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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022184733
(43)【公開日】2022-12-13
(54)【発明の名称】給電システム
(51)【国際特許分類】
   H02J 50/90 20160101AFI20221206BHJP
   H02J 50/12 20160101ALI20221206BHJP
   B60M 7/00 20060101ALI20221206BHJP
   B60L 5/00 20060101ALI20221206BHJP
   B60L 53/122 20190101ALI20221206BHJP
   H02J 50/40 20160101ALN20221206BHJP
【FI】
H02J50/90
H02J50/12
B60M7/00 X
B60L5/00 B
B60L53/122
H02J50/40
【審査請求】未請求
【請求項の数】21
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022058371
(22)【出願日】2022-03-31
(31)【優先権主張番号】P 2021090828
(32)【優先日】2021-05-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】110000028
【氏名又は名称】弁理士法人明成国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中屋敷 侑生
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 将也
(72)【発明者】
【氏名】山口 宜久
(72)【発明者】
【氏名】高橋 英介
【テーマコード(参考)】
5H105
5H125
【Fターム(参考)】
5H105AA20
5H105BA09
5H105BB05
5H105CC02
5H105CC19
5H105DD10
5H105EE15
5H105GG03
5H125AA01
5H125AC04
5H125AC12
5H125AC27
5H125BE01
5H125EE51
(57)【要約】
【課題】給電できない状態では給電ロスを低減し、給電できる状態では効率よく給電する。
【解決手段】給電システム100は、地上側に設けられた送電コイル41と送電側のコンデンサ43とを含み、第1のインピーダンスと、第1のインピーダンスより低い第2のインピーダンスのいずれかに切り替えられる送電回路40と、送電回路に高周波電力を供給する高周波生成回路30と、送電回路と車両に設けられた受電コイルを含む受電回路との結合の程度に対応した物理量を測定する測定部21と、測定された前記物理量によって、結合の程度が予め定めた大きさ未満と判断された間は、送電回路のインピーダンスを第1のインピーダンスする第1状態とし、結合の程度が予め定めた大きさ以上と判断された間は、インピーダンスを第2のインピーダンスする第2状態とし、送電回路から受電回路への送電を行なう制御部20と、を備える。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行中の車両に非接触で給電する給電システムであって、
地上側に設けられた送電コイル(41)とコンデンサ(43)とを含み、第1のインピーダンスと、前記第1のインピーダンスより低い第2のインピーダンスのいずれかのインピーダンスに切り替えられる送電回路(40)と、
前記送電回路の前記送電コイルに高周波電力を供給する高周波生成回路(30)と、
前記送電回路と前記車両に設けられた受電コイルを含む受電回路との結合の程度に対応した物理量を測定する測定部(21)と、
測定された前記物理量によって、前記結合の程度が予め定めた大きさ未満であると判断された間は、前記送電回路の前記インピーダンスを前記第1のインピーダンスとする第1状態とし、前記結合の程度が予め定めた大きさ以上であると判断された間は、前記インピーダンスを前記第2のインピーダンスとする第2状態とし、前記送電回路から前記受電回路への送電を行なう制御部(20)と、
を備える、給電システム。
【請求項2】
請求項1に記載の給電システムであって、
前記送電回路と前記受電回路との前記結合の程度に対応した前記物理量は、前記送電回路と前記受電回路との間の共振の程度である、給電システム。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の給電システムであって、
前記送電コイルと前記受電コイルとの距離であるコイル間距離が第1距離である場合の前記物理量が第1の値であり、前記コイル間距離が第1距離よりも小さい第2距離である場合の前記物理量が前記第1の値よりも大きな第2の値となる、給電システム。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の給電システムであって、
前記送電回路は、前記第1状態、前記第2状態のいずれにおいても、前記受電コイルと前記送電コイルとが最接近したときに前記物理量が極大となる、給電システム。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の給電システムであって、
前記送電回路は、前記コンデンサとして複数のコンデンサ(42、43)を有し、
前記複数のコンデンサの一部を接続、非接続とするスイッチ(SW1)を備え、
前記制御部は、前記スイッチを切り替えることで、前記第1状態と、前記第2状態とを切り替える、給電システム。
【請求項6】
請求項1から請求項4のいずれかに記載の給電システムであって、
前記送電回路は、前記コンデンサとして可変容量コンデンサを有し、
前記可変容量コンデンサの容量を変えることで、前記第1状態と、前記第2状態とを切り替える、給電システム。
【請求項7】
請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の給電システムであって、
前記送電コイル(47)は、前記送電回路に接続可能なタップ(48)を有し、
前記制御部は、前記タップを前記送電回路に接続するか、しないかにより、前記送電コイルのインダクタンスを変更し、前記第1状態と、前記第2状態とを切り替える、給電システム。
【請求項8】
請求項1から請求項7のいずれか一項に記載の給電システムであって、
前記送電回路は、前記第1状態に設定されており、
前記第1状態において、前記受電コイルと前記送電コイルとが接近して前記物理量が第1の閾値(Vth_off_H)以上の場合には、前記制御部は、前記送電回路を前記第2状態に切り替えて前記送電コイルから前記受電コイルに電力を給電させる給電状態とし、
前記第2状態において、前記受電コイルが前記送電コイルから遠ざかって前記物理量が前記第1の閾値よりも大きな第2の閾値(Vth_on_L)未満となった場合には、前記制御部は、前記送電回路を前記第1状態に切り替えて前記送電コイルから前記受電コイルへの電力の給電を停止させる、給電システム。
【請求項9】
請求項8に記載の給電システムであって、
前記測定部は、前記物理量として複数種類の物理量を測定し、
前記制御部は、前記送電回路の状態が、前記第2状態である場合には、前記第1状態から前記第2状態への切り替えで用いた物理量と異なる物理量を用いて前記第2状態から前記第1状態への切り替えを行う、給電システム。
【請求項10】
請求項8または請求項9に記載の給電システムであって、
前記第2状態にされた後の予め定められた期間内に、前記物理量が前記第2の閾値よりも大きな第3の閾値(Vth_on_H)以上とならない場合には、前記制御部は、前記送電回路を前記第1状態に切り替えて前記送電コイルから前記受電コイルへの電力の給電を停止させる、給電システム。
【請求項11】
請求項1から請求項10のいずれか一項に記載の給電システムであって、
前記制御部は、前記送電回路の状態を前記第2状態から前記第1状態に切り替えた場合、オフ保持時間(Toff_prsv)の間、前記送電回路の状態を前記第1状態に維持する、給電システム。
【請求項12】
請求項11に記載の給電システムであって、
前記制御部は、前記送電回路の状態を前記第1状態に維持する前記オフ保持時間を、前記第1状態に切り替える前の前記第2状態の時間の長さ(Ton)に応じて設定する、給電システム。
【請求項13】
請求項11に記載の給電システムであって、さらに、
前記送電回路の温度を測定する温度センサを有し、
前記制御部は、前記送電回路の状態を前記第1状態に維持する前記オフ保持時間を、前記送電回路の状態を前記第2状態から前記第1状態に切り替えた際の前記送電回路の温度に応じて設定する、給電システム。
【請求項14】
請求項1から請求項13のいずれか一項に記載の給電システムであって、
前記物理量は、前記送電コイルの両端の電圧、前記送電コイルに流れる電流、前記送電コイルが発生させる磁束、前記コンデンサの両端の電圧、のいずれかである、給電システム。
【請求項15】
請求項1から請求項14のいずれか一項に記載の給電システムであって、さらに、
前記送電コイルとは絶縁されており、かつ、前記送電コイルと磁気的に結合する検出コイル(151)を有し、
前記制御部は、前記物理量として、前記検出コイルの両端の電圧と、前記送電回路の前記コンデンサの両端の電圧を用いる、給電システム。
【請求項16】
請求項1から請求項9のいずれか一項に記載の給電システムであって、
前記制御部は、前記送電回路を前記第2状態から前記第1状態に切り替えた後、一定期間の間、前記第2状態に復帰させる、給電システム。
【請求項17】
請求項1から請求項16のいずれか一項に記載の給電システムであって、
前記制御部は、前記送電回路を前記第1状態から前記第2状態に切り替えた後、前記第2状態の時間(Sint)をカウントし、前記第2状態の時間が判定値(Tth)を超えた場合には、前記送電回路を前記第2状態から前記第1状態に切り替える、給電システム。
【請求項18】
請求項1から請求項17のいずれか一項に記載の給電システムであって、
前記送電回路の温度が閾値以上の場合には、前記送電回路を前記第1状態に切り替える、給電システム。
【請求項19】
請求項1から請求項18のいずれか一項に記載の給電システムであって、
前記送電回路に流れる電流が閾値以上の場合には、前記送電回路を前記第1状態に切り替える、給電システム。
【請求項20】
請求項1から請求項19のいずれか一項に記載の給電システムであって、
前記測定部は、前記車両に設けられた前記受電コイルからの磁束により生じる前記物理量の変化の大きさを検出し、
前記制御部は、前記物理量の変化の大きさが予め定められた閾値以上の場合、前記送電回路の状態を前記第1状態から前記第2状態に切り替える、給電システム。
【請求項21】
請求項20に記載の給電システムであって、
前記制御部は、前記物理量の変化の大きさが予め定められた閾値以上となり、前記受電回路に異常が生じたと判断した場合、前記送電回路の状態を前記第2状態から前記第1状態に切り替える、給電システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、給電システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、複数の受電装置に同時に電力を供給でき、送電が必要な送電コイルにのみ電力を供給し、製造コストを抑制することができる非接触給電システムが開示されている。特許文献2には、送電装置が受電装置の位置を検出し、受電装置が受電可能な領域内に存在する場合に、電力供給を行うことが可能となる非接触給電システムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2017-51074号公報
