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特開2022-184781排泄検知システム、排泄検知方法、検出装置、排泄検知装置及び排泄検知プログラム
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022184781
(43)【公開日】2022-12-13
(54)【発明の名称】排泄検知システム、排泄検知方法、検出装置、排泄検知装置及び排泄検知プログラム
(51)【国際特許分類】
   A61G 12/00 20060101AFI20221206BHJP
   G08B 25/04 20060101ALI20221206BHJP
   G08B 21/02 20060101ALI20221206BHJP
   A61F 5/44 20060101ALI20221206BHJP
   A61B 5/11 20060101ALI20221206BHJP
   A61B 5/107 20060101ALI20221206BHJP
   G06Q 50/22 20180101ALI20221206BHJP
【FI】
A61G12/00 Z
G08B25/04 K
G08B21/02
A61F5/44 S
A61B5/11 100
A61B5/107 300
A61B5/11
G06Q50/22
【審査請求】未請求
【請求項の数】31
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022085420
(22)【出願日】2022-05-25
(31)【優先権主張番号】P 2021091652
(32)【優先日】2021-05-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000947
【氏名又は名称】弁理士法人あーく事務所
(72)【発明者】
【氏名】中村 浩造
(72)【発明者】
【氏名】白坂 康之
(72)【発明者】
【氏名】川端 一史
(72)【発明者】
【氏名】諸田 敦
【テーマコード(参考)】
4C038
4C098
4C341
5C086
5C087
5L099
【Fターム(参考)】
4C038VA04
4C038VA16
4C038VB25
4C038VB32
4C038VB33
4C038VC20
4C098AA09
4C098CD08
4C341LL30
5C086AA22
5C086BA07
5C086CA15
5C086CB20
5C086CB40
5C086DA40
5C086FA06
5C086FA17
5C086FA18
5C086FA20
5C087AA02
5C087AA03
5C087AA09
5C087AA10
5C087AA19
5C087AA37
5C087AA51
5C087DD03
5C087DD29
5C087DD30
5C087EE14
5C087EE18
5C087FF01
5C087FF02
5C087FF04
5C087GG08
5C087GG66
5C087GG70
5C087GG83
5L099AA11
5L099AA22
(57)【要約】
【課題】対象者の排泄状態を検知する排泄検知システム、検出装置、排泄検知装置、排泄検知方法及び排泄検知プログラムを提供する。
【解決手段】排泄検知システムは、対象者に基づき発生する波動を検出する検出部10と、検出部10が検出した波動を処理する波動処理部と、波動処理部の処理結果に基づいて対象者の排泄状態を判定する判定部とを備える。検出部10が検出する波動は、対象者の体内の動きに基づく振動データ及び音データ、並びに対象者の体表面の動きに基づく振動データ及び音データのうちの少なくとも一つを含む。検出部10及び波動処理部は、例えば、検出装置1として実現され、判定部は、例えば、排泄検知装置2として実現される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象者の排泄状態を検知する排泄検知システムであって、
対象者に基づき発生する波動を検出する検出部と、
前記検出部が検出した波動を処理する波動処理部と、
前記波動処理部の処理結果に基づいて対象者の排泄状態を判定する判定部と
を備え、
前記検出部が検出する波動は、対象者の体内の動きに基づく振動データ及び音データ、並びに対象者の体表面の動きに基づく振動データ及び音データのうちの少なくとも一つを含む
ことを特徴とする排泄検知システム。
【請求項2】
請求項1に記載の排泄検知システムであって、
前記波動処理部は、
検出した波動から抽出対象の周波数帯の波動を抽出する抽出部を備える
ことを特徴とする排泄検知システム。
【請求項3】
請求項2に記載の排泄検知システムであって、
前記抽出部は、
前記検出部が検出した波動を周波数変換した結果に基づいて、抽出対象の周波数帯の波動を抽出する
ことを特徴とする排泄検知システム。
【請求項4】
請求項2又は請求項3に記載の排泄検知システムであって、
前記抽出部は、
100~2000Hzの周波数帯を含む波動を、抽出対象の周波数帯の波動として抽出し、
前記判定部は、
前記抽出部が抽出した100~2000Hzの周波数帯の波動の処理結果に基づいて、対象者の排尿に関する状態を判定する
ことを特徴とする排泄検知システム。
【請求項5】
請求項2又は請求項3に記載の排泄検知システムであって、
前記抽出部は、
1~200Hzの周波数帯を含む波動を、抽出対象の周波数帯の波動として抽出し、
前記判定部は、
前記抽出部が抽出した1~200Hzの周波数帯の波動の処理結果に基づいて、対象者の排便に関する状態を判定する
ことを特徴とする排泄検知システム。
【請求項6】
請求項2又は請求項3に記載の排泄検知システムであって、
前記判定部は、対象者の脈拍及び呼吸のうちの少なくとも一つの波動に基づいて、対象者の排泄状態を判定する
ことを特徴とする排泄検知システム。
【請求項7】
請求項6に記載の排泄検知システムであって、
前記判定部は、対象者の体動に基づいて、対象者の排泄状態を判定する
ことを特徴とする排泄検知システム。
【請求項8】
請求項2又は請求項3に記載の排泄検知システムであって、
前記抽出部は、
バンドパスフィルタを含む
ことを特徴とする排泄検知システム。
【請求項9】
請求項2又は請求項3に記載の排泄検知システムであって、
前記抽出部は、
前記検出部が検出した波動を周波数変換する変換部を含み、
前記変換部が周波数変換した結果に基づいて、抽出対象の周波数帯の波動を抽出する
ことを特徴とする排泄検知システム。
【請求項10】
請求項9に記載の排泄検知システムであって、
前記判定部は、
前記変換部が周波数変換した波動の周波数帯毎の強度に基づいて、対象者の排泄状態を判定する
ことを特徴とする排泄検知システム。
【請求項11】
請求項9に記載の排泄検知システムであって、
対象者に基づき発生する波動を周波数変換した結果に基づく情報を入力値として、教師あり学習を行った判定用学習済みモデルを備え、
前記判定部は、
前記判定用学習済みモデルに基づいて、対象者の排泄状態を判定する
ことを特徴とする排泄検知システム。
【請求項12】
請求項11に記載の排泄検知システムであって、
前記判定用学習済みモデルは、前記周波数変換した結果に基づく情報として、パワースペクトル、ケプストラム、波動の大きさ、基本周波数、フォルマント係数及びメル周波数ケプストラム係数のうち少なくとも一つを含む
ことを特徴とする排泄検知システム。
【請求項13】
請求項11に記載の排泄検知システムであって、
前記検出部が検出した波動に基づく情報を入力値として、教師あり学習を行った判定用学習済みモデルを備え、
前記判定部は、
前記判定用学習済みモデルに基づいて、対象者の排泄状態を判定する
ことを特徴とする排泄検知システム。
【請求項14】
請求項11に記載の排泄検知システムであって、
前記判定用学習済みモデルは、対象者の性別を含む情報を入力値に含む
ことを特徴とする排泄検知システム。
【請求項15】
請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の排泄検知システムであって、
前記検出部が検出する波動は、対象者の体内の動きとして、臓器の動きに起因する波動を含む
ことを特徴とする排泄検知システム。
【請求項16】
請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の排泄検知システムであって、
前記判定部が判定する排泄状態は、排泄行為及び排泄行為の予兆のうちの少なくとも一つを含む
ことを特徴とする排泄検知システム。
【請求項17】
請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の排泄検知システムであって、
前記検出部は、
圧電センサを含む
ことを特徴とする排泄検知システム。
【請求項18】
請求項17に記載の排泄検知システムであって、
前記圧電センサは、エレクトレットフォームを用いて形成されている
ことを特徴とする排泄検知システム。
【請求項19】
請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の排泄検知システムであって、
