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特開2022-184792アジルサルタンまたは薬学的に許容されるその塩を含む口腔内崩壊錠
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022184792
(43)【公開日】2022-12-13
(54)【発明の名称】アジルサルタンまたは薬学的に許容されるその塩を含む口腔内崩壊錠
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/4184 20060101AFI20221206BHJP
   A61K 47/10 20060101ALI20221206BHJP
   A61K 9/20 20060101ALI20221206BHJP
   A61K 47/38 20060101ALI20221206BHJP
   A61K 9/14 20060101ALI20221206BHJP
   A61K 47/02 20060101ALI20221206BHJP
   A61P 9/12 20060101ALI20221206BHJP
【FI】
A61K31/4184
A61K47/10
A61K9/20
A61K47/38
A61K9/14
A61K47/02
A61P9/12
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022087071
(22)【出願日】2022-05-27
(31)【優先権主張番号】P 2021091565
(32)【優先日】2021-05-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】591040753
【氏名又は名称】東和薬品株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】特許業務法人HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】大谷 慧
(72)【発明者】
【氏名】萬代 悠太
(72)【発明者】
【氏名】堤 雄洋
【テーマコード(参考)】
4C076
4C086
【Fターム(参考)】
4C076AA31
4C076AA49
4C076CC11
4C076DD29U
4C076DD38
4C076DD41
4C076EE23
4C076EE32
4C076EE38
4C076FF06
4C076FF36
4C076FF53
4C086AA01
4C086AA02
4C086BC39
4C086GA07
4C086GA09
4C086MA03
4C086MA05
4C086MA35
4C086NA10
4C086ZA42
(57)【要約】
【課題】アジルサルタンまたは薬学的に許容されるその塩の安定性が改善された口腔内崩壊錠を提供する。
【解決手段】本発明の一態様に係る口腔内崩壊錠は、アジルサルタンまたは薬学的に許容されるその塩を含む薬物含有顆粒と、アジルサルタンまたは薬学的に許容されるその塩を含まない速崩壊性顆粒と、を含有してなる口腔内崩壊錠であって;ポリエチレングリコール、着色剤およびヒドロキシプロピルセルロースをそれぞれ所定量以上含む。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アジルサルタンまたは薬学的に許容されるその塩を含む薬物含有顆粒と、アジルサルタンまたは薬学的に許容されるその塩を含まない速崩壊性顆粒と、を含有してなる口腔内崩壊錠であって、
ポリエチレングリコール、着色剤およびヒドロキシプロピルセルロースを含んでおり、
上記アジルサルタンまたは薬学的に許容されるその塩の含有量を100重量部としたときに、
上記ポリエチレングリコールの含有量は、2.0重量部以上であり、
上記着色剤の含有量は、0.8重量部以上であり、
上記薬物含有顆粒はコーティング層を有しており、当該コーティング層における上記ヒドロキシプロピルセルロースの含有量は、3.5重量部以上である、
口腔内崩壊錠。
【請求項2】
上記薬物含有顆粒は上記ポリエチレングリコールを含有している、請求項1に記載の口腔内崩壊錠。
【請求項3】
上記薬物含有顆粒および/または上記速崩壊性顆粒は上記着色剤を含有している、請求項1または2に記載の口腔内崩壊錠。
【請求項4】
少なくとも上記速崩壊性顆粒が上記着色剤を含有している、請求項1または2に記載の口腔内崩壊錠。
【請求項5】
上記着色剤は、黄色三二酸化鉄、三二酸化鉄、黒酸化鉄、青色2号アルミニウムレーキおよび酸化チタンからなる群より選択される1種類以上である、請求項1または2に記載の口腔内崩壊錠。
【請求項6】
アジルサルタンまたは薬学的に許容されるその塩を含む薬物含有顆粒と、アジルサルタンまたは薬学的に許容されるその塩を含まない速崩壊性顆粒と、を含有してなる口腔内崩壊錠の製造方法であって、
ポリエチレングリコール、着色剤およびヒドロキシプロピルセルロースを配合する工程を含み、
上記アジルサルタンまたは薬学的に許容されるその塩の含有量を100重量部としたときに、
上記ポリエチレングリコールの配合量を、2.0重量部以上とし、
上記着色剤の配合量を、0.8重量部以上とし、
上記薬物含有顆粒はコーティング層を有しており、当該コーティング層における上記ヒドロキシプロピルセルロースの配合量を、3.5重量部以上とする、
製造方法。
【請求項7】
アジルサルタンまたは薬学的に許容されるその塩を含む薬物含有顆粒と、アジルサルタンまたは薬学的に許容されるその塩を含まない速崩壊性顆粒と、を含有してなる口腔内崩壊錠において、当該アジルサルタンまたは薬学的に許容されるその塩を安定化させる方法であって、
上記口腔内崩壊錠にポリエチレングリコール、着色剤およびヒドロキシプロピルセルロースを含ませ、
上記アジルサルタンまたは薬学的に許容されるその塩の含有量を100重量部としたときに、
