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特開2022-184789スルファメトキサゾール及びトリメトプリムを含有する小型錠剤
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022184789
(43)【公開日】2022-12-13
(54)【発明の名称】スルファメトキサゾール及びトリメトプリムを含有する小型錠剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/635 20060101AFI20221206BHJP
   A61K 31/505 20060101ALI20221206BHJP
   A61K 9/20 20060101ALI20221206BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20221206BHJP
   A61K 47/26 20060101ALI20221206BHJP
   A61K 47/46 20060101ALI20221206BHJP
   A61K 47/18 20060101ALI20221206BHJP
   A61K 47/22 20060101ALI20221206BHJP
   A61K 47/38 20060101ALI20221206BHJP
   A61P 13/02 20060101ALI20221206BHJP
   A61P 11/00 20060101ALI20221206BHJP
   A61P 31/00 20060101ALI20221206BHJP
   A61K 47/28 20060101ALI20221206BHJP
【FI】
A61K31/635
A61K31/505
A61K9/20
A61P43/00 121
A61K47/26
A61K47/46
A61K47/18
A61K47/22
A61K47/38
A61P13/02 105
A61P11/00
A61P31/00
A61K47/28
【審査請求】未請求
【請求項の数】21
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022086727
(22)【出願日】2022-05-27
(31)【優先権主張番号】P 2021091757
(32)【優先日】2021-05-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【新規性喪失の例外の表示】新規性喪失の例外適用申請有り
(71)【出願人】
【識別番号】510136312
【氏名又は名称】国立研究開発法人国立成育医療研究センター
(71)【出願人】
【識別番号】519273762
【氏名又は名称】シオノギファーマ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100156144
【弁理士】
【氏名又は名称】落合 康
(72)【発明者】
【氏名】山谷 明正
(72)【発明者】
【氏名】芦澤 一英
(72)【発明者】
【氏名】木村 豪
(72)【発明者】
【氏名】水谷 直也
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 春香
(72)【発明者】
【氏名】相川 昇平
【テーマコード(参考)】
4C076
4C086
【Fターム(参考)】
4C076AA36
4C076BB01
4C076CC15
4C076CC17
4C076CC32
4C076DD38T
4C076DD52T
4C076DD61T
4C076DD69T
4C076EE32
4C076EE58T
4C076FF52
4C086AA01
4C086AA02
4C086BC42
4C086DA20
4C086MA03
4C086MA05
4C086MA35
4C086NA09
4C086ZA59
4C086ZA82
4C086ZB32
4C086ZC75
(57)【要約】
【課題】子供や高齢者の患者にとって服用が容易な、スルファメトキサゾール及びトリメトプリムを有効成分とする新規錠剤の提供。