寝具を更に備え、
前記検出部は、対象者に基づき発生する波動を、前記寝具を介して検出する
ことを特徴とする排泄検知システム。
【請求項20】
請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の排泄検知システムであって、
前記検出部は、異なる位置の波動を検出する複数の検出領域を有し、
前記検出部が検出する波動は、対象者の心拍、呼吸及び体動のうち少なくとも一つに基づく波動を含み、
前記複数の検出領域がそれぞれ検出した波動に基づいて、対象者の姿勢を判定する姿勢判定部を備える
ことを特徴とする排泄検知システム。
【請求項21】
請求項20に記載の排泄検知システムであって、
前記姿勢判定部は、
対象者の姿勢として、右臥位、左臥位、仰臥位、伏臥位及び座位のうち少なくとも一つを特定姿勢として判定する
ことを特徴とする排泄検知システム。
【請求項22】
請求項21に記載の排泄検知システムであって、
前記姿勢判定部が特定姿勢であると判定した場合、前記複数の検出領域のうちから前記判定部の判定に用いる波動を検出する検出領域を選択する選択部を備え、
前記判定部は、
前記選択部が選択した検出領域から検出される波動に基づいて、対象者の排泄状態を判定する
ことを特徴とする排泄検知システム。
【請求項23】
請求項21に記載の排泄検知システムであって、
前記姿勢判定部が特定姿勢であると判定した場合、前記複数の検出領域毎に増幅処理を行う増幅部を備える
ことを特徴とする排泄検知システム。
【請求項24】
請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の排泄検知システムであって、
前記検出部は、異なる位置の波動を検出する複数の検出領域を有し、
前記検出部が検出する波動は、対象者の心拍に基づく波動を含み、
前記複数の検出領域がそれぞれ検出した波動に基づいて、対象者の排泄部位の位置を判定する排泄位置判定部を備える
ことを特定する排泄検知システム。
【請求項25】
請求項24に記載の排泄検知システムであって、
前記複数の検出領域がそれぞれ検出した波動に基づいて、対象者の心臓の位置を判定する心臓位置判定部を備え、
前記排泄位置判定部は、前記心臓位置判定部が判定した心臓の位置、及び前記複数の検出領域がそれぞれ検出した波動に基づいて、対象者の排泄部位の位置を判定する
ことを特徴とする排泄検知システム。
【請求項26】
請求項24に記載の排泄検知システムであって、
前記排泄位置判定部が判定した排泄部位の位置に応じて、前記複数の検出領域のうちから前記判定部の判定に用いる波動を検出する検出領域を選択する選択部を備え、
前記判定部は、
前記選択部が選択した検出領域から検出される波動に基づいて、対象者の排泄状態を判定する
ことを特徴とする排泄検知システム。
【請求項27】
請求項24に記載の排泄検知システムであって、
前記排泄位置判定部が判定した排泄部位の位置に応じて、前記複数の検出領域毎に増幅処理を行う増幅部を備える
ことを特徴とする排泄検知システム。
【請求項28】
対象者の排泄状態を検知する排泄検知方法であって、
対象者の体内の動きに基づく振動データ及び音データ、並びに対象者の体表面の動きに基づく振動データ及び音データのうちの少なくとも一つを含む対象者に基づき発生する波動を検出する手順と、
検出した波動に基づいて、対象者の排泄状態を判定する手順と
を含むことを特徴とする排泄検知方法。
【請求項29】
対象者に基づき発生する波動を検出する検出部を備える検出装置であって、
前記検出部が検出した波動を処理する波動処理部と、
前記波動処理部が処理した処理結果を出力する出力部と
を備え、
前記検出部が検出する波動は、対象者の体内の動きに基づく振動データ及び音データ、並びに対象者の体表面の動きに基づく振動データ及び音データのうちの少なくとも一つを含み、
前記波動処理部は、前記検出部が検出した波動に対し、対象者の排泄状態を判定可能な結果信号にすべく処理をし、
前記出力部は、前記波動処理部による処理結果に基づいて対象者の排泄状態を判定する装置へ処理結果を出力する
ことを特徴とする検出装置。
【請求項30】
対象者の排泄状態を検知する排泄検知装置であって、
対象者に基づき発生する波動の検出結果に基づいて、対象者の排泄状態を判定する判定手段を備え、
前記波動は、対象者の体内の動きに基づく振動データ及び音データ、並びに対象者の体表面の動きに基づく振動データ及び音データのうちの少なくとも一つを含む
ことを特徴とする排泄検知装置。
【請求項31】
コンピュータに、対象者の排泄状態を検知する手順を実行させる排泄検知プログラムであって、
コンピュータに、
対象者の体内の動きに基づく振動データ及び音データ、並びに対象者の体表面の動きに基づく振動データ及び音データのうちの少なくとも一つを含む対象者に基づき発生する波動の検出結果に基づいて、対象者の排泄状態を判定する手順を実行させる
ことを特徴とする排泄検知プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、対象者の排泄状態を検知する排泄検知システム、排泄検知方法、検出装置、排泄検知装置及び排泄検知プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
病院、老人ホーム、介護施設等の施設内において、看護師、介護士等の担当者は、患者、入居者等の要介護者の状態を確認する業務を行っている。状態の確認には、排尿、排便等の排泄に関する状態の確認が含まれている。例えば、特許文献1には、排尿、排便等の排泄があったことを検知するおむつ用センサが提案されており、担当者が要介護者の排泄状態を確認する作業の改善が見込まれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平9-294762号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1は、おむつにセンサを組み込んだものであり、おむつの着用が必要になるため、要介護者にとっての身体的又は心理的負担になる場合がある。また、おむつを取り替える都度、おむつ用センサの取り替え、調整等の作業が必要となる。
【0005】
本発明は斯かる事情に鑑みてなされたものであり、おむつを着用しない場合であっても、対象者の排泄状態を検知することが可能な排泄検知システムの提供を主たる目的とする。
【0006】
また、本発明は、本発明に係る排泄検知システム等を用いた排泄検知方法の提供を他の目的とする。
【0007】
また、本発明は、本発明に係る排泄検知システムにて用いられる検出装置及び排泄検知装置の提供を更に他の目的とする。
【0008】
また、本発明は、本発明に係る排泄検知装置を実現するための排泄検知プログラムの提供を更に他の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために本願記載の排泄検知システムは、対象者の排泄状態を検知する排泄検知システムであって、対象者に基づき発生する波動を検出する検出部と、前記検出部が検出した波動を処理する波動処理部と、前記波動処理部の処理結果に基づいて対象者の排泄状態を判定する判定部とを備え、前記検出部が検出する波動は、対象者の体内の動きに基づく振動データ及び音データ、並びに対象者の体表面の動きに基づく振動データ及び音データのうちの少なくとも一つを含むことを特徴とする。
【0010】
また、本願記載の排泄検知システムにおいて、前記波動処理部は、検出した波動から抽出対象の周波数帯の波動を抽出する抽出部を備えることを特徴とする。
【0011】
また、本願記載の排泄検知システムにおいて、前記抽出部は、前記検出部が検出した波動を周波数変換した結果に基づいて、抽出対象の周波数帯の波動を抽出することを特徴とする。
【0012】
また、本願記載の排泄検知システムにおいて、前記抽出部は、100~2000Hzの周波数帯を含む波動を、抽出対象の周波数帯の波動として抽出し、前記判定部は、前記抽出部が抽出した100~2000Hzの周波数帯の波動の処理結果に基づいて、対象者の排尿に関する状態を判定することを特徴とする。
【0013】
また、本願記載の排泄検知システムにおいて、前記抽出部は、1~200Hzの周波数帯を含む波動を、抽出対象の周波数帯の波動として抽出し、前記判定部は、前記抽出部が抽出した1~200Hzの周波数帯の波動の処理結果に基づいて、対象者の排便に関する状態を判定することを特徴とする。
【0014】
また、本願記載の排泄検知システムにおいて、前記判定部は、対象者の脈拍及び呼吸のうちの少なくとも一つの波動に基づいて、対象者の排泄状態を判定することを特徴とする。
【0015】
また、本願記載の排泄検知システムにおいて、前記判定部は、対象者の体動に基づいて、対象者の排泄状態を判定することを特徴とする。
【0016】
また、本願記載の排泄検知システムにおいて、前記抽出部は、バンドパスフィルタを含むことを特徴とする。
【0017】
また、本願記載の排泄検知システムにおいて、前記抽出部は、前記検出部が検出した波動を周波数変換する変換部を含み、前記変換部が周波数変換した結果に基づいて、抽出対象の周波数帯の波動を抽出することを特徴とする。