上記ポリエチレングリコールの配合量を、2.0重量部以上とし、
上記着色剤の配合量を、0.8重量部以上とし、
上記薬物含有顆粒はコーティング層を有しており、当該コーティング層における上記ヒドロキシプロピルセルロースの配合量を、3.5重量部以上とする、
方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アジルサルタンまたは薬学的に許容されるその塩を含む口腔内崩壊錠に関する。本発明はまた、この口腔内崩壊錠の製造方法に関する。本発明はさらに、アジルサルタンまたは薬学的に許容されるその塩を含む口腔内崩壊錠において、アジルサルタンまたは薬学的に許容されるその塩の安定性を改善する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
アジルサルタンは、アンジオテンシンII受容体拮抗薬であり、主に高血圧の治療に用いられている。アジルサルタンを有効成分とする種々の製剤が開発されている(例えば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2008/018569号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上述のような先行技術には、アジルサルタンの安定性(とりわけ、口腔内崩壊錠製剤における安定性)に関して、改善の余地があった。
【0005】
本発明の一態様は、アジルサルタンまたは薬学的に許容されるその塩の安定性が改善された口腔内崩壊錠を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討を重ねた。その結果、アジルサルタンまたは薬学的に許容されるその塩を含む口腔内崩壊錠に、ポリエチレングリコール、着色剤、およびヒドロキシプロピルセルロースを所定量以上含ませることにより、上記の課題が解決できることを初めて見出した。本発明の一態様は、以下の構成を包含する。
<1>
アジルサルタンまたは薬学的に許容されるその塩を含む薬物含有顆粒と、アジルサルタンまたは薬学的に許容されるその塩を含まない速崩壊性顆粒と、を含有してなる口腔内崩壊錠であって、
ポリエチレングリコール、着色剤およびヒドロキシプロピルセルロースを含んでおり、
上記アジルサルタンまたは薬学的に許容されるその塩の含有量を100重量部としたときに、
上記ポリエチレングリコールの含有量は、2.0重量部以上であり、
上記着色剤の含有量は、0.8重量部以上であり、
上記薬物含有顆粒はコーティング層を有しており、当該コーティング層における上記ヒドロキシプロピルセルロースの含有量は、3.5重量部以上である、
口腔内崩壊錠。
<2>
上記薬物含有顆粒は上記ポリエチレングリコールを含有している、<1>に記載の口腔内崩壊錠。
<3>
上記薬物含有顆粒および/または上記速崩壊性顆粒は上記着色剤を含有している、<1>または<2>に記載の口腔内崩壊錠。
<4>
少なくとも上記速崩壊性顆粒が上記着色剤を含有している、<1>または<2>に記載の口腔内崩壊錠。
<5>
上記着色剤は、黄色三二酸化鉄、三二酸化鉄、黒酸化鉄、青色2号アルミニウムレーキおよび酸化チタンからなる群より選択される1種類以上である、<1>~<4>のいずれかに記載の口腔内崩壊錠。
<6>
アジルサルタンまたは薬学的に許容されるその塩を含む薬物含有顆粒と、アジルサルタンまたは薬学的に許容されるその塩を含まない速崩壊性顆粒と、を含有してなる口腔内崩壊錠の製造方法であって、
ポリエチレングリコール、着色剤およびヒドロキシプロピルセルロースを配合する工程を含み、
上記アジルサルタンまたは薬学的に許容されるその塩の含有量を100重量部としたときに、
上記ポリエチレングリコールの配合量を、2.0重量部以上とし、
上記着色剤の配合量を、0.8重量部以上とし、
上記薬物含有顆粒はコーティング層を有しており、当該コーティング層における上記ヒドロキシプロピルセルロースの配合量を、3.5重量部以上とする、
製造方法。
<7>
アジルサルタンまたは薬学的に許容されるその塩を含む薬物含有顆粒と、アジルサルタンまたは薬学的に許容されるその塩を含まない速崩壊性顆粒と、を含有してなる口腔内崩壊錠において、当該アジルサルタンまたは薬学的に許容されるその塩を安定化させる方法であって、
上記口腔内崩壊錠にポリエチレングリコール、着色剤およびヒドロキシプロピルセルロースを含ませ、
上記アジルサルタンまたは薬学的に許容されるその塩の含有量を100重量部としたときに、
上記ポリエチレングリコールの配合量を、2.0重量部以上とし、
上記着色剤の配合量を、0.8重量部以上とし、
上記薬物含有顆粒はコーティング層を有しており、当該コーティング層における上記ヒドロキシプロピルセルロースの配合量を、3.5重量部以上とする、
方法。
【発明の効果】
【0007】
本発明の一態様によれば、アジルサルタンまたは薬学的に許容されるその塩の安定性が改善された口腔内崩壊錠が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施の形態の一例について詳細に説明するが、本発明は、これらに限定されない。本明細書において特記しない限り、数値範囲を表す「A~B」は、「A以上、B以下」を意味する。
【0009】
本明細書では、アジルサルタンまたは薬学的に許容されるその塩のことを、単に、「有効成分」と称する。本明細書では、ポリエチレングリコール、着色剤およびヒドロキシプロピルセルロースを総称して、「安定化成分」と称する。
【0010】
〔1.口腔内崩壊錠〕
本発明の一実施形態に係る口腔内崩壊錠は、薬物含有顆粒および速崩壊性顆粒を含んでいる。薬物含有顆粒とは、有効成分(アジルサルタンまたは薬学的に許容されるその塩)を含んでいる顆粒である。速崩壊性顆粒は、有効成分を含んでいない顆粒である。速崩壊性顆粒が含まれていることにより、口腔内崩壊錠は、充分に高い硬度を有している一方で、水の存在下にて急速に崩壊する性質を示す。
【0011】