【解決手段】スルファメトキサゾール100mg及びトリメトプリム20mg並びに1~3重量%の高甘味度甘味剤を含有する小型錠剤。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
90.0~110.0mgのスルファメトキサゾール、18.0~22.0mgのトリメトプリム及び1~3重量%の高甘味度甘味剤を含有し、錠剤体積が94~119mmである錠剤。
【請求項2】
高甘味度甘味剤が、スクラロース、ステビア、アスパルテーム、アセスルファムカリウム、グリチルリチン酸(グリチルリチン酸二カリウム)、タウマチン、アドバンテーム及びサッカリンからなる群から選択される1以上である、請求項1記載の錠剤。
【請求項3】
高甘味度甘味剤がスクラロースである、請求項2記載の錠剤。
【請求項4】
スルファメトキサゾールの量が約100mgであり、トリメトプリムの量が約20mgである、請求項1~3のいずれかに記載の錠剤。
【請求項5】
高甘味度甘味剤の量が約2重量%である、請求項1~3のいずれかに記載の錠剤。
【請求項6】
さらに、ヒドロキシプロピルセルロース及びカルメロースカルシウムのうち少なくとも一つを含有する請求項1~3のいずれかに記載の錠剤。
【請求項7】
錠剤質量に対してスルファメトキサゾールを77.9~79.5重量%及びトリメトプリムを15.5~15.9重量%含み、錠剤厚みが3.72~4.63mmであり、錠剤質量が117.9~151.9mgであり、かつ錠剤密度が1.07~1.34mg/mmである錠剤。
【請求項8】
さらに高甘味度甘味剤を1~3重量%含む、請求項7記載の錠剤。
【請求項9】
錠剤厚みが4.26~4.46mmである、請求項7または8記載の錠剤。
【請求項10】
錠剤質量が123.2~130.8mgである、請求項7または8記載の錠剤。
【請求項11】
錠剤密度が1.07~1.20mg/mmである、請求項7または8記載の錠剤。
【請求項12】
錠剤体積が94~119mmである、請求項7または8記載の錠剤。
【請求項13】
高甘味度甘味剤がスクラロースである、請求項8記載の錠剤。
【請求項14】
スルファメトキサゾールの量が90.0~110.0mgであり、トリメトプリムの量が18.0~22.0mgである、請求項7または8記載の錠剤。
【請求項15】
スルファメトキサゾールの量が約100mgであり、トリメトプリムの量が約20mgである請求項14記載の錠剤。
【請求項16】
第17改正日本薬局方に規定された錠剤の摩損度試験法における摩損度が1.0%以下である、請求項7または8記載の錠剤。
【請求項17】
第17改正日本薬局方に規定された崩壊試験法における崩壊時間が30分以内である、請求項7または8記載の錠剤。
【請求項18】
スクラロースの量が1~2重量%である、請求項16記載の錠剤。
【請求項19】
スクラロースの量が約2重量%である、請求項16記載の錠剤。
【請求項20】
スクラロースの量が1~2重量%である、請求項17記載の錠剤。
【請求項21】
スクラロースの量が約2重量%である、請求項17記載の錠剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スルファメトキサゾール及びトリメトプリムを含有する小型錠剤に関する。
【背景技術】
【0002】
有効成分としてスルファメトキサゾール及びトリメトプリムを含有する合剤(以下、「ST合剤」という)は、尿路感染症、ニューモシスチス肺炎の治療や予防等に使用されている。
【0003】
非特許文献1には、市販されているST合剤の組成が記載されている。「バクタ(登録商標)配合錠」は、スルファメトキサゾール、トリメトプリム、カルメロースカルシウム、ヒドロキシプロピルセルロース、ステアリン酸マグネシウムを含んでいるが、甘味剤は含まれていない。一方、「バクタ(登録商標)配合顆粒」は、スルファメトキサゾール、トリメトプリム、カルメロースカルシウム、ヒドロキシプロピルセルロース、トウモロコシデンプン、白糖、含水二酸化ケイ素を含んでおり、甘味剤として白糖が含まれている。
【0004】