【0018】
また、本願記載の排泄検知システムにおいて、前記判定部は、前記変換部が周波数変換した波動の周波数帯毎の強度に基づいて、対象者の排泄状態を判定することを特徴とする。
【0019】
また、本願記載の排泄検知システムにおいて、対象者に基づき発生する波動を周波数変換した結果に基づく情報を入力値として、教師あり学習を行った判定用学習済みモデルを備え、前記判定部は、前記判定用学習済みモデルに基づいて、対象者の排泄状態を判定することを特徴とする。
【0020】
また、本願記載の排泄検知システムにおいて、前記判定用学習済みモデルは、前記周波数変換した結果に基づく情報として、パワースペクトル、ケプストラム、波動の大きさ、基本周波数、フォルマント係数及びメル周波数ケプストラム係数のうち少なくとも一つを含むことを特徴とする。
【0021】
また、本願記載の排泄検知システムにおいて、前記検出部が検出した波動に基づく情報を入力値として、教師あり学習を行った判定用学習済みモデルを備え、前記判定部は、前記判定用学習済みモデルに基づいて、対象者の排泄状態を判定することを特徴とする。
【0022】
また、本願記載の排泄検知システムにおいて、前記判定用学習済みモデルは、対象者の性別を含む情報を入力値に含むことを特徴とする。
【0023】
また、本願記載の排泄検知システムにおいて、前記検出部が検出する波動は、対象者の体内の動きとして、臓器の動きに起因する波動を含むことを特徴とする。
【0024】
また、本願記載の排泄検知システムにおいて、前記判定部が判定する排泄状態は、排泄行為及び排泄行為の予兆のうちの少なくとも一つを含むことを特徴とする。
【0025】
また、本願記載の排泄検知システムにおいて、前記検出部は、圧電センサを含むことを特徴とする。
【0026】
また、本願記載の排泄検知システムにおいて、前記圧電センサは、エレクトレットフォームを用いて形成されていることを特徴とする。
【0027】
また、本願記載の排泄検知システムにおいて、寝具を更に備え、前記検出部は、対象者に基づき発生する波動を、前記寝具を介して検出することを特徴とする。
【0028】
また、本願記載の排泄検知システムにおいて、前記検出部は、異なる位置の波動を検出する複数の検出領域を有し、前記検出部が検出する波動は、対象者の心拍、呼吸及び体動のうち少なくとも一つに基づく波動を含み、前記複数の検出領域がそれぞれ検出した波動に基づいて、対象者の姿勢を判定する姿勢判定部を備えることを特徴とする。
【0029】
また、本願記載の排泄検知システムにおいて、前記姿勢判定部は、対象者の姿勢として、右臥位、左臥位、仰臥位、伏臥位及び座位のうち少なくとも一つを特定姿勢として判定することを特徴とする。
【0030】
また、本願記載の排泄検知システムにおいて、前記姿勢判定部が特定姿勢であると判定した場合、前記複数の検出領域のうちから前記判定部の判定に用いる波動を検出する検出領域を選択する選択部を備え、前記判定部は、前記選択部が選択した検出領域から検出される波動に基づいて、対象者の排泄状態を判定することを特徴とする。
【0031】
また、本願記載の排泄検知システムにおいて、前記姿勢判定部が特定姿勢であると判定した場合、前記複数の検出領域毎に増幅処理を行う増幅部を備えることを特徴とする。
【0032】
また、本願記載の排泄検知システムにおいて、前記検出部は、異なる位置の波動を検出する複数の検出領域を有し、前記検出部が検出する波動は、対象者の心拍に基づく波動を含み、前記複数の検出領域がそれぞれ検出した波動に基づいて、対象者の排泄部位の位置を判定する排泄位置判定部を備えることを特定する。
【0033】
また、本願記載の排泄検知システムにおいて、前記複数の検出領域がそれぞれ検出した波動に基づいて、対象者の心臓の位置を判定する心臓位置判定部を備え、前記排泄位置判定部は、前記心臓位置判定部が判定した心臓の位置、及び前記複数の検出領域がそれぞれ検出した波動に基づいて、対象者の排泄部位の位置を判定することを特徴とする。
【0034】
また、本願記載の排泄検知システムにおいて、前記排泄位置判定部が判定した排泄部位の位置に応じて、前記複数の検出領域のうちから前記判定部の判定に用いる波動を検出する検出領域を選択する選択部を備え、前記判定部は、前記選択部が選択した検出領域から検出される波動に基づいて、対象者の排泄状態を判定することを特徴とする。
【0035】
また、本願記載の排泄検知システムにおいて、前記排泄位置判定部が判定した排泄部位の位置に応じて、前記複数の検出領域毎に増幅処理を行う増幅部を備えることを特徴とする。
【0036】
更に、本願記載の排泄検知方法は、対象者の体内の動きに基づく振動データ及び音データ、並びに対象者の体表面の動きに基づく振動データ及び音データのうちの少なくとも一つを含む対象者に基づき発生する波動を検出する手順と、検出した波動に基づいて、対象者の排泄状態を判定する手順とを含むことを特徴とする。
【0037】
更に、本願記載の検出装置は、対象者に基づき発生する波動を検出する検出部を備える検出装置であって、前記検出部が検出した波動を処理する波動処理部と、前記波動処理部が処理した処理結果を出力する出力部とを備え、前記検出部が検出する波動は、対象者の体内の動きに基づく振動データ及び音データ、並びに対象者の体表面の動きに基づく振動データ及び音データのうちの少なくとも一つを含み、前記波動処理部は、前記検出部が検出した波動に対し、対象者の排泄状態を判定可能な結果信号にすべく処理をし、前記出力部は、前記波動処理部による処理結果に基づいて対象者の排泄状態を判定する装置へ処理結果を出力することを特徴とする。
【0038】
更に、本願記載の排泄検知装置は、対象者の排泄状態を検知する排泄検知装置であって、対象者に基づき発生する波動の検出結果に基づいて、対象者の排泄状態を判定する判定手段を備え、前記波動は、対象者の体内の動きに基づく振動データ及び音データ、並びに対象者の体表面の動きに基づく振動データ及び音データのうちの少なくとも一つを含むことを特徴とする。
【0039】
更に、本願記載の排泄検知プログラムは、コンピュータに、対象者の排泄状態を検知する手順を実行させる排泄検知プログラムであって、コンピュータに、対象者の体内の動きに基づく振動データ及び音データ、並びに対象者の体表面の動きに基づく振動データ及び音データのうちの少なくとも一つを含む対象者に基づき発生する波動の検出結果に基づいて、対象者の排泄状態を判定する手順を実行させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0040】
本発明に係る排泄検知システム、排泄検知方法、検出装置、排泄検知装置及び排泄検知プログラムは、対象者に基づき発生する波動に基づいて対象者の状態を判定する。これにより、本発明では、対象者の排泄に関する状態を把握することが可能である等、優れた効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0041】
図1】本願記載の排泄検知システムの構成例を模式的に示す概略図である。
図2】本願記載の排泄検知システムが備える検出装置等の装置の構成例を示すブロック図である。
図3A】本願記載の排泄検知システムが備える検出装置の検出部にて用いられる圧電センサの一例を概念的に示す模式図である。
図3B】本願記載の排泄検知システムが備える検出装置の検出部にて用いられる圧電センサの一例を概念的に示す模式図である。
図4】本願記載の排泄検知システムが備える排泄検知装置及び通信装置等の装置の構成例を示すブロック図である。
図5】本願記載の排泄検知システムが備える検出装置の検出処理の一例を示すフローチャートである。
図6】本願記載の排泄検知システムが備える排泄検知装置の判定処理の一例を示すフローチャートである。
図7】本願記載の排泄検知システムが備える排泄検知装置の判定第1処理の一例を示すフローチャートである。
図8】本願記載の排泄検知システムが備える排泄検知装置の判定第2処理の一例を示すフローチャートである。
図9】本願記載の排泄検知システムが備える排泄検知装置の判定第3処理の一例を示すフローチャートである。
図10】本願記載の排泄検知システムが備える排泄検知装置の判定第4処理の一例を示すフローチャートである。
図11】本願記載の排泄検知システムが備える検出装置の構成例を模式的に示す概略図である。
図12】本願記載の排泄検知システムが備える検出装置の構成例を模式的に示す概略図である。
図13】本願記載の排泄検知システムが備える検出装置の構成例を模式的に示す概略図である。
図14】本願記載の排泄検知システムが備える検出装置の検出処理の一例を示すフローチャートである。
図15】本願記載の排泄検知システムが備える排泄検知装置の判定処理の一例を示すフローチャートである。
図16】本願記載の排泄検知システムが備える排泄検知装置の判定処理の一例を示すフローチャートである。
図17】本願記載の排泄検知システムの構成例を示す概略ブロック図である。
図18】本願記載の排泄検知システムの構成例を示す概略ブロック図である。