[1.1薬物含有顆粒]
(アジルサルタンまたは薬学的に許容されるその塩)
薬物含有顆粒は、有効成分として、アジルサルタンまたは薬学的に許容されるその塩を含んでいる。アジルサルタンとは、一般に、2-エトキシ-1-[[2’-(5-オキソ-4,5-ジヒドロ-1,2,4-オキサジアゾール-3-イル)ビフェニル-4-イル]メチル]-1H-ベンズイミダゾール-7-カルボン酸と呼ばれる化合物である。
【0012】
本明細書において、「薬学的に許容される塩」とは、医学的に過度の毒性、刺激、アレルギー反応などがなく、ヒトまたはその他の哺乳動物の組織と接触させて使用するのに適している塩を意味する。アジルサルタンの薬学的に許容される塩は、本技術分野において周知である。任意のアジルサルタン塩を使用してよい。
【0013】
口腔内崩壊錠1錠あたりの、有効成分の含有率は、特に限定されない。含有率の下限は、口腔内崩壊錠の重量を基準として、1重量%以上、2重量%以上または3重量%以上でありうる。含有率の上限は、口腔内崩壊錠の重量を基準として、35重量%以下、30重量%以下または25重量%以下でありうる。
【0014】
口腔内崩壊錠1錠あたりの、有効成分の含有量は、特に限定されない。含有量の下限は、0.1mg以上、0.5mg以上、1mg以上または2mg以上でありうる。含有量の上限は、100mg以下、80mg以下、60mg以下または50mg以下でありうる。本発明の一実施形態に係る口腔内崩壊錠は、安定化成分を多く配合しにくい小さな錠剤においても、有効成分の充分な安定化効果を示す。例えば、剤径が小さい小児用製剤においても、有効成分の充分な安定化効果を示す(実施例1-5~1-7を参照)。
【0015】
薬物含有顆粒に含まれている有効成分の平均粒子径(D50)は、2.0~7.0μmが好ましく、2.5~6.5μmがより好ましく、3.0~6.0μmがさらに好ましい。平均粒子径は、レーザ回折式粒度分布測定装置を用いて乾式法により粒度分布を測定し、その分布から計算する。
【0016】
(その他の成分)
薬物含有顆粒は、有効成分以外にも、賦形剤、結合剤などを含んでいてもよい。
【0017】
賦形剤の例としては、D-マンニトール、乳糖またはその水和物、白糖、デンプン(トウモロコシデンプン、馬鈴薯デンプンなど)、アルファ化デンプン(部分アルファ化デンプン)、リン酸カルシウム、ソルビット、結晶セルロースが挙げられる。これらの中では、コーンスターチおよび部分アルファ化デンプンが好ましい。
【0018】
結合剤の例としては、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルピロリドン、N-ビニルピロリドンと酢酸ビニルとの共重合体、ゼラチン、カンテン、アラビアゴムが挙げられる。これらの中では、ヒドロキシプロピルセルロースが好ましい。
【0019】
その他の成分の含有率は、特に限定されない。当業者の技術常識に基づいて、適宜設定される。
【0020】
(コーティング層)
薬物含有顆粒は、表面にコーティング層を有している。コーティング層には、口腔内崩壊錠の崩壊性を向上させる機能がある。
【0021】
コーティング層は、アミノアルキルメタクリレートコポリマーE、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースなどの成分を含有していてもよい。これらの成分の含有率は特に限定されない。当業者の技術常識に基づいて、適宜設定される。
【0022】
[1.2.速崩壊性顆粒]
速崩壊性顆粒は、水の存在下にて急速に口腔内崩壊錠を崩壊させる機能を有している顆粒である。この機能を発揮するために、速崩壊性顆粒は、親水性かつ非水溶性の化合物、糖および糖アルコールから選択される1種類以上を含んでいることが好ましい。
【0023】
親水性かつ非水溶性の化合物は、無機化合物であってもよいし、有機化合物であってもよい。
【0024】
親水性かつ非水溶性の無機化合物の例としては、軽質無水ケイ酸、無水リン酸水素カルシウム、乾燥水酸化アルミニウムゲル、ケイ酸アルミン酸マグネシウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、合成ケイ酸アルミニウム、含水二酸化ケイ素、リン酸水素カルシウム、沈降炭酸カルシウム、メタケイ酸アルミン酸マグネシウムが挙げられる。これらの中でも、軽質無水ケイ酸が好ましい。
【0025】
親水性かつ非水溶性の無機化合物の含有率は、速崩壊性顆粒全体の、0~5重量%であることが好ましく、0~2重量%であることがより好ましく、0.5~1.5重量%であることがさらに好ましい。
【0026】
親水性かつ非水溶性の有機化合物の例としては、デンプン(トウモロコシデンプン、馬鈴薯デンプンなど);デンプン誘導体(部分アルファ化澱粉(PCS)、ヒドロキシプロピルデンプン(HPS)など);セルロース誘導体(エチルセルロースなど);クロスポビドンが挙げられる。これらの中でも、トウモロコシデンプン、エチルセルロースおよびクロスポビドンから選択される1種類以上が好ましい。
【0027】
親水性かつ非水溶性のその他の有機化合物の含有率は、速崩壊性顆粒全体の、10~40重量%であることが好ましく、15~35重量%であることがより好ましく、20~30重量%であることがさらに好ましい。
【0028】
糖および糖アルコールの例としては、マンニトール(D-マンニトール)、乳糖またはその水和物、トレハロースが挙げられる。これらの中でも、マンニトール(D-マンニトール)が好ましい。
【0029】
糖および糖アルコールの含有率は、速崩壊性顆粒全体の、50~90重量%であることが好ましく、60~80重量%であることがより好ましく、65~75重量%であることがさらに好ましい。
【0030】
好ましくは、速崩壊性顆粒は、親水性かつ非水溶性の無機化合物と、糖および/または糖アルコールとを含有している。同じく好ましくは、速崩壊性顆粒は、親水性かつ非水溶性の有機化合物と、糖および/または糖アルコールとを含有している。より好ましくは、速崩壊性顆粒は、親水性かつ非水溶性の無機化合物と、親水性かつ非水溶性の有機化合物と、糖および/または糖アルコールとを含有している。