【特許文献2】特開2016-111727号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1、2のいずれも、無駄な電力消費を抑制するために、受電コイルが送電コイルに対して効率よく受電可能な位置にあることを、通信装置を用いて検出する必要があった。特許文献1では、独立した通信装置を用いており、特許文献2では、送電コイルに印加する給電用の高周波電力に特定の符号を重畳して通信を行なうための特殊な送受信装置を用いている。そこで、通信装置を用いることなく、給電できない状態における給電ロスを低減し、給電できる状態では効率よく給電することが要望されている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一形態によれば、走行中の車両に非接触で給電する給電システム(100)が提供される。この給電システムは、地上側に設けられた送電コイル(41)とコンデンサ(43)とを含み、第1のインピーダンスと、前記第1のインピーダンスより低い第2のインピーダンスのいずれかのインピーダンスに切り替えられる送電回路(40)と、前記送電回路の前記送電コイルに高周波電力を供給する高周波生成回路(30)と、前記送電回路と前記車両に設けられた受電コイルを含む受電回路との結合の程度に対応した物理量を測定する測定部(21)と、測定された前記物理量によって、前記結合の程度が予め定めた大きさ未満であると判断された間は、前記送電回路のインピーダンスを前記第1のインピーダンスとする第1状態とし、前記結合の程度が予め定めた大きさ以上であると判断された間は、前記インピーダンスを前記第2のインピーダンスとする第2状態とし、前記送電回路から前記受電回路への送電を行なう制御部(20)と、を備える。この形態によれば、制御部は、送電回路のインピーダンスを予め定めた第1のインピーダンスとした状態で送電コイルの物理量を測定することにより、結合の程度が予め定めた状態以上になったか、すなわち、送電コイルに対して受電コイルが給電できる程度に近づいたかを判断する。送電コイルに対して受電コイルが給電できる程度に近づいた場合には、送電回路のインピーダンスを第1のインピーダンスより低い第2のインピーダンスとして、給電する。その結果、送電コイルに対して受電コイルが給電できる程度に近づいていない場合には、送電回路のインピーダンスを第1のインピーダンスとすることで第1状態とし、給電ロスを低減できる。一方、送電コイルに対して受電コイルが給電できる程度に近づいた場合に、送電回路のインピーダンスを第2のインピーダンスとすることで第2状態とし、効率よく送電コイルから受電コイルに給電できる。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】給電システムを示す説明図である。
図2】送電回路と、受電回路と、給電側制御部の概略構成を示す説明図である。
図3】送電コイルと、車両の移動に伴う受電コイルの位置関係を具体的に示す説明図である。
図4】スイッチのオン・オフと、送電回路のインピーダンス・給電の関係を示す説明図である。
図5】受電コイルの位置と、送電コイル物理量との関係を示す説明図である。
図6】物理量を送電コイルの電圧としたときの本開示の原理を示す説明図である。
図7】判定回路の構成を示す説明図である。
図8】切替回路の一例を示す説明図である。
図9】1ショットパルス生成回路の構成の一例を示す説明図である。
図10】待機(非給電)、一時給電・給電・給電停止の信号状態を示す説明図である。
図11】受電コイルの移動に伴う物理量である電圧の軌跡と、各信号の出力を示す説明図である。
図12】第1実施形態の変形例の送電回路を示す説明図である。
図13】第2実施形態の送電回路を示す説明図である。
図14】リセット信号生成回路を示す説明図である。
図15】第3実施形態の切替回路の一例を示す説明図である。
図16】第3実施形態における各信号の出力を示す説明図である。
図17】第4実施形態の切替回路の一例を示す説明図である。
図18】Vtemp発生回路の一例を示す説明図である。
図19】温度と、電圧の関係を示すグラフである。
図20】第4実施形態の切替回路の一例を示す説明図である。
図21】第5実施形態の切替回路を示す説明図である。
図22】受電コイルの移動に伴う物理量である電圧の軌跡と、切替回路における各信号の出力を示す説明図である。
図23】第6実施形態の切替回路の変形例である切替回路を示す説明図である。
図24】受電コイルの移動に伴う物理量である電圧の軌跡と、切替回路における各信号の出力を示す説明図である。
図25】第7実施形態における切替回路を示す説明図である。
図26】L保持処理部が実行する切替信号の出力処理フローチャートである。
図27】給電時間とオフ保持時間の関係を示すグラフである。
図28】第8実施形態における送電系の回路を示す説明図である。
図29】送電コイル、中継コイル、検出コイルの配置を示す説明図である。
図30】ピーク検出部の構成を示す説明図である。
図31】第8実施形態の変形例における送電系の回路を示す説明図である。
図32】第8実施形態の変形例におけるピーク検出部の構成を示す説明図である。
図33】マイクロコンピュータが実行する切替信号の出力処理フローチャートである。
図34】送電回路の温度とオフ保持時間の関係を示すグラフである。
図35】第9実施形態の切替回路を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
・第1実施形態:
図1は、給電システム400を示す説明図である。給電システム400は、道路105などの地上側に設けられる送電システム100と、移動体である車両202側の受電システム200とを備える。給電システム400は、車両202の走行中に送電システム100から車両202に給電することが可能なシステムである。走行中とは、車両202が移動している場合の他、信号待ち等で車両が停止している場合も含む。車両202は、例えば、電気自動車やハイブリッド車として構成される。車両202として、AGV(無人搬送車)、走行ロボットとして構成されてもよい。図1において、x軸方向は車両202の進行方向を示し、y軸方向は車両202の幅方向を示し、z軸方向は鉛直上方向を示す。
【0008】
道路105側の送電システム100は、道路105の地面に、道路105に沿って並べられた複数の送電回路40と、複数の送電回路40のそれぞれに高周波の交流電圧を供給する複数の高周波生成回路30と、複数の高周波生成回路30に直流電圧を供給する電源回路10と、給電側制御部20と、を備えている。送電回路40は、道路105の地面以外の場所、例えば、道路105の側壁やガードレールに配置されていてもよい。
【0009】
複数の送電回路40は、後述するが、共振回路を構成する送電コイルとコンデンサを有しており、送電コイルは、道路105の地表から所定の深さに、x方向に沿って設置されている。高周波生成回路30は、電源回路10から供給される直流電圧を高周波の交流電圧に変換して送電回路40に高周波電力を供給する回路であり、図示しないインバータ回路を含んでいる。なお、インバータ回路に加え、フィルタ回路を備えても良い。電源回路10は、直流の電力を高周波生成回路30に供給する回路である。例えば、電源回路10は、商用電源から供給される交流を整流して直流を出力するAC/DCコンバータ回路として構成される。なお、電源回路10が出力する直流は、完全な直流でなくてもよく、ある程度の変動(リップル)を含んでいても良い。給電側制御部20は、送電回路40の状態を第1状態、第2状態のいずれかに切り替え、第2状態の時には、送電回路40を共振状態として受電システム200に電力を供給させ、第1状態の時には、送電回路40を非共振状態として受電システム200への電力の供給を制限する。
【0010】
車両202は、バッテリ210と、補機バッテリ215と、受電側制御部220と、整流回路230と、受電回路240と、DC/DCコンバータ回路260と、インバータ回路270と、モータジェネレータ280と、補機290と、を備えている。本実施形態では、受電回路240は、道路105に面した位置、例えば、車両202の下面に設けられている。なお、送電回路40が、道路105の側壁やガードレールに配置されている場合には、車両202の側面に受電回路240が設けられていても良い。受電回路240は、後述するが、共振回路を構成する受電コイルとコンデンサを有している。受電回路240は、整流回路230に接続されており、受電回路240で受電した交流電力は、直流電力に変換される。整流回路230の出力には、バッテリ210と、DC/DCコンバータ回路260の高圧側と、インバータ回路270と、が接続されている。DC/DCコンバータ回路260の低圧側には、補機バッテリ215と、補機290とが接続されている。インバータ回路270には、モータジェネレータ280が接続されている。整流回路230から出力される直流電圧は、バッテリ210の充電や、インバータ回路270を介したモータジェネレータ280の駆動に利用することができる。また、整流回路230から出力される直流電圧は、DC/DCコンバータ回路260を用いて降圧することで、補機バッテリ215の充電や、補機290の駆動にも利用可能である。
【0011】
バッテリ210は、モータジェネレータ280を駆動するための比較的高い直流電圧、例えば数百Vの電圧を出力する2次電池である。モータジェネレータ280は、3相交流モータとして動作し、車両202の走行のための駆動力を発生する。モータジェネレータ280は、車両202の減速時にはジェネレータとして動作し、電力を回生する。インバータ回路270は、モータジェネレータ280がモータとして動作するとき、バッテリ210の電力を3相交流に変換してモータジェネレータ280に供給する。インバータ回路270は、モータジェネレータ280がジェネレータとして動作するとき、モータジェネレータ280が回生した3相交流を直流に変換してバッテリ210に供給する。
【0012】
DC/DCコンバータ回路260は、バッテリ210の出力を、バッテリ210の出力電圧より低い電圧、例えば12Vに変換して補機バッテリ215及び補機290に供給する。補機バッテリ215は、補機290を駆動するための2次電池であり、その電圧は比較的低い。補機290は、車両202の空調装置や電動パワーステアリング装置、ヘッドライト、ウインカ、ワイパー等の周辺装置や車両202の様々なアクセサリーを含む。
【0013】
受電側制御部220は、車両202内のインバータ270他、各部を制御する。受電側制御部220は、走行中非接触給電を受ける際には、受電回路240を制御して電力を受電する。
【0014】
図2は、送電回路40と、受電回路240と、給電側制御部20の概略構成を示す説明図である。送電回路40は、送電コイル41と、2つのコンデンサ42、43と、スイッチSW1とを備える。コンデンサ42と、送電コイル41とは、直列に接続されている。コンデンサ43とスイッチSW1は直列に接続され、直列に接続されたコンデンサ43とスイッチSW1は、コンデンサ42と並列に接続されている。送電コイル41と、2つのコンデンサ42、43は、共振回路を構成している。受電回路240は、直列に接続された受電コイル241とコンデンサ242とを備え、受電コイル241とコンデンサ242は、共振回路を構成している。
【0015】
コンデンサ42の容量をC1、コンデンサ43の容量をC2、送電コイル41のインダクタンスをL1、配線の電気抵抗をRとする。送電回路40のインピーダンスZonは
Zon=R+j(ωL1ー1/ωCg)
である。ここで、スイッチSW1がオフのとき、コンデンサ43が切り離されるので、
Cg=C1
であり、
スイッチSW1がオンのとき、コンデンサ43が接続されるので、
Cg=C1+C2
である。
上式において、ωは角周波数であり、送電回路40の動作周波数をfとすると、ω=2πfである。また、送電コイル41は、受電コイル241と磁気的に結合する。以下、磁気的に結合することを、「結合する」とも呼ぶ。ため、送電コイル41のインダクタンスL1は、受電コイル241との相対的な位置関係により、変化する。送電コイル41がどのコイルとも結合しないときのインダクタンスをL41、受電コイル241がどのコイルとも結合しないときのインダクタンスをL241とすると、送電コイル41のインダクタンスL1は、
L1=L41±k(L41×L241)1/2
である。ここで、kは結合係数であり、送電コイル41と受電コイル241との相対的な位置関係により定まり、送電コイル41と受電コイル241とが最も接近したときに結合係数kは最大となる。また、上式の第2項の前のプラスマナスの符号(±)は、送電コイル41と受電コイル241の巻き向きが同じであればプラス、逆であればマイナスである。