ST合剤は、家禽や家畜用の経口剤としても知られており、例えば、豚の大腸菌による細菌性下痢症に対する経口剤(商品名「動物用シノラール散」、塩野義製薬株式会社製)が市販されていた。この経口剤は豚以外の他の動物、例えば鶏に対しても薬効が期待されるが、この経口剤を飲料水に溶解して鶏に与えると、主成分であるスルファメトキサゾールおよびトリメトプリムが鶏の嗜好に合わないためか、鶏の飲水量が低下し、ひいては薬効の低下や体重増加速度の減少につながる。特許文献1には、飲水量の低下を引き起こすことがない、スルファメトキサゾールおよびトリメトプリムを含む家禽用製剤が記載されており、飲水量低下の解決手段として、主成分であるスルファメトキサゾールおよびトリメトプリムの水溶液に、調味剤として、グルタミン酸ナトリウム、白糖、黒糖、果糖、粉末コーヒー、粉末紅茶食品、抹茶粉末、粉末麦芽糖食品、粉末抹茶食品、粉末ココア食品、粉末醤油またはL-アスコルビン酸等を配合することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平6-263637号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】「バクタ(登録商標)配合錠/バクタ(登録商標)配合顆粒」添付文書(2021年3月改訂(第2版))
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
子供や高齢者の患者にとって、市販されているST合剤の錠剤(例えば、バクタ(登録商標)配合錠)は、直径が約11mmと大きいため服用しにくい。また、有効成分であるスルファメトキサゾール及びトリメトプリムは苦味を呈するため、特に子供は服薬に抵抗を示すことが多い。したがって、服薬コンプライアンスの向上を目的とした錠剤の改良が求められていた。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、スルファメトキサゾール及びトリメトプリムを従来の約4分の1の量とし、さらに約1~約3%の高甘味度甘味剤を配合することにより、錠剤として求められる特性を損なうことなく、錠剤を小型化し且つ苦みを抑制することができることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明は、
(1)90.0~110.0mgのスルファメトキサゾール、18.0~22.0mgのトリメトプリム及び1~3重量%の高甘味度甘味剤を含有し、錠剤体積が94~119mmである錠剤、
(2)高甘味度甘味剤が、スクラロース、ステビア、アスパルテーム、アセスルファムカリウム、グリチルリチン酸(グリチルリチン酸二カリウム)、タウマチン、アドバンテーム及びサッカリンからなる群から選択される1以上である、(1)記載の錠剤、
(3)高甘味度甘味剤がスクラロースである(2)記載の錠剤、
(4)スルファメトキサゾールの量が約100mgであり、トリメトプリムの量が約20mgである、(1)~(3)のいずれかに記載の錠剤、
(5)高甘味度甘味剤の量が2重量%である、(1)~(4)のいずれかに記載の錠剤、
(6)さらに、ヒドロキシプロピルセルロース及びカルメロースカルシウムのうち少なくとも一つを含有する(1)~(5)のいずれかに記載の錠剤、
(7)錠剤質量に対してスルファメトキサゾールを77.9~79.5重量%及びトリメトプリムを15.5~15.9重量%含み、錠剤厚みが3.72~4.63mmであり、錠剤質量が117.9~151.9mgであり、かつ錠剤密度が1.07~1.34mg/mmである錠剤、
(8)さらに高甘味度甘味剤を1~3重量%含む、(7)記載の錠剤、
(9)錠剤厚みが4.26~4.46mmである、(7)または(8)記載の錠剤、
(10)錠剤質量が123.2~130.8mgである、(7)~(9)のいずれかに記載の錠剤、
(11)錠剤密度が1.07~1.20mg/mmである、(7)~(10)のいずれかに記載の錠剤、
(12)錠剤体積が94~119mmである、(7)~(11)のいずれかに記載の錠剤、
(13)高甘味度甘味剤がスクラロースである(7)~(12)のいずれかに記載の錠剤、
(14)スルファメトキサゾールの量が90.0~110.0mgであり、トリメトプリムの量が18.0~22.0mgである、(7)~(13)のいずれかに記載の錠剤、