【0031】
[1.3.その他の添加剤]
本発明の一実施形態に係る口腔内崩壊錠は、薬物含有顆粒および速崩壊性顆粒に加えて、さらにその他の添加剤を含んでいてもよい。その他の添加剤は、例えば、薬物含有顆粒および速崩壊性顆粒を混合および打錠して、錠剤に成形する際に添加される。
【0032】
その他の添加剤としては、本技術分野で利用される通常の物質が利用できる。一例を挙げると、以下の通りである。滑沢剤(タルク、カオリン、二酸化チタンなどの不活性物質、ステアリン酸マグネシウム、細かく粉砕した二酸化ケイ素、クロスポビドン、β-ラクトースなど);結合剤(アルファ化デンプン、ポリビニルピロリドン、ゼラチン、カンテンなど);賦形剤(D-マンニトール、乳糖、白糖、コーンスターチ(トウモロコシデンプン)、リン酸カルシウム、ソルビット、結晶セルロースなど);崩壊剤(クロスポビドン、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、デンプングリコール酸ナトリウム、クロスカルメロースナトリウム、馬鈴薯デンプンなど);コーティング剤(ヒプロメロース、エチルセルロースなど);甘味剤(アスパルテーム、果糖、サッカリン、スクラロース、白糖、D-ソルビトール、ブドウ糖、アセスルファムカリウムなど);香料(ペパーミントミクロンなど)。
【0033】
[1.4.安定化成分]
(ポリエチレングリコール)
本発明の一実施形態に係る口腔内崩壊錠は、ポリエチレングリコールを含んでいる。ポリエチレングリコールの含有量の下限は、有効成分を100重量部とすると、2.0重量部以上であり、5.0重量部以上が好ましく、8.0重量部以上がより好ましい。ポリエチレングリコールの含有量の上限は、有効成分を100重量部とすると、50重量部以下が好ましく、35重量部以下がより好ましく、25重量部以下がさらに好ましく、20重量部以下が特に好ましい。
【0034】
ポリエチレングリコールの含有量が上述の範囲ならば、有効成分の変質を防ぎ(特に、脱エチル体の発生を防ぎ)、製剤を安定化させることができる。ただし、ポリエチレングリコールは過酷条件(例えば、70℃以上)において融解して、有効成分の変質を促進してしまう恐れがある。そのため、ポリエチレングリコールの配合量は多すぎない方がより好ましい。この観点に基づくと、ポリエチレングリコールの含有量の上限は、有効成分を100重量部とすると、35重量部以下が好ましく、25重量部以下がより好ましく、20重量部以下がさらに好ましい。
【0035】
ポリエチレングリコールは、口腔内崩壊錠を構成するどの要素に含まれていてもよい。ポリエチレングリコールは、薬物含有顆粒(およびそのコーティング層)に含まれていてもよいし、速崩壊性顆粒に含まれていてもよいし、それ以外の場所に含まれていてもよい。ただし、有効成分を安定化させる効果を充分に発揮するためには、薬物含有顆粒にポリエチレングリコールを含ませることが好ましい。一実施形態において、上述したポリエチレングリコールの含有量は、薬物含有顆粒における含有量である。
【0036】
ポリエチレングリコールの数平均分子量は、200~20,000が好ましく、300~10,000がより好ましい。より具体的な例としては、マクロゴール6000(ポリエチレングリコール6000、数平均分子量:8,600)、マクロゴール4000(ポリエチレングリコール4000、数平均分子量:4,100)が挙げられる。ポリエチレングリコールは、1種類のみを単独で使用してもよいし、2種類以上を併用してもよい。
【0037】
(着色剤)
本発明の一実施形態に係る口腔内崩壊錠は、着色剤を含んでいる。着色剤の含有量の下限は、有効成分を100重量部とすると、0.8重量部以上であり、1.0重量部以上が好ましく、2.0重量部以上がより好ましい。着色剤の含有量の上限は、有効成分を100重量部とすると、25重量部以下が好ましく、23重量部以下がより好ましく、20重量部以下がさらに好ましい。
【0038】
一実施形態において、口腔内崩壊錠は、黄色三二酸化鉄を含んでいる。黄色三二酸化鉄の含有量の下限は、有効成分を100重量部とすると、0.8重量部以上が好ましく、1.0重量部以上がより好ましく、2.0重量部以上がさらに好ましい。黄色三二酸化鉄の含有量の上限は、有効成分を100重量部とすると、25重量部以下が好ましく、23重量部以下がより好ましく、20重量部以下がさらに好ましい。
【0039】
着色剤の含有量が上述の範囲ならば、有効成分の変質を防ぎ(特に、光分解物の発生を防ぎ)、製剤を安定化させることができる。
【0040】
着色剤は、口腔内崩壊錠を構成するどの要素に含まれていてもよい。着色剤は、薬物含有顆粒(およびそのコーティング層)に含まれていてもよいし、速崩壊性顆粒に含まれていてもよいし、それ以外の場所に含まれていてもよい。ただし、有効成分を安定化させる効果を充分に発揮するためには、薬物含有顆粒および速崩壊性顆粒の少なくとも一方に着色剤を含ませることが好ましい。薬物含有顆粒に着色剤を含ませる場合、顆粒自体に着色剤を配合してもよいし、顆粒を被覆するコーティング層に着色剤を配合してもよい。口腔内崩壊錠を構成する複数の要素に着色剤が含まれている場合、それぞれの要素における着色剤の含有量は、含有量の合計が上記の条件を満たすならば、特に限定されない。一実施形態において、上述した着色剤の含有量は、薬物含有顆粒および速崩壊性顆粒における含有量の合計である。
【0041】
一実施形態において、着色剤は、少なくとも速崩壊性顆粒に含まれている(このとき、薬物含有顆粒は、着色剤を含んでいてもよいし、含んでいなくてもよい)。好ましくは、薬物含有顆粒および速崩壊性顆粒の両方が、着色剤を含んでいる。本発明者らが検討したところ、意外にも、速崩壊性顆粒に着色剤を含有させることにより、有効成分の安定化効果が大きく高まることが見出された。通常ならば、光を確実に遮断するために、有効成分と同じ薬物含有顆粒内に着色剤を含有させると考えるところ、これは当業者にとって予想外の発見であった。