【0016】
給電側制御部20は、測定部21と、判定回路50と、切替回路60と、駆動回路70と、を備える。測定部21は、送電コイル41の物理量を測定するセンサである。物理量は、送電コイル41とコンデンサ42、43を含む共振回路の共振の程度を示す指標となる。本実施形態では、物理量として送電コイル41の両端の電圧を用いる。なお、物理量として、複数種類の物理量を利用可能である。本実施形態で用いた送電コイル41の両端の電圧以外の物理量、例えば、送電コイル41に流れる電流、送電コイル41が発生させる磁束、コンデンサ42の両端の電圧、コンデンサ42に流れる電流を用いても良い。スイッチSW1がオンのときには、コンデンサ43の両端の電圧、コンデンサ43に流れる電流を用いても良い。スイッチSW1がオフである場合の送電コイル41両端の電圧をオフ電圧Voffとし、スイッチSW1がオンである場合の送電コイル41両端の電圧をオン電圧Vonとする。なお、スイッチSW1がオフ・オンの各状態において、検出する物理量を異ならせてもよい。例えば、スイッチSW1がオフの場合に、検出する物理量として送電コイル41の両端の電圧を用い、スイッチSW1がオンの場合に、検出する物理量として、送電コイル41の両端の電圧の他、送電コイル41に流れる電流や、コンデンサ42の両端の電圧を用いても良い。
【0017】
判定回路50は、スイッチSW1がオフの状態のオフ電圧Voffが閾値Vth_off_LあるいはVth_off_H以上か、未満か、及び、スイッチSW1がオンの状態のオン電圧Vonが、閾値Vth_on_LあるいはVth_on_H以上か、未満か、を取得する。オフ電圧Voffが閾値Vth_off_LあるいはVth_off_H以上の場合には、信号Soffはハイレベル(以下[H]と呼ぶ。)に設定され、未満のときは、信号Soffはローレベル(以下[L]と呼ぶ。)に設定される。また、オン電圧Vonが、閾値Vth_on_LあるいはVth_on_H以上の場合には、信号Sonは[H]に設定され、未満のときは、信号Sonは[L]に設定される。信号Soff、Son設定時にどちらの閾値を使用するか、については、後述する。
【0018】
切替回路60は、信号Soff、Sonの値により、スイッチSW1をオン・オフさせる切替信号Ssの値を定める。判定回路50及び切替回路60については、後で詳しく説明する。駆動回路70は、切替回路60の出力である切替信号Ssに従い、スイッチSW1のオン・オフの切り替えを駆動する。スイッチSW1は、リレーなどの機械的な接点を外部からの指示により切り替えるものでもよいが、MOS-FETやアナログスイッチなどの半導体素子を用いる構成であってもよい。
【0019】
図3は、送電コイル41と車両202の移動に伴う受電コイル241の位置を具体的に示す説明図である。コンデンサCgは、送電回路40のコンデンサであり、スイッチSW1がオフの場合は、コンデンサ42のみ接続された状態を意味し、スイッチSW1がオンの場合は、コンデンサ42とコンデンサ43の両方が接続された状態を意味する。道路105には送電コイル41が所定の間隔で配列されているから、車両202が進行すると、送電コイル41と受電コイル241との位置関係は、繰り返し同じ位相関係で変化するとみなすことができる。図3は、この繰り返しを位相の角度-180°から+180°として示している。車両202の進行方向について、送電コイル41の中心の位置を0°、2つの送電コイル41の中間の位置を±180°とする。車両202は、受電コイル241が-180°の位置にいて、図の右方に進んでいる。そのため、受電コイル241の位置は-180°から0°を経て180°に移動する。
【0020】
図4は、スイッチSW1のオン・オフと、送電回路40のインピーダンス・給電の関係を示す説明図である。第1状態では、スイッチSW1がオフであり、コンデンサCgは、コンデンサ42のみ含んでいる。送電回路40のインピーダンスは高く、送電回路40の共振状態は、予め定められた大きさ未満であり、非共振状態である。第2状態では、スイッチSW1がオンであり、コンデンサCgは、コンデンサ42とコンデンサ43を含んでいる。送電回路40のインピーダンスは低く、送電回路40の共振状態は、予め定められた大きさ以上であり、共振状態である。給電側制御部20は、スイッチSW1をオフとすることで、送電回路40を非共振状態として、受電システム200に給電しない待機状態とし、スイッチSW1をオンとすることで、送電回路40を共振状態として受電システム200に給電可能な給電状態とする。なお、コンデンサ42、43の容量及び、送電コイル41のインダクタンスを適切に設定することにより、コンデンサ42のみ含むスイッチSW1がオフの場合に、送電回路40のインピーダンスを低くし、送電回路40を共振状態とし、スイッチSW1がオンの場合に、送電回路40のインピーダンスを高くし、送電回路40を非共振状態としてもよい。この場合の給電側制御部20は、スイッチSW1をオフとすることで、送電回路40を受電システム200に給電可能な給電状態とし、スイッチSW1をオンとすることで、送電回路40を受電システム200に給電しない待機状態とする。
【0021】
図5は、受電コイル241の位置と、送電コイル41の物理量Xとの関係を示す説明図である。物理量Xは、例えば、送電コイル41の電圧である。物理量Xとして、送電コイル41の電流、磁束、コンデンサ42の電圧を用いてもよい。スイッチSW1がオフの場合、送電回路40のインピーダンスは高いため、送電コイル41の物理量Xoffは低く、スイッチSW1がオンの場合、送電回路40のインピーダンスは低いため、送電コイル41の物理量Xonは、物理量Xoffよりも高い。また、スイッチSW1がオフの場合の物理量Xoffは、受電コイル241の位置が±180°の位置のとき極小の値XoffLとなり、受電コイル241の位置が0°の位置のとき極大の値XoffHとなる。また、スイッチSW1がオンの場合の物理量Xonも、受電コイル241の位置が±180°の位置のとき極小の値XonLとなり、受電コイル241の位置が0°の位置のとき極大の値XonHとなる。これは、送電コイル41が受電コイル241と結合するためである。すなわち、受電コイル241の位置が±180°の位置のとき、送電コイル41と受電コイル241との間隔は最も離れているため、結合係数kが最小となる。一方、受電コイル241の位置が0°の位置のとき、送電コイル41と受電コイル241との間隔は最も接近し、結合係数kが最大となる。スイッチSW1がオンの場合の物理量Xonの極小の値XonLと極大の値XonHの差ΔXonは、スイッチSW1がオフの場合の物理量Xoffの極小の値XoffLと極大の値XoffHの差ΔXoffよりも大きい。
【0022】
図6は、物理量を送電コイル41の電圧としたときの本開示の原理を示す説明図である。受電コイル241が-180°の位置の位置にいるとき、スイッチSW1はオフである。受電コイル241が送電コイル41に近づくと、送電コイル41の電圧は、Voffの軌跡に示すように変化する。送電コイル41の電圧Voffが第1の閾値である閾値Vth_off_H以上となると、給電オントリガが発せられ、スイッチSW1がオンにされる。そうすると、コンデンサ43が付加されるため送電回路40のインピーダンスが小さくなり、送電コイル41の電圧は、Vonの軌跡に遷移する。送電コイル41の電圧Vonが第3の閾値である閾値Vth_on_H以上となると、給電オンが確定する。なお、送電コイル41の電圧VonがスイッチSW1のオン後予め定められた時間を経過したときにおいて閾値Vth_on_H未満の場合は、スイッチSW1がオフにされコンデンサ43が切り離される。コンデンサ43が切り離されると、送電回路40のインピーダンスが大きくなる。そうすると、送電コイル41の電圧は、Voffの軌跡に戻り、給電待機状態tなる。また、給電オントリガが発せられると、送電コイル41の電圧Voffを判定する閾値がVth_off_Lに変更される。なお、Vth_off_L<Vth_off_Hである。また、給電オンが確定すると、送電コイル41の電圧Vonを判定する閾値がVth_on_Lに変更される。なお、Vth_on_L<Vth_on_Hである。
【0023】
給電オンが確定した後、受電コイル241が送電コイル41に最接近すると、送電コイル41の電圧Vonは最大となり、その後、受電コイル241が送電コイル41から遠ざかるにつれて、送電コイル41の電圧Vonは、小さくなっていく。送電コイル41の電圧Vonが第2の閾値である閾値Vth_on_L未満となると、スイッチSW1がオフにされ、コンデンサ43が切り離される。なお、Vth_on_L<Vth_on_Hである。コンデンサ43が切り離されると、送電回路40のインピーダンスが大きくなり、送電コイル41の電圧は、Voffに遷移する。また、送電コイル41の電圧Vonを判定する閾値がVth_on_Hに変更される。受電コイル241が送電コイル41からさらに遠ざかり、閾値Vth_off_L未満となると、送電コイル41の電圧Voff判定する閾値がVth_off_Hに変更される。
【0024】
図7は、判定回路50の構成を示す説明図である。判定回路50は、整流器51と、オペアンプ52と、ピーク検出回路53と、閾値切替スイッチ54、56と、比較器55、57と、を備える。整流器51は、測定部21から得られる交流電圧を直流電圧に変換する。オペアンプ52は、整流器51により得られた直流電圧のゲインを調整する機能を有する。ピーク検出回路53は、オペアンプ52の出力のピーク電圧Vpを検知する。ピーク検出回路53の代わりに、積分回路やローパスフィルタを用いてもよい。閾値切替スイッチ54は、信号Soffが[L]のとき、閾値をVth_off_Hとし、信号Soffが[H]のとき、閾値をVth_off_Lとする。比較器55は、ピーク電圧Vpを閾値(Vth_off_HあるいはVth_off_L)と比較し、Vp≧閾値のとき、信号Soffを[H]とし、Vp<閾値のとき、信号Soffを[L]とする。閾値切替スイッチ56は、信号Sonが[L]のとき、閾値をVth_on_Hとし、信号Sonが[H]のとき、閾値をVth_on_Lとする。比較器57は、ピーク電圧Vpを閾値(Vth_on_HあるいはVth_on_L)と比較し、Vp≧閾値のとき、信号Sonを[H]とし、Vp<閾値のとき、信号Sonを[L]とする。
【0025】
スイッチSW1がオフであり、受電コイル241が送電コイル41から遠いとき、ピーク電圧Vpは、閾値Vth_off_H未満であり、信号Soffは、[L]である。そのため、閾値は、Vth_off_Hである。受電コイル241が送電コイル41に近づくと、ピーク電圧Vpが上昇していき、ピーク電圧Vpが閾値Vth_off_H以上となると、信号Soffは[L]から[H]に切り替わる。信号Soffが[H]に切り替わると、閾値は、Vth_off_Lに切り替わる。なお、Vth_off_L<Vth_off_Hであるため、Vp>Vth_off_Lであるため、信号Soffは[H]のままである。
【0026】
スイッチSW1がオフであり、受電コイル241が送電コイル41に近いとき、ピーク電圧Vpは、閾値Vth_off_L以上であり、信号Soffは、[H]である。受電コイル241が送電コイル41から遠ざかると、ピーク電圧Vpが下降していき、ピーク電圧Vpが閾値Vth_off_L未満となると、信号Soffは[H]から[L]に切り替わる。信号Soffが[L]に切り替わると、閾値は、Vth_off_Hに切り替わる。Vth_off_L<Vth_off_Hであるため、Vp<Vth_off_Hであり、信号Soffは[L]のままである。
【0027】
スイッチSW1がオンであり、受電コイル241が送電コイル41から遠いとき、ピーク電圧Vpは、閾値Vth_on_H未満であり、信号Sonは、[L]である。そのため、閾値は、Vth_on_Hである。受電コイル241が送電コイル41に近づくと、ピーク電圧Vpが上昇していき、ピーク電圧Vpが閾値Vth_on_H以上となると、信号Sonは[L]から[H]に切り替わる。信号Sonが[H]に切り替わると、閾値は、Vth_on_Lに切り替わる。Vth_on_L<Vth_on_Hであるため、Vp>Vth_on_Lであるため、信号Sonは[H]のままである。