図19】本願記載の排泄検知システムの構成例を示す概略ブロック図である。
図20】本願記載の排泄検知システムの構成例を示す概略ブロック図である。
図21】本願記載の排泄検知システムの構成例を示す概略ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0042】
<適用例>
本願記載の排泄検知システムは、検出装置、排泄検知装置等の各種装置を用いたシステムであり、対象者の排泄状態の検知等の目的に用いられる。以下では、図面を参照しながら、図面に例示された検出装置1、排泄検知装置2等の具体例について説明する。なお、以下の実施形態は、本発明を具現化した一例であって、本発明の技術的範囲を限定する性格のものではない。
【0043】
<排泄検知システム>
図1は、本願記載の排泄検知システムの構成例を模式的に示す概略図である。本願記載の排泄検知システムは、病院、老人ホーム、介護施設等の施設内に設置される。施設内には、患者、入居者等の要介護者(対象者)が入る病室、介護室等の部屋が設置されており、部屋内には要介護者が使用するベッド3が配置されている。また、施設内には、要介護者の看護、介護等のケアを行う看護師、介護士、医師等の職員が待機するナースステーション等の待機所が設置されている。
【0044】
要介護者が使用するベッド3は、床板30を備え、床板30の上には、寝具としてマット31が載置されており、マット31の上には、必要に応じてシーツ等の寝具が敷かれる。ベッド3には、検出装置1が取り付けられている。検出装置1は、シート状の圧電センサ10a(図2等参照)を用いた検出部10を備えている。検出装置1の検出部10は、例えば、要介護者が使用するベッド3のマット31、シーツ等の寝具の下に敷かれる。即ち、検出部10は、マット31、シーツ等の寝具を介して、対象者に関する検出を行う。図1では、ベッド3の床板30の上に検出部10を載置し、その上に、マット31を載置した形態を例示している。なお、検出部10は、シーツの上に載置し、要介護者に直接接するようにしてもよい。
【0045】
検出装置1には、排泄検知装置2が接続されており、検出装置1から出力される電気信号は通信線を介して排泄検知装置2に入力される。なお、検出装置1と排泄検知装置2との間は、Bluetooth(登録商標)等の無線通信規格に基づく無線通信により、通信を行うようにすることも可能である。
【0046】
排泄検知装置2と通信可能な装置として、看護師が所持するナースコール受信装置、ナースステーションに配備されたモニタ、外部の関係者が保持する携帯電話等の各種通信装置4が用いられている。排泄検知装置2及び通信装置4は、無線LAN(Local Area Network)、有線LAN、WAN(Wide Area Network )、専用通信線等の通信網NWにて通信可能に接続されている。排泄検知装置2は、後述する判定結果出力処理等の処理による判定結果を示す情報等の各種情報を、通信網NWを介して通信装置4へ送信する。排泄検知装置2から通信装置4への各種情報の送信は、略実時間で情報を送信するプッシュ型であってもよく、通信網NW上のデータサーバに情報を蓄積し、蓄積された情報を必要に応じて通信装置4にて取得するプル型であってもよい。更には、プッシュ型とプル型とを併用する等、様々な形態に展開することも可能である。
【0047】
<各種装置の構成>
次に、本願記載の排泄検知システムが備える各種装置のハードウェア構成について説明する。図2は、本願記載の排泄検知システムが備える検出装置1等の装置の構成例を示すブロック図である。検出装置1は、シート状の圧電センサ10aを用いた前述の検出部10の他、振幅増幅部11、波動処理部12、出力部13等の各種構成を備えている。
【0048】
検出部10は、圧電センサ10aにて、音、振動等の波動を検出し、検出した波動をアナログ電気信号に変換して振幅増幅部11へ出力する機能を有している。図3A及び図3Bは、本願記載の排泄検知システムが備える検出装置1の検出部10にて用いられる圧電センサ10aの一例を概念的に示す模式図である。図3A及び図3Bは、圧電センサ10aの断面を模式的に示しており、図3Aは圧力を受けていない状態を示しており、図3Bは圧力を受けた状態を示している。圧電センサ10aは、超緻密発泡構造を有するポリオレフィン系材料を用いたエレクトレットフォームを用いてシート状に形成されている。圧電センサ10aは、圧力を受けると図3Aに示す状態から図3Bに示す状態に遷移して内部の気泡が変形し電位差が発生する。発生した電位差はアナログ電気信号として振幅増幅部11へ出力される。このような圧電センサ10aに用いられるエレクトレットシートとしては、例えば、本願出願人が開発した特許第5926860号に記載のエレクトレットシートが用いられる。検出部10及び圧電センサ10aの大きさは特に限定されるものではない。検出部10及び圧電センサ10aの上に要介護者の身体の一部分のみが配置される態様であってもよい。例えば、本願記載の排泄検知システムは、検出部10及び圧電センサ10aの上に要介護者の背中のみが配置され、要介護者の下腹部が配置されない形態であってもよい。本願記載の排泄検知システムは、要介護者の背中のみが配置される形態であっても、要介護者の体内又は体表面を伝搬する波動を検出することにより、排尿、排便等の排泄の際の振動を検出することができる。
【0049】
図2のブロック図に戻り、振幅増幅部11は、例えば、電気信号の電圧を増幅する信号増幅アンプを用いて構成される。振幅増幅部11は、検出部10からアナログ電気信号として入力された波動電圧の振幅を増幅し、波動処理部12に渡す。
【0050】
波動処理部12は、検出した波動から抽出対象となる周波数帯の波動を抽出する抽出部120等の構成を備えている。抽出部120は、VLSI(超大規模集積回路:Very Large-Scale IC)等の半導体チップにて構成されており、周波数変換部1200、フィルタ部1201等の構成を備えている。周波数変換部1200は、波動に対してFFT(高速フーリエ変換:Fast Fourier Transformation)処理等の周波数変換処理を実行する。フィルタ部1201は、周波数変換された波動に基づく信号のうち抽出対象となる周波数帯の成分を通過させ、その他の周波数帯の成分を遮断する。波動処理部12は、抽出部120により抽出した抽出対象となる周波数帯の成分を示す信号を、処理された結果となる結果信号として、出力部13に渡す。波動処理部12は、排尿用、排便用、脈拍用、呼吸用、体動用等の用途毎に、複数の抽出部120を備えており、それぞれの抽出部120は、周波数変換部1200、フィルタ部1201等の構成を備えている。例えば、排尿用の抽出部120は、振幅増幅部11から受け付けた増幅後の波動を、周波数変換部1200により周波数変換処理を実行し、フィルタ部1201により、100~2000Hz帯の成分を通過させて、出力部13に渡す。
【0051】
出力部13は、接続線を介して、処理された結果を示す結果信号を排泄検知装置2へ出力する。
【0052】
図4は、本願記載の排泄検知システムが備える排泄検知装置2及び通信装置4等の装置の構成例を示すブロック図である。排泄検知装置2は、信号処理用コンピュータ、パーソナルコンピュータ等の各種コンピュータを用いた装置であり、制御部20、入力部21、記録部22、操作部23、出力部24、通信部25等の各種構成を備えている。
【0053】
制御部20は、情報処理回路、計時回路、レジスタ回路等の各種回路を備え、装置内の各部を制御する処理を実行するCPU(Central Processing Unit )等のプロセッサである。
【0054】
入力部21は、検出装置1から接続線を介して送信される信号の入力を受け付ける各種通信アダプタ及び制御回路等のインターフェースデバイスである。
【0055】
記録部22は、ハードディスク、RAID(Redundant Arrays of Inexpensive Disks )、フラッシュメモリ等の不揮発性メモリ、各種RAM(Random Access Memory)等の揮発性メモリを用いて構成される回路であり、様々な情報を記録している。記録部22には、基本プログラム(OS:Operating System)、基本プログラム上で動作する応用プログラム(アプリケーションプログラム)等のプログラムを記録している。応用プログラムとしては、排泄検知装置2を実現するための排泄検知プログラム220等の各種プログラムが記録されている。また、記録部22には、排泄検知プログラム220で用いる判定用学習済みモデル221、各種判定に用いる閾値等の各種基準値を記載した基準値マスタ222等の各種情報が記録されている。基準値マスタ222に記録されている各種基準値は、性別、年齢、身長、体重等の対象者の属性に基づいて設定されている。
【0056】
判定用学習済みモデル221は、実験で得られた排泄の際のデータ、通常時のデータ(定常データ)等のデータ、更には、対象者の性別、年齢、身長、体重等の属性情報を入力値とし、排泄に関する状態を示すラベルを付与した教師データを用いて学習させることにより生成された学習済みモデルが用いられる。判定用学習済みモデル221は、勾配ブースティング等の統計的機械学習モデルが用いられるが、CNN(Convolutional Neural Network)等の深層学習を用いる等、適宜、設計することができる。