【0042】
着色剤の例としては、黄色三二酸化鉄、三二酸化鉄、黒酸化鉄、青色2号アルミニウムレーキ、酸化チタン、食用黄色4号アルミニウムレーキ、ベンガラ、食用赤色2号、食用赤色3号、食用赤色102号、カーボンブラック、薬用炭、カラメルが挙げられる。これらの中でも、黄色三二酸化鉄、三二酸化鉄、黒酸化鉄、青色2号アルミニウムレーキおよび酸化チタンからなる群より選択される1種類以上が好ましく、黄色三二酸化鉄がより好ましい。着色剤は、1種類のみを単独で使用してもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0043】
(ヒドロキシプロピルセルロース)
本発明の一実施形態に係る口腔内崩壊錠は、薬物含有顆粒のコーティング層に、ヒドロキシプロピルセルロースを含んでいる。コーティング層におけるヒドロキシプロピルセルロースの含有量の下限は、口腔内崩壊錠全体に含まれる有効成分を100重量部とすると、3.5重量部以上であり、4.0重量部以上が好ましく、4.5重量部以上がより好ましい。コーティング層におけるヒドロキシプロピルセルロースの含有量の上限は、口腔内崩壊錠全体に含まれる有効成分を100重量部とすると、20重量部以下が好ましく、15重量部以上がより好ましく、10重量部以上がさらに好ましい。
【0044】
コーティング層におけるヒドロキシプロピルセルロースの含有量が上述の範囲ならば、有効成分の変質を防ぎ(特に、脱エチル体およびエチルエステル体の発生を防ぎ)、製剤を安定化させることができる。また、コーティング層におけるヒドロキシプロピルセルロースの含有量が上述の範囲ならば、口腔内崩壊錠に適度な崩壊性を与えることができる。
【0045】
コーティング層に含まれているヒドロキシプロピルセルロースの粘度は、50~600mPa・sが好ましく、100~500mPa・sがより好ましく、150~400mPa・sがさらに好ましい。なお、上記の粘度は、ヒドロキシプロピルセルロースの2%溶液を用いて、20℃にて測定した値である。
【0046】
[1.5.口腔内崩壊錠の剤型および処方]
口腔内崩壊錠の形状は、特に限定されることなく、どのような形状でも採用される。一例を挙げると、円形錠、楕円形錠、球形錠、棒状型錠、ドーナツ型錠、積層錠、有核錠がある。
【0047】
口腔内崩壊錠の硬度は、好ましくは40N以上であり、より好ましくは80N以上であり、さらに好ましくは100N以上である。硬度が40N以上であれば、輸送時などにおける物理的破損を回避できる。口腔内崩壊錠の硬度は、錠剤硬度計を用いて測定する。
【0048】
口腔内崩壊錠の崩壊時間は、好ましくは27秒以下であり、より好ましくは25秒以下である。崩壊時間が27秒以下であれば、口腔内崩壊錠として適した崩壊性を有していると言える。口腔内崩壊錠の崩壊時間は、第16改正日本薬局方に記載されている崩壊試験法に従って測定する。
【0049】
口腔内崩壊錠は、必要に応じて、PTP包装、ビン充填、アルミ包装などにより包装されていてもよい。
【0050】
PTP包装の素材としては、例えば、樹脂(ポリ塩化ビニル、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニリデン、ポリクロロトリフルオロエチレン、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリカーボネートなど)、金属(アルミニウムなど)が挙げられる。これらの素材は、1種類のみを用いても、複数種類を組合せて用いてもよい。素材の組合せの例としては、ポリ塩化ビニルおよびポリ塩化ビニリデンの積層体、ポリ塩化ビニルおよびポリクロロトリフルオロエチレンの積層体が挙げられる。樹脂製のシートに公知の方法で成形したポケットに口腔内崩壊錠を収容し、アルミニウム箔により蓋をすることで、PTP包装とすることができる。
【0051】
口腔内崩壊錠が収容されたPTP包装は、アルミピローによってさらに包装されていてもよい。アルミピローには、乾燥剤、脱酸素剤などが収容されていてもよい。乾燥剤としては、例えば、塩化カルシウム、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、シリカゲル、ゼオライトが挙げられる。脱酸素剤としては、例えば、鉄系の脱酸素剤(鉄粉など)、有機系の脱酸素剤(アスコルビン酸、イソアスコルビン酸、ヒドロキノン、カテコールなど)が挙げられる。乾燥剤または脱酸素剤は、1種類のみを用いても、複数種類を組合せて用いてもよい。また、乾燥剤および脱酸素剤を組合せて用いてもよい。乾燥剤および脱酸素剤を組合せた製品としては、例えば、三菱ガス化学株式会社の「ファーマキープ(登録商標)」が挙げられる。
【0052】
〔2.口腔内崩壊錠の製造方法〕
[2.1.製造方法に関する一般的事項]
一実施形態において、口腔内崩壊錠の製造方法には、以下の工程が含まれる。
工程A:アジルサルタンまたは薬学的に許容されるその塩を含有する、造粒末を調製する。
工程B:工程Aで得た造粒末にコーティング剤を加え、コーティング層を有する薬物含有顆粒を調製する。
工程C:速崩壊性顆粒を調製する。
工程D:薬物含有顆粒、速崩壊性顆粒、およびその他の添加物を混合し、打錠する。
【0053】
工程A~Dにおける具体的な製造方法は、本技術分野において周知であるため、説明を省略する。通常の造粒法および打錠法が採用できる。
【0054】
工程Bにおいて、造粒末を100重量部としたときのコーティング剤の添加量は、1~5重量部が好ましく、2~4重量部がより好ましい。
【0055】
工程Dにおいて、薬物含有顆粒を100重量部としたときの速崩壊性顆粒の配合量は、100~1,000重量部が好ましく、200~800重量部がより好ましい。工程Dにおいて、薬物含有顆粒を100重量部としたときの、その他の添加物の配合量は、10~50重量部が好ましい。
