユニット80のインピーダンスZ1は、以下の式で表される。
Z1={r1+jωLg1+jωLm+1/(jωCg1)}
共振状態では、
jωLg1+jωLm+1/(jωCg1)=0
あるいは、
j{ωLg1+ωLm-1/(ωCg1)}=0
となるため、
Cg1=1/{ω2(Lg1+Lm)}
となる。同様に、受電ユニット280が共振状態のときには、
Cv=1/{ω2(Lv+Lm)}
となる。
共振状態における送電ユニット80を流れる電流I1は、
I1=[1/RL+j{(Cg1(Lg1+Lm)}1/2/Lm)]1/2V1
となる。
なお、受電ユニット280の受電コイル281が送電コイル81の近傍におらず、送電コイル81と受電コイル281とが結合しない場合には、送電ユニット80は、共振状態とならず、送電ユニット80を流れる電流I1は、
I1=V1/[r1
2+{ωLg1-1/(ωCg1)}2]1/2
となる。ここで、送電ユニット80が共振状態でない場合には、ωLg1-1/(ωCg1)はゼロでないので、送電ユニット80を流れる電流I1は、共振状態に比べて減少する。
【0018】
図5は、複数の送電ユニット80を有する送電装置100と小型モビリティ200の概略構成を示す説明図である。送電装置100は、交流電源10と、交流電力供給部20と、複数の送電ユニット80と、を備える。
図5では、送電ユニット80を、送電ユニット80a、80b、80cとして示している。送電ユニット80を区別して説明する場合には、送電ユニット80a、80b、80cとし、送電ユニット80を区別して説明する必要がない場合には、「送電ユニット80」と呼ぶ。交流電力供給部20は、交流電圧を発生し、交流電圧を送電ユニット80に供給する装置である。交流電力供給部20は、力率改善回路30と、インバータ40と、フィルタ50と、を備える。力率改善回路30は、交流電源10から供給される入力電流に発生する高調波電流を抑制し、力率を1に近づける回路である。インバータ40は、直流電圧を、予め定めた周波数、例えば、85kHzの交流に変換する。フィルタ50は、コイル51とコンデンサ52とから構成されるL型フィルタと、コイル53とコンデンサ54とから構成されるL型フィルタとを直列に接続した構成を有する。交流電力供給部20には、送電ユニット80として、複数の送電ユニット・・・、80a、80b、80c・・・が並列に接続されている。送電ユニット80aは、直列に接続された送電コイル81aとコンデンサ82aを備えている。送電ユニット80bも同様に、直列に接続された送電コイル81bとコンデンサ82bを備えている。他の送電ユニット80c等も同様に、直列に接続された送電コイルとコンデンサを備えている。なお、送電コイル81についても、送電コイル81a、81b等を区別しない場合は、「送電コイル81」と呼ぶ。
【0019】
小型モビリティ200は、受電ユニット280と、交流電力供給部220と、バッテリ210と、を備える。受電ユニット280は、直列に接続された受電コイル281と、コンデンサ282と、を備える。
【0020】
各送電コイル81が
図5に示すように隣接して配置されていると、送電コイル81aは、受電コイル281と結合するだけでなく、隣接する送電コイル81bとも結合する。また、送電コイル81bは、受電コイル281と結合するだけでなく、隣接する送電コイル81a、81cとも結合する。送電コイル81cは、送電ユニット80cに設けられている送電コイルであるが、
図5では、図示の都合上、図示していない。送電コイル81aと受電コイル281との結合係数をk
g1vとし、送電コイル81bと受電コイル281との結合係数をk
g2vとし、送電コイル81aと、隣接する送電コイル81bとの結合係数をk
g1g2とする。結合係数をk
g1g2は、送電コイル81aと送電コイル81bの相対的な位置関係、例えば相対的距離により定まる。しかし、送電コイル81aと送電コイル81bは所定の位置に配置・固定されており、送電コイル81aと送電コイル81bの相対的な位置関係は変化しないので、結合係数をk
g1g2は、一定の値となる。ここで、相対的距離とは、例えば、2つのコイルの中心間距離で示される。一方、送電コイル81aと受電コイル281との結合係数k
g1vは、送電コイル81aと受電コイル281の相対的な位置関係により変化する。そのため、送電コイル81aと受電コイル281との相互インダクタンスL
maも変化する。その結果、送電コイル81aと受電コイル281の相対的な位置関係により送電ユニット80aのインピーダンスも変化し、送電コイル81aの両端の電圧V
81aも変化する。同様に、送電コイル81bと受電コイル281の相対的な位置関係により、送電コイル81bと受電コイル281との相互インダクタンスL
mbも変化し、送電ユニット80bのインピーダンスも変化し、送電コイル81bの両端の電圧V
81bも変化する。
【0021】
図6は、移動体が右方に移動するときの送電コイル81a、81b、81cと受電コイル281の中心の位置と、送電コイル81a、81b、81cの電圧との関係を示す説明図である。上側のグラフの電圧V
81a、V
81b、V
81cは、それぞれ送電コイル81a、81b、81cが共振している状態の送電コイルの両端の電圧を示している。下側のグラフの電圧Vn
81bは、送電コイル81aが受電コイル281と共振状態であるが、送電コイル81bは受電コイル281と共振状態でない、すなわち、非共振状態であるときの、送電コイル81bの両端の電圧を示している。同様に、電圧Vn
81cは、送電コイル81bが受電コイル281と共振状態であるが、送電コイル81cは受電コイル281と共振状態でない、すなわち、非共振状態であるときの、送電コイル81cの両端の電圧を示す。
図6に示す例では、小型モビリティ200は、図の右方向に移動する。小型モビリティ200の受電コイル281の中心P281は、・・・P3、P4、・・・P8・・・のように、図の右方向に移動する。送電コイル81a、81b、81cは、小型モビリティ200の移動方向、すなわち、受電コイル281の移動方向に沿って、順に並んでいる。
【0022】
共振状態における、電圧V81a、V81b、V81cは、受電コイル281がそれぞれ対応する送電コイルの中央の真上にある場合に最も大きくなり、対応する送電コイルの中央からずれるほど小さくなる。一方、電圧Vn81bは、以下の式により示される。