【0028】
スイッチSW1がオンであり、受電コイル241が送電コイル41に近いとき、ピーク電圧Vpは、閾値Vth_on_L以上であり、信号Sonは、[H]である。受電コイル241が送電コイル41から遠ざかると、ピーク電圧Vpが下降していき、ピーク電圧Vpが閾値Vth_on_L未満となると、信号Sonは[H]から[L]に切り替わる。信号Sonが[L]に切り替わると、閾値は、Vth_on_Hに切り替わる。Vth_on_L<Vth_on_Hであるため、Vp<Vth_on_Hであり、信号Sonは[L]のままである。
【0029】
図8は、図2の切替回路60の一例を示す説明図である。切替回路60は、1ショットパルス生成回路61と、オア回路64と、アンド回路65と、を備える。1ショットパルス生成回路61は、信号Soffが[L]から[H]に遷移するときに、[L]⇒[H]⇒[L]と遷移するパルスを1つ生成する。信号Soffが[H]のまま、あるいは[L]のまま遷移しないとき、あるいは、信号Soffが[H]から[L]に遷移するときには、1ショットパルス生成回路61は、出力を[L]のままとし、パルスを生成しない。オア回路64は、1ショットパルス生成回路61の出力と、信号Sonの少なくとも一方が[H]の時、[H]を出力する。アンド回路65は、信号Sonと、オア回路64の出力の両方が[H]のときに、切替信号Ssを[H]とし、信号Sonと、オア回路64の出力の少なくとも一方が[L]のとき、切替信号Ssを[L]とする。
【0030】
図9は、1ショットパルス生成回路61の構成の一例を示す説明図である。1ショットパルス生成回路61は、インバータI1、I2と、遅延回路62と、アンド回路63とを備える。インバータI1、I2は直列に接続され、インバータI2の出力は、アンド回路63と、遅延回路62に入力されている。インバータI1、I2は、波形整形回路を構成する。信号Soffは、インバータI1と、アンド回路65の2つの回路のみに入力され、インバータI2の出力は、アンド回路65と遅延回路62の2つの回路のみに入力されるので、インバータI1、I2がある場合は、インバータI1、I2が無い場合に比べて合計の入力容量が大きくなく、信号Soffの波形が鈍り難い。なお、2つのアンド回路63、65と遅延回路62の入力容量が小さければ、インバータI1、I2は、省略可能である。
【0031】
遅延回路62は、直列に接続された3個のインバータI3、I4、I5を備える。なお、直列に接続されたインバータは、奇数個であればよく、インバータの個数は、1ショットパルスの幅に応じて設定される。信号Soffが[L]の時、インバータI2の出力であるノードN1は[L]であり、遅延回路62の出力であるノードN2は[H]である。信号Soffが[L]から[H]に遷移すると、ノードN1も[L]から[H]に遷移する。一方、ノードN2は、遅延回路62の遅延時間だけ遅れて[H]から[L]に遷移する。したがって、遅延回路62の遅延時間だけ、ノードN1とノードN2の両方が[H]となる期間が生じ、アンド回路63の出力であるノードN3に[L]⇒[H]⇒[L]と遷移する1ショットパルスが発生する。一方、信号Soffが[H]の時、インバータI2の出力であるノードN1は[H]であり、遅延回路62の出力であるノードN2は[L]である。信号Soffが[H]から[L]に遷移すると、ノードN1も[H]から[L]に遷移する。ノードN2は、遅延回路62の遅延時間だけ遅れて[L]から[H]に遷移する。この場合、ノードN1とノードN2の両方が[H]となる期間が生じないので、アンド回路63の出力であるノードN3は、[L]のままである。すなわち、1ショットパルス生成回路61は、信号Soffが[L]から[H]に遷移するときにのみパルスを発生する。
【0032】
図10は、待機(非給電)、一時給電・給電・給電停止の信号状態を示す説明図である。待機(非給電)では、Vp<Vth_off_Hであり、Vp<Vth_on_Hであるので、信号状態[Soff,N3,Son]は[L,L,L]であり、信号Ssは[L]である。この状態で、Vp≧Vth_off_Hに遷移したときには、信号Soffが[H]になり、ノードN3は、[H]となる、そして、信号Ssは[H]となる。すなわち、一時給電状態となる。
【0033】
一時給電状態において、ノードN3が[H]の期間は、信号SsはノードN3により[H]となるため、送電コイル41の電圧Vpの軌跡はVoffの軌跡からVonの軌跡に遷移する。ノードN3が[H]の期間に送電コイル41の電圧Vpが閾値Vth_on_H以上となった場合には、信号Sonが[H]となるため、信号Ssは、信号Sonにより[H]となる。信号状態[Soff,N3,Son]は、[H,H,H]となり、一時給電状態から給電状態に遷移する。
【0034】
一時給電状態において、ノードN3が[H]の期間に送電コイル41の電圧Vpが閾値Vth_on_H以上にならなかった場合、信号Sonが[L]のままであるので、ノードN3が[L]に戻り、信号Ssは、[L]に戻る。信号状態[Soff,N3,Son]は、[H,L,L]となり、一時給電状態から給電停止状態に遷移する。
【0035】
信号Ssが信号Sonにより[H]となった給電状態では、Vp=Von>Vth_on_H>Vth_off_Hであるため、信号Soffは[H]である。また、信号Ssは、信号Sonにより[H]に維持されるため、信号Ssが信号Sonにより[H]となった給電状態では、ノードN3の[H・L]は、無関係となる。したがって、給電状態では信号状態[Soff,N3,Son]は、[H,ー,H]である。ただし、ノードN3は、[L]に戻った後は、[L]が維持されるので、給電状態では信号状態[Soff,N3,Son]は、[H,L,H]である。
【0036】
給電状態において、受電コイル241が送電コイル41から遠ざかり、送電コイル41の電圧Vpが閾値Vth_on_L未満となると、信号Sonが[L]となるため、信号Ssは、[L]となり、給電停止状態となる。なお、ノードN3は、上述のように、[L]のままである。
【0037】
給電停止状態において、受電コイル241が送電コイル41からさらに遠ざかり、送電コイル41の電圧Vpが閾値Vth_off_L未満となると、信号Soffが[L]となり、待機状態となる。待機状態では、信号状態[Soff,N3,Son]は上述したように、[L,L,L]となる。
【0038】
図11は、受電コイル241の移動に伴う物理量である電圧Vpの軌跡と、各信号の出力を示す説明図である。受電コイル241が位置P0(-180°の位置)にいるときは、スイッチSW1がオフのため、送電回路40は、非共振状態であり、送電コイル41の電圧Vpは、オフ電圧Voffの軌跡上にある。受電コイル241が送電コイル41に近づき、位置P1まで移動すると、送電コイル41の電圧Vpは閾値Vth_off_H以上となるため、信号Soffが[H]となり、ノードN1が[H]となり、ノードN3も一時的に[H]となり、切替信号Ssが[H]となる。送電回路40のインピーダンスは小さくなり、送電コイル41の電圧Vpは、遷移期間を経てオン電圧Vonの軌跡上に遷移する。信号Soffが[H]となると、閾値はVth_off_Lに切り替えられる。
【0039】
受電コイル241が送電コイル41にさらに近づき、ノードN3が[L]に戻る前に位置P2まで移動すると、送電コイル41の電圧Vpは閾値Vth_on_H以上となるため、信号Sonが[H]となり、切替信号Ssが[H]のまま維持される。信号Soffが[H]となると、閾値は、Vth_on_Lに切り替えられる。信号Sonが[H]となった後、遅延回路62の遅延時間が経過すると、ノードN2が[H]から[L]に遷移し、ノードN3は、[L]となる。なお、送電コイル41の電圧Vpは閾値Vth_on_H以上となる前にノードN3が[L]となると、信号Sonが[H]となっていないため、切替信号Ssは、[H]から[L]に遷移し、送電コイル41の電圧Vpは、オフ電圧Voffの軌跡上に戻る。
【0040】
受電コイル241が送電コイル41に最接近する位置P3(0°の位置)から遠ざかり位置P4まで移動すると、送電コイル41の電圧Vpが閾値Vth_on_L未満となり、信号Sonは[L]となり、切替信号Ssも[L]となる。送電コイル41の電圧Vpは、遷移期間を経てオン電圧Voffの軌跡上に遷移する。信号Sonが[L]となると、閾値はVth_on_Hに切り替えられる。
【0041】
受電コイル241が送電コイル41からさらに遠ざかり位置P5まで移動すると、送電コイル41の電圧Vpが閾値Vth_off_L未満となり、閾値はVth_off_Hに切り替えられる。
【0042】
以上、第1実施形態によれば、制御部である給電側制御部20は、送電回路40のインピーダンスを予め定めた第1のインピーダンスとした状態で送電コイル41の物理量を測定することにより、共振の程度が予め定めた大きさ以上になったか、すなわち、送電コイル41に対して受電コイル241が給電できる程度に近づいたかを判断できる。そして、給電側制御部20は、送電コイル41に対して受電コイル241が給電できる程度に近づいた場合には、送電回路40のインピーダンスを第1のインピーダンスより低い第2のインピーダンスとして、送電回路40を第2状態、すなわち、共振状態として、送電コイル41から受電コイル241に給電する。一方、給電側制御部20は、送電コイル41に対して受電コイル241が給電できる程度に近づいていない場合には、送電回路40のインピーダンスを第1のインピーダンスとすることで、送電回路40を第1状態、すなわち、非共振状態として、送電コイル41から受電コイル241への給電を少なくして給電ロスを低減する。このように、給電側制御部20は、送電コイル41に対して受電コイル241が給電できる程度に近づいた場合に、送電回路40のインピーダンスを第2のインピーダンスとすることで、効率よく送電コイル41から受電コイル241に給電できる。また、受電コイル241の位置を検出するのに、通信装置等を用いる必要が無く、給電側制御部20は、送電システム100側だけの物理量で、給電するか、給電を停止するかを判断できる。
【0043】
第1実施形態によれば、送電回路40は、送電コイル41と、複数のコンデンサ42、43を有し、コンデンサ43を接続、非接続とするスイッチSW1を備え、給電側制御部20は、スイッチSW1を切り替えることで、容易に、送電回路40のインピーダンスを変更し、共振状態と、非共振状態とを切り替えることができる。なお、第1実施形態では、スイッチSW1により、送電回路40に接続するコンデンサの数を変更しているが、複数のコンデンサの代わりに、可変容量コンデンサを用い可変容量コンデンサの容量を変更することで、送電回路40のインピーダンスを変更し、共振状態と、非共振状態とを切り替えてもよい。
【0044】
図12は、第1実施形態の変形例の送電回路44を示す説明図である。送電回路44は、送電コイル41と、直列に接続された複数のコンデンサ42、45と、を有し、スイッチSW2は、コンデンサ45をバイパスしてコンデンサ42と高周波生成回路30とを直結する経路上に設けられている。スイッチSW2をこのように構成しても、給電側制御部20は、スイッチSW2を切り替えることで、容易に、送電回路44のインピーダンスを変更し、共振状態と、非共振状態とを切り替えることができる。スイッチSW2のオン時に、コンデンサ45を流れる電流と、コンデンサ45を流れない電流に分流されるため、スイッチSW2の導通損失を低減できる。なお、スイッチSW2としてMOS-FETを用いる場合、MOS-FETの寄生容量を用いることで、コンデンサ45を省略してもよい。
【0045】
第1実施形態では、非共振状態では、送電回路40にはコンデンサとしてコンデンサ42のみが接続されており、共振状態ではスイッチSW1によりコンデンサ43を送電回路40に付加する構成であるが、非共振状態では、コンデンサ42、43を接続しておき、共振状態ではスイッチによりコンデンサ43を切り離す構成でもよい。また、スイッチにより非共振状態では、送電回路40にコンデンサ42が接続され、共振状態では送電回路40にコンデンサ43が接続されるように、コンデンサ42とコンデンサ43のいずれかが接続されるようにスイッチでコンデンサを切り替える構成であってもよい。