(15)スルファメトキサゾールの量が約100mgであり、トリメトプリムの量が約20mgである(14)記載の錠剤
(16)第17改正日本薬局方に規定された錠剤の摩損度試験法における摩損度が1.0%以下である、(7)~(15)のいずれかに記載の錠剤、
(17)第17改正日本薬局方に規定された崩壊試験法における崩壊時間が30分以内である、(7)~(16)のいずれかに記載の錠剤、
(18)スクラロースの量が1~2重量%である、(16)または(17)記載の錠剤、
(19)スクラロースの量が2重量%である、(16)または(17)記載の錠剤
を提供する。
【発明の効果】
【0010】
本発明の錠剤は、子供や高齢者の患者にも服用が容易であり、患者の服薬コンプライアンス向上に寄与する。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の錠剤(以下、「本錠剤」という)は円形錠であり、有効成分として、スルファメトキサゾール及びトリメトプリムを100:20の重量比で含有する。
一実施形態では、本錠剤は、1錠中にスルファメトキサゾールを100mg及びトリメトプリムを20mg含有する。これは、従来のST配合錠(バクタ(登録商標)配合錠)に含まれる量の4分の1であり、本錠剤を4錠服用することで、従来の配合錠1錠分の用量とすることができる。
この場合、スルファメトキサゾールの重量として上に記載した「100mg」およびトリメトプリムの重量として上に記載した「20mg」は、いずれも表示量であり、測定または定量に使用される標準的な方法による誤差の範囲内で任意の実測値を含む。このような範囲は、記載した数値の典型的には±10%、より典型的には±5%の範囲である。したがって、上記の「スルファメトキサゾールを100mg」とは、スルファメトキサゾールを90.0~110.0mgの範囲、好ましくは95.0~105.0mgの範囲で含有することを示し、上記の「トリメトプリムを20mg」とは、トリメトプリムを18.0~22.0mgの範囲、好ましくは19.0~21.0mgの範囲で含有することを示す。
【0012】
本錠剤は1~3重量%の高甘味度甘味剤を含有する。本明細書中、高甘味度甘味剤とは、微量で甘味を呈する天然又は合成の甘味剤を意味する。高甘味度甘味剤としては、例えば、スクラロース、ステビア、アスパルテーム、アセスルファムカリウム、グリチルリチン酸(グリチルリチン酸二カリウム)、タウマチン、アドバンテーム及びサッカリン等が挙げられ、日本薬局方、日本薬局方外医薬品規格、医薬品添加物規格または食品添加物公定書に収載されているものを使用することができる。特に、スクラロースが好ましい。
【0013】
本錠剤中のスクラロースの量は、1~3重量%、好ましくは1~2重量%または2~3重量%、より好ましくは約2重量%である。
【0014】
本明細書中、用語「約」とは、記載された数値が、統計的に意味のある範囲内の任意の値を含むことを意味する。このような範囲は、記載された数値の、典型的には±10%、より典型的には±5%の範囲である。このような範囲は、測定または定量に使用される標準的な方法による実験誤差の範囲内であり得る。用語「約」によって包含されるばらつきは、実験または実施される製品の製造条件に依存し、当業者であれば容易に認識し得るものである。
【0015】
本錠剤は、崩壊剤を含有してもよく、日本薬局方、日本薬局方外医薬品規格、医薬品添加物規格または食品添加物公定書に収載されている崩壊剤を使用することができる。
本錠剤中の崩壊剤の量は、有効成分(スルファメトキサゾール及びトリメトプリム)120重部に対し、0.1~4.4重量部、好ましくは1.5~2.0、より好ましくは約1.75重量部である。
崩壊剤としては、例えば、セルロース系崩壊剤、デンプン系崩壊剤、ビニル系崩壊剤、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム等が挙げられる。
セルロース系崩壊剤としては、カルメロース、カルメロースカルシウム、カルメロースナトリウム、ヒドロキシプロピルセルロース、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、クロスカルメロースナトリウム(Ac-Di-Sol)、結晶セルロース、粉末セルロース等が挙げられる。