【0057】
操作部23は、タッチパネル、押しボタン等の操作用デバイスであり、排泄検知装置2に対する操作の入力を受け付ける。なお、パーソナルコンピュータ等のコンピュータを用いて排泄検知装置2を構成する場合、キーボード、マウス等の操作用デバイスを操作部23として用いてもよい。
【0058】
出力部24は、液晶ディスプレイ、スピーカ等の出力用デバイスである。なお、操作部23及び出力部24を、例えば、薄板状をなす液晶ディスプレイ及びタッチパネルを積層した液晶タッチパネルとして備えるようにしてもよい。
【0059】
通信部25は、通信網NWを介して通信装置4と無線通信又は有線通信をするためのアンテナ、LANアダプタ、制御回路等の各種構成を含む通信用デバイスである。
【0060】
以上例示した様々な構成を備えるコンピュータは、制御部20の制御により、記録部22に記録されている排泄検知プログラム220等の各種プログラムを読み取り、判定処理等の各種手順を実行することにより、排泄検知装置2として動作する。
【0061】
通信装置4は、通信網NWを介して排泄検知装置2と通信する通信部40、各種出力を行う出力部41等の構成を備えている。出力部41による出力とは、光の出力、画像の表示、音声の出力、鳴動、振動等の処理である。
【0062】
次に、本願記載の排泄検知システムにおける各種装置の処理について説明する。図5は、本願記載の排泄検知システムが備える検出装置1の検出処理の一例を示すフローチャートである。検出装置1の検出部10は、圧電センサ10aにて、音、振動等の波動を検出し(S101)、検出した波動をアナログ電気信号に変換して振幅増幅部11へ出力する。検出部10が検出する波動は、対象者の体内に基づく振動データ及び音データ、対象者の体表面の動きに基づく振動データ及び音データ、並びに体動データ等の様々な波動を含む。
【0063】
振幅増幅部11は、圧電センサ10aが検出し、アナログ電気信号に変換した波動を増幅し(S102)、増幅した波動を示す波動信号を波動処理部12に出力する。なお、マット31の厚さ、材質等の測定条件により圧電センサ10aが検出する波動の強度は大きく変化する。従って、ステップS102の増幅処理における増幅レベルは、増幅後の波動の強度が所定の目標範囲内に入るように初期調整が行われ、その後、実動中に検出した波動の強度と目標範囲とを比較しながら自動又は手動で微調整が行われる。このように増幅レベルのリファレンス調整を行うことにより、振幅増幅部11は、以降に示す判定処理等の各種解析処理に適した強度の波動信号を出力することができる。なお、増幅レベルの調整は、以降の処理にて行うことも可能である。
【0064】
波動処理部12は、入力された波動信号を、VLSI等の半導体チップにて構成された抽出部120により、抽出対象となる周波数帯の波動を抽出する。詳細には、抽出部120の周波数変換部1200が、FFT等の変換方法にて周波数変換し(S103)、抽出部120のフィルタ部1201が、周波数変換した波動信号から抽出対象となる特定の周波数帯の成分を通過させる(S104)。波動処理部12は、抽出対象となる周波数帯の成分を通過させた信号を、処理された結果となる結果信号として出力部13に渡す。波動処理部12による処理の実施例について説明する。抽出部120は、アナログ電気信号である波動信号を、所定の時間間隔でサンプリングし、サンプリングした波動信号から、予め設定されている時間単位のフレームを生成する。例えば、抽出部120は、フレーム長5秒、フレーム周期(シフト幅)1秒のフレームを生成する。フレーム長及びフレーム周期の設定は、排尿時間が体の大きさに拠らず21±13秒であるという非特許文献「P. J. Yang, J. Pham, J. Choo, and D. L. Hu共著“Duration of urination does not change with body size.,” Proc. Natl. Acad. Sci. U. S. A., vol. 111, no. 33, pp. 11932-7, Aug. 2014, doi: 10.1073/pnas.1402289111.」に記載の研究結果に基づいて、最低5秒は振動が持続していると仮定した上で設定している。ステップS103の処理として、周波数変換部1200は、フレーム単位の波動信号を、周波数軸上の成分の信号に変換する。ステップS104の処理として、フィルタ部1201は、フレーム単位の波動信号から、予め設定されている抽出対象の周波数帯の成分を通過させ、抽出対象の周波数帯外の成分を除去する。例えば、フィルタ部1201は、フレーム単位の波動信号から、排尿用、排便用等の用途に応じて、100~2000Hzの周波数帯、1~200Hzの周波数帯等の帯域の成分を、抽出対象となる特定の周波数帯の成分として通過させる。
【0065】
出力部13は、波動処理部12による波動に対する処理の結果を示す結果信号を排泄検知装置2へ出力する(S105)。
【0066】
以上のようにして、検出装置1の検出処理が実行される。
【0067】
図6は、本願記載の排泄検知システムが備える排泄検知装置2の判定処理の一例を示すフローチャートである。信号処理用コンピュータ、パーソナルコンピュータ等のコンピュータを用いた排泄検知装置2は、記録部22に記録している排泄検知プログラム220を実行する制御部20の制御により、判定処理を実行する。排泄検知装置2は、検出装置1から出力された波動に対する処理の結果を示す結果信号を入力部21にて受け付け、判定処理を実行する。
【0068】
排泄検知装置2の制御部20は、入力部21から受け付けた結果信号に基づいて、体動に基づく波動(振動)が発生している期間を検出する(S201)。ステップS201では、波動の出力(振幅)の大きさが、基準値マスタ222に示された体動基準値と比較し、体動基準値を超える場合、体動に基づく波動が発生していると判定する。そして、体動に基づく波動が継続している時間帯を、体動に基づく波動が発生している期間として検出する。
【0069】
排泄検知装置2の制御部20は、ステップS201にて検出した体動に基づく波動が発生している期間を、ノイズ発生期間として、以降の排泄状態の判定から除外する(S202)。体動が生じた場合、大きな振動が発生し、出力が飽和するため、体動が生じている期間を排泄状態の判定から除外することにより、状態判定の精度が向上する。また、排泄時には体動がなく、又は体動が小さいことから、大きな体動が生じている期間を判定の対象から除外しても排泄状態を見逃す可能性は低いと考えられる。
【0070】
制御部20は、脈拍及び呼吸に基づく波動を除去する(S203)。ステップS203において、脈拍及び呼吸に基づく波動は、排泄状態の判定に際してノイズとなるため、判定の対象となる波動から除外する。ステップS203において、制御部20は、脈拍の周波数帯である0.8~2.5Hzの周波数帯及び呼吸の周波数帯ある0.1~0.6Hzの周波数帯の波動をノイズとして検出し、ノイズとして検出した波動を除去する。ノイズの検出として、制御部20は、対象となる周波数帯の波動の強度を積算したパワースペクトルが、基準値マスタ222に示されたノイズ閾値より大きい場合に、対象となる周波数帯の波動がノイズであると判定する。
【0071】
制御部20は、ステップS201及びステップS202により、入力部21から受け付けた結果信号からノイズを除去する。
【0072】
排泄検知装置2の制御部20は、ノイズを除去した結果信号に基づいて、対象者の排泄状態を判定する(S204)。ステップS204では、結果信号として示される抽出対象となる周波数帯の成分に基づいて排泄状態を判定する。例えば、ステップS204において、制御部20は、100~2000Hzの周波数帯の波動の処理結果に基づいて、対象者の排尿に関する状態を判定し、1~200Hzの周波数帯の波動の処理結果に基づいて、対象者の排便に関する状態を判定する。これらの周波数帯の波動による排尿、排便等の排泄の判定は、例えば、非特許文献[Tim Idzenga, Johan J. M. Pel, and Ron van Mastrigt共著“Perineal sound recording for diagnosis of bladder outlet obstruction”,INDIAN JOURNAL of UROLOGY,2009 Jan-Mar,25(1):92-98, インターネット<URL: https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC2684325/>]に記載されている研究結果に基づくものである。
【0073】
また、ステップS204の判定に際し、制御部20は、記録部22に記録されている判定用学習済みモデル221、基準値マスタ222等の情報にアクセスし、記録されている情報を参照する。
【0074】