【0056】
[2.2.安定化成分の配合]
(ポリエチレングリコールの配合)
ポリエチレングリコールの配合量は、配合される有効成分を100重量部とすると、2.0重量部以上である。その他、ポリエチレングリコールの好ましい配合量は、[1.4.]節に説明した通りである。
【0057】
ポリエチレングリコールは、工程A~Dのいずれの工程で配合されてもよい。好ましくは、工程Aにおいて配合される。一実施形態において、上述のポリエチレングリコールの配合量は、工程Aにおける配合量である。
【0058】
(着色剤の配合)
着色剤の配合量は、配合される有効成分を100重量部とすると、0.8重量部以上である。その他、着色剤の好ましい配合量は、[1.4.]節に説明した通りである。
【0059】
着色剤は、工程A~Dのいずれの工程で配合されてもよい。好ましくは、工程A、工程Bおよび工程Cから選択される1つ以上の工程において配合される。より好ましくは、少なくとも工程Cにおいて配合される(この場合、工程Aおよび工程Bにおいては、着色剤を配合してもよいし、配合しなくてもよい)。別のより好ましい態様としては、工程A、工程Bおよび工程Cの全ての工程において配合される。一実施形態において、上述の着色剤の配合量は、工程A~Cにおける配合量の合計である。
【0060】
(ヒドロキシプロピルセルロースの配合)
ヒドロキシプロピルセルロースの配合量は、配合される有効成分を100重量部とすると、3.5重量部以上である。その他、ヒドロキシプロピルセルロースの好ましい配合量は、[1.4.]節に説明した通りである。
【0061】
ヒドロキシプロピルセルロースは、少なくとも工程Bで配合される。一実施形態において、上述のヒドロキシプロピルセルロースの配合量は、工程Bにおける配合量である。
【0062】
〔3.口腔内崩壊錠における有効成分の安定化方法〕
上述の記載から、本発明には、有効成分としてアジルサルタンまたは薬物的に許容されるその塩を含有する口腔内崩壊錠において、有効成分を安定化させる方法が含まれることは明白である。この方法は、口腔内崩壊錠に安定化成分を含有させることにより達成される。
【0063】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【実施例0064】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は下記実施例のみに限定されるものではない。
【0065】
〔製造例〕
本実施例および比較例では、以下の手順により、アジルサルタン口腔内崩壊錠を作製した。
【0066】
(薬物含有顆粒の作製)
1. アジルサルタン、ヒドロキシプロピルセルロース、トウモロコシデンプン、および着色剤(黄色三二酸化鉄)を混合し、スクリーン径1143μmの篩に通した。次に、湿式高剪断造粒機に投入して混合した。
2. マクロゴール6000を精製水に溶解させたものを、湿式高剪断造粒機に加えて造粒し、湿式造粒末を得た。この工程では、必要に応じて精製水を追加した。
3. 湿式造粒末を乾式整粒機で解砕した。次に、流動層造粒乾燥機で乾燥させ、造粒末を得た。造粒末の水分含量は、熱重量分析法で測定して、2.4~3.4%であった。
4. 造粒末を乾式整粒機で整粒し、素顆粒を得た。次に、素顆粒を流動層造粒乾燥機に入れて予熱した。
5. ヒドロキシプロピルセルロースを精製水に溶解させた。これとは別に、着色剤(黄色三二酸化鉄および/または三二酸化鉄)を精製水に分散させた。この溶液および分散液を混和し、コーティング剤を得た。
6. 工程4で予熱した素顆粒に、工程5で得たコーティング剤をスプレーし、乾燥させ、コーティング末を得た。
7. コーティング末を流動層造粒乾燥機で乾燥させ、乾式整粒機で整粒して、薬物含有顆粒を得た。薬物含有顆粒の水分含量は、熱重量分析法で測定して、2.1~2.8%であった。
【0067】
(速崩壊性顆粒の作製)
8. 流動層造粒乾燥機に、D-マンニトール、エチルセルロースおよび軽質無水ケイ酸を入れ、混合した。
9. トウモロコシデンプン、クロスポビドンおよび着色剤(黄色三二酸化鉄)を精製水に分散させて、造粒液を得た。
10. 工程8で得られた混合物に、工程9で得られた造粒液をスプレーし、乾燥させて、造粒末を得た。
11. 造粒末を乾式整粒機で整粒し、速崩壊性顆粒を得た。
【0068】
(口腔内崩壊錠の作製)
12. 薬物含有顆粒、速崩壊性顆粒、軽質無水ケイ酸、アスパルテーム、ペパーミントミクロンおよびD-マンニトールを、拡散式混合機に投入して混合した。
13. ステアリン酸マグネシウムをさらに加えて混合し、打錠末を得た。
14. 打錠末を、ロータリー式打錠機で打錠し、口腔内崩壊錠を得た。
【0069】
〔類縁物質含有量の測定〕
(試料溶液の調製)
以下の手順で試料溶液を調製した。なお、以下の手法は、アジルサルタンを20mg含む口腔内崩壊錠から試料溶液を調製する方法である。アジルサルタンの含有量に応じて、技術常識の範囲内で、適宜手順は変更できる。
1. 作製した口腔内崩壊錠を褐色メスフラスコに入れ、2mLの水を加え、手で振り混ぜて崩壊させた。錠剤が完全に崩壊したのを確認した。
2. 褐色メスフラスコ内に、80mLのアセトニトリル:メタノール=1:1(vol/vol)混合液をさらに加え、振盪した。
3. 溶液に超音波処理を施した。超音波処理中、溶液の温度は30℃以下で維持した。
4. 超音波処理した溶液を、孔径0.2μmのメンブレンフィルターで濾過し、濾液を試料溶液とした。ただし、濾液のうち初流の3mLは、試料溶液としては使用しなかった。
【0070】
(UPLC測定)
調製した試料溶液をUPLCに供し、アジルサルタンおよび類縁物質のピーク面積から、下記式に基づき、類縁物質の含有量(%)を算出した。
個々の類縁物質の含有量(%)={(個々の類縁物質のピーク面積×感度係数)/(アジルサルタンのピーク面積+個々の類縁物質のピーク面積×感度係数の合計)}×100。