デンプン系崩壊剤としては、部分α化デンプン、バレイショデンプン、コーンスターチ、ヒドロキシプロピルスターチ、カルボキシメチルスターチナトリウム、低置換度カルボキシメチルスターチナトリウム、デンプングリコール酸ナトリウム、α化デンプン、デンプン等が挙げられる。
ビニル系崩壊剤としては、クロスポビドン、ポリビニルアルコール等が挙げられる。
好ましくはカルメロースカルシウムである。これら崩壊剤は、2種以上を適宜の割合で混合して用いてもよい。
【0016】
本錠剤は、結合剤を含有してもよく、日本薬局方、日本薬局方外医薬品規格、医薬品添加物規格または食品添加物公定書等に収載されている結合剤を使用することができる。
本錠剤中の結合剤の量は、有効成分(スルファメトキサゾール及びトリメトプリム)120重部に対し、1.3~3.8重量部、好ましくは2.0~3.0重量部、より好ましくは約2.5重量部である。
結合剤としては、例えば、セルロース系結合剤、デンプン系結合剤、ビニル系結合剤、ポリオール、アラビアゴム、アラビアゴム粉末、アラビアゴム末、アルギン酸、アルギン酸ナトリウム、ショ糖、ゼラチン、デキストリン、プルラン、トラガント、トラガント末、キサンタンガム、ペクチン、ポリアクリル酸ナトリウム、寒天、オウバク末、グァーガム、軽質無水ケイ酸、硬化油等が挙げられる。
セルロース系結合剤としては、カルボキシメチルセルロース(カルメロース、CMC)、カルボキシメチルセルロースナトリウム(カルメロースナトリウム)、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(ヒプロメロース)(HPMC)、メチルセルロース(MC)、結晶セルロース、微結晶セルロース、エチルセルロース、結晶セルロース・カルメロースナトリウム、カルメロースカルシウム、粉末セルロース、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース等が挙げられる。
デンプン系結合剤としては、澱粉、α化デンプン、部分α化デンプン、バレイショデンプン、コムギデンプン、コメデンプン、有孔デンプン、トウモロコシデンプン、ヒドロキシプロピルスターチ、デンプングリコール酸ナトリウム(カルボキシメチルスターチナトリウム)等が挙げられる。
ビニル系結合剤としては、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリビニルピロリドン(ポビドン)(PVP)、カルボキシビニルポリマー、コポリビドン等が挙げられる。
ポリオールとしては、マクロゴール(ポリエチレングリコール)200、マクロゴール300、マクロゴール400、マクロゴール600、マクロゴール1000、マクロゴール1500、マクロゴール1540、マクロゴール4000、マクロゴール6000、マクロゴール20000、グリセリン、ポリオキシエチレン[105]ポリオキシプロピレン[5]グリコール、プロピレングリコール等が挙げられる。
好ましくはヒドロキシプロピルセルロース(HPC)である。これら結合剤は、2種以上を適宜の割合で混合して用いてもよい。
【0017】
本錠剤は、滑沢剤を含有してもよく、日本薬局方、日本薬局方外医薬品規格、医薬品添加物規格または食品添加物公定書等に収載されている滑沢剤を使用することができる。
本錠剤中の滑沢剤の量は、有効成分(スルファメトキサゾール及びトリメトプリム)120重部に対し、0.1~0.9重量部、好ましくは0.2~0.3重量部、より好ましくは約0.25重量部である。
滑沢剤としては、例えば、ステアリン酸およびステアリン酸金属塩、無機系滑沢剤、疎水性滑沢剤、親水性滑沢剤、フマル酸ステアリルナトリウム等が挙げられる。
ステアリン酸およびステアリン酸金属塩としては、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸、ステアリルアルコール、ステアリン酸ポリオキシル40等が挙げられる。