Vn81b=(kg1v×kg2v+kg1g2)×V81a+Z2×I2
上式において、kg1vは、送電コイル81aと受電コイル281との結合係数であり、kg2vは、送電コイル81bと受電コイル281との結合係数であり、kg1g2は、送電コイル81aと送電コイル81bの結合係数である。Z2は、送電コイル81bを含む送電ユニット80bのインピーダンスであり、I2は、送電コイル81bに流れる電流である。上式において、結合係数Kg1g2は、送電コイル81a、81bの配置位置で決まるため、受電コイル281の位置によらず一定値である。これに対し、結合係数kg1v、kg2v、及び電圧V81aは、受電コイル281の位置により変化する。なお、電コイル81bが共振していないため、電流I2は小さく、上式の第2項のZ2×I2は、第1項と比較して小さい。
【0023】
図7は、受電コイル281の位置と、送電コイル81a、81bと受電コイル281との間の結合係数k
g1v、k
g2vの関係を示す説明図である。ここで、送電コイル81a、81bは、送電コイル81aと送電コイル81b間の隙間が可能なかぎり小さくなるように配置されており、かつ、受電コイル281の大きさが複数の送電コイルに跨る大きさ、例えば、受電コイル281の大きさが送電コイル81a、81bの両方に跨がるような大きさとする。結合係数k
g1v、k
g2vは、受電コイル281の中心P281が、それぞれ、送電コイル81a、81bの中心P81a、P81bの真上にあるときには、正の極大値となる。送電コイル81a、81bの中心P81a、P81bの真上からずれると、小さくなる。なお、受電コイル281の中心P281が、送電コイル81a、81bの中心P81a、P81bの上から大きくずれると、負の値となる場合がある。しかし、本実施形態では、複数の送電ユニット80a、80bのうち少なくとも1つの送電ユニットの送電コイル81と、受電コイル281との結合係数、すなわち、結合係数k
g1v、k
g2vの少なくとも一方が、ゼロ以上、すなわち、正の値となるように、複数の送電ユニット80a、80bの送電コイル81a、81bを配置している。
【0024】
図8は、受電コイル281の位置と、2つの送電コイル81a、81bの間の結合係数k
g1g2の関係を示す説明図である。上記説明では、結合係数k
g1g2は、送電コイル81a、81bの位置により決まるため、一定の値となり、変化しないと説明した。しかし、受電コイル281を介して2つの送電コイル81a、81bが結合する場合がある。そのため、結合係数k
g1g2は、一定の値ではなく、受電コイル281の位置によりわずかに変化する場合がある。
【0025】
次に、上式のkg1v×kg2vについて考える。受電コイル281の中心P281が、送電コイル81aと送電コイル81bの中間位置P3の真上にあるときに、上式に示すkg1v×kg2vがもっとも大きくなる。そのため、非共振状態における電圧Vn81bは、受電コイル281の中心P281が送電コイル81aと送電コイル81bの中間位置P3の真上にあるときに、最も大きく、送電コイル81aと送電コイル81bの中間位置P3からずれるほど小さくなる。本実施例は上記の関係を用いて説明する。
【0026】
図6に示すように、小型モビリティ200が右方に移動し、受電コイル281も右方に移動するとする。受電コイル281が、送電コイル81aと送電コイル81bの間にあり、送電コイル81aを含む送電ユニット80aが共振状態であり、送電コイル81bを含む送電ユニット80bが非共振状態であるとする。送電ユニット80bが非共振状態であるときの送電コイル81bの電圧Vn
81bは、受電コイル281が送電コイル81aと送電コイル81bの中間位置P3にあるとき最も大きくなる。受電コイル281が
図6の中間位置P3から例えば右方に移動すると、送電コイル81bの電圧Vn
81bは、小さくなる。受電コイル281が位置P4に達すると、送電コイル81bの電圧Vn
81bは、閾値Vnthとなる。切替制御部85bは、送電ユニット80aが共振状態である場合において送電コイル81bの電圧Vn
81bが閾値Vnth以上から閾値Vnth未満に変化した場合、送電コイル81bを含む送電ユニット80bを共振状態に切り替える。送電コイル81aの電圧V
81aは、受電コイル281が位置P5に達すると、閾値Vth以下となる。切替制御部85aは、送電コイル81aの電圧V
81aが閾値Vth以下となると、送電コイル81aを含む送電ユニット80aを非共振状態に切り替える。
【0027】
送電ユニット80cが非共振状態であるときの送電コイル81cの電圧Vn
81cは、受電コイル281が送電コイル81bと送電コイル81cの中間位置P6にあるとき最も大きくなる。受電コイル281が
図6の中間位置P6から例えば右方に移動すると、送電コイル81cの電圧Vn
81cは、小さくなる。受電コイル281が位置P7に達すると、送電コイル81cの電圧Vn
81cは、閾値Vnthとなる。切替制御部85cは、送電ユニット80bが共振状態である場合において送電コイル81cの電圧Vn
81cが閾値Vnth以上から閾値Vnth未満に変化した場合、送電コイル81cを含む送電ユニット80cを共振状態に切り替える。送電コイル81bの電圧V
81bは、受電コイル281が位置P8に達すると、閾値Vth以下となる。切替制御部85bは、送電コイル81bの電圧V
81bが閾値Vth以下となると、送電コイル81bを含む送電ユニット80bを非共振状態に切り替える。
【0028】
小型モビリティ200が左方に移動し、受電コイル281も左方に移動する場合も同様である。この場合、送電コイル81aを含む送電ユニット80aが共振状態であり、送電コイル81bを含む送電ユニット80bが非共振状態であるとする。送電ユニット80bが非共振状態であるときの送電コイル81bの電圧Vn
81bは、受電コイル281が送電コイル81cと送電コイル81bの中間位置P6にあるとき最も大きくなる。受電コイル281が
図6Bの中間位置P6から例えば左方に移動すると、送電コイル81bの電圧Vn
81bは、小さくなる。すなわち、小型モビリティ200が左方に移動する場合には、
図6に示す電圧Vn
81cのグラフが送電コイル81bの電圧Vn
81bのグラフとなり、電圧Vn