対象者の排泄状態を判定した排泄検知装置2の制御部20は、判定した結果を出力する判定結果出力処理を行う(S205)。ステップS205の判定結果出力処理は、通信部25から通信網NWを介して通信装置4へ、判定結果を示す情報を送信する処理である。判定結果出力処理は、判定結果に関わらず判定結果を示す情報を送信するようにしてもよく、また、判定結果が排泄状態又は排泄の前段階にある状態と判定した場合にのみ送信するようにしてもよい。
【0075】
以上のようにして、排泄検知装置2の判定処理が実行される。
【0076】
通信装置4は、排泄検知装置2から通信網NWを介して送信される判定結果を示す情報を通信部40にて受信し、受信した判定結果を示す情報を出力部24から出力する。判定結果の出力は、看護師が所持するナースコール受信装置、ナースステーションに配備されたモニタ、外部の関係者が所持する携帯電話等の各種通信装置4からの光の出力、画像の表示、音声の出力、鳴動、振動等の通報処理として実行される。通信装置4から出力される判定結果を確認した看護師、介護士、医師等の職員、家族等の関係者は、対象者の状態に応じて適切な対応をとることできる。
【0077】
<判定処理の実施例>
次に、排泄検知装置2が実行する判定処理の処理例について具体例を挙げて説明する。
【0078】
<処理例1>
図7は、本願記載の排泄検知システムが備える排泄検知装置2の判定第1処理の一例を示すフローチャートである。判定第1処理は、図6を用いて説明した判定処理のステップS204として説明した対象者の排泄状態を判定する処理の一例である。判定第1処理として、排泄検知装置2は、検出装置1から、結果情報として入力を受け付けた周波数変換されたフレーム単位の結果情報に対して処理を行う。
【0079】
排泄検知装置2の制御部20は、結果信号として受け付けた波動を示すフレーム単位のデータに対し、例えば、1Hz間隔等の予め設定された周波数間隔で区分されたそれぞれの周波数毎に、強度を積算したパワースペクトルを導出する(S301)。制御部20は、パワースペクトルのうち、予め設定されている対象周波数の出力の総和を算出する(S302)。ステップS302において、制御部20は、例えば、排尿に関する周波数帯の信号が顕著に表れる400~1000Hzの周波数帯を対象周波数とし、当該周波数帯の出力の総和を算出する。なお、検知に最適な周波数帯は、マット31の厚さ、材質等の測定条件によっても変動するため、対象周波数は、事前の実験又は実績に基づいて、適宜調整がなされる。
【0080】
制御部20は、算出した対象周波数の出力の総和を、記録部22に記録されている基準値マスタ222に示された閾値と比較し(S303)、比較結果に基づいて排泄に関する状態を判定する(S304)。ステップS304において、制御部20は、総和が閾値以上である場合、排泄状態又は排泄の前段階にある状態と判定し、総和が閾値未満である場合、排泄状態ではない定常状態であると判定する。排泄状態の前段階とは、排泄行為には至っていないが、臓器等の体内から生じる波動により、排泄行為の予兆が発生している状態を示す。排泄の判定は、排尿、排便等の排泄の種類毎に、また排泄状態、前段階の状態等の段階毎に行われる。
【0081】
以上のようにして、判定第1処理が実行される。
【0082】
<処理例2>
図8は、本願記載の排泄検知システムが備える排泄検知装置2の判定第2処理の一例を示すフローチャートである。判定第2処理は、図6を用いて説明した判定処理のステップS204として説明した対象者の排泄状態を判定する処理の一例である。判定第2処理として、排泄検知装置2は、検出装置1から、結果情報として入力を受け付けた周波数変換されたフレーム単位の結果情報に対して処理を行う。
【0083】
排泄検知装置2の制御部20は、結果信号として受け付けた波動を示すフレーム単位のデータに基づいて、パワースペクトルを導出する(S401)。制御部20は、導出したパワースペクトルと、直前の所定時間分のパワースペクトルの平均値との差分を算出する(S402)。ステップS402において、直前の所定時間としては、例えば、1分間等の時間が設定される。ステップS402において、パワースペクトルと、直前の所定時間分のパワースペクトルの平均値との差分は、周波数毎に算出される。
【0084】
制御部20は、算出した周波数毎の差分のうち、予め設定されている対象周波数の差分の総和を算出する(S403)。制御部20は、算出した対象周波数の差分の総和を、記録部22に記録されている基準値マスタ222に示された閾値と比較し(S404)、比較結果に基づいて排泄状態を判定する(S405)。ステップS405において、制御部20は、総和が閾値以上である場合、排泄状態又は排泄の前段階にある状態と判定し、総和が閾値未満である場合、排泄状態ではない定常状態であると判定する。
【0085】
以上のようにして、判定第2処理が実行される。判定第2処理は、判定の対象を、直前の実績の平均値との差分とすることにより、ホワイトノイズの影響を排除することができる。
【0086】
<処理例3>
図9は、本願記載の排泄検知システムが備える排泄検知装置2の判定第3処理の一例を示すフローチャートである。判定第3処理は、図6を用いて説明した判定処理のステップS204として説明した対象者の排泄状態を判定する処理の一例である。判定第3処理として、排泄検知装置2は、検出装置1から、結果情報として入力を受け付けた周波数変換されたフレーム単位の結果情報に対して処理を行う。
【0087】
排泄検知装置2の制御部20は、結果信号として受け付けた波動を示すフレーム単位のデータに基づいて、パワースペクトルを導出する(S501)。制御部20は、パワースペクトルを特徴量とし、記録部22に記録されている判定用学習済みモデル221を参照して、排泄に関する状態を判定する(S502)。ステップS502では、判定用学習済みモデル221を参照して、排泄状態、排泄状態の前段階の状態、定常状態(排泄状態ではない状態)等の状態を判定する。判定第3処理にて用いられる判定用学習済みモデル221は、排尿時のデータ、排尿の直前のデータ、通常時のデータ等の排尿状態に関するフレーム単位のデータに対し、排尿状態を示すラベルを付与して教師データとして学習することにより得られた学習済みモデルである。また、判定用学習済みモデル221の学習には、性別、年齢、身長、体重等の対象者の属性に関する情報が特徴量として用いられる。
【0088】
以上のようにして、判定第3処理が実行される。
【0089】
<処理例4>
図10は、本願記載の排泄検知システムが備える排泄検知装置2の判定第4処理の一例を示すフローチャートである。判定第4処理は、図6を用いて説明した判定処理のステップS204として説明した対象者の排泄状態を判定する処理の一例である。判定第4処理として、排泄検知装置2は、検出装置1から、結果情報として入力を受け付けた周波数変換されたフレーム単位の結果情報に対して処理を行う。
【0090】
排泄検知装置2の制御部20は、結果信号として受け付けた波動を示すフレーム単位のデータに基づいて、フレーム毎に、パワースペクトル、ケプストラム、波動の大きさ(振幅の2乗の平均値)、基本周波数、フォルマント周波数及びメル周波数ケプストラム係数をそれぞれ導出する(S601)。制御部20は、導出したパワースペクトル、ケプストラム、波動の大きさ、基本周波数、フォルマント周波数及びメル周波数ケプストラム係数を特徴量とし、記録部22に記録されている判定用学習済みモデル221を参照して、排泄状態を判定する(S602)。ステップS602では、判定用学習済みモデル221を参照して、排泄状態、排泄状態の前段階の状態、定常状態等の状態を判定する。判定第4処理にて用いられる判定用学習済みモデル221は、パワースペクトル、ケプストラム、波動の大きさ、基本周波数、フォルマント周波数及びメル周波数ケプストラム係数を特徴量とし、排泄に関する状態を示すラベルを付与して教師データとして学習することにより得られた学習済みモデルである。
【0091】
以上のようにして、判定第4処理が実行される。
【0092】
上述した本願記載の排泄検知システムにおける各種装置の処理として、図6を用いて説明した判定処理では、ステップS203にて脈拍及び呼吸に基づく波動をノイズとして除去する形態を説明した。しかしながら、本願記載の排泄検知システムは、脈拍及び呼吸に基づく波動をノイズとして除去する形態に限らず、ステップS204の判定処理に用いる形態等、様々な形態に展開することが可能である。
【0093】
脈拍及び呼吸に基づく波動をステップS204の判定処理に用いる形態について説明する。判定処理に用いる脈拍及び/又は呼吸は、排泄状態と有意な相関が生じる場合がある。例えば、排泄の際に、息を吐く状態、息を止める状態等の状態が生じる場合がある。脈拍についても同様であり、脈拍の状態変化と排泄状態との間に有意な相関が生じる場合がある。本願記載の排泄検知システムは、ステップS204の判定処理、即ち、図7乃至図10を用いて説明した処理例1乃至処理例4において、脈拍及び/又は呼吸に係る対象周波数に基づくデータを排泄状態の判定に用いる形態に展開することが可能である。特に、脈拍及び/又は呼吸に基づくデータを用いて排泄状態を判定する形態は、処理例3及び処理例4として示した判定用学習済みモデル221を用いて排泄状態を判定する処理への適用が有効である。本願記載の排泄検知システムは、処理例3及び処理例4として示した形態に展開する場合、脈拍及び呼吸に基づく波動を除去せず、また、予め脈拍及び/又は呼吸に基づいて学習を行った判定用学習済みモデル221を利用することになる。