無機系滑沢剤としては、タルク、軽質無水ケイ酸、含水二酸化ケイ素、炭酸マグネシウム、沈降炭酸カルシウム、乾燥水酸化アルミニウムゲル、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム、ケイ酸マグネシウム、合成ケイ酸アルミニウム、酸化マグネシウム、硫酸マグネシウム等が挙げられる。
疎水性滑沢剤としては、カカオ脂、カルナウバロウ、グリセリン脂肪酸エステル、硬化油、サラシミツロウ、ダイズ硬化油、ミツロウ、セタノール、ラウリル酸ナトリウム等が挙げられる。
親水性滑沢剤としては、ショ糖脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール(マクロゴール)等が挙げられる。
好ましくはステアリン酸マグネシウムである。これら滑沢剤は、2種以上を適宜の割合で混合して用いてもよい。
【0018】
本製剤は、さらに必要であれば、上記以外のさらなる添加剤を含有してもよく、日本薬局方、日本薬局方外医薬品規格、医薬品添加物規格および食品添加物公定書に収載されている添加剤を使用することができる。
そのようなさらなる添加剤は、錠剤の崩壊時間、溶出性、硬度、口腔内の違和感が生じない範囲であれば、任意の量を単独あるいは混合して使用することができる。
【0019】
本錠剤の製法としては、例えば、
1)スルファメトキサゾール及びトリメトプリム、高甘味度甘味剤、崩壊剤、結合剤、滑沢剤、および所望によりさらなる添加剤を混合し、その混合末を打錠して製造する方法(直接打錠法)、あるいは
2)スルファメトキサゾール及びトリメトプリム、崩壊剤、および結合剤を混合して造粒・整粒して得た造粒物に、高甘味度甘味剤、滑沢剤、および所望によりさらなる添加剤を混合して混合顆粒とし、これを打錠して製造する方法(間接打錠法)が挙げられる。
間接打錠法の場合、造粒物は、例えば、押し出し造粒法、撹拌造粒法、流動層造粒法、転動造粒法、乾式造粒法等の、製剤学的に通常用いられる造粒法で調製することができる。
【0020】
打錠を行う場合、静圧打錠機、ロータリー式打錠機などを用いて、適切な打常圧で圧縮成形する。打錠圧が低いと錠剤の硬度が不足し取扱上十分な硬度を確保できず、圧力が高いと崩壊が遅延するため好ましくない。本錠剤の成形において、識別性向上のためのマーク、文字などの刻印を付けても良い。
【0021】
本錠剤の硬度(硬度計による測定値)は、取扱上十分な硬度(例えば10~200N程度)であればよい。
【0022】
本錠剤の直径は、例えば5~7mm、好ましくは5.5~6.5mm、より好ましくは約6mmである。
【0023】
本錠剤の厚みは、例えば3.72~4.63mm、好ましくは4.26~4.46mm、より好ましくは4.30~4.40mmである。
【0024】
本錠剤の質量は、例えば、117.9~151.9mg、好ましくは123.2~130.8mg、より好ましくは125.0~129.0mgである。
【0025】
本錠剤の体積は、例えば、90~125mm、好ましくは94~119mm、より好ましくは110~113mmである。
【0026】
本錠剤の密度は、例えば、1.07~1.34mg/mm、好ましくは1.07~1.20mg/mm、より好ましくは1.11~1.17mg/mmである。
【0027】
本明細書中、「錠剤として求められる特性」、「期待される効果」等の表現は、例えば、第17改正日本薬局方に規定された錠剤の摩損度試験法における摩損度が1.0%以下、および/または第17改正日本薬局方に規定された崩壊試験法における崩壊時間が30分以内となるような、錠剤の特性、効果を意味する。
【実施例0028】
以下に、実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されない。
【0029】
実施例1:スクラロース3重量%を含有する錠剤の製造
下表に示す配合比(重量ベース)で下記成分を含有する錠剤を、下記の手順により製造した。
【表1】
【0030】
混合顆粒の製造
主薬としてスルファメトキサゾール及びトリメトプリム、崩壊剤としてカルメロースカルシウム、結合剤としてヒドロキシプロピルセルロースを60メッシュふるいで篩過し、攪拌造粒機で練合した。練合にはエタノールが3%含まれる水溶液を使用し、練合時の水分は約30%に調整した。その後、円筒造粒機で造粒を行い、乾燥、整粒をおこなった。