【0071】
UPLCの測定条件は、下記の通りである。
・検出器:紫外線吸光光度計
・測定波長:237nm
・カラム:内径2.1mm、長さ10cmのステンレス管に1.8μmの液体クロマトグラフィ用オクタデシルシリル化シリカゲルを充填したもの(ACQUITY HSS C18 1.8μm 2.1mm×100mm)
・カラム温度:40℃付近の一定温度
・移動相A:3.1gのリン酸二水素ナトリウム二水和物を、1000mLの水に溶解させた溶液(リン酸を加えてpHを3.0に調整した。)
・移動相B:アセトニトリル:メタノール=4:1(vol/vol)
・流量:0.5mL/min
・注入量:1μL
・サンプルクーラー温度:15℃
・分析時間:21分間
・面積測定時間:19分
【0072】
(類縁体)
本実施例で含有量を測定した類縁体は、下記の通りである。
【0073】
【化1】
【0074】
〔実施例1-1~実施例1-4、比較例1-1〕
ポリエチレングリコールの配合がアジルサルタンの安定性に及ぼす影響を検討した。具体的には、製造例の工程2で添加するマクロゴール6000の量を、表1に記載の通り変化させて口腔内崩壊錠を作製した。このとき、ロータリー式打錠機を用いて打錠圧力3~12kNにて打錠末を打錠して、口腔内崩壊錠を得た。得られた口腔内崩壊錠の錠剤硬度は55~85Nであり、錠剤径7.0mmであった。なお、表1には薬物含有顆粒のコーティング剤の組成は記載していないが、いずれの実施例および比較例でも同じ組成である。
【0075】
表1中、各数値の単位はmgである。表1中、微量成分であるペパーミントミクロンの配合量は0.18mgであるが、口腔内崩壊錠の全重量にはこの重量を含めていない。薬物含有顆粒に使用した成分の詳細は、下記の通りである。
【0076】
(造粒末)
アジルサルタン
トウモロコシデンプン :コーンスターチ(W)、日本食品化工製
ヒドロキシプロピルセルロース:HPC-L(微粉)、日本曹達製
マクロゴール6000 :粉末、三洋化成工業製
黄色三二酸化鉄 :癸巳化成製
(コーティング剤)
ヒドロキシプロピルセルロース:HPC-M、日本曹達製
黄色三二酸化鉄 :癸巳化成製
【0077】
【表1】
[類縁体の含有量]
得られた口腔内崩壊錠を、40℃、75%RHの条件下にて1箇月間、開放状態または密栓状態で静置した。その後、脱エチル体および総類縁体の含有量を測定した。結果を表2に示す。
【0078】
【表2】
【0079】
[結果]
表2より、マクロゴール6000の配合量が増えるほど、密栓条件での1箇月保存後における脱エチル体および総類縁体が減少する傾向が示された。製剤の作製直後においても、ほぼ同じ傾向が見られた。また、開放条件での保存後においては、マクロゴール6000を配合することと、脱エチル体および総類縁体を減少させることとの相関が見られた。
【0080】
〔実施例1-5~1-7〕
錠剤径の小さい2.5mg錠において、ポリエチレングリコールの配合がアジルサルタンの安定性に及ぼす影響を検討した。具体的には、製造例の工程2で添加するマクロゴール6000の量を、表3に記載の通り変化させて口腔内崩壊錠を作製した。このとき、ロータリー式打錠機を用いて打錠圧力3~12kNにて打錠末を打錠して、口腔内崩壊錠を得た。得られた口腔内崩壊錠の錠剤硬度は20~60Nであり、錠剤径は5.0mmであった。
【0081】
表3中、各数値の単位はmgである。表3中、微量成分であるペパーミントミクロンの配合量は0.05mgであるが、口腔内崩壊錠の全重量にはこの重量を含めていない。薬物含有顆粒に使用した成分の詳細は、実施例1-1~1-4の項目に記載した通りである。
【0082】
【表3】
【0083】
[類縁体の含有量]
得られた口腔内崩壊錠を、70℃の条件下で9日間静置した(劣化促進試験)。あるいは、40℃、75%RHの条件下にて3箇月間、密栓状態で静置した。その後、総類縁体および脱エチル体の含有量を測定した。結果を表4に示す。
【0084】
【表4】
【0085】
[結果]
実施例1-5~1-7で作製したのは、剤径:約5.0mmと、比較的剤径が小さい口腔内崩壊錠であり、アジルサルタンが変質しやすいと考えられる。表4より、マクロゴール6000の配合量が増えるほど、密栓条件での3箇月保存後における、脱エチル体、エチルエステル体および総類縁体が減少する傾向が示された。また、劣化促進試験の結果も、概ね同じ傾向を見せた。
【0086】
〔実施例2-1~実施例2-4、比較例2-1〕
着色剤の配合がアジルサルタンの安定性に及ぼす影響を検討した。具体的には、製造例の工程1、5、9で添加する黄色三二酸化鉄の量を、表5に記載の通り変化させて口腔内崩壊錠を作製した。このとき、ロータリー式打錠機を用いて打錠圧力3~12kNにて打錠末を打錠して、口腔内崩壊錠を得た。得られた口腔内崩壊錠の錠剤硬度は55~85Nであり、錠剤径は7.0mmであった。
【0087】
表5中、各数値の単位はmgである。表5中、微量成分であるペパーミントミクロンの配合量は0.14mgであるが、口腔内崩壊錠の全重量にはこの重量を含めていない。薬物含有顆粒に使用した成分の詳細は、実施例1-1~1-4の項目に記載した通りである。
【0088】
【表5】
【0089】
[類縁体の含有量]
得られた口腔内崩壊錠に対して、光量120万ルクスの光となるようにキセノンランプの光を照射した。光照射前後の口腔内崩壊錠について、光分解物、脱エチル体、エチルエステル体および総類縁体の含有量を測定した。結果を表6に示す。
【0090】
【表6】
【0091】
[結果]
表6より、黄色三二酸化鉄を配合することにより、光照射後における光分解物および総類縁体が減少する傾向が示された。黄色三二酸化鉄を配合したとしても、脱エチル体およびエチルエステル体が増加することはなかった。実施例2-2~2-4を比較すると、意外にも、速崩壊性顆粒に黄色三二酸化鉄を配合することにより、有効成分の安定化効果が高まることが示唆された。