81bのグラフが送電コイル81aの電圧Vn
81aのグラフとなる。
【0029】
図9は、2つの送電コイル81a、81bと受電コイル281を示す側面図であり、
図10は、2つの送電コイル81a、81bと受電コイル281を示す平面図である。2つの送電コイル81a、81bは、1辺の長さがaの略正方形をしており、Δxの間隔を空けて配置されている。送電コイル81a、81bの中心間距離は、a+Δxとなる。受電コイル281は、1辺の長さが2aの略正方形をしており、2つの送電コイル81a、81bからΔzだけ高い位置を移動する。
【0030】
図11は、2つの送電コイル81a、81bの間隔Δxと2つの送電コイル81a、81bの結合係数k
g1g2との関係を示すグラフである。
図12は、送電コイル81aと受電コイル281の間隔Δzと送電コイル81aと受電コイル281の間の結合係数k
1vとの関係を示すグラフである。なお、
図12は、受電コイル281の中心P281が、2つの送電コイル81a、81bの中間の位置P3にある場合を示している。
【0031】
2つの送電コイル81a、81bの結合係数k
g1g2は、2つの送電コイル81a、81bの間隔Δxが大きくなると小さくなり、間隔Δxが小さくなると大きくなる。送電コイル81aと受電コイル281の間の結合係数k
1vは、送電コイル81aと受電コイル281の間隔Δzが大きくなると小さくなり、間隔Δzが小さくなると大きくなる。したがって、これらの関係を用いて、所望の結合係数k
g1g2、k
1vを得ることができる。2つの送電コイル81a、81bの間隔Δx、及び、送電コイル81aと受電コイル281のz方向の間隔Δzの値を求めることができる。なお、
図11、
図12からわかるように、送電コイル81a、81bの結合係数k
g1g2は、送電コイル81aと受電コイル281の間の結合係数k
1vよりも小さい。これば、送電コイル81aを貫く磁束は±z方向に向かうため、送電コイル81aの磁束は、+z方向にある受電コイル281には通りやすい。これに対し、送電コイル81bは、送電コイル81aよりも+x方向にあり、z方向の高さが同じであるため、送電コイル81aを貫く磁束は、送電コイル81bを通り難いからである。
【0032】
図13は、1個の送電コイル81aを用いて給電する場合を示す説明図である。2つの送電コイル81a、81bの間の結合係数k
g1g2は、上述したように、2つの送電コイル81a、81bの間隔Δxより決まる。2つの送電コイル81a、81bの間隔Δxが決まれば、2つの送電コイル81a、81bの間の結合係数k
g1g2は、一定の値となる。一方、送電コイル81aと、受電コイル281の間の結合係数k
g1vは、送電コイル81aと受電コイル281のz方向の間隔Δzに加え、送電コイル81aに対する、受電コイル281のx方向、y方向の位置により変化する。送電コイル81aと受電コイル281のz方向の間隔Δzが一定の場合、送電コイル81aの中心と、受電コイル281の中心とが一致したときに、結合係数k
g1vは極大となり、受電コイル281の中心が送電コイル81aの中心からずれるほど、結合係数k
g1vは小さくなる。給電時には、結合係数k
g1vと結合係数k
g1g2は、以下の式を満たす。
k
g1g2<k
g1v
【0033】
本実施形態において、送電コイル81aと受電コイル281の相互インダクタンスをLg1v、受電コイル281に流れる電流をIvとすると、送電コイル81aの電圧V81aは、以下の式で示される。
V81a=Z1I1+jωLg1vIv
【0034】
以上、本実施形態によれば、給電時には、送電コイル81aと、受電コイル281の間の結合係数kg1vが、2つの送電コイル81a、81bの間の結合係数kg1g2よりも大きくなる結合関係を有している。切替制御部85aは、結合係数kg1vが結合係数kg1g2より大きくなる範囲において、第1の送電ユニット80aの状態を共振状態とすることで送電コイル81aから受電コイル281に給電し、結合係数kg1vが結合係数kg1g2以下の範囲において、第1の送電ユニット80aの状態を非共振状態とすることで送電コイル81aから受電コイル281への給電を停止できる。
【0035】
送電コイル81aと受電コイル281とを貫く磁束の強さは、結合係数kg1vに対応するので、切替制御部85aは、送電コイル81aの電圧V81aを用いて送電コイル81aと受電コイル281とを貫く磁束の強さを判断できる。すなわち、閾値は、第1の送電コイル81aと第2の送電コイル81bとの結合によって第1の送電コイル81aに生じる磁束を超える大きさとして設定されており、切替制御部85aは、送電ユニットの1つである第1の送電ユニット80aの第1の送電コイル81aに生じる磁束の大きさが、予め定めた閾値以上の場合に、第1の送電ユニット80aの状態を共振状態に切り替え、閾値より小さい場合には、非共振状態に切り替える。その結果、第1の送電ユニット80aの状態を共振状態とするか、非共振状態とするかの閾値Vthを明確にできる。この閾値は、例えば、第1の送電コイル81aと第2の送電コイル81bとの相対距離により設定される。第1の送電コイル81aと第2の送電コイル81bとの相対距離は、第1の送電コイル81aの中心と、第2の送電コイル81bの中心と、の中心間距離である。
【0036】
切替制御部85bは、非共振状態の送電コイル81bの電圧Vn81bを用いて、送電コイル81bを含む送電ユニット80bを共振状態に切り替え、切替制御部85aは、共振状態の送電コイル81aの電圧Vn81aを用いて、送電コイル81aを含む送電ユニット80aを非共振状態に切り替えることができる。
【0037】
・第2実施形態:
第1実施形態では、1つの送電コイル81を用いて給電するが、第2実施形態では、複数の送電コイル81を用いて同時に給電する点で相違する。
図14は、4個の送電コイル81a、81b、81c、81dを用いて給電する場合を示す説明図である。同時給電数は、例えば、送電コイル81a、81b、81c、81dの面積と、受電コイル281の面積比により決められる。例えば、送電コイル81a、81b、81c、81dが各辺の長さaの略正方形をしており、受電コイル281が辺の長さ2aの略正方形をしている場合には、受電コイル281は、送電コイル81aの4倍の面積を有しているため、同時給電数は、4個となる。面積とは、各コイルにおいて、コイル配線部分及びコイル配線よりも内側の面積の和を意味する。なお、4個よりも少ない2個あるいは3個の送電コイルを用いて同時給電してもよい。