各条件は、以下の通りである。
(練合条件)
・練合機:攪拌造粒機
・攪拌羽根回転数:100min-1
・解砕羽根回転数:3000min-1
(造粒条件)
・造粒機:円筒造粒機
・回転数:36min-1

整粒した造粒物に、甘味剤としてスクラロースおよび滑沢剤としてステアリン酸マグネシウムを混合し、混合顆粒を得た。
【0031】
錠剤の製造
上記で得られた混合顆粒(128.3mg程度)を、静圧打錠機(杵:直径6.0mm)またはロータリー式打錠機(杵:直径6.0mm)を用いて、下表に示す打錠圧にて打錠し、厚みの異なる錠剤を製造した。
得られた各錠剤の物性を下記のとおり測定した。

(錠剤の厚み)
シックネスゲージを用いて測定した。
(体積・密度)
下表に示す方法により算出した。
【表2】

(硬度)
錠剤硬度計を用いて測定した。
(摩損度)
第17改正日本薬局方の摩損度試験法に従い測定した。
(崩壊時間)
第17改正日本薬局方の崩壊試験法(補助盤なし、試験液:精製水)に従い、崩壊試験器を用いて測定した。

結果を下表に示す。
【表3】

錠剤No.2~9(錠剤の密度:1.07~1.34mg/mm)について、期待する効果(摩損度1%以内、崩壊時間30分(1800秒)以内)が得られた。
錠剤No.1(錠剤の密度:1.41mg/mm)は崩壊時間が30分(1800秒)を超え、錠剤No.10(錠剤の密度:1.01mg/mm)は摩損度が1%を超えており、期待する効果は得られなかった。
【0032】
実施例2
実施例1で得られた混合顆粒(スクラロース3重量%)を、質量を変動させて、ロータリー式打錠機(杵:直径6.0mm)を用いて、厚みが4.4mm程度の錠剤を製造した。
得られた各錠剤について、実施例1と同様に錠剤の物性を測定した。
結果を下表に示す。
【表4】

表に示されるように、錠剤No.12~19について、期待する効果(摩損度1%以内、崩壊時間30分(1800秒)以内)が得られた。錠剤No.11(錠剤の密度:1.05mg/mm)は、摩損度が1%を超え、期待する効果は得られなかった。
錠剤No.20の質量(151.9mg)は、期待する効果が得られる錠剤質量の上限(予測値)を示したものである。厚みを錠剤No.12と同一(4.40mm)とし、密度を効果が得られた上限値(実施例1、錠剤No.2の1.34mg/mm)としたときの、錠剤の質量を計算で求めた。
【0033】
実施例3:スクラロース2重量%を含有する医薬組成物の製造
下表に示す配合比(重量ベース)で下記成分を含有する錠剤を、下記の手順により製造した。
【表5】
【0034】
混合顆粒の製造
主薬としてスルファメトキサゾール及びトリメトプリム、崩壊剤としてカルメロースカルシウム、結合剤としてヒドロキシプロピルセルロースを60メッシュふるいで篩過し、攪拌造粒機で練合した。練合にはエタノールが3%含まれる水溶液を使用し、練合時の水分は約30%に調整した。その後、円筒造粒機で造粒を行い、乾燥、整粒をおこなった。
各条件は、以下の通りである。
(練合条件)
・練合機:攪拌造粒機
・攪拌羽根回転数:100min-1
・解砕羽根回転数:3000min-1
(造粒条件)
・造粒機:円筒造粒機
・回転数:36min-1

整粒した造粒物に、甘味剤としてスクラロースおよび滑沢剤としてステアリン酸マグネシウムを混合し、混合顆粒を製造した。
【0035】
錠剤の製造
上記で得られた混合顆粒(127.0mg程度)を、ロータリー式打錠機(杵:直径6.0mm)を用いて、下表に示す打錠圧で打錠し、厚みの異なる錠剤を製造した。
得られた各錠剤の物性を上記実施例と同様に測定した。
結果を下表に示す。
【表6】
【0036】
実施例4
実施例3で得られた混合顆粒(スクラロース2重量%)を、質量を変動させて、ロータリー式打錠機(杵:直径6.0mm)を用いて、厚みが4.4mm程度の錠剤を製造した。
得られた各錠剤について、上記実施例と同様に錠剤の物性を測定した。
結果を下表に示す。
【表7】
【0037】
実施例5
実施例3で得られた混合顆粒(スクラロース2重量%)を、ロータリー式打錠機(杵:直径6.0mm)を用いて、質量および錠剤の厚みを変動させて、錠剤を製造した。