【0046】
第1実施形態では、給電側制御部20は、物理量として、送電コイル41の電圧を用いて、第1状態と第2状態との切り替えを行っているが、送電コイル41の電圧を用いて第1状態から第2状態に切り替え、コンデンサ43の電圧を用いて第2状態から第1状態に切り替えてもよい。給電側制御部20は、送電回路40の状態が、第2状態である場合には、給電側制御部20は、物理量と異なる物理量を用いて第2状態から第1状態への切り替えを行ってもよい。
【0047】
第1実施形態では、図5図6に示すように、送電回路40の状態が、第1状態、振第2状態のいずれにおいても、受電コイルと送電コイルとが最接近したときに物理量が極大となると説明した。送電コイル41と受電コイル241との距離であるコイル間距離が第1距離である場合の物理量が第1の値であり、コイル間距離が第1距離よりも小さい第2距離である場合の物理量が第1の値よりも大きな第2の値となってもよい。コイル間距離が最も狭いとき、物理量は最も大きくなる。なお、コイル間距離が第1距離よりも小さい第2距離である場合の物理量が第1の値よりも小さな第2の値となる物理量を用いてもよい。この場合、送電回路40の状態が、第1状態、振第2状態のいずれにおいても、受電コイルと送電コイルとが最接近したときに物理量が極小となる。
【0048】
・第2実施形態:
図13は、第2実施形態の送電回路46を示す説明図である。送電回路46は、送電コイル47と、コンデンサ42と、スイッチSW3と、を備える。送電コイル47は、タップ48により2つの送電コイル47a、47bに分けることができる。スイッチSW3が図13に示す第1状態のとき、コンデンサ42と送電コイル47aのみが高周波生成回路30に直列に接続され、スイッチSW3が図12に示すのと反対側に切り替わったときには、コンデンサ42と送電コイル47a、47bが高周波生成回路30に直列に接続される。このように構成しても、給電側制御部20は、スイッチSW3を切り替えることで、容易に、送電回路46のインピーダンスを変更し、共振状態と、非共振状態とを切り替えることができる。
【0049】
以上、第2実施形態によれば、送電コイル47は、送電回路46に接続可能なタップを有し、給電側制御部20は、スイッチSW3を切り替えることで送電コイル47のインダクタンスを変更し、共振状態と、非共振状態とを切り替えることができる。
【0050】
なお、第2実施形態では、送電コイル47をタップ48により2つに分割し、スイッチSW3により、送電コイル47aに送電コイル47bを直列に付加するか否かを切り替える構成を採用したが、送電コイル47と並列に、直列に接続された送電コイルとスイッチを設けてもよい。この場合、給電側制御部20は、送電コイル47と並列に設けた送電コイルをスイッチにより、送電コイル47と並列に接続し、あるいは切り離すことで、送電コイルの合計のインダクタンスを変更し、送電回路46のインピーダンスを変更し、共振状態と、非共振状態とを切り替えることができる。また、2つの送電コイルを並列に接続し、スイッチによりいずれかの送電コイルを選択して送電回路46に接続するようにしてもよい。
【0051】
上記各実施形態では、物理量として送電コイル41両端の電圧を用いたが、送電コイル41に流れる電流を用いてもよく、送電コイル41が発生させる磁束を用いてもよい。磁束を検出するセンサとして、例えば、ホールセンサ、MRセンサ、MIセンサが利用可能である。磁束を検出するセンサを用いる場合、磁束の測定は、送電コイル41の電圧や電流に影響を与えないという効果がある。
【0052】
・第3実施形態:
図10およびその説明で説明したように、待機(非給電)状態では、Vp<Vth_off_Hであり、Vp<Vth_on_Hであるので、信号状態[Soff,N3,Son]は[L,L,L]であり、信号Ssは[L]である。この待機状態で、Vp≧Vth_off_Hに遷移したときには、図8に示すように、信号Soffが[L]から[H]に遷移することを受けて、ノードN3が[H]に遷移し、信号Ssが[H]に遷移し、一時給電状態に移行する。この一時給電期間に信号Sonが[H]となれば、信号Ssが[H]に維持される。しかし、給電停止状態では、信号Soffが[H]のまま信号Sonが[L]となり、信号Ssも[L]となる。そのため、信号Soffが[L]に遷移する前の給電停止状態の送電システム100に車両202が再接近したとき、信号Soffが[L]から[H]に遷移することが発生しないため、図8のノードN13に[L]⇒[H]⇒[L]と遷移するパルスが発生しない。そのため、信号Ssは[L]のままであり、一時給電状態、及び給電状態に移行できない場合があった。第3実施形態は、この対策のための構成である。なお、待機状態となると、信号Soffが[L]となるため、この問題は生じない。
【0053】
図14に示すリセット信号生成回路は、インバータ70と、遅延回路71と、アンド回路72と、1ショットパルス生成回路73と、を備える。インバータ70は、信号Ssの[H]と[L]を逆転させ、ノードN10に出力する。遅延回路71は、ノードN10の信号を遅延させてノードN11に出力する。アンド回路72は、ノードN11と、信号Soffが共に[H]のとき、ノードN12に[H]を出力する。1ショットパルス生成回路73は、図9に示す1ショットパルス生成回路61と同様の回路を有しており、ノードN12が[L]から[H]に遷移すると、[L]⇒[H]⇒[L]と遷移するパルスを生成する。
【0054】
信号Ssが[H]の時は、ノードN11は[L]のため、アンド回路72の出力であるノードN12は[L]である。ここで、送電システム100から車両202が遠ざかるときには、図11に示すように、信号Ssの方が信号Soffよりも先に[H]から[L]になる。信号Ssが[H]から[L]に遷移すると、インバータ70と、遅延回路71とにより、ノードN11は、信号Ssが[H]から[L]に遷移してから一定の遅延時間後に[L]から[H]に遷移する。このとき、遅延回路71により遅延時間は、信号Ssが[H]⇒[L]になってから信号Soffが[H]⇒[L]になるよりも短くなるように設定されている。そのため、ノードN11と信号Soffがいずれも[H]となる期間が生じる。そのため、アンド回路72の出力であるノードN12は、一時的に[L]から[H]に遷移する。1ショットパルス生成回路73が発生させるリセット信号Sresetは、通常は[L]であるが、ノードN12が[L]から[H]に遷移するときには、1ショットパルス生成回路73は、[L]⇒[H]⇒[L]と遷移するパルスを発生させる。
【0055】
図15に示す切替回路60aは、図8で説明した第1実施形態の切替回路60と比較をすると、オア回路64aが3入力のオア回路であり、オア回路64aにリセット信号Sresetがさらに入力されている点で相違する。図8に示す切替回路では、信号Soffが[H]のとき、または、信号Sonが[H]のときに、信号Ssを[H]にするが、図14に示す第3実施形態の切替回路では、信号Soffが[H]のとき、信号Sonが[H]のときに遷移するとき、に加え、リセット信号Sresetが[H]の期間、すなわち、信号Ssが[H]から[L]に遷移した後の一定の期間の間、信号Ssを再び[H]とし、一時給電状態に移行できる。さらに、信号Ssが再び[H]になった期間に信号Sonが[H]となれば、信号Ssの[H]を維持する給電状態に移行できる。
【0056】
図16は、第3実施形態における各信号の出力を示す説明図である。図11に示す第1実施形態の各信号の出力と比較すると、ノードN11、N12と信号Sresetが追加されている。ノードN11は、信号Ssと比較すると、[H]と[L]が反転した信号であり、遅延回路71の遅延時間だけ信号Ssから遅れた信号である。ノードN11が[H]になると、信号Soffが[H]の期間だけノードN12が[H]となる。ノードN12が[L]から[H]に遷移すると、図14に示す1ショットパルス生成回路73により、[L]⇒[H]⇒[L]と遷移するパルスの信号Sresetが発生する。なお、図16の例では、信号Sresetが[H]から[L]に遷移したあと、信号Soffが[L]に遷移しているため、1ショットパルス生成回路73の遅延回路62で規定される期間、信号Sresetが[H]となるが、1ショットパルス生成回路73の遅延回路62で規定される期間よりも早くが、信号Soffが[L]に遷移した場合には、信号Sresetは、信号Soffの[L]と同時に[L]となる。
【0057】
以上、第3実施形態によれば、給電側制御部20は、送電回路40が共振状態から非共振状態に切り替わり、給電停止状態となった後、一定の期間、パルス状の信号Sresetにより信号Ssを一時的に[H]とすることで、一時給電状態に復帰させる。その結果、車両202が遠ざかり、送電システム100が一時的に一時給電状態に復帰している間に、車両202が再接近した場合には、給電側制御部20は、送電回路40の状態を、一時給電状態から給電状態に移行させることができる。なお、一時給電状態の間に、例えば別の車両202が接近しない場合には、信号Sreset、信号Soffが[L]に遷移し、送電回路40は、待機状態となる。その結果、車両202が接近し、送電コイル41の電圧Vpが高くなった場合には、第1実施形態で説明したように、給電側制御部20は、送電回路40を、待機状態から一時給電状態を経て給電状態に移行させることができる。
【0058】
・第4実施形態:
第1実施形態では、送電システム100の温度については考慮していなかったが、第4実施形態は、送電システム100の温度が閾値以上となると、信号Ssを[L]とし、送電システム100の送電回路40が共振状態であっても、その送電回路40を非共振状態とする。それにより、送電回路40に流れる電流を低減し、送電システム100の温度を低下させる。図17に示す第4実施形態の切替回路60bは、アンド回路65bに信号Stempが入力される3入力アンド回路となっている点で、2入力アンド回路回路である第1実施形態のアンド回路65と相違する。信号Stempは、送電システム100の温度Tcが閾値未満の場合は[H]となり、温度Tcが閾値以上となると[L]となる信号である。なお、実際には、温度センサにより、送電システム100の温度Tcに応じた電圧Vtempをさせ、このVtempと閾値とを、比較器67を用いて比較する。また、本実施形態では、チャタリングを抑制するために、閾値として、温度Thに対応したVth_Hと、温度Thよりも低い温度Tlに対応した、Vth_Lの2つが準備されており、切替回路68により、信号Stempが[H]の時は、閾値としてVth_Hが選択され、信号Stempが[L]の時は、閾値としてVth_Lが選択される。なお、Vth_Hは、Vth_Lよりも大きい電圧である。信号Stempが[H]のとき、送電システム100の温度Tcが上昇し、温度Th以上になると、Vtempは、閾値Vth_H以上となるため、信号Stempは[L]となり、信号Ssは[L]となる。その結果、送電回路40は、非共振状態となる。信号Stempが[L]になると、閾値は、切替回路68によりVth_Lに切り替わるが、Vtemp>Vth_H>Vth_Lであるため、Stempは、[L]のまま変わらない。送電回路40が、非共振状態となると、電流が少なくなるため、送電回路40の温度Tcは低下する。送電システム100の温度Tcが下降し、温度Tl未満になると、Vtempは、閾値Vth_L未満となるため、信号Stempは[H]となる。なお、信号Stempが[H]になると、閾値は、切替回路68によりVth_Hに切り替わるが、Vtemp<Vth_L>Vth_Hであるため、Stempは[H]のまま変わらない。
【0059】
図18は、Vtemp発生回路90の一例を示す説明図である。Vtemp発生回路90は、電源からグラウンドに向けて、直列に接続された3つの電気抵抗器R1、Rth、R2を備える。電気抵抗器R1、R2は、温度依存性が小さい電気抵抗器であるが、電気抵抗器Rthは、サーミスタであり、温度依存性が大きい電気抵抗器である。電気抵抗器Rthは、温度が上がると電気抵抗値が下がる特性を有している。そのため、温度Tcが上昇すると、電気抵抗器RTh、R2の中間ノードの電圧Vtempが上昇する。なお、電気抵抗器Rthとして、温度が上がると電気抵抗値が上がる電気抵抗器を用いてもよい。この場合、Vtempは、電気抵抗器R1、Rthの中間ノードから取り出せばよい。