【0094】
本願記載の排泄検知システムの構成例は、図1等に例示した構成に限るものではなく、ハードウェア構成及びソフトウェアによる処理は、適宜、設計することが可能である。即ち、本願記載の排泄検知システムは、少なくとも、対象者に基づき発生する波動を検出する検出機能、検出した波動を処理する波動処理機能及び波動の処理結果に基づいて対象者の排泄状態を判定する判定機能を備える様々な構成として実現することができる。
【0095】
<検出装置構成例1>
図11は、本願記載の排泄検知システムが備える検出装置1の構成例を模式的に示す概略図である。図11は、検出装置1の他の構成例の概略を示している。図11に記載の検出装置1の検出部10は、波動を検出する面として検出領域10bが形成されており、検出領域10bは、寝具の略全体を覆うように配置されている。検出領域10bは、前述の圧電センサ10aを面状に配置して構成されており、一の圧電センサ10aで構成しても複数の圧電センサ10aで構成してもよい。図11に記載の検出装置1は、寝具上で、臥位、座位等の姿勢をとる要介護者の身体の全体が検出領域10b上に位置するように構成された形態である。
【0096】
<検出装置構成例2>
図12は、本願記載の排泄検知システムが備える検出装置1の構成例を模式的に示す概略図である。図12は、検出装置1の更に他の構成例の概略を示している。図12に記載の検出装置1は、寝具上に、複数の検出領域10bが異なる位置に配置されており、それぞれ異なる位置で波動を検出する。図12に記載の構成例では、平面視長方形状をなす検出部10の短辺で3分割された3個の検出領域10bが配置されている。異なる位置に配置された複数の検出領域10bを用いることにより、要介護者の位置等の情報を得ることができる。
【0097】
<検出装置構成例3>
図13は、本願記載の排泄検知システムが備える検出装置1の構成例を模式的に示す概略図である。図13は、複数の検出領域10bを備える検出装置1の更に他の構成例の概略を示している。図13に記載の検出装置1は、平面視長方形状をなす検出部10を長辺方向で4分割し、かつ短辺方向で3分割した12個の検出領域10bを配置した構成例である。図13に例示するように、検出領域10bの分割数を増加させて、波動の発生位置を検出する精度を向上させることにより、要介護者の位置、姿勢、心臓の位置、排泄部位の位置等のより詳細な情報を得ることができる。
【0098】
<複数の検出領域の処理例1>
次に、図13に例示するような複数の検出領域10bを備える検出装置1を用いた各種処理を、複数の検出領域10bの処理例1として説明する。図14は、本願記載の排泄検知システムが備える検出装置1の検出処理の一例を示すフローチャートである。検出装置1は、検出部10により、各検出領域10bのそれぞれの圧電センサ10aにて、音、振動等の波動を検出領域10b毎に検出し(S701)、振幅増幅部11により、検出領域10b毎に波動を増幅する(S702)。検出装置1は、波動処理部12により、検出領域10b毎に周波数変換し(S703)、特定の周波数成分を通過させ(S704)、結果信号として出力部13から排泄検知装置2へ出力する(S705)。即ち、複数の検出領域10bを備える検出装置1を用いる場合、検出装置1は、各検出領域10bにて検出した波動をそれぞれ処理して出力することになる。
【0099】
以上のようにして、複数の検出領域10bを備える検出装置1の検出処理が実行される。
【0100】
図15は、本願記載の排泄検知システムが備える排泄検知装置2の判定処理の一例を示すフローチャートである。図15は、複数の検出領域10bを備える検出装置1から出力された各検出領域10bの波動に基づく結果信号の入力を受け付けた排泄検知装置2の判定処理を示している。排泄検知装置2は、判定処理として、入力部21にて受け付けた結果信号の波動から特定の成分を抽出し、成分毎にパラレル処理を行う。
【0101】
パラレル処理の第1処理として、排泄検知装置2の制御部20は、結果信号に基づく波動から、排泄に起因する周波数帯の成分を抽出する(S801)。ステップS801において、排泄に起因する成分の抽出は、各検出領域10bのそれぞれに対して実行される。
【0102】
パラレル処理の第2処理として、制御部20は、結果信号に基づく波動から、心拍、呼吸及び体動に起因する周波数帯の成分を抽出する(S802)。ステップS802において、各成分の抽出は、各検出領域10bのそれぞれに対して実行される。
【0103】
制御部20は、各検出領域10bからそれぞれ抽出した各成分に基づいて、対象者の姿勢を判定する(S803)。ステップS803では、心拍、呼吸及び体動に起因するそれぞれの成分が強く検出された検出領域10b及び各検出領域10bが配置されている位置に基づいて、姿勢が判定される。ステップS803では、対象者の姿勢として、右臥位、左臥位、仰臥位、伏臥位及び座位が、判定可能な特定姿勢として設定されている。
【0104】
パラレル処理の第1処理及び第2処理の結果を得た制御部20は、ステップS803にて判定された姿勢に基づいて、複数の検出領域10bのうちから排泄の判定に用いる一又は複数の検出領域10bを選択する(S804)。ステップS804では、姿勢に基づいて、排泄を検出し易い位置に配置された検出領域10bを選択する。
【0105】
制御部20は、ステップS804の選択結果に基づく検出領域10b毎の増幅率で、ステップS801にて抽出した排泄に起因する成分の振幅を増幅する増幅処理を行う(S805)。ステップS805では、排泄を検出し易い位置に配置された検出領域10bから得られた成分の振幅の増幅率を、他の検出領域10bから得られた成分に係る振幅の増幅率より高くする等、検出領域10b毎に異なる増幅率で増幅処理が行われる。
【0106】
制御部20は、増幅後の成分に基づいて、対象者の排泄状態を判定し(S806)、判定した結果を出力する判定結果出力処理を行う(S807)。
【0107】
以上のようにして、複数の検出領域10bを備える検出装置1から出力された各検出領域10bの波動に基づく結果信号の入力を受け付けた排泄検知装置2の判定処理が実行される。異なる位置に配置された複数の検出領域10bの検出結果に基づく判定処理は、ステップS804~S805の処理にて、排泄部位から発せられる波動を検出し易い検出領域10bを選択し、増幅することになるので、判定に係る精度を向上させることが可能である等、優れた効果を奏する。
【0108】
<複数の検出領域を用いた処理例2>
次に、図13に例示するような複数の検出領域10bを備える検出装置1を用いた各種処理の他の例を、複数の検出領域10bの処理例2として説明する。なお、処理例2において、検出装置1の検出処理は、図13を用いて説明した処理例1と同様であるので、処理例1を参照するものとし、説明を省略する。
【0109】
図16は、本願記載の排泄検知システムが備える排泄検知装置2の判定処理の一例を示すフローチャートである。図16は、複数の検出領域10bを備える検出装置1から出力された各検出領域10bの波動に基づく結果信号の入力を受け付けた排泄検知装置2の判定処理を示している。排泄検知装置2は、判定処理として、入力部21にて受け付けた結果信号の波動から特定の成分を抽出し、成分毎にパラレル処理を行う。
【0110】
パラレル処理の第1処理として、排泄検知装置2の制御部20は、結果信号に基づく波動から、排泄に起因する周波数帯の成分を抽出する(S901)。ステップS901において、排泄に起因する成分の抽出は、各検出領域10bのそれぞれに対して実行される。
【0111】
パラレル処理の第2処理として、制御部20は、結果信号に基づく波動から、心拍に起因する周波数帯の成分を抽出する(S902)。ステップS902において、心拍に起因する成分の抽出は、各検出領域10bのそれぞれに対して実行される。
【0112】
制御部20は、各検出領域10bからそれぞれ検出した心拍に起因する成分に基づいて、対象者の心臓の位置を判定する(S903)。ステップS903では、心拍に起因する成分が強く検出された検出領域10b及び各検出領域10bが配置されている位置に基づいて、寝具上に配置された検出領域10bに対する対象者の心臓の位置が判定される。
【0113】
制御部20は、ステップS903にて判定された心臓の位置、及び複数の検出領域10bがそれぞれ検出した波動に基づいて、対象者の排泄部位の位置を判定する(S904)。
【0114】
パラレル処理の第1処理及び第2処理の結果を得た制御部20は、ステップS904にて判定された排泄部位の位置に応じて、複数の検出領域10bのうちから排泄の判定に用いる一又は複数の検出領域10bを選択する(S905)。ステップS905では、排泄部位の位置に基づいて、排泄を検出し易い位置に配置された検出領域10bを選択する。