得られた各錠剤の物性を上記実施例と同様に測定した。
結果を下表に示す。
【表8】
【0038】
実施例6:スクラロース1重量%を含有する錠剤の製造
下表に示す配合比(重量ベース)で下記成分を含有する錠剤を、上記実施例に記載した手順と同様の方法を用いて製造し、表10に示す物性を有する錠剤を得た。
【表9】

【表10】
【0039】
実施例7:ラットを用いた嗜好性評価
高甘味度甘味剤の添加による効果を、二瓶選択嗜好性実験により評価した。
スルファメトキサゾール58.0mgとトリメトプリム11.6mgを水道水900mLに溶解し、水道水で1Lにメスアップして原薬水溶液を調製した。
測定用給水瓶を2本用意し、一方の瓶に調製した原薬水溶液をそのまま入れた。試験液として、スクラロース(1%または2%)を原薬水溶液に溶解したものを、もう一方の瓶に入れた。
SDラット(7週齢:Charles riverより入手)に2瓶を同時に提示して自由摂取させた。自由摂取後の測定用給水瓶を秤量することにより、それぞれの摂取量を記録し、下記計算式により嗜好率を算出した。

嗜好率(%)=試験水溶液の摂取量(g)/提示した2瓶の総摂取量(g)×100

結果を下表に示す。
【表11】

高甘味度甘味剤を添加することにより嗜好率が有意に向上した。
【0040】
実施例8:錠剤の服用性に関する調査
上記実施例3に記載した方法(製造条件は錠剤No.24と同様)を用いて本発明の錠剤(直径:約6.0mm、厚さ:約4.4mm、質量:約0.13g)を製造した。
市販のST合剤(普通錠(直径:約11.0mm、厚さ:約5.1mm、質量:約0.50g)、または顆粒)を服用中の患者(計18人)に本発明の錠剤を服用してもらい、服用性についてアンケート調査を実施した。
(方法)
患者への投薬を、服用中のST合剤から本発明の錠剤に切り替え、無記名式の調査票を用いて患者本人またはその介助者に、服用時の受容性(3段階視覚的評価スケール:positive/neutral/negative)、服用準備時間、服用時間、服用方法、服用時の印象について聴取した。
(結果)
受容性(positive/neutral/negative)は、本発明の錠剤に切替える前は、普通錠ではpositive:1例/neutral:2例/negative:6例、顆粒ではpositive:2例/neutral:1例/negative:6例であった。本発明の錠剤に切替え後は、それぞれ、positive:7例/neutral:1例/negative:1例、positive:6例/neutral:3例/negative:0例であった。
服用準備時間/服用時間(中央値)は、本発明の錠剤に切替える前は、普通錠では60/70秒、顆粒では90/145秒であった。本発明の錠剤に切替えた後は、それぞれ、30/10秒、および20/40秒であった。
服用補助のためシロップ、アイス等の使用を必要とした事例は、普通錠で5例、顆粒で4例、本発明の錠剤で3例であり、本発明の錠剤が最も少なかった。
このように、本発明の錠剤は、特に低年齢の患者において、服用時の受容性が大きく改善し、また、服用準備時間および服用時間のいずれにおいても大幅な短縮が認められた。
【0041】
実施例9:生物学的同等性試験
本発明の錠剤(製造条件は錠剤No.24と同様、直径:約6.0mm、厚さ:約4.4mm、質量:約0.13g)と市販のST合剤(普通錠(直径:約11.0mm、厚さ:約5.1mm、質量:約0.50g)について、「後発医薬品の生物学的同等性ガイドライン等の一部改正について」(令和2年3月19日、薬生薬審発0319 第1号)の「後発医薬品の生物学的同等性試験ガイドライン」及び「含量が異なる経口固形製剤の生物学的同等性試験ガイドライン」に従い、これらの溶出挙動を比較した。その結果、本発明の錠剤と普通錠の溶出挙動の同等性が示された。
全ての溶出試験条件において、ガイドラインの第5章「溶出挙動の同等性の判定」に規定される判定基準を満たした。
【産業上の利用可能性】
【0042】
肺炎、感染症の治療や予防のための医薬品として使用される、スルファメトキサゾール及びトリメトプリムを含有する小型錠剤を提供することが可能となる。