【0060】
図19は、温度Tcと、電圧Vtempの関係を示すグラフである。温度Tcが温度Thの時の電圧Vtempは、閾値であるVth_Hになっており、温度Tcが温度Thの時の電圧Vtempは、閾値であるVth_Lとなっている。
【0061】
以上、第4実施形態によれば、送電システム100の温度が温度Th以上となると、電圧Vtempが閾値Vth_H以上となるため、信号Stempを[L]として、送電システム100の送電回路40を非共振状態とする。その後、送電システム100の温度が温度Tl未満となると、Vtempが閾値Vth_L未満となるため、信号Stempを[H]とする。その結果、他の条件を満たせば、送電システム100の送電回路40を共振できる状態とすることができる。
【0062】
・第5実施形態:
図20に示す第5実施形態の切替回路60cは、アンド回路65cに信号Stempが入力される3入力アンド回路となっている点で、2入力アンド回路である第1実施形態のアンド回路65と相違する。なお、アンド回路65cに入力される信号が、信号Sadである点を除けば、図17に示す第5実施形態の切替回路と同じである。
【0063】
信号Sadは、送電システム100の送電回路40に流れる電流が閾値未満のときに、[H]となり、閾値以上のときに[L]となる信号である。したがって、送電システム100の送電回路40に流れる電流Iadが閾値以上の過電流になった時には、送電回路40が共振状態であっても、その送電回路40を非共振状態とする。本実施形態では、チャタリングの抑制のため、閾値として、電流値Ihに対応したVth_Hと、電流値Ihよりも低い電流値Ilに対応した、Vth_Lの2つが準備されており、切替回路68cにより、信号Sadが[H]の時は、閾値としてVth_Hが選択され、信号Sadが[L]の時は、閾値としてVth_Lが選択される。なお、Vth_Hは、Vth_Lよりも大きい電圧である。電圧Vadは、送電回路40に流れる電流Iadに対応する電圧であり、閾値(Vth_HまたはVth_L)と比較するために用いられる。信号Sadが[H]のとき、送電システム100の電流Iadが上昇し、電流値Ih以上になると、電流Iadに対応する電圧Vadは、閾値Vth_H以上となるため、信号Sadは[L]となり、信号Ssは[L]となる。その結果、送電回路40は、共振状態であっても、非共振状態にされる。信号Sadが[L]になると、閾値は、切替回路68cによりVth_Lに切り替わるが、Vad>Vth_H>Vth_Lであるため、信号Sadは[L]のまま。送電回路40が、非共振状態となると、電流Iadが少なくなる。送電システム100の送電回路40の電流Iadが下降し、電流値Il未満になると、Vadは、閾値Vth_L未満となるため、信号Sadは[H]となる。なお、信号Sadが[H]になると、閾値は、切替回路68cによりVth_Hに切り替わるが、Vad<Vth_L>Vth_Hであるため、信号Sadは、[H]のまま変わらない。
【0064】
以上、第5実施形態によれば、送電システム100の送電回路40に流れる電流IadがIh以上となると、電圧Vadが閾値Vth_H以上となるため、信号Sadを[L]として、送電システム100の送電回路40が共振状態であっても、非共振状態とする。その後、送電システム100の電流IadがIl未満となると、Vadが閾値Vth_L未満となるため、信号Stempを[H]とする。その結果、他の条件を満たせば、送電システム100の送電回路40を、共振できる状態とすることができる。
【0065】
・第6実施形態:
第6実施形態では、給電側制御部20が、送電回路40の状態を共振状態から非共振状態に切り替えた後、送電回路40の状態を非共振状態から共振状態に切り替えることができる場合であっても、オフ保持時間(Toff_prsv)の間、送電回路40の状態を非共振状態に保持する。図21は第6実施形態の切替回路60dを示す説明図である。第6実施形態の切替回路60dは、図8で説明した第1実施形態の切替回路60と比較をすると、アンド回路65の後段に、アンド回路65dが配置されている点で相違する。アンド回路65の出力は、アンド回路65dの一方の入力に入力されるとともに、インバータI6、1ショットパルス生成回路61d、インバータI7を経て、アンド回路65dの他方の入力に入力されている。1ショットパルス生成回路61dは、入力が[L]から[H]に立ち上がるとき、[L]⇒[H]⇒[L]と遷移するパルスを発生させる。すなわち、アンド回路65の出力ノードN5が[H]から[L]に立ち下がるとき、1ショットパルス生成回路61dは、[L]⇒[H]⇒[L]と遷移するパルスを発生させる。アンド回路65の他方の入力ノードN6は、通常は、[H]であり、アンド回路65の出力ノードN5が[H]から[L]に立ち下がったとき、その後、1ショットパルス生成回路61dにより定められる一定期間だけ[L]となる。
【0066】
図22は、受電コイルの移動に伴う物理量である電圧Vpの軌跡と、切替回路60dにおける各信号の出力を示す説明図である。図22は、図21に示すノードN5、N6の信号が付加されている点を除き、図11に示す第1実施形態における波形とほぼ同じ波形となっている。図11に示す第1実施形態では、受電コイル241が送電コイル41から遠ざかって送電コイル41の電圧Vpが閾値Vth_on_L未満となった場合には、給電側制御部20は、送電回路40を非共振状態に切り替えて送電コイル41から受電コイル241への電力の給電を停止する。しかし、受電コイル241が送電コイル41に近づいて、送電コイル41の電圧Vpが閾値Vth_off_H以上となった場合には、給電側制御部20は、送電回路40を共振状態に切り替えて送電コイル41から受電コイル241への電力を給電する。
【0067】
これに対し、第6実施形態では、給電側制御部20は、送電回路40を共振状態から非共振状態に切り替えた場合には、受電コイル241が送電コイル41に近づいて、送電コイル41の電圧Vpが閾値Vth_off_H以上となった場合であっても、1ショットパルス生成回路61dにより定められる一定期間だけ、送電回路40の状態を非共振状態に維持する。共振状態では、送電コイル41から受電コイル241に電力を給電するため、送電回路40の温度が上昇する。この温度上昇は、送電回路40の送電コイル41の電圧や電流等の物理量に影響を与える可能性がある。第6実施形態では、送電回路40の状態が、共振状態から非共振状態に切り替わった後、オフ保持時間(Toff_prsv)の間、非共振状態を維持する。その結果、送電回路40をクールダウンさせることができ、非共振状態と共振状態の切り替えの誤判定や、チャタリングの発生を回避できる。
【0068】
・第6実施形態の変形例:
図23は、第6実施形態の切替回路60dの変形例である切替回路60d1を示す説明図である。図21に示す切替回路60dと比較すると、アンド回路65がナンド回路65d1に変わり、アンド回路65dがナンド回路65d2に変わっている、また、2つのインバータI6、I7が削除されている。
【0069】
図24は、受電コイルの移動に伴う物理量である電圧Vpの軌跡と、切替回路60d1における各信号の出力を示す説明図である。ナンド回路65d1の出力ノードをノードN7、1ショットパルス生成回路61dの出力ノードをノードN8とすると、ノードN7は、図21、22のノードN5の[H]と[L]を入れ替えた信号であり、ノードN8は、図21、22のノードN6の[H]と[L]を入れ替えた信号である。従って、切替回路60d1の動作は、切替回路60dの動作と全く同じである。一般に、半導体回路では、ナンド回路の方がシンプルであり、アンド回路は、ナンド回路の出力にインバータを付加して構成する。そのため、切替回路60d1は、切替回路60dに比べてインバータを4個減らすことができ、多段のインバータによる信号遅延やタイミングスキューの発生を抑制できる。
【0070】
・第7実施形態:
第7実施形態は、第6実施形態と同様に、送電回路40の状態が、共振状態から非共振状態に切り替わった後、オフ保持時間(Toff_prsv)の間、非共振状態を維持する。しかし第7実施形態では、このオフ保持時間を送電回路40が共振状態であった時間に応じて変化させる点で第6実施形態と相違する。
【0071】
図25は、第7実施形態における切替回路60eを示す説明図である。第7実施形態の切替回路60eは、図8で説明した第1実施形態の切替回路60と比較をすると、アンド回路65の後段に、切替信号SsのL保持処理部22を備えている点で相違する。L保持処理部22には、アンド回路65の出力である信号Ss0が入力され、L保持処理部22は、切替信号Ssを出力する。第1実施形態では、アンド回路65の出力は、切替信号Ssであるが、第7実施形態では、信号Ss0は、切替信号そのものではないため、「信号Ss0」と呼ぶ。L保持処理部22は、信号Ss0が[H]から[L]に変化した場合、信号Ss0が[H]であった時間に応じて、切替信号Ssの[L]を保持する。なお、L保持処理部22は、上述した、信号Ss0が[H]から[L]に変化して切替信号Ssが[L]に保持される期間を除き、入力された信号Ss0が[H]であれば切替信号Ssとして[H]を出力し、入力された信号Ss0が[L]であれば切替信号Ssとして[L]を出力する。すなわち、信号Ss0が[H]から[L]に変化した後の一定時間を除き、信号Ss0の[H]、[L]と切替信号Ssの[H]、[L]は、同じである。
【0072】
図26は、L保持処理部22が実行する切替信号Ssの出力処理フローチャートである。L保持処理部22は、図25のアンド回路65の出力である信号Ss0が[L]から[H]に遷移する(ステップS100:Yes)と、処理をステップS110に移行する。ステップS110では、L保持処理部22は、切替信号Ssを[L]に保持する期間内か否かを判断する。切替信号Ssを[L]に保持する期間とは、後述するステップS220において、切替信号Ssを[L]とする期間である。L保持処理部22は、切替信号Ssを[L]に保持する期間内である場合には(ステップS110:Yes)、処理をステップS120に移行し、切替信号Ssを[L]に保持する期間内でない場合(ステップS110:No)には、処理をステップS130に移行する。L保持処理部22は、例えば、切替信号Ssを[L]に保持する期間内の場合にはフラグを立て、切替信号Ssを[L]に保持する期間内でない場合には、フラグを下げることで、フラグが立っているか否かにより、切替信号Ssを[L]に保持する期間内であるか否かを判断してもよい。
【0073】
ステップS120では、L保持処理部22は、出力である切替信号Ssを[L]とし、その後、処理をステップS110に戻る。ステップS130では、L保持処理部22は、切替信号Ssとして入力信号である信号Ss0と同じ信号を出力する。なお、ステップS100で信号Ss0が[H]となっているので、ステップS130では、L保持処理部22は、切替信号Ssとして[H]を出力する。
【0074】
ステップS140では、L保持処理部22は、給電時間Tonをリセットし、給電時間Tonのカウントを開始する。ステップS150で、信号Ss0が[L]に遷移すると(ステップS150:Yes)、L保持処理部22は、処理をステップS160に移行し、給電時間Tonのカウントアップを停止する。給電時間Tonは、信号Ss0が[H]になっていた時間、すなわち、切替信号Ssが[H]となり、送電回路40が送電状態にある時間に対応する。
【0075】
ステップS170では、L保持処理部22は、給電時間Tonが、第1判定値Ton1未満か否かを判断する。L保持処理部22は、給電時間Tonが、第1判定値Ton1未満の場合(ステップS170:Yes)には、処理をステップS190に移行し、給電時間Tonが、第1判定値Ton1以上の場合ステップS170:No)には、処理をステップS180に移行する。
【0076】