【0115】
制御部20は、ステップS905の選択結果に基づく検出領域10b毎の増幅率で、ステップS901にて抽出した排泄に起因する成分の振幅を増幅する増幅処理を行う(S906)。
【0116】
制御部20は、増幅後の成分に基づいて、対象者の排泄状態を判定し(S907)、判定した結果を出力する判定結果出力処理を行う(S908)。
【0117】
以上のようにして、複数の検出領域10bを備える検出装置1から出力された各検出領域10bの波動に基づく結果信号の入力を受け付けた排泄検知装置2の判定処理が実行される。異なる位置に配置された複数の検出領域10bの検出結果に基づく判定処理は、ステップS905~S906の処理にて、排泄部位から発せられる波動を検出し易い検出領域10bを選択し、増幅することになるので、判定制度を向上させることが可能である等、優れた効果を奏する。
【0118】
<システム構成例1>
図17は、本願記載の排泄検知システムの構成例を示す概略ブロック図である。図17は、排泄検知システムの他の構成例の概略を示している。図17に記載の排泄検知システムは、検出装置1、排泄検知装置2、通信装置4等の各種装置を備えている。検出装置1は、検出部10、振幅増幅部11、波動処理部12、出力部13等の各種構成を備えている。波動処理部12は、抽出部120等の各種構成を備えている。抽出部120は、排尿用、排便用、脈拍用、呼吸用、体動用等の用途毎のバンドパスフィルタ1202を備えている。各バンドパスフィルタ1202は、検出した波動から抽出対象の周波数帯の波動をそれぞれ抽出する。バンドパスフィルタ1202は、RLC回路等のアナログ電気回路であり、アナログ素子の特性値を適宜設定することにより、所望の周波数帯の波動が通過するように設計されている。バンドパスフィルタ1202は、高周波成分を通過させて低周波成分を除去するハイパスフィルタ(ローカットフィルタ)、低周波成分を通過させて高周波成分を除去するローパスフィルタ(ハイカットフィルタ)等のフィルタを複数組み合わせて構成されている。
【0119】
以上のように、システム構成例1に係る排泄検知システムは、バンドパスフィルタ1202を用いて抽出部120を形成する構成である。
【0120】
<システム構成例2>
図18は、本願記載の排泄検知システムの構成例を示す概略ブロック図である。図18は、排泄検知システムの更に他の構成例の概略を示している。図18に記載の排泄検知システムは、検出装置1、排泄検知装置2及び通信装置4を備えており、更に、波動処理装置5を備えている。波動処理装置5は、波動処理部12を独立した装置として実現した形態であり、周波数変換処理を行うVLSI等の半導体チップを用いて構成されている。
【0121】
以上のように、システム構成例2に係る排泄検知システムは、波動処理部12を波動処理装置5として独立させた形態である。
【0122】
<システム構成例3>
図19は、本願記載の排泄検知システムの構成例を示す概略ブロック図である。図19は、排泄検知システムの更に他の構成例の概略を示している。図19に記載の排泄検知システムは、検出装置1及び排泄検知装置2を備えており、更に、記録装置6を備えている。検出装置1及び排泄検知装置2は、通信網NWにて通信可能に接続されており、通信網NW上には、データサーバ等のコンピュータを用いた記録装置6が接続されている。検出装置1は、出力部13にて通信網NWに接続しており、排泄検知装置2は、入力部21にて通信網NWに接続している。システム構成例3における排泄検知装置2は、デスクトップ型コンピュータ、ノート型コンピュータ、タブレット型コンピュータ、高機能型携帯電話(所謂スマートフォン)等のコンピュータを用いて構成されている。排泄検知装置2は、前述の通信装置4としての機能を備えており、判定処理等の各種解析処理及びユーザインターフェースとしての入出力処理を実行する。検出装置1は、検出した波動に基づく結果信号を、通信網NWを介して記録装置6へ送信し、記録装置6は、受信した結果信号をデータとして記録する。排泄検知装置2は、記録装置6にアクセスし、データとして記録されている結果信号を受信し、受信した結果信号に基づいて各種処理を実行する。
【0123】
<システム構成例4>
図20は、本願記載の排泄検知システムの構成例を示す概略ブロック図である。図20は、排泄検知システムの更に他の構成例の概略を示している。システム構成例4は、プル型として構成したシステム構成例3を、プッシュ型として構成した形態である。検出装置1は、検出した波動に基づく結果信号を、通信網NWを介して排泄検知装置2へ送信する。排泄検知装置2は、受信した結果信号に基づいて各種処理を実行する。
【0124】
<システム構成例5>
図21は、本願記載の排泄検知システムの構成例を示す概略ブロック図である。図21は、排泄検知システムの更に他の構成例の概略を示している。システム構成例5は、排泄検知装置2を通信網NWに接続するサーバコンピュータを用いて構成した形態である。システム構成例5において、検出装置1は、波動の検出から検出した波動に基づく処理の結果となる結果信号を通信網NW上の排泄検知装置2へ送信する処理を行う。排泄検知装置2は、受信した結果信号に基づく判定処理等の各種処理を実行して排泄状態を判定し、判定した結果を示す情報を、通信網NWを介して通信装置4へ送信する。ナースコール受信装置、モニタ、携帯電話等の装置を用いて構成された通信装置4は、受信した結果を示す情報に基づいて、排泄状態を示す情報の表示、音声の出力等の出力処理を行う。
【0125】
本願記載の排泄検知システムは、上述した構成例だけでなく、例えば、周波数変換処理を行うVLSI等の半導体チップを排泄検知装置2に組み込み、排泄検知装置2にて周波数変換処理を実行する等、様々な構成例として実現することが可能である。
【0126】
以上のように、本願記載の排泄検知システムは、対象者の体内の動き、対象者の体表面の動き等の動きに基づいて発生する、振動、音等の波動データに基づいて、排尿、排便等の排泄状態を判定する。これにより、本願記載の排泄検知システムは、対象者に負担をかけることなく、排泄状態を検知することが可能である等、優れた効果を奏する。
【0127】
本発明は、以上説明した実施形態に限定されるものではなく、他のいろいろな形態で実施することが可能である。そのため、かかる実施形態はあらゆる点で単なる例示にすぎず、限定的に解釈してはならない。本発明の範囲は請求の範囲によって示すものであって、明細書本文には、なんら拘束されない。更に、請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、全て本発明の範囲内のものである。
【0128】
例えば、前述の様々な構成例は、それぞれ独立して実施する場合に限らず、適宜、組み合わせることも可能である。例えば、前記実施形態では、周波数変換処理を用いて抽出対象となる周波数帯の波動を抽出する構成例及びアナログ回路であるバンドパスフィルタ1202を用いる構成例をそれぞれ説明した。本願記載の排泄検知システムは、これらを組み合わせ、アナログ回路で構成したバンドパスフィルタ1202を通過した波動に対して、周波数変換処理を行う等、様々な形態に展開することが可能である。
【0129】
更に、前記実施形態では、判定処理の例として処理例1~処理例4、更に、複数の検出領域10bを用いた処理例1及び処理例2を例示したが、これらの処理を適宜複合し、判定処理として実施する等、様々な形態に展開することが可能である。
【0130】
更に、前記実施形態では、周波数変換処理を、半導体チップを用いて構成する形態を示したが、本発明はこれに限らず、コンピュータによるソフトウェア処理として実現する等、様々な形態に展開することが可能である。周波数変換処理をソフトウェア処理として実現する場合、排泄検知装置2が、波動を処理する波動処理部12と、排泄状態を判定する判定部とを備える構成となる。また、ソフトウェア処理として説明した判定部についても、ハードウェアとして構成するように構成してもよい等、本願記載の排泄検知システムは、様々な構成に展開することが可能である。
【0131】
更に、前記実施形態は、排泄検知装置2が、体動、脈拍、呼吸等のノイズを除去する形態を示したが、本発明はこれに限らず、検出装置1、又は検出装置1及び排泄検知装置2の両方で、ノイズを除去する等、様々な形態に展開することが可能である。特に振幅の大きさでノイズと判定する体動については、検出装置1で除去することが好ましい。
【符号の説明】
【0132】
1 検出装置
10 検出部
10a 圧電センサ
10b 検出領域
11 振幅増幅部
12 波動処理部
120 抽出部
1200 周波数変換部
1201 フィルタ部
1202 バンドパスフィルタ
13 出力部
2 排泄検知装置(判定部)
20 制御部
22 記録部
220 排泄検知プログラム
221 判定用学習済みモデル
222 基準値マスタ
3 ベッド
31 マット(寝具)
4 通信装置
5 波動処理装置(波動処理部)
6 記録装置
NW 通信網
図1
図2
図3A
図3B
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21