【0038】
切替対象の送電コイルを第1の送電コイル81aと呼び、第1の送電コイル81aと隣接する給電中の第2の送電ユニット80b、80c、80dの送電コイルを第2の送電コイル81b、81c、81dと呼ぶ。第1の送電コイル81aは、受電コイル281と結合するだけでなく、第2の送電コイル81b、81c、81dとも結合する。第1の送電コイル81aと受電コイル281との結合係数をkg1v、第1の送電コイル81aと第2の送電コイル81b、81c、81dとの結合係数をそれぞれkg1g2、kg1g3、kg1g4とする。給電時には、結合係数kg1v、kg1g2、kg1g3、kg1g4は、以下の式を満たす。
kg1g2+kg1g3+kg1g4<kg1v
【0039】
本実施形態では、給電時には、第1の送電コイル81aと、受電コイル281の間の結合係数kg1vが、第1の送電コイル81aと第2の送電コイル81b、81c、81dの間の結合係数kg1g2、kg1g3、kg1g4の総和よりも大きくなるような結合関係を有しているので、切替制御部85aは、結合係数kg1vが結合係数kg1g2、kg1g3、kg1g4の総和より大きくなる範囲において、第1の送電ユニット80aの状態を共振状態とし、結合係数kg1vが結合係数kg1g2、kg1g3、kg1g4の総和以下の範囲において、第1の送電ユニット80aの状態を非共振状態とする。その結果、第1の送電ユニット80aの状態を共振状態とするか、非共振状態とするかの閾値Vthを明確にできる。また、第1の送電コイル81aと、受電コイル281の間の結合を、第1の送電コイル81aと、第2の送電コイル81bから81dとの間の結合よりも大きくした状態を維持しつつ、第1の送電コイル81aを順に切り替えて給電することができる。
【0040】
第1の送電コイル81aの電圧V81aは、第1の送電コイル81aに流れる電流をI1、第2の送電コイル81b、81c、81dに流れる電流をI2、I3、I4、第1の送電ユニット80aのインピーダンスZ1、及び第1の送電ユニット80aと第2の送電コイル81b、81c、81dとの間の相互インダクタンスLg1g2、Lg1g3、Lg1g4を用いて、以下の式により表される。
V81a=Z1I1+jω(Lg1g2I2+Lg1g3I3+Lg1g4I4)
第1の送電コイル81aの電圧V81aの最小値Vmin81aは、第1の送電コイル81aが、第2の送電コイル81b、81c、81dと結合しているが、受電コイル281とは結合していない状態で生じる。
【0041】
図15は、1個給電と4個給電の場合の第1の送電コイル81aの電圧V
81aを比較する説明図である。4個の送電コイル81a~81dを用いて給電する場合の第1の送電コイル81aの電圧V
81aの最小値Vmin
81aが、1つの送電コイル81aを用いて給電する場合の第1の送電コイル81aの電圧V
81aの最大値Vmax
81aよりも小さい場合には、第1の送電コイル81aの電圧V
81aは、受電コイル281の中心が移動すると、どこかで、1個給電の場合の最大値Vmax
81aを超える。そのため、最小値Vmin
81aから最大値Vmax
81aの間に、送電コイル81aの給電、非給電、すなわち、共振状態と非共振状態を切り替える閾値Vthが存在する。したがって、切替制御部85aは、第1の送電コイル81aと、受電コイル281の間の結合を、第1の送電コイル81aと、第2の送電コイル81b~81dと間の結合よりも大きくした状態を維持しつつ、第1の送電コイル81aの共振状態と非共振状態とを切り替えることができる。
【0042】
また、本実施形態では、
図15に示すように、第1の送電コイル81aと受電コイル281の相互インダクタンスとに起因するインピーダンスと第1の送電コイル81aの電流との積I
1と、第1の送電コイル81aと、第2の送電コイル81b、81c、81dと、の間の相互インダクタンスに起因するインピーダンスと、第2の送電コイル81b、81c、81dに流れる電流I
2、I
3、I
4との積の総和が、第1の送電コイル81aと受電コイル281の相互インダクタンスとに起因するインピーダンスと、受電コイル281に流れる電流Ivとの積よりも小さい。そのため、切替制御部85aは、位置ズレにより、各電流I
1、I
2、I
3、I
vに変化が生じても、その影響を受けることなく、第1の送電ユニット80aの共振状態と非共振状態とを切り替えることができる。
【0043】
上記説明では、4個の送電コイル81a~81dを用いて4個給電する場合を説明したが、送電コイルの給電数は、4個以外であってもよい。例えば、送電コイル81aを1辺aの六角形とし、送電コイル81aの各辺に1辺aの六角形の6個の送電コイル81bから81gを設けるハニカム状に送電コイルが並ぶように配置した場合、7個給電となる。また、このときの送電コイル81aの電圧V81aは、
V81a=Z1I1+jωLg1g2I2+jωLg1g3I3+jωLg1g4I4+jωLg1g5I5+jωLg1g6I6+jωLg1g7I7
で示される。4個の送電コイル81を用いる場合には、送電コイル81の形状を正方形とし、7個の送電コイル81を用いる場合には、送電コイル81の形状を正六角形とすることで、全ての送電コイル81を同一形状とした上で隙間無く配置できる。
【0044】
本実施形態では、上述したように、複数の送電ユニット80a、80bのうち少なくとも1つの送電ユニットの送電コイル81と、受電コイル281との結合係数、すなわち、結合係数kg1v、kg2vの少なくとも一方が、ゼロ以上、すなわち、正の値となるように、複数の送電ユニットが配置されている。そのため、切替制御部85aは、送電コイル81aの上に受電コイル281が存在し、結合係数kg1vが正の値となるときに、送電ユニット80aの状態を共振状態とするので、送電コイル81aの磁束が、受電コイル281以外に漏洩することを低減できる。送電コイル81bの磁束についても同様である。
【0045】
・第3実施形態:
図16は、第3実施形態における複数の送電ユニット80を有する送電装置100と小型モビリティ200の概略構成を示す説明図である。第3実施形態の構成は、第1実施形態の構成とほぼ同じであるが、以下の点で第1実施形態と相違する。
(1)第1実施形態では、送電ユニット80aの状態を共振状態あるいは非共振状態に切り替えているが、第3実施形態では、送電ユニット80aの状態を送電状態あるいは非送電状態に切り替える。
(2)第1実施形態では、切替制御部85が送電ユニット80aの状態を共振状態、非共振状態に切り替えるときの閾値は、隣接する送電コイルとの結合により第1の送電コイル81aに生じる磁束の大きさにより定義しているが、第3実施形態では、磁気的に結合する送電コイルとの結合により第1の送電コイル81aに生じる磁束の大きさにより定義している。
【0046】
先ず、送電状態と非送電状態について説明する。非送電状態とは、第1の送電コイル81aが発生させる磁束が、例えば、国際非電離放射線防護委員会(ICNIRP)が規定する、人に影響を与えない人体暴露の基準値以下である状態を意味する。この状態では、第1の送電コイル81aから受電コイル282に十分な電力を送電できない。送電状態とは、第1の送電コイル81aに十分な磁束を発生させ、受電コイル282に十分な電力を給電できる状態を意味する。この送電状態における磁束は、人に影響を与える可能性があるので、送電装置100は、例えば、無人の工場で使用される。有人の工場であれば、人が磁気シールドされた場所で作業することで、磁束の人への影響を抑制してもよい。
【0047】
送電ユニット80aの状態を、共振状態に切り替えることと、送電状態に切り替えること、との違いを説明する。
送電ユニット80aの状態を共振状態に切り替えるとは、コンデンサ82の容量Cg1を変化させることで、以下の送電ユニット80aのインピーダンスの式の虚数成分jωLm+1/(jωCg1)がゼロになるようにすることを意味する。
Z1={r1+jωLm+1/(jωCg1)}
これに対し、送電ユニット80aの状態を、送電状態に切り替えることとは、コンデンサ82の容量Cg1を変化させることで、上式の虚数成分jωLm+1/(jωCg1)の大きさを、予め定められた大きさ以下にすることを意味する。したがって、送電ユニット80aの状態を共振状態に切り替える場合も、送電状態に切り替える場合も、コンデンサ82の容量Cg1を変化させる点では同じである。しかし、共振状態よりも、送電状態の方がコンデンサ82の容量Cg1の範囲が広く、送電ユニット80aの状態を共振状態とすれば、送電状態となるが、送電状態としても、共振状態となると限らない、という関係にある。
【0048】
次に隣接と結合の違いについて説明する。送電コイル81aが発する磁束の到達距離は無限大である。そのため、送電コイル81aは、
図16に示すように、隣接する送電コイル81bに加え、隣接する送電コイル81bを間に挟んで遠方にある送電コイル81cとも磁気的に結合する。したがって、隣接する送電コイルは、磁気的に結合するが、磁気的に結合する送電コイルであっても、隣接する送電コイルとは限らない、という関係にある。
【0049】
第3実施形態では、切替制御部85が送電ユニット80aの状態を送電状態、非送電状態に切り替えるときの閾値を、第1の送電コイル81aと、第1の送電コイル81aに磁気的に結合する少なくとも1つ以上の第2の送電ユニット80bの第2の送電コイル81bと、の結合によって、第1の送電コイル81aに生じる磁束を超える大きさとして設定した。なお、送電コイル81aと送電コイル81cの間の結合係数kg1g3は、送電コイル81aと送電コイル81bの間の結合係数kg1g2よりも極めて小さい。すなわち、隣接していない送電コイル81cとの結合係数は、隣接している送電コイル81bとの結合係数よりも極めて小さい。したがって、隣接していない送電コイル81cは送電コイル81aと磁気的に結合するが、送電コイル81cとの結合により送電コイル81aに生じる磁束は極めて小さい。したがって、第3実施形態のように、閾値を、第1の送電コイル81aと、第1の送電コイル81aに磁気的に結合する少なくとも1つ以上の第2の送電ユニット80bの第2の送電コイル81bと、の結合によって、第1の送電コイル81aに生じる磁束を超える大きさとして設定するのが好ましいが、実用上は、第1実施形態のように、閾値を、隣接する送電コイル81bとの結合によって第1の送電コイル81aに生じる磁束を超える大きさとしても差し支えない。第2の送電コイルを、送電コイル81cを含まず、第1の送電コイル81aに隣接している送電コイル81bとしてもよい。この閾値は、例えば、第1の送電コイル81aと第2の送電コイル81bとの相対距離により設定される。第1の送電コイル81aと第2の送電コイル81bとの相対距離は、第1の送電コイル81aの中心と、第2の送電コイル81bの中心と、の中心間距離である。
【0050】
以上、第3実施形態によれば、切替制御部85aは、送電ユニットの1つである第1の送電ユニット80aの第1の送電コイル81aに生じる磁束の大きさが、予め定めた閾値以上の場合に、第1の送電ユニット80aの状態を送電状態に切り替え、閾値より小さい場合には、非送電状態に切り替えるので、より適切な送電、非送電の切替制御ができる。また、閾値は、第1の送電コイル81aと、第1の送電コイル81aに磁気的に結合する少なくとも1つ以上の第2の送電ユニット80bの第2の送電コイル81bと、の結合によって、第1の送電コイル81aに生じる磁束を超える大きさとして設定されるので、より正確に、第1の送電ユニット80aの送電状態、非送電状態を切り替えることができる。
【0051】
なお、第1実施形態における、共振状態、非共振状態の切り替えにおいて、第3実施形態の閾値を用いてもよく、第3実施形態における、送電状態、非送電状態の切り替えにおいて、第1実施形態の閾値を用いてもよい。
【0052】
・第4実施形態:
図17は、第4実施形態における送電装置101の送電ユニット801と小型モビリティ200の受電ユニット280の概略回路図である。第4実施形態では、送電ユニット801では、送電コイルが送電コイル81と、送電コイル81sに分割され、コンデンサもコンデンサ82と82sに分割されている分割コイル共振方式を採用している。送電コイル81とコンデンサ82とが直列に接続され、送電コイル81sとコンデンサ82sとが直列に接続されている。なお、小型モビリティ200の回路構成は、第1実施形態も第4実施形態も同じである。
【0053】
第4実施形態において、送電コイル81のインダクタンスをLg1、送電コイル81sのインダクタンスをLs、コンデンサ82の容量をCg1、コンデンサ82sの容量をCs、受電コイル282のインダクタンスをLv、コンデンサ282に容量をCv、送電コイル81と送電コイル81sの結合係数をk1s、送電コイル81と受電コイル281の結合係数をk12、送電コイル81sと受電コイル281の結合係数をks2とする。
送電ユニット801が単独で共振状態となるためのコンデンサ82の容量Cg1、及びコンデンサ82sの容量Csは、それぞれ第1実施形態と同様であり、以下のようになる。
Cg1=1/(ω2Lg1)
Cs=1/(ω2Ls)
また、受電回路280が共振するためのコンデンサ282の容量Cvは、
Cv=1/{ω2Lv(1-2ks2k12/k1s)}
となる。
【0054】
送電コイル81、81sと受電コイル281とが結合し共振した場合、交流電力供給部20の出力電圧をV1とすると共振状態における電流I1は、以下のように示される。
I1=(ks2/k1s)2(Lv/L1g)(V1/RL)
【0055】
次に、第4実施形態において、受電ユニット280が送電ユニット801の近傍になく、送電コイル81、81sと受電コイル281とが結合しない場合を考える。このとき、送電コイル81sの寄生抵抗をrs、送電コイル81と送電コイル81sの相互インダクタンスをLsmとすると、送電コイル81に流れる電流I0は、以下のように示される。
I0={rs/(ωLsm)2}V1
【0056】
送電コイル81、81sと受電コイル281とが結合しない場合の電流I0は、共振が崩れ、インピーダンスZ1が大きくなるので、送電コイル81、81sと受電コイル281とが共振あるいは結合したときに送電コイル81に流れる電流I1よりも小さくなる。その結果、共振状態あるいは、結合状態の時には、送電コイル81が発生させ、受電コイル282を通過する磁束が大きくなると言える。
【0057】
以上、第4実施形態よれば、分割コイル共振方式を用いるので、送電コイル81に受電コイル281が近づいた際には、送電コイル81に流れる電流を多くして、受電コイル282を透過する磁束の量を増大させることができ、一方、送電コイル81から受電コイル281が遠ざかっている場合には、送電コイル81に流れる電流を少なくできる。
【0058】
・第5実施形態
図18は、第5実施形態における小型モビリティ向けの送電装置100を示す説明図である。第1実施形態では、送電装置100は、1台の小型モビリティ200に対して送電を行うが、第5実施形態では、送電装置100は、複数台の小型モビリティ200、200xに対して送電を行う。
【0059】
図19は、第5実施形態において、1個の送電コイル81aから2台の小型モビリティ200、200xに給電する場合の説明図である。
図19では、3つの送電コイル81a、81b、81xと、2つの受電コイル281、281xを図示している。3つの送電コイル81a、81b、81xのインダクタンスをそれぞれL
g1、L
g2、L
gxとする。また、小型モビリティ200、200xの受電コイル281、281xのインダクタンスをL
v、L
vxとする。送電コイル81aと、送電コイル81bとの結合係数をk
g1g2、送電コイル81aと受電コイル281、281xとの結合係数をそれぞれk
g1v1、k
g1vxとする。また、送電コイル81xを経由した送電コイル81aと受電コイル281xとの結合係数をk
g1gvxとする。給電時には、結合係数k
g1v1、k
g1g2、k
g1vx、k
g1gvxは、以下の式を満たす。
k
g1g2+k
g1gvx+k
g1vx<k
g1v1
1個の小型モビリティ200に給電する場合には、第1実施形態で説明したように、以下の式
k
g1g2<k
g1v
を満たしていることから、両者を比較すると、小型モビリティの数が複数台ある場合には、k
g1gvx+k
g1vxが増加する小型モビリティ200xの台数分だけ増加する。
【0060】
また、送電コイル81aに流れる電流をI1、受電コイル281に流れる電流をIv、送電コイル81xに流れる電流をIx、受電コイル281xに流れる電流をIvxとすると、送電コイル81aの電圧V81aは、以下の式で示される。
V81a=Z1I1+jωLg1vIv+jωLgxIgx+jωLvxIvx
同様に、小型モビリティの数が1台の場合と比較すると、小型モビリティの数が複数台ある場合には、jωLgxIgx+jωLvxIvxが増加する小型モビリティ200xの台数分だけ増加する。
【0061】
本実施形態では、給電時には、第1の送電コイル81aと、受電コイル281の間の結合係数kg1v1が、結合係数kg1v1が結合係数kg1g2、kg1vx、kg1gvxの総和よりも大きくなる範囲において、第1の送電ユニット80aの状態を送電状態とし、結合係数kg1v1が結合係数kg1g2、kg1gvx、kg1vxの総和以下の範囲において、第1の送電ユニット80aの状態を非送電状態とする。
【0062】
また、送電コイル81aと受電コイル281とを貫く磁束の強さは、結合係数kg1v1に対応し、送電コイル81aの電圧V81aにも対応するので、切替制御部85aは、送電コイル81aの電圧V81aを用いて送電コイル81aと受電コイル281とを貫く磁束の強さを判断できる。すなわち、切替制御部85aは、送電ユニットの1つである第1の送電ユニット80aの第1の送電コイル81aに生じる磁束の大きさが、予め定めた閾値以上の場合に、第1の送電ユニット80aの状態を共振状態に切り替え、閾値より小さい場合には、非共振状態に切り替える。その結果、第1の送電ユニット80aの状態を送電状態とするか、非送電状態とするかの閾値Vthを明確にできる。
【0063】
図20は、第5実施形態において、4個の送電コイルから2台の小型モビリティ200、200xに給電する場合の説明図である。
図20では、5つの送電コイル81a、81b、81c、81d、81xと、2つの受電コイル281、281xを図示している。5つの送電コイル81a、81b、81c、81d、81xのインダクタンスをそれぞれL
g1、L
g2、L
g3、L
g4、L
gxとする。また、小型モビリティ200、200xの受電コイル281、281xのインダクタンスをL
v、L
vxとする。送電コイル81aと、送電コイル81b、81c、81dとの結合係数をk
g1g2、k
g1g3、k
g1g4、送電コイル81aと受電コイル281、281xとの結合係数をそれぞれk
g1v1、k
g1vxとする。また、送電コイル81xを経由した送電コイル81aと受電コイル281xとの結合係数をk
g1gvxとする。給電時には、結合係数k
g1v1、k
g1g2、k
g1g3、k
g1g4、k
g1vx、k
g1gvxは、以下の式を満たす。
k
g1g2+k
g1g3+k
g1g4+k
g1gvx+k
g1vx<k
g1v1
1個の小型モビリティ200に給電する場合には、第1実施形態で説明したように、以下の式
k
g1g2+k
g1g3+k
g1g4<k
g1v
を満たしていることから、両者を比較すると、小型モビリティの数が複数台ある場合には、k
g1gvx+k
g1vxが増加する小型モビリティ200xの台数分だけ増加する。
【0064】
また、送電コイル81aに流れる電流をI1、受電コイル281に流れる電流をIv、送電コイル81xに流れる電流をIx、受電コイル281xに流れる電流をIvxとすると、送電コイル81aの電圧V81aは、以下の式で示される。
V81a=Z1I1+jω(Lg1g2I2+Lg1g3I3+Lg1g4I4+LgxIgx+LvxIvx)
同様に、小型モビリティの数が複数台ある場合には、jωLgxIgx+jωLvxIvxが小型モビリティ200xの台数分だけ増加する。なお、小型モビリティ200が、複数の受電コイルを有していてもよい。小型モビリティ200が複数の受電コイルを有している場合の考え方は、小型モビリティの数が複数台ある場合の考え方と同様であり、jωLgxIgx+jωLvxIvxが受電コイルの数だけ増加する。
【0065】
本実施形態では、給電時には、第1の送電コイル81aと、受電コイル281の間の結合係数kg1v1が、結合係数kg1v1が結合係数kg1g2、kg1g3、kg1g4、kg1gvx、kg1vxの総和よりも大きくなる範囲において、第1の送電ユニット80aの状態を送電状態とし、結合係数kg1v1が結合係数kg1g2、kg1g3、kg1g4、kg1gvx、kg1vxの総和以下の範囲において、第1の送電ユニット80aの状態を非送電状態とする。
【0066】
また、送電コイル81aと受電コイル281とを貫く磁束の強さは、結合係数kg1v1に対応し、送電コイル81aの電圧V81aにも対応するので、切替制御部85aは、送電コイル81aの電圧V81aを用いて送電コイル81aと受電コイル281とを貫く磁束の強さを判断できる。すなわち、切替制御部85aは、送電ユニットの1つである第1の送電ユニット80aの第1の送電コイル81aに生じる磁束の大きさが、予め定めた閾値以上の場合に、第1の送電ユニット80aの状態を共振状態に切り替え、閾値より小さい場合には、非共振状態に切り替える。その結果、第1の送電ユニット80aの状態を送電状態とするか、非送電状態とするかの閾値Vthを明確にできる。
【0067】
・他の実施形態:
図21は、送電コイル81がx方向に一直線に並んでいる場合を示す説明図である。上記実施形態では、複数の送電コイル81が格子状に配置されている例を説明した。
図21に示す例では、送電コイル81がx方向に一直線に並んでおり、小型モビリティ200は、x方向に移動する。x方向に並ぶ複数の送電コイル81は、小型モビリティ200の受電コイル281がx方向に移動する際に、順次送電できる。すなわち、この送電コイル81の並びにより、複数の送電コイル81から受電コイル281に簡素に連続給電できる。
【0068】
図22は、送電コイル81の他の配置を示す説明図である。
図22に示す例では、x方向に一直線に並ぶように線上に配置された送電コイル81と、x方向、y方向の2次元の格子状に配置されたが送電コイル81とを備える。このように、送電コイル81は、工場のレイアウトに合わせて自由に配置可能である。
【0069】
図23は、送電コイル81の他の配置を示す説明図である。
図23に示す例は、
図22に示す例から一部の送電コイル81を除いて、送電コイル81が配置されている。すなわち、
図23に示す配置は、送電コイル81から受電コイル281への給電計画に合わせて送電コイル81を配置したものである。給電が必要でない領域に送電コイル81を配置しないことで、コイル配置自由度の向上、コストの低減を図ることができる。
【0070】
図24は、送電コイル81が配置される深さを変更した例である。
図24に示す例では、接地面の浅い位置に配置された送電コイル81hと、深い位置に配置された送電コイル81lとが示されている。また、2台の小型モビリティ200、200zが示されている。小型モビリティ200の受電コイル281の地上高は低く、小型モビリティ200zの受電コイル281zの地上高は高くなっている。
【0071】
深い位置に配置された送電コイル81lと小型モビリティ200の受電コイル281との間隔は、h1であり、
図12に示すように、送電コイル81lと受電コイル281の結合係数を大きくできるので、送電コイル81lから受電コイル281に十分な電力を送電できる。これに対し、深い位置に配置された送電コイル81lと小型モビリティ200zの受電コイル281zとの間隔は、h2であり、
図12に示すように、送電コイル81lと受電コイル281zの結合係数を大きくできないので、十分な電力を送電できない。一方、浅い位置に配置された送電コイル81hは、全ての小型モビリティ200、200zの受電コイル281、281zとの間隔が狭いため、送電コイル81hと受電コイル281、281zとの結合係数を大きくでき、受電コイル281、281zに十分な電力を送電できる。
【0072】
図24に示す例によれば、受電コイル281、281zの高さの異なる複数の小型モビリティ200、200zの混在を可能とできる。そして、受電アンテナ281の地上高が低い小型モビリティ200に対しては、送電コイル81l、81hの両方から給電し、受電アンテナ281zの地上高が高い小型モビリティ200zに対しては、送電コイル81hから給電する。その結果、受電アンテナ281の地上高が低い小型モビリティ200に対する給電頻度を増加させることができる。
【0073】
図25は、送電コイルの配置場所により、送電コイルの大きさ、ターン数、送電コイルの形状を変えた例を示す説明図である。送電コイル81の左側に配置されている送電コイル81sは、大きさが送電コイル81に比べて小さい。そのため、送電コイル81sが受電コイル281と結合する場合の結合係数が小さくなる。その結果、送電コイル81sから受電コイル281への給電量が小さい。送電コイル81の左側に配置されている送電コイル81mは、大きさは送電コイル81と同じであるが、ターン数が多い。そのため、送電コイル81mが受電コイル281と結合する場合の結合係数が大きくなる。その結果、送電コイル81mから受電コイル281への給電量が大きい。このように、送電コイルの大きさやターン数を変えることで、送電コイルから受電コイルへの給電量を変更できる。
【0074】
送電コイル81mの右に配置されている送電コイル81eは、形状が円形をしている。送電コイルの配線長が同じ場合、形状が円形の送電コイル81eの方が矩形の送電コイル81よりも送電コイルの内側の面積を大きくできる。そのため、送電コイルの配線長が同じ場合、送電コイル81eの方が、送電コイル81よりも結合係数を大きくでき、給電量を大きくできる。なお、送電コイルを矩形の送電コイル81とすると、送電コイルの配置領域に、隙間無く送電コイル81を並べ易い。その結果、受電コイル281が送電コイル81と重ならない面積を小さくできる。
【0075】
上記各実施形態では、送電コイル81aの電圧を用いて、送電コイル81aと、受電コイル281との結合、送電コイル81aと、送電コイル81b等との結合を判断しているが、送電コイル81aに流れる電流を用いて、送電コイル81aと、受電コイル281との結合、送電コイル81aと、送電コイル81b等との結合を判断してもよい。
【0076】
上記各実施形態では、コンデンサ82の容量を切り替えることで、送電ユニット80のインピーダンスを変えて共振状態と、非共振状態とを切り替え、あるいは送電状態と非送電状態とを切り替えているが、送電コイル81のインダクタンスを切り替えることで、インピーダンスを変えて送電ユニット80の共振状態と、非共振状態とを切り替え、あるいは送電状態と非送電状態とを切り替える構成としてもよい。
【0077】
上記各実施形態では、切替制御部85を用いて、コンデンサ82の容量を切り替えていたが、コンデンサ82として可変容量コンデンサを用いてもよい。例えば、コンデンサの磁束を受けたことによる力を用いて、コンデンサを構成する2枚の極板の間隔を変えることで、コンデンサの容量を変えてもよい。
図3に示す例では、コンデンサ82aと82bは並列に接続されているが、直列に接続する構成であってもよい。また、コンデンサ82として、コンデンサ82aと82bを用いているが、3個以上のコンデンサを用い、直列接続、あるいは並列接続されるコンデンサの数を切り替えるようにしてもよい。スイッチ83は、リレーのような物理的に接続、切断を切り替えるものでもよく、半導体スイッチのように、電気的な接続、切断を切り替えるものであってもよい。
【0078】
送電コイル81のインダクタンスを切り替える場合、スイッチにより接続されるコイルの数を切り替えてもよく、インダクタンスの大きさを変えることができる可変インダクタを用いてもよい。例えば、可変インダクタとして、コア材の透磁率が変化するコイルを用いてもよい。スイッチにより、コイルのターン数を変えてもよく、複数のコイルを直列または並列の接続し、スイッチにより接続されるコイルの数を変えてもよい。コンデンサの容量の切り替えと同様に、スイッチは、リレーのような物理的に接続、切断を切り替えるものでもよく、半導体スイッチのように、電気的な接続、切断を切り替えるものであってもよい。
【0079】
送電回路80に可変抵抗器を設け、可変抵抗器の電気抵抗値を変えることでインピーダンスを変えてもよい。可変抵抗器の電気抵抗は、インピーダンスの実数成分である。可変抵抗器は、内部の抵抗体の長さ、幅を変化させる機構を有する。可変抵抗器として、例えば、ポテンショメータを用いてもよい。また、複数の抵抗器を直列または並列に配置し、スイッチにより送電回路80に接続される抵抗器の数を切り替えてもよい。このスイッチは、コンデンサの容量の切り替え、コイルのインダクタンスの切り替えと同様に、リレーのような物理的に接続、切断を切り替えるものでもよく、半導体スイッチのように、電気的な接続、切断を切り替えるものであってもよい。可変容量コンデンサ、可変インダクタ、可変抵抗器は、可変インピーダンスデバイスの一例であり、可変インピーダンスデバイスの少なくとも1つを用いて送電回路80のインピーダンスを変えて、共振状態と非共振状態を切り替え、あるいは、送電状態と非送電状態とを切り替えてもよい。
【0080】
上記各実施形態では、送電コイルの電圧、電流を測定することで、磁束を間接的に測定しているが、ホールセンサなどの磁気センサを用いて、磁束を測定してもよい。
【0081】
なお、本開示は、種々の形態で実現することが可能であり、例えば、非接触給電システムの他、送電装置等の形態で実現することができる。
【0082】
本開示は、上述の実施形態に限られるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において種々の構成で実現することができる。例えば、発明の概要の欄に記載した各形態中の技術的特徴に対応する実施形態の技術的特徴は、上述の課題の一部又は全部を解決するために、あるいは、上述の効果の一部又は全部を達成するために、適宜、差し替えや、組み合わせを行うことが可能である。また、その技術的特徴が本明細書中に必須なものとして説明されていなければ、適宜、削除することが可能である。
【符号の説明】
【0083】
10…交流電源、20…交流電力供給部、30…力率改善回路、40…インバータ、50…フィルタ、51、53…コイル、52、54…コンデンサ、70…伝送線路、80、80a、80b…送電ユニット、81、81a、81b、81c、81d…送電コイル、81r…抵抗、82、82a、82b…コンデンサ、83…スイッチ、84…電圧センサ、85、85a、85b…切替制御部、88…コイルユニット、100…送電装置、200…小型モビリティ、210…バッテリ、220…交流電力供給部、221…負荷、280…受電ユニット、281…受電コイル、282…コンデンサ