【0092】
〔実施例2-5~2-7〕
10mg錠において、着色剤の配合がアジルサルタンの安定性に及ぼす影響を検討した。具体的には、製造例の工程1、5、9で添加する黄色三二酸化鉄の量を、表7に記載の通り変化させて口腔内崩壊錠を作製した。このとき、ロータリー式打錠機を用いて打錠圧力3~12kNにて打錠末を打錠して、口腔内崩壊錠を得た。得られた口腔内崩壊錠の錠剤硬度は40~80Nであり、錠剤径は6.5mmであった。
【0093】
表7中、各数値の単位はmgである。表7中、微量成分であるペパーミントミクロンの配合量は0.12mgであるが、口腔内崩壊錠の全重量にはこの重量を含めていない。薬物含有顆粒に使用した成分の詳細は、実施例1-1~1-4の項目に記載した通りである。
【0094】
【表7】
【0095】
[類縁体の含有量]
得られた口腔内崩壊錠に対して、光量120万ルクスの光となるようにキセノンランプの光を照射した。光照射前後の口腔内崩壊錠について、光分解物の含有量を測定した。結果を表8に示す。
【0096】
【表8】
【0097】
[結果]
表8より、10mg製剤においても、黄色三二酸化鉄を配合することにより光照射後における光分解物が減少する傾向が示された。意外にも、速崩壊性顆粒への着色剤の配合量が増えると、有効成分の安定化効果が高まることが示唆された。
【0098】
〔実施例3-1~3-3、比較例3-1〕
ヒドロキシプロピルセルロースの配合がアジルサルタンの安定性に及ぼす影響を検討した。具体的には、製造例の工程5で添加するヒドロキシプロピルセルロースの量を、表8に記載の通り変化させて口腔内崩壊錠を作製した。このとき、ロータリー式打錠機を用いて打錠圧力3~12kNにて打錠末を打錠して、口腔内崩壊錠を得た。得られた口腔内崩壊錠の錠剤硬度は70~100Nであり、錠剤径は9.0mmであった。
【0099】
表9中、各数値の単位はmgである。表9中、微量成分であるペパーミントミクロンの配合量は0.28mgであるが、口腔内崩壊錠の全重量にはこの重量を含めていない。薬物含有顆粒に使用した成分の詳細は、下記の通りである。
【0100】
(造粒末)
アジルサルタン
部分アルファ化デンプン :PCS[PC-10]、旭化成製
トウモロコシデンプン :コーンスターチ(W)、日本食品化工製
ヒドロキシプロピルセルロース(1):HPC-L(微粉)、日本曹達製
ヒドロキシプロピルセルロース(2):HPC-M(微粉)、日本曹達製
マクロゴール6000 :粉末、三洋化成工業製
黄色三二酸化鉄 :癸巳化成製
(コーティング剤)
ヒドロキシプロピルセルロース(2):HPC-M(微粉)、日本曹達製
黄色三二酸化鉄 :癸巳化成製
【0101】
【表9】
【0102】
[類縁体の含有量]
得られた口腔内崩壊錠を、70℃の条件下にて3日間、6日間または9日間静置した(劣化促進試験)。それぞれの時点における、脱エチル体およびエチルエステル体の含有量を測定した。結果を表10に示す。
【0103】
【表10】
【0104】
[結果]
表10より、ヒドロキシプロピルセルロースの配合量が増えるほど、脱エチル体の増加を抑制できることが示された。エチルエステル体に関しても、ほぼ同じ傾向が見られた。また、実施例3-1~3-3に係る口腔内崩壊錠は、従来のフィルムコート錠製剤と同程度以上の安定性を有していることが示された。
【0105】
[崩壊速度]
実施例3-1~3-3、比較例3-1に係る口腔内崩壊錠が崩壊するまでの時間を、第16改正日本薬局方に記載されている崩壊試験法によって測定した。結果を表11に示す。
【0106】
【表11】
【0107】
[結果]
表11より、薬物含有顆粒のコーティング層にヒドロキシプロピルセルロースを配合すると、口腔内崩壊錠の崩壊時間が短くなる傾向があることが示された。
【0108】
〔実施例4-1~4-9〕
製造例の各工程で添加する各成分の量を、表12に記載の通り変化させて口腔内崩壊錠を作製した。このとき、ロータリー式打錠機を用いて打錠圧力3~12kNにて打錠末を打錠して、口腔内崩壊錠を得た。得られた口腔内崩壊錠の錠剤硬度は65~70Nであり、錠剤径は7.0~9.0mmであった。
【0109】
表12中、各数値の単位はmgである。表12中、微量成分である三二酸化鉄の配合量は、薬物含有顆粒(コーティング剤)においては0.03g、速崩壊性顆粒においては0.098gであり、ペパーミントミクロンの配合量は0.135mg~0.27mgであるが、口腔内崩壊錠の全重量にはこれらの重量を含めていない。薬物含有顆粒に使用した成分の詳細は、下記の通りである。
【0110】
(造粒末)
アジルサルタン
トウモロコシデンプン :コーンスターチ(W)、日本食品化工製
ヒドロキシプロピルセルロース:HPC-L(微粉)、日本曹達製
マクロゴール6000 :粉末、三洋化成工業製
黄色三二酸化鉄 :癸巳化成製
(コーティング剤)
ヒドロキシプロピルセルロース:HPC-M、日本曹達製
黄色三二酸化鉄 :癸巳化成製
三二酸化鉄 :癸巳化成製
【0111】
【表12】
【0112】
表12より明らかなように、実施例4-1に係る20mg製剤および実施例4-2~4-9に係る40mg製剤は、所定量以上のポリエチレングリコール(マクロゴール6000)および着色剤(黄色三二酸化鉄)を含み、かつ、薬物含有顆粒のコーティング層に所定量以上のヒドロキシプロピルセルロースを含む。したがって、保存に伴う類縁体の生成が少なく、有効成分の安定性が高い口腔内崩壊錠であること、すなわち、有効成分であるアジルサルタンまたは薬学的に許容されるその塩の安定性が改善された口腔内崩壊錠であることが期待できる。
【0113】
なお、実施例4-2~4-9においては、40mg製剤として口内崩壊錠を作製しているが、各工程で添加する各成分の量を、表12に記載の量の半量とすることで、20mg製剤として口内崩壊錠を作製することもできる。
【産業上の利用可能性】
【0114】
本発明は、アジルサルタンまたは薬学的に許容されるその塩の製剤などに利用できる。