ステップS180では、L保持処理部22は、給電時間Tonが、第2判定値Ton2未満か否かを判断する。第2判定値Ton2は第1判定値Ton1より大きい。L保持処理部22は、給電時間Tonが、第2判定値Ton2未満の場合(ステップS180:Yes)には、処理をステップS200に移行し、給電時間Tonが、第2判定値Ton2以上の場合(ステップS180:No)には、処理をステップS210に移行する。
【0077】
L保持処理部22は、ステップS190では、オフ保持時間Toff_prsvをTp1とする。オフ保持時間Toff_prsvとは、切替信号Ssを[L]に保持する時間である。L保持処理部22は、ステップS200では、オフ保持時間Toff_prsvをTp2とする。L保持処理部22は、ステップS210では、オフ保持時間Toff_prsvをTp3とする。なお、Tp1、Tp2、Tp3の大きさは、Tp1<Tp2<Tp3である。従って、オフ保持時間Toff_prsvは、切替信号SsがHの時間が長いほど、すなわち、給電時間Tonが長いほど、長い。
【0078】
ステップS220では、L保持処理部22は、オフ保持経過時間Toffをリセットし、オフ保持経過時間Toffのカウントを開始する。また、L保持処理部22は、信号Sson、Soffの値の関わらず、出力する切替信号Ssを[L]に保持する。
【0079】
ステップS230では、L保持処理部22は、オフ保持経過時間Toffがオフ保持時間Toff_prsvを超えたか否かを判断する。L保持処理部22は、オフ保持経過時間Toffがオフ保持時間Toff_prsvを超えた場合には(ステップS230:Yes)、処理をステップS240に移行する。
【0080】
ステップS240では、L保持処理部22は、切替信号Ssを[L]に保持する処理を終了し、切替信号Ssを信号Ss0と同じ値にする。すなわち、L保持処理部22は、信号Ss0が[H]の場合には、切替信号Ssを[H]とし、信号Ss0が[L]の場合には、切替信号Ssを[L]とする。
【0081】
図27は、給電時間Tonとオフ保持時間Toff_prsvの関係を示すグラフである。グラフからわかるように、給電時間TonがTon1未満の場合は、オフ保持時間Toff_prsvはTp1であり、給電時間TonがTon1以上Ton2未満の場合は、オフ保持時間Toff_prsvはTp2であり、給電時間TonがTon2以上の場合は、オフ保持時間Toff_prsvはTp3である。
【0082】
給電時間Tonが長くなれば、送電回路40や送電コイル41の温度が上昇する。第7実施形態によれば、切替信号Ss(信号Ss0)が[H]から[L]に切り替わった後、信号Son、Soffの値によって切替信号Ssが[H]に遷移する条件を満たすようになっても、切替信号Ss(信号Ss0)が[H]から[L]に切り替わるまでの給電時間Tonの長さに応じた時間、切替信号Ssは[L]に保持される。その結果、送電回路40や送電コイル41をクールダウンでき、送電回路40の稼働率を向上できる。
【0083】
上記実施形態では、L保持処理部22は、給電時間Tonにより、オフ保持時間Toff_prsvを3段階に切り替えていたが、4段以上に切り替えてもよく、給電時間Tonに応じてオフ保持時間Toff_prsvを無段階に切り替えてもよい。例えば、オフ保持時間Toff_prsvを、給電時間Tonのc倍としてもよい。
【0084】
本実施形態では、L保持処理部22が切替信号Ssを[L]に保持しているが、L保持処理部22の代わりに、マイクロコンピュータを用いたソフトウエア処理により切替信号Ssを[L]に保持してもよい。
【0085】
・第8実施形態:
図28は、第8実施形態における送電系の回路を示す説明図である。第8実施形態における送電系の回路は、送電回路40fと、中継回路140と、検出回路150と、を備える。送電回路40fは、第1実施形態の送電回路40と同じ回路である。但し、第1実施形態では、送電コイル41の電圧を測定する測定部21を備えているが、第8実施形態では、コンデンサ43の電圧を測定するコンデンサ電圧検出回路23を備えている点で相違する。送電回路40fのスイッチSW1は、直列に接続された2つのMOSトランジスタTr1、Tr2と、MOSトランジスタTr1、Tr2にそれぞれ並列に接続されたダイオードD1、D2を備えている。2つのダイオードD1、D2の向きは逆向きのため、2つのMOSトランジスタTr1、Tr2をいずれもオンとすればスイッチSW1はオンとなり、2つのMOSトランジスタTr1、Tr2をいずれもオフとすればスイッチSW1はオフとなる。送電回路40fは、スイッチSW1がオンのとき共振状態となり、スイッチSW1がオフのとき、非共振状態となる。本実施形態では、コンデンサ43はハイパスフィルタ構成となるため、コンデンサ電圧検出回路23が測定するコンデンサ43の両端の電圧は、送電回路40の基本波周波数成分の電流に対応した電圧となる。本実施形態では、スイッチSW1のスイッチング素子としてMOSトランジスタを用いたが、MOSFET、SiCFETなどの電界効果型トランジスタや、IGBTなどのバイポーラトランジスタを用いてもよい。また、本実施形態では、スイッチSW1に2つのMOSトランジスタTr1、Tr2を用いる双方向構成を採用しているが、スイッチSW1がMOSトランジスタTr1、Tr2の一方のみを用いる片方向構成であってもよい。スイッチSW1に2つのMOSトランジスタTr1、Tr2を用いる双方向構成は、耐圧の点で優位である。スイッチSW1にMOSトランジスタTr1、Tr2の一方のみを用いる片方向構成は、スイッチグ素子の数を削減できる点で優位である。
【0086】
中継回路140は、中継コイル141と、コンデンサ142、143と、スイッチSW2とを備える。コンデンサ143とスイッチSW2とは直列に接続されている。中継コイル141の一方の端子と、コンデンサ142の一方の端子と、コンデンサ143のスイッチSW2と反対側の端子は、ノードN9で接続され、中継コイル141の他方の端子と、コンデンサ142の他方の端子と、スイッチSW2のコンデンサ143と対側の端子は、ノードN10で接続されている。また、中継回路140のノードN10は、送電回路40fと接続されている。スイッチSW2は、スイッチSW1と同様に、直列に接続された2つのMOSトランジスタTr3、Tr4と、MOSトランジスタTr3、Tr4にそれぞれ並列に接続されたダイオードD3、D4を備えている。2つのダイオードD3、D4の向きは逆向きのため、2つのMOSトランジスタTr3、Tr4をいずれもオンとすればスイッチSW2はオンとなり、2つのMOSトランジスタTr3、Tr4をいずれもオフとすればスイッチSW2はオフとなる。中継回路140は、スイッチSW2がオンのとき共振状態となり、スイッチSW2がオフのとき、非共振状態となる。スイッチSW2についても、スイッチSW1と同様に、スイッチング素子としてMOSFET、SiCFETなどの電界効果型トランジスタや、IGBTなどのバイポーラトランジスタを用いてもよい。また、スイッチSW2がMOSトランジスタTr3、Tr4の一方のみを用いる構成であってもよい。スイッチSW2に2つのMOSトランジスタTr3、Tr4を用いる双方向構成は、耐圧の点で優位である。スイッチSW2にMOSトランジスタTr3、Tr4の一方のみを用いる片方向構成は、スイッチグ素子の数を削減できる点で優位である。
【0087】
検出回路150は、検出コイル151と、コイル電圧検出回路152とを備える。検出コイル151は、送電コイル41および中継コイル141と電気的に絶縁されている。検出コイル151は、送電コイル41および中継コイル141と磁気的に結合している。コイル電圧検出回路152は、検出コイル151を通る磁束の変化により検出コイル151に生じる電圧を検出する。
【0088】
図29は、送電コイル41、中継コイル141、検出コイル151の配置を示す説明図である。第1基板160の表面に送電コイル41が配置され、送電コイル41の内側に検出コイル151が配置されている。なお、検出コイル151は、送電コイル41の外側に配置されていてもよい。また、第1基板160と重なる第2基板161に、中継コイル141が配置されている。中継コイル141の内径、外径は、送電コイル41とほぼ同じである。本実施形態では、送電コイル41、検出コイル151を第1基板160、中継コイル141を第2基板161に配置しているが、送電コイル41、検出コイル151を第1基板160の一方の面に配置し、中継コイル141を第1基板160の他方の面に配置してもよい。送電コイル41を第1基板160の一方の面に配置し、中継コイル141、検出コイル151を第1基板160の他方の面に配置してもよい。送電コイル41を第1基板160の一方の面に配置し、中継コイル141を第1基板160の他方の面に配置し、検出コイル151を第2基板161に配置してもよい。図29に示す例では、中継コイル141は、送電コイル41、検出コイル151に対し、上面あるいは下面の位置に配置されているが、同一平面上に配置されていてもよい。送電コイル41、中継コイル141、検出コイル151が互いに結合する位置関係になるように配置されていればよい。
【0089】
給電側制御部20は、車両202に給電する場合には、スイッチSW1、SW2のいずれをもオンとし、送電回路40fを共振状態とし、中継回路140を共振状態とする。この状態で、車両202が送電コイル41から離れた場合には、送電コイル41に流れる電流が減少し、コンデンサ43の電圧も変化する。コンデンサ電圧検出回路23は、コンデンサ43の電圧を測定することで、送電コイル41に流れる電流の減少、すなわち、送電コイル41と受電コイル241の結合の程度を検出できる。また、車両202が送電コイル41から離れた場合には、検出コイル151に流れる電流が減少する。コイル電圧検出回路152は、検出コイル151の電圧を測定することで検出コイル151に流れる電流を検出する。給電側制御部20は、コンデンサ43の電圧および検出コイル151の電圧を測定することで、切替信号Ssを[H]として車両202に給電するか、あるいは、切替信号Ssを[L]として車両202への給電を停止するか、を判断できる。
【0090】
図30は、ピーク検出部50fの構成を示す説明図である。ピーク検出部50fは、整流器51f1、51f2と、オペアンプ52f1、52f2と、ピーク検出回路53f1、53f2とを備える。整流器51f1は、コンデンサ電圧検出回路23から得られる交流電圧を直流電圧に変換する。オペアンプ52f1は、整流器51f1により得られた直流電圧のゲインを調整する機能を有する。ピーク検出回路53f1は、オペアンプ52f1の出力のピーク電圧Vp1を検知する。同様に、整流器51f2は、コイル電圧検出回路152から得られる交流電圧を直流電圧に変換する。オペアンプ52f2は、整流器51f2により得られた直流電圧のゲインを調整する機能を有する。ピーク検出回路53f2は、オペアンプ52f2の出力のピーク電圧Vp2を検知する。
【0091】
第1実施形態では、判定回路50は、比較器55、57を備え、ピーク電圧Vpと、閾値Vth_off_H、Vth_off_L、Vth_on_H、Vth_on_Lと比較して、信号Son、Soffの値を[H]、あるいは[L]としていたが、第8実施形態では、ピーク電圧Vp1、Vp2は、給電側制御部20内に設けられたマイクロコンピュータ20fに入力され、マイクロコンピュータ20fがピーク電圧Vp1、Vp2の遷移に基づいて演算を行い、切替信号Ssを出力する。このように、比較器55、57を用いずに測定結果をマイクロコンピュータ20fで判断し、切替信号Ssを出力するようにしてもよい。マイクロコンピュータ20fは、コンパレータを用いて、電圧Vp1、Vp2を内部の判定値と比較してもよく、電圧Vp1、Vp2をA/D変換によりデジタル化し、このデジタル値を判定値と比較してもよい。
【0092】
以上、本実施形態によれば、マイクロコンピュータ20fは、ピーク電圧Vp1、Vp2の遷移に基づくソフトウエア処理により、切替信号Ssを出力することができる。また、マイクロコンピュータ20fは、ソフトウエア処理により、送電回路40運転時間(切替信号Ssが[H]の時間)に応じて最適なクールダウン期間を設けることで、送電回路40の稼働率を高めることが可能となる。
【0093】
・第8実施形態の変形例:
図31は、第8実施形態の変形例における送電系の回路を示す説明図である。図28に示す第8実施形態と比較すると、送電回路40gに送電回路温度測定部40Tが追加されている点が相違する。送電回路温度測定部40Tは、送電回路40gの送電コイル41の温度を測定する。第8実施形態の変形例では、給電側制御部20は、送電回路40fが共振状態から非共振状態に遷移したとき、送電回路40fの温度に応じた期間、切替信号SsをLに維持する。
【0094】
図32は、第8実施形態の変形例におけるピーク検出部50gの構成を示す説明図である。第8実施形態のピーク検出部50fの構成と、第8実施形態の変形例のピーク検出部50gの構成は、同じである。第8実施形態の変形例では、送電回路温度測定部40Tが測定した送電回路40の温度Tprmyがマイクロコンピュータ20gに入力されている点が相違する。
【0095】
図33は、マイクロコンピュータ20gが実行する切替信号Ssの出力処理フローチャートである。ステップS300で、信号Ss0が[L]に遷移すると(ステップS300:Yes)、マイクロコンピュータ20gは、処理をステップS310に移行する。ステップS310では、マイクロコンピュータ20gは、送電回路温度測定部40Tを用いて送電回路40の温度Tprmyを取得する。
【0096】
ステップS320では、マイクロコンピュータ20gは、温度Tprmyが、第1判定値T1未満か否かを判断する。温度Tprmyは、温度Tprmyが、第1判定値T1未満の場合(ステップS320:Yes)には、処理をステップS340に移行し、温度Tprmyが、第1判定値T1以上の場合ステップS320:No)には、処理をステップS330に移行する。
【0097】
ステップS330では、マイクロコンピュータ20gは、温度Tprmyが、第2判定値T2未満か否かを判断する。第2判定値T2は第1判定値T1より高い温度である。マイクロコンピュータ20gは、温度Tprmyが、第2判定値T2未満の場合(ステップS330:Yes)には、処理をステップS350に移行し、温度Tprmyが、第2判定値T2以上の場合(ステップS330:No)には、処理をステップS360に移行する。
【0098】
マイクロコンピュータ20gは、ステップS340では、オフ保持時間Toff_prsvをTp1とする。オフ保持時間Toff_prsvとは、切替信号Ssを[L]に保持する時間である。マイクロコンピュータ20gは、ステップS350では、オフ保持時間Toff_prsvをTp2とする。L保持処理部22は、ステップS360では、オフ保持時間Toff_prsvをTp3とする。なお、Tp1、Tp2、Tp3の大きさは、Tp1<Tp2<Tp3である。従って、オフ保持時間Toff_prsvは、送電回路40の温度Tprmyが高いほど長い。
【0099】
ステップS370では、マイクロコンピュータ20gは、オフ保持経過時間Toffをリセットし、オフ保持経過時間Toffのカウントを開始する。また、マイクロコンピュータ20gは、信号Sson、Soffの値の関わらず、出力する切替信号Ssを[L]に保持する。
【0100】
ステップS380では、マイクロコンピュータ20gは、オフ保持経過時間Toffがオフ保持時間Toff_prsvを超えたか否かを判断する。マイクロコンピュータ20gは、オフ保持経過時間Toffがオフ保持時間Toff_prsvを超えた場合には(ステップS380:Yes)、処理をステップS390に移行する。ステップS390では、マイクロコンピュータ20gは、切替信号Ssを[L]に保持する処理を終了する。
【0101】
図34は、送電回路40の温度Tprmyとオフ保持時間Toff_prsvの関係を示すグラフである。グラフからわかるように、送電回路40の温度TprmyがT1未満の場合は、オフ保持時間Toff_prsvはTp1であり、送電回路40の温度TprmyがT1以上T2未満の場合は、オフ保持時間Toff_prsvはTp2であり、送電回路40の温度TprmyがT2以上の場合は、オフ保持時間Toff_prsvはTp3である。
【0102】
本実施形態によれば、切替信号Ssが[H]から[L]に切り替わった後、信号Son、Soffの値によって切替信号Ssが[H]に遷移する条件を満たすようになっても、マイクロコンピュータ20gは、切替信号Ssが[H]から[L]に切り替わったときの送電回路40の温度Tprmyに応じた時間、切替信号Ssは[L]に保持し、送電回路40を共振状態にせず、送電状態としない。その結果、送電回路40や送電コイル41をクールダウンでき、送電回路40の稼働率を向上できる。
【0103】
上記実施形態では、マイクロコンピュータ20gは、送電回路40の温度Tprmyにより、オフ保持時間Toff_prsvを3段階に切り替えていたが、4段以上に切り替えてもよく、送電回路40の温度Tprmyに応じてオフ保持時間Toff_prsvを無段階に切り替えてもよい。本実施形態では、マイクロコンピュータ20gを用いたソフトウエア処理により切替信号SsをLに保持したが、第7実施形態と同様に、L保持処理部を用いてもよい。
【0104】
・第9実施形態:
図35は、第9実施形態の切替回路60hを示す説明図である。第9実施形態の切替回路60hは、図21に示す第6実施形態の切替回路60dと比較すると、1ショットパルス生成回路61dと2つのインバータI6、I7の代わりに、積分回路66と、比較器67を備える点で相違する。第9実施形態ではアンド回路65の出力信号をSs1とている。
【0105】
積分回路66は、アンド回路65の出力信号Ss1が[H]に遷移したとき、出力信号Ss1を積分して、信号Sintを出力する。信号Sintは、アンド回路65の出力信号Ss1が[H]で維持されている時間に応じた値を有する。比較器67は、信号Sintと判定値Tthと比較し、信号Sintが判定値Tthよりも大きい場合には信号Scmp_intとして[L]を出力し、信号Sintが判定値Tth以下の場合には、信号Scmp_intとして[H]を出力する。比較器67から出力された信号Scmp_intは、アンド回路65hに入力されている。比較器67の出力である信号Scmp_intが[L]の場合には、アンド回路65hの出力は、[L]となる。一方、比較器67の出力が[H]の場合には、アンド回路65hの出力は、アンド回路65の出力Ss1と同じである。
【0106】
以上、第9実施形態によれば、信号Ss1が[H]となり、送電回路40が非共振状態から共振状態に切り替わった際に、送電回路40が共振状態となった時間を積分回路66によりカウントし、カウント結果である信号Sintが設定した閾値Tthを越えたとき、送電回路40を非共振状態に切り替える。その結果、送電回路40の発熱による故障を回避することができる。
【0107】
・第10実施形態:
上記第1実施形態から第9実施形態までの実施形態は、車両202が送電回路40に近づいたとき、送電回路40と車両202に設けられた受電コイル241を含む受電回路240との結合の程度に対応した物理量を測定し、送電回路40の状態を、共振状態、あるいは、非共振状態としている。第10実施形態では、逆に、車両202の受電側制御部220が、バッテリ210に充電された電力を用いて受電コイル241に磁束を発生させ、この磁束により送電回路40の物理量を変化させ、この変化により、送電回路40の状態を、非共振状態から共振状態に移行させる。
【0108】
車両202の受電コイル241が、送電回路40の送電コイル41に近づくと、第1実施形態と同様に、送電コイル41と受電コイル241との結合が大きくなり、送電コイル41に流れる電流が大きくなる。このとき、受電側制御部220が、受電回路240を共振状態とし、バッテリ210から受電回路240に電力を供給すると、受電コイル241に磁束が生じ、その磁束は、送電コイル41を貫く。その結果、送電コイル41の電圧が高くなる。このように、給電側制御部20は、能動的に、送電システム100の送電回路40を非共振状態から共振状態に切り替えさせることができる。
【0109】
以上、第10実施形態によれば、車両202の受電システム200が、能動的に地上の送電システム100に働きかけることで、送電システム100の送電回路40の状態を非共振状態から共振状態に移行させることができる。すなわち、受電システム200が電力を要求したいときに、送電システム100に給電を要求できる。なお、第10実施形態において、物理量の検出判定の構成や使う閾値は、第1実施形態から第9実施形態と同じであってもよい。非共振状態と共振状態との切替の自由度を向上できる。
【0110】
第10実施形態において、車両202の受電システム200に異常が生じた場合、地上側の送電システム100の物理量、例えば、送電コイル41の電圧が変化する。例えば、受電側制御部220が受電システム200の異常を検知して送電システム100からの電力供給を切り離す保護動作を行った場合、送電回路40の共振状態(第2状態)における送電コイル41の電圧が閾値Vth_on_Lを下回る。給電側制御部20は、送電コイル41の電圧が閾値Vth_on_Lを下回ることを検出した場合、送電システム100の送電回路40の状態を共振状態から非共振状態に移行させてもよい。
【0111】
また、第10実施形態において、受電システム200に生じた異常の態様によっては、送電回路40の共振状態(第2状態)における送電コイル41の電圧が、逆に異常に高くなる場合も考えられる。給電側制御部20は、このような送電コイル41の電圧が高くなる異常を検知した場合には、送電システム100の送電回路40の状態を共振状態から非共振状態に移行させてもよい。
【0112】
以上のことをまとめると、第10実施形態において、給電側制御部20は、物理量の大きさが予め定められた範囲の上限を超え、あるいは下限を下回った場合、受電回路240に異常が生じたと判断し、送電回路40の状態を第2状態から第1状態に切り替えてもよい。これにより、受電システム200に悪影響を与えることを抑制できる。また、非共振状態と共振状態との切替の自由度を向上できる。
【0113】
本開示は、上述の実施形態に限られるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において種々の構成で実現することができる。例えば、発明の概要の欄に記載した各形態中の技術的特徴に対応する実施形態の技術的特徴は、上述の課題の一部又は全部を解決するために、あるいは、上述の効果の一部又は全部を達成するために、適宜、差し替えや、組み合わせを行うことが可能である。また、その技術的特徴が本明細書中に必須なものとして説明されていなければ、適宜、削除することが可能である。
【符号の説明】
【0114】
10…電源回路、20…給電側制御部、20f、20g…マイクロコンピュータ、21…測定部、22…L保持処理部、23…コンデンサ電圧検出回路、30…高周波生成回路、40、40f、40g…送電回路、40T…送電回路温度測定部、41…送電コイル、42、43…コンデンサ、44…送電回路、45…コンデンサ、46…送電回路、47、47a、47b…送電コイル、48…タップ、50…判定回路、50f、50g…ピーク検出部、51、51f1、51f2…整流器、52、52f1、52f2…オペアンプ、53、53f1、53f2…ピーク検出回路、54、56…閾値切替スイッチ、55、57…比較器、60、60a、60b、60c、60d、60d1、60e、60h…切替回路、61、61d…1ショットパルス生成回路、62…遅延回路、63…アンド回路、64…オア回路、65、65b、65c、65d、65d1、65d2、65h…アンド回路、70…駆動回路、71…遅延回路、72…アンド回路、73…1ショットパルス生成回路、100…送電システム、105…道路、140…中継回路、141…中継コイル、142、143…コンデンサ、150…検出回路、151…検出コイル、152…コイル電圧検出回路、160…第1基板、161…第2基板、200…受電システム、202…車両、210…バッテリ、215…補機バッテリ、220…受電側制御部、230…整流回路、240…受電回路、241…受電コイル、242…コンデンサ、260…DC/DCコンバータ回路、270…インバータ回路、280…モータジェネレータ、290…補機、400…給電システム
図1
